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都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園【花盛りの5月】
第3回コンテスト会場は「都立砧公園」 公園の正門や駐車場からコンテストガーデンを向かうと見えてくる「東京パークガーデンアワード」の開催を示す2カ所の看板が目印。5月上旬はコンテストガーデンに蝶が舞う様子も見られました。 2022年に代々木公園から始まった「東京パークガーデンアワード」。第2回の神代植物公園に続き、3回目となる今回は、成城学園、二子玉川など閑静な住宅街からほど近い場所にある都立砧公園(東京都世田谷区)が舞台です。芝生の広場と樹林で構成されたファミリーパークのほか、運動施設や遊具等が設置された広場が整備され、区民みんなに親しまれている公園でコンテストが繰り広げられます。 東京都立砧公園は、芝生が青々とした「みんなのひろば」をはじめ、バラ園、サイクリングコース、‘子供の森’など多数のエリアがあり、秋にはイチョウなどの紅葉・黄葉が楽しめます。 第3回のテーマは「みんなのガーデン」 今回のコンテストエリアは、‘みんなのひろば’前に広がるスペース。これから育っていく5つのガーデンは公園を訪れる多くの人の目を楽しませてくれることでしょう。 天気のよい休日には、家族連れがお弁当を広げる光景もあちこちで見られ、地域の住民をはじめ、多くの人々に親しまれている砧公園。‘みんなのひろば’前で開催される「第3回 東京パークガーデンアワード」のコンテストテーマは『みんなのガーデン』です。「東京パークガーデンアワード」の目指す“持続可能なロングライフ・ローメンテナンス”であることはもちろん、訪れる人々の五感を刺激し、誰もが見ていて楽しいと感じる要素を取り入れたガーデンであることが求められます。植栽のメインとなる宿根草は、丈夫で長生きすることから、季節ごとの植え替えは行わず、四季ごとに花の彩りがあることも期待されています。 5月25日(日)開催!「入賞者イベント」のお知らせ 第3回東京パークガーデンアワードの入賞ガーデナー5組によるガーデンイベントを5月25日(日)に開催します。入賞ガーデナーが案内する「ガーデンツアー」や「たねダンゴづくり」、「微生物観察ワークショップ」など、子どもから大人まで楽しめるガーデンイベントがいっぱい。ぜひご来園ください(雨天中止)。 ■日 時:2025年5月25日(日)10:00~15:10(雨天中止)■会 場:都立砧公園(東京都世田谷区砧)コンテストガーデンエリア(みんなのひろば前)■参加費用:無料■中止連絡:雨天中止の場合は、イベント前日までに都立砧公園の公式X(旧Twitter)にてお知らせします。 第3回のコンテストガーデン コンテストガーデンが設けられた敷地の平面図。A〜Eの各面積は約40㎡ 。どのエリアでガーデンを制作するかは、2024年10月に抽選により決定しました。 各コンテストガーデンは、高さ40cmの枠に囲まれた中に作られました。子どもたちの目線にも近い高さで、かがまなくても植物を身近に観賞できるのも今回の特徴です。5月の様子。 今回のガーデンでは、通路を挟んで対に設けられた2つ1組の花壇が5つ連なっています。隣接する‘みんなのひろば’や‘ねむのき広場’からコンテストエリア全体を眺めたり、花壇に挟まれた通路を歩きながら、左右に育つ植物を観賞したりするなど、さまざまな角度からガーデンを堪能することができます。 写真手前の北から奥の南に向けて、A・B・C・D・Eの順に花壇が並ぶ。5月の様子。 2024年12月に行われた第1回作庭。5つのガーデン制作に関わった皆さん。 【第3回 東京パークガーデンアワード in 砧公園 最終審査までのスケジュール】 コンテストに挑戦する5名の入賞者が1年を通してガーデン制作に挑む「東京パークガーデンアワード」。2024年12月中旬に、それぞれの区画で1回目の作庭が完了し、2025年2月下旬に2回目の作庭日が設けられています。その後、4月は春の見頃を迎えた観賞性を審査する『ショーアップ審査』、7月は梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査する『サステナブル審査』、11月は秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する『サステナブル審査』が行われ、グランプリが決定します。 以下、入賞者決定~審査結果発表までのスケジュール。 【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者の関心が得られる工夫があること/公園利用者が心地よく感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること/メンテナンスがしやすいこと/テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること/総合評価※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 Pick up 月々の植物の様子 5月の植物の様子 シラー‘ブルーアロー’(Aエリア)、オーニソガラム・アラビカム(Aエリア)、チャイブ(Bエリア)、ギリア・レプタンサ(Bエリア) カマッシア・クシッキー(Cエリア)、ビバーナム・ハリアナム(Cエリア)、パパベル・コムタツム‘レディーバード’(Eエリア)、エスコルチア ピンク(Eエリア) 4月の植物の様子 スイセン‘タリア’(Aエリア)、フロックス・ディバリカタ‘メイブリーズ’( Aエリア)、アジュガ‘ディキシーチップ’(Bエリア)、チューリップ‘エデュアルトペルガー’(Bエリア) 原種チューリップ・ヒルデ(Cエリア)、フリチラリア・インぺリアス‘オレンジビューティー’(Cエリア)、ベニバナマンサク(Dエリア)、ユーフォルビア・ウルフェニー(Eエリア) 3月の植物の様子 スイセン‘テータテート’(Aエリア)、ブラックローズリーフレタス(Bエリア)、原種系チューリップ‘アルバ コエルレア オクラータ’(Cエリア)、プルモナリア‘ダイアナ クレア’(Cエリア) ユーフォルビア・リギダ(ガーデンD)、アザレアツバキ(ガーデンD)、ナルキッスス ‘ペーパーホワイト’(ガーデンE)、クロッカス ‘アードジェンク’(ガーデンE) 2月の植物の様子 シラー・シベリカ‘アルバ’(Aエリア)、シラー・ミシュチェンコアナ(Aエリア)、日本スイセン(Bエリア)、イタリアンパセリ(Cエリア) ローズマリー(Dエリア)、カレックス・オメンシス‘エヴァリロ’(Dエリア)、ナルキッスス カンタブリクス モノフィルス(Eエリア)、コルヌス ‘ケッセルリンギィ’(Eエリア) 1月の植物の様子 左から/ロータス ‘ブリムストーン・ライムゴールド’(Aエリア)、ワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’(Bエリア)、コトネアスター(Bエリア)、エリンジウム パンダニフォリウム ‘フィジックパープル’(Cエリア) 左から/庭人さんのビオラ(Cエリア)、モンタナハイマツ(Dエリア)、アロエ ストリアツラ(Eエリア)、ユッカ ‘ゴールデンスウォード’ (Eエリア) 全国から選ばれた入賞者5名のガーデンコンセプトと月々の様子 コンテストのテーマとルールをふまえて制作される5つのガーデン。それぞれのガーデナーが目指す庭を、作者の制作意図や図面、植物リストの一部を紹介しながら、月々の様子を撮影した写真とともにお伝えします。 コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 【作品のテーマ・制作意図】 皆さんの日常に癒やしや潤いを届けたいという願いを込め、プランツ・ギャザリングの視点で、ガーデンをひとつの大きなブーケに見立ててデザインを構成しました。動物たちが次の訪問者のために心遣いを残していく絵本から着想を得て、あらゆる世代の方が見て触れて、香りなどを楽しめるように、花の形や手触りがおもしろいものを用いた植栽計画をしています。ぜひ手に取って、お気に入りの植物を見つけてください。たくさんの感動や気づきが新たな会話を生み、笑顔になるシーンが増えますように。 【主な植物リスト】 宿根草:エキナセア‘マグナススーペリア’/ペンステモン‘ストリクタス’/アガパンサス‘ピッチュンホワイト’/クラスペディア‘ゴールドスティック’/オルレア・グランディフローラ‘ホワイトレース’ などグラス類:ペニセタム・ビロサム‘銀狐’/メリニス‘サバンナ’/ホルデューム・ジュバタム/カラマグロスティス・ブラキトリカ など低木:コルヌス・ステラピンク/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’/ニシキギ・コンパクター/コバノズイナ など球根:チューリップ‘フレーミングピューリシマ’/レウコジャム‘スノーフレーク’/アリウム‘グレイスフルビューティ’ など コンテストガーデンA 月々の変化 5月の様子 たくさんの繊細な植物が風に揺られるさまは、花に満たされた野原のよう。全体的に白・ピンク・黄・青にまとめられた花色が、この時季ならではの軽やかでやさしい雰囲気を生み出しています。ナチュラルな景色の中に大小さまざまなアリウムが球状の花穂を上げ、特にアリウム・シュベルティが造形的なデザインを添えています。 上左/ホルデューム・ジュバタムのツヤのある穂がアクセントとなりながら、シーンの切り替えにも一役買っている。上右/オーニソガラム・アラビカムやダッチアイリス、アリウム‘シルバースプリング’などの球根類を、レースのような白花のオルラヤや紫のクナウティアがふわりと優しく繋いでいる。中左/ダッチアイリス ‘ブルーマジック’ の重量感とクナウティア・アルベンシスの浮遊感が対照的。中右/そばに植わるマツの木で日陰となるエリアは、ダッチアイリス ‘ブルーマジック’がキリッとしたアクセントに。下左/バプティシア・アウストラリスの量感が、シーンの見応えを高めている。下右/つぼみを下げるコバノズイナが野趣を漂わせて。 4月の様子 数種類のチューリップが、ピンク色を軸とした色合いで一斉に咲き始めました。黄色が混ざった小ぶりの花‘ガボタ’がピリリとスパイスを効かせています。周りにはオルラヤやグラス類がふわふわとした草姿で合間を埋めつくし、まさに『ギャザリング=花束』の雰囲気が表現され始めました。 上左/前面を彩っているチューリップ‘パープルエレガンス’と‘ガボタ’。圧倒するようなボリュームで訪れた人を出迎えている。上右/チューリップ‘ガボタ’に寄り添い咲くのは、ナチュラルな雰囲気のブーケに近年よく使われているナズナ(タラスピ・オファリム)。中左/松の枝でやや日陰気味になるコーナーはオルラヤがメイン。中右/後方は明るいピンクのチューリップ‘フレーミングピューリシマ’が賑やかさをアップ。下左/アリウムの隆々とした葉が植栽に立体感をもたらして。下右/下方を軽やかに埋めているフロックス・ディバリカタ‘メイブリーズ’。チューリップ‘ガボタ’とのコントラストが素敵。 3月の様子 2月から東側のガーデンの一角で咲き始めたシラー・ミシュチェンコアナが、黄色いスイセン‘テータテート’とともに、ガーデンのあちらこちらで咲き始めました。また、対の花壇それぞれに一株ずつ植わるユキヤナギが咲き始め、植栽に立体感が出始めています。 左上/林の中の一角を切り取ったような、自然味あふれるシーン。右上/早い時点から勢いよく葉を伸ばす、瑞々しいアリウムが植栽にインパクトを与えている。左下/奔放に枝を広げるユキヤナギがデザインに動きを出している。右下/あちらこちらから顔を出すシラー・ミシュチェンコアナ。先月より花穂が伸びて存在感が増している。 2月の様子 全体的に楚々とした植物で構成されているナチュラルなガーデン。枯れた花茎を残し、頭上から落ちるたくさんのマツの葉を味方につけることで、優しい野の趣が見事に表現されています。白花の2種の球根植物が、いち早く咲き始めました。 左上/クジャクアスターなどの株間で、ひっそりと白い花を咲かせているシラー・ミシュチェンコアナ。草丈2cmにも満たない極小の球根植物。 右上/清楚な彩りを添えるシラー・シベリカ‘アルバ’。原種ならではの繊細さが、ここにはよく似合う。 左下/マツ葉の布団の下から、いくつもの球根が一斉に芽吹き始めて。 右下/1月まで咲いていたアガスターシェ‘モレロ’の立ち枯れの姿が、野趣あふれるシーンを描いている。 1月の様子 2つの花壇の中央に据えられたバイオネストは、線の細い枝で組まれているので、まだ小さく幼い植物ともよく馴染み、オブジェのような存在感を放っています。昨年からちらほらと咲いている名残の花が、高さ20cm程に芽を成長させた球根とともに冬の庭に明るさをプラス。ガーデンの上に伸びるマツから落ちる影ともよく似合い、植栽をより自然な風景に見せています。 左上/クジャクアスターやアガスターシェ‘モレロ’の残花の彩りが、冷たい空気を温めているよう。 右上/ロゼット状に広がるアキレア‘カシス’の株の合間に、球根の芽がひょっこりと顔を出して。 左下/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’の赤褐色の照り葉が、冬の光をきらきらと反射。 右下/成長を牽引するかのように球根類の芽が勢いよく伸びて、リズミカルで楽しげ。 12月の様子 コンテストガーデンA Gathering of Bouquet 〜庭の花束〜 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 【作品のテーマ・制作意図】 季節によってカラーリングが変化する植物や、実をつけて味わい深い風景を作ってくれる植物に集まる多様な生き物たち。