冬に「花」と「実」が同時に見られる!? 珍しくてかわいい庭木「イチゴノキ」の魅力と育て方
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秋から冬にかけて、愛らしい花とカラフルな実を同時に楽しめる珍しい庭木があるのをご存じですか? イチゴのような赤い実と、スズランに似た可憐な花を咲かせる「イチゴノキ」は、近年シンボルツリーとしても人気が高まっている常緑低木です。本記事では、イチゴノキの特徴・種類・育て方のコツから、寒さや乾燥対策まで、初心者にも分かりやすく解説します。
目次
イチゴノキの基本情報

植物名:イチゴノキ
学名:Arbutus unedo
英名:strawberry tree
和名:イチゴノキ(苺の木)
その他の名前:ストロベリーツリー
科名:ツツジ科
属名:イチゴノキ属
原産地:地中海沿岸~アイルランド
形態:常緑性低木
イチゴノキの学名は、Arbutus unedo(アルブツス・ウネド)、英名はストロベリーツリーです。日本名は英名をそのまま訳して広がったとされています。ツツジ科イチゴノキ属の低木で、冬でもみずみずしい葉姿を保つ常緑樹です。原産地は地中海沿岸、アイルランドで、寒さに強い性質をもっています。樹高は2〜3mですが、毎年の剪定によって樹高を抑えることも可能。日本にもたらされたのは戦後といわれていますが、一般に広がってきたのは21世紀に入ってからです。
イチゴノキの花にやってきたマルハナバチ。Caterina Trimarchi/Shutterstock.com
イチゴノキの花や葉の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:11〜12月
樹高:2〜3m
耐寒性:普通
耐暑性:普通
花色:白、ピンク
イチゴノキの開花期は11〜12月です。同じツツジ科のブルーベリーに似た、ベル形の白またはピンク花を咲かせます。花のサイズは1cm弱で小さいのですが、多数連なって咲くので見応えがあります。葉はダークグリーンで6〜10cmの楕円形。やや厚みのある革質で、縁には細かな切れ込みの鋸歯があるのが特徴です。
果実が熟すのは開花翌年の晩秋で、11月下旬〜2月にかけて色づきます。果実は緑からオレンジ、赤へと変化していき、その愛らしい姿にも観賞価値があります。開花中のタイミングで実が色づくため、花と色鮮やかな実が同時に楽しめ、華やかな姿になります。果実に毒性はなく食用できますが、甘みは薄く淡白な味なので、ジャムなどに加工するか観賞用として楽しむことが多いです。
イチゴノキの名前の由来と花言葉

イチゴノキという名前は、イチゴのように真っ赤に熟す実が由来。英名も「Strawberry tree」です。もっともバラ科ではなくツツジ科に属し、姿もイチゴよりもヤマモモに似ています。また、種小名のunedoはラテン語の「unum edo(1回食べる)」に由来します。これは古代ローマの博物学者、ガイウス・プリニウス・セクンドゥスの言葉からきているそうで、美味しくないためまた食べようとは思わないという意味だとか。
イチゴノキの花言葉は「あなただけを愛します」「後が楽しみ」「節約」などです。
イチゴノキの代表的な種類

イチゴノキ属は、約15種の分布が確認されています。ここでは、主なものについてご紹介します。
ヒメイチゴノキ
南ヨーロッパが原産地。イチゴノキより樹高が低く1.5〜3mほどで、コンパクトにまとまります。開花期や収穫期はイチゴノキと同様です。花や果実が美しいので、観賞用として洋風庭園に用いられることが多くなっています。
ベニバナイチゴノキ

ヨーロッパが原産地。ピンク〜赤い花を咲かせるのが特徴です。樹高は5〜10mほど。開花期や収穫期はイチゴノキと同様です。
「イチゴノキ」と「ヤマモモ」との違いは?

赤い実をつけることから「イチゴノキ」と呼ばれていますが、イチゴはバラ科の多年草で、色が似ているという意外に共通点はほぼありません。イチゴが実る季節は春ですが、イチゴノキは晩秋から冬にかけてが収穫期間です。
イチゴノキの果実は、むしろヤマモモと似ていますが、ヤマモモはヤマモモ科ヤマモモ属の常緑樹なので似て非なるものです。見分けるポイントは、開花期と収穫期の違い。ヤマモモの開花期は3〜4月、実がなる時期が5〜6月であるのに対し、イチゴノキの開花期は11〜12月、収穫期は11月下旬〜翌年2月です。
イチゴノキの栽培12カ月カレンダー
開花時期:11〜12月
植え付け:3〜4月、10〜11月
肥料:2〜3月
剪定:2月下旬〜3月下旬
挿し木:6月中旬〜7月中旬
イチゴノキの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たり・風通しのよい場所が適しています。西日が強く当たらない場所や、真冬に寒風が吹きつけない場所を選びましょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけ・水もちのよい環境を好み、極端な乾燥には注意が必要です。ツツジ科の植物は酸性土壌を好む傾向にありますが、イチゴノキはアルカリ性土壌にも適応し、あまり土質にこだわる必要はありません。また塩害に強く、海岸沿いで栽培することも可能です。移植を嫌うため、地植えの場合は場所をよく吟味して植え付けましょう。
耐寒性・耐暑性
生育適温は15~30℃。若い苗木はやや寒さに弱いですが、成木になればマイナス10℃前後まで耐えます。ただし、乾いた寒風や霜で傷むことがあります。耐暑性も比較的ありますが、35℃以上の高温や強い西日で弱ることがあるため注意が必要です。
イチゴノキの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
庭木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり

イチゴノキは水はけがよく乾燥気味の環境を好みますが、根が細いため極端な乾燥を嫌います。また植え付け直後や苗木の状態では乾燥に弱いため注意しましょう。
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は、地植えの場合は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、晴天が続いて乾燥している場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまうので注意。土の表面が乾いてから、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
生育期を迎える前に施す寒肥として、2〜3月に有機肥料を与えます。地植えの場合は、幹のすぐ下ではなく樹冠の下あたりに施すと、肥料成分が根からよく吸収されます。
注意する病害虫

【病気】
イチゴノキはほとんど病気の心配はありませんが、うどんこ病やすす病が発生することがあります。
うどんこ病はカビによる伝染性の病気で、葉、新梢、つぼみの表面が白く粉を吹いたような状態になります。放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発生しやすくなります。うどんこ病が出たら病葉を摘み取って処分し、適応のある殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
すす病は、一年を通して葉や枝などに発生する病気で、発生すると表面につやがなくなります。進行すると黒いすすが全体を覆って見た目が悪いだけでなく、葉に広がると光合成がうまくできなくなり、樹勢が衰えてしまいます。カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミの排泄物が原因となるので、これらの害虫を寄せ付けないようにしましょう。込んでいる枝葉があれば、剪定して日当たり、風通しをよくして管理します。
【害虫】
イチゴノキに発生しやすい害虫は、カイガラムシ、アザミウマなどです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10㎜。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われて薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
アザミウマは花や葉について吸汁し、スリップスとも呼ばれます。体長は1〜2㎜で大変小さく、緑や茶色、黒の姿をした昆虫です。群生して植物を弱らせるので注意しましょう。針のような器官を葉などに差し込んで吸汁する際にウイルスを媒介するので、二次被害が発生することもあります。被害が進んだ花や葉は傷がついてかすり状になる異変が見られるので、よく観察してみてください。花がらや枯れ葉、雑草などに潜みやすいので、株まわりを清潔に保っておきます。土に混ぜるタイプの粒剤を利用して防除してもよいでしょう。
イチゴノキの詳しい育て方
苗木の選び方

がっしりと締まって勢いがある苗木を選びましょう。枝がヒョロヒョロと間のびしているものや葉色が冴えないもの、虫食い痕のあるものは避けたほうが無難です。
植え付け・植え替え

イチゴノキの植え付け適期は3〜4月か、10〜11月です。ただし、花苗店などでは植え付け適期以外でも苗木が出回っていることがあります。入手したら、植えたい場所へ早めに定植しましょう。ただし、真夏や真冬の気候が厳しい時期は避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗木の根鉢よりも一回り大きな穴を掘って、深植えにならないよう植え付けます。その際、根を傷めないように注意しましょう。苗木がぐらつくようであれば、しっかり根付くまでは支柱を設置してビニタイや麻ひもなどで誘引し、倒伏を防ぎましょう。最後にたっぷりと水を与えます。
細根性で移植を嫌うため、植え替えは避けたほうが無難です。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、8〜10号鉢を準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから庭木用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木を鉢に仮置きし、高さを決めて植え付けます。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、根鉢を軽くくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。植え替え後1週間〜10日くらいは、半日陰の場所に置いて養生させます。
乾燥対策

イチゴノキは水はけのよい環境を好む一方、極端な乾燥を嫌うため、乾燥が心配な場合は株元にワラなどをマルチングしてカバーするとよいでしょう。
受粉

イチゴノキは自家受粉で結実します。虫が媒介して授粉するため、放任してもある程度果実がつき、観賞用なら特に手入れをする必要はありません。よりたくさんの果実を実らせたいのなら人工授粉をするのもよいでしょう。人工授粉は晴れた日の開花後まもない午前中に行うとよいでしょう。開いたばかりの花数輪から筆や綿棒などに花粉をまとわせて採取し、別の花の雌しべにこすりつけるようにします。
収穫

イチゴノキの収穫適期は、11月下旬〜翌年2月です。完熟した実から適宜摘み取って収穫します。生食できるほか、ジャムなどにも加工可能です。
剪定

剪定の適期は、2月下旬〜3月下旬頃です。
成長が遅めで樹形も自然に整いやすいので、深く切り戻すというよりは、込み合っている部分の枝を切り取って間引き、風通しをよくする程度の剪定でOK。強い剪定は生育不良の原因になることがあります。長く伸びすぎている徒長枝、枯れ込んでいる枝、地際近くから発生するひこばえなどを選んで切り取りましょう。また、込み合っている部分があれば、内側に伸びている枝、下向きに伸びている枝、垂直に伸びている枝、ほかの枝に絡んでいる枝などを選んで切り取ります。枝を切る際は、枝分かれしている部分まで遡って、付け根で切ると自然に形が整います。途中で切ると枯れ込むので注意しましょう。また、枝先を切り詰める刈り込みをすると、花芽などを落としてしまうため開花や結実に影響が出ることがあります。
増やし方

イチゴノキは、種まきと挿し木で増やすことができますが、一般的には挿し木で増やします。
挿し木とは、枝を切り取って土に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、イチゴノキは挿し木で増やせます。
イチゴノキの挿し木の適期は、6月中旬〜7月中旬です。その年に伸びた勢いのある枝を2〜3節つけて切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を取り除いておきます。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、鉢上げしながらほどよく育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
かわいい花と実で観賞用としても人気! シンボルツリーにおすすめ

スズランのようなベル形の小さな花をたわわに咲かせる姿は愛らしく、果実をつけるとグリーンからオレンジ、赤へと色づいていく過程も美しいイチゴノキ。花の少ない冬の時期に見頃を迎え、ガーデンを彩る庭木にもおすすめです。ぜひ植栽してみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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