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グランプリ決定!「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の『ファイナル審査』を迎えた11月の庭と審査の様子をご紹介

グランプリ決定!「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の『ファイナル審査』を迎えた11月の庭と審査の様子をご紹介

いつまでも暑さが続く9、10月を経て、一気に気温が降下した11月初旬。11月7日に行われた『ファイナル審査』も好天気に恵まれながらも、木枯らしが吹き抜ける天候となりました。今回はグランプリを決める最終審査も行われた当日の様子とそれぞれのガーデン、そして審査結果をご紹介します。

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年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」

5人のガーデナーが手掛ける日向と日陰の2つのガーデン。最終的な結果が決まるまでに4・7・11月の3回に渡り審査が行われますが、ガーデンの施工から約1年が経過した今回は、最終回となる『ファイナル審査』です。審査日:2024年11月7日。

審査員は以下の6名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、佐々木珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)、松井映樹(神代植物公園園長)

事前に公表されているコンテスト審査基準

公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。

「ファイナル審査」は、秋の見ごろの観賞性と年間の管理状況を見る審査。これまで行われた審査は、春の見ごろの観賞性を見る4月の「ショーアップ審査」と、梅雨を経て猛暑に向けて植栽と耐久性を見る7月の「サステナブル審査」の2回です。

今回は「ファイナル審査」を含めた全3回の結果を踏まえ、「植物個々の特性・魅力がしっかり見せられていたか」、「葉や花の組み合わせがデザイン的に美しいか」、そして「今回のテーマ=武蔵野の“くさはら”、が表現されているか」などが総合的に審査され、最終的な評価として、グランプリ・準グランプリ・特別審査委員賞も決定しました。※年によって気象条件が変わるため、開花の時期がずれていても評価に影響しません。

11月の審査時期を迎えた5名の授賞ガーデンと一年の振り返りコメントをご紹介

コンテストガーデンA グランプリ】
Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜

【日向のエリア】

開花期を迎えていた植物 ルドベキア ‘タカオ’、フロックス‘ブルーパラダイス’、清澄白山菊、サルビア‘ファイヤーセンセーション’

【日陰のエリア】

開花期を迎えていた植物 シュウメイギク

【今回の庭づくりを振り返って】

日向・日陰どちらの庭も、イメージ図に近い形で育ってくれたので、思い描いていたものから大幅に離れることなく庭づくりができたと思います。日向はグラス類が多めの植栽で、私なりに「華やかさのあるくさはら」をつくりました。切り戻しで花数や株の大きさを調整することで、開花リレーをほぼ途切れることなく続かせることができました。日陰の庭に関しては、アスチルベのシードヘッドがきれいに残ってくれたため、花がない時期でも見どころを提供でき、1年を通して比較的ローメンテナンスですみました。

リーフやグラスで魅せるガーデンに見応えを出してくれたのは、季節感を演出してくれた球根植物。春先のクロッカス、スイセンとバイモ、秋のタマスダレやコルチカムは花が少ない時期に彩りを与え、初夏のアイリス、夏のユリが華やぎを添えてくれました。

病気や読みの甘さから一部枯れ込んだ部分もありましたが、日向と日陰それぞれの環境を活かした美しい庭を提案できました。

コンテストガーデンB 入賞】
花鳥風月 命巡る草はら

【日向のエリア】

開花期を迎えていた植物 コレオプシス‘レッドシフト’、オミナエシ、アスター‘ジンダイ’、ルドベキア‘ゴールドスターム’、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、ルレリア‘パープルシャワー’、ノコンギク‘夕映え’、ミューレンベルギア・カピラリス

【日陰のエリア】

開花期を迎えていた植物 ホトトギス‘江戸の花’、ホトトギス‘松風’、清澄白山菊、青花フジバカマ、ノコンギク‘夕映え’、ツワブキ、ヒヨドリバナ

【今回の庭づくりを振り返って】

宿根草と球根による「イエロー&ブルー」のカラーコンビネーションを様々なパターンで年間通して計画通り表現することができました。開花が少ない時期はあったものの、途切れることなく何かしらの開花が見られました。また、蜜源や食草を意図的に取り入れたので、スミレに産卵するツマグロヒョウモンの幼虫が日陰の庭の黒葉スミレに何匹もおり、秋には成虫が飛んでいたので、タイトル通り命を巡らせることができました。

想像以上に生育旺盛で、イメージと異なる姿になったりしましたが、切り戻しや間引きなどメンテナンスで何とかカバー。品種ごとに、切り戻しをタイミングよく行うことで倒伏させず、開花を保ちながら株姿をコントロールできました。ほとんどの植物が、株が消えずに残っています。酷暑の夏でしたが、何年も先まで植えっぱなしでこのまま継続維持でき、生きものの住処にもなる、ロングライフ・ローメンテな庭を提示できたと思います。

