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神奈川県

女性たちに輝きと透明感を授ける、ルネ・ラリックの麗しき世界
ガラス工芸家ルネ・ラリック 洗練されたジュエリーやガラス工芸で知られるルネ・ラリック。19~20世紀の装飾美術工芸史のなかで、アール・ヌーヴォー、アール・デコの両時代にわたり活躍しました。日本では、アール・デコ様式の旧朝香宮邸・現東京都庭園美術館の正面玄関のガラスレリーフ扉やシャンデリアなどを手掛けています。 ラリックは1860年、シャンパーニュ地方マルヌ県の小さな村アイに生まれ、ブドウ畑が広がる自然豊かな地方で育ちました。16歳のときに母の勧めで、パリの宝飾職人に弟子入りすると同時に美術学校に進学。パリではオペラ座が建てられるなど、華やかな時代で、ラリックの自然を注意深く観察して培われた感覚は、日本美術(ジャポニスム)や古代ギリシア・ローマのエキゾチックな雰囲気などに刺激され、どんどん磨かれていきました。 装飾柵「蝶の女」(左)/木版画「ラリックのウィンドウ:万国博覧会Ⅲ(フェリックス・ヴァロットン作)」(右) 着実に実力をつけたラリックは、1882年からパリでカルティエ社やブシュロン社などの高級宝飾メーカーのジュエリーデザインの下請けも手がけるようになります。1885年には自分の工房を持つ宝飾作家として独立。大女優サラ・ベルナールも顧客に名を連ねるほどの成功を収めたラリックは、1900年のパリ万博に出品(「装飾柵・蝶の女」など)。東洋やオリエンタル文化の影響を多大に受けつつ、自然をモチーフとした斬新なデザインで訪れた人々をあっと驚かせ、彼の展示ブースは多くの人でごった返しました。 コサージュ「バラ」 ジュエリーにはもっぱら高価なダイヤモンドやルビーが使われていた時代、ラリックは自分が持つイメージを形にするために、エマイユ(七宝)、獣角、ガラスなどの価値は低いが加工のしやすい素材を積極的に用いて、モチーフである植物や昆虫などをリアルに再現。蝶やトンボの羽の薄さ、花の質感や女性の肌の透明感など、精緻な技術による豊かな表現は、パリ中に絶賛されました。柔軟かつ斬新な発想で今までの概念を大きく覆し、‘モダンジュエリー’のスタイルを確立したのです。 チョーカーヘッド「オリーブ」 かつては上流階級層が文化の中心となっていましたが、列車が走るようになったこの頃から一般大衆が活躍する時代に突入。多くの人が豊かな文化を享受できるようになったため、各業界はスピード感と量産が必要となりました。ビジネスの感覚をしっかり持ち合わせていたラリックも、多くの女性に自分の作品を届けるために、時代に合わせた作品づくりに舵を切ります。 香水瓶「四つの太陽」 ラリックは1910年頃からガラス作品の制作に力を注ぎ始めます。それまでのジュエリー制作は一点一点の手作りでしたが、機械を導入してのプレス成形や型吹き成形により量産ができるガラス作品制作は、時代に合わせつつも、彼の高い芸術意欲を叶えるものでした。 香水瓶「シクラメン」 ラリックの表現力を高く評価した化粧品ブランド「コティ」に香水瓶の制作を依頼されたことをきっかけに、以後さまざまなブランドの香水瓶などを手掛けるようになりました。ブランドから依頼されたものは、その会社のカラーが色濃く反映されていますが、自身の「ラリック」ブランドは、多少手間のかかる手法も取り入れ、自由度の高い作品を制作しました。 花器「バッカスの巫女たち」 その後、ラリックは花器などの小品から照明、ガラスのウォールなど建築のための大作までを手がけました。時代はアール・ヌーヴォーからアール・デコに入り、1925年のアール・デコ博覧会では、ガラスの噴水塔「フランスの水源」をメイン会場に制作したり、自社のパヴィリオンを出展するなど、時代を代表するガラス工芸家としての絶対的な地位を築いたのです。 装飾パネル「花束」 そのほかの魅力的な ラリックの作品をご紹介! ブローチ「シルフィード(風の精)、あるいは羽のあるシレーヌ」 ベッドサイドランプ「日本の林檎の木」 香水瓶「香水A(または香水N)」 ペンダント・ブローチ「ユリの女」 ペンダント・ブローチ「冬景色」 カーマスコット「孔雀の頭」(左)/「トンボ」(右) 灰皿「鈴蘭」(左)/「雀」(右) 自然豊かな「箱根ラリック美術館」で約230点の作品に触れる アール・ヌーヴォーからアール・デコにわたって一世を風靡したラリック。そのしなやかな感性が生み出した、数々のアクセサリーやガラス工芸。眺めているだけで、フランスの優雅な文化と時代の香りに浸ることができます。ラリックの作品約230点の作品を所蔵する「箱根ラリック美術館」で、ぜひこれらの作品を鑑賞してください。庭の池の周りには、さまざまな草花が咲きこぼれています。カジュアルフレンチ料理が楽しめるカフェ・レストランも併設されているので、箱根の自然と季節の味を満喫しながら芸術に触れてみませんか。 Information 箱根ラリック美術館 所在地:神奈川県足柄下郡箱根町仙石原186番1 TEL:0460-84-2255 開館時間: 9:00~17:00(美術館入館は16:30まで)/2021年12月1日より9:00~16:00(美術館入館は15:30まで) 休館日:2021年12月1日より毎月第3木曜日(但し8月は除く) 駐車場:無料(80台) 取材・写真協力:箱根ラリック美術館 Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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鳥取県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪29 鳥取「ラブリーガーデン」
イギリス風しつらいとバラが 訪れる人を魅了するショップ 米子駅と空港をつなぐ街道沿いに店を構える「ラブリーガーデン」。鮮やかなバラと草花が店先を彩っています。ここは、花の庭づくりでおなじみのガーデンデザイナー・安酸友昭さんのショップです。 店内には、自然な石積みの花壇やおしゃれなガーデンアイテムが散りばめられており、バラや草花と見事な調和を見せています。 「ラブリーガーデン」は2007年にオープンし、今年で15年目。安酸さんは大阪の園芸の専門学校で造園を学んだあと、地元の造園会社に入社。日本の作庭のノウハウや知識を深める中で、イギリスの庭の魅力を発見。本場の園芸を学ぶために退社し、思い切って留学しました。当初は英語も全く分からないところからのスタートでしたが、園芸と造園の知識がある安酸さんは次第に要領を得て、2年でイギリスのガーデニング技術者国家資格(NVQ)を取得。自身の店を開く夢を抱きながら帰国しました。 帰国後の2007年、庭づくりを請け負う「ラブリーガーデン」を設立。イギリスの資材を輸入する知人から材料を取り寄せながら、留学で吸収して磨いた知識と感性をフルに活用し、庭づくりをスタートさせたのです。その後、モデルガーデンのある実店舗を開くために、かねてから信頼していた知人のガーデナー・関聡子さんに声をかけ、二人三脚でショップをオープンさせました。 ラブリーとは「素敵な」「愛らしい」という意味。自分たちが‘素敵’と思ったものを揃えて、「お客様がラブリーな時間を過ごせる場になれば…」という思いが込められています。 安酸さんは2010年に、英国ドライストーンウォーリング協会認定の石積み技術の資格も取得します。これは、コッツウォルズストーンと呼ばれるハニーカラー(蜂蜜色)の石を、機械類を一切使わずに、ハンマーや石ノミで調整したり、モルタルなどの接着剤を使わずに手積みする技術で、強度に優れています。そんな技術を活用しながら、安酸さんらしくつくり上げたというモデルガーデン。米子の風土に合う草花を植えたナチュラルな花壇や、ぬくもりあふれる小屋が、訪れた人の目を楽しませています。 イギリス風の庭づくりで欠かせないのが、アンティークなどの古いアイテム。時間を経たような情趣のある演出が、庭の表情を深めています。 ロッジのような建物の前には、植栽花壇が設けられています。園路や花壇の立ち上がりに用いた自然石が用、季節の草花とともにナチュラルな風景を生み出しています。 このガーデンの見せ場の一つが、建物に面した大きな池。防水シートを敷いて作った人工の池とは思えない、自然な風景が広がっています。水は注いで循環させるのではなく、雨水をためるだけという自然まかせ。すぐにカエルやトンボが生息するようになり、今ではさまざまな生物の棲む完全な生態系・ビオトープが出来上がっています。 雨の日もゆっくり買い物できる 屋内には、花苗と雑貨がいっぱい 建物の中は、色とりどりの花苗売り場。安酸さんが選んだ花苗だけに、庭づくりや寄せ植えにピッタリのものばかり。屋根があるおかげで雨が当たらず状態も抜群で、悪天候の日でもゆっくり買い物ができます。 施工現場に出ていることが多い安酸さんを支えながらショップを守っているのは、草花とバラの知識が豊富な関さん。栽培法や寄せ植えの苗選びなど、分からないことがあったら親切にアドバイスしてくれます。 イギリス製の鉢をはじめ、ジョウロや手袋などの雑貨類も充実。おしゃれにガーデニングを楽しむのに必要なものが揃っています。 ショップ内のあちこちに置かれた寄せ植えにも注目。小花を使った繊細な花合わせを得意とするラブリーガーデンのアレンジは、どこに置いても主張しすぎず、ふんわり上品な雰囲気を湛えています。 庭づくりと併せて寄せ植え作りも依頼されることが多い「ラブリーガーデン」。飾りたい場所にピッタリのサイズと雰囲気のアレンジを作ってくれます(写真:面谷ひとみ邸)。 苗売り場で見つけた 素敵なバラたち 関さんがセレクトした育てやすい品種がずらりと並ぶバラ苗コーナー。取材時に咲いていた魅力的な品種をご紹介します。 左/‘ビアンヴニュ’(デルバール):H1.8m、超強香、四季咲き 、中大輪ロゼット咲き 中/‘ザビエル・フライシネッテ’(ギヨー):H0.8m、強香、返り咲き、中輪ロゼット咲き、丈夫 右/‘スピネル’(タンタウ社):H0.9m、微香、四季咲き、中輪ロゼット咲き 左/‘ストロベリーアイス’(デルバール): H1.4m、微香、四季咲き、中大輪丸弁咲き 中/‘シャリマー’(ロサオリエンティス):H1.3m、中香、四季咲き、中輪ロゼット咲き 右/‘シャルル・ドゥ・ミル’(オールドローズ):H1.5m、強香、一季咲き、中輪房咲き 左/‘マドモアゼル’(デルバール):H1.2m、微香、四季咲き、小中輪半八重房咲き、丈夫 中/‘サマードリーム’(フライヤーローゼス):H2.0m、微香、返り咲き、中輪カップ咲き 右/‘ペネロペイア’(ロサオリエンティス):H1.6m、強香、四季咲き、中輪波状弁咲き 左/‘ブリリアントピンク・アイスバーグ’(ウェザリー): H1.4m、微香、四季咲き、中輪弁半八重咲き、丈夫 中/‘舞妓’(禅ローズ):H0.3m、微香、四季咲き、小輪八重房咲き 右/‘クラシック・チュチュ’(ロサオリエンティス):H1.2m、中香、四季咲き、中輪波状弁咲き 左/‘キルケ’(ロサオリエンティス): H1.2m、強香、四季咲き、中輪ロゼット咲き 中/‘シャトー・ドゥ・シュベルニー’(デルバール):H1.5m、四季咲き、中輪カップ咲き、丈夫 右/‘モチーフ’(河本バラ園):H0.9~1.4m、微香、四季咲き、小輪半八重房咲き 左/‘クレディ・ミチュエル’(ドミニクマサド): H1.0m、中香、四季咲き、中輪カップ咲き 中/‘アントニオ・ガウディ’(井上謙二):H1.2m、微香、返り咲き、大輪カップ咲き、丈夫 右/‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’(オールドローズ):H6.0m、微香、一季咲き、小輪八重房咲き 左/‘アルテミス’(タンタウ):H1.8m、中香、四季咲き、中輪カップ房咲き 中/‘アリュマージュ’(ロサオリエンティス):H1.5~1.8m、微香、返り咲き、中輪波状弁咲き 右/‘バロン・ジロー・ド・ラン’(オールドローズ):H2.0m、中香、返り咲き、中大輪カップ咲き 英国風庭づくりならおまかせ! 日本の風土に合った庭づくり イギリス留学で得た知識を無理なく日本の風土に取り込むには、日本での庭づくりの知識があってこそ。その強みを生かしつつ、自身のセンスを存分に発揮して、庭づくりをしています。 イギリスの資材だけでなく、日本の石なども使いながら、温かみのある庭づくりをしている安酸さん。お客様の予算やメンテナンスに割ける時間などを考慮しながら、必ず自分らしいアイデアを盛り込んで、庭をデザインしています。 安酸さんのイチオシ ウィリアム・モリスの鉢 19世紀半ばにイギリスで興ったアーツ・アンド・クラフツ。その運動の指導者だったウィリアム・モリスのデザイン画が描かれたコンテナです。落ち着いた地色に、ブルーまたは濃緑の彩色。絵柄は3種類。「どんな植物ともなじみよく、より上品に見せてくれます」 庭づくりのプロと植物のプロがタッグを組んでスタートしたラブリーガーデン。2人でコツコツと店を育てながら、日々お客様の暮らしに彩りを添えています。バラの時期は、300株の苗が並びます。ぜひ訪れてみてください。アクセスはJR境線三本口駅から徒歩約10分。 【GARDEN DATA】 Lovely Garden(ラブリーガーデン) 鳥取県米子市両三柳839 TEL:0859-24-1500 営業時間:10:00~17:00 定休日:火曜日(祝日の場合は営業) https://www.lovely-garden.jp/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 写真/3and garden