そして各所に配置したサークルネストはそんな生き物たちの拠り所に。命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインしました。人間だけに限らず、あらゆる生き物たち「みんな」にとっても楽しめる「命を感じられるガーデン」は「みんなのにわ」となり、命を循環させてゆきます。 【主な植物リスト】 宿根草:バプティシア‘ブルーベリーサンデー’/アガスターシェ‘ゴールデンジュビリー’ /糸葉丁子草/スタキス・オフィシナリス などグラス類:カレックス‘プレーリーファイア’/メリニス‘サバンナ’/ぺニセタム・オリエンターレ など低木:ブルーベリー/イチジク/紫式部 など球根:アリウム各種/チューリップ各種 など コンテストガーデンB 月々の変化 5月の様子 2月末に植えたサニーレタスがこんもりと茂り、種子を筋まきした一角ではニンジンが芽を出し、イチゴも赤く育ち始め、実りある景色が楽しめるようになりました、この庭のコンセプトである‘命の育み’が強く表現されはじめています。一方、アリウムが咲き群れるエリアには、シックで大人っぽい雰囲気が漂うなど、眺める角度によって楽しめるシーンが大きく異なっています。 上左・上右/ギリア・レプタンサ×アリウム‘パープルセンセーション’の花が宙を浮いているように咲いていて幻想的な雰囲気。中左/2種のアリウム、スティビタツム‘ホワイトジャンアントとクリストフィー。異なる色形・高さでリズミカルに競演。中右/アキレア‘テラコッタ’の銀葉とリシマキア‘ファイヤークラッカー’の銅葉の組み合わせが、シックなアクセントを添えている。下左/サニーレタスを軸に赤褐色がにじむ植物でまとめられたエリア。下右/チャイブや実をつけるワイルドストロベリーがのどかな時間を演出。 4月の様子 西側のガーデンではピンクのチューリップの開花の盛りが過ぎ、東側のガーデンのオレンジ×黄のチューリップにバトンタッチしました。温かみのある色鮮やかな組み合わせが遠くからでも目を引き、心浮き立つ風景が広がっています。中央に植わるブルーベリーの開花がピークを迎え、収穫期の楽しい風景が待ち遠しいガーデンです。 上左/チューリップ‘バレリーナ’とスイセン‘フォーチューン’の元気が出る色合わせ。上右/こんもりと茂るギリア‘レプタンサブルー’の群生の中にチューリップ‘エデュアルトペルガー’が大人っぽいアクセントを加えている。中左/アジュガ‘ブロックスカップ’が広がる傍らで、ポツンポツンと咲くムスカリ・ラティフォリウム。中右/ピンクのチューリップ‘フレーミングピューリシマ’の株元でワレモコウのやわらかい新葉が無数に上がっている。下左/コーナーを彩る矮性のチューリップ‘ポップコーン’。 訪れた人を華やかに出迎えているよう。下右/イチゴと原種のチューリップ・ヒルデの素朴な愛らしさを漂わせるワンシーン。 3月の様子 モコモコとしたバークのマルチングの中からさまざまな小球根が芽を出し、ちらほらと花を咲かせ始めました。先月から開花し始めたニホンスイセンは花数が増え、植栽にやさしい華やぎをもたらしています。ガーデンの手前の方では、シラー・シベリカ‘アルバ’やピンクやブルーのムスカリの愛らしい姿が見られるようになりました。 左上/素朴な風情あふれる植栽にニホンスイセンがよく似合っている。右上/2月下旬に植えられたダークカラーのレタス。茶色いカレックスをクッションにして、ワイルドストロベリー‘ゴールデンアレキサンドリア’との色の対比を効かせている。左下/花壇の縁でひょっこり顔を出すムスカリ‘ピンクサンライズ’。右下/イチゴの株の中から花を上げるムスカリ・アズレウム。 2月の様子 やわらかい新葉を芽吹かせる宿根草のグリーンが、冬の日差しにまぶしく輝き、春の訪れを感じさせています。一番乗りでスイセンが咲き始めましたが、その他にもたくさんの球根類が芽を出し始め、のどかな風景が広がっています。 左上/大株のユンカス・ブルーアローがまだ寂しい植栽にボリューム感を与えている。 右上/日本スイセンが開花し始め、ほんのりと華やぎ始めた。 左下/繊細な細葉を上げるアリウム・レッドモヒカンなどの球根類の芽吹き。 右下/青みがかったルー(ヘンルーダ)の葉が、イエロートーンの植栽のアクセントになっている。 1月の様子 ふかふかとした明るい色のマルチングの中に、瑞々しくやわらかい草花の株が点在する様子は、まさに春遠からじといった風景。やわらかい葉のグラス類が風を受けて花壇に動きを感じさせています。グリーンを残すギリア ‘レプタンサブルー’やシシリンチウム ‘ストリアタム’や黄葉のワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’が表土に明るさをもたらしています。S字状の溝部分に入れたトチノキの実やその殻が愛らしく、花壇の中にストーリーを感じさせます。 左上/ギリア‘レプタンサブルー’やシシリンチウム ‘ストリアタム’の明るいグリーンが、花壇に瑞々しい景観を作り出している。 右上/数カ所に設けたサークルネストが、愛らしい鳥の巣を思わせる。左下/冬の陽光に黄金色に輝く、黄葉のワイルドストロベリー ‘ゴールデンアレキサンドリア’とブラウンがかったカレックス ‘プレイリーファイアー’の取り合わせが美しい。 右下/赤い実をつけるコトネアスターのシルエットがユニーク。 12月の様子 コンテストガーデンB Circle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 【作品のテーマ・制作意図】 砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽のデザインをしています。植栽は、見る場所や角度によって印象が変わるように、カマキリなどの天敵が身を潜められるような複雑さが出るよう工夫しました。植物は、てんとう虫やカマキリの食料となるアブラムシなどが好む「バンカープランツ」や蝶やミツバチたちの蜜源となる植物を植えています。「小さな住人(虫たち)」の生活をそっとのぞき見ることができる場所を目指しています。ここでの小さな体験が、自分の身近な自然環境を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。 【主な植物リスト】 バンカープランツ:へメロカリス/ユウスゲ/イタリアンパセリ など宿根草:モナルダ・ブリドブリアナ/エキナセア‘メローイエロー’/アスター‘オクトーバースカイ’ などグラス類:スキザキリウム‘ハハトンカ’/ぺニセタム・カシアン/パニカム‘シェナンドア’ など低木:キンカン/アロニア/コバノズイナ など球根:ダッチアイリス‘ブルーマジック’/カマシア/カノコユリ‘ブラックビューティー’ など コンテストガーデンC 月々の変化 5月の様子 先月開花したフリチラリア‘オレンジビューティー’の株元で静かに待機していたアリウム‘マイアミ’が一斉に開花。落ち着いた色形の品種が選ばれていることで、デザイン的な風景にまとまっています。東側のガーデンでは先月末まで咲いていたカマッシアが終わり、ダッチアイリス‘ブルーマジック’にバトンタッチ。西側のガーデンでは主役が原種チューリップからアリウム‘カメレオン’に移り変わりました。無数にあがる花後のカマッシアが、野趣を強く漂わせています。 上左/太くしっかり伸びた花茎に小さめな花が咲くアリウム‘マイアミ’。無数の花が整然と並ぶ風景は、まるでインスタレーション作品のよう。上右/ダッチアイリス‘ブルーマジック’の背後に伸びるカマッシア・ライトヒトリニ‘カエルレア’の花後の姿にも風情が。中左/谷筋にカマッシア‘クシッキー’やソテツ、ユリがワイルドに広がる。中右/原種チューリップの花後の鞘のまわりに広がるのは、コンパクトな草丈のアリウム‘カメレオン’。下左/肉厚で赤い葉脈を持つホスタ‘ファーストブラッシュ’の葉が地際に広がりデザインを引き締めている。下右/プルモナリア‘ダイアナクレア’×ツワブキ×メリカ・ヌタンスと、異なる色形のリーフを組み合わせているエリア。 4月の様子 ビオラ中心の素朴だった風景に、オレンジのフリチラリアや純白のスイセンが開花し、華やかさとボリュームが加わりました。静かに眠っていたガーデンの‘目覚め’が強く感じられます。花壇の縁や通路沿いでは小さなスミレや原種のチューリップ、プルモナリアが開花。コンパクトな株姿が斜面に植わる様子はまるでヨーロッパの自生地のようです。 上左/フリチラリア・インぺリアス‘オレンジビューティー’×アリウムの葉が、動きのあるユニークな風景を創り出す。上右/プルモナリア‘ダイアナクレア’とスイセン‘タリア’の色合わせが上品な雰囲気の一角。中左/小さなビオラ・ラブラドリカとグラスのメリカ・ヌタンスの華奢な組み合わせが、眺める人の視点をぐっと寄せつけている。中右/春の日差しを愛らしく反射する、原種のチューリップ・トルケスタニカとヒルデの群落エリア。下左/エピデディウム‘ピンクエルフ’とビオラが描く、野趣に富んだ風景。下右/アシズリノジギクの上にゲラニウム・ツベロサムが咲くまでは、スイセン‘タリア’が華やぎをもたらしているエリア。 3月の様子 2月下旬の作業でビオラと数種類の苗が加わったことで、宿根草や球根の花が咲くまでのガーデンは、よりにぎやかになりました。ビオラは楚々としながらもニュアンスのある品種を用いているので、デザインに深みを感じさせます。植栽の中をよく見ると、チューリップやアイリスが広がる中で、勢いよくフリチラリア‘オレンジビューティー’の新芽が上がり始めました。 左上/パープルのビオラが広がるエリアで、フリチラリア‘オレンジビューティー’がニョキリと芽を伸ばし始めた。右上/東側のガーデンの一角でひっそりと咲くプルモナリア‘ダイアナ クレア’。左下/ダッチアイリスの群植がユニークな景色を作る。右下/原生地を思わせる咲き姿の原種系チューリップ‘アルバ コエルレア オクラータ’。 2月の様子 なだらかな丘に咲くビオラの株が少しずつ大きく育ってきました。全体的には大きな変化はありませんが、よく見ると球根類の小さな芽があちらこちらに芽吹き始め、これから先の時期への期待が高まります。 左上/ビオラの花色やモナルダ・ブラドブリアナの紫葉、グラスの赤みが、このエリアのメインカラーとなっている。 右上/腐葉土をかぶり、葉をつけたまま越冬したアシズリノジギクが、ひっそりと顔をのぞかせて。 左下/愛らしい綿毛が、晩冬の風情を高めているツワブキ。 右下/枯木立のアロニアやコバノズイナの合間に芽を出しているのは、ダッチアイリス‘ブルーマジック’。 1月の様子 花壇の中は盛土された場所や溝が掘られた場所があることで全体に起伏があり、いくつもの丘が広がるような風景を思わせます。斜面に植わる落葉した数本の灌木と冬枯れの宿根草が沢沿いのようなシーンを連想させたり、ビオラが群植する様子がのびやかに広がる丘のようなシーンを感じさせたりするなど、さまざまな素朴な風景が展開。全体にのどかな雰囲気が漂っています。 左上/落葉したアロニアやノリウツギの数本の幹が、野趣のあるシーンを演出。 右上/長い花茎の先に残るツワブキの花が、侘びと力強さを感じさせる。 左下/丘の斜面に咲き群れるように広がるビオラたち。 右下/まだ厳しい寒さを物語るほかのエリアとは異なり、青々としたイタリアンパセリとエリンジウム パンダニフォリウム ‘フィジックパープル’が明るい透明感を添えている。 12月の様子 コンテストガーデンC Ladybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden 【作品のテーマ・制作意図】 ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、それら3つの主体が密接に関わり合う「ワンヘルスガーデン」をつくります。土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込む。ガーデンの香りや触れ合いを通し、ヒトの健康と安らぎを生み出すガーデンをつくり、いろいろな生きものがやってくる「みんなのガーデン」を実現します。 【主な植物リスト】 宿根草(蜜源植物):ルドベキア/オミナエシ/モルダナ/アザミ/ガウラ/スミレ/チェリーセージ など宿根草(四季の移ろい):グラス類のフェスツカ/カレックス/イトススキ/フウチソウ/チカラシバ/レモングラス/ミューレンベルギア‘カピラリス’ など低木類(鳥類・昆虫類来訪):スモークツリー‘グレース’/ガマズミ/アロニア‘メラノカルパ’カラーリーフ:カラスバセンリョウ/カリステモン‘リトルジョン’/イリシウム‘フロリダサンシャイン’その他(季節の果実や葉):ビルベリー/コバノギンバイカ/レモンマートル コンテストガーデンD 月々の変化 5月の様子 植物の成長が全体的に進み、こんもりと茂って生命力が感じられるガーデンに。特にウスベニアオイの旺盛な成長からは、健やかな土中の状態が伝わってきます。そんな重量感のある風景に軽やかさと彩りを添えているのは、2種のクナウティア・マケドニカやアルベンシス。スモークツリーやカリステモン‘リトルジョン’、ビバーナムなどの花も咲き始め、カラーリーフが主体の庭も変化に富んだ表情を見せています。 上左/濃いピンクのクナウティア・マケドニカと紫花のクナウティア・アルベンシスが風になびく姿が、見る人の心和ませる。上右/銅葉のツツジとガウラの新芽が、シーンに深みを与えて。中左/この時季は花が少ないものの、青々と茂るウスベニアオイや黒ずんだ葉のカラスバセンリョウ、陽に透ける美しい葉のスモークツリー‘ロイヤルパープル’など、リーフのバリエーションで楽しめる。