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京都府

京都・平安京の桜 その① 【松本路子の花旅便り】
桜の名前にゆかりの地を訪ねる 早咲きの桜便りが届くと、各地の桜のことが気になってくる。桜といえば‘染井吉野’を思い浮かべることも多いが、桜にはさまざまな名前が冠せられていることを知ってから、名前にゆかりの地をめぐる、そんな旅に興味を抱いた。 ‘染井吉野’は全国の桜の約8割を占める。だがこの桜が登場したのは江戸末期で、全国的に広まったのは明治になってからだ。古来日本には‘ヤマザクラ’をはじめとする野生の桜が、人々の暮らしとともにあった、その数は10種といわれている。人々は野山に出かけ満開の花の下で、妖気に酔い、散る風情に世の無常を儚む。そうした桜をめぐる豊かな文化が息づいていた。 平安時代になると、公家の手によって宮中や寺社に桜が移植され、栽培・観賞の習慣が生まれた。やがて自然界での変異や異種間での交雑、さらに人工交配によって、さまざまな栽培品種が誕生するようになった。‘奈良の八重桜’や‘枝垂桜’は、平安時代の早い時期に宮中や公家の邸宅に植えられていた。 百人一首で知られる「いにしへの奈良の都の八重桜けふ九重ににほひぬるかな」は、平安中期に女性歌人伊勢大輔(いせのたいふ)によって詠まれた歌で、奈良時代からこの花があったことを教えてくれる。 桜の栽培品種は生まれた地、花色、花の形などから名前が付けられ、今やその数は300とも400ともいわれている。 特に京都に原木のある桜は、名前も雅で、ルーツをたどるだけでも楽しい。京都に花の名所は数々あるが、そうした名前にゆかりの地を訪ねてみた。 平野神社 平野神社は794年、平安遷都と同時に奈良から遷座された歴史ある神社。現在、60種類400本の桜が見られる。平安時代に花山天皇が桜を手植えしたことをきっかけに、氏子の公家たちが珍しい品種の桜を競って神社に奉納するようになった。桜は「生命力を高める象徴」とみなされ、家の繁栄を願ってのことだ。江戸時代になると、庶民にも夜桜が解放され「平野の夜桜」として広く知られるようになった。 平野神社に原木があり、またゆかりのある桜は‘魁(さきがけ)’、‘平野寝覚(ひらのねざめ)’‘平野妹背(ひらのいもせ)’‘手弱女(たおやめ)’など。また‘楊貴妃(ようきひ)’という名の艶やかな桜花も見ごたえがある。種類によって開花時期が異なるので、3月から4月にかけて約1カ月半にわたり花を愛でることができる。 祇王寺 ‘祇王寺祇女桜(ぎおうじぎじょざくら)’という桜と出会い、その名前の由来が『平家物語』にあると知って興味を覚えた。平清盛の寵愛を受けた白拍子(歌や舞を披露する格式高い遊女)の祇王が、清盛の心変わりによって都を追われ、母と妹の祇女とともに出家をするという、悲恋の物語だ。出家後に住まいとした奥嵯峨の尼寺が、今に残る祇王寺だという。桜は19歳の若さで出家した妹の白拍子、祇女に捧げられたものだ。 嵯峨野は都の西方の郊外にあることから、別名西郊と呼ばれ、平安時代から公家や文人に愛され、離宮や山荘が建てられた。嵐山から足をのばした「竹林の小径」がよく知られている。奥嵯峨はさらに北へ行ったあたりで、『平家物語』の時代には草深い里であったのではと思われる。祇王、祇女の姉妹とその母はこの地で生涯を終え、寺の敷地内にその墓が残されている。 私が祇王寺を訪ねた数年前には‘祇王寺祇女桜’の木は見当たらず、樹齢150年を経た切り株のみだった。近年、新しく植樹されたというので、桜の季節に再訪してみたい。一時期廃寺となり、今ある草庵も明治時代に他から移築されたものだが、そのひなびた様子がゆかしい。さらに苔むした庭が静寂の中に凛とした佇まいを見せ、そこに身を置けただけでも、訪れた甲斐があったと思えた。 京都府立植物園 京都市街北部にある植物園は1924年開園の京都市民憩いの場所で、170種500本の桜が植えられている。園内では桜林の‘紅枝垂’ほか、北山門近くの桜品種見本園で、京都に原木のある桜の品種を数多く見ることができる。‘駒繋(こまつなぎ)’ ‘朱雀(すざく)’など京都らしい名前に加え、‘鬱金(うこん)’ ‘御衣黄(ぎょいこう)’など、黄緑色の花弁の桜も京都にゆかりがあるとされる。 半木の道 植物園の西側には大きな河が流れている。鴨川の上流となる賀茂川だ。川沿いをさらに上流に向かう散策路は、‘八重紅枝垂’のトンネルが幾重にも連なる「半木(なからぎ)の道」。京都の桜守、16代佐野藤右衛門により増殖された桜が約800mにわたり続いている。花のスクリーン越しに、夕刻の水面のきらめきを眺め、その日の桜めぐりを終えた。 *植物学の慣例に従い、野生の桜をカタカナ、栽培品種の桜を漢字で表記しています。 Information 平野神社 住所:京都市北区平野宮本町1 電話:075-461-4450 Mail :info@hiranojinja.com HP:www.hiranojinja.com 祇王寺 京都市右京区嵯峨鳥居本小坂町32 電話:075-861-3574(9:00~16:30) Mail:giou@giouji.or.jp HP:www.giouji.or.jp 京都府立植物園 京都市左京区下鴨半木町 電話:075-701-0141 HP:www.pref.kyoto.jp 桜の開花情報 日本気象協会: https://tenki.jp ウェザーニュース:https://weathernews.jp
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東京都

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪33 東京「Garden Shop T- Garden(ガーデンショップ ティーガー…
生産者と自身の思いを届ける 誠実さがあふれるショップ シルバーや銅葉など、美しいカラーリーフの樹木が店頭を飾る「Garden Shop T- Garden(ガーデンショップ ティーガーデン)」のエントランス。造園業を営む「立川造園」の窓口でもある園芸店というだけあって、珍しい大鉢の樹木類がたくさん並んでいます。 ここは立川造園の園芸店舗をリニューアルし2016年にスタートしたショップで、スタッフ8名はみな女性。「造園部は男性ばかりですが、店舗では女性ならではの感性を生かして、笑顔と会話を絶やさず、お客様が心地よくショッピングができるようなおもてなしを心がけています」と店長の村形りかさん。 白いタープが心地よい空間には、ナチュラルな印象の苗がずらり。美しい状態で苗を提供するために、徹底した手入れ・管理がなされています。「よい状態を維持することは、生産者の思い、ストーリーをきちんとお客様に届けること。ポップも分かりやすく書いています」と村形さん。 季節の草花は、花壇でも寄せ植えでも、ほかの花と組み合わせがしやすい品種を陳列。たくさんの植物があるにもかかわらず、店内は落ち着いた雰囲気です。それは「園芸好きなお客様が大人の自由時間を過ごせる場に」という思いで、店づくりがなされているから。スタッフは花をこよなく愛する人ばかりで、ショップ中からそれが伝わってきます。 お客様にさりげなく声掛けすることも心がけている村形さん。「お客様との間に壁を作らず、情報交換できる場所」となるよう常に意識しています。場所がら通りすがりのお客様はほとんどいないので、リピートしてもらえるように努力を重ねています。 繊細な草花と雑貨を合わせたディスプレイも必見。「ディスプレイは、隣り合うものは何か? をよく吟味し、相乗効果を狙ったレイアウトを心がけています。雑貨は植物の邪魔をしないことや、お客様が選びやすいことなどを意識しています」と村形さん。 季節感も大切にしているポイント。先まわりしすぎずに、旬をしっかりと感じられるようなディスプレイを心がけています。 2つの出会いが教えてくれた ガーデニングの楽しさと大切さ 細やかな気配りで接客にあたる村形さん。20代の頃の関心ごとは植物ではなく、料理をさらに美しく見せるテーブルコーディネート (la décoration de table)やフランス語を学ぶことだったそう。日仏文化協会が主催する、フランス文化体験プログラムに参加し、コルドンブルーやエコール ルノートルで料理を学んだことも。街の花のある美しい風景や光景も「きれいだな」と思う程度でした。 村形さんが花にのめり込んだのは、2つのこと(出会い)がきっかけでした。一つめは、テーブルコーディネートで花に関心を持ち始めた頃にイギリスで始まった歴史ある装飾園芸の技法を知り、2000年にハンギングバスケットマスターの資格を取得したこと。夢中で向き合ううちに腕を上げ、数年後には園芸雑誌やガーデニングショーで受賞しました。凝り性で、これだと一つ決めると突き進む性格が、今の村形さんを作っています。 きっかけのもう一つは、バラをこよなく愛する地釜政弘さんとの出会い。地釜さんは、東村山の自宅でたくさんの野ばらやイングリッシュローズなどを育てていた方で、地元の小学校にもバラ園をつくり、ミニコンサートを開催するなど地域に大きく貢献していました。村形さんは、その活動やバラを愛する姿に感銘を受け、花が持つ力を知ったのです。 その後はハンギングバスケットの資格を生かしながら、あちこちで活動。地釜さんに背中を押されたこともあり、東村山に拠点を置き、ショップをリニューアルオープンさせるに至りました。 ハウス内も見どころが満載! ワークショップも開催される ハウス内には、観葉植物やギフト用のランのほか、雑貨や季節の球根などが並んでいます。ここのディスプレイもナチュラルシックな雰囲気で、飾り方の参考になります。球根と合わせるコンテナ類は、アンティークタッチのコンパクトなものがほとんど。小球根を植えるのにおすすめ。 スタッフはそれぞれに長けていることが異なる多彩な陣容。村形さんは、そんな仲間をリスペクトしていると言います。切り花店出身者の技能を生かし、フレッシュリースなども販売。 ハウス内では、さまざまなイベントやワークショップも開催。定番の寄せ植えをはじめ、フラワーアレンジやリース作りなど、生活に楽しく取り込めるような講座が催されています。 村形さんのイチオシはコレ! 松村ナーセリーのクリスマスローズ 同じ地域で活躍する松村みよ子さんのリーフが美しいクリスマスローズ。真冬に輝くウィンタープランツとして欠かせません。たくさんの草花と合わせた華やかな寄せ植えなど、今までになかったようなアレンジができます。色・形、斑の入り方も多様で花も楽しめる、といった優れもの。地植えにしてもいいですね。 バラを栽培するガーデナーである恩人の「花で社会貢献する姿勢」に影響を受け、園芸店として地域への大きな貢献を目指す「Garden Shop T- Garden」。女性目線で細やかな気配りと品揃え、ディスプレイが心地よいショップです。2022年3月に店舗はカフェを併設して再リニューアルオープンする予定(詳細はHPをチェック)。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、西武新宿線「東村山駅」より徒歩17分。 【GARDEN DATA】 Garden Shop T- Garden(ガーデンショップ ティーガーデン) 東京都東村山市久米川町2-1-2 TEL :042-395-1956 営業時間:9:30~17:00 定休日:水曜日/8月は長期休暇あり https://www.t-garden-hana.com/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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静岡県

伊豆・河津桜物語【松本路子の花旅便り】