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北海道

北海道のガーデンを堪能する「秋のダリア旅」後編
私の北海道の旅のベースともいえる旭川 この年の一人旅では、駅ビルの中にあるお気に入りのホテル「JRイン旭川」に連泊して、そこを拠点に、あちこちのガーデンに足を運びました。 早朝、ホテルを出て駅のコンコースを南口に抜けると、もうそこは、「北彩都ガーデン」。 ボーダー花壇やテラスが広がっているのですが、私はそこから足を伸ばしてさらに東に向かい、鏡池プロムナードを散歩。「神人の森」と呼ばれるボーダーガーデンやメドウガーデン、ハーブガーデンなどが広がる場所へと移動しました。 上写真の、一番奥に見える白い建物が旭川駅です。「神人の森」にダイナミックに群植された宿根草の美しさが際立っています。 10月上旬の旭川の気温は1桁になることもあり、朝の透き通った空気が、さらに花の色に透明感をプラスしているような気がします。 駅から直結のこのガーデンには締め切られたゲートも無いので、早朝からの見学には最適。私のように一日に何カ所ものガーデンを見たいと思う時間節約派には、とてもありがたいガーデンです。 夏のガーデンツアーでも、早朝にこのガーデンを散歩して、帰り道にあるスタバで朝ごはんをしましたが、このルートは定番になりつつあります。 旭川市内から車で1時間ほどの「大雪 森のガーデン」へ 次に大雪山系でもっとも美しいといわれる大雪高原旭ヶ丘にあり、旭川市内から車で1時間ほどの「大雪 森のガーデン」へと向かいます。 「大雪森のガーデン」は、約900種類の色とりどりの草花が楽しめる「森の花園」、起伏のある空間に従来からこの地に生き続ける樹木や山野草が植えられた「森の迎賓館」、深い森の中に広がる空間に自然をひとり占めできるアトラクションを配した「遊びの森」の3つのゾーンで構成されています。大雪は旭川市内より遅く春が訪れて秋も早いので、雪が降りまた眠りにつくまでの短い数カ月間に命を謳歌する植物のパワーが爆発するようで、美しいガーデンだと私には思えます。 夏にはカンパニュラが、こうして置かれていたので、友人へのお土産にしました。 旭川3つめの訪問先は「上野ファーム」 「大雪 森のガーデン」からは40分ほどで着くので、私はこのルートを使うことが多いのですが、もし帯広方面から旭川に移動する場合は、「大雪 森のガーデン」までは美しい白樺並木が続く上士幌や糠平湖を経由するR273を通るのがおすすめです。 秋は9月末頃だと三国峠の大樹海の美しい景色や層雲峡の紅葉も楽しみです。 「上野ファーム」は大人気のガーデンなので、春から夏に行かれる方は多いと思いますが、秋のガーデンはグラスやシードヘッドが好きな方におすすめです。 秋に咲く花の色は、鮮やかで華やか。紅葉とシードヘッドの中に際立つ秋色の花からは、春にも負けないほどのエネルギーを感じることができると思います。 翌日は旭川を離れて江別へ移動 友人のガーデンをゆっくり見せてもらい、久しぶりにゆっくりとランチを共にしました。 以前は、カフェを併設した雑貨屋さんでしたが、現在はカフェは閉めて、雑貨だけ扱っています。 さらに足を伸ばして小樽から「銀河庭園」へ この頃、緊急事態宣言がちょうど解除され、Go Toキャンペーンが実施されていた時期でした。札幌は人出が多いと思い、あえて観光客が少なそうな小樽を宿泊地に選びました。 宿泊先に選んだのは、アールデコの建築美が残る、ちょっと雰囲気のあるホテル。北海道初の外国人専用ホテルとして昭和6年に建築された小樽市指定歴史的建造物がリノベーションされています。 翌日もお天気に恵まれて、まずは「銀河庭園」へ。 この旅のテーマは「北海道のダリアを見に行く」だったことを急に思い出したかのように、銀河庭園は「ダリア ダリア ダリア」の世界でした。 ある時、紫竹ガーデンで、おばあちゃんに「ダリアはもちろん掘り上げるんですよね?」と聞いたら、「もちろんよ! じゃないと凍っちゃう」とおっしゃっていましたが、これだけの数のダリアを毎年植えては、また掘り上げてという作業量を考えると、すごいなぁという感想しか出てきません。 でも、そんなにしてまで植えたいと思うほど、秋のダリアの存在感は素晴らしいものでした。 千歳川の上流にある「MEON農苑」へ 春の芽吹きから冬の枯れ姿まで、野の草花が主役だというこのガーデン。市松模様に配された石板の間の植栽はシンプル。華やかではないけれど、カフェでお茶をしながら旅を振り返るのにぴったりで、とても好きな場所です。 旅を締めくくるのは「イコロの森」 そして、やはり旅の一番最後には、一人でゆっくり過ごしたい。「MEON農苑」から30分ほどの場所にあるガーデン「イコロの森」に向かいます。 ここでは、ガーデナーさんたちに会って世間話をするのも楽しみですし、フライトの時間までゆっくりガーデンを歩き、ときどきベンチに座ったり、美味しいコーヒーをいただいたりしながら静かに旅を振り返ります。 この年は6日間を過ごした秋の北海道でした。 友人と旅する夏の北海道も楽しいのですが、飛行機とホテルだけ予約しての行き当たりばったりの一人旅はさらに楽しいもの。 夏場はガーデン巡りの時間に追われてゆっくり話せない友人のガーデンで、静かな庭を見ながら何時間も話し込むことができるのも、秋の旅だからですね。 今年はスケジュールが取れなくて行けなかった秋の北海道ですが、来年は必ず行こうと思っています。 ●北海道のガーデンを堪能する「秋のダリア旅」前編はこちら Credit 写真・文/橋本景子 千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.6万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。 YouTube 「Kay garden」 Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/ インスタグラム kay_hashimoto
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フランス

シャンティイ城のガーデニングショー【フランス庭便り】
シャンティイ城のガーデニングショー 秋は暖かな季節の名残を惜しみつつも、来春の植栽などを考え始める、ガーデナーにとってある意味心躍る季節ではないでしょうか。そんな時期、フランスの園芸好きの人々が心待ちにしている年中行事の一つが、ジュルネ・デ・プラント(プランツデー/植物の日)。毎年春と秋に開催されるシャンティイ城のガーデニングショーです。 なぜお城でガーデニングショー開催? シャンティイ城といえば、ルーヴル美術館に次ぐほどレベルの高い美術コレクションや、ル・ノートル設計のフォーマル・ガーデンがあることでも有名なお城です。パリから車で1時間ほど。電車でもアクセスできるので、観光スポットとしても人気です。 そんな場所で、なぜガーデニングショー? と思われるかもしれませんね。このガーデニングショーの発端は、30年以上前に遡ります。最初はクルソン城という別のお城で、全仏植物園協会の会合が開かれた際に、その余興として植物の交換会をやろうという計画が立ち上がります。会員の中にはナーサリーを営む人もいて、最終的には植物の販売会が開催されることになりました。すると、隣国イギリスでしか売っていないと思われていた植物をフランスのナーサリーでも扱っていたなど、さまざまな嬉しいサプライズがあって大成功! これがきっかけとなって恒例開催されることになったのだそう。その後、庭好き・植物好きのクルソン城の城主夫妻が主導して32年続いたガーデニングショーは、シャンティイ城に引き継がれ、この城での開催は2021年で6年目となります。 会場そのものが魅力的 ちなみにフランスのお城は、仏文化省に文化遺産として登録されているものだけでも11,000件。登録されていないものも含めれば45,000件ほどと推測されています(その8割以上は個人所有)。膨大な面積の森と広い庭園に囲まれたフランスのお城は、じつは豪華な結婚式や企業イベントなどに最適な場所として利用されることが多くあります。このガーデニングショーの会場でも、お城の建物や庭園、森の木々を背景に、販売スタンドやショーガーデンが立ち並ぶ風景には、自然の美しさばかりではない非日常感があって、ウキウキ度も倍増です。 遠方のナーサリーの植物を一度に見られる 毎年、春秋の週末3日間に行われるこのガーデニングショーには、いつも2~3万人の来場者があるそうです。まずその魅力の一つは、普段はなかなか見て回ることができない遠方のナーサリーが一堂に集まること。フランス国内だけでなく、ベルギーやドイツなど近隣諸国からも国境を越えて出展者が集まり、全部合わせると180ほどにもなります。 また、ナーサリーの出店資格は専門家コミッティーによって厳正に審査されるので、その質の高さも折り紙付き。普段あまりお目にかかれないバラ専門、アジサイ専門、多年草専門、カエデ専門などさまざまな専門ナーサリーが集まるうえ、おしゃれかつ実用的なガーデニング道具やウェアなどのショップも並びます。 最近はパリ市内でもおしゃれなガーデニングショップが増えてきましたが、季節の植木苗などを購入するのには、一般的なチェーンのガーデニングショップやホームセンターが一番近い、ということも多いのが実情です。そうした一般的なショップでは見つかりにくい珍しい植物がその場で選べるのは、本当に魅力的。そんな訳で財布の紐もゆるゆるになりがちな、大変危険な場所でもあります。 生産者や専門家たちと直接コミュニケーション 遠方のナーサリーが集まっているガーデニングショーは、植物好きの交流の機会であることも大きな魅力です。業界人の間でのコミュニケーションもあれば、顧客側にとっても、直接生産者に質問をしたり、育て方のアドバイスを聞いたりというコミュニケーションの中で仕事への姿勢が分かり、その後彼らの通信販売をなども安心して利用することができます。また、会場では「果樹の剪定の仕方」など、さまざまなワークショップや講演、親子向けのアクティビティなどもプログラムされていますので、ずっと気になっていた植物を入手したり、新しい品種を発見したり、興味のある項目を学んだり、と飽きることなく丸一日楽しむことができます。 