都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園で始動
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテストとして注目されている「東京パークガーデンアワード」。第3回コンテストが、都立砧公園(東京都世田谷区)を舞台に、いよいよスタートしました。2024年12月には、第1回目の作庭が完了。2025年11月のファイナル審査まで、一年をかけて行われるコンテストガーデンの月々の様子をレポートします。
目次
第3回コンテスト会場は「都立砧公園」
2022年に代々木公園から始まった「東京パークガーデンアワード」。第2回の神代植物公園に続き、3回目となる今回は、成城学園、二子玉川など閑静な住宅街からほど近い場所にある都立砧公園(東京都世田谷区)が舞台です。芝生の広場と樹林で構成されたファミリーパークのほか、運動施設や遊具等が設置された広場が整備され、区民みんなに親しまれている公園でコンテストが繰り広げられます。
第3回のテーマは「みんなのガーデン」
天気のよい休日には、家族連れがお弁当を広げる光景もあちこちで見られ、地域の住民をはじめ、多くの人々に親しまれている砧公園。‘みんなのひろば’前で開催される「第3回 東京パークガーデンアワード」のコンテストテーマは『みんなのガーデン』です。「東京パークガーデンアワード」の目指す“持続可能なロングライフ・ローメンテナンス”であることはもちろん、訪れる人々の五感を刺激し、誰もが見ていて楽しいと感じる要素を取り入れたガーデンであることが求められます。植栽のメインとなる宿根草は、丈夫で長生きすることから、季節ごとの植え替えは行わず、四季ごとに花の彩りがあることも期待されています。
第3回のコンテストガーデン
今回のガーデンでは、通路を挟んで対に設けられた2つ1組の花壇が5つ連なっています。隣接する‘みんなのひろば’や‘ねむのき広場’からコンテストエリア全体を眺めたり、花壇に挟まれた通路を歩きながら、左右に育つ植物を観賞したりするなど、さまざまな角度からガーデンを堪能することができます。
【第3回 東京パークガーデンアワード in 砧公園 最終審査までのスケジュール】
コンテストに挑戦する5名の入賞者が1年を通してガーデン制作に挑む「東京パークガーデンアワード」。2024年12月中旬に、それぞれの区画で1回目の作庭が完了し、2025年2月下旬に2回目の作庭日が設けられています。その後、4月は春の見頃を迎えた観賞性を審査する『ショーアップ審査』、7月は梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査する『サステナブル審査』、11月は秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する『サステナブル審査』が行われ、グランプリが決定します。
以下、入賞者決定~審査結果発表までのスケジュール。
【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者の関心が得られる工夫があること/公園利用者が心地よく感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること/メンテナンスがしやすいこと/テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること/総合評価
※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。
全国から選ばれた入賞者5名のガーデンコンセプト
コンテストのテーマとルールをふまえて制作される5つのガーデン。それぞれのガーデナーが目指す庭を、作者の制作意図や図面、植物リストの一部を紹介しながら、月々の様子を撮影した写真とともにお伝えします。
コンテストガーデンA
Gathering of Bouquet 〜庭の花束〜
保坂悠平
(東京都)
明治大学農学部農学科を卒業。造園会社を経て、花卉小売業界に転身。バイオフィリックデザインの企画・提案に造園技法を取り入れながら、緑化事業を中心とした業務に従事する。また、設計段階から植栽計画に参画して施工監理まで携わる他、地域の多世代交流を目的としたコミュニティデザインプログラムの監修業務を担う。
【作品のテーマ・制作意図】
皆さんの日常に癒やしや潤いを届けたいという願いを込め、プランツ・ギャザリングの視点で、ガーデンをひとつの大きなブーケに見立ててデザインを構成しました。動物たちが次の訪問者のために心遣いを残していく絵本から着想を得て、あらゆる世代の方が見て触れて、香りなどを楽しめるように、花の形や手触りがおもしろいものを用いた植栽計画をしています。ぜひ手に取って、お気に入りの植物を見つけてください。たくさんの感動や気づきが新たな会話を生み、笑顔になるシーンが増えますように。