中右/ピンクの小花をつけ始めたラムズイヤーのシルバーリーフは、思わず触れたくなる質感。下左/白い粒々とした花を咲かせるビバーナム・ハリアナム。下右/大きな葉を広げるアーティチョークのつぼみが膨らんできた。 4月の様子 先月までは主に灌木が存在感を放っていましたが、4月になると数種の球根が咲き、ほんのり華やぎが加わり始めました。この時季の主役はあちらこちらに点在するピンクのチューリップ。濃緑の葉や銅葉の灌木を背景に、つややかさを際立たせています。2月末に据えた菌糸を固めたステップにオオヒラタケが生え始め、地中の活発な様子がうかがえます。 上左/カラーリーフの中でチューリップ‘メンフィス’の華やぎが際立っている。上右/冬の間からふっくら生成り色のつぼみをつけていたベニバナマンサクがようやく開花。中左/カリステモン‘リトルジョン’のホットな赤花が、他とは異なる異国情緒を漂わせて。中右/まだ銅葉のような葉色をしたヒメハマヒサカキが、植栽に陰影をプラス。下左/手前側を軽やかに埋めているのは、ユーフォルビア・リギダとフェスツカ・グラウカ。下右/ひらひらとしたオオヒラダケのキノコが、菌糸ステップからヒョコリと現れている。こんな風景もこのガーデンならでは。 3月の様子 冬の景色として残していたアスターやススキなどのシードヘッドを2月末の作業で切り戻し、すっきりとした風景となりました。ガーデン手前側のラムズイヤーやクリーピングタイムは茶色い葉が整理され、芽を出した球根類と共に、植栽の瑞々しさをアップ。茶~黄の色彩だった風景は、徐々に緑色の風景へと移ろいつつあります。 左上/つややかな緑が映えるチューリップの芽出し。右上/アザレアツバキが開花。褐色の葉がカラーリーフとして活躍し、イリシウムの黄葉やアカシアの銀葉との色の対比が楽しめる。左下/ラムズイヤー、クリーピングタイムが青々と成長し、ガーデンの色合いをグリーンに牽引。右下/ニョキリと伸びる茎の先に花をつけるユーフォルビア・リギダ。株元では新しい芽をたくさん確認。 2月の様子 冬の装いをした低木の下で、成長の早い宿根草や球根類が成長を始めています。ふわふわとした枯れ姿のノコンギクの株元には、新たな葉がびっしりと広がっています。マルチングに用いたナシのチップがキノコの菌糸と絡み合い、朽ちて土に馴染み始めました。 左上/ベルベット調の質感を持つベニバナミツマタのつぼみが日に日に膨らんでいる。 右上/まわりとの取り合わせで、朽ちた姿にも風情があるアメジストセージやフェスツカ・グラウカ。 左下/ひと足早く青々と成長しているバーベナ・ボナリエンシス。 右下/ラムズイヤーの傍らで芽吹く、赤い新芽のガウラ。奥には球根類がたくさん芽を出している。 1月の様子 落葉した灌木類と冬枯れしたススキやノコンギクなどの宿根草とのコンビネーションが、冬の日差しに反射し、きらめきのある風景を描いています。一方、常緑樹のモンタナハイマツやローズマリーの瑞々しくどっしりとした重量感が、花がないこの時期にも豊かな表情を見せてくれます。所々に配された菌糸を固めて作った平板をめくると、接地面から菌糸が広がっており、土中の微生物たちがぐんぐんと成長しているのが分かります。 左上/アーティチョークのギザギザとした葉で、空間に造形的な面白さをプラス。 右上/枯れ姿のノコンギクが風情たっぷり。フサアカシアなどの灌木同士を、ふんわりとつないでいる。 左下/赤みを帯びたユーフォルビアのユニークなフォルムが、植栽のデザインに動きをもたらしている。 右下/冬の間も楽しめる、モンタナハイマツ×テンジクスゲ×ツワブキの造形の異なる常緑植物の組み合わせ。 12月の様子 コンテストガーデンD KINUTA “One Health” Garden 12月下旬、作庭後の様子。 コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 【作品のテーマ・制作意図】 私は「みんなのガーデン」を、来園者だけでなく、花を訪れる虫、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」をつなげる庭と捉えました。温暖化する東京の気候に合った植物を差別なく組み合わせ、虫や菌たちによる循環系の形成、見るだけでなく庭づくりに参加もできる「みんなのガーデン」。「みんな」が共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい。この想いが、この庭から未来へ・社会へ・地球へと広がっていけば、と考えています。 【主な植物リスト】 宿根草:マンガベ ‘マッチョモカ’/アムソニア ‘ストームクラウド’/アガパンサス ‘ブラックマジック’ /アネモネ トメントーサ/ジンジバー(ミョウガ)斑入り/イリス・エンサタ(ハナショウブ)‘バリエガータ’/パトリニア プンクティフローラ/タリクトラム ‘エリン’ /ユーフォルビア ‘ファイアーグロー’/ユーパトリウム ‘リトルレッド’ などグラス類:カラマグロスティス ‘カールフォースター’/モリニア ‘トランスペアレント’ /アンドロポゴン ‘ブラックホークス’ /スキザキリウム ‘ハハトンカ’ /コルタデリア ‘ミニパンパス’/メリニス ‘サバンナ’/ムーレンベルギア/スティパ/ホルデウム など低木:ネリウム(キョウチクトウ)‘ペティットサーモン’/コルヌス(サンゴミズキ)‘ケッセルリンギィ’/ロロペタルム (トキワマンサク) ‘黒雲’ /ブッドレア・ グロボサ など球根:ナルキッスス(スイセン)タリアなど数種/チューリップ(原種、園芸種含めて多品種)/アリウム (開花期をずらして数種)/イキシア・バビアナ・ワトソニアなどの南アフリカ原産種 など コンテストガーデンE 月々の変化 5月の様子 4月まで個々の形が際立っていた植栽もすくすくと成長し、様々な花が風に揺れる野原のようなナチュラルな風景に様変わりしました。主役はチューリップから、バリエーションもさまざまなアリウムにバトンタッチ。ガーデンのあちらこちらでユニークな花姿が楽しめます。色形のバラエティ豊かな植栽のなかで、特に目を引くのは、ピンクのエスコルチアやパパベル’レディーバード’の花とホルデウム・ユバツムのキラキラした穂。風に揺れる花がビビッドなスパイスとなりつつ、牧歌的・幻想的な光景を演出しています。 上左/目にも鮮やかなピンクのエスコルチアとトラディスカンティア‘スイートケート’、ロロペタルム’黒雲’の配色取り合わせ。アリウム・シューベルティがシーンに形のリズムも添えて。 上右/パパベル’レディーバード’の真っ赤とネペタ’ウォーカーズロウ’の青紫の花色対比が遠目からでも色鮮やかに映える。 中左/ホルデウム・ユバツムの穂が陽光に輝いて描き出す幻想的な野の風景。 中右/花壇中央、ボリュームのあるバプティシア’キャロライナムーンライト’のクリーム色の花穂とアリウム’グラディエーター’と紫色の球形花序で色形のコントラストを表現。 下左/サルビア‘カラドンナ’の深みのある暗紫花がシーンの色彩をぐっと引き締めてより印象を強化。 下右/やわらかく軽やかな色・質感の植物の中、個性の強いアロエ・ストリアツラやベスコルネリアが、優しい表情に溶け合いつつ同時に重量感のあるフォーカルポイントに。 4月の様子 グラベルガーデンのような趣から一転! スイセンやチューリップ、フリチラリアなどの球根に加えてラナンキュラス・ラックスも満開を迎え、一気に華やぎのある風景となりました。 花色の美しさに加え、楽しませてくれるのが個性豊かな春咲き球根の開花リレーやリーフの鮮やかな芽吹き。独創的、かつ景色の移ろいと生命の歓喜を堪能できる季節です。 上左/コーナーで満開を迎えたロロペタルム’黒雲’の濃厚な銅葉と濃赤花が目を引く。黄金葉のトラデスカンティア‘スイートケイト’、青紫花のシラー・シベリカとのコントラストが挑発的。中央のアンティーク調の一輪はチューリップ‘ラ・ベルエポック’、その左、細い外弁に緑色がのる咲き方がユニークな白半八重チューリップは‘ホワイトバレイ’。 上右/ピンク花で黒軸のチューリップ‘ライトアンドドリーミー’やスイセン‘タリア’、銅葉のアスチルベ‘ダークサイドオブザムーン’の濃厚な対比がやわらかい葉群の中で際立っている。中左/ペルシカリア‘ゴールデンアロー’の黄金葉とチューリップ‘ハッピーフィート’の明暗の対比が鮮やか。 中右/大型で彫刻的な姿・不穏な花色のフリチラリア・ペルシカがシーンをぐっと劇的に引き締めて。下左/ユッカ‘ゴールデンスウォード’の株元を軽やかに彩るアスフォデリネ・ルテアの細葉とベロニカ‘ジョージアンブルー’の紫花。下右/原種系のチューリップ ‘ジャイアントオレンジサンライズ’。独特な葉模様と巨大花が個性的なフォーカルポイントに。 3月の様子 グラベル仕上げの地面で個性を放つ植物たち。それら一つひとつにフォーカスして楽しめるのは、地上部が少なく隙間があるこの時季ならではの見どころです。さまざまな芽が小さな景色を織り成す中、今春の一番手で花をつけているのはスイセンとクロッカスの2種。このガーデンでは真っ白い花が見られるのは春の初めだけで、これからカラフルに色づく植栽の静かなイントロダクションとして、清楚な彩りを添えています。 左上/世界の多種多様な植物が、健やかに成長できるよう配慮して植えられたガーデン。右上/ベタっと広がるアリウム ‘マイアミ’。アリウムだけでも大小・姿形さまざまに展開する多様な種類が用いられている。左下/透明感あふれるナルキッスス パピラケウス。右下/白花の外側の花弁が紫色のクロッカス ‘プリンスクラウス’。自然界で見られる“コロニー(群生)”のように、ぎゅっとまとめて植えている。 2月の様子 中央のニューサイランを軸にして渦を描くように設けられた花壇に、早くも植物たちが色形の異なる個性を見せ始めました。現在は、造形的なフォルムのアロエやエリンジウム ‘フィジックパープル’、黒葉のベルゲニア ‘レッドスタート’、ペンステモン ‘ダークタワーズ’などの植物が、他にリードして存在感を放っています。その間では小さな宿根草や球根が愛らしく芽を伸ばして。 左上/芽出しから独特な姿を見せるチューリップ ‘ジャイアントオレンジサンライズ’。 右上/葉の縁が赤く色づくチューリップ シルベストリスと黒みがかる繊細なダイアンサス カルスシアノルム、そしてベタっと大きめの葉を広げるフロミスなどが植わるエリア。どこを切り取っても組み合わせの妙が感じられる。 左下/ユッカの傍らに植わる、クルクルと渦を描く姿がユニークなアスフォデリネ ルテア。個性的だがブルーがかるやわらかい質感が、ユッカの強烈な雰囲気を和らげている。 右下/マットな革質の黒葉ならではの質感で存在感を放っているのはベルゲニア‘レッドスタート’。 1月の様子 化粧砂利のような明るい表土とアールを描く通路のデザインは、植物が小さなこの時期の大きな見せ場の一つとなっています。見下ろした風景はまるでノットガーデンのよう。常緑性のニューサイランやアロエなどのほかは、冬季落葉性の宿根草や低木類で、地上部がとても小さかったり枝のみだったりしますが、冬越しのロゼット葉の造形やカラーステムがとてもユニーク。それだけに、これからの成長と風景の変化も大きな見どころです。 左上/幹立ちして展開するアロエ ストリアツラと、カレックス ‘エヴァリロ’のライムイエローの葉が、植えたてのため不織布を被せて防寒養生中のベスコルネリアをやんわりと目隠し。右上/鹿沼土と軽石をブレンドした明るい表土をトキワマンサク ‘黒雲’の照りのある黒葉で引き締めている。左下/細い葉をふんわりと広げるルッセリア エキセティフォルミスやカレックス ‘プレイリーファイアー’、ロドコマ カペンシスに矮性のネリウム (キョウチクトウ) 、ネリウム ‘ペティットサーモン’を組み合わせた、植物の多様な面白さが感じられるシーン。右下/多くの植物が冬季落葉中のなか、放射状に葉を広げるエリンジウム ‘フィジックパープル’が、目を引くアクセントとして活躍しながら空間を埋めている。 12月の様子 コンテストガーデンE 「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 12月下旬、作庭後の様子。 5つの花壇のコンセプト・作庭・審査様子の詳しいレポートはこちらをチェック! コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせください。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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【今が絶景】7,000本のバラが咲き乱れる!福山市ばら公園がまるで花の海に