早春の桜便り 毎年2月になると、静岡県東部にある伊豆から桜が咲き始めたという便りが届く。4月に開花する染井吉野ではなく、早咲きの河津桜だ。今では伊豆だけでなく、全国で植栽され、早春の桜として知られるようになった河津桜。その誕生物語は、奇跡とも思えるものだ。 わが家のバルコニーにも2本の木が育っていて、鉢植えながらけなげに花を咲かせる。まだ寒い季節に、これから訪れる春を予感させ、気持ちをほっこりと温めてくれる貴重な存在だ。 河津桜、そのルーツ 河津桜は静岡県の河津町で、1955年頃に川沿いの雑草の中で苗木が発見され、発見者の故・飯田勝美さんの家の庭先に移植された。10年目に開花し、大木となったその原木は、今も同地で花を付ける。 2月上旬から、淡い紅色の花が1カ月近く咲き続けることから注目を集め、60年代から有志の手によって増殖されるようになった。その後、調査で新種の桜であることが判明し、発見された地にちなんで、1974年に河津桜(かわづざくら)と命名された。 河津桜は伊豆半島に自生する野生の桜オオシマザクラと、他種の桜との自然交配の結果生まれたもので、一方の親はカンヒザクラと推測されている。オオシマザクラは伊豆大島に多く分布し、その名が付けられた。開花期は3月下旬頃だが、1月下旬に咲く「寒咲大島」もある。 一方のカンヒザクラも野生の桜で、主に沖縄に分布するが、江戸時代後期には関東地方でも栽培されていた。沖縄では1月下旬頃から開花する。オオシマザクラは白色で、カンヒザクラは緋色の花を付けるので、河津桜はその中間の花色といえるのかもしれない。いずれにしても2種類の桜がどのように出会って、交配に至ったか、自然界の不思議を感じさせる出来事だ。 河津川沿いの桜並木 1本の原木から増殖された苗木が、今や現地では8,000本を数えるほど植栽されている。中でも河津川両岸の桜並木は4kmにわたる見事なもので、河津駅近くの河口から上流に向かい約850本の桜が続き、花のトンネルを散策できる。 染井吉野の花が10日ほどで散るのにくらべて、河津桜はたくさんのつぼみが徐々に花開き、花もちもよいので、1カ月ほど花の見頃が続く。例年花の季節に「河津桜まつり」が開催され、2021年は中止となったが、2022年は一部のイベントを除いて開かれる。 わが家の河津桜 河津桜が初めてわが家のバルコニーにやってきたのは、20年ほど前のこと。伊豆から到来した苗木だったが、数年後に、成長しすぎて友人の広い庭に地植えしてもらった。当時は鉢植えの木の扱い方がよく分かっていなかったのだ。 十数年前に河津町の生花店で苗木を求め、再び栽培にチャレンジ。バラと同じように冬の休眠期に鉢の土替えをすると、2mの高さで安定して育つようになった。考えてみれば、桜もまたバラ科の植物なのだ。4階の東側のバルコニーは日当たりがよいので、年によっては1月下旬から開花する。 鉢植えの桜 鉢植えのよいところは、動かせること。普段はバルコニーの隅に置いてある鉢を、つぼみがほころび始めたところで、中央のテーブル近くに移動させる。暖かい日には桜花の下でティータイム、そしてリビングルームから花見ができる。夜はライトアップして、ささやかな夜桜見物も。 桜が咲くと、頻繁に訪れてくるのがメジロ。花の蜜が大好物のこの鳥が、窓辺の木の枝に止まり、夢中で蜜を吸う姿が見られる。食用には適さないが、サクランボも実り、小さな果実は見ているだけで楽しい。青い実が熟し、赤くなると、小鳥たちがやってきてそれをついばんでいる。 Information 第32回「河津桜まつり」 会期:2022年2月1日~28日 アクセス: 車 東名沼津ICから河津町まで、約1時間20分。東名厚木ICから河津町まで、約2時間30分 電車 JR東京駅から特急踊り子号で、伊豆急河津駅まで約2時間40分。新幹線熱海駅から伊豆急行で、伊豆急河津駅まで約1時間30分 開花情報:電話 0558-34-1560 事務局:河津町観光協会 www.kawazu-onsen.com info@kawazu-onsen.com
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新潟県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪32 新潟「グリーンランド エデン」
園芸の裾野を広げるべく 安心して育てられる苗を販売 エクステリアや庭づくりの設計・施工を請ける「グリーンランド エデン」。大きな看板はないものの、瑞々しい植物が囲むモダンな事務所兼ショップが目印です。 「グリーンランド エデン」は、約8年前にこの地にオープンした総合園芸ショップです。以前は、北陸自動車道新潟亀田ICのすぐ横に35年間店を構えていましたが、付近の整備に伴い3kmほど南に移転しました。 店名は創始者で前社長の大橋保男さんの「皆が楽しく暮らせる理想郷・ユートピア・エデンの園をつくろう」という思いからつけられました。1968年当時、世界で一番の国・アメリカ合衆国を見たいという思いでカリフォルニア州に渡り、農業研修生として学んだことを注ぎ込みました。その名の通り、花いっぱいのおだやかな空間が広がっています。 広い敷地の一番奥に設けられたハウスは、色とりどりの花苗や鉢が並ぶ売り場。中央に設えた大きなトンネル状のアーチが空間に立体感とメリハリをもたらしています。ここにはロベリアやフクシア、シダなど枝垂れるタイプの植物が吊され、彩り豊かなアイストップとなっています。 花苗の新鮮さはもちろんですが、どれもしっかりとした株に育っていることも、このショップの大きなこだわり。「よいものを安く提供する」ためのひと手間を惜しまず、メーカーから仕入れた苗を、30年来提携している農家さんに大きく育ててもらってから、売り場に出しているのです。これならビギナーでも育てやすく、見栄えも抜群です。 ショップにはハンギングバスケットマスターなどが在籍、常に花に携わる仲間たちと園芸の裾野を広げることを強く意識し、イベントやワークショップなどの活動に積極的に参加しています。モダンな建物の中では、寄せ植えをはじめとした講座を月2回(1、2月は除く)開催、冷暖房完備の中で快適に学ぶことができます。寄せ植え講座は、材料を店側が用意するだけでなく、自身で選ぶことも可能。参加者のレベルに合わせて受講することができるので安心です。 ナチュラルな雰囲気の寄せ植えも多数並んでいます。売り場の奥には、近隣の企業やショップから依頼された寄せ植えがたくさん。もちろん、要望を伝えれば予算に合わせて作ってくれます。 庭づくりの専門家がおすすめの リーフや実が楽しめる樹木がたくさん 庭の工事を請けているショップだけに、草花だけでなく樹木の品揃えが非常に豊富。大きく育つ黄金ニセアカシア‘フリーシア’を中心に、おしゃれで人気の樹種がずらりと並んでいます。樹木のプロも3人在籍しているので、大きさや育ち方、庭への取り入れ方など、分からない時はぜひ相談してみて。 ショップで今人気なのは、鉢で気軽に楽しめるオリーブやブルーベリー。そのほか、銅葉や斑入り葉、オーレア葉などの人気品種や、手に入りにくい希少種も揃えています。それぞれに大きな名札がついているので選びやすく、眺めているだけで勉強になります。 小さな農場のような売り場で見つけた 素敵な樹木をご紹介! 左/斑入りコナラ:ブナ科・落葉高木。人気が高い秋にドングリをつける雑木の斑入り種。 中/斑入りリョウブ:リョウブ科・落葉中高木。夏に細長い花穂に白花をたくさん咲かせ、秋に小さな実をつける。 右/ヤマボウシ‘ウルフアイ’:ミズキ科・落葉高木。葉焼けしにくい斑入り種で、比較的コンパクトな樹形におさまる。 左/クロハトベラ:トベラ科・常緑低木。さわやかな斑入り葉と黒い茎の対比が美しいピットスポルマム。 中/シマグミ:グミ科・常緑低木。銀色がかった葉が魅力の、まだ流通が少ないグミ。初夏に白花を咲かせる。 右/コプロスマ‘サンスプラッシュ’:アカネ科・常緑低木。繊細な枝ぶりで、黄覆輪の小さい葉が密集する。 アメリカハナズオウ:マメ科・落葉中木。春に開花する。写真の品種は下記の通り。 左/‘メルロー’:厚みと光沢のある紫色の葉と、赤紫色の花が美しい品種。‘フォレストパンシー’よりまとまりよく成長する。 中/‘ハートオブゴールド’:出葉時のライムグリーンの明るく美しい葉は、強光下でも葉焼けしにくい。花はピンク色。 右/‘シルバークラウド’ :淡ピンクから白い斑入りに移ろう美しい葉は、強光で葉焼けしやすい。花は淡ピンク色。 ヨーロッパナラ:ブナ科・落葉高木。カシワのような形の葉をつけ、秋にドングリがなる。写真の品種は下記の通り。 左/ ‘コンコルディア’: 春の鮮やかな黄色はじつに見事。黄色い葉は盛夏を過ぎる頃になると緑色に変わって、再び秋に黄葉する。 中/クリスタータ:品種名は丸まって展開する葉が「鶏のとさか」に似ていることから名付けられた。大きなドングリも魅力的。 右/‘アルゲンティオ マルギナータ’:やや青みがかる葉に白い斑が入る。ドングリにも斑が入り、緑と白のきれいな縦縞模様になる。 左/アロニア:バラ科・落葉低木。チョコレートベリーとも呼ばれ、春に薄紅色の小花を房状に咲かせ、秋には赤や黒の果実をつける。 中/ブルーベリー‘チャンドラー’:ツツジ科・落葉低木。ブルーベリーの中では最大サイズを誇り、成熟期初期は500円玉ほどの大きさの実をつける。 右/西洋ニンジンボク:シソ科・落葉低木。初夏に薄紫または白色の芳香のある花を咲かせる。葉は5~9枚の掌状になり、香りがある。 左/ヨーロッパブナ‘パープルファウンテン’: 枝垂れるブナで紫葉の人気品種。新葉は紫赤色で、夏にはやや緑がかり、秋は茶色になる。 中/レイランディ‘ネイラーズブルー’:ヒノキ科・常緑高木。広円錐形から円柱形に成長するコニファー。萌芽力が強いのでトピアリーにも。 右/アカシア‘ブルーブッシュ’ :マメ科・常緑中木。青灰色の葉と黄色い花が魅力のアカシア。生育が早く、樹形はブッシュ状になる。 お手頃なサイズと値段の インテリア関連も充実 建物内はインドアグリーンと雑貨売り場。天井が高い店内には、大小さまざまな種類のグリーンがおしゃれな雑貨とひしめき合うほどに並べられており、選ぶ楽しさ満載です。お手入れにおすすめのガーデンツールも多様に揃っています。 コンテナや雑貨類と合わせたおしゃれなディスプレイも必見。棚やスタンドを巧みに使い、それほど大きくないグリーンも、空間につややかな潤いを与えています。 インテリアで存在感を発揮する、大型の雑貨類もたくさん。鏡を用いることで部屋を広く見せつつ、大きめのガラスの花瓶とともに透明感のある輝きをもたらしています。 品質本位にこだわり、地域に根差すことを大切にしている園芸店「グリーンランド エデン」。たくさんの生産者がいる新潟・園芸産地としてガーデニングの活性化に力を注ぎ、園芸に携わる人の雇用アップにつなげる努力を続けています。また庭づくりのプロが「どこからどのように始めればいいの?」といった初心者さんの疑問にも丁寧に答えてくれます。ぜひ訪れてみてください。アクセスはJR信越本線亀田駅より徒歩約30分、北陸自動車道新潟亀田ICより車で約10分。 【GARDEN DATA】 グリーンランド エデン 新潟県新潟市江南区泉町5丁目1番3号 TEL 0120-1187-92 営業時間:9時30分~18時30分(1・2月は冬季営業10~18時) 定休日:正月三日間、1・2月のみ毎週水曜日 https://g-eden.co.jp/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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宮崎県

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。宮崎「こどものくに」バラ園