【主な植物リスト】
宿根草:エキナセア‘マグナススーペリア’/ペンステモン‘ストリクタス’/アガパンサス‘ピッチュンホワイト’/クラスペディア‘ゴールドスティック’/オルレア・グランディフローラ‘ホワイトレース’ など
グラス類:ペニセタム・ビロサム‘銀狐’/メリニス‘サバンナ’/ホルデューム・ジュバタム/カラマグロスティス・ブラキトリカ など
低木:コルヌス・ステラピンク/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’/ニシキギ・コンパクター/コバノズイナ など
球根:チューリップ‘フレーミングピューリシマ’/レウコジャム‘スノーフレーク’/アリウム‘グレイスフルビューティ’ など
12月の様子
コンテストガーデンB
Circle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜
世田谷bajicoポットラックガーデン
代表デザイナー 石野夕華(東京都)
造園会社や園芸店での勤務を経て、自身の出産のタイミングで独立。知人のお庭づくりから始まり、現在は世田谷区内の個人宅や地域子育て支援拠点おでかけひろばをメインに自転車で移動する、ちりりんガーデナーとして活動中。世田谷区立桜丘農業公園(仮)予定地の暫定利用期間に「桜丘ポットラックガーデン」の運営に従事。
【作品のテーマ・制作意図】
季節によってカラーリングが変化する植物や、実をつけて味わい深い風景を作ってくれる植物に集まる多様な生き物たち。そして各所に配置したサークルネストはそんな生き物たちの拠り所に。命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインしました。人間だけに限らず、あらゆる生き物たち「みんな」にとっても楽しめる「命を感じられるガーデン」は「みんなのにわ」となり、命を循環させてゆきます。
【主な植物リスト】
宿根草:バプティシア‘ブルーベリーサンデー’/アガスター‘シェゴールデンジュビリー’ /糸葉丁子草/スタキス・オフィシナリス など
グラス類:カレックス‘プレーリーファイア’/メリニス‘サバンナ’/ぺニセタム・オリエンターレ など
低木:ブルーベリー/イチジク/紫式部 など
球根:アリウム各種/チューリップ各種 など
12月の様子
コンテストガーデンC
Ladybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」
小野雄大
(宮城県)
スワローテールガーデン代表。英国の「ドライストーンウォーリング」という石だけを使った石積みを中心に様々な広さの庭づくりをしています。そこに集まる生き物たちや、たおやかによりそうように成長して行く植物たち、みんなにとって気持ちの良い場所になるように。そんな思いを軸に設計デザインから施工まで手がけています。
【作品のテーマ・制作意図】
砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽のデザインをしています。植栽は、見る場所や角度によって印象が変わるように、カマキリなどの天敵が身を潜められるような複雑さが出るよう工夫しました。植物は、てんとう虫やカマキリの食料となるアブラムシなどが好む「バンカープランツ」や蝶やミツバチたちの蜜源となる植物を植えています。「小さな住人(虫たち)」の生活をそっとのぞき見ることができる場所を目指しています。ここでの小さな体験が、自分の身近な自然環境を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。
【主な植物リスト】
バンカープランツ:へメロカリス/ユウスゲ/イタリアンパセリ など
宿根草:モナルダ・ブリドブリアナ/エキナセア‘メローイエロー’/アスター‘オクトーバースカイ’ など
グラス類:スキザキリウム‘ハハトンカ’/ぺニセタム・カシアン/パニカム‘シェナンドア’ など
低木:キンカン/アロニア/コバノズイナ など
球根:ダッチアイリス‘ブルーマジック’/カマシア/カノコユリ‘ブラックビューティー’ など
12月の様子
コンテストガーデンD
KINUTA “One Health” Garden
合同会社百暮
代表デザイナー 高橋祐眞(神奈川県)
岐阜県大垣市出身。生態系や地域に根差した空間を軸にランドスケープアーキテクトとして、公共、民間の造園設計、現場監理に従事。今回のKINUTA ‘One Health’Gardenは、生態系、植木、ワークショップ、微生物の専門家とチームで作成し、人、生き物、環境が調和するみんなのガーデンを目指しました。
【作品のテーマ・制作意図】
ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、それら3つの主体が密接に関わり合う「ワンヘルスガーデン」をつくります。土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込む。ガーデンの香りや触れ合いを通し、ヒトの健康と安らぎを生み出すガーデンをつくり、いろいろな生きものがやってくる「みんなのガーデン」を実現します。
【主な植物リスト】
宿根草(蜜源植物):ルドベキア/オミナエシ/モルダナ/アザミ/ガウラ/スミレ/チェリーセージ など
宿根草(四季の移ろい):グラス類のフェスツカ/カレックス/イトススキ/フウチソウ/チカラシバ/レモングラス/ミューレンベルギア’カピラリス’ など
低木類(鳥類・昆虫類来訪):スモークツリー‘グレース’/ガマズミ/アロニア‘メラノカルパ’’
カラーリーフ:カラスバセンリョウ/カリステモン‘リトルジョン’/イリシウム‘フロリダサンシャイン’
その他(季節の果実や葉):ビルベリー/コバノギンバイカ/レモンマートル
12月の様子
コンテストガーデンE
「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ
太田敦雄
(群馬県)
前橋工科大学建築学科卒業。アマチュアの趣味で植栽・発信していた自庭が雑誌や建築家の目に留まり、趣味の園芸家からプロの道へ。2011年「ACID NATURE 乙庭」を起業。園芸店運営、建築家に寄り添う植栽設計家、植物・園芸関連の執筆や講師等、植物に関わる活動を多角的に展開。自分らしい一歩を踏み出して夢を叶えていく希望と勇気を伝えたいと思っています。
【作品のテーマ・制作意図】
私は「みんなのガーデン」を、来園者だけでなく、花を訪れる虫、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」をつなげる庭と捉えました。温暖化する東京の気候に合った植物を差別なく組み合わせ、虫や菌たちによる循環系の形成、見るだけでなく庭づくりに参加もできる「みんなのガーデン」。「みんな」が共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい。この想いが、この庭から未来へ・社会へ・地球へと広がっていけば、と考えています。
【主な植物リスト】
宿根草:マンガベ ‘マッチョモカ’/アムソニア ‘ストームクラウド’/アガパンサス ‘ブラックマジック’ /アネモネ トメントーサ/ジンジバー(ミョウガ)斑入り/イリス・エンサタ(ハナショウブ)‘バリエガータ’/パトリニア プンクティフローラ/タリクトラム ‘エリン’ /ユーフォルビア ‘ファイアーグロー’/ユーパトリウム ‘リトルレッド’ など
グラス類:カラマグロスティス ‘カールフォースター’/モリニア ‘トランスペアレント’ /アンドロポゴン ‘ブラックホークス’ /スキザキリウム ‘ハハトンカ’ /コルタデリア ‘ミニパンパス’/メリニス ‘サバンナ’/ムーレンベルギア/スティパ/ホルデウム など
低木:ネリウム(キョウチクトウ)‘ペティットサーモン’/コルヌス(サンゴミズキ)‘ケッセルリンギィ’/ロロペタルム (トキワマンサク) ‘黒雲’ /ブッドレア・ グロボサ など
球根:ナルキッスス(スイセン)タリアなど数種/チューリップ(原種、園芸種含めて多品種)/アリウム (開花期をずらして数種)/イキシア・バビアナ・ワトソニアなどの南アフリカ原産種 など
12月の様子
5つの花壇のコンセプトについて詳しいレポートはこちらをチェック!
コンテストガーデンを見に行こう! Information
都立砧公園「みんなのひろば」前
所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1
電話: 03-3417-0308
https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html
開園時間:常時開園
※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせ下さい。
入園料:無料
アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車
駐車場:有料
Credit
文 / 井上園子 - ライター/エディター -
いのうえ・そのこ/ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。ガーデニング以外の他分野のPR等にも携わる。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
写真&文 / 3and garden
スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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