北海道のガーデンを堪能する「秋のダリア旅」前編
日本中で一番早く秋が訪れる北海道。10月は辺りの紅葉が進み、各所のガーデンでは壮大な景色の中に鮮やかなダリアが目を引きます。今回は10年間、毎年北海道を旅してきたという千葉在住の橋本景子さんによる北海道一人旅、前編。旅のテーマは「ダリアの美しさを堪能する」。秋色に染まる庭風景とダリアの写真とともに、秋の北海道を旅する気分をお届けします。
目次
秋ならではの美しい風景に会いに行く
毎年恒例の北海道へのガーデンツアーは、例年ならば7月初旬、バラの開花時期に合わせて友人たちと一緒に行くことが多かったのですが、ここ数年、春の華やかさとはまた違った美しさがあると知ってからは、秋のガーデンを訪ねるのも楽しみになっています。
昨年2020年10月初旬は、ちょうど緊急事態宣言が解除された合間でしたが、コロナ禍でもあったので、行き先もスケジュールも行き当たりばったり。気の向くままの自由な一人旅にしました。でも、一つだけ決めていた目標は「ダリアの美しさを満喫する旅」でした。
新千歳から2時間ほど。まっすぐ帯広に向かい、春に行けなかったガーデンを巡ります。
まずは中川郡幕別町にある「十勝ヒルズ」へ。
花と食と農がコンセプトの、丘の上の広大な「十勝ヒルズ」。ここには、リンゴやベリー、はちみつやバニラなどの美味しい香りがするバラ35品種800株が植わるバラ園と、果樹やハーブなどの食べられる植物を育てるポタジェ、そしてピクニックを楽しみながら宿根草を愛でるエリア、ガーデンの妖精アニーカが住むといわれるピンクのガーデン、さらには、睡蓮が咲きトンボが飛び交うトンボ池などユニークなテーマの9つのエリアがあり、心身共にリラックスして、ゆったりと過ごすことができます。
花期が長い青花、サルビア‘ミスティック・スパイヤーズブルー’を列植して十勝の青い空を表現した「スカイミラー」。遠くに十勝の街を望む、カラフルな『映えスポット』です。
広い芝生を海原に見立てて、プカプカと浮かぶ小島をイメージしたという「フラワーアイランズ」。アイランド型に作られた植え込みエリアの中は、一年草や宿根草で彩られています。
「十勝ヒルズ」を後にし、次の目的地に向かう途中に、突然現れた案内板。
一人旅の気楽なところは「あ、じゃ立ち寄ってみよう」と瞬間的に決められることですね。
懐かしい名前の駅が、すぐそこにありました。
知った名を発見して、ちょっと寄り道
旧国鉄時代に「愛の国から幸福へ」のキャッチフレーズで大人気になり、今ではもう廃線となっている広尾線の駅です。この切符が大流行したのは、もうはるか昔のことですが……。
鉄道オタクの夫のためにお土産写真を撮って、次のガーデンに向かいます。
旅に欠かせない場所「十勝千年の森」でメドウを見る
1,000年という単位で時間が流れる森の視点から物事をとらえ、本質にきちんと向き合いながら、自然と人が真に共生していくための一歩を踏み出したいという思いから名付けられたという「十勝千年の森」。北国の庭園文化の創造を目指して展開する4つの「北海道ガーデン」と「HGSデザイナーズガーデン」、国内外の気鋭の作家による8つの現代アート作品が森に点在する「ARTLINE」によって、魅力的な屋外空間が構成されています。
中でも、ガーデンデザイナー、ダン・ピアソンが、十勝の大自然からインスピレーションを受けてデザインした「メドウガーデン」は、ナチュラリスティック スタイル(自然主義の庭)としては日本で初の試み。土地の自生種とその系統を汲む園芸種や、十勝と似た気候の北米の植物が使われていて、一つの植生から次の植生へと連なり合って咲いていくナチュラルな風景に出会えます。この景色を初めて見たときに、日本人が憧れていたバラを中心としたイングリッシュガーデンとは全く違う印象にびっくりし感激したものでした。
それ以来、「十勝千年の森」にあるメドウの風景は、私の北海道ガーデンツアーには欠かせないものとなりました。
ガーデンカフェにアレンジされていた、たくさんのダリアを独り占めして、ゆっくりと写真を撮らせていただきました。なんと贅沢な時間だったことでしょう。
紫竹ガーデンの景色を独り占め
秋の日は切ないほどに短く、帯広のホテルに着く前に、時間があればもう1カ所と思い、「紫竹ガーデン」に滑り込みました。
遠く日高山脈の峰々を望み、十勝平野の田園地帯に広がる15,000坪という広大なガーデンは、6時の閉園までには少し時間がありましたが、ここもまたお客様の姿がほとんどなく、独り占めの贅沢を味わいました。
寒冷地でダリアを咲かせるためには、たいへんな労力が必要。これだけの数となると、気が遠くなりそうです。
お怪我で入院と伺っていた昭葉おばあちゃんがいらして、入院中にアマビエをたくさん描いて皆さんにお配りしたという話や植物のことなど、2人で小一時間ほどおしゃべりをして、楽しい時間を過ごしました。
2021年春に突然亡くなられたと知り、あの日にゆっくりお話しできたことがまるで奇跡のように思えて、今でも素敵な思い出として心に残っています。
Credit
写真・文/橋本景子
千葉県流山市在住。ガーデングユニットNoraの一人として毎年5月にオープンガーデンを開催中。趣味は、そこに庭があると聞くと北海道から沖縄まで足を運び、自分の目で素敵な庭を発見すること。アメブロ公式ブロガーであり、雑誌『Garden Diary』にて連載中。インスタグラムでのフォロワーも3.6万人に。大好きなDIYで狭い敷地を生かした庭をどうつくろうかと日々奮闘中。花より枯れたリーフの美しさに萌える。
YouTube 「Kay garden」
Noraレポート https://ameblo.jp/kay1219/
インスタグラム kay_hashimoto
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