シャンティイ城の隠れ名物デザート「クレーム・シャンティイ」 会期中はお城の敷地内、英国式庭園部分の広い芝生のエリアがショー会場となり、出店スタンドのテントなどのほかに、軽食を販売するトラックがいたり、休憩所などが設けられていたり。青空の下でのランチやおやつも完備されています。なかでも有名なシャンティイ城の名物デザートは、元祖クレーム・シャンティイ。 クレーム・シャンティイとは、生クリームを泡立てた、つまりホイップクリームのことなのですが、この城で17世紀コンデ公に仕えた有名な料理人ヴァテールが考案したのが始まりといわれています。すでに18世紀には、シャンティイ城を訪れた海外の王族をはじめ多数のゲストが、庭園内の田舎家風の園亭で軽食の際にサーヴされるクレーム・シャンティイの美味しさに感動の言葉を残していて、その噂は国境を越えて広がっていたとか。 毎回、このガーデニングショーを訪れるたび、植物探しに熱中するあまり、その味を知らずに終わってしまいます。今回は、ぜひこの元祖クレーム・シャンティイを味わってみなければと心に決めていました。ショー会場を少し離れて、アングロ=シノワ風と呼ばれる自然風の庭園の中を歩いて行くと、マリーアントワネットの王妃の村里にあるような田舎家風の園亭が見えてきます。内部は現在レストランになっており、天気のよい日には、庭で食事やお茶を楽しめます。 期待のクレーム・シャンティイは………ボリューム満点、通常のホイップクリームよりさらにしっかりどっしりとした感じで、味が濃くて美味しかったです! 甘みをつけるにはバニラ風味の砂糖を混ぜる。ポイントは極限までホイップすること。それ以上ホイップするとクリームが分離してバターになってしまうという、その直前までホイップするのがポイントなのだそう。定番は、イチゴやフランボワーズなどの赤い果実や、シャーベット、アイスクリームなどに添えて出されるのですが、冷静になってカロリーを考えると、ちょっと恐ろしくもあり。でも、今日はたくさん歩いたから、まぁよしとしよう! と心の中でかなり言い訳をしてしまいました(笑)。 ちなみに私の今回の主な戦利品は、これからが植え時のスイセンなどの春の球根類と巨大なアガパンサス。それに大好きなワイルドチューリップの球根も見つけて大満足です。
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いつもそばに置いておきたい 三条の匠が作り出す、園芸バサミ
古くから育まれてきた 刃物文化とハサミ作り カトラリーや包丁、ハサミなどの金属加工産地として有名な、燕・三条市。このエリアは企業が多く、「ものづくりの町」としても知られています。昔はよく五十嵐川の氾濫による大きな水害に遭い、生活苦を強いられてきた地域で、江戸時代初期に幕府より農民の副業として和釘作りが奨励されたことから、この産業が始まりました。時代の流れとともに燕市は洋食器、三条市は打ち刃物・金物と、それぞれ得意とするものを中心に発展していったのです。 今回訪問したのは、三条でハサミを専門に製造する「小林製鋏」。工場は田園地帯に広がる刃物・金物工場群の中にあります。この会社は、昭和14年に東京・荒川区で医療器具や医療用のハサミを製造する会社として創業。第二次世界大戦末期に実家のある三条に疎開し、鍛冶屋として再開。以来、果樹園芸農家向けのハサミ作りに力を注いできました。最近は、この会社が作る園芸バサミも注目を浴びています。 小林製鋏のハサミ作りの現場 工場から制作過程をレポート 40~50種類ものハサミが日々作られている工場は天井が高く、ずらりと並ぶ機械には、10人ほどの熟練の職人が向かい、妥協のない作業に取り組んでいます。 小林製鋏のハサミは、プレス型を使って量産される製品とは異なり、鋼を叩く鍛造によって1本1本作られています。叩いたり研いだりする加減は、すべて職人の‘勘’が頼り。角度や時間、温度などの微妙な加減を熟練の勘で調整しながら、鋭利な切れ味と強度を作り上げています。 鋼の棒を丹念に「熱し、叩いて、冷やす」という作業を繰り返し、ハサミの形に整えていきます。 組み立てられたハサミはクリップで吊り下げ(上)、取っ手にビニールの被膜を施すために赤い液体の中に浸します(下)。赤いビニール部分が乾いたら完成です。 三代目社長の小林伸行さんが就任時に掲げた社是は‘森羅万象’。「伝統を継承し未来へ行き続けるために考え創造していくこと」、経営理念は「知恵を絞り現状よりも進化させ、お客様に新たな喜びと感動を与えること」、そして社訓は「水のように変化できる、行動・考え方を持つこと」。厳しい姿勢でハサミ作りと向き合う初代と先代から学んだ歴史を受け継ぎながら、現代のスタイルのハサミ作りにも取り組んでいます。近年は、‘越路’のハサミが海外でも高く評価され、欧米などで需要が増えています。 ‘越路’ブランドが買える ショップがオープン! 令和3年春、工場裏のおしゃれな建物に小林製鋏のショップがオープンしました。‘越路’のハサミはホームセンターなどでも購入が可能ですが、種類が多くて違いが伝わりにくいのと、一般の方もハサミの違いを事前に確認できるように、アンテナショップとして設けられました。 4坪ほどの小さな売り場には、果樹園芸用のハサミがたくさん。それぞれの用途は異なり、ミカンやリンゴなどを間引く際に使用する「摘果バサミ」や「新芽を切る芽切バサミ」、「樹木の枝を切る剪定バサミ」などなど多種多様。同じ果物でも産地によって木に含まれる水分量が異なるので、最適な刃の形は違ってくるのだとか。 店内ディスプレイはとてもおしゃれで、ハサミはみな古い木箱に整然と並んでいます。木箱は使い込まれた味わいを放っていますが、これはかつて工場で、油を塗った部品を入れていた箱を再利用したもの。赤いハンドルが美しく映えます。 ショップの前には、手作りの小さなキッチンガーデンが設けられています。ここは、小林さんが園芸用のハサミを研究するための実験場であるとともに、お客さまが切れ味を確認できる場でもあります。小林さんの強く真摯な探求心が垣間見えます。 【ガーデニングにおすすめのハサミ3選】 ◆樹木の剪定に 「剪定芽切鋏」:一般の剪定バサミより細身でコンパクト。女性におすすめ。 全長185mm・刃長50mm・重量約195g ◆草花・ハーブの刈り込みに 「打物 葉刈鋏」:効率的な草花の刈り込みにおすすめ。刃に刻まれた溝により樹液がつきにくく、開閉がスムーズ。 全長225mm・刃長83mm・重量約230g ◆花の収穫に 左/「HARVESTER(ハーベスト)」:コンパクトで軽やかに使える本格派の収穫バサミ。野菜やハーブの収穫、草花や盆栽の芽摘みに。 全長14.5mm・刃長70mm・重量約75g 右/「FLORIST(フラワーアレンジ)」:太いものもしっかり切れる小型の花バサミ。太めの茎や枝の剪定に。 全長160mm・刃長80mm・重量約123g これらの3つのアイテムは、女性でも使いやすく細かい作業がしやすいよう、コンパクトで繊細に仕上げられており、デザインはシンプルで洗練されています。 品質は前出のものと同様、職人が鍛造で仕上げ、強靭なコーティングが施されているので、錆びにくく切れ味抜群。家庭菜園での野菜やハーブの収穫、草花や盆栽の芽摘みなどにぴったりです。日本の職人技が光るおしゃれな雑貨などを扱う「中川政七商店」と協働の製品で、「中川政七商店」のショップでも販売されています。 1本あると作業の効率がアップし、ガーデニングライフを充実させてくれる本格派のハサミ。ご紹介したハサミはどれも丈夫であることはもちろんですが、ていねいに扱いたくなる気持ちにさせてくれます。「ハサミは、料理で使う包丁のように、使ったら毎回中性洗剤で洗ってください。ときどき油をさすとサビが防げ、長く使えます」と小林さん。当サイトでご紹介した『「道の駅 」庭園の郷 保内』でも販売されています。ぜひお試しください。 【SHOP DATA】 小林製鋏株式会社 〒955-0061 新潟県三条市林町1丁目15-21 TEL:0256-32-3583 営業時間:8:00~16:45 営業日:平日 https://www.koshiji-h.jp/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 協力:加藤はと子(道の駅 庭園の郷保内)
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神奈川県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪28 神奈川「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」
花と緑で包まれた 絵葉書のような美しいショップ 大きな公園や図書館など、緑が多い閑静な地域にある「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。アメリカンスタイルハウスと、ファサードを覆うピンク×白の可憐なつるバラが目印です。その愛らしい佇まいは、まるで洋書の1ページのよう。 正面はリーフが美しい低木とつるバラの競演(写真は4月下旬撮影)。植物それぞれが、ほどよい存在感を放ちながら見事な調和を見せています。向かって左側はピンクのつるバラで、右側は白。ショップに入る前から、オーナーの杉山洋さんと真奈美さんご夫婦のセンスのよさがうかがえます。 二人三脚で叶えた ショップ 1991年にオープンした「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。センスのよさとご夫婦の人柄のよさは多くのガーデナーの憧れで、遠方からわざわざ来る人も少なくありません。 オーナーの杉山家はもともとナシ農家でしたが、後継ぎであるご主人の洋さんがシクラメン栽培をスタート。けれどそれだけでは飽き足らず、ハウスの一角にギャラリー風の苗売り場を設置しました。そして、次なる構想を練っている最中に真奈美さんと出会い、洋さんは力強いパートナーを得たのです。 しばらくすると、ギャラリー風のショップでは手狭となったため、新たなショップに建て替えを計画。夫婦でどんな建物がいいかなどの検討を重ねた結果、デザインとコストの兼ね合いで、このアメリカンスタイルに決定。「本当はグレーの倉庫のような男前の建物にしたかったんですけど、当時そのスタイルはちょっと早すぎましたね。でも、私は自然な草花が好きだから、それらになじみやすいアメリカンスタイルでも結果的にはよかったようです」と真奈美さん。柔軟な発想で、自身の世界観を見事に形にしていきます。 ナチュラルにバラが咲く サンプルガーデン 建物脇のアーチ奥に広がる小さな空間は、ショップをオープンさせてから最初にしつらえたサンプルガーデン。リーフの緑とバラの白でまとめられた、瑞々しいスモールガーデンです。長方形の自然石が敷き詰められた床面にバラが絡むパーゴラで構成した空間は、ロンドンの中庭のような佇まい。パーゴラの下に置かれたチェアに座ると涼やかで、居心地がとてもよい場所。 はじめは園芸に興味がなく、洋さんの手伝いをしている程度だった真奈美さん。初歩的な草花の名前も分からないレベルだったとか。けれど、生命力あふれる植物の健気さや美しさに触れるにつれ、庭づくりの世界に強く引き込まれました。その頃ちょうど創刊されたガーデン雑誌の誌面を彩るイギリスの庭などに魅了されたこともあり、真奈美さんのガーデニング熱は一気に加速。今の「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」の基礎が形づくられていきました。 ナチュラルな庭づくりに ぴったりな草花苗がたくさん 真奈美さんが夢中になって読んだ園芸雑誌や洋書などに出てくる花壇の花は、インパクトが強いものが多かったのですが、ショップで販売しているのは、楚々とした草姿やニュアンスのある透明感あふれる花がほとんど。生産農家だけに、苗の状態も抜群です。 ベランダなど小さな空間でも真似できそうなコーディネートが盛りだくさん。