育種家ビオラの聖地、宮崎へ初訪問 僕が初めて宮崎を訪れたのは2019年2月のこと。ずっと行きたいと願っていた、宮崎育種家ビオラの聖地「アナーセン」で行われる「パンジー&ビオラ展」を取材するためでした。案内を買って出てくれた橋本景子さんは別便で一足先に宮崎入りし、待ち合わせに指定された場所が「こどものくに」のバラ園でした。橋本さんはバラ園で冬の手入れ作業中でしたので、しばらく青島神社辺りを観光してみることに。もともと神社仏閣には特に興味もなく、観光名所とは縁のない僕でしたが、このちょっとエキゾチックな青島神社に思いがけず魅了されてしまい、時間を忘れて撮影に没頭。「こどものくに」の駐車場に着いたのは、もう夕方近くになっていました。 駐車場から電話をすると、橋本さんは手が離せないとのことで、迎えに来てくれたのは、ガーデナーの源香さんでした。丁寧な挨拶から始まり、バラ園まで案内してくださる道すがら、ずっと1939 年に開園した「こどものくに」の歴史や、創始者の岩切章太郎さんの話を聞かせてくれました。 源さんの説明を聞きながら、バショウなどが育つ熱帯を思わせる林を抜けると、バラ園に到着。バラ園は僕が想像していたよりも小さく、何本かの園路で仕切られたスペースに木立ち性のバラが並ぶオーソドックスなスタイルで、植えられている品種は、少し古いタイプのハイブリッドティー(HT)が多い印象。この段階では、2年後に本気で撮影に伺うことになるとは想像もしていませんでした。 ただ、僕がいろいろなバラ園に行っている経験があるからか、熱心に質問してくれる源さんとバラ談議をしながら園内を歩いているうちに、「ここを宮崎の皆さんに喜んでもらえるバラ園にしてみせる」という源さんの熱い想いが伝わってきました。帰る頃にはすっかり打ち解けて「僕の好きなチャイナローズなら宮崎の気候にも合うと思うので、苗を送りますよ」なんて約束までしていました。 ラナンキュラス・ラックスが作る美しい風景との出合い 2度目に「こどものくに」を訪れたのは、翌々月の4月。2月にパンジー&ビオラ展に伺った際、「アナーセン」の川口のりこさんが写真教室を企画してくれて、二十数名の生徒さんと宮崎のいろいろなガーデンをバスで巡った時になります。ガーデン巡りの最後の目的地が「こどものくに」で、着いたのはもう午後5時を過ぎていました。この時期、バラ園はまだ花は咲いていないのですが、橋を渡った隣の海側エリアではラナンキュラス ・ラックスの花壇が見頃に。ちょうど沈みかける夕陽をバックに、逆光の中でラックスが美しく輝いているではないですか。ラックスは、花弁に光沢のある宿根草ということを知ってはいましたが、これほど見事な光景を見るのは初めてで、興奮してシャッターを切ったことを覚えています。 この見事なラックスは、作り手である隣町の綾町にある綾園芸の草野さんが2014年に100株寄贈したものだそうで、その後、源さんが大切に育て、守ってきた宝物の一つです。このエリアは、春はラナンキュラス・ラックス、秋はミューレンベルギアが美しいグラスガーデンの2交代制になっていて、このミューレンベルギアが、源さんのもう一つの宝物になります。 3度目の宮崎で庭撮影のタイミングを逃す その年の11月には、最新のパンジー&ビオラの買い付けに全国からやってきた花屋さんたちに混ぜていただいて、3度目の宮崎入りをしました。今回は皆さんと同様に、僕もパンジー&ビオラの新花が目的でしたが、バラ園には帰りの飛行場に向かう途中にちょっとだけ立ち寄ることができました。滞在最終日のわずかな時間しかない中、訪れたバラ園は、ちょうど満開の秋バラとたくさんの宿根草が混ざり合い、美しい風景を作っていましたし、橋の向こうのエリアでもミューレンベルギアがじつに見事。しかし、残念ながらフライトの時間が迫っていたため、撮影は翌年にと心に誓って、後ろ髪を引かれながら、急いで飛行場に向かいました。 翌2020年も11月にパンジー&ビオラの新花の撮影を計画していたのですが、この年は天候不順でパンジー&ビオラの開花が遅れていると連絡が入り、他の仕事との兼ね合いもあって、宮崎行きは12月に入ってからになりました。12月10日に宮崎入りしてすぐ「こどものくに」に向かったのですが、11月の末、来場者の方々にバラを切って持って帰ってもらうという「チョキチョキカッティング」というイベントがあったため、バラ園では宿根草だけが美しく風に揺れていました。 11月の最終週までに来ていれば、この宿根草の間に満開のバラが咲いていたのかと想像すると、がっかり。座り込んでしまいたいほど悲しい気分に。来年こそは、源さんのフェイスブックもチェックしながら、バラ園の撮影を最優先でスケジュールを立てなければ! と心に決めたのでした。 2021年は撮影の万全なタイミングを図る 2021年も11月に入り、源さんのフェイスブックを見ていると、10日過ぎから南国特有の夕方の赤っぽい光に浮かび上がる満開のバラ園や、逆光に輝くミューレンベルギ アなどワクワクする写真が、次から次へとアップされ出しました。ちょうどパンジー&ビオラもどんどん咲き出しているようだし、これはいよいよ宮崎行きのベストタイミングが近づいてきたと確信。10日間の宮崎の天気予報をチェックして、晴天が続く13〜15日の3日間の予定で宮崎に出発しました。 13日午後3時半にバラ園に到着。満開のバラと、そのバラを覆い隠すほど大きく育った宿根草に出迎えられて、満足しながらカメラをセット。太陽の位置を確認しながらファインダーを覗いてみると、赤やオレンジのバラの周りに、紫の千日紅や赤いケイトウが咲き誇り、その後ろには大きなグラスが風に揺れています。これは、まさに源ワールド! 深呼吸をして数枚のシャッターを切り、右を見ると大きなカンナが伸びやかに育っています。左にレンズを向ければ、そこも全然違う風景が広がっていて……。そのまま撮影をスタートしました。 バラと宿根草の美しいコンビネーションを撮ったり、ちょっと懐かしい昔のハイブリッドティーの名花を撮ったり、忙しく撮影をしているうちに時間があっという間に過ぎていて、気がつけば、西の山の向こうに陽が沈んでしまいました。橋の向こうのミューゲンベルギアをまだ撮っていないことに気づいて、三脚をかついで走り、グラスガーデンに行ってみると、ダイナミックなグラスの中に赤いカンナが混ざり育っていて、ここもバラ園とは違う、もう一つの源ワールドに。 残念ながら陽は既に沈んでいて、グラス類を撮る時に絶対に必要な逆光ではありませんでした。宮崎滞在はあと2日。このグラスガーデンにはもう一度来ることにして、ガーデン全体の写真を撮るアングルを探してみると、西側にカメラを構えてレンズを東に向けるのがよさそう……。ということは、撮影は朝の光で、東の海から昇ってきた逆光の太陽の光で撮るのがベストと分かりました。 14日早朝は別のガーデンに行く予定にしていたので、このグラスガーデンは15日早朝にと決めて、初日の撮影は終了しました。 早朝から約2時間が撮影の勝負 15日午前6時45分。日の出前の時間はさすがに宮崎でも寒く、三脚にカメラをセットして、陽が昇るのを足踏みしながら待っていると、ガーデンの後方にある木々の下方がだんだんオレンジに染まり始めました。いよいよ撮影開始です。少しずつ露出を変えながら数枚のシャッターを切ったら、また足踏みをしながら5分待ってシャッターを切り、また5分待ってシャッターを…と、7時過ぎまでシャッターを切って、太陽が木々の上にまで昇り、光が強くなったタイミングで場所を移動。逆光に白く輝くグラスの穂を撮ったり、光に透けるカンナの葉を撮ったりしてグラスガーデンの撮影は終了です。 急いでバラ園に移動して、朝の光で見るバラ園は、一昨日の夕方とは全然違う表情を見せています。ここでも昇る太陽と競争しながら、8時過ぎまで撮影し、こうして何年越しかの「こどものくに」の撮影を終了しました。 この年の滞在中は、源さんも忙しくてすれ違いばかり。ゆっくり話を聞くことができなかったのですが、この原稿を書くにあたり、メール取材の中で、こんなに宿根草がバラ園にある理由を尋ねてみました。 2017年までバラ園を担当していた方が高齢となり、退職後を引き継ぐ人がいなかったことから、まだ当時はバラにはそれほど興味のなかった源さんが引き継ぐことになったそうです。「『こどものくに』が好きな人と花好きの人が集まれば、何とかなる」という思いで「ときどき花くらぶ」というグループを作り、仲間たちとバラ園の管理を始めました。初めの頃は草取りばかりで大変だったので、作業が少しでも楽しくなるようにと、好きな草花を持ち寄って植えているうちに今の姿になったとのこと。今後は、バラが好きな人は「バラ組」、椿が好きな人は「椿組」、グラスの好きな人は「グラス組」というように、いくつかのグループを作って、学校のクラブ活動のように楽しく学べる場所にしていきたい、と源さん。 バラ園の宿根草も、グラスガーデンのミューレンベルギアも、ダイナミックに景色を作る源さん。人生の目標もダイナミックで素敵な源香さんが、今後どんなガーデンをつくってくれるのか、今から楽しみです。
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フランス

珠玉のプロヴァンススタイル・ガーデン「ラ・ルーヴ庭園」
プロヴァンス・スタイルの「ラ・ルーヴ庭園」 太陽がいっぱいの南仏プロヴァンスのガリーグと呼ばれる灌木林には、自生のタイムやローズマリーの群生が広がり、西洋ウバメガシやカシの木、ツゲなどの自生樹種が山野を彩ります。リュベロンの小さな村ボニューにある「ラ・ルーヴ庭園」は、そうしたローカルな自然を取り込んだ、元祖コンテンポラリーなプロヴァンス・スタイルのガーデンです。 フレンチ・シックなガーデンデザイン リュベロンの山を望み、岩壁を這うようにつくられた庭園のテラスに入ると、さまざまな常緑灌木が球形または大刈り込みのように繋がり、立体的な緑の絨毯が広がるような姿に驚かされます。フレンチ・フォーマル・ガーデンというとシンメントリーで幾何学的な、整ったイメージですが、それとも違うのだけれども、大変シックに美的に整っており、同時に庭の生きた魅力に満ちているのを感じます。歩を進める度に微妙に庭の眺めが変わり、細長い庭園の園路を進んでいくと、ラベンダー畑やブドウ畑からインスパイアされたのであろうプロヴァンス風景のコーナーがあったりと、決して広くはない庭園なのに、変化に富んだ散策が楽しめます。 土地の自然を取り込む自生樹種をチョイス トレードマークともいえるツゲやローズマリーなどをはじめとするすべての刈り込みの灌木類は、庭を遠巻きに囲む山々にある自生樹種が選ばれています。土地の風土に適した、手入れがなくとも育つ丈夫な木々が庭に取り込まれ、それぞれの緑のトーンやテクスチャーの違いが豊かな表情を見せます。それはまた、プロヴァンスの明るい透明な光の具合によって、さらに輝きを増すのです。刈り込みの常緑樹木には変化が少ないように思われるかもしれませんが、季節によって、また朝昼晩の光の違いによって、生き生きと変化する絶妙な庭の風景を作り出しています。プロヴァンス独特の自然の産物である樹木の緑や太陽の光が最大限に生かされ、独自のスタイルとなっているのが、このガーデンの特筆すべきところです。 ラ・ルーヴとの運命の出会い この庭をつくったのは、元エルメスのデザイナーでもあった女性、ニコル・ド・ヴェジアン(Nicole de Vésian/1919~1999)。南仏プロヴァンスの土地の魅力に魅せられ、ラ・ルーヴ(仏語で狼のこと)と名付けられた村外れの邸宅と土地を購入したのは1989年、70歳の時でした。山の眺めに向かって大きく開かれた3,000㎡ほどの土地がたちまち彼女を魅了し、建物の中も見ずに購入を即決したのだとか。そして、70歳にして彼女の最初の庭づくりが始まったのです。 70歳にして初めての作庭 当初は庭づくりの知識などなかったので、何人かの庭師を雇って作庭を始めました。植物の知識はなくとも、このような庭にしたい、という絶対的なイメージがあって、そのクリエーションを庭師たちの職人技が支えていく、そんな感じだったのでしょう。その作庭の方法はデザイナーとしては独特で、「図面も描かないし、長さも測らない」。すべて現場で、植栽前に植物の配置を何度も並べ替えて、徹底的に目視で確認して決定するというやり方です。庭師たちにとってはたまったものではなかったことでしょう。しかし、一緒に仕事をしていくうちに、あうんの呼吸が生まれ、後に、彼女の庭を訪れたセレブたちから次々と庭園デザインの仕事が舞い込むようになった時には、必ずお気に入りの庭師たちとのチームで仕事を受け、海外からの依頼を受けた際にも自分の庭師たちを連れていったのだそうです。 フランスのみならず、特に英米からの来訪者が多かったそうですが、ある美術評論家は彼女の庭を美術作品のごとき「傑作」だ、とたたえ、ニコルには音楽での絶対音感のような、絶対的な空間造形の感覚があるのだろうと評しています。 ローカルな素材への愛着 見事な刈り込みの緑の造形の他にも、庭の主たる構成に見えるのは、ローカルな石への愛着。ルネサンス庭園にあるような非常にシンプルな球形の石造彫刻や、地元の廃墟となった庭園や建物からリサイクルした石がふんだんに使われています。 日本庭園への憧憬 ところで、石と刈り込みの緑といえば、日本庭園にも共通するアイテム。プロヴァンスの自然と彼女の感性から生まれたであろうデザインでありながらも、日本人から見たら、どこか日本庭園に通じる雰囲気も感じられるのも、この庭の不思議な魅力です。その背景にある哲学や美学は異なるものであろうとも、アシンメトリーな構成や、シンプリシティや自然へのリスペクトを追求する庭づくりには、伝統的な日本庭園を彷彿とさせる完成された美観と静けさが満ちています。ニコルはデザイナーの仕事で何度も日本を訪れており、日本庭園も見ていたはず。何らかの形でインスパイアされた部分があるのかもしれません。 80歳の時、ニコルは次の庭をつくるべく別の土地を購入し、そのためラ・ルーヴ庭園を売却しています。残念ながら新たな庭を完成する前に世を去ってしまうのですが、その次作には、なんと日本風の庭園を作る構想を立ていたのだそう。つくられなかった庭がどんなものになったのか、興味深いところです。 生き続けるラ・ルーヴ庭園 その後のラ・ルーヴ庭園の所有者は何代か変わり、現在は、やはりこの庭園に魅了された元ギャラリストの夫妻が所有者となっています。庭は生き物なので、継続的な手入れが欠かせません。長い年月の間には、庭の木が成長しすぎてバランスが崩れたり、あるいは枯死したりといった事態も起こります。また、作庭当時に比べて夏の暑さが一層厳しくなるなどの気候の変動に対応し、一部植物のチョイスを変えるなど、常に調整が必要です。所有者はニコルがつくり上げた庭園のエスプリを尊重しつつ、今も大切に庭を育て続けており、見学も可能です。 何歳からでも庭づくりを 70歳からの作庭で、いくつもの名園をつくり上げたニコル・ド・ヴェジアン。デザイナーとしての素養と慧眼のうえに、晩年の彼女に目覚めた自然への愛、庭づくりへの情熱が生んだ、彼女独自のプロヴァンス・スタイル・ガーデン。そうして生まれたガーデンは、彼女が亡くなってからも、多くの人々を魅了し、世界中に影響を与え続けています。
