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お正月を迎える“祝いの寄せ植え”。福を呼ぶハボタンを玄関や窓辺に

お正月を迎える“祝いの寄せ植え”。福を呼ぶハボタンを玄関や窓辺に

新しい年を迎える庭に、静かな華やぎを添えてくれるのがハボタンです。葉を幾重にも重ねながら、美しさを深めていくその姿は、繁栄や円満といった縁起の象徴とも重なります。今回紹介する寄せ植えは、アンズガーデンのガーデンデザイナー・武島由美子さんによるもの。お正月という“ハレの日”を意識しながらも、華美になりすぎず、冬の庭にすっとなじむ佇まいが印象的です。

なぜハボタンは「縁起植物」と呼ばれるのか

ハボタン‘太鼓’
クリームホワイトの葉にパープルピンクのベインが美しいハボタン‘太鼓’。

ハボタンはキャベツの仲間。丸く重なるロゼット状の姿には、「円満」「調和」「重なり合う福」といった意味が重ねられてきました。

また、寒さにあたることで色づき、冬に最も美しくなるという性質も、新年の始まりと相性のよい理由のひとつです。花が少ない季節にあって、葉そのものの造形で存在感を放つ――その静かな強さが、ハボタンならではの魅力といえます。

ハボタン
左/ハボタン‘モカショコラ’。中/ハボタン‘パープルステン’。右/ハボタン‘萌花®︎ショコラ’。

さらに、ハボタンにはさまざまな品種があり、驚くほど多彩な表情があります。フリルのように波打つ葉。重なり合うロゼットのかたち。葉脈がくっきり浮かび上がるものもあれば、淡くにじむように色が変わるものも。また、苗の仕立て方もユニークで、コンパクトにロゼットを保つタイプもあれば、茎を立ち上げ、縦のラインを作る品種もあります。

ハボタン
茎を立ち上げ仕立てた苗。立体的に寄せ植えを形作ることができ、ハンギングバスケットなどでも重宝する。

この違いがあるからこそ、寄せ植えでは「主役」にも「リズム」にも、「背景」にもなることができます。ハボタンは、役割を選べる植物でもあるのです。

迎える場所に置く、正月のハボタン寄せ植え

ハボタンの寄せ植え

玄関先や窓辺など、「人を迎える場所」に置かれたハボタンの寄せ植えは、正月飾りに代わる存在にもなります。しめ縄や門松のように期間限定で役目を終えるのではなく、冬から春へと季節をつなぎながら、長く楽しめるのも植物ならでは。

武島さんの寄せ植えは、あくまで自然体。祝う気持ちを込めながらも、主張しすぎず、暮らしの風景に溶け込むようにデザインされています。

寄せ植えで作る“ハレの日”の色合わせ

冬のリース寄せ植え
ハボタンとイベリス、カルーナ、パンジーなどと合わせたリースの寄せ植え。

紫、白、淡い黄色――。今回の寄せ植えで印象的なのは、落ち着いた色の組み合わせです。紫は古くから高貴さや品格を象徴する色。白は清めや始まりを連想させ、淡い黄色は光や希望を感じさせます。

強いコントラストではなく、トーンを揃えた色合わせにすることで、「派手ではないけれど、きちんと祝っている」佇まいが生まれます。お正月の寄せ植えだからこそ、静かな華やかさが生きてきます。

花ではなく「葉」で魅せる、冬のデザイン

冬のリース寄せ植え
数種類のハボタンとハツユキカズラ、キンギョソウ、ビオラなどを合わせたリースの寄せ植え。

冬の庭は、光も色も限られがち。だからこそ、フリル状の葉、繊細な葉脈、重なりのリズムといった“葉の造形”が、デザインの主役になります。

ハボタンは、まるで彫刻のように形を変えながら、見る角度によって表情を変える植物。花に頼らずとも、美しさを成立させる力があります。

武島さんの寄せ植えからは、「咲かせること」よりも「佇まわせること」を大切にする冬ならではの庭づくりの視点が伝わってきます。

ハボタンを「花」として見せる構成

冬のリース形の寄せ植え

中心に据えられたハボタンは、まるで大輪の花のよう。葉の重なりや色のグラデーションを生かし、「葉物」であることを忘れさせるほどの存在感を放っています。そのまわりを固めるのは、白花やシルバーリーフ、淡い色合いの草花たち。全体のトーンを抑えることで、ハボタンの造形美がより際立ちます。