福山市とバラの歩み ― 公園に込められたまちの物語 花盛りの福山市「ばら公園」。 現在、「第20回 世界バラ会議福山大会」が開催中(5月24日土曜日まで)の広島県福山市。市内のあらゆる場所が満開のバラで彩られており、中でも「ばら公園」はその見どころのひとつとして、連日多くの来場者でにぎわっています。 「ばら公園」開園当初に植えられていたと思われるバラ‘ヴォーグ’。 福山市とバラの関係には深い歴史があります。第二次世界大戦で大きな被害を受けた福山市では、1950年代半ば「荒廃した街に潤いを与え、人々の心に和らぎを取り戻そう」と、近隣住民がバラ苗、約1,000本を植栽。それが「ばら公園」の始まりです。リニューアルした「ばら公園」にも、開園当初から植えられていたと思われるバラを一部残したコーナーや、平和への願いを込めて名付けられたバラのコーナーがあり、人々の記憶と思いが大切に受け継がれています。 福山城下の福山城公園もバラの盛り。 市民が育て、守り続けたバラは、今や福山市のまちづくりの象徴となり、「100万本のばらのまち」を目指すプロジェクトにも発展しています。そして今回、世界バラ会議の開催を機に、「ばら公園」は次の時代へと向けて大きな一歩を踏み出しました。 “バラのある”美しいガーデンへ。新たな混植デザインが見どころ 19基のつるバラ ‘マニントン・モウブ・ランブラー’のアーチとスタンダード仕立ての白バラ‘アイスバーグ’、紫の宿根草のネペタが織りなす見事な花の大回廊。アーチは王冠をイメージ。 今回のリニューアルにあたり迎えたのは、これまでハウステンボスなど多くのローズガーデンを手がけてきたランドスケープアーキテクトの白砂伸夫さん。アーチなどの構造物やスタンダード仕立てのバラを取り入れることで立体的なバラ空間を生み出しています。周囲を住宅や道路に囲まれた立地にもかかわらず、ひとたび公園に足を踏み入れると、花の世界に没入できるのは白砂マジックとも言えます。そして、「バラ+草花」の混植も今回のリニューアルでの大きな変化のひとつ。これまでは主にバラが中心の公園でしたが、宿根草や灌木類など多様な植物と組み合わせることで、季節ごとの彩りや立体感がぐっと増しました。 見事な花付きの‘マニントン・モウブ・ランブラー’。 左/スタンダード仕立ての‘アイスバーグ’の株元をネペタとサルビアがさざ波のように彩る。右/一重咲きの‘キューガーデン’とネペタの組み合わせもロマンチック。 特にネペタやサルビア・ネモローサ、アイリスなどブルーの草花とバラとの共演は見事。バラの美しさがよりいっそう引き立ち、草丈や花形の違いを生かしたデザインは、ガーデナーにとって学びと刺激に満ちています。 真紅のバラ‘ムンステッドウッド’とサルビア・ネモローサがドラマチックなワンシーン。 ゆるやかな傾斜とカーブする小道、アーチなどの構造物によって、歩みを進めるたびに新たな景観がドラマチックに展開し、園内のあちこちで小さな歓声が上がります。犬の散歩をする地元の人に話を聞くと、「バラだけじゃなくいろんなお花が入ったおかげで、どこを見ても最高にきれい。ゆっくり歩きたいから、前よりお散歩の時間が長くなりましたね。この景色は街の誇りです」と話していました。 金メギの明るい葉色やネペタの淡い紫色がバラを引き立てる植栽。 約670品種・7,000本!“歩くバラ図鑑”のような公園へ ‘ヴァイオレット’や‘ギスレーヌ・ドゥ・フェリゴンドゥ’が彩るつるバラの小道。 リニューアルを経て、バラの品種は約670種・本数は約7,000本に拡充。以前の約280品種・5,500本から大幅にスケールアップし、アーチやフェンスに誘引されたつるバラやシュラブローズを生かした立体的な演出により、空間全体が奥行きとリズム感のある構成に。視線が自然に誘導され、どこを切り取っても絵になる風景が広がっています。 一重咲きで花心がビビッドピンクになる‘シー・ユー・イン・ピンク’と‘メアリー・レノックス’のロマンチックな共演。 それぞれのバラが持つ個性的な花形・香り・枝ぶりを実際に見て確認できるのも、この公園の大きな価値。プロや愛好家にとっても、品種選びや庭づくりの参考になる“生きたカタログ”ともいえます。 ‘ルイーズ・オディエ’や‘クーペ・デベ’などオールドローズを集めたコーナー。 福山市のバラのコーナー。左上から時計周りに/‘ウルヴァリンFUKUYAMA’、‘ローズ ふくやま’、‘プリンセス ふくやま’、‘アニバーサリー ふくやま’、‘福山城’、‘ビューティフル ふくやま’ 世界に誇る“ばらのまち”から未来へ バラがあふれる福山の街中。 福山市が開催地となる「世界バラ会議2025」は、世界のバラ研究者や愛好家たちが集う一大国際イベント。開催地に選ばれたことは、バラを通じたまちづくりが世界に認められた証でもあります。 その関連イベント「Rose Expo FUKUYAMA2025」(5月17日〜19日、福山通運ローズアリーナにて開催)は豪華なゲストを迎えるステージもあり、連日大盛況。そのほか、市内各所で多彩な展示や催しが行われており、「ばら公園」も中心スポットとして注目の的に。今しか体験できない特別な景観が、来園者を迎えています。 今こそ「ばらのまち福山」へ 国内外からの来園者でにぎわう「ばら公園」。入場は無料。 バラの美しさを超えて、ガーデンの芸術性・育てる楽しさを体感できる場所へと進化した「ばら公園」。景色を堪能できるのはもちろん、「この品種を庭に植えてみたい」「こんな組み合わせ、マネしてみたい」――そんな気づきと発見のある場所です。 バラが最も輝く季節に合わせて今こそ、この特別なバラのまちを訪れてみてください。 公園内に用意された可愛らしいフォトスポット。 【Information】 ばら公園 住所/福山市花園町1-5 営業時間/常時 利用料/無料 アクセス/JR福山駅北口から中心部循環バス・まわローズ青ルートで「ばら公園前」下車 トイレ設備/多目的トイレあり,おむつ交換台あり
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【速報】150種680本!神奈川の新名所「あやせローズガーデン」“世界を旅する”バラ園の見どころ完全ガイド
150種680本のバラが咲く最新のバラ園が神奈川県綾瀬市に誕生 神奈川県のほぼ中央に位置し、都心から40km圏にある神奈川県綾瀬市。GREEN×EXPO 2027(2027国際園芸博覧会)が開催される横浜市瀬谷区に隣接し、「ばらとのつながりで輝くまちあやせ」をスローガンに掲げている綾瀬市で40年以上、市のシンボル公園として愛されてきた「光綾公園」が構想から4年を経て、2025年5月1日にリニューアルオープンしました。 綾瀬市のオリジナルのバラ「ル・デパール・ド・アヤセ」の解説をする河合伸志さん。 約7,700平米の敷地に広がる「あやせローズガーデン」の総合監修は、植物専門家でバラ育種家として活躍する河合伸志さん。同県内にある横浜イングリッシュガーデンのスーパーバイザーも務める河合さんが、全国各地のバラ園のデザインやアドバイスなどに関わってきた経験を生かして手がけた最新のバラ園が「あやせローズガーデン」です。 このガーデンは11のエリアに分かれており、一つずつ巡ると、まるで世界を旅しているように風景が次々と変わります。それぞれのエリアのコンセプトに合わせてバラが選ばれているほか、宿根草や一年草、花木などさまざまな植物がバラと組み合わされています。これは、バラの花期が概ね3週間程度と短いため、バラ以外の時期でも楽しめるよう、脇役の植物が庭全体を彩るように設計されているからです。一年を通して彩りがある公園となるように工夫が凝らされています。 あやせローズガーデンに選ばれたのは丈夫で育てやすいバラ 5月1日に満開を迎えていた「フラワー・ヒル」に咲く‘リージャン・ロード・クライマー’。 世界旅行をイメージした11のエリアには、約150品種、680本のバラが植わっています。「あやせローズガーデン」は、幅広い年代の方々が花咲く風景を楽しめる場所ですが、単に花の美しさや彩りを追求しているだけではありません。 背景のハナビシソウとコラボする一重のバラは、デンマークの人が1966年に発表した黄色の中輪のバラ‘Aïcha(アイシャ)’。「フラワー・ヒル」にて。 バラは日本の高温多湿な環境では病気になりやすく、通常は週に1回程度の薬剤散布が必要とされるほど栽培が難しい植物です。ここでは、綾瀬市の気候条件や昨今の猛暑に耐え、月1回の薬剤散布で健全な状態を維持できるような、比較的強健な品種が厳選されています。このように、さまざまな条件が考慮されて植物が選ばれている点も注目すべきポイントです。 暑さで傷みやすいものは入れない方針ですが、デザイン上の理由から、強健ではない品種も若干含まれています。写真は、強健な品種の一つ‘つる ノックアウト’。「ウェルカム・ガーデン」にて。 「フラワー・ヒル」に咲く‘ピンクノイバラ’。 比較的強健なバラを厳選していることにはもう一つの理由があります。それは、この場所に訪れて気に入ったバラを自宅で育ててみたいと思った時に、うまく育てられるようにという河合さんの配慮もあります。庭の散策を楽しむだけでなく、この庭自体がバラ栽培の参考書になるような設計を目指しています。 バラ園とともにデビューした最新品種「ル・デパール・ド・アヤセ」 5月1日のお披露目の時、数輪すでに咲き始め、園内の中央に位置する「ピースフル・ガーデン」で咲いていたのが、綾瀬市のオリジナルのバラである「ル・デパール・ド・アヤセ」。門出を祝う花という意味が込められた河合さんが作出した最新品種です。 * オレンジがかるピンクの半八重花は花径10cmほどと大きく、バラの季節に先駆けて咲く、早咲きの品種であることに加え、非常に強健な品種です。綾瀬市の名を冠したこのバラを育ててみたい人が栽培に失敗しないようにと選ばれました。 世界を旅するように風景が変わる11のエリア 多くの人がバラの花色としてイメージする赤花が訪問者を最初に迎える場所「ウェルカム・ガーデン」。この場所からは、他のガーデンは見えない仕掛けに。 「あやせローズガーデン」のエントランスを入ると、まず目に飛び込んでくるのは、印象的な赤い花が集められた「ウェルカム・ガーデン」です。11の庭はそれぞれ区切られていて、先に進むとまた違った色合いや景色が待っているという、奥まで進んでみたいという期待が膨らむガーデンデザイン。では、11の庭を順に辿っていきましょう。 「ウェルカム・ガーデン」から進むと現れるのは、園内の中央に位置する「ピースフル・ガーデン」です。 ここは、綾瀬市が基地と共存する町であることから平和の象徴であるオリーブが中央に配置された庭です。水盤のような池を備えたパーゴラがあり、バラが咲くと水面が水鏡も彩られます。パーゴラは額縁のような役割を果たし、インスタ映えも意識したフォトスポットです。園内で一番眺望が開けている場所で、ベンチに腰掛けて、隣り合う宿根草とともに咲く綾瀬市のオリジナル品種「ル・デパール・ド・アヤセ」 をじっくり眺めていたくなる場所です。 平和の象徴としてオリーブの大木が育つ「ピースフル・ガーデン」。 バラが絡むガゼボが2カ所あり、座って記念写真を撮りたくなる「シークレット・ガーデン」は、パステルカラーのバラで構成。 その隣には、イギリスのバラの庭をイメージしつつ、「秘密の花園」の登場人物に由来する名前のバラを取り入れた「シークレット・ガーデン」があります。ここにはガゼボが設けられており、やがてバラが絡まれば、花々に囲まれた写真撮影も楽しめるでしょう。その隣は、白い花のみで構成された「ホワイト・ガーデン」。さらにその先は、目が覚めるような赤、黄、オレンジ、ショッキングピンクなどの原色のバラを中心に、エネルギッシュな熱帯風を演出した「トロピカル・ガーデン」へと、次々と景色が変わります。 左/「ホワイト・ガーデン」では、白バラが絡むベンチのあるガゼボや、ドイツトウヒに絡めた白バラが咲けば雪が積もったような針葉樹の森の風景が見られます。右/原色のバラが彩る「トロピカル・ガーデン」では、耐寒性があり、この地域でも問題なく育つバナナの仲間であるバショウ(ジャパニーズバナナ)やヤシがバラとコラボ。 「メドウ・ガーデン」と「トロピカル・ガーデン」をつなぐトンネルには、ピンクのバラが絡んで日陰が心地よい空間。 ラグラスやアグロステンマ、ジャーマン・カモミールなどが咲く5月1日の「メドウ・ガーデン」。 円形のトンネルを抜けると、優しい色合いの植物が選ばれている「メドウ・ガーデン」です。流木を使った柵にもバラが絡み、安らぎ感のある風景で、河合さんもお気に入りのエリア。 左/木道を渡りながら水面の輝きも楽しめる「ウォーター・ガーデン」。右/素朴なバラが丘を覆うように咲く「フラワー・ヒル」。 敷地の一番奥にあたる場所には、池を渡るデッキがあり、スイレンなど水の景色も楽しめる「ウォーター・ガーデン」です。手前は華やかな景色、奥は自然な緑と紅葉する樹木で構成されています。木道を渡ると丘のふもとのような場所に到着。見上げると斜面を流れ落ちるようにつるバラが覆いつくし、バラの香りが風に運ばれてきます。 「フラワー・ヒル」は、華やかなバラよりも、小ぶりなものや、他の植物に馴染むようなバラを選んで穏やかな景色に。斜面に沿って植えられたバラがまるで流れ落ちるように咲く様子もお見逃しなく。左下/ワイルドローズとムギ、フロックスが咲く斜面。* 右下/スピノシッシマ・サブスピノーサとハナビシソウが寄り添い咲く。* 「ここに来るまで7つのエリアを見てきましたが、さまざまな色合いのバラを見て、少しお腹いっぱいになっていませんか? このあたりで少し休憩できるようなホッとする景色としてデザインしたのがフラワー・ヒルです」と河合さん。 「フラワー・ヒル」は、頂上にベンチと日時計があり、周囲のガーデンが一望できる場所。その先には、また一風変わった「オセアニア・ガーデン」「ドライ・ガーデン」と続き、日本ではあまり見かけない姿の植物とバラのコラボがユニークです。 左/‘アイズ・フォー・ユー’とアリウムがコラボする「オセアニア・ガーデン」。* 右/‘スターリー・ヘブンズ’の背景に、ユッカ・ロストラータや赤花ウチワサボテンの組み合わせが楽しめる「ドライ・ガーデン」。* 11のエリアの最後にご紹介するのは、 日本庭園のイメージでつくられた「古都の庭」です。白い塗り壁に引き立つように余白を生かして植物が配置され、花札に出てくる日本の植物が多数コレクションされています。藤棚を思わせる中央の棚には赤いバラが誘引されていて、花が見頃のころは枝垂れ咲く雅な景色が楽しめます。 11のエリアでお気に入りのバラとインスタ映えの景色を見つけよう! バラを主役にしたさまざまな風景を楽しんだり、バラを背景にした写真撮影ができる映えスポットもいっぱい用意されている「あやせローズガーデン」は、市民の憩いと安らぎの場として、また、市外からも多くの方が訪れ愛される公園となるようにと願いが込められて誕生しました。150種680本の色鮮やかなバラが次々咲く華やかな季節はもうすぐ。見頃は5月中旬。 デザインから植物選び、植栽など総合監修をする河合伸志さん(中央)と、日々植物の手入れを担当する「あやせローズガーデン」のヘッドガーデナー、入谷伸一郎さんと石原久美子さん。