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福井県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪31 福井「開花園」
お客さまを裏切らないための努力が 随所から伝わるショップ 福井市中心部から車を10分ほど走らせた、広々とした区画エリアに位置する「開花園」。道路に面した間口の広いショップは、車中からでも色とりどりの風景が楽しめます。 開花園は、「特別な記念日やプレゼントだけでなく、日々の暮らしに気軽に花を取り入れてもらいたい」という思いからオープンしたショップ。それから40年ほど経ちますが、いまだオーナーの三国哲弘さんの当初からの思いを強く感じることができます。 奥行きのある花苗売り場には、花壇・寄せ植えにおすすめのたくさんのポット苗がずらり。「お客さまの信頼に応えるため、『品質・鮮度・産地』にこだわっています。植物にも人間同様、一つひとつ個性があるので、国内外問わず生産者のもとを訪れ、育てている環境や想いを聞き、学ぶようにしています」と三国さん。 都会のショーウィンドウのような 飽きのこないコーディネートも魅力 ショップの雰囲気作りも、随所にこだわりがたくさん。建物や什器は、三国さん自身がデザインしています。かつて石川県のフラワーデザイン・冠婚葬祭の装飾に携わっていただけに、ディスプレイはお手のもの。現在の場所に開店して約17年経ちますが、大掛かりなリニューアルを9回も重ねており、日々磨いている感性や知識をその都度反映させています。 細長い敷地の奥には多肉植物や低木などの売り場があります。タープを広げた頭上にもたくさんのグリーンが下がり、囲まれ感がたっぷり。心地よい気分でショッピングが楽しめます。 建物内はインドアグリーンや雑貨、切り花の売り場。「開花園」ではインドアグリーンの普及に取り組んでおり、品数だけでなく珍しい植物も揃っています。 「日本やヨーロッパでは鬱になる人が多いですが、途上国などは鬱になる人は少ないんですよ。その理由は、途上国は自然が多いことと、過ごす空間が広いことから。冬も長くて空間が狭いイギリスでは、環境によるストレスを改善するために、国を挙げてガーデニングに力を入れたんですよ」と三国さん。 日照時間が少なく、降水量は全国でもトップ3に入る福井県。「だから観葉植物を部屋に置いて、心に潤いを与えることがとても大切」と三国さんは考えています。 開花園では、日々の生活に緑を取り入れることと、五感を刺激することを積極的に提案しています。店内では水槽に注ぐ水が澄んだ音色を響かせています。 もう一つのモットーが、ワクワク感のある店づくり。ディズニーランドのような高揚感を演出したい! と、細長い店舗内を上手に区切って雰囲気を変え、次々に新鮮な空間を展開しています。 開花園の前身は、父が始めたショッピングモール内の切り花店。実家を継いだ三国さんは、数年で売り上げを大きく伸ばしました。大きな理由は、積極的に声掛けをすることと、分かりやすいポップをつけること。ときどき都会に刺激をもらいに出かける三国さんは、都内・デパ地下での威勢のよい声掛けを目の当たりにしたり、八百屋のポップの数字の見やすさに感心したりすることが多く、それが自身の店の改善につながりました。日々、あらゆることにアンテナを張りながら過ごす向上心が、数字として表れたのです。 店のディスプレイもこまめにチェンジ。1カ月後に訪れると、また違う風景が楽しめるそう。「店の中がいつも同じじゃつまらないよね。表参道なんかのハイブランドなんて、数週間単位でウィンドウのディスプレイが変わるもん。いつ歩いても楽しいよね、表参道って」。 常にお客様目線でていねいに。 立ち寄りやすいショップを目指して ショップ前のウォールもいつも花できれいに彩られています。用がなくても、また年配の方も入りやすいように、「身近感」を大切にしています。 ショッピングモールから今の場所へ移転し、ゼロからスタートした「開花園」。時代に合わせて日々変化し、求められているものをいつでも提供できるよう店舗を拡張。あらゆる面でパワーアップを図っています。 開花園・三国哲弘さんイチオシはコレ! 開花園YouTubeチャンネル おすすめの季節の植物とその簡単なポイントは、店内の掲示板でお知らせしています(左)が、もっと具体的なことは、インスタグラムやフェイスブック、YouTubeでご紹介しています。特におすすめなのは「開花園」のYouTubeチャンネル。三国さんが植物の育て方や魅力をていねいに紹介しています。旬を迎えた人気花のQRコードは、掲示板に紹介されています(右)。来店の際にぜひご活用ください。 「お客様の反応や頂いた評価は店の現状。いつもお客様目線で、‘豊富な品揃え、きれい、ていねいな接客’を心がけています」と三国さん。地域の人々に癒やしの場を提供するべく、品揃えだけでなく五感で楽しめる空間づくりに力を入れています。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、北陸自動車道・福井北ICから車で約5分。 【GARDEN DATA】 開花園 福井県福井市高柳町1-808 TEL :0776-53-8739 営業時間:10:00~18:00 定休日:火曜日 https://kaikaen.com/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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兵庫県

花の庭巡りならここ! 世界水準の熱帯植物コレクションを誇る「兵庫県立淡路夢舞台公苑温室 あわじグリー…
日本最大級の温室植物園へ出かけて 世界のユニークな植物たちと出会おう! 「兵庫県立淡路夢舞台公苑温室 あわじグリーン館」は、2000年に世界的建築家・安藤忠雄氏の設計によって造られた温室植物園です。元は関西空港などの建設のために大規模な土砂採掘が行われた跡地でしたが、「人と自然が共生する場」を目指し、緑豊かな植物公園に整備。温室植物園は、長らく憩いの場として人々に愛されてきました。 それから20年が経過したのを機に館内をリニューアルし、2021年9月に再オープンしました。新たにプロデュース・リーダーとして迎えられたのは、現館長の稲田純一氏。世界文化遺産の「シンガポール植物園」を手がけたことでも知られています。新たなシンボルとして設けた、ダイナミックなガーデンキャッスルなど、世界水準の展示を見ることができますよ! 施設内は、展示室を一つずつ楽しみながら散策できる回遊式の造りで、「みどりのちょうこく」「しきさいのにわ」「くらしのみどり」「しんかのにわ」「にぎわいのにわ」の5つのシーンに分けられ、それぞれのテーマに沿った植栽展示が展開されます。 ほかにも「ひかげのにわ」「アトリウム」「特別展示室」もあり、施設内は多様な植物で彩られています。館内を見学するのに、大人の足でゆっくり歩いて40分くらいの規模です。また、これまでになかった「ベビールーム」や、子どもが遊べるプレイエリアの「キッズスペース」も新たに設置、子どもと一緒に楽しめるのもいいですね。 夏休み、ハロウィン、クリスマスなどのイベント期間に合わせ、ディスプレイも変化していきます。また、お正月飾りの苔玉づくりや多肉植物の寄せ植え、アロマセラピー、プリザーブドフラワーアレンジなどの教室も開催。今後は、館内のガイドツアーも定期的に行う予定です。 施設内には「温室カフェ」があるので、「少し歩き疲れたな」と思ったら休憩もできますよ! またオリジナルグッズを販売するショップで、お買い物を楽しむのもいいですね。人気商品は、オリジナルキャラクターがプリントされたトートバッグ(1,000円)です。 ここまで、「兵庫県立淡路夢舞台公苑温室 あわじグリーン館」の概要についてご紹介してきました。次項からは、主な展示室や施設について、写真とともに詳しくガイドしていきます! 息を呑むようなフォルムの美しさ! 展示室1「みどりのちょうこく」 写真一番奥のアロエ・ディコトマは樹齢320年で、その圧倒的な生命力を目の前に感動を覚えることでしょう。そして左右に従えるのは、左が手前からフルクラエア・ギガンティア、ディオーン・スピヌロスム、アガベ・サルミアナ。右が手前からアロエ・ディコトマ、プヤ・チレンシス、エキノカクタス・ゲルソニイ。いずれも造形の美しい植物ばかりで、人の心を捉える強い引力を持っています。 展示室1「みどりのちょうこく」では、サボテンやユーフォルビアなどの多肉植物を152種類も植栽。原産地の気候によってこれほど姿形を変えるのかと驚かされる、生命保存の戦略も見どころの一つです。写真のエキノカクタスは、ボールのような姿が愛らしいですね! 熱帯から亜熱帯の植物が見られる展示室2「しきさいのにわ」 展示室2「しきさいのにわ」は、熱帯〜亜熱帯に自生している植物を集めています。天井に届くほどに枝葉を伸ばしているヒカゲヘゴは、シダ植物の一種。約1億年前から生息してきたとされ、恐竜たちが闊歩していた時代に思いを馳せることができます。 ここは「しきさいのにわ」と名付けられているように、熱帯〜亜熱帯原産の多彩な花を咲かせる植物をコレクションしています。主にラン科の植物が多く、写真の紫の花はバンダ。一年を通して開花するように室温が調整されており、いつ訪れてもトロピカルな美しい花々を愛でることができます。亜熱帯の植物らしく緑の濃い大きな葉を繰り広げる植物群と、カラフルな花々との色のコントラストも見どころです。 身近な植物で構成する、展示室3「くらしのみどり」 展示室3「くらしのみどり」は、日本の庭文化を表現するエリア。新緑・開花・結実・紅葉と四季によって表情を変えていく雑木や、その足元を彩る下草などを緑量たっぷりに植栽しています。江戸時代に花開いた園芸文化によって、日本では斑入りの植物への人気が高まり、多様な品種が生まれました。この展示の下草には古くから愛されてきたツワブキやハラン、ギボウシなど斑入りの植物が多数選ばれ、どこか懐かしい雰囲気が漂っています。写真のテラス席でくつろぐことも可能です。庭づくりのヒントが見つかりそうですね。 植物たちの進化の過程をたどる展示室4「しんかのにわ」 展示室4「しんかのにわ」では、名前の通り「生きた化石」といわれる植物たちを見ることができます。古生代後半、シルル紀に登場していた古生マツバラン(現生のマツバラン類と系統は異なるとみられる)、石炭紀には登場していたと推定されている植物・リュウビンタイやトクサ、三畳紀~ジュラ紀に現れたソテツなどを植栽。また、兵庫県・吉川で産出された珪化木(けいかぼく)も展示しています。生物の進化は恐竜や人類に目が向けられがちですが、植物も同様に長い年月をかけて進化してきたことが分かります。 ガーデンキャッスルやアーチに注目! 展示室5「にぎわいのにわ」 展示室5「にぎわいのにわ」のシンボルは、写真中央に見える高さ約8mのガーデンキャッスル。黄色い花のオンシジウムが満開となり、見応えのあるシーンをつくっています。ガーデンキャッスルの花は季節によって模様替えされるので、何度でも訪れたいですね。 ガーデンキャッスルの骨組みは淡路島産の真竹を使用。1本の竹に3本の柳を添えて作られており、柳の葉が茂るにつれて印象が変化します。竹の自然なしなやかさを利用した、キャッスルの美しいカーブにもぜひ注目してください。 