ブロカントとアジサイが印象的な北欧の庭を思わせるシーンは、シック好きなガーデナーにはたまらない組み合わせです。人気のアジサイは西洋種に加え、ヤマアジサイ、枝垂れる新品種など品揃えも豊富。 見どころ満載 多彩なシーンで構成された庭 敷地内のガーデンには、ぬくもりあふれる手づくりの構造物やあしらいが点在。見どころがたくさんあるので、近隣に住む人の散歩コースにもなっているのだとか。 「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」にこんなにも人が訪れるようになったのは、ブログやSNSを始めたことがきっかけで、他店の人や生産者、お客様など多くの人との交流が生まれたことが大きく影響しているそう。「たくさんの人たちと知り合えて、みなさんの力を借りながらショップは成長してきたように思います。感謝でいっぱいですね」と真奈美さん。庭の構造物などを作る際にもいろいろな仲間が関わっているため、ガーデンは多彩な表情を見せています。 ギャラリーのような 落ち着きのある屋内売り場 アメリカンハウスの中は、色を抑えた雑貨類が並ぶシックな空間。照明の明るさにもこだわった落ち着いた雰囲気です。ここはまさに洋さんの目指していた、ギャラリーのような園芸店。暮らしのセンスアップにぴったりなアイテムが揃っています。 北欧の暮らしをヒントにした 花屋が2020年秋にオープン! 敷地の一角にオープンした、ガーデニングコーナーとは趣が異なる切り花の店「Lucy Gray botanisk」。botaniskとはスウェーデン語で「植物」を意味しますが、ここでは切り花のみならず「植物のある暮らし」を提案。店内に並ぶ花は、外の売り場と同様、ナチュラルなものでいっぱいです。 植物の力で心癒やされる ショップを目指して 花がある心地よい生活をトータルで提案する「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。「ここにいると癒やされるって言われることが一番嬉しいんです」と笑う真奈美さんの目指すところは“癒やしの場所であること”。以前、お母さまを看病していたときに感じた病院の殺風景さや、闘病している友人が植物から大きな力をもらっている様子を目の当たりにしたことで、「現在、緩和医療学の中にどう植物が取り入れられているか」に興味を持ち始めました。 大学に再度入学して日本の福祉とターミナルケアについて勉強した真奈美さん。卒論で緩和医療の現場における園芸療法の取り組みについて調べると、現場で植物を取り入れる難しさを目の当たりにしました。これを機に自分自身のショップを癒やしの場として提供することに強く意識を置くようになり、「植物で花好きな人々を元気に──」という思いで夫婦ふたり、ショップを日々進化させています。 杉山さんのイチオシはコレ! HAWSのジョウロ 杉山さんのおすすめは、人気の英国HAWS社のウォータリングカン。大きなサイズもありますが、屋内や小さなベランダにはこのコンパクトなものがぴったり。置きっぱなしでも飾っているように見えるのも◎。ステイホーム時だからこそジョウロにもこだわって、楽しく水やりをしてみませんか? 植物の瑞々しさとオーナー夫妻の飾らない人柄に魅せられ、多くの人々が訪れる「Lucy Gray(ルーシーグレイ)」。2021年9月現在、敷地の一角にエディブルプランツのポタジェなどの新しいコーナーを造作中です。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、小田急線・湘南台駅より徒歩約8分。 【GARDEN DATA】 Lucy Gray(ルーシーグレイ) 神奈川県藤沢市湘南台7-23-1 TEL:0466-45-6565 営業時間:10:00~17:00 定休日:水曜日 http://www.lucygray.net/intro.html Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 写真協力(※)/Lucy Gray
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北海道

北海道のガーデンを堪能する「秋のダリア旅」前編
秋ならではの美しい風景に会いに行く 毎年恒例の北海道へのガーデンツアーは、例年ならば7月初旬、バラの開花時期に合わせて友人たちと一緒に行くことが多かったのですが、ここ数年、春の華やかさとはまた違った美しさがあると知ってからは、秋のガーデンを訪ねるのも楽しみになっています。 昨年2020年10月初旬は、ちょうど緊急事態宣言が解除された合間でしたが、コロナ禍でもあったので、行き先もスケジュールも行き当たりばったり。気の向くままの自由な一人旅にしました。でも、一つだけ決めていた目標は「ダリアの美しさを満喫する旅」でした。 新千歳から2時間ほど。まっすぐ帯広に向かい、春に行けなかったガーデンを巡ります。 まずは中川郡幕別町にある「十勝ヒルズ」へ。 花と食と農がコンセプトの、丘の上の広大な「十勝ヒルズ」。ここには、リンゴやベリー、はちみつやバニラなどの美味しい香りがするバラ35品種800株が植わるバラ園と、果樹やハーブなどの食べられる植物を育てるポタジェ、そしてピクニックを楽しみながら宿根草を愛でるエリア、ガーデンの妖精アニーカが住むといわれるピンクのガーデン、さらには、睡蓮が咲きトンボが飛び交うトンボ池などユニークなテーマの9つのエリアがあり、心身共にリラックスして、ゆったりと過ごすことができます。 花期が長い青花、サルビア‘ミスティック・スパイヤーズブルー’を列植して十勝の青い空を表現した「スカイミラー」。遠くに十勝の街を望む、カラフルな『映えスポット』です。 広い芝生を海原に見立てて、プカプカと浮かぶ小島をイメージしたという「フラワーアイランズ」。アイランド型に作られた植え込みエリアの中は、一年草や宿根草で彩られています。 「十勝ヒルズ」を後にし、次の目的地に向かう途中に、突然現れた案内板。 一人旅の気楽なところは「あ、じゃ立ち寄ってみよう」と瞬間的に決められることですね。 懐かしい名前の駅が、すぐそこにありました。 知った名を発見して、ちょっと寄り道 旧国鉄時代に「愛の国から幸福へ」のキャッチフレーズで大人気になり、今ではもう廃線となっている広尾線の駅です。この切符が大流行したのは、もうはるか昔のことですが……。 鉄道オタクの夫のためにお土産写真を撮って、次のガーデンに向かいます。 旅に欠かせない場所「十勝千年の森」でメドウを見る 1,000年という単位で時間が流れる森の視点から物事をとらえ、本質にきちんと向き合いながら、自然と人が真に共生していくための一歩を踏み出したいという思いから名付けられたという「十勝千年の森」。北国の庭園文化の創造を目指して展開する4つの「北海道ガーデン」と「HGSデザイナーズガーデン」、国内外の気鋭の作家による8つの現代アート作品が森に点在する「ARTLINE」によって、魅力的な屋外空間が構成されています。 中でも、ガーデンデザイナー、ダン・ピアソンが、十勝の大自然からインスピレーションを受けてデザインした「メドウガーデン」は、ナチュラリスティック スタイル(自然主義の庭)としては日本で初の試み。土地の自生種とその系統を汲む園芸種や、十勝と似た気候の北米の植物が使われていて、一つの植生から次の植生へと連なり合って咲いていくナチュラルな風景に出会えます。この景色を初めて見たときに、日本人が憧れていたバラを中心としたイングリッシュガーデンとは全く違う印象にびっくりし感激したものでした。 それ以来、「十勝千年の森」にあるメドウの風景は、私の北海道ガーデンツアーには欠かせないものとなりました。 ガーデンカフェにアレンジされていた、たくさんのダリアを独り占めして、ゆっくりと写真を撮らせていただきました。なんと贅沢な時間だったことでしょう。 紫竹ガーデンの景色を独り占め 秋の日は切ないほどに短く、帯広のホテルに着く前に、時間があればもう1カ所と思い、「紫竹ガーデン」に滑り込みました。 遠く日高山脈の峰々を望み、十勝平野の田園地帯に広がる15,000坪という広大なガーデンは、6時の閉園までには少し時間がありましたが、ここもまたお客様の姿がほとんどなく、独り占めの贅沢を味わいました。 寒冷地でダリアを咲かせるためには、たいへんな労力が必要。これだけの数となると、気が遠くなりそうです。 お怪我で入院と伺っていた昭葉おばあちゃんがいらして、入院中にアマビエをたくさん描いて皆さんにお配りしたという話や植物のことなど、2人で小一時間ほどおしゃべりをして、楽しい時間を過ごしました。 2021年春に突然亡くなられたと知り、あの日にゆっくりお話しできたことがまるで奇跡のように思えて、今でも素敵な思い出として心に残っています。 ●北海道のガーデンを堪能する「秋のダリア旅」後編はこちら Credit 写真・文/橋本景子 千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.6万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。 YouTube 「Kay garden」 Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/ インスタグラム kay_hashimoto
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青森県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪27 青森「OOLJEE(オールジイ)」
北国の人々の暮らしに 植物でうるおいを提供 青森駅の目抜き通りから北に入ってすぐの場所にある、インドアグリーンのショップ「OOLJEE(オールジイ)」。ブティックのような佇まいは、以前トラッドシューズのショップが店を構えていたときの名残で、レンガ色の古い建物のレトロな雰囲気と相まって、マニッシュな風情が漂います。 開放されたドアの奥には、まるで温室のようなみずみずしい空間が広がり、ひしめくグリーンが来客を出迎えてくれます。「こんな寒いところに、こんなにたくさんの観葉植物があるなんて!」と思うほどの品揃えです。 これらはオーナーの葛西真澄さんが厳選したもので、ユニークな姿の多肉植物やインテリアの主役となる大型の観葉植物、ドライフラワーなどを揃え、多様な植物は青森の冷涼な気候の中で育てることを前提に選ばれています。 8㎡ほどの小さな空間には、丈夫に育つ大鉢からポット苗まで、多種多様なグリーンが並びます。店内は壁などのしつらえや什器にもこだわりが見られ、インドアグリーンのブティックといったおしゃれな雰囲気。好みの植物が見つかるだけでなく、飾り方も参考になります。店名の「OOLJEE(オールジイ)」とはアメリカ先住民の言葉で月や宇宙を意味するとか。植物とは直接的には関係ないのですが、葛西さんの感性に共鳴するワードを名前に選びました。 このショップがスタートしたのは、今から約5年前。「冬は長く、外は真っ白な世界が続くので、みんな雪に疲れてしまうんです」と葛西さん。だから、「家や職場に緑を置いて、ほっとする時間を過ごしてもらいたい」という強い思いで、この店をオープンさせたのです。 植物の知識は、すべて独学で得たもの。自然が豊かな地域で生まれ育ったせいか、子どもの頃から植物が好きで、栽培するという感覚は既に持っていました。とはいえ、オープン当初は失敗もありましたが、5年経った今ではそれらを糧に、ほとんどのインドアグリーンの特性を習得。扱う植物の種類も年々増えて、小さな空間に効率よく美しくレイアウトしています。 以前はホテルでマネージャーを務めていたこともある葛西さん。グリーンが人にもたらす効果をずっと肌で感じていました。しかしここ青森では、家屋によっては屋内でも十分な暖が取れないこともあり、グリーンの必要性もあまり求められておらず、ホームセンターの片隅で無難なものしか販売されていませんでした。