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東京都
春爛漫! 「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」の『ショーアップ審査』を迎えた5人の庭と審査の様…
年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」 5人のガーデナーが、東と西に対になった2つの花壇を手掛けている今回のコンテスト。昨年、神代植物公園で開催された第2回アワードと同様、個性が際立つにぎやかなガーデンの誕生に、多くの人が関心を寄せています。 審査が行われるのは、4・7・11月の計3回。ガーデンの施工から約5カ月が経過した今回、第1回目となる『ショーアップ審査』が行われました(春の見ごろを迎えたガーデンの観賞性を審査します)。審査期間:2025年4月10日~16日。 審査員は以下の5名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、本木一彦(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事) 【コンテスト審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者の関心が得られる工夫があること/公園利用者が心地よく感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること/メンテナンスがしやすいこと/テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること/総合評価※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 今回の評価のポイントは主に、植栽の春の美しさがしっかりと表現されているか=ガーデンの観賞性が重要。単に華やかであることだけが重要ではなく、「植物個々の特性・魅力がしっかり見せられているか」、「葉や花の組み合わせがデザイン的に美しいか」が求められます。※年によって気象条件が変わるため、開花の時期がずれていても評価に影響しません。※今回行われた審査結果の公表はありません。 4月のショーアップ審査を迎えた5名のガーデンをご紹介 コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 【作品のテーマ・制作意図】 皆さんの日常に癒やしや潤いを届けたいという願いを込め、プランツ・ギャザリングの視点で、ガーデンをひとつの大きなブーケに見立ててデザインを構成しました。動物たちが次の訪問者のために心遣いを残していく絵本から着想を得て、あらゆる世代の方が見て触れて、香りなどを楽しめるように、花の形や手触りがおもしろいものを用いた植栽計画をしています。ぜひ手に取って、お気に入りの植物を見つけてください。たくさんの感動や気づきが新たな会話を生み、笑顔になるシーンが増えますように。 【4月中旬(審査当日)の様子】 審査時の見どころ ナチュラリスティックな中にある、華やかさ。子どもの目線で見た時に、目の前に見上げるように迫るチューリップは圧巻。中央に据えられたバイオネストの造形美も見る人を楽しませる。 開花期を迎えていた植物 チューリップ‘フレーミングピューリシマ’、チューリップ‘パープルエレガンス’、チューリップ‘ガボタ’、スイセン‘タリア’、フロックス・ディバリカタ‘メイブリーズ’ オルラヤ、ナズナ(タラスピ・オファリム)、アイリス・モシナンテ、シラー・ヒアシンソイデス(イングリッシュブルーベル)、クナウティア・アルベンシス など。 コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 【作品のテーマ・制作意図】 季節によってカラーリングが変化する植物や、実をつけて味わい深い風景を作ってくれる植物に集まる多様な生き物たち。そして各所に配置したサークルネストはそんな生き物たちの拠り所に。命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインしました。人間だけに限らず、あらゆる生き物たち「みんな」にとっても楽しめる「命を感じられるガーデン」は「みんなのにわ」となり、命を循環させてゆきます。 【4月中旬(審査当日)の様子】 審査時の見どころ 自分の庭にも取り入れてみたくなる工夫があちこちに。ブルーベリーやイチゴ、ダークカラーのレタスといった食べられる植栽は、身近感があり、見ているうちに「おいしそう!」な雰囲気に。子どもと一緒に楽しめそうな、家族の物語が見えてきそうな花壇。 開花期を迎えていた植物 チューリップ‘バレリーナ’、チューリップ‘フレーミングピューリシマ’、チューリップ・ヒルデ、スイセン‘フォーチューン’、チューリップ‘エデュアルトペルガー’、ムスカリ・ラティフォリウム、アジュガ‘ディキシーチップ’、ブルーベリー など。 コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 【作品のテーマ・制作意図】 砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽のデザインをしています。植栽は、見る場所や角度によって印象が変わるように、カマキリなどの天敵が身を潜められるような複雑さが出るよう工夫しました。植物は、てんとう虫やカマキリの食料となるアブラムシなどが好む「バンカープランツ」や蝶やミツバチたちの蜜源となる植物を植えています。「小さな住人(虫たち)」の生活をそっとのぞき見ることができる場所を目指しています。ここでの小さな体験が、自分の身近な自然環境を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。 【4月中旬(審査当日)の様子】 審査時の見どころ 原種チューリップで魅せる、自然で美しい風景。決して盛り過ぎず、今の時期に相応しい優しく楽しい色彩が穏やかな空間を創り出します。それと同時に、テントウムシなどの小さな生きものたちの暮らしにもこだわる作家らしさが垣間見えます。 開花期を迎えていた植物 チューリップ‘ペパーミントスティック’、チューリップ・ヒルデ、スイセン・ジョンキル系、カマッシア・ライトヒトリニ‘カエルレア’、アリウム‘カメレオン’、ビオラ、ビオラ・ラブラドリカ、プルモナリア‘ダイアナクレア’、ゲウム・リバレ、ゲラニウム・ツベロサム、エピディウム など。 コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden 【作品のテーマ・制作意図】 ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、それら3つの主体が密接に関わり合う「ワンヘルスガーデン」をつくります。土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込む。ガーデンの香りや触れ合いを通し、ヒトの健康と安らぎを生み出すガーデンをつくり、いろいろな生きものがやってくる「みんなのガーデン」を実現します。 【4月中旬(審査当日)の様子】 審査時の見どころ イキイキとした植物の間からひょっこり顔を出すキノコは、ツヤツヤでまるでアート作品のよう。そこに人々が集まって、じっくり見る仕掛けとなっています。植物たちが植わる地表にも命の循環が感じられる庭。 開花期を迎えていた植物 ハナニラ、フォサギラ‘ブルーシャトー’、ローズマリー、クナウティア・アルベンシス、ビルベリー、ベニバナミツマタ、チューリップ‘メンフィス’、チューリップ‘雪うさぎ’、チューリップ‘ブラックパーロット’ など。 コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 【作品のテーマ・制作意図】 私は「みんなのガーデン」を、来園者だけでなく、花を訪れる虫、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」をつなげる庭と捉えました。温暖化する東京の気候に合った植物を差別なく組み合わせ、虫や菌たちによる循環系の形成、見るだけでなく庭づくりに参加もできる「みんなのガーデン」。「みんな」が共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい。この想いが、この庭から未来へ・社会へ・地球へと広がっていけば、と考えています。 【4月中旬(審査当日)の様子】 審査時の見どころ 植物すべての個性が際立って見えるのは、高低のある植物がバランスよく配置され、ボリューム感をうまく引き出しているから。石をマルチングに入れたことで植物の色が一層引き立ち、色彩の設計に唸らされる。 開花期を迎えていた植物 チューリップ‘ラ・ベルエポック’、チューリップ‘ジャイアントオレンジサンライズ’、チューリップ‘ハッピーフィート’、チューリップ‘ホワイトバレイ、チューリップ‘バーニングフレイム’、ロロペタルム’黒雲’、ベロニカ‘ジョージアンブルー’、エスコルチア‘ピンク’、フリチラリア・ペルシカ、ラナンキュラス‘ラックス’ など。 5月25日(日)開催!「入賞者イベント」のお知らせ 第3回東京パークガーデンアワードの入賞ガーデナー5組によるガーデンイベントを5月25日(日)に開催します。入賞ガーデナーが案内する「ガーデンツアー」や「たねダンゴづくり」、「微生物観察ワークショップ」など、子どもから大人まで楽しめるガーデンイベントがいっぱい。ぜひご来園ください(雨天中止)。 ■日 時:2025年5月25日(日)10:00~15:10(雨天中止)■会 場:都立砧公園(東京都世田谷区砧)コンテストガーデンエリア(みんなのひろば前)■参加費用:無料■中止連絡:雨天中止の場合は、イベント前日までに都立砧公園の公式X(旧Twitter)にてお知らせします。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせください。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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フランス
フランスの園芸愛好家たちに愛されるガーデニングフェア「サン=ジャン=ド=ボールギャール城」をレポート
愛され続ける老舗ガーデニングフェア 白いテントやパラソルの内外に植物苗がわんさかと並べられています。 パリから南西に30kmほどの田園地帯に位置する17世紀の城館サン=ジャン=ド=ボールギャールのガーデニングフェアは、2024年の春に創立40周年という節目の年を迎えました。歴史的ポタジェで知られる個人所有のお城の庭園内で行われるという場所の魅力に加え、毎回フランス内外から200以上の種苗業者やガーデニング関連出展者が一堂に集まる場となっており、各地の生産者と交流しながら新種や希少種を発見したり、幅広い品揃えを実際に自分の目で確かめて、質のよいこだわりの植物苗を購入できるなど、魅力がぎゅっと詰まっています。 細やかな植物の性質などを記した手書きのプレートがついていたり、植物選びを助ける配慮がいろいろあるのが嬉しい。 今回のフェアの注目テーマにも謳われていたのがグラウンドカバー植物ですが、日陰の庭の強い味方のシダ類はいつも人気。 ベルギーから来ているダリアなどの春植え球根も毎年人気のスタンドです。 私自身毎年このフェアに行くのを楽しみにしているのですが、周りのガーデニング愛好家の方々も同様の様子で、約束せずとも現地で何人も友人知人に出会ってしまうのも面白いところです。この日たまたま出会った友人夫婦は、冬の間ダメになってしまったテラスの植栽の植え替えのために、シュウメイギクやエリゲロンなどの花苗を買い込んでいて、帰ったらすぐ植え替えると言っていました。ちなみに、選ぶのは奥様で、植え替え作業は旦那様担当だそうで、なんとなくフランスっぽい役割分担です。 買った苗は、会場内ではカートで運んだり、持参のエコバックで持ち運ぶ姿が多く見られます。 樹木などは、スタンドから駐車場まで専用車で直接配送もありと、苗木類を購入持ち帰りするためのサービスも至れり尽せり。 ガーデニングのトレンドをキャッチ 毎年必ず見かける定番の樹木や多年草の他に、目新しい植物に出会えるのがガーデニングフェアの大きな魅力。さまざまな視点から選出される受賞植物のセレクションにも注目です。 今年の受賞プランツの一部。アガベは大きすぎてプレゼンテーション台に乗らなかったようで、パレットの上に乗ったまま。逆に存在感が出ています。 ヤナギのトピアリーに注目 フランスのポタジェ(菜園)ではレイズドベッドの仕切りなどに、ヤナギの枝を編んだものが使われているのをよく見かけます。昔ながらの手法で、ナチュラルでリュステックな雰囲気が素敵ですが、作り込むのはなかなか大変そう。アール・ド・ヴィーヴル(生活芸術)賞に選出され、フェアで注目を集めていたのが、“ヤナギのトピアリー”と呼んだらよさそうな仕立てもの。 発根能力が高く、しなやかな枝をもつヤナギの性質を生かした鉢植えで、このまま一つ、または幾つかをテラスにアクセントとして飾る、あるいは並べて仕切りするなど、色々活用できそう。実際にこの鉢を抱えて帰路に着いている人も沢山見かけました。