「にぎわいのにわ」は4つの園路で構成されています。オンシジウムが仕立てられた6個のアーチが連なる約30mの小道をはじめ、ゴクラクチョウカ、プルメリア、アンスリウムと、歩みを進めるごとに異なる景色を楽しめます。 冬には、館内各展示室でライトアップが行われます(2021〜2022年は11/20~1/16)。開館と同時に点灯され、特に曇りや雨の日など、屋外が暗いときにはよく映えます。一番のおすすめは、日没のタイミング。少しずつ日が暮れるにつれ、ライトアップに展示物が浮かび上がっていく様子を楽しめます。2021年は、12月3~26日の金・土・日のみ、夜21時まで開館時間が延長されますよ!(最終入館は閉館の30分前) 休憩スペースやスタンドカフェがあるので、ひと休みもOK! 写真は中2階にある休憩スペース。奥の特等席からは晴天の日に大阪湾が望めますよ! 図書コーナーもあり、子ども向けの図鑑など植物に関する書籍が置かれています。大人向けには多肉植物のアレンジを提案した本やレイ作りの本、庭づくりのアイデア本、海外のガーデニング本なども。ちょっと歩き疲れたら、休憩をかねての読書もいいですね。 温室内にはカフェスタンドもありますよ! 営業時間は11~17時(ラストオーダー16時30分)。主な価格帯は250~450円くらい。メニューのラインナップはアイス/ホットコーヒー、紅茶、ハーブティー、オレンジジュース、ソフトクリームなど。 カフェスタンドで人気が高いのは、写真左の淡路島牛乳ソフトクリーム(350円)や、写真右の淡路島牛乳レモンラッシー(420円)、瀬戸内レモンスカッシュ(420円)など。防カビ剤不使用で、無農薬・ワックス不使用の平岡農園産レモンを使用しています。 Information 兵庫県立淡路夢舞台公苑温室 あわじグリーン館 所在地:〒656-2306 淡路市夢舞台4 電話番号:0799-74-1200 https://awaji-botanicalgarden.com アクセス: ・JR三ノ宮駅、JR神戸駅下車、東浦BT行き高速バス ⇒ 淡路夢舞台前(片道950円) ・JR舞子駅、山陽電鉄舞子公園駅下車、東浦BT行き高速バス ⇒ 淡路夢舞台前(片道520円) 営業時間:10:00~18:00(最終入館17:30) 入園料:大人750円、70歳以上370円(要証明)、高校生以下無料 ※特別展開催時は入館料が変更となります。 駐車場:グランドニッコー淡路地下駐車場1日/600円(1回) ※2026年4月1日から駐車料金は1日700円となります。 【当館より来場のみなさんへ、新型コロナウイルス感染症対策のお願いごと】 ◆ ご来場の際には、マスクの着用をお願いします。着用されていないお客様は受付にて販売しております。(1枚50円) ◆ ご来場の際には、入口に設置しております、消毒液にて手指の消毒をお願いします。 咳エチケット、こまめな手洗いの徹底にご協力ください。 ◆ スペースのあるエリアで人との距離が十分に保てる場合は、マスクを外すなど熱中症等にお気を付けください。 ◆ 体調のすぐれない方は、ご来場をお控えいただいています。 ◆ できる限り少人数にわかれてご来場ください。 ◆ できる限り混雑する時間帯を避けてご来場ください。混雑時は入場制限を行う場合がございます。 ◆ 館内は定期的に換気を行っておりますが、他のお客様と密着しないよう、一定の距離を保つようにお願いします。 ◆ エスカレーターやエレベーターをご利用の際は、適切な距離を保ってくださいますようお願いします。 ◆ゴミなどについては、所定のゴミ箱をご利用ください。 ◆ご来館時、入口に掲示しております「兵庫県新型コロナ追跡システム」への登録及びQRコード読み込みにご協力お願いします。
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東京都

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪30 東京「PROTOLEAF(プロトリーフ)玉川高島屋S・C ガーデンア…
環境も立地もバッチリ 訪れやすい園芸店 閑静な高級住宅街エリアにある「PROTOLEAF(プロトリーフ)玉川高島屋S・C ガーデンアイランド玉川店」。玉川髙島屋S・Cの別館で、アウトドアショップやペットショップなどが併設される「ガーデンアイランド」の2階にあります。 明るい自然光が降り注ぐ店内は温室のように植物が茂る、瑞々しい空間。総合ガーデンセンターというだけあって、広々としたフロアには、ガーデニングライフを楽しくしてくれるアイテムがずらりと並んでいます。 「PROTOLEAF(プロトリーフ)玉川高島屋S・C ガーデンアイランド玉川店」は培養土の製造・卸し会社、プロトリーフ社の直営店。「緑ある暮らしを、もっと素敵に」をコンセプトに掲げ、お客さま一人ひとりに喜ばれるサービスを提供しています。「ビギナーのお客様が多いのですが、高品質なことはもちろん、接客とフォローに力を入れ、常に‘もっと愛される園芸店’を目指しています」と店長の佐藤健太さん。 ここは住宅街も擁しながらも自然が美しく調和するエリアで、住環境に対する意識の高い人が多い街。それだけに、店頭に並ぶインテリアグリーンは丈夫で見栄えのよいものが揃っており、人気の観葉植物フィカスの大鉢は10種類近くもあります。 ここ数年人気なのは、ガラスのビンに苔などのグリーンを入れて楽しむ苔テラリウム。小さなガラス瓶の中に広がる苔の小宇宙は、眺めているだけで癒やされます。完成品だけでなく、苔や砂、ガラスの容器など、これから作るのに必要なものが揃っています。 自社の培養土だけでなく他社製品も含めて、たくさんの培養土・土壌改良剤が並ぶコーナー。最も使う頻度が高い「花や野菜用」「観葉植物用」の培養土は、大・中・小の袋が用意されています。さすが培養土会社、充実したコーナーです。 マンションなど集合住宅でベランダガーデンを楽しむお客様が多いため、さまざまなスタイルの大きな鉢も多く取り揃えています。 開放感たっぷりの 屋外の花苗売り場 緑豊かな住宅街に面した細長い花苗売り場には、季節の草花がずらりと並んでいます。段差をつけた什器は腰高で選びやすい設計。日当たりと風通しがよく、花苗は健やかな状態に管理されています。 異国情緒が漂う 充実の樹木コーナーも必見! インドアプランツや花苗同様、樹木類の品揃えも充実しています。特に力を入れているのがオージープランツと果樹。取材時は秋で、柑橘系が丸い実をたわわにつけていました。「集合住宅のお客様も多いので、落ち葉に配慮するとベランダでは常緑樹のほうがおすすめ。落葉樹は自然な趣が楽しめるモミジなどの雑木を揃えています」と佐藤さん。 樹木類は細長い通路の両脇に。大小さまざまな樹木たちがまるで花壇に植わっているように陳列され、美しい小道のような風景が楽しめます。 左/メラレウカなど、葉の細かい種類を集めたオージープランツコーナー。 中/オージープランツのセルリアの花やグレヴィレアの斑入り葉で、シーンを明るく。 右/アデナンサス×ヒューケラで、ユーカリのプラ鉢を美しくカバー。 左/希少なミモザアカシア(オールリーフワトル)。アカシアでは珍しい、四季咲きの細い枝葉品種。 中/やさしい色合いの花が魅力のグレヴィレア‘ピーチ&クリーム’。 右/庭に1本あると何かと便利なユズ。 庭の雰囲気を高めてくれるアイテム使いのアイデアも、あちこちに散りばめられています。リーフを上手に使った甘くなりすぎないコーディネートがプロトリーフ流。 リフレッシュ効果抜群! 植栽が美しいルーフガーデン 近所の人たちの散歩コースにもなっているプロトリーフのルーフガーデン。屋上だというのに大きな木がたくさん植わって、地上の公園さながらのボリューム感です。春の芽吹きや秋の紅葉など、季節の彩りが人々の心を和ませています。 ベンチがたくさんあるので、買い物の後のひと休みにうってつけ。野菜やハーブの苗はここに並んでいます。 大きな木の下には、のどかな雰囲気の小さなキッチンガーデンが。野菜を庭に取り込む楽しさを伝えつつ、その成長過程を見せてくれます。 ワンランク上の選りすぐりの 植物が並ぶ、新エリア登場 2021年3月、地下2階に新たにグランドオープンした「PROTOLEAF SELECTIONS(プロトリーフセレクションズ)」。ガラスの建物内には、近年人気のサボテンや多肉植物、ユニークな珍奇植物や大型の観葉植物が、外のエリアには、主におしゃれな庭づくりにおすすめの樹木が並んでいます。 ガラスの店内は無機質なしつらえで、メンズライクにコーディネート。どこかラボ的な雰囲気が漂います。 プロトリーフ「niwa-kura」では、庭のデザイン・施工からリフォーム、庭木やバラのメンテナンスまで相談を受けています。相談カウンターが設けられているので、気軽に利用してみて。 2021年でオープン13年目を迎える「PROTOLEAF(プロトリーフ)玉川高島屋S・C ガーデンアイランド玉川店」。定期的にフェアやワークショップを開催しているほか、WEBの「Youtubeプロトリーフチャンネル」でガーデニング講座を発信し、園芸の楽しさを伝えつつ徹底したフォローを心がけています。ビギナーからマニアまで楽しめるショップ、ぜひ訪れてみてください。アクセスは、東急田園都市線「二子玉川駅」から徒歩約4分。 【GARDEN DATA】 PROTOLEAF(プロトリーフ)玉川高島屋S・C ガーデンアイランド玉川店 東京都世田谷区瀬田2-32-14 玉川高島屋S・C ガーデンアイランド2F TEL :03-5716-8787 営業時間:10:00~20:00 定休日:1/1(元日)のみ休館 https://www.protoleaf.com/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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神奈川県

女性たちに輝きと透明感を授ける、ルネ・ラリックの麗しき世界
ガラス工芸家ルネ・ラリック 洗練されたジュエリーやガラス工芸で知られるルネ・ラリック。19~20世紀の装飾美術工芸史のなかで、アール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代にわたり活躍しました。日本では、アール・デコ様式の旧朝香宮邸・現東京都庭園美術館の正面玄関のガラスレリーフ扉やシャンデリアなどを手掛けています。 ラリックは1860年、シャンパーニュ地方マルヌ県の小さな村アイに生まれ、ブドウ畑が広がる自然豊かな地方で育ちました。16歳のときに母の勧めで、パリの宝飾職人に弟子入りすると同時に美術学校に進学。パリではオペラ座が建てられるなど、華やかな時代で、ラリックの自然を注意深く観察して培われた感覚は、日本美術(ジャポニスム)や古代ギリシア・ローマのエキゾチックな雰囲気などに刺激され、どんどん磨かれていきました。 装飾柵「蝶の女」(左)/木版画「ラリックのウィンドウ:万国博覧会Ⅲ(フェリックス・ヴァロットン作)」(右) 着実に実力をつけたラリックは、1882年からパリでカルティエ社やブシュロン社などの高級宝飾メーカーのジュエリーデザインの下請けも手がけるようになります。1885年には自分の工房を持つ宝飾作家として独立。大女優サラ・ベルナールも顧客に名を連ねるほどの成功を収めたラリックは、1900年のパリ万博に出品(「装飾柵・蝶の女」など)。東洋やオリエンタル文化の影響を多大に受けつつ、自然をモチーフとした斬新なデザインで訪れた人々をあっと驚かせ、彼の展示ブースは多くの人でごった返しました。 コサージュ「バラ」 ジュエリーにはもっぱら高価なダイヤモンドやルビーが使われていた時代、ラリックは自分が持つイメージを形にするために、エマイユ(七宝)、獣角、ガラスなどの価値は低いが加工のしやすい素材を積極的に用いて、モチーフである植物や昆虫などをリアルに再現。蝶やトンボの羽の薄さ、花の質感や女性の肌の透明感など、精緻な技術による豊かな表現は、パリ中に絶賛されました。柔軟かつ斬新な発想で今までの概念を大きく覆し、‘モダンジュエリー’のスタイルを確立したのです。 チョーカーヘッド「オリーブ」 かつては上流階級層が文化の中心となっていましたが、列車が走るようになったこの頃から一般大衆が活躍する時代に突入。多くの人が豊かな文化を享受できるようになったため、各業界はスピード感と量産が必要となりました。ビジネスの感覚をしっかり持ち合わせていたラリックも、多くの女性に自分の作品を届けるために、時代に合わせた作品づくりに舵を切ります。 