それなら自分でその重要性や育て方、飾り方を発信しながら販売すればよいのでは…と考えたのです。 冬場は昼間、暖房を使っていますが、閉店後はコストや空気の乾燥を防ぐためにも暖房を切っているので、夜温が5℃程度まで下がってしまう店内。そんな厳しい環境に慣らしているから、お客様も安心して育てることができます。「最近のマンションは、気密性が抜群なので心配ないんですけど、古い一軒家などではやや厳しいんです。植物はそんな高額ではありませんが、存在としては大きいですからね。失敗はしてもらいたくありません」と葛西さん。 陽がふりそそぐ窓辺には、多肉植物やミニサボテン、クリプタンサスやネオレゲリアなどのアナナス類が並びます。鉄パイプに工事現場で見かけるようなライトを取り付け、異国情緒漂う中に異質なエッセンスを添えています。 「空間のベースは‘洋’ですが、什器、商品のスタイルは一つに決めていません。植物はどんなものにもなじみやすく、それがここにいると分かると思います」。味わいのある古道具や無機質なアイテムなどを、グリーンが見事につないでいます。 「OOLJEE」では店頭の販売だけでなく、店舗やモデルルーム、個人宅、オフィスなどのコーディネイトも手がけており、トータルコーディネイトはもちろん、1鉢からでも相談にのっています。また、メンテナンスや、イベント・撮影用などの短期レンタルも行っており、おしゃれなショップから次々に声がかかっています。 「植物を選ぶ一番のポイントは、ライフスタイルに合っているかどうか。世話に追われてしまっては楽しく共存できませんから。数株まとめて注文を受けた時は、水やりのタイミングが同じ植物をご提案するようにしています。事務所や店舗で育てる場合、メンテナンスのストレスで本業のモチベーションを落とさないようにしてもらわなくては」と葛西さん。 【素敵なコーナーにクローズアップ①】 グリーンそれぞれの魅力を引き立てるための工夫をご紹介します。 左/2段の小さなステップを使って、カウンター脇の空間を瑞々しく埋めて。青白いチランジアがワンポイント。 右/バスケットと陶製の鉢カバーで、リズミカルなシーンに。 左/ショップ中央の照明には、大きな黒いライトを用いて、きりりとスパイシーに。光に当たった葉の陰影が美しい。 右/「植物の栽培は、日当たりはもちろんですが、風通しがとても大切です」と葛西さん。天井に取り付けた小さなサーキュレーターが、空気の流れを生んでいる。 上/レジカウンターの奥を目隠しするために、つるを伸ばすグリーンをハンギングして。 下左/ブラックの鉢カバーも混ぜ込み、ハンギングの装飾性を高めて。 下右/市場から入荷したままの黄×黒のプラ鉢も、ここならおしゃれに見える。 【素敵なコーナーにクローズアップ②】 津軽地方に多いという古道具屋仲間たちから集めたアイテムを使った、おしゃれなシーンをご紹介します。 古びたウッドボックスを壁に取りつけた飾り棚。葛西さんが塗ったというグレーの壁にピッタリ。 レジのカウンター上で活躍するのは、工事の足場を使って作った棚と、何に使われていたのか分からない出所不明のアイアンの格子。 子ども用の小さなピアノを飾り台に。白黒の鍵盤がシーンに変化を生んでいる。 左/洋間で使われていたと思われる2脚のチェアも、カウンターまわりの雰囲気を高めている。 右/ダンディなコートが似合う洋服掛けには、チランジアをハンギング。 左/昔懐かしい足踏みミシンは、シーンの引き締め役に。 右/大工さんの使う脚立には、ステップに板を渡してスタンドに。 左/トランクをボックスの嵩上げに使用。革の取っ手が渋さをプラス。 右/おばあちゃんの台所にありそうな籠。テラコッタやグリーンとの相性抜群。 「OOLJEE(オールジイ)」葛西さんのイチオシはコレ! 育てやすいホヤ・カルノーサ コンパクタ 初心者さんが来て、育てやすいコンパクトなものを探しているときは、丈夫なホヤをおすすめしています。ホヤはつる性の低木で、日本の南部から熱帯アジア、オーストラリア、太平洋諸島などに多くの種類が分布しています。葉は多肉質で光沢があり、花はピンクの金平糖のようで可愛らしいんですよ。特にこのホヤ・カルノーサ コンパクタは、葉がクルクルとユニーク。つるを伸ばすので、枝垂れさせて楽しんで。 青森では数少ないインドアグリーンの店「OOLJEE(オールジイ)」。レトロな建物の小さな空間に津軽の古道具や工具を配し、たくさんの観葉植物になじませたディスプレイが魅力です。「寒いからとあきらめてほしくない」という思いで、販売時の説明だけでなく、そのあとのメンテナンスにも力を入れています。困ったことがあれば、アドバイスもしてくれる頼もしいショップで、 SNSなども丁寧に発信しています。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、青森駅から徒歩約8分。 【GARDEN DATA】 「OOLJEE(オールジイ)」 青森県青森市新町1-11-11 TEL :017 723 8808 営業時間:10:00~18:00(平日)、11:00~18:00(土日祝) 定休日:月曜日 https://ooljee-works.com/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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新潟県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪26 新潟『「道の駅」庭園の郷 保内』
庭園・植木の文化の魅力を 発信する道の駅 新潟といえば日本有数の米どころ、三条といえば金物、そしてここ保内(ほない)は植木の産地として古くから発展してきました。そんな特徴を生かし、「見て、触れる」ことで、造園や植木、ガーデニングに親しみ、楽しむことができる道の駅として、地域の人々に愛されています。 『「道の駅」庭園の郷 保内』は、今から5年前の2016年にオープンし、翌年に道の駅として登録されました。地域の新鮮な特産物や野菜と並行して、植木や花苗、資材等を販売しています。 正面玄関を入って左側のエリアと屋外に設けられているのは、たくさんの植物と資材が並ぶ、園芸コーナー。明るい陽射しが入る建物内は、まるで温室のような雰囲気です。植物は地域の出荷業者が自信を持って納めたもので、こまめに苗をチェックしに来ていることもあり、常に生き生きと新鮮な状態で並んでいます。 大きなガラス張りのエリアの外は、季節の花や草木が並ぶ苗売り場。壁や屋根に使われた温かみのある木材や、やわらかな光のライトが、心地よい空間を演出しています。 大きくせり出した屋根の下は天候に左右されずに買い物ができ、ワークショップが定期的に開かれています。一番人気は寄せ植え講座で、用意された苗を植える初心者コースや、花を選ぶところから指導してくれるステップアップコースなど、お客様の要望に合わせて対応しています。 こだわりのガーデニングツールで 作業効率をアップさせよう ここ三条市は隣の燕市と併せて日本最大の金属製品の生産地です。それだけに、ガーデニングツールがホームセンター以上に揃う資材コーナーは必見。初心者から専門家、そして子ども用まで、多種多様な金物のツールがずらりと並んでいます。 ここでは、三条の工場で作られた金物を厳選して紹介しています。たくさんあるなかでも特にガーデニング向けのこだわりアイテムは、初心者ガーデナーが手に取りやすいようにテーブルの上に並べられています。 刃物や農具、鋳物などのガーデニング資材の多くが、三条で作られています。花首や長い茎を支える支柱や、プランターをハンギングするためのフックなど、ガーデニングのお役立ちアイテムがたくさん。造園用の根巻きや幹巻き用の資材も並んでいるので、眺めているだけで楽しく、勉強にもなります。 ガーデニングライフをサポートしてくれるアイテムも充実しています。なかでも好評なのが、首を覆う布がついた色とりどりの作業帽。お手頃な値段なので、洗い替えやその時の気分に合わせてかぶれるよう、いくつか揃えてみても。頭を覆う部分は、麦わらと布地があります。お好みで選んで。 隣の加茂市は日本有数のニットの産地。ここでは、ガーデニング時にあると便利なものを扱っています。人気商品は、ふんわりと足首をカバーしてくれる足首ウォーマー(左)と、引き締め効果が高くてゴムがずれにくく、5本指で血行を促進する丈夫な靴下(右)。 ここのイチオシが、ビニールヒモを編んで作ったベトナム製のバスケット。ガーデニンググッズや野菜の買い出しなど、さまざまなシーンで使えます。洗えるのも嬉しいポイント。カラフルで大きさも数種類あるので、選ぶのに迷ってしまいそう。 ガーデニングライフの必需品からおしゃれな雑貨類まで、ホームセンターをしのぐ品揃えを誇る、驚きの道の駅です。 道の駅ならではの おいしいものコーナー 天井が高く解放感にあふれる建物は、今年2021年初めに一部がリフォームされ、ますます買い物がしやすくなりました。ほかの道の駅同様、周辺の農家から出荷された旬の野菜をはじめ、ここでしか手に入らない地場農産物も並んでいます。 【ショップおすすめコーナー】 今年のリニューアルオープン時に設けられたのが、子どもたちを遊ばせながら、大人もくつろげるプレイスペース。子育て世代が楽しめるようにという配慮が、あちこちに盛り込まれています。 子どもたちに人気の、木箱を積んだジャングルジム。まわりの大きな植物は、プラントハンター・西畠清順氏が主宰する‘そら植物園’の提供で、異国情緒を漂わせながら展示販売されています。冬場は室内でも氷点下になることがある新潟ですが、ここでも丈夫に育つように、比較的耐寒性のある種類が、あらかじめ低温に慣らされて搬入されています。今後、西畠氏による海外の植木選びや演出法、現地の状況などについてのトークショーや講座などを催す予定もあります。 庭のことならなんでもお任せ! 頼もしい面子が勢ぞろい 建物の前には、広大な庭園と植物見本園が広がります。その広さは、なんと約30,000㎡。庭園には道の駅が提案する風景が広がり、見本園には保内の植木職人たちがすすめる植物や庭の提案がたっぷり盛り込まれています。 植木屋それぞれの持ちスペースでは、おすすめの植物を使いながら、独自の風景を作っています。ここに植えられているものは、根巻きやポット植えなので買うことができ、頼めば庭に植えてもらうことも可能。 上写真は、300年ほど前から大切に育てられてきた、‘保内五葉松’。葉が青白く光り、美しいグラデーションを見せることから、‘霜降り五葉松’とも呼ばれています。季節で微妙な葉色の移ろいが楽しめる‘保内五葉松’。一見の価値あり。 見本園の奥で、赤いパラソルが目を引くのは、道の駅自慢のイタリアンレストラン「パスタとピザの店・base(バーゼ)」。地元で採れた野菜をふんだんに使ったジャパニーズイタリアンレストランで、パスタ、ピザ、ラザニアなどのメニューがあります。 女性駅長とスタッフによる 庭の提案コーナーも注目 レストランのさらに奥に広がるのは、道の駅が提案するキッチンガーデンやキッズガーデン。「キッチンガーデンは、くまのプーさんに出てくるラビットの畑をイメージしているんです。キッズガーデンは、オランダのカラフルで楽しいガーデンを意識してつくっていますが、こちらは、まだこれから力を入れていく場所なんです」と、道の駅・駅長の加藤はと子さん。 加藤さんは、もともと三条市の産業振興のイベントを成功に導いたという、凄腕の女性駅長さん。パワフルでありながらも朗らかな人柄が魅力です。ガーデニングにも興味があり、オープン当初より就任している駅長職は、まさに適任。「対外的なことも多い仕事の合間に庭のことを考えています。庭づくりだけに専念したいぐらい、ガーデニングは気持ちがいいですね」と加藤さん。 ここは、「造園・植木の振興」だけでなく、「文化の交流の場・子育てを応援する場の提供」など、地域貢献を強く意識している注目度の高い道の駅。2019年、国土交通省により「地域活性化の拠点となり優れた役割を担う、‘重点道の駅’」に認定されました。 レストランの裏手にはレンタルスペース(和室)が。子ども連れの家族がここでゆっくりレストランの食事を楽しんだり、セミナーやワークショップを開催したり。さまざまな用途で利用できます。(1時間1部屋、500円〈税込〉、9~21時の間に利用可)。 「植物に親しみ、地元の食を味わう」をテーマに設立された『「道の駅」庭園の郷 保内』。幅広い年齢層がゆったりと楽しめる、ユニバーサルなスポットです。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、北陸自動車道・三条燕ICから約20分。JR信越本線「保内駅」から徒歩約20分。 【GARDEN DATA】 『「道の駅」庭園の郷 保内』 新潟県三条市下保内4035番地 TEL :0256-38-7276 営業時間:9:00~18:00 定休日:12月31日~1月2日(その他臨時休業あり) https://honai-gardens.com/ 写真協力(*)/庭園の郷 保内 Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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愛知県