どんな風に使うのかしら。 充実のガーデニングツール スティール製の大きなガゼボ。下には同素材のコンテナーが付属しており、庭にもテラスにも同じように設置できるようになっています。 フェアの楽しみとしては、植物苗ばかりでなく、庭仕事を支えるガーデニングツールや、庭デザインのポイントにもなるアウトドアファニチャーにも注目したいところ。ファニチャーに関しては、木材などの自然素材を生かしたナチュラル感の高いものと、スチール素材のエレガント系が主流です。 木製の柵やバードハウス各種。ガーデンチェアはスタンダードな形をポップな色合いにしてみたり、遊び心を感じる製品もたくさん。 こちらはスチール板の動物たち。シンプルながら愛嬌を感じる、庭に置いたら楽しそう。 実用的な支柱なども、シンプルかつエレガントに使える素材と形が揃っています。 そして、今回特に気になったのが、オーストリアの企業が作っている銅やブロンズ(銅合金)製のガーデニングツールです。 ブロンズの輝きが美しいスコップなどのガーデンツール。土壌と植物を守るなどの効果もあり、環境保護の面からも理想的な伝統の道具でもあります。 昔ながらの風合いの金属色が美しいばかりでなく、じつは鉄と異なり、酸化して錆びることがないので、土に鉄サビを残さず土壌のバランスを崩さないうえ、静電気をほどんど帯びないのでシャベルからの土離れがよく、根の周りを丁寧に扱うのにもよい。また微量ながら銅には天然の抗菌作用があり、病原菌やカビの繁殖を抑えるなどのいくつもの利点があるそうです。さらには、叩き直して修復することもできるので一生ものになる、世代を超えて使い続けられるといえば、かなりお高くはあるのですが、お値段以上に値打ちのある投資になるかもしれない、永遠の定番です。 HAWSのジョウロなども定番人気の商品です。写真の中には皆さまにも見覚えのあるものが見つかるのでは。 さて、ブロンズの手作り伝統ガーデンツールはオーストリア製ですが、ガーデニング用品のスタンドを覗いてみると、イギリス製のガーデングッズも安定的な人気の様子。日本の皆さんがご存知のグッズも写真の中に見えているのではないでしょうか。 気になるランチタイムは 左端でちょっとボケて写っているのが手に持ったマカロン。昔風のアーモンド・マカロンです。しっかり甘いけれど美味しかった! ところで、ガーデニングショーでもフード事情は気になりますよね。広い敷地を歩き続ければお腹も空いてきます。ということで、すでに朝のおやつタイムに、こちらのフードスタンド名物の昔風のマカロンをいただいてみました。 通常のマカロンの2倍くらいはありそうなサイズ。アーモンド感がたっぷりでかなり甘くて、昔風といえば納得の、素朴に美味しいマカロン。毎年これを必ず買って帰るというファンもいるそうです。ほかにもヌガー、カヌレやパン・デピスと呼ばれるハチミツ風味のお菓子など、どちらかといえば伝統的なお菓子が揃っています。 左/丸焼き豚プレートは、丸型の木のランチボックスにて提供されます。明るい光も何よりのご馳走。右/ちなみにランチをいただく場所から見えるお城のメインの館には、現在も城主のご家族がお住まいなのだそう。 肝心のランチは、サンドイッチなどの軽食を売るフードトラックで調達して、ポタジェの草地やベンチでいただくか、あるいは、大テントとテラス席を備えた期間限定レストランでいただくか。いずれにしてもカジュアルな二択となるのですが、天気さえよければどちらも気持ちがよくておすすめです。今回は早めに着いたので、無事レストランのテラス席をゲットして、比較的優雅な外ランチを楽しむことができました。私が選んだのは、丸焼き豚ローストにポテトの付け合わせ、グリーンサラダとシードル、ついでにエクレアも。どれもシンプルに美味しくてお腹いっぱい、大満足です。 リンゴの花咲く早春のポタジェへ 17世紀からの歴史的庭園でもある整形式のポタジェ(菜園)はリンゴや洋ナシが花ざかりの早春の風景。 ランチの後はゆるりとお城のポタジェを散策し、名残惜しいスタンドをもう一度確認し、まだスイセンの群生が美しい草地を通って、帰路へ。パリからは車で1時間弱の距離ながら、林に囲まれたお城の敷地に入れば、御伽話の世界に迷いこんだ感じすらしてきます。フランスではお城の敷地を利用してガーデニングショーが行われることが多いですが、それぞれフランスらしさに溢れる自然と歴史文化がミックスされた環境の使い方がじつに上手だなあと、いつも感心しています。 スイセンがそこかしこで咲き続け、シャクヤクはまだ葉っぱが出てきたばかりといった感じ。 定番の植物たちや出展者のブースには安心感がありながら、新たな出会いもあり、毎年期待を裏切りません。今回は、早春の爽やかな花風景も一緒にお伝えしながらのフランスからのガーデニングフェア報告でした! 皆さんも春からのガーデニングをご一緒に楽しみましょう。 お城の敷地に入るとこんな様子でナチュラル感いっぱいの花と緑の風景が広がります。
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神奈川県
ローズトンネルも見頃! 特別な時間を過ごせるバラ園「横浜イングリッシュガーデン」 ロー…PR
横浜イングリッシュガーデンが「一年で最も美しい季節」到来 入口からおよそ50mにわたりバラを這わせた大型アーチが連なる「ローズ・トンネル」。淡いピンクの‘マニントン・マウブ・ランブラー’やサーモンピンクの‘フランソワ・ジュランヴィル’、紫の‘アイヴァンホー’などが頭上を埋め尽くします。写真は、昨年5月上旬の様子。現在の庭の様子やバラの開花状況は、InstagramやHPでご確認ください。 日々花開くバラが増えている「横浜イングリッシュガーデン」に、一年で最も美しい季節がやってきました! 園内に一歩足を踏み入れれば、目の前には無数のバラが大アーチを縁取る、夢のようなローズトンネルが皆さまをお出迎えします。そして右に進めば、ワインレッドやパープル、ダークレッドのバラとクレマチスが混ざり咲き、足元にはブロンズリーフの植物がコラボするシックな印象の「ローズ&クレマチスガーデン」です。 2025年横浜イングリッシュガーデン バラの開花予想 4月上旬にカナリーバードやモッコウバラなどの早咲きのバラが続々と咲き、園内はバラに彩られるエリアばかり。今年のバラの開花は、例年並みのペースとなる見込み通り、5月のゴールデンウィーク後半~明け頃より見頃のピークを迎えています。*現在の庭の様子やバラの開花状況は、InstagramやHPでご確認ください。 「ローズ&クレマチスガーデン」に植栽されている多くのバラは、素晴らしいダマスク香を放ちます。 ‘ラプソディー・イン・ブルー’や‘ベルベティ・トワイライト’、‘真夜’……。ぜひ香りを確かめて。 圧倒的な花に包まれて時間を忘れる癒やしの庭 枝垂れるように仕立てられた‘プレッツァ’やアーチ仕立ての‘マリー・キュリー IYC2011’をはじめ、‘パーパ・ジョン・ポールⅡ’、‘プリンセス・オブ・ウェールズ’、‘アイズバーグ’、‘グラミス・キャッスル’など多数の白バラを主役に、白色の宿根草、白斑入りの植物を組み合わせた「ローズ&ペレニアルガーデン」。白花に囲まれるホワイトガーデンが時を忘れさせてくれます。 さらに先へ進み、アーチを抜けると、白バラが眩しく輝く別世界に迷い込んだり……。どこも見渡す限りバラが咲き、贅沢な時間が過ごせるガーデンです。 この季節は、バラだけでなく株元に茂る宿根草などの草花も美しい花々を咲かせています。バラに寄り添うように咲くオルレア、思わず触りたくなるふわふわなラグラスの穂、風に揺れるたおやかなアグロステンマ、お互いを引き立て合うクレマチスの花々……。バラの開花とぴったり合う草花が選ばれており、庭づくりのヒントもいっぱい見つかります。 世界最高水準の管理下で育つバラたち 「横浜イングリッシュガーデン」に咲くバラは、約2,200品種 2,800株に上り、国内外でも屈指のコレクション数を誇ります。今では希少な古い品種をはじめ、よそでは見ることができない国産品種、さらには最新の品種まで多彩なセレクション。これら多くのバラたちを最高のパフォーマンスで咲かせるには、管理のテクニックが必要です。 スーパーバイザーの河合伸志さん率いる「横浜イングリッシュガーデン」のガーデナーたちによるバラの管理水準の高さは、世界的にもトップクラスと評され、海外の専門家が見ても驚くようなレベル。最高品質のバラが、それぞれの品種本来の特性を発揮し、景色として楽しめるだけでなく、一つひとつの品種をじっくり観賞できるのも、この庭の大きな特徴です。 情熱的な赤いバラが主役のエリア「ときめきガーデン」。 通常閉じられている「ときめきガーデン」がバラの時期限定でオープン。ときめく縁結びのガーデンになればと願いを込めてつくられた、情熱的な赤いバラが主役のエリアです。‘恋心’や‘ラスティング・ラブ’など、恋愛にまつわるバラが多数植えられています。思い出に残るデートスポットとしておすすめです。 バラの時期限定「早朝プレミアム開園」のお楽しみも! 例年好評の「早朝プレミアム開園」も開催します。時に露をまとい、シャキッとした新鮮な朝のバラは、ひと際美しい表情を見せます。また品種によっては、朝と日中では異なる印象の香りを放つ花があります。じっくりとバラの聞香をするのも通の楽しみ方。 朝の光は日中の光に比べると写真撮影に適していて、混み合わない早朝プレミアム開園タイムのみ三脚の使用も可能です。美しい写真をカメラに収めたい方には見逃せない期間、ぜひ早起きをして出かけましょう。 「早朝プレミアム開園」の開催は、4/26(土)~5/18(日)の期間限定で、通常の開園時間より2時間早く入園いただけます。朝8:00開園~9:30受付終了(10:00より通常開園)。料金は、大人2,300円/小中学生1,200円(通常入園料+「早朝プレミアム開園」イベント料金(大人800円/小中学生400円)年間会員は無料。 ※10時より通常開園となります(9:30~10:00の時間帯にはご入園いただけません)。「早朝プレミアム開園」にご入園された方は、そのまま通常営業時間帯もご滞在いただけます。 ●「早朝プレミアム開園」のチケット販売は、事前予約のみとなります。当園窓口での当日入園券の販売はございません。電子チケット(楽天・アソビュー)のみ販売です。コチラから購入いただけます。 <特別展示>Imperial Roses 〜皇室ゆかりのバラ展示〜 4/19より開花期間中、ガーデン出口付近「ヨコハマくらし館」入り口横に展示いたします。2022年の展示の様子。 例年人気の企画、皇室に由来するバラ「エンペラーズ・ローズ」が、本年も期間限定で展示します。美智子上皇后のバラ‘プリンセス・ミチコ’と‘エンプレス・ミチコ’、‘プリンセス・アイコ’など、全12品種の展示を今年は、ガーデン出口付近「ヨコハマくらし館」入り口横に展示。豪華な花々を一堂に観賞できる貴重なこの機会をお見逃しなく。 上段左から/‘ハイネス・雅’、‘ハイネス・愛’、‘プリンセス・アイコ’、‘プリンセス・ヒサコ’ 中段左から/‘プリンセス・サヤコ’、‘プリンセス・チチブ、‘プリンセス・ミチコ’、’プリンセス・ミカサ’ 下段左から/’プリンセス・ナガコ’、‘エンプレス・ミチコ’、‘プリンセス・ハナコ’、‘プリンセス・タカマツ’。ガーデン出口を出て右手奥「ヨコハマくらし館」入り口付近に開花期間中展示されます。 園内でお気に入りの香りを探そう! 豊潤な香りはバラの醍醐味 芝生エリアに植るブルガリアンローズ。昨年の開花は4月下旬頃。顔を近づけて芳醇な香りを確かめよう! 2023年に駐日ブルガリア共和国大使館より譲り受けた「ブルガリアンローズ」は、香りのバラの代表ともいうべき存在であり、最も上質な香りのバラの一つです。その香りは、華やかでいわゆるバラらしい香り。花に顔を近づけて香りを深く吸い込めば、体全体がバラに包まれたかのよう。人々を幸福にするバラの香りに見せられて、バラの虜になる人も多くいます。横浜イングリッシュガーデンに咲くバラのなかにも、香りがよい品種が数々あり、咲き立ての香りを自由に味わえます。ぜひ、お気に入りのバラの香りを見つけてください。 スーパーバイザー河合伸志が選ぶ「横浜イングリッシュガーデン」に咲く香りのバラ5選 芳純(ほうじゅん) モダン・ローズで最もよい香りのバラの一つとされ、その名の通り豊潤なローズの香りがあり、同時に爽やかさも奥底に感じられる。化粧品会社によってこの香りをイメージした商品が誕生している。 アンブリッジ・ローズ 柔らかな色彩に豊満な印象のカップ咲きの花には、強いアニス(ハーブの一種)のような香りがある。やや薬臭い印象の個性的な香りのため、好き嫌いがはっきりと分かれる。 シルバー・シャドウズ グレーの陰影を感じる薄紫の花には、甘さと爽やかさを兼ね備えた香りがある。目を瞑りその香りを深く吸い込むと、新緑の森の中にたたずんでいるかのように思えてくる。 アンヌ=マリ・ドゥ・モランヴィル パールのような小さな花には不思議な香りがある。香りの研究者いわく「カメムシの香り」とのこと。怖い物見たさで、ぜひ嗅いでみるのも一興。まさかバラにこんな香りがあるとはと驚くかもしれない。 ドゥフトボルケ ボリュームのある大きな花には、熱帯の果実を思わすような濃厚な香りがあり、その強さに思わず頭がくらくらしそうになる。古くより香りの名花として知られる品種で、品種名は「香りの雲」の意味。 何度も訪れたくなるバラの開花リレー 淡いピンクやモーヴカラーのバラを主役に、ピンク、青、紫などのハーブ類、ライムリーフの植物などを組み合わせた明るい色相の「ローズ&ハーブガーデン」。 2025年の横浜イングリッシュガーデンでは、4月上旬に極早生のバラが咲き始めています。今年のバラの開花は例年並みのペースとなる見込みで、5月のゴールデンウィーク後半~明け頃より見頃のピークを迎える予想です。