コンテストガーデンC 準グランプリ】
草原は、やがて森へ還る。

【日向のエリア】

開花期を迎えていた植物 アスター‘アポロ’、ガウラ‘クールブリーズ’、ガイラルディア‘グレープセンセーション’、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、エキナセア‘ファタルアトラクション’、ノコンギク‘夕映え’、ハゴロモフジバカマ、白花フジバカマ、アオチカラシバ、メリニス‘サバンナ’

【日陰のエリア】

開花期を迎えていた植物 アガスターシェ‘ブラックアダー’、アスター‘アイデアル’、アスター‘リトルカーロウ’、ヒメケマンソウ、バーベナ‘・オフィシナリス‘ハンプトン’、ミズヒキ

【今回の庭づくりを振り返って】

土中での空気や水の流れ、微生物や菌類の活性化を考え、環境づくりに力を入れたので、想定外のこともありましたが、乾燥や高温等による枯損等もなく初期段階から順調に育ちました。

共通テーマ“武蔵野のくさはら”の私の解釈は、平地ではなく山を背景に広がりさまざまな草花が風に揺れる草原でしたが、今回、自分のタイトルからも関連づけて“武蔵野の森”とも解釈。優しくてノスタルジックで、ジブリ的な世界観をどこかに感じる景色をイメージしました。大小の起伏をつけることで奥行と立体感を出し、その環境に応じた適地適草(木)の配植をしたため、作為的に造られた感が少ない、連続性のあるナチュラルな風景を演出できました。日本在来種を要所に入れつつ多種多様なプランツを組み合わせ、植物たちのドラマティックな「競争」と「協奏」を表現しました。色彩や形重視のデザインプランティングというより、物語を感じる風景ガーデンとして見てほしいと思います。

コンテストガーデンD 入賞】
feeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~

【日向のエリア】

開花期を迎えていた植物 ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’、アスター‘ジンダイ’、ダンギク、ソバ

【日陰のエリア】

開花期を迎えていた植物 シュウメイギク‘クイーンシャルロット’、ホスタ、ユーパトリウム‘チョコレート’

【今回の庭づくりを振り返って】

温暖化する都市環境に耐えられる在来種と、日本の草原・里山の雰囲気をもったポップな印象を与える植物を組み合わせました。春~初夏にかけてかわいらしかったガーデンが、夏~秋にかけてだんだん落ち着き侘びていくよう、四季を通して移ろうように計画しています。アスター‘ジンダイ’や麦・蕎麦などで地域らしさを出して、植物に興味のない方や子供たちにも興味を持って見てもらえました。

虫や蝶などの生き物を呼ぶことができ、ガーデン内に生態系が生まれました。その反面、食害にあった植物がありましたが、真夏前に花をつけている株を含め切り戻したことで、株が大きなダメージを受けず秋まで宿根草の見栄えを保つことができ、三番花まで咲く種類もありました。とくに日陰側では、低木を骨格にしてツワブキやシダなどのオーナメンタルな宿根草を用いたことで、葉の形や色の重なりを表現できた上に、ローメンテナンスな管理ですみました。

コンテストガーデンE 審査員特別賞】
武蔵野の“これから”の原風景

【日向のエリア】

開花期を迎えていた植物 ハギ、カライトソウ、タムラソウ、シラヤマギク、ヒヨドリバナ

【日陰のエリア】

開花期を迎えていた植物 キバナノアキギリ、ヒヨドリバナ

【今回の庭づくりを振り返って】

武蔵野の“くさはら”の昔の風景を取り入れ、そこに思いを馳せることで、過去と未来をつなぐ新たな視点を提案しました。都市緑化では生物多様性を意識し、都の「在来種選定ガイドライン」に基づいた植栽が数多く計画されていますが、草原のような景観はあまり重視されていないのが現状です。私の理想は、風景の中で目立つ存在ではなく、背景として人々や生き物が共存できる空間を作ることと、それらに愛着を持ちともに語らう人々が増えること。今回、日本の野草の魅力を語る場を設けられたことは、ひとつの成果だと捉えています。

コンセプトを重視して初めて育てる植物を多数導入したため、配置や密度の調整が難しく、イメージ通りの景観を作ることができなかった場所も多くありましたが、メンテナンスは月1回と、計画通りにローメンテナンスで管理できました。これからも東京の風景を模索し続けたいです。

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