日陰でも“明るく見せる”コツは、白斑・ライム・銀葉を面で重ね、縁取りを切れ目なくつなぐこと。本稿では実例写真と配置図で、今日から真似できる3レイアウトとシェードエリアで活躍する宿根草ベスト15の使い分けを解説します。嬉しいことに、日陰エリアを好む植物は、常緑でメンテナンスが楽なものが多数。一度植えてしまえば、美しいシェードガーデンがずっと楽しめますよ。
目次
“明るく見せる”には「葉っぱ」がキーポイント

・明度アップ:暗くなりがちなエリアには、明度の高い「白斑入りの葉」「ライムイエローの葉」「銀葉」をまとまりで配置すると暗所でも発光して見えます。
・形と葉質ミックス:ただし、「白斑入りの葉」1種のみをたくさん植えても風景は単調に。「丸葉」「線形」「羽状」など葉の形の異なるもの、「艶やか」「マット」「粉っぽさ」など葉質の異なるものを意識して組み合わせると、美しい景色が生まれます。
・背景処理:植物の背景となる壁や小径、石段も明度の高い色を使うとエリアが明るくなります。壁をペンキで白く塗るのも効果的。
チェックポイント
⬜︎「白斑入りの葉」「ライムイエローの葉」「銀葉」が全体の3〜4割を占めるようセレクト。
⬜︎主役1割、脇役3割、ベース6割の面積構成を目安に。
⬜︎日陰エリアは土が加湿になりがち。腐葉土や軽石を入れて、水はけよく土壌改良しておく。
実例1|石段アプローチを明るく



主役(図面★):アレナシラム・エラチス・ブルボサム‘バリエガタム’(左)、白斑入りツワブキ(右)

脇役:プテリス・アルボリネアータ、黄斑入りツワブキ

脇役:シダ
入口側に株幅60cm前後の白斑リーフを主役としてまとめ、視界の最初に“白の面”をつくると全体の明度が一段上がります。丸葉(ツワブキ)→線形(プテリス)→羽状葉のシダの順で異なるフォルムをリズミカルに連続させ、形のコントラストで装飾性と奥行きを。主役は3株を三角配置で“塊”にするとより効果的です。
実例2|小径ボーダーを“光のライン”に



主役(図面★):斑入りアマドコロ(上)、ヒューケラ(下)

脇役&ベース:リシマキア・ヌンムラリア‘オーレア’(左上)、リシマキア・コンゲスティフロラ‘ミッドナイトサン’(右下)
グラウンドカバーはリシマキアを2種、30〜40cmピッチで交互に配植して連続する二層帯に。明(オーレア)×暗(ミッドナイトサン)のコントラストが小径の輪郭を際立たせます。主役は斑入りアマドコロの白い線と赤葉ヒューケラの丸葉。形と色がぶつかる配置で奥行きが生まれ、初夏はアマドコロの白花やヒューケラの赤花が加わり、小径の表情が変わるのも魅力。
実例3|中景ボーダーを“白斑の面”で浮き上がらせる



主役(図面★):白斑入りのギボウシ、エゴポディウム‘バリエガータ’

脇役:アマドコロ(上)、ミツバシモツケソウ(下)、フウチソウ(下)
白斑のギボウシをまとめて3〜4株配置。手前をアマドコロの落ち着いたグリーンで締め、後列に線状の葉姿が軽やかなフウチソウ、小葉のミツバシモツケソウを重ねると、フォルムと色の対比でギボウシの白斑が浮き上がります。さらに、奥にも斑入り葉のエゴポディウムを広がらせて光量感をプラス。幅1mの帯でも十分な発光感が出ます。
ベスト15|明るさアップ、メリハリフォルムのシェードプランツ
明るさを次の3段階に分け「明るさ適性」を区分しています。
- 明るい日陰/空が見える、手元で本が読める
- 半日陰/午前のみ日が差す、木漏れ日
- 暗めの日陰/空が見えにくい、常に薄暗い
ギボウシ(各種)

- タイプ:白斑/ライムなど品種数多数/主役級
- 明るさ適性:①②
- サイズ:H15〜200cm・株幅15〜180cm
- メモ:半日陰〜日陰。乾燥NG。初夏の花後に傷んだ葉を整理でリフレッシュ。
ヤツデ・バリエガータ

- タイプ:白斑大葉/背景〜主役級・常緑
- 明るさ適性:①②③
- サイズ:H150〜250cm・株幅150〜250cm
- メモ:裏庭の壁面ライティング役。強光は葉焼けに注意。
アレナシラム・エラチス・ブルボサム‘バリエガタム’

- タイプ:白〜クリームの縦斑/背景〜主役級・常緑
- 明るさ適性:①②
- サイズ:H50〜70cm・株幅60cm
- メモ:早春に株元5〜10cmで切り戻すと、新葉にきれいに更新。
ツワブキ‘浮雲錦(ウキグモニシキ)’

- タイプ:白斑艶葉/主役級・常緑
- 明るさ適性:①②
- サイズ:H40〜60cm・株幅40cm
- メモ:晩秋に黄色の花が咲く。古葉整理で株元を明るく。

アジュガ・レプタンス‘バーガンディグロウ’