ゴールデンウィーク前後は気温がまださほど高くないため、花色がしっかりと発色し、また最も力のある房の中央のつぼみが開く時期。一輪の花をじっくり眺めたり、クローズアップして写真を撮るのに最適なタイミングです。 毎年、新しいバラが追加植栽され、進化した景色が楽しめます。左は、ホルトノキに10株のつるバラ‘ローゼンホルム’を絡め、所々にクレマチスやホタルブクロも競演するバラのシーズンのフィナーレを飾る演出♪ 右は、ローズトンネルの最後のバラと‘ローゼンホルム’の壁、アジサイディスプレイが同時に楽しめました(2024年5月下旬撮影)。 5月下旬になると最晩生のバラが咲き始めます。この頃にはローズトンネルの突き当たりにピンクのバラの壁が現れ、池の脇には赤いバラの柱が出現。8mの高木に絡むバラや白花がふわりと咲くアーチなど、訪れる度に景色が変化し、見どころが絶えません。そして同時期に、庭の主役の座はそっとアジサイたちに引き継がれ、季節は巡ります。バラとアジサイが一緒に楽しめる貴重な時期もお見逃しなく。 バラ満開の園内で優雅な時間を過ごそう 約2,200品種 2,800株のバラが咲く「横浜イングリッシュガーデン」に一歩入れば、そこは非日常の癒やしの空間。咲き立てのバラの香りを嗅いだり、日に照らされて輝く花々に出会った感動を写真に撮ったり、木陰のベンチで家族や友人、恋人と語らったり……。一年で最も美しいガーデンで、ぜひ今年一番の素敵な思い出を作ってください。 日が傾く夕方も庭散策におすすめの時間帯です。ベンチに腰掛け、バラ咲く風景を存分に眺める贅沢な時間をお過ごしください。 ‘バラの国’ブルガリアの魅力を知る2日間!「ブリガリア・フェア」※会期は終了しました 横浜イングリッシュガーデンに植樹されたのは、香料を取るためにブルガリアで古くより栽培されている本家本元のブルガリアン・ローズ(写真は昨年開花の様子)。駐日ブルガリア共和国大使館マリエタ・アラバジエヴァ大使を通し、ブルガリア国立バラ研究所から寄贈された貴重な1株です。貴重な株の今年の開花もご期待ください。 2023年、駐日ブルガリア大使館より寄贈された「ブルガリアン・ローズ(ロサ・ダマスケナ、トリギンティペタラ、カザンラク)」の株が植樹されて3年目を迎える今年は、4/28(月)・29(火祝)に「ブルガリア・フェア」を開催! 駐日ブルガリア共和国大使館の後援により、見て・聞いて・食べて・買って、ブルガリアを満喫できる貴重な2日間です。ぜひ横浜イングリッシュガーデンで、ブルガリアを旅する気分で体験してください。 ブルガリアン・ローズが植る芝生のエリアでは、ブルガリアの民族衣装をまとったダンサーが「ブルガリア・フォークダンス」を披露するほか、ブルガリアの魅力を紹介する講演会、伝統的なブルガリア刺繍のワークショップなど、‘バラの国’ブルガリアの魅力を堪能するイベントです。併設のカフェでは、ブルガリアンローズのジャムが味わえるメニューも登場。ショップでは、ブルガリアンローズを用いたジャムやローズハニー、ローズウォーターなどを販売するほか、ブルガリア産ワインやブルガリア伝統陶器の出張販売、ブルガリア料理のキッチンカーもやって来ます! 2023年に初開催となった「ブルガリア・フェア」イベント報告記事はこちら『至高のバラ「ブルガリアン・ローズ」が横浜イングリッシュガーデンに登場』 民族衣装をまとったダンサーが「ブルガリア・フォークダンス」を披露 園内「ローズ&シュラブガーデン」芝生エリアにて、色鮮やかな民族衣装をまとったダンサーが軽快なリズムと華麗なステップの「ブルガリア・フォークダンス」を披露します。日時:4/28(月) 11:00、13:00、14:00、15:00頃予定 4/29(火祝) 13:00、14:00、15:00頃予定 「ブルガリア」の魅力を知る2つの講演会開催 4/28(月)14:00〜 「日本とブルガリア 〜アントニオ・アンゲロフ氏が語る両国の魅力」 日本とブルガリア両国の魅力について、駐日ブルガリア共和国大使館 公認翻訳者 アントニオ・アンゲロフ氏が講演する貴重な機会。 4/29(火祝)14:00〜 「バラの国ブルガリア 観光と歴史を巡る」 ブルガリアの観光と歴史を巡る旅の魅力を、駐日ブルガリア共和国大使館 一等書記官 ペタル・ニコラエフ氏がお話しします。 *2つの講演会ともに参加費無料。ヨコハマくらし館イベントスペースにて座席数20席ほどで行います。 ブルガリア刺繍のワークショップ 美しい色と伝統的な模様のブルガリア刺繍を体験していただけるワークショップを開催します。参加費無料。講師:山美イレン氏(エンブロダリスタジオ羅美那)日時:4/28(月)・29(火祝)各日2回 11:00〜12:00/13:00〜14:30 *各回参加ご希望の方は、10時半より会場にて配布する整理券をお受け取りください。場所:ヨコハマくらし館イベントスペース *ヨコハマくらし館イベントスペースでは、ブルガリアの歴史や文化を紹介する展示パネルやブルガリアの民族衣装の展示もお見逃しなく。
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「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」ガーデナー5名の2月の“庭づくり”をレポート
本格的な春到来前に行なわれた2月のメンテナンス作業 作庭日の2月下旬は、例年ほどの寒い日はなかったものの、吹きさらしの砧公園では最低気温がマイナスになることもありました。どこのガーデンも万全の策で無事に冬を乗り越えていましたが、自然が相手では思いもよらぬことが起きるもの。いくつかのガーデンで球根類が掘り起こされた跡が発見されました。そのイタズラは、周囲の大木に棲みつく都会のカラスたちによるものと判明。代々木・神代ではなかった事態です。 そこでガーデナーたちは、カラス対策として水糸や麻糸を植栽の上に張り巡らすなどの策を講じることになりました。それでも隙間から入り込むつわものも。植物が根を張るまでの辛抱です。 鳥よけが施されたガーデン。これも自然との共存のためのひと手間。 「第3回 東京パークガーデンアワード」【2月】第2回作庭 2回目となるコンテストガーデンの作庭は、12月の第1回作庭時に多くの作業を済ませたこともあり、半日~1日でほぼ作業が終わりました。順調に進んだそれぞれのガーデンの作庭の様子をご紹介します。 コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 ◆今回の作業◆ ①プランツタグをつける カラスが紙のタグを引っこ抜いてしまう前に、金属製の黒いプランツタグを設置する。 ②グラス類の切り戻し、枯れた葉の除去 グラス類の地上部をカット。取り除いた枯葉とグラス類は細かく切って、花壇の中央に設けたバイオネストに入れる。 ③新しい苗の追加植栽とバークの追加 カラスの被害を受けた苗は交換しながら、ポイントでフロックスを補植。マルチングが流出した箇所には、寒の戻りの対策としてマルチバークを追加する。 ④バイオネストの補強と中を攪拌 しなやかな細い枝を編み込みながらバイオネストを補強しつつ、細かく刻んだ発生材はおがくずと一緒に土としっかりと攪拌する。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ 草花を通じて、訪れる人々の優しい気持ちが連鎖するように願いを込めて、ラウンド型のブーケを模した配植計画と色彩計画で構成されています。子どもたちの目線の高さを意識して計画されているため、レイズドベッドの縁近くにはスイセンやシラーなどのコンパクトな球根類が咲き、多くの世代の目線から楽しめるように工夫されています。また、花壇中央に設けたバイオネストへと続く管理動線には小枝を用いており、里山の小路を連想させるような、どこか懐かしさを覚える風景が広がっています。 コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 ◆今回の作業◆ ①新しく苗を追加植栽、マルチングの調整 前回手に入らなかった植物を新たに植える。バークに埋まってしまっている小さな植物によく日が当たるように、多すぎるバークを取り除く。 ②枯れたグラス類の上部をカット 枯れたグラスの葉を取り除き、溝に入れる。まだ寒くなることも考えられるので、汚くなった枝葉除去は、次回以降のメンテナンスにまわす。 ③プランツタグを設置 植物名を刻印した木製のオリジナルプランツタグを各所に指す。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ 命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく、生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインされています。また、レタスなどの野菜類も加え、いままで携わっていたコミュニティー菜園をこの花壇に再現。宿根草の庭に収穫の要素が追加され、誰もが心浮き立つ風景が作られました。これからの時期、子どもたちが楽しめるオジギソウやニンジンのタネが、ガーデンの手前側に播かれる予定。新しい発想が盛り込まれています。 コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 ◆今回の作業◆ ①花がら摘み、球根の植え直し 美観のためと花期を伸ばす目的で、ビオラの花がらをしっかりと摘み取る。また、カラスに掘りかえされた球根を植え直す。 ②苗の追加 前回手に入らなかったクジャクアスターやベニチガヤなどの苗を新たに補植する。 輸入苗のエピメディウム(イカリソウ)。株が大きいので分割して植える。 ③バークチップを足す マルチングが減ってしまった場所に、バークチップを加える。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ 砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽デザイン。見る場所や角度によって印象が変わるように、植栽に複雑さが施されています。花壇内の地面には高低差が設けられているので、これからさらにどの様な立体感が生まれてくるのか楽しみ。カラス除けに用いられた紫とオレンジ色の麻ヒモは英国のナッツシーン社のもの。色彩の少ない時期のガーデンに取り入れた色づかいが、心憎いこだわりを感じさせています。 コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden ◆今回の作業◆ ①雑草取り ところどころに生えている雑草を抜いて袋に集め、花壇内に設けたバイオネストに投入。 ②新たなステップを配す オオヒラダケの菌床を固めて作ったステップを新たに数カ所配置。12月に配したものは、すでに朽ち始めていた。 ③切り戻し(グラス、低木など) ノコンギク(ホキヤマ)、ススキなどの枯れた不要な部分を地際から切り戻し、バイオネストに投入。 ④バイオネストの中を整える 当日発生したものも入れた状態。この後、米ヌカが手に入り次第、入れて混ぜ込む予定。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込むガーデンです。植物は植えた当時からそれほど大きな成長は見られませんが、手触りや香りを楽しめる植物たちの“人の心に安らぎをもたらす”ための準備はすでに整えられており、土中の菌糸たちも旺盛に広がっています。 コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ ◆今回の作業◆ ①除草、枯葉整理、切り戻し 冬季落葉で枯れた部分をすべて取り除いて春に向けての美観整理を行う。発生した切り枝葉は、通路の土に混ぜ込んでリサイクル。 ②球根の植えなおし、新たな苗の補植 カラスに掘り出された球根を植え戻し、春植え品種の追加や景観のボリューム・バランスを整えるための新たな苗と球根の補植を行う。 ③寒さ除けを一度取り外す 冬の植え付けだったため不織布をかけて初年度の寒さから保護養生していたマンガべ ‘マッチョモカ’。不織布を一度取り外し、傷んだ外葉を整理する。本種は寒い冬には外葉が枯れて半落葉状態になることがあるが、温暖期の新葉で株が更新される。秋までによく根を張らせることで本来の耐寒性が発揮でき2年目以降は防寒の必要はない。 ④通路に客土して地形の調整 土砂の流失を和らげるため、一度入れた土を取り除き、培養土と米ぬか酵素、砕いたトウガラシを混ぜ込んで戻して底上げを行い、花壇内の高低差を減らす。 ⑤剪定 花壇中央でアクセントになっているコルヌスは春の鮮やかなカラーリーフの芽吹きを促進するため、半数の枝を低い位置でカット。一部の枝は春先のボリューム維持のため、今回は長いまま残している。 ◆作業完了時のガーデンの様子◆ 人だけでなく虫や鳥、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」。みんなが共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい――。そんな想いを、個性豊かな植物で独創的に表現。芽吹き前で植物の地上部は少ないですが、既にそれぞれが強く主張しあっています。ボランティアで集まったチームの知識と想いの共有と共感、そして連携が、このガーデンの隠れたコンセプトとなり、今回の課題(テーマ)につながっています。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせ下さい。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」 ガーデナー5名の“庭づくり”をレポート!