宿根草が風に優しくそよぐ愛知・牧さんの庭
庭を会場にした写真講座を開催 僕がはじめて牧さんにお会いしたのは2012年12月、名古屋在住の友人の紹介で牧さんのお宅で写真講座をさせていただいた時になります。 その当時は、写真講座をよくやっていましたが、ほとんどの開催が東京中心。たまに大阪で開催したこともありましたが、名古屋周辺での写真講座は初めてでした。 名古屋周辺はコッツウォルドストーンやテラコッタなどガーデン資材を輸入してお庭をつくっている職人さんもたくさんいらっしゃるし、岐阜の「花フェスタ記念公園」も近隣にあるので、ガーデニング熱の高い地域だということは聞いていました。 写真講座の当日もガーデニング関係の仕事をされている方や、フェイスブックのお友達など多くの方が来てくださり、賑やかな写真講座となりました。開催日は12月でしたから、翌年のオープンガーデンに改めてお邪魔することを牧さんに約束し、その日は帰りました。 庭の最盛期に初訪問 翌年のオープンガーデンに伺って、バラ咲く牧さんの素晴らしい庭を拝見して以降、この地域周辺に来た際には必ずお邪魔させていただくようになりました。 そして、2016年の5月末、花フェスタ記念公園でいつものようにバラの撮影をしていて、日も暮れてきたから、そろそろホテルに帰ろうかと思っていた時のこと。偶然、産経メディックス『New Roses』編集長の玉置一裕さんと「花ごころ」の村田高広さんにお会いして、夕食に誘っていただきました。 可見市のイタリアンレストランでの食事中の話題は、もちろんバラです。最新のバラの話に盛り上がっているなかで、玉置さんに「今度『New Roses』でお庭の実例紹介のページはいかがですか?」と聞いてみたところ、それは面白いと気に入っていただき、翌年の春に撮影をして秋号で掲載という約束をいただきました。 撮影したいのは、ニューローズの咲く庭 『New Roses』での仕事は、これが初めてになりますから、気合を入れて取材に伺うお庭を考えてみるものの……。僕の得意なバラはオールドローズですから、オールドローズが咲く美しい庭ならすぐに頭に浮かぶのですが、玉置さんからの条件はただ一つ「ニューローズの咲くお庭でお願いします」だったのです。 『New Roses』を開きながら「これらのバラが咲いているお庭は?」と考えてみてもすぐには思いつきません。自分で考えても分からないなら誰かに聞くしかありません。ニューローズというと「バラの家」の木村卓功さんの「ロサオリエンティス」、「河本バラ園」、花ごころのフレンチローズの「デルバール」が咲くような庭を探せばいいかなと思い至って、早速フェイスブックで繋がっている友達に連絡をとってみることにしました。 予想通り「ロサオリエンティス」が咲く庭は千葉にあり、河本純子さんのバラが咲いているというのは以前Garden Storyにも登場していただいた内田美佐江さんの庭、そして「デルバール」のバラが咲くであろう庭は、名古屋で2軒がすぐ浮上し、そのうちの1軒が牧さんのお庭でした。 バラの最盛期に合わせて訪問 名古屋周辺のバラの撮影は、例年ですと5月20日前後です。この年も、2週間前から牧さんにバラの開花状況を確認しながら、2017年5月24日の午後3時にお庭に到着。天候は晴れ。以前は納屋だったという外壁が黒く塗られた可愛い小屋を一面に覆い咲く「小松バラ園」作出の‘芽衣’と「デルバール」の‘ビアンヴニュ’、そして、大小のピンクのバラが目に飛び込んできました。 小屋の手前にはグラスが風になびき、宿根草がさまざまに咲いていますから、僕はただこの絵になる小屋の真正面に立って、夕方の優しい光になるのを待てばよいだけでした。5時過ぎ、斜めからの優しい光が差し込んできてピンクのバラが輝き出したので、三脚にカメラをセットして撮影を開始。ゆっくり光の変化を確認しながら30分後には撮影を終了しました。その後、敷地の奥にある、以前は家族の畑だったというエリアをナチュラルな宿根草の庭に変える計画話をうかがって、その庭が完成したらまた撮影させてくださいねと約束して帰りました。 新エリアのナチュラルガーデンの成長 2019年5月17日には、約束の出来立てのナチュラルガーデンを撮影してGARDEN STORYにいち早く載せようと思ったものの、牧さんのお庭が何と同年に開催されたGARDEN STORYのバラのフォトコンテストで編集長賞を受賞したことから掲載時期の調整に続けてコロナ渦が重なったため、今年2021年の5月8日に改めて撮影に伺うことができました。 2019年の庭はまだ初々しい宿根草の庭でしたが、今年は、よりナチュラルな植栽に変わって、おしゃれ度も増した素敵なお庭になっていました。撮影時期が延期されましたが、改めて撮影に行くことができよかったと、つくづく思いました。 牧さんの庭のご紹介動画もぜひご覧ください。
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埼玉県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪25 埼玉「玄蕃ファーム」
せわしない日常から 離れられる格好の場所 田園の中を走るまっすぐな道沿いに突如現れる、小さな雑木林を背に広がる玄蕃ファーム。うっかり通り過ぎてしまいそうな場所ですが、歩道に沿って植わる木々と花々の合間からのぞく看板が目印です。 ショップの入り口も木々に覆われ、まるでどこかの高原にでも来たような雰囲気。二股に分かれた園路のつくりを見るだけで、店主のセンスのよさが分かります。 ショップに入ってすぐの右側に広がる、宿根草や鉢物コーナー。葉色が美しい樹木やパーゴラなどの構造物で重層的な風景を描き、奥の庭への期待感を高めています。 イギリスの田園風景への憧れから 誕生したメルヘンな空間 スタジオジブリの映画のワンシーンのような風景が広がる玄蕃ファーム。この店は、オーナーである武正祐二郎さんが「ここを訪れる人たちに、豊かな田園生活を感じてほしい」という思いを込めて、約20年前にオープンさせた園芸店です。「玄蕃(げんばん)」とは、江戸時代にこの地(埼玉県加須市大越)に居を構えたご先祖様の名前からとったものだとか。代々大切に受け継がれてきたこの土地への愛情がうかがえます。 売り場ももともとは雑木林でしたが、ショップをオープンさせるために、祐二郎さんは、奥様と友人の力を借りながら約2年がかりで開墾し、庭らしく整えていきました。 ショップを始める前祐二郎さんは、なんと庭や植物とは関係のない会社勤めのサラリーマン。海外出張が多く、各国の美しい風景や人々の暮らしを積極的に見て回っていました。その中で最も強く心惹かれたのは、イギリス・湖水地方の田舎の風景と庭。おとぎ話に出てくるようなシーンが続く、イギリスの街並み。古い家に手を入れながら、大切に住み続けているイギリスの人々の暮らしは、忙しい日々を過ごしている祐二郎さんの、まさに理想とするものでした。 日本で同じような時間を過ごすには…と考えた結果、思い切って早期退職。自宅の前に広がる雑木林を利用して、ショップをオープンさせることに決めたのです。 一念発起してショップづくりに心血を注いだ祐二郎さん。子どもの頃から植物や生き物が大好きだったので、このような庭づくりは、自身にとって自然な流れでした。当時はまだ50代はじめだったので、友人の力を借り、自身も楽しみながら店・庭づくりに専念。おとぎ話が暮らしの中に溶け込んでいるイギリスのエッセンスを、日本の景色にバランスよく取り入れていきました。10年ほど前から、息子の純一さんの若い感性が加わり、多彩に進化し続けています。 【雑木のエリアでのあしらいにZoom Up】 半日楽しめる 回遊式のガーデン 玄蕃ファームは、時計のついた建物とガラスハウスを軸に、回遊できるようにデザインされています。雑木のゾーン以外は、陽がたっぷり注ぐ明るいガーデン。エリアによって、趣ががらりと異なります。 雑木のゾーンには日陰の植物の苗が並んでいますが、隣のエリアは緑陰を利用して、半日陰を好む、楚々とした季節の山野草類の売り場です。苗の横には鉢植えの見本鉢が配されています。「自分の手で見本鉢を育てることは、お客様にどのように育つのかを見ていただくだけでなく、自分にとっても勉強になるんです」と純一さん。「お客様に分かりやすい」が第一のモットーだそう。 遊び心満載の売り場には 心が喜ぶシーンがたくさん 回遊できるショップ内には、見どころが満載です。しっとりとした雰囲気の中にユニークな仕掛けが潜む雑木のエリア同様、素朴でほっこりとするシーンが随所に散りばめられています。 自然な庭づくりに欠かせない樹木類も充実しています。依頼すれば、庭木1株から配達・植え込みサービスも行っています(エリア限定あり)。 店の奥のほうでは、のどかな風景づくりにひと役かっているマスコットアニマルたちに出合えます。大人気のヤギは3頭いて、みんな女の子。以前は雄もいましたが、「どんなに高い柵を作っても飛び越えてしまうなどあまりにも暴れん坊なので、譲ってくれた人にお返しして雌3頭を飼うことにしました」と純一さん。名前は ‘ラン’、‘ラッテ’、‘ハナ’。いつもは小屋の中でのんびりしていますが、ときどき店の裏手で草を食んでいます。 多肉植物を屋根に載せた飼育小屋の中には、つがいのチャボと5羽の子どもたちが、にぎやかに暮らしています。大人も子どもも心なごむ場所です。 フロントエリアは、構造物で仕切られた変化に富んだゾーン。木製パーゴラの先に腰高の大谷石の飾り壁を設けて視線をストップし、奥への期待感を高めています。石を積んだ空間まわりにも、仕掛けがたくさん。 【フロントエリアでのあしらいをZoom Up】 廃材で建てたカフェで 手づくりのピザを味わって 時計がついた建屋は、玄蕃ファームのシンボル的な存在。これも祐二郎さんが知人の手を借りて建てたものです。まるで廃校になった小学校のように古びて見えますが、じつは建ててからまだ20年ほどしか経っていません。この雰囲気は、使う材料を廃材にこだわった、祐二郎さんの感性によるもの。イギリスで見た風景を、日本に合うようにアレンジしながら再現しています。 時計のついた建物の中はカフェ。素朴で愛らしい内装は、森の中のペンションに来たようなしつらいです。ここでは、純一さん手づくりのピザやスイーツが楽しめます。 ピザ窯は、2011年の東日本大震災直前に親子で作ったもので、「震度5強という揺れでも壊れなかったんですよ」と話す純一さん。以前はまったく違う世界の仕事についていて、植物にはほとんど興味がなかったとか。ほんの軽い気持ちで10年ほど前に入社し、園芸の勉強を開始、植物・庭づくりの世界の想像以上の奥深さに驚いたといいます。そして、日々の努力と、雑木林と共に育った心の中にある原風景のおかげで、今では「玄蕃ファームのような庭をつくってほしい」と、お客様から引っ張りだこの人気ガーデナーに。祐二郎さんの右腕であり、店長として活躍しています。 イギリスの田園の雰囲気を感じさせるのどかな店「玄蕃ファーム」。遠くから訪れる人も多い、心なごむ空間です。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、東北自動車道・羽生ICから車で約5分。 【GARDEN DATA】 玄蕃ファーム 埼玉県加須市大越865 TEL 0480-69-1231 営業時間:10:00~17:00 カフェは、10:30~17:00(ランチタイム 11:00~13:00) 定休日:2021年春より当面の間は、 「GARDEN:月曜のみ定休 CAFE:月~木曜 定休(祝日はどちらも営業)」 夏季・年末年始に休業あり(詳細は更新情報に掲載) http://www.genbanfarm.co.jp/ Facebook:玄番ファーム Instagram:junichitakemasa Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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島根県