香水瓶「四つの太陽」 ラリックは1910年頃からガラス作品の制作に力を注ぎ始めます。それまでのジュエリー制作は一点一点の手作りでしたが、機械を導入してのプレス成形や型吹き成形により量産ができるガラス作品制作は、時代に合わせつつも、彼の高い芸術意欲を叶えるものでした。 香水瓶「シクラメン」 ラリックの表現力を高く評価した化粧品ブランド「コティ」に香水瓶の制作を依頼されたことをきっかけに、以後さまざまなブランドの香水瓶などを手掛けるようになりました。ブランドから依頼されたものは、その会社のカラーが色濃く反映されていますが、自身の「ラリック」ブランドは、多少手間のかかる手法も取り入れ、自由度の高い作品を制作しました。 花器「バッカスの巫女たち」 その後、ラリックは花器などの小品から照明、ガラスのウォールなど建築のための大作までを手がけました。時代はアール・ヌーヴォーからアール・デコに入り、1925年のアール・デコ博覧会では、ガラスの噴水塔「フランスの水源」をメイン会場に制作したり、自社のパヴィリオンを出展するなど、時代を代表するガラス工芸家としての絶対的な地位を築いたのです。 装飾パネル「花束」 そのほかの魅力的な ラリックの作品をご紹介! ブローチ「シルフィード(風の精)、あるいは羽のあるシレーヌ」 ベッドサイドランプ「日本の林檎の木」 香水瓶「香水A(または香水N)」 ペンダント・ブローチ「ユリの女」 ペンダント・ブローチ「冬景色」 カーマスコット「孔雀の頭」(左)/「トンボ」(右) 灰皿「鈴蘭」(左)/「雀」(右) 自然豊かな「箱根ラリック美術館」で約230点の作品に触れる アール・ヌーヴォーからアール・デコにわたって一世を風靡したラリック。そのしなやかな感性が生み出した、数々のアクセサリーやガラス工芸。眺めているだけで、フランスの優雅な文化と時代の香りに浸ることができます。ラリックの作品約230点の作品を所蔵する「箱根ラリック美術館」で、ぜひこれらの作品を鑑賞してください。庭の池の周りには、さまざまな草花が咲きこぼれています。カジュアルフレンチ料理が楽しめるカフェ・レストランも併設されているので、箱根の自然と季節の味を満喫しながら芸術に触れてみませんか。 Information 箱根ラリック美術館 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186番1 TEL:0460-84-2255 開館時間: 9:00~17:00(美術館入館は16:30まで)/2021年12月1日より9:00~16:00(美術館入館は15:30まで) 休館日:2021年12月1日より毎月第3木曜日(但し8月は除く) 駐車場:無料(80台) 取材・写真協力:箱根ラリック美術館 Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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鳥取県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪29 鳥取「ラブリーガーデン」
イギリス風しつらいとバラが 訪れる人を魅了するショップ 米子駅と空港をつなぐ街道沿いに店を構える「ラブリーガーデン」。鮮やかなバラと草花が店先を彩っています。ここは、花の庭づくりでおなじみのガーデンデザイナー・安酸友昭さんのショップです。 店内には、自然な石積みの花壇やおしゃれなガーデンアイテムが散りばめられており、バラや草花と見事な調和を見せています。 「ラブリーガーデン」は2007年にオープンし、今年で15年目。安酸さんは大阪の園芸の専門学校で造園を学んだあと、地元の造園会社に入社。日本の作庭のノウハウや知識を深める中で、イギリスの庭の魅力を発見。本場の園芸を学ぶために退社し、思い切って留学しました。当初は英語も全く分からないところからのスタートでしたが、園芸と造園の知識がある安酸さんは次第に要領を得て、2年でイギリスのガーデニング技術者国家資格(NVQ)を取得。自身の店を開く夢を抱きながら帰国しました。 帰国後の2007年、庭づくりを請け負う「ラブリーガーデン」を設立。イギリスの資材を輸入する知人から材料を取り寄せながら、留学で吸収して磨いた知識と感性をフルに活用し、庭づくりをスタートさせたのです。その後、モデルガーデンのある実店舗を開くために、かねてから信頼していた知人のガーデナー・関聡子さんに声をかけ、二人三脚でショップをオープンさせました。 ラブリーとは「素敵な」「愛らしい」という意味。自分たちが‘素敵’と思ったものを揃えて、「お客様がラブリーな時間を過ごせる場になれば…」という思いが込められています。 安酸さんは2010年に、英国ドライストーンウォーリング協会認定の石積み技術の資格も取得します。これは、コッツウォルズストーンと呼ばれるハニーカラー(蜂蜜色)の石を、機械類を一切使わずに、ハンマーや石ノミで調整したり、モルタルなどの接着剤を使わずに手積みする技術で、強度に優れています。そんな技術を活用しながら、安酸さんらしくつくり上げたというモデルガーデン。米子の風土に合う草花を植えたナチュラルな花壇や、ぬくもりあふれる小屋が、訪れた人の目を楽しませています。 イギリス風の庭づくりで欠かせないのが、アンティークなどの古いアイテム。時間を経たような情趣のある演出が、庭の表情を深めています。 ロッジのような建物の前には、植栽花壇が設けられています。園路や花壇の立ち上がりに用いた自然石が用、季節の草花とともにナチュラルな風景を生み出しています。 このガーデンの見せ場の一つが、建物に面した大きな池。防水シートを敷いて作った人工の池とは思えない、自然な風景が広がっています。水は注いで循環させるのではなく、雨水をためるだけという自然まかせ。すぐにカエルやトンボが生息するようになり、今ではさまざまな生物の棲む完全な生態系・ビオトープが出来上がっています。 雨の日もゆっくり買い物できる 屋内には、花苗と雑貨がいっぱい 建物の中は、色とりどりの花苗売り場。安酸さんが選んだ花苗だけに、庭づくりや寄せ植えにピッタリのものばかり。屋根があるおかげで雨が当たらず状態も抜群で、悪天候の日でもゆっくり買い物ができます。 施工現場に出ていることが多い安酸さんを支えながらショップを守っているのは、草花とバラの知識が豊富な関さん。栽培法や寄せ植えの苗選びなど、分からないことがあったら親切にアドバイスしてくれます。 イギリス製の鉢をはじめ、ジョウロや手袋などの雑貨類も充実。おしゃれにガーデニングを楽しむのに必要なものが揃っています。 ショップ内のあちこちに置かれた寄せ植えにも注目。小花を使った繊細な花合わせを得意とするラブリーガーデンのアレンジは、どこに置いても主張しすぎず、ふんわり上品な雰囲気を湛えています。 庭づくりと併せて寄せ植え作りも依頼されることが多い「ラブリーガーデン」。飾りたい場所にピッタリのサイズと雰囲気のアレンジを作ってくれます(写真:面谷ひとみ邸)。 苗売り場で見つけた 素敵なバラたち 関さんがセレクトした育てやすい品種がずらりと並ぶバラ苗コーナー。取材時に咲いていた魅力的な品種をご紹介します。 左/‘ビアンヴニュ’(デルバール):H1.8m、超強香、四季咲き 、中大輪ロゼット咲き 中/‘ザビエル・フライシネッテ’(ギヨー):H0.8m、強香、返り咲き、中輪ロゼット咲き、丈夫 右/‘スピネル’(タンタウ社):H0.9m、微香、四季咲き、中輪ロゼット咲き 左/‘ストロベリーアイス’(デルバール): H1.4m、微香、四季咲き、中大輪丸弁咲き 中/‘シャリマー’(ロサオリエンティス):H1.3m、中香、四季咲き、中輪ロゼット咲き 右/‘シャルル・ドゥ・ミル’(オールドローズ):H1.5m、強香、一季咲き、中輪房咲き 左/‘マドモアゼル’(デルバール):H1.2m、微香、四季咲き、小中輪半八重房咲き、丈夫 中/‘サマードリーム’(フライヤーローゼス):H2.0m、微香、返り咲き、中輪カップ咲き 右/‘ペネロペイア’(ロサオリエンティス):H1.6m、強香、四季咲き、中輪波状弁咲き 左/‘ブリリアントピンク・アイスバーグ’(ウェザリー): H1.4m、微香、四季咲き、中輪弁半八重咲き、丈夫 中/‘舞妓’(禅ローズ):H0.3m、微香、四季咲き、小輪八重房咲き 右/‘クラシック・チュチュ’(ロサオリエンティス):H1.2m、中香、四季咲き、中輪波状弁咲き 左/‘キルケ’(ロサオリエンティス): H1.2m、強香、四季咲き、中輪ロゼット咲き 中/‘シャトー・ドゥ・シュベルニー’(デルバール):H1.5m、四季咲き、中輪カップ咲き、丈夫 右/‘モチーフ’(河本バラ園):H0.9~1.4m、微香、四季咲き、小輪半八重房咲き 左/‘クレディ・ミチュエル’(ドミニクマサド): H1.0m、中香、四季咲き、中輪カップ咲き 中/‘アントニオ・ガウディ’(井上謙二):H1.2m、微香、返り咲き、大輪カップ咲き、丈夫 右/‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’(オールドローズ):H6.0m、微香、一季咲き、小輪八重房咲き 左/‘アルテミス’(タンタウ):H1.8m、中香、四季咲き、中輪カップ房咲き 中/‘アリュマージュ’(ロサオリエンティス):H1.5~1.8m、微香、返り咲き、中輪波状弁咲き 右/‘バロン・ジロー・ド・ラン’(オールドローズ):H2.0m、中香、返り咲き、中大輪カップ咲き 英国風庭づくりならおまかせ! 日本の風土に合った庭づくり イギリス留学で得た知識を無理なく日本の風土に取り込むには、日本での庭づくりの知識があってこそ。その強みを生かしつつ、自身のセンスを存分に発揮して、庭づくりをしています。 イギリスの資材だけでなく、日本の石なども使いながら、温かみのある庭づくりをしている安酸さん。お客様の予算やメンテナンスに割ける時間などを考慮しながら、必ず自分らしいアイデアを盛り込んで、庭をデザインしています。 安酸さんのイチオシ ウィリアム・モリスの鉢 19世紀半ばにイギリスで興ったアーツ・アンド・クラフツ。その運動の指導者だったウィリアム・モリスのデザイン画が描かれたコンテナです。落ち着いた地色に、ブルーまたは濃緑の彩色。絵柄は3種類。「どんな植物ともなじみよく、より上品に見せてくれます」 庭づくりのプロと植物のプロがタッグを組んでスタートしたラブリーガーデン。2人でコツコツと店を育てながら、日々お客様の暮らしに彩りを添えています。バラの時期は、300株の苗が並びます。ぜひ訪れてみてください。アクセスはJR境線三本口駅から徒歩約10分。 【GARDEN DATA】 Lovely Garden(ラブリーガーデン) 鳥取県米子市両三柳839 TEL:0859-24-1500 営業時間:10:00~17:00 定休日:火曜日(祝日の場合は営業) https://www.lovely-garden.jp/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 写真/3and garden
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北海道

北海道のガーデンを堪能する「秋のダリア旅」後編