この寄せ植えで、静かにお正月らしさを演出しているのが、ふわりと立ち上がるカルーナです。細かな花穂が連なる姿は、どこか水引を思わせ、和の祝い事に通じる凛とした印象を添えています。

松や南天のような“定番の縁起木”を使わなくても、植物の形や線を生かすことで、十分に正月の空気感は作れる――そんなことを教えてくれる使い方です。

正月のあとも、庭に残るもの

ハボタンの寄せ植えは、一日限りの飾りではありません。寒さの中で色を深め、春に向かって少しずつ姿を変えていく――その時間ごと、新しい年の始まりを見守ってくれます。

ハボタンとストックの列植
ハボタンと小型のストックの列植。

武島さんは鉢やバスケットだけでなく、通りに面した場所にもコンテナを並べ、ハボタンを列植しています。ある年はパンジーと、ある年はストックと組み合わせ、同じリズムで鉢を連ねることで、冬の通り道に、やわらかな連続性が生まれます。

春になると、ハボタンはとう立ちを始めます。中心からすっと茎が伸び、小さな黄色い花を咲かせる――多くの人が「役目を終えた」と感じるタイミングかもしれません。けれど武島さんは、そこで終わらせません。

「あの菜の花みたいな黄色の小さな花も、素朴で春らしくって、大好きなんです」と武島さん。そこでコンテナを裏表ひっくり返し、とう立ちしたハボタンを“背景”として生かします。

春のハボタンとビオラ
春先、コンテナをひっくり返して、とう立ちしたハボタンを背景に。ビオラ‘ビビ ヘブンリーブルー’とともに。

手前には春の草花、奥には伸びやかなハボタン。主役だった植物を、脇役として使い直すことで、同じ株がまったく違う表情を見せてくれます。

とう立ちした姿も、どこか可愛らしい――ハボタンは、最後まで「使い切れる」植物なのです。

ハボタンは、どう姿を変えていく植物なのか

ハボタンの魅力は、時間とともに形を変えていくことにあります。

冬(12〜2月)

  • ロゼット状に葉を重ねる
  • 色づきが最も美しい時期
  • 寄せ植え・正月の主役

早春(3月)

  • 株が少しずつ横に広がる
  • 葉が厚みを増し、存在感が増す
  • 「太ってきた」と感じやすい時期

春(4〜5月)

  • とう立ちが始まる
  • 黄色い花が咲く
  • フォルムは縦方向へ変化

この変化を「乱れ」と見るか、「成長」と見るかで、ハボタンとの付き合い方は大きく変わります。

手入れのまとめ(ミニQ&A風・記事末向け)

Q. ハボタンは横に太ってきますか?
→ はい。春に向かって葉が充実し、横に広がります。それも自然な姿です。

Q. 太ってきたら切ったほうがいい?
→ 無理に切らなくてOK。配置や役割を変えて楽しみましょう。

Q. とう立ちは抜くべき?
→ 抜かずに背景として使うのもおすすめ。花も楽しめます。

Q. いつまで楽しめる?
→ 花が終わる初夏前まで。最後まで“表情の変化”が魅力です。

ハボタンの寄せ植えが教えてくれること

ハボタンの寄せ植え

ハボタンは、咲かずとも美しく、散らずに役割を変え、最後は春の素朴な風景の一部になっていく植物です。正月のためだけに使い切るのではなく、冬から春へ、時間ごと楽しめるのがハボタンの魅力。武島由美子さんの寄せ植えは、植物を「使い捨てない」庭の楽しみ方を、教えてくれます。

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