素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪24 島根「Soraniwa(そらにわ)」
つややかな緑と屋根のある売り場で 心地よくショッピング 松江駅から北東に20分ほど車を走らせたところにある「Soraniwa(そらにわ)」松江店。緑に囲まれたブルーの建物が目印です。 「Soraniwa(そらにわ)」は庭や外構の設計・施工・管理などを手掛ける「Green Gardens」が営む園芸店。鳥取県米子市にある本店に続き、2号店として6年前にオープンしました。今ではおいしいランチやスイーツが楽しめるカフェが設けられており、地域の人気スポットとして注目を浴びています。 つややかな緑のゲートをくぐると、正面に広がるのは花苗売り場。ずらりと並ぶ花苗は、自然な風景を生み出すナチュラルな趣のものがほとんどです。「僕の好みもあるのですが、主に植栽や寄せ植えの中で主張しすぎずになじみやすい草花を選んでいます」と、オーナーの作野良さん。ここで扱う花の種類は1千種以上にものぼるそう。屋根付きの店内は、雨の日でも安心してゆっくり買い物が楽しめます。 一角では、「ペチュニア祭り」が開催中。ショップおすすめのペチュニア、カリブラコアが並び、購入する数によっては割引も。その時々で取り上げる植物が変わります。 売り場を素敵に盛り上げる 装飾ディスプレイにも注目 ショップのイメージを印象づけているのは、大人っぽいカラーのブルーの建物です。しゃれた雰囲気ですが、これはかつてウナギの養殖場として建てられたあと、ライブハウスとして活用されていた古い建物だとか。「倉庫っぽいつくりが気に入ったんです」と作野さん。無骨な建物に、店名に通ずる色をペイントし、内装にもこだわりながらモダンに仕上げています。 売り場には、古いものやレトロな雰囲気を持つ道具や雑貨、ドライフラワーを用いたおしゃれなディスプレイがたくさん。これらは、かつて花屋で培った作野さんの感覚と、もともと備わっていた美的センスによるもの。ともするとシャビーになりすぎる組み合わせも、壁の程よい重みのあるモダンなカラーで、効果的に植物と響き合っています。 ‘わざわざ’行きたくなる 見どころ満載のショップ 店舗を囲む雑木類が瑞々しい緑のスクリーンとなって、心地よい時間を提供している「Soraniwa(そらにわ)」。ブルーの建物に美しくグリーンが映えるコーディネートです。これらを手掛けたのも作野さん。造園会社や花屋で修業したという実力派です。 30歳までに自分の店を持つと決めていた作野さん。独立までの約12年の間に、造園会社ではお寺の作庭や個人邸のエクステリア施工を行ったり、災害で崩れた松江城の石積み修復を手がけるなどの経験を通じ、ソフトからハード面まで、幅広い知識を吸収していきました。その後は花屋で、切り花のアレンジメントや店舗のディスプレイ、鉢花販売などの修業をし、今から12年前に独立。店内には、作野さんの高い技術と知識を裏付ける素敵なシーンがあちらこちらで見られます。 大通りに面した1号店の米子店に対し、4倍の広さがあるものの、市街地からはやや離れた場所にある松江店。立地としてはよいとはいえないだけに「わざわざ足を運ぶ店」を目指し、品揃えの充実だけでなく、庭づくりや暮らしを彩る提案をそこかしこに盛り込んでいます。 ショップでは庭やエクステリアの設計・施工を請けており、「庭づくりのことなら何でも聞いてください。植栽、エクステリア、ガーデニングとトータルでお客様をサポートいたします」と、頼もしい限りです。 ショップの空間を潤す 樹木と草花にズームアップ! ショップの自然な風景を構成している、植物たちをご紹介します(2021年5月中旬取材時)。 左/アオダモ:モクセイ科・落葉高木・H3~10m 中/ツリバナ:ニシキギ科・落葉中木・H2~4m 右/サルスベリ:ミソハギ科・落葉高木・H3~10m 左/ヤマモミジ:ムクロジ科・落葉高木・H5~10m 中/ベニシダレモミジ:ムクロジ科・落葉高木・H3~5m 右/テマリカンボク:スイカズラ科・落葉低木・H 1.2~2m 左/黄金コデマリ(スピラエア):バラ科・落葉低木・H約1.5m 中/コバノズイナ:ズイナ科・落葉低木・H 1.2~1.5m 右/西洋イワナンテン:ツツジ科・落葉低木・H約1.5m 左/ユーフォルビア・カラシアス:トウダイグサ科・多年草・H0.5~0.8m 中/キンギョソウ‘ブロンズドラゴン’:オオバコ科・一年草・H0.3~0.4m 下/ペンステモン‘ハスカーレッド’ :オオバコ科・多年草・H 06~0.9m 「Soraniwa(そらにわ)」の作野さんのイチオシはコレ! ナチュラルな草花を使った愛らしい寄せ植え ショップ入り口脇に並ぶ、愛らしい寄せ植えの数々。ショップの植栽同様、ナチュラルな花合わせが魅力です。鉢を持参すると、スタッフと一緒に植え替えや寄せ植えづくりができるのだとか。苗選びから付き合ってもらえるので、寄せ植えづくりのコツが学べます。 インテリアも学べる 屋内売り場 建物内のディスプレイもとても魅力的。トーンを落とした照明で、インドアグリーンを効果的に使い、落ち着きのある空間が演出されています。 こだわりの食材で 飛びきりの時間を提供 店内に設けられたカフェ「そらにわキッチン」では、卵・乳製品を使用せず、オーガニック食材によるランチやスイーツを提供しています。瑞々しいグリーンに囲まれながら、野菜を中心とした彩り豊かなヘルシーなランチと写真栄えしそうなスイーツを、ぜひ味わってみましょう。 緑に包まれた心地よい空間が人気の「Soraniwa(そらにわ)」。「わざわざ訪れてくれた人に、確かな満足を提供したい」という、ホスピタリティあふれるショップです。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、松江だんだん道路・川津ICから車で約5分。 【GARDEN DATA】 Soraniwa(そらにわ) 島根県松江市下東川津158-2 TEL:0852-67-5828 営業時間:10:00~18:30 定休日:火曜日 https://soraniwa-garden.com/ Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 写真協力/soraniwa
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北海道

天然のパラソルを作ろう! 木陰も実りも楽しめる果樹のパラソルツリー
管理がラクな果樹のパラソル仕立て 我が家には、木陰が心地よい小さな果樹が数本育っています。高さと幅はおよそ180cm。花や実を楽しむのはもちろん、枝葉を伸ばす木がまるでパラソルのように直射を遮りつつ、木漏れ日まで楽しめる。そう、名付けて「パラソルツリー」。住宅地でも育てられる存在感十分の生きたパラソルを育ててみませんか? この仕立てにすることで、枝葉に日光がまんべんなく当たり、株が元気に育ちます。そして、樹高180cm程度に低く抑えているので梯子いらず。隅々まで手が届きます。慣れると管理が楽ちんですよ。大きく育った今ある庭木でも、夏剪定の方法次第で木陰を楽しむパラソルに仕立て直せます。ぜひトライしてみてください。 パラソル仕立てに向く木の種類 大きく育ち剪定を必要とするバラ科の果樹であればパラソル仕立てが可能です。我が家では、スモモとミニリンゴの「アルプス乙女」をパラソル仕立てにしています。 ハナカイドウやウメもパラソルに仕立てることが可能な花木です。近年は品種改良も進んだことで、我が家のような寒冷地でも、暖地でも育つ樹種がいろいろ選べるようになっていますよ。ぜひ、調べてみてください。 パラソル仕立ての樹木の植え付けの時期と準備 土作りが、その後の成長を左右します。まずは、直径50cmほどのできるだけ深い穴を掘って、掘り上げた土に完熟堆肥をタップリ混ぜておきましょう。土がフカフカになり根がよく張って、すくすく育ちます。 一般的な植え付け適期は、通信販売で多くの苗が購入できる秋から3月頃。ですが、私の暮らす北海道夕張郡は凍結のため5月が適期です。こうしてみると、日本の気候は多様ですね。 地元のホームセンターに苗が並び始める時期が、お住まいの地域の植え付け適期である場合が多いようです。参考にするといいですよ。 パラソル仕立ての方法 【手順1】 植え付けた翌年の早春に、枝を1本残して切ります。残した枝をパラソルにしたい高さに切ります(長尺苗の場合、この段階は飛ばします)。 【手順2】7月初めに伸びた枝を3本残して切ります。その後さらに伸びてくる脇芽は見つけ次第手で折るか、翌年早春に剪定します。 【手順3】 残した枝に重りを吊り下げることで、枝先を下げます。初夏に内側に伸びた枝や多すぎる枝を切り、長すぎる枝先を切り詰めます。 パラソル仕立ての3~4年目以降の育て方 待ちに待ったパラソル状に仕立てることができたら、枝数や花や実が年々増えていきます。4~5年目には木陰の下でくつろげるようになりますよ。 剪定は「要らない枝を初夏に切る」「伸ばしたい枝に重りを下げる」を繰り返します。太くなった枝を切る場合、まだ寒い早春(冬)に行いましょう。 枝を下げるための重り選びの楽しみ 私は100円ショップの持ち手つきの小さな瓶を重りとして愛用中です。中にビー玉などを入れると重くなって、太く育った枝もたわめることができて実用的。 瓶の重りの使い方は、持ち手に紐を結び木に引っかけるだけ。とっても簡単です。瓶のほか、地面に置いたレンガに紐をかけて枝を下ろす方法もあります。人間が引っ掛からないよう、目印としてフラッグなどのアクセサリーを付けると可愛いですよ。 重りを吊す楽しみ方は、きっと無限大です。 剪定で今ある樹木を小さなパラソルに 今庭に育っている大きくなった庭木も、切り戻すことでパラソルにできます。 その手順は、初夏にほどよい位置で伸びてきた新枝に瓶などの重りを付けて枝先を下げておき、早春(寒冷地)もしくは冬(暖地)に、その新枝の上の部分を切り落とします。切り戻すと枝がたくさん出てくるので、すぐにこんもり茂ってきますよ。 年数が経った大木の場合、大胆に切り戻すとダメージが大きいので、何段階かに分け、数年かけて切り戻すと安心です。 パラソルツリーの根元に花壇を作る 苗木がパラソル状になるのは早くて3年目以降と気の長い話ですが、木の下を花壇として楽しめば、すぐ素敵な空間になりますし、花にあげる水や肥料が木にも届いてよく育ちます。 上は、我が家の木の下を参考に描いた図面です。 南側にお月様の形の花壇を、北側に椅子のコーナーを配しました。木の根元には根を傷めないよう、植えっぱなしにできるハーブを植えています(実際にもう15年、共存中です)。根元から離れた場所に宿根草や一年草を植えて楽しんでみるのはどうでしょうか? パラソルツリーで果樹をいっぱい収穫! 充実した実を安定して収穫するためには、品種ごとにさらなるコツが必要ですが、成功すれば達成感はひとしお。ぜひチャレンジしてみてくださいね。