私の北海道の旅のベースともいえる旭川 この年の一人旅では、駅ビルの中にあるお気に入りのホテル「JRイン旭川」に連泊して、そこを拠点に、あちこちのガーデンに足を運びました。 早朝、ホテルを出て駅のコンコースを南口に抜けると、もうそこは、「北彩都ガーデン」。 ボーダー花壇やテラスが広がっているのですが、私はそこから足を伸ばしてさらに東に向かい、鏡池プロムナードを散歩。「神人の森」と呼ばれるボーダーガーデンやメドウガーデン、ハーブガーデンなどが広がる場所へと移動しました。 上写真の、一番奥に見える白い建物が旭川駅です。「神人の森」にダイナミックに群植された宿根草の美しさが際立っています。 10月上旬の旭川の気温は1桁になることもあり、朝の透き通った空気が、さらに花の色に透明感をプラスしているような気がします。 駅から直結のこのガーデンには締め切られたゲートも無いので、早朝からの見学には最適。私のように一日に何カ所ものガーデンを見たいと思う時間節約派には、とてもありがたいガーデンです。 夏のガーデンツアーでも、早朝にこのガーデンを散歩して、帰り道にあるスタバで朝ごはんをしましたが、このルートは定番になりつつあります。 旭川市内から車で1時間ほどの「大雪 森のガーデン」へ 次に大雪山系でもっとも美しいといわれる大雪高原旭ヶ丘にあり、旭川市内から車で1時間ほどの「大雪 森のガーデン」へと向かいます。 「大雪森のガーデン」は、約900種類の色とりどりの草花が楽しめる「森の花園」、起伏のある空間に従来からこの地に生き続ける樹木や山野草が植えられた「森の迎賓館」、深い森の中に広がる空間に自然をひとり占めできるアトラクションを配した「遊びの森」の3つのゾーンで構成されています。大雪は旭川市内より遅く春が訪れて秋も早いので、雪が降りまた眠りにつくまでの短い数カ月間に命を謳歌する植物のパワーが爆発するようで、美しいガーデンだと私には思えます。 夏にはカンパニュラが、こうして置かれていたので、友人へのお土産にしました。 旭川3つめの訪問先は「上野ファーム」 「大雪 森のガーデン」からは40分ほどで着くので、私はこのルートを使うことが多いのですが、もし帯広方面から旭川に移動する場合は、「大雪 森のガーデン」までは美しい白樺並木が続く上士幌や糠平湖を経由するR273を通るのがおすすめです。 秋は9月末頃だと三国峠の大樹海の美しい景色や層雲峡の紅葉も楽しみです。 「上野ファーム」は大人気のガーデンなので、春から夏に行かれる方は多いと思いますが、秋のガーデンはグラスやシードヘッドが好きな方におすすめです。 秋に咲く花の色は、鮮やかで華やか。紅葉とシードヘッドの中に際立つ秋色の花からは、春にも負けないほどのエネルギーを感じることができると思います。 翌日は旭川を離れて江別へ移動 友人のガーデンをゆっくり見せてもらい、久しぶりにゆっくりとランチを共にしました。 以前は、カフェを併設した雑貨屋さんでしたが、現在はカフェは閉めて、雑貨だけ扱っています。 さらに足を伸ばして小樽から「銀河庭園」へ この頃、緊急事態宣言がちょうど解除され、Go Toキャンペーンが実施されていた時期でした。札幌は人出が多いと思い、あえて観光客が少なそうな小樽を宿泊地に選びました。 宿泊先に選んだのは、アールデコの建築美が残る、ちょっと雰囲気のあるホテル。北海道初の外国人専用ホテルとして昭和6年に建築された小樽市指定歴史的建造物がリノベーションされています。 翌日もお天気に恵まれて、まずは「銀河庭園」へ。 この旅のテーマは「北海道のダリアを見に行く」だったことを急に思い出したかのように、銀河庭園は「ダリア ダリア ダリア」の世界でした。 ある時、紫竹ガーデンで、おばあちゃんに「ダリアはもちろん掘り上げるんですよね?」と聞いたら、「もちろんよ! じゃないと凍っちゃう」とおっしゃっていましたが、これだけの数のダリアを毎年植えては、また掘り上げてという作業量を考えると、すごいなぁという感想しか出てきません。 でも、そんなにしてまで植えたいと思うほど、秋のダリアの存在感は素晴らしいものでした。 千歳川の上流にある「MEON農苑」へ 春の芽吹きから冬の枯れ姿まで、野の草花が主役だというこのガーデン。市松模様に配された石板の間の植栽はシンプル。華やかではないけれど、カフェでお茶をしながら旅を振り返るのにぴったりで、とても好きな場所です。 旅を締めくくるのは「イコロの森」 そして、やはり旅の一番最後には、一人でゆっくり過ごしたい。「MEON農苑」から30分ほどの場所にあるガーデン「イコロの森」に向かいます。 ここでは、ガーデナーさんたちに会って世間話をするのも楽しみですし、フライトの時間までゆっくりガーデンを歩き、ときどきベンチに座ったり、美味しいコーヒーをいただいたりしながら静かに旅を振り返ります。 この年は6日間を過ごした秋の北海道でした。 友人と旅する夏の北海道も楽しいのですが、飛行機とホテルだけ予約しての行き当たりばったりの一人旅はさらに楽しいもの。 夏場はガーデン巡りの時間に追われてゆっくり話せない友人のガーデンで、静かな庭を見ながら何時間も話し込むことができるのも、秋の旅だからですね。 今年はスケジュールが取れなくて行けなかった秋の北海道ですが、来年は必ず行こうと思っています。 ●北海道のガーデンを堪能する「秋のダリア旅」前編はこちら Credit 写真・文/橋本景子 千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.6万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。 YouTube 「Kay garden」 Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/ インスタグラム kay_hashimoto
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フランス

シャンティイ城のガーデニングショー【フランス庭便り】
シャンティイ城のガーデニングショー 秋は暖かな季節の名残を惜しみつつも、来春の植栽などを考え始める、ガーデナーにとってある意味心躍る季節ではないでしょうか。そんな時期、フランスの園芸好きの人々が心待ちにしている年中行事の一つが、ジュルネ・デ・プラント(プランツデー/植物の日)。毎年春と秋に開催されるシャンティイ城のガーデニングショーです。 なぜお城でガーデニングショー開催? シャンティイ城といえば、ルーヴル美術館に次ぐほどレベルの高い美術コレクションや、ル・ノートル設計のフォーマル・ガーデンがあることでも有名なお城です。パリから車で1時間ほど。電車でもアクセスできるので、観光スポットとしても人気です。 そんな場所で、なぜガーデニングショー? と思われるかもしれませんね。このガーデニングショーの発端は、30年以上前に遡ります。最初はクルソン城という別のお城で、全仏植物園協会の会合が開かれた際に、その余興として植物の交換会をやろうという計画が立ち上がります。会員の中にはナーサリーを営む人もいて、最終的には植物の販売会が開催されることになりました。すると、隣国イギリスでしか売っていないと思われていた植物をフランスのナーサリーでも扱っていたなど、さまざまな嬉しいサプライズがあって大成功! これがきっかけとなって恒例開催されることになったのだそう。その後、庭好き・植物好きのクルソン城の城主夫妻が主導して32年続いたガーデニングショーは、シャンティイ城に引き継がれ、この城での開催は2021年で6年目となります。 会場そのものが魅力的 ちなみにフランスのお城は、仏文化省に文化遺産として登録されているものだけでも11,000件。登録されていないものも含めれば45,000件ほどと推測されています(その8割以上は個人所有)。膨大な面積の森と広い庭園に囲まれたフランスのお城は、じつは豪華な結婚式や企業イベントなどに最適な場所として利用されることが多くあります。このガーデニングショーの会場でも、お城の建物や庭園、森の木々を背景に、販売スタンドやショーガーデンが立ち並ぶ風景には、自然の美しさばかりではない非日常感があって、ウキウキ度も倍増です。 遠方のナーサリーの植物を一度に見られる 毎年、春秋の週末3日間に行われるこのガーデニングショーには、いつも2~3万人の来場者があるそうです。まずその魅力の一つは、普段はなかなか見て回ることができない遠方のナーサリーが一堂に集まること。フランス国内だけでなく、ベルギーやドイツなど近隣諸国からも国境を越えて出展者が集まり、全部合わせると180ほどにもなります。 また、ナーサリーの出店資格は専門家コミッティーによって厳正に審査されるので、その質の高さも折り紙付き。普段あまりお目にかかれないバラ専門、アジサイ専門、多年草専門、カエデ専門などさまざまな専門ナーサリーが集まるうえ、おしゃれかつ実用的なガーデニング道具やウェアなどのショップも並びます。 最近はパリ市内でもおしゃれなガーデニングショップが増えてきましたが、季節の植木苗などを購入するのには、一般的なチェーンのガーデニングショップやホームセンターが一番近い、ということも多いのが実情です。そうした一般的なショップでは見つかりにくい珍しい植物がその場で選べるのは、本当に魅力的。そんな訳で財布の紐もゆるゆるになりがちな、大変危険な場所でもあります。 生産者や専門家たちと直接コミュニケーション 遠方のナーサリーが集まっているガーデニングショーは、植物好きの交流の機会であることも大きな魅力です。業界人の間でのコミュニケーションもあれば、顧客側にとっても、直接生産者に質問をしたり、育て方のアドバイスを聞いたりというコミュニケーションの中で仕事への姿勢が分かり、その後彼らの通信販売をなども安心して利用することができます。また、会場では「果樹の剪定の仕方」など、さまざまなワークショップや講演、親子向けのアクティビティなどもプログラムされていますので、ずっと気になっていた植物を入手したり、新しい品種を発見したり、興味のある項目を学んだり、と飽きることなく丸一日楽しむことができます。 シャンティイ城の隠れ名物デザート「クレーム・シャンティイ」 会期中はお城の敷地内、英国式庭園部分の広い芝生のエリアがショー会場となり、出店スタンドのテントなどのほかに、軽食を販売するトラックがいたり、休憩所などが設けられていたり。青空の下でのランチやおやつも完備されています。なかでも有名なシャンティイ城の名物デザートは、元祖クレーム・シャンティイ。 クレーム・シャンティイとは、生クリームを泡立てた、つまりホイップクリームのことなのですが、この城で17世紀コンデ公に仕えた有名な料理人ヴァテールが考案したのが始まりといわれています。すでに18世紀には、シャンティイ城を訪れた海外の王族をはじめ多数のゲストが、庭園内の田舎家風の園亭で軽食の際にサーヴされるクレーム・シャンティイの美味しさに感動の言葉を残していて、その噂は国境を越えて広がっていたとか。 毎回、このガーデニングショーを訪れるたび、植物探しに熱中するあまり、その味を知らずに終わってしまいます。今回は、ぜひこの元祖クレーム・シャンティイを味わってみなければと心に決めていました。ショー会場を少し離れて、アングロ=シノワ風と呼ばれる自然風の庭園の中を歩いて行くと、マリーアントワネットの王妃の村里にあるような田舎家風の園亭が見えてきます。内部は現在レストランになっており、天気のよい日には、庭で食事やお茶を楽しめます。 期待のクレーム・シャンティイは………ボリューム満点、通常のホイップクリームよりさらにしっかりどっしりとした感じで、味が濃くて美味しかったです! 甘みをつけるにはバニラ風味の砂糖を混ぜる。ポイントは極限までホイップすること。それ以上ホイップするとクリームが分離してバターになってしまうという、その直前までホイップするのがポイントなのだそう。定番は、イチゴやフランボワーズなどの赤い果実や、シャーベット、アイスクリームなどに添えて出されるのですが、冷静になってカロリーを考えると、ちょっと恐ろしくもあり。でも、今日はたくさん歩いたから、まぁよしとしよう! と心の中でかなり言い訳をしてしまいました(笑)。 ちなみに私の今回の主な戦利品は、これからが植え時のスイセンなどの春の球根類と巨大なアガパンサス。それに大好きなワイルドチューリップの球根も見つけて大満足です。
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いつもそばに置いておきたい 三条の匠が作り出す、園芸バサミ