第3回コンテスト会場の全貌 2022年からスタートし、画期的な試みとして注目を浴びている「東京パークガーデンアワード」。3回目となる今回は、多くの区民が訪れる都立砧公園。コンテスト会場は園内の子どもが遊べる‘みんなのひろば’前に設けられました。 サクラやケヤキなど落葉樹に囲まれた芝生エリアに設けられたコンテストガーデン。 コンテストガーデンの区画には、あらかじめ事務局にて「高さ40cmの木枠のレイズドベッドに客土された状態」の2対1組の花壇が5つ用意されました。ガーデナーは自身が表現したい植栽が健全に育つように、ガーデン制作時に土壌改良・施肥などをすることが可能です。 作庭が完了した12月下旬の様子。 ガーデン制作にあたり、デザイナーが踏まえておくこと デザイン・植物について ・ コンテストのテーマは「みんなのガーデン」とし、多年生植物をメインとしたガーデンを制作すること。 ・ 国内市場で流通している植物のみ使用可能(採取した植物は不可)。・ 公園内で爆発的に繁殖するおそれがある植物は使用不可。・ 主たる植物は多年生植物を使用すること。容易に制御が可能な草本類に近い木本類は使用可能(全ての植物は高さ2m以内に限る)。・ 構造物やガーデンオーナメント等の設置は不可。植物のみで構成すること。・ 発生材処理のためのバイオネストの設置は可能。来園者の安全を考慮した仕様とすること。 作庭の様子。 メンテナンスについて ・ 展示期間中(2024年12月~2025年12月末)は入賞者がメンテナンスをし、それ以降は事務局が管理。・ 補植は可能。・ 最低限植物の状態を保つ週1回程度の潅水は事務局が行う。・ 薬剤の散布は不可。自然素材の忌避剤の使用についても不可。・ ごみ(発生材含む)は持ち帰り、または自身のガーデン内のバイオネストで処理をすること。・ メンテナンスの計画を提出すること。 区画・土壌について ・ 会場の基礎土壌には、事務局にて準備した土を使用。・ ガーデン制作時に施肥など土壌改良が可能。 【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者の関心が得られる工夫があること/公園利用者が心地よく感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること/メンテナンスがしやすいこと/テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること/総合評価※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 「第3回 東京パークガーデンアワード」【12月】第1回作庭 気鋭の5人がつくるガーデンは、さまざまな工夫が凝らされています。各ガーデナーの植え込みの様子をチェック。ガーデナーの経験値が頼りになる土壌づくりにも注目を! コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 保坂悠平さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:混合土穣(多孔質人工軽量土壌(エコロベース):バーク堆肥=7:3)マルチング:樹皮発酵堆肥(くつきバーク)その他:複合微生物資材(カルスNC)、トウガラシを粉砕したもの ◆土壌を整える◆ モグラ除けのために、トウガラシを砕いたものを花壇全体にまく。保水・排水がよい混合土穣(多孔質人工軽量土壌(エコロベース):バーク堆肥=7:3)を均等に撒き、耕運機でよく混ぜながら耕す。 デザインに基づいて溝や起伏を作り、溝に管理動線用途としてのステップ用丸太を埋め込む。 ◆造作物等を設置する◆ 直径1mほどのバイオネストをつくる。剪定した雑木の80cmほどの太い枝数本を、深さ約30cmまで埋まるように土に挿し込む。その後、柔らかくしなるカツラの細い枝などで編むように丸く囲んでいく。バイオネストには発酵を促進させるための複合微生物資材(カルスNC)を混入する。 ◆植え付け◆ 水糸を張ってグリッドを作り、デザインに基づいてゾーンを分けるラインをチョークの粉で引く。 宿根草の苗を一度配置してから植え付ける。 宿根草を植え付けた後、その間に球根を植え付ける。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 左/溝に埋めた丸太のまわりに、水や土が流れ込まないよう土壌を突き固める。右/表土を樹皮発酵堆肥(くつきバーク)でマルチングする。 左/丸太を埋めた溝の側面に沿って細い枝を埋め込み、見映えを兼ねた土留めを設ける。 右/黒いアルミ製のネームプレートに白色で植物名を書き込んだ札を設置。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 バイオネストを設置することで、発生した植物発生材を運搬・処理する手間を省くことができます。作業したその場で、剪定枝などの発生材を組み合わせて土台にし、落ち葉や刈草などを投入することで継続的に堆肥にできる簡便さに優れています。一般的な堆肥づくりで行う切り返しなどは必要なく、気温や降雨の水分、昆虫や土壌動物、自然界の菌糸の活動により、ゆっくりと分解が進みます。 コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 世田谷bajicoポットラックガーデン 代表デザイナー 石野夕華さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:多孔質人口土壌(ビバソイル)、腐葉土、もみ殻くん炭、牛糞堆肥(お馬の堆肥)など排水確保材:竹炭、汚泥発酵肥料(タテヤマユーキ1号)、剪定枝葉(ササ、ケヤキ、オリーブ、マサキなど)マルチング:樹皮完発酵堆肥(くつきバーク)、杉皮マルチバーク(スリーダイヤ2号) ◆土壌を整える◆ 保水性や排水性を持たせるため多孔質人口土壌(ビバソイル)を混ぜ込んだ後、有機質が豊富な腐葉土、もみ殻くん炭、牛糞堆肥(お馬の堆肥)を載せてよく耕す。 溝を作り、竹炭、汚泥発酵肥料(タテヤマユーキ1号)を入れた後、剪定枝葉(ササ、ケヤキ、オリーブ、マサキなど)を横たわるように入れていく。 ところどころに通気孔を掘り、底に竹炭を入れる。その後、土が入り込まないようにするため、太い枝で外側を囲み、その内側には細い枝を渦巻き状に入れていく。 ◆植え付け◆ 中央に低木やニューサイランなどの大株を植えたあと、宿根草を植え込んでいく。 宿根草の苗を植え付けた後、球根を植え込む。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 左/最後に樹皮完発酵堆肥(くつきバーク)と杉皮マルチバーク(スリーダイヤ2号)で表土をマルチングする。さらに、溝部分に落ち葉を軽く化粧的に載せる。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 高地と低地を区分けするように作ったS字型の窪み、「風のとおり道」には枝が漉き込んであり、水はけや植物の発根を促す効果に加え、ガーデン発生材を処理し、バイオネストのように堆肥を作るという機能も持ち合わせています。また、各所に配置した鳥の巣状の「サークルネスト」と名付けたものには、微生物や虫などの住処や餌場となる役目があります。 コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 小野雄大さん率いる作庭メンバーの皆さん。 【使用資材】 土壌改良材:真砂土、バーク堆肥(炭入りコンパ)、腐葉土、ゼオライト、もみ殻燻炭排水確保材:竹炭、剪定枝葉(サクラ、ケヤキ、クスなど)マルチング:樹皮ウッドチップ元肥:マグアンプ、微生物系肥料(タキアーゼS)その他:トウガラシ ◆土壌を整える◆ 左/全体に真砂土載せた後、溝を掘りながら、ざっくりとした起伏をつける。その後、モグラ除けのために粉砕したトウガラシを撒き、よく混ぜ込む。右/多孔質のゼオライトや有機質を補いつつ団粒構造を維持するバーク堆肥(炭入りコンパ)や腐葉土、もみ殻燻炭、肥料分のマグアンプと微生物系肥料(タキアーゼS)を加え、よく耕して最終的な地形をつくる。 溝には竹炭を入れたあと、ケヤキやサクラ、クスの剪定枝を敷く。 溝のところどころに通気孔を開け、砧公園内で発生したマサキの剪定枝を入れ込む。 ◆植え付け◆ まずは、低木やキンカンなどの樹木を植栽して骨格を形作る。 宿根草の苗を植えた後、球根を植え付けていく。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 植栽前に樹皮ウッドチップを溝以外に敷く。植栽後にも同様に植物の周りに撒く。 溝に沿って入れた枝をカバーするために、苗を植え付けた際にカットしたグラス類の穂を載せて見栄えをよくする。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 作業通路とバイオネストを設置。作業通路は他の場所より一段低い地形で、水が流れ込みやすい場所で、湿度があるため菌糸類や微生物が繁殖しやすい環境です。手入れのたびに発生する抜いた草や間引いたものをそれらに入れ込みます。落ち葉や木の枝などの層が、昆虫などに住居や食料を提供。枝葉の堆積物は水や空気を土の中に取り入れたり蓄えたりするのにも役立ち、植物たちに必要な養分にもなります。 コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden 合同会社百暮 代表デザイナー 高橋祐眞さん率いる作庭メンバーの皆さん。 【使用資材】 土壌改良材:多孔質資材を複数配合したオリジナルソイル、菌糸および菌床マルチング:多摩川梨の剪定枝のチップ(地元川崎の植木農家及び果樹農家から発生する農業副産物)肥料:発酵鶏糞 ◆土壌を整える◆ 左/土中の微生物多様性を高めるために、ガーデン全体に多孔質資材等を複数配合したオリジナルソイルを入れ、発酵鶏糞と共によく耕す。右/オオヒラタケのブロック状の菌床を崩して表土に軽く混ぜ込む。オオヒラタケは菌糸が広がるのが早いので、土壌病原菌の抑制や根の成長を促す効果が期待できる。 ◆造作物等を設置する◆ バイオネストをつくる。直径約50cm、深さ約40cmの穴を開け、その内側に沿って焼杉丸太を打ち込み、多孔質資材を底に敷く。その後、丸太の間をシラカシ等の剪定枝で編み込んで囲みをつくる。 ◆植え付け◆ 低木類から植えて骨格を固め、そのまわりに宿根草の苗を植え込んでいく。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 宿根草の植栽前に、多摩川梨の剪定枝を利用したウッドチップを撒いて表土をマルチングする。ナシの枝はやや硬めで、程よい粒の大きさを保っているため、見た目がよいだけでなく、水の浸透がよく水はねや風による飛散が少ないことが期待できる。 左/バイオネストにシルバーリーフの剪定枝をあしらい、より植栽になじませる。 右/オオヒラタケの菌床でつくったステップを、作業の足場用として設置。数カ月後には朽ちて、土壌改良としても機能する。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 バイオネストを設置し、メンテナンスで発生する剪定枝や落ち葉などの堆肥化を促進します。また、バイオネストの地中を掘り下げて焼き杭を打ち、多孔質な改良材を入れ込んで土中の微生物多様性を高めることで分解速度を高めつつ、土壌改良効果も狙う「生態系のぬか床」の構築を目指します。 コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 太田敦雄さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:軽石、もみ殻燻炭、土の活力素(バイオマイスター)、シマミミズ入り堆肥マルチング:バイオマイスター(下地)、軽石、鹿沼土(仕上げ)元肥:発酵米糠肥料、海藻元肥、バットグアノその他:EFポリマー、トウガラシ ◆土壌を整える◆ 全体的に軽石を混ぜて耕した後に、もみ殻燻炭、土の活力素(バイオマイスター)を混ぜる。 左/モグラやコガネムシの幼虫を除ける目的で用いる砕いたトウガラシ、有機質を補う有機リン酸肥料(バットグアノ)、ミネラル分を補う海藻元肥を混ぜてよく耕し、溝をつくって起伏を作る。右/部分的にミミズ入り堆肥を投入(この部分にトウガラシは入れない)。 ◆植え付け◆ 左/水糸を張り、グリッドをつくる。 右/デザインに基づいて、白線を引いてゾーンを明確にする。 中央のニューサイランを軸に大株から植栽。ポット苗や球根の下には、保水効果がある生分解ポリマーを少量敷いて、成長するまでの冬場の根の乾燥を防ぐ。 宿根草の間に球根を植え込んでいく。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 株のまわりに土の活力素(バイオマイスター)を撒き、夏の蒸れ予防とコガネムシ忌避のために軽石と鹿沼土で仕上げのマルチングをする。 植栽作業完了後、カラスなどのいたずら防止のため、花壇の上に細い紐を張り巡らせて完了。 【12月の作庭完了】 東側 西側 【メンテナンス時の発生材について】 メンテナンスの作業性や植栽内の日照確保、風通し向上のために、エリアを分割する曲線通路を設けました。これは単なる通路ではなく、剪定で出た枝葉のゴミを細かく切って通路の土に埋め込み、それがまた土に還って植物の栄養として供給される「新たなゴミを極力出さない“リサイクル循環Path”」としても活用します。埋める剪定ゴミは分解菌豊富な肥料の働きによって堆肥化が促進され、より速やかな循環サイクルが形成されます。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせ下さい。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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【冬のおしゃれな庭づくり】地植え+鉢植え+花壇+ハンギングで実現! 立体感で魅了する美しい庭
コンテナ、花壇、ハンギング、リースの4重奏の立体ガーデン ここは公道に面したエリアで、道ゆく人の目を楽しませる武島邸のフロントガーデンです。春にはつるバラがフェンスや壁に咲き誇り華やかそのものですが、冬もバラが咲かなくとも彩り豊かで見応えたっぷり。奥行き2mほどの場所ながら、手前から「コンテナ」、「花壇」、「ハンギング」、扉にかけた「リース」というように、さまざまなガーデニング手法を組み合わせ、視線の先を下から上まで花と緑で彩り、冬も華やかなフロントガーデンを実現しています。 冬の庭の素材はパンジー&ビオラなど草丈の低いものが多いため、地植えだけでは視線が下に集中し、庭が平面的な印象になりがち。これらの素材で華やかさを演出するには、いかに「立体感」を出すかがポイントです。武島さんの「コンテナ」、「花壇」、「ハンギング」、「リース」で構成された4重奏の立体ガーデンを詳しく見ていきましょう。 ① 一番手前は石積みの花壇の手前に置いたコンテナ。透明感のある水色のビオラ‘ビビ ヘブンリーブルー’とミニサイズのハボタンを寄せ植えにした奥行き15cmほどの横長のコンテナがズラッと並びます。シンプルな寄せ植えを繰り返し並べることで、花壇の縁がトリムのように彩られ、おしゃれ度アップ。 ② 高さ50cm、奥行き30cmほどの石積みの花壇にはパンジーとシルバーリーフのダスティーミラー、ストックを植栽。ストックは冬の花材の中では草丈が30〜40cmと高く、立体感が出る貴重な植物。甘い香りがするのも魅力です。柔らかなペールトーンでまとめながらも、パンジーに濃い色をプラスしてアクセントに。 ③ ハンギングバスケットの一つは、コンテナの寄せ植えと揃えたビオラ‘ビビ ヘブンリーブルー’の単植。花壇にハンギングスティックを差して飾っています。草丈の低いビオラの花が、目線の高さで堪能できるのがハンギングバスケットの魅力。 もう一つのハンギングバスケットは、アイボリーのガーデンシクラメンやサーモンピンクのパンジー、イエローやシルバーのカラーリーフを用い、ペールトーンでまとめた一鉢。こちらはフェンスにS字フックで引っ掛けています。 ④ 一番目線が高くなる、扉にかけたリースは、ハボタンとワイヤープランツの寄せ植え。リース形の寄せ植えをこのように扉などにかけて垂直に飾る場合は、高低差があまり出ない素材を選んで、ギュッと詰めて植えるのがポイント。隙間があると土がこぼれ落ちてしまいます。 玄関扉の横にはスクエアのコンテナの寄せ植えを。ブルーのパンジー‘シエルブリエ’を囲むようにシルバーや斑入りのリーフをたっぷり使い、冬のイメージを表現した上品な一鉢。コンテナも鉢の高さやプランタースタンドを用いることで、目線を上にコントロールすることができます。 レンガを積んだプランタースタンドにピンクの豪華な寄せ植えを。庭の中のアーチの両側に対になるように設置している。 ガーデンチェアで作る冬の庭のハイライト 庭の中には数カ所にガーデンチェアが置かれており、その背もたれもハンギングバスケットやリースを飾る場所として活用しています。椅子の手前に寄せ植えを、背後にハンギングスティックを使ってハンギングバスケットを配置。ピンク系のパンジー&ビオラでコーディネートし、ここでも下から上まで目線の先を花が彩るように演出しています。 フリル咲きのパンジー、ハボタン、アイビーの3種を使ったリース。 白と黒のコントラストが美しいハンギングバスケットを飾ったチェア。手前に対のハボタンとドドナエアの寄せ植えを置いて。 ハンギングバスケットは地面のない場所でも飾れるのがメリットですが、引っ掛ける場所を必要とします。ガーデンチェアはテラスなどでも手軽にハンギングバスケットが飾れるツールとして活用でき、庭風景にもナチュラルになじむのでおすすめです。 コンテナ+ハンギングの花材を揃えて印象的に バラのアーチの正面は、視線が集まりやすいフォーカルポイントです。武島さんはガーデンシェッドの壁を利用しハンギングバスケットとコンテナをコーディネートし、華やかなシーンを作り出しています。メインの素材となるスキミアとパンジー、ハボタンは両者共通させ、脇役となるリーフ類はスキミアのつぼみの色に合わせつつ、それぞれの