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群馬県

「中之条ガーデンズ」のバラが特別に美しい理由とは? 7つのローズガーデンで過ごす至福のとき
7つの表情を持つローズガーデン仕掛けも楽しく、新鮮な驚きが 四季折々に多くの花で彩られる「中之条ガーデンズ」。初夏と秋に絶対に見逃せないのが、ローズガーデンです。約400種、1,000株を超えるバラたちが、一斉に咲き揃う6月、息を呑むような美しい景色で迎えてくれます。 植栽を担当したのは「横浜イングリッシュガーデン」のスーパーバイザーも務めるバラの専門家、河合伸志さん。ローズガーデンは、7つのセクションに分かれ、エリアによって花色も趣向もガラリと変化、歩を進めるごとに新鮮な驚きがあります。 来園者がローズガーデンで最初に目にするのは、ピンクのバラと淡い色彩の小花で彩られたロマンチックな小道。カーブする園路を進むと、白、黄色、赤と花色が変わり、スタンダード仕立てのバラが滝のように枝垂れる流麗な姿は、圧倒される美しさです。 雨の日には、しっとり、生き生きと咲くバラに出合えます。 園路が石畳へと変わり、続いて現れるのは、バラのイメージを覆す“和”のガーデンです。壁面には深紅のバラと紫のクレマチス、足元は空間を生かしつつ黒い玉砂利を配置。大胆でシンプルな構成は“禅”の精神を表現。正面には、黒御影石の水鏡に、中央が四角く切り取られた真っ白な壁が。この壁を額縁に見立て、遠景に広がる庭園を一幅の絵として観賞する仕掛けで、思わず写真を撮りたくなるスポットです。 モダンジャパニーズ風のガーデン。水面の鏡にバラ咲く景色が映り込み、絵画のように美しい。 ロマンチックなデザインが楽しめるガーランドのコーナー。* 和の庭を抜けると、再びパステルカラーのバラで埋め尽くされたガーランドのコーナーです。奥の八角形のエリアは、監修の河合さんが「一番の見どころ」と言う絶景ポイント。サークルベンチに座ると、四方から芳しいバラの香りに包まれ、至福のひとときが味わえます。 次は、一転して鮮やかな青い壁面に黄色のバラが調和する、ポップな空間が登場。7つのローズガーデンの中でも色彩のインパクトが強い、キュートな庭です。ベンチのコーナーやパーゴラ、ドームにバラが咲き競う、カラフルな世界を楽しんだ後は、白バラが輝くホワイトガーデンへ。その先は、シックな花色のバラを集めた、アンティークカラーの庭が。周囲を赤紫色の常緑樹トキワマンサクと黒葉のコクリュウが縁取り、スタイリッシュな色彩の調和を楽しめます。 噴水を中央に、白いバラや草花で360度包まれるホワイトガーデン。 世界でも類を見ないラゼット(赤みを帯びた茶褐色)とモーヴ(赤紫色)のバラで表現されたノットガーデン。河合さんが手掛けた最新の庭デザインも注目です。 最後のエリアは、豊かな香りを持つバラを集めたローズガーデン。赤いバラを中心に、紫、濃いピンクから淡い色へと花色がグラデーションを描くように植栽され、さまざまな色と香りで満たされた、夢のような空間が待っています。カフェスタンドとガーデンチェアもあり、飲み物を片手にバラに囲まれて優雅に過ごしていると、時間が経つのを忘れてしまいます。 遠くに山を望み、香るバラが周囲を彩る特等席で、カフェタイム。 標高480mという冷涼な気候が色濃く、香り高いバラを育てる * このように、次々と変化する庭の組み合わせは、中之条ガーデンズ全体のランドスケープを担当した空間デザイナーの吉谷博光さんと河合さんが考案。あえて入り口から全体を見渡せないようにしたことで「次はどんな景色が待ってるかな?」と、ワクワクしながら園路を進むことができます。まるで、美しい絵本を1ページずつめくるような期待感とともに、散策が楽しめるのです。また、アーチやフェンスなどバラと合わせる構造物は、すべて吉谷さんのオリジナルデザインというこだわりも。こうして、「美味しい料理(バラ)は美しい器に美しく盛りつける」という河合さんの信条通り、「中之条ガーデンズ」は、唯一無二の“バラの楽園”となっています。 実は、「中之条ガーデンズ」のバラの美しさには、もう一つ秘密があります。それは、標高480mという立地。平地よりも冷涼な気候のため、花色が濃く鮮やかで、香りも豊かになるのです。また、春バラの開花時期もやや遅め。平地での最盛期が終わった6月あたりから見頃を迎えるため、「一番美しいバラを見逃してしまった」という場合でも、まだ間に合うのも嬉しいポイント。 ローズガーデンからナチュラルガーデンとスパイラルガーデンを望む。 「中之条ガーデンズ」の見どころは、バラだけではありません。英国園芸研究家でガーデンデザイナーの吉谷桂子さんが植栽を担当した「スパイラルガーデン」と「ナチュラルガーデン」、樹木医の塚本こなみさんが手がけた大藤棚のほか、陶芸や草木染めの体験施設、地域の特産品がそろうショップも充実。植物を見るだけでなく、実際に触れたり体を動かしたりと、五感をフルに活かしてアクティブに楽しむことができます。 花咲く最盛期とともに、枯れゆく姿もその植物の表情として見せる。そんな新しい見方を提案するナチュラリスティックガーデン。 園のある中之条町には、四万温泉や沢渡温泉があり、同じ群馬県内の伊香保温泉までは車で30分程度。日中は広い庭園をゆったり散策して、夜は温泉でのんびり…なんていう計画もおすすめ。そんな贅沢な時間の過ごし方が似合うのが「中之条ガーデンズ」です。楽園気分を味わえる新名所「中之条ガーデンズ」へ、足を運んでみませんか? こちらも併せてお読みください。●『「中之条ガーデンズ」の魅力、苦労話、メンテまでバラの専門家・河合伸志さんにインタビュー!』 ●『7つの景色が楽しめる新ローズガーデン誕生!「中之条ガーデンズ」に行ってみよう!』 Information 中之条ガーデンズ(旧花の駅美野原)所在地:群馬県吾妻郡中之条町大字折田2411TEL:0279-75-7111https://nakanojo-g.jp/アクセス:関越自動車道渋川・伊香保I.C.下車、約50分。国道17・353号線経由で「中之条ガーデンズ」または、上野駅から「特急 草津号」で約2時間、中之条駅下車。タクシーで約20分。見頃の開園時間:9:00〜17:00(入園は16:30まで)休園日:年末年始(園内メンテナンスのため不定期休園はこちらでご確認ください)料金:■一般/大人(高校生以上)300〜1,000円、小・中学生200〜500円、小・中学生未満 無料*入園料は「花の見ごろ」に合わせた変動制です。団体の方、障害者手帳をお持ちの方は割引があります。詳しくはこちら駐車場:乗用車300台、大型バス10台(無料) 取材協力/中之条ガーデンズ 写真(*)/今井秀治
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千葉県

カメラマンが訪ねた感動の花の庭。千葉県八千代市のレストラン「貝殻亭」
38年ガーデナーによって守られてきたバラ 今回ご紹介する庭は、毎年4月の後半になると、ナニワイバラが屋根一面を真っ白に覆い尽くすことで有名な、千葉県八千代市勝田台のレストラン「貝殻亭」です。この「貝殻亭リゾート」を運営する株式会社ジー・ピー・アイの代表取締役社長の岩﨑肇氏は、地元の佐倉バラ会の理事長。つまり、このレストランとバラは、深い絆で結ばれているのです。 有名な屋根のナニワイバラのほか、ケーキショップの壁にかかるモッコウバラ、2階のカフェの入り口に繋がる橋にはサクライバラと、「佐倉ミステリーローズ」ガーデン内には、ノバラや原種系のバラがいろいろ植えられています。 今月のストーリーの主役、屋根一面を覆うナニワイバラは、1984年に先代のオーナーが植えたもので、それ以来38年間、その時々のガーデナーさんたちによって大切に育てられてきました。 バラ仲間と会食や写真講座などで幾度も通う 僕がこのナニワイバラで有名なレストランを初めて知ったのは、多分25年くらい前のことだと思います。当時はすでに雑誌などでバラの撮影を始めていた頃。家内が、どなたからか、バラで有名なレストラン「貝殻亭」のことを聞いてきてくれて、「今度行ってみようか」なんて話をしたんだと思います。その時すぐに伺ったかどうかは覚えていませんが、その後、プライベートやオールドローズ関係の友人との食事会などで、数回伺ったことがあります。 また、一番思い出に残っているのは、2012年に2階のカフェスペースで「ガーデンサロントーク写真講座」をさせていただいたことです。当日はたくさんの知り合いやお客様に来ていただいて、スライドを使っての講座でした。その後はオシャレなランチを食べながらの質問タイムなど、楽しい時間を過ごしたことを覚えています。 その後も何回か雑誌やバラ図鑑用の写真の撮影などで伺って、ナニワイバラやサクライバラなどを撮らせていただいています。 最近では、3年前に河合伸志さんの著書『美しく育てやすいバラ銘花図鑑』の仕事で、夕方まで屋根一面に咲くナニワイバラの撮影をさせていただきました。 2021年の開花最盛期に早朝撮影 今回の撮影は、4月23日の早朝に行いました。千葉市内の自宅から勝田台の「貝殻亭」までは約10km、午前4時半に家を出て5時前には到着しました。静まり返った駐車場に車を止めて、外に出て空を見上げると、青い空には雲一つなく、東側はもう明るくなり始めています。まずは、ナニワイバラの咲く屋根の正面に行ってみると、南東の方角を向いた屋根にはまだ朝陽が当たっておらず、ボンヤリとした光に包まれています。撮影を始めるまでにはまだ少し時間がありそうなので、もう一度駐車場側に戻って、別の撮影場所の確認をしました。 ケーキショップの壁際のモッコウバラ、ガーデンに向かう階段を上って2階カフェに向かう橋の佐倉ミステリーローズ、そしてサクライバラの咲き具合をチェックして、再びナニワイバラが咲く側に戻りました。屋根のそばまで近寄ってみると、どの花もちょうど咲き出したところのようです。屋根全体のどこを見渡しても、咲き終わった花は一つもありません。今日は最高のコンディションの花を最高の朝の光で撮影できるぞと、思わず気合いが入りました。 日射しが強くなる前にアングルを決めて、光がよくなるのを待つことに。三脚を担いで右に行ってはファインダーを覗き、もう少し左かなぁとまた歩き……などしていると、画面の右側(東側)の屋根の先端に朝陽が差し、輝き始めました。こうなると、もう時間の問題。朝はあっという間に太陽が昇り、強い光が上から差し込んできます。花は反射板を使ったように真っ白になって質感も何もなくなってしまうし、花の影は真っ黒になって、とても撮影ができる状態ではなってしまいます。 朝日に輝くバラの美しい瞬間を撮る シャッターを押すタイミングは、太陽が屋根を越えた瞬間に現れる魔法の光に包まれたほんの5~10分の間です。右は夜間用のライトのポールがギリギリ入らないようにアングルに注意して、左はナニワイバラの枝の先端までと決めました。あとは、朝の光が東側から屋根を越えてナニワイバラに沿って優しく差し込んでくるのを待つだけです。 まだ少し肌寒い中で待つこと5分くらいだったか……。朝日が屋根を越えた瞬間、あたり一面がふぁーっと明るくなって、ファインダーの中に見えるナニワイバラも輝き出しました。魔法の時間の優しい光に包まれた、カメラマンにとってとても幸せな時間の始まりです。あとは2、3分おきにシャッターを切って、光が強くなりすぎたところで撮影は終了。 ナニワイバラを撮り終えたら、急いで駐車場側に移動して、モッコウバラを。サクライバラは終わりかけていたので、佐倉ミステリーローズを撮って、7時過ぎに撮影はすべて終了しました。 取材協力/貝殻亭



