- タイプ:銅葉×斑/縁取り・常緑
- 明るさ適性:②③
- サイズ:H10〜15cm・株幅20〜25cm
- メモ:春には青紫の花が咲く。グラウンドカバーに。広がりは剪定でコントロール可能。
プテリス・アルボリアネータ

- タイプ:白斑シダ/中景・常緑
- 明るさ適性:①②③
- サイズ:H30〜80cm・株幅30〜80cm
- メモ:通気と湿りを好む。夏は株元の蒸れに注意。
エゴポディウム‘バリエガータ’

- タイプ:白斑/中景〜縁取り
- 明るさ適性:①②③
- サイズ:H20〜30cm・株幅30cm
- メモ:広がり旺盛。埋設板やレンガで範囲管理を。
リシマキア・ヌンムラリア‘オーレア’

- タイプ:ライム/縁取り・常緑
- 明るさ適性:①②
- サイズ:H5〜10cm・株幅30cm以上
- メモ: “光のグラウンドカバー”。冬期はブロンズ色に紅葉。
ムラサキツユクサ‘スイートケイト’
- タイプ:ライム×紫花/中景向き
- 明るさ適性:①②
- サイズ:H30〜50cm・株幅30〜50cm
- メモ:春〜秋に濃い紫色の花が咲く。
プラティア・ヌンムラリア

- タイプ:明緑細葉/縁取り・目地
- 明るさ適性:①②
- サイズ:H5cm・株幅15〜20cm
- メモ:グラウンドカバーにできるが、踏圧弱めの場所向き。春〜秋にブルーの小花がびっしり開花。
ブルネラ・マクロフィラ‘ジャックフロスト’

- タイプ:銀葉網目/主役級
- 明るさ適性:①②
- サイズ:H30〜40cm・株幅50〜70cm
- メモ:春にワスレナグサによく似た水色の花が咲く。午後の強光を避けると葉焼けしにくい。
斑入りアマドコロ

- タイプ:白斑×白花/中景〜主役
- 明るさ適性:①②③
- サイズ:H60cm前後・株幅50cm以上
- メモ:場所が気に入れば地下茎で増えて広がる。春から初夏に小さな白い花をアーチ状の茎に連らせて咲く。
ヒューケラ

- タイプ:色彩多彩・常緑/中景〜縁取り
- 明るさ適性:①②
- サイズ:H20〜80cm・株幅20〜40cm
- メモ:冬も色が残りオフシーズンの主役に。
ティアレラ

- タイプ:白花+葉模様・常緑/中景
- 明るさ適性:②③
- サイズ:H25〜40cm・株幅25〜40cm
- メモ:春の花穂が“ライティング効果”。やや湿った場所を好む。
ベルゲニア

- タイプ:艶と厚みのある丸葉・常緑/主役〜縁取り
- 明るさ適性:①②③
- サイズ:H20〜40cm・株幅30cm
- メモ:常緑で“面”を確保。早春にピンクの花が咲く。冬の紅葉もアクセント。
季節のメンテナンス(年間カレンダー)
- 春:古葉整理&緩効性肥料。縁取りの欠けは補植。
- 梅雨:蒸れやすい株(エゴポディウム等)を間引き/株分け。
- 夏:午前日照OK・午後遮光。水やりは朝(酷暑日は朝+夕)。
- 秋:更新の追肥、落葉マルチで越冬準備。
- 冬:常緑種で色を残す。傷んだ葉は都度カット。
失敗→改善パターン

- 白斑を入れたが暗い → 同系を3株まとめて白斑の“面”を作る。
- ごちゃついて重い → 丸葉の塊を等間隔に置いて“休符”。
- 広がりすぎ → 根茎バリア(プラ板・レンガ)を地中5〜10cmに。
- 斑が消えた → 光量不足が多い。午前2〜3時間の斜光+上部の枝透かし。
日陰の植物よくある質問Q&A
Q1. 本当に日陰でも育つ?
A. ここで紹介した15種はOK。庭の日陰を3段階で判定した「明るさ適性」を参考に取り入れてみてください。
- 明るい日陰/空が見える、手元で本が読める
- 半日陰/午前のみ日が差す、木漏れ日
- 暗めの日陰/空が見えにくい、常に薄暗い
Q2. ナメクジ対策は?
A. 銅テープ・ビールトラップ・夜/早朝の見回り。ギボウシは古葉整理で隠れ場所を減らすことができます。
Q3. 冬の見映えが心配
A. ベルゲニア+ヒューケラ+リシマキアなどの常緑を入れれば、冬も色を確保できます。
日陰向きの植物は、丈夫で育てやすいのも魅力。季節ごとの簡単メンテを続ければ、春の芽吹き、初夏の花、秋の彩り、冬の残色までさまざまな表情が楽しめます。
日陰は弱点ではなく、光を“編集”して楽しむためのキャンバス――あなたの庭の一番好きな場所に育てましょう。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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