古くから育まれてきた 刃物文化とハサミ作り カトラリーや包丁、ハサミなどの金属加工産地として有名な、燕・三条市。このエリアは企業が多く、「ものづくりの町」としても知られています。昔はよく五十嵐川の氾濫による大きな水害に遭い、生活苦を強いられてきた地域で、江戸時代初期に幕府より農民の副業として和釘作りが奨励されたことから、この産業が始まりました。時代の流れとともに燕市は洋食器、三条市は打ち刃物・金物と、それぞれ得意とするものを中心に発展していったのです。 今回訪問したのは、三条でハサミを専門に製造する「小林製鋏」。工場は田園地帯に広がる刃物・金物工場群の中にあります。この会社は、昭和14年に東京・荒川区で医療器具や医療用のハサミを製造する会社として創業。第二次世界大戦末期に実家のある三条に疎開し、鍛冶屋として再開。以来、果樹園芸農家向けのハサミ作りに力を注いできました。最近は、この会社が作る園芸バサミも注目を浴びています。 小林製鋏のハサミ作りの現場 工場から制作過程をレポート 40~50種類ものハサミが日々作られている工場は天井が高く、ずらりと並ぶ機械には、10人ほどの熟練の職人が向かい、妥協のない作業に取り組んでいます。 小林製鋏のハサミは、プレス型を使って量産される製品とは異なり、鋼を叩く鍛造によって1本1本作られています。叩いたり研いだりする加減は、すべて職人の‘勘’が頼り。角度や時間、温度などの微妙な加減を熟練の勘で調整しながら、鋭利な切れ味と強度を作り上げています。 鋼の棒を丹念に「熱し、叩いて、冷やす」という作業を繰り返し、ハサミの形に整えていきます。 組み立てられたハサミはクリップで吊り下げ(上)、取っ手にビニールの被膜を施すために赤い液体の中に浸します(下)。赤いビニール部分が乾いたら完成です。 三代目社長の小林伸行さんが就任時に掲げた社是は‘森羅万象’。「伝統を継承し未来へ行き続けるために考え創造していくこと」、経営理念は「知恵を絞り現状よりも進化させ、お客様に新たな喜びと感動を与えること」、そして社訓は「水のように変化できる、行動・考え方を持つこと」。厳しい姿勢でハサミ作りと向き合う初代と先代から学んだ歴史を受け継ぎながら、現代のスタイルのハサミ作りにも取り組んでいます。近年は、‘越路’のハサミが海外でも高く評価され、欧米などで需要が増えています。 ‘越路’ブランドが買える ショップがオープン! 令和3年春、工場裏のおしゃれな建物に小林製鋏のショップがオープンしました。‘越路’のハサミはホームセンターなどでも購入が可能ですが、種類が多くて違いが伝わりにくいのと、一般の方もハサミの違いを事前に確認できるように、アンテナショップとして設けられました。 4坪ほどの小さな売り場には、果樹園芸用のハサミがたくさん。それぞれの用途は異なり、ミカンやリンゴなどを間引く際に使用する「摘果バサミ」や「新芽を切る芽切バサミ」、「樹木の枝を切る剪定バサミ」などなど多種多様。同じ果物でも産地によって木に含まれる水分量が異なるので、最適な刃の形は違ってくるのだとか。 店内ディスプレイはとてもおしゃれで、ハサミはみな古い木箱に整然と並んでいます。木箱は使い込まれた味わいを放っていますが、これはかつて工場で、油を塗った部品を入れていた箱を再利用したもの。赤いハンドルが美しく映えます。 ショップの前には、手作りの小さなキッチンガーデンが設けられています。ここは、小林さんが園芸用のハサミを研究するための実験場であるとともに、お客さまが切れ味を確認できる場でもあります。小林さんの強く真摯な探求心が垣間見えます。 【ガーデニングにおすすめのハサミ3選】 ◆樹木の剪定に 「剪定芽切鋏」:一般の剪定バサミより細身でコンパクト。女性におすすめ。 全長185mm・刃長50mm・重量約195g ◆草花・ハーブの刈り込みに 「打物 葉刈鋏」:効率的な草花の刈り込みにおすすめ。刃に刻まれた溝により樹液がつきにくく、開閉がスムーズ。 全長225mm・刃長83mm・重量約230g ◆花の収穫に 左/「HARVESTER(ハーベスト)」:コンパクトで軽やかに使える本格派の収穫バサミ。野菜やハーブの収穫、草花や盆栽の芽摘みに。 全長14.5mm・刃長70mm・重量約75g 右/「FLORIST(フラワーアレンジ)」:太いものもしっかり切れる小型の花バサミ。太めの茎や枝の剪定に。 全長160mm・刃長80mm・重量約123g これらの3つのアイテムは、女性でも使いやすく細かい作業がしやすいよう、コンパクトで繊細に仕上げられており、デザインはシンプルで洗練されています。 品質は前出のものと同様、職人が鍛造で仕上げ、強靭なコーティングが施されているので、錆びにくく切れ味抜群。家庭菜園での野菜やハーブの収穫、草花や盆栽の芽摘みなどにぴったりです。日本の職人技が光るおしゃれな雑貨などを扱う「中川政七商店」と協働の製品で、「中川政七商店」のショップでも販売されています。 1本あると作業の効率がアップし、ガーデニングライフを充実させてくれる本格派のハサミ。ご紹介したハサミはどれも丈夫であることはもちろんですが、ていねいに扱いたくなる気持ちにさせてくれます。「ハサミは、料理で使う包丁のように、使ったら毎回中性洗剤で洗ってください。ときどき油をさすとサビが防げ、長く使えます」と小林さん。当サイトでご紹介した『「道の駅 」庭園の郷 保内』でも販売されています。ぜひお試しください。 【SHOP DATA】 小林製鋏株式会社 〒955-0061 新潟県三条市林町1丁目15-21 TEL:0256-32-3583 営業時間:8:00~16:45 営業日:平日 https://www.koshiji-h.jp/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 協力:加藤はと子(道の駅 庭園の郷保内)
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神奈川県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪28 神奈川「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」
花と緑で包まれた 絵葉書のような美しいショップ 大きな公園や図書館など、緑が多い閑静な地域にある「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。アメリカンスタイルハウスと、ファサードを覆うピンク×白の可憐なつるバラが目印です。その愛らしい佇まいは、まるで洋書の1ページのよう。 正面はリーフが美しい低木とつるバラの競演(写真は4月下旬撮影)。植物それぞれが、ほどよい存在感を放ちながら見事な調和を見せています。向かって左側はピンクのつるバラで、右側は白。ショップに入る前から、オーナーの杉山洋さんと真奈美さんご夫婦のセンスのよさがうかがえます。 二人三脚で叶えた ショップ 1991年にオープンした「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。センスのよさとご夫婦の人柄のよさは多くのガーデナーの憧れで、遠方からわざわざ来る人も少なくありません。 オーナーの杉山家はもともとナシ農家でしたが、後継ぎであるご主人の洋さんがシクラメン栽培をスタート。けれどそれだけでは飽き足らず、ハウスの一角にギャラリー風の苗売り場を設置しました。そして、次なる構想を練っている最中に真奈美さんと出会い、洋さんは力強いパートナーを得たのです。 しばらくすると、ギャラリー風のショップでは手狭となったため、新たなショップに建て替えを計画。夫婦でどんな建物がいいかなどの検討を重ねた結果、デザインとコストの兼ね合いで、このアメリカンスタイルに決定。「本当はグレーの倉庫のような男前の建物にしたかったんですけど、当時そのスタイルはちょっと早すぎましたね。でも、私は自然な草花が好きだから、それらになじみやすいアメリカンスタイルでも結果的にはよかったようです」と真奈美さん。柔軟な発想で、自身の世界観を見事に形にしていきます。 ナチュラルにバラが咲く サンプルガーデン 建物脇のアーチ奥に広がる小さな空間は、ショップをオープンさせてから最初にしつらえたサンプルガーデン。リーフの緑とバラの白でまとめられた、瑞々しいスモールガーデンです。長方形の自然石が敷き詰められた床面にバラが絡むパーゴラで構成した空間は、ロンドンの中庭のような佇まい。パーゴラの下に置かれたチェアに座ると涼やかで、居心地がとてもよい場所。 はじめは園芸に興味がなく、洋さんの手伝いをしている程度だった真奈美さん。初歩的な草花の名前も分からないレベルだったとか。けれど、生命力あふれる植物の健気さや美しさに触れるにつれ、庭づくりの世界に強く引き込まれました。その頃ちょうど創刊されたガーデン雑誌の誌面を彩るイギリスの庭などに魅了されたこともあり、真奈美さんのガーデニング熱は一気に加速。今の「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」の基礎が形づくられていきました。 ナチュラルな庭づくりに ぴったりな草花苗がたくさん 真奈美さんが夢中になって読んだ園芸雑誌や洋書などに出てくる花壇の花は、インパクトが強いものが多かったのですが、ショップで販売しているのは、楚々とした草姿やニュアンスのある透明感あふれる花がほとんど。生産農家だけに、苗の状態も抜群です。 ベランダなど小さな空間でも真似できそうなコーディネートが盛りだくさん。ブロカントとアジサイが印象的な北欧の庭を思わせるシーンは、シック好きなガーデナーにはたまらない組み合わせです。人気のアジサイは西洋種に加え、ヤマアジサイ、枝垂れる新品種など品揃えも豊富。 見どころ満載 多彩なシーンで構成された庭 敷地内のガーデンには、ぬくもりあふれる手づくりの構造物やあしらいが点在。見どころがたくさんあるので、近隣に住む人の散歩コースにもなっているのだとか。 「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」にこんなにも人が訪れるようになったのは、ブログやSNSを始めたことがきっかけで、他店の人や生産者、お客様など多くの人との交流が生まれたことが大きく影響しているそう。「たくさんの人たちと知り合えて、みなさんの力を借りながらショップは成長してきたように思います。感謝でいっぱいですね」と真奈美さん。庭の構造物などを作る際にもいろいろな仲間が関わっているため、ガーデンは多彩な表情を見せています。 ギャラリーのような 落ち着きのある屋内売り場 アメリカンハウスの中は、色を抑えた雑貨類が並ぶシックな空間。照明の明るさにもこだわった落ち着いた雰囲気です。ここはまさに洋さんの目指していた、ギャラリーのような園芸店。暮らしのセンスアップにぴったりなアイテムが揃っています。 北欧の暮らしをヒントにした 花屋が2020年秋にオープン! 敷地の一角にオープンした、ガーデニングコーナーとは趣が異なる切り花の店「Lucy Gray botanisk」。botaniskとはスウェーデン語で「植物」を意味しますが、ここでは切り花のみならず「植物のある暮らし」を提案。店内に並ぶ花は、外の売り場と同様、ナチュラルなものでいっぱいです。 植物の力で心癒やされる ショップを目指して 花がある心地よい生活をトータルで提案する「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。「ここにいると癒やされるって言われることが一番嬉しいんです」と笑う真奈美さんの目指すところは“癒やしの場所であること”。以前、お母さまを看病していたときに感じた病院の殺風景さや、闘病している友人が植物から大きな力をもらっている様子を目の当たりにしたことで、「現在、緩和医療学の中にどう植物が取り入れられているか」に興味を持ち始めました。 大学に再度入学して日本の福祉とターミナルケアについて勉強した真奈美さん。卒論で緩和医療の現場における園芸療法の取り組みについて調べると、現場で植物を取り入れる難しさを目の当たりにしました。これを機に自分自身のショップを癒やしの場として提供することに強く意識を置くようになり、「植物で花好きな人々を元気に──」という思いで夫婦ふたり、ショップを日々進化させています。 杉山さんのイチオシはコレ! HAWSのジョウロ 杉山さんのおすすめは、人気の英国HAWS社のウォータリングカン。大きなサイズもありますが、屋内や小さなベランダにはこのコンパクトなものがぴったり。置きっぱなしでも飾っているように見えるのも◎。ステイホーム時だからこそジョウロにもこだわって、楽しく水やりをしてみませんか? 植物の瑞々しさとオーナー夫妻の飾らない人柄に魅せられ、多くの人々が訪れる「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。2021年9月現在、敷地の一角にエディブルプランツのポタジェなどの新しいコーナーを造作中です。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、小田急線・湘南台駅より徒歩約8分。 【GARDEN DATA】 Lucy Gray(ルーシーグレイ) 神奈川県藤沢市湘南台7-23-1 TEL:0466-45-6565 営業時間:10:00~17:00 定休日:水曜日 http://www.lucygray.net/intro.html Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 写真協力(※)/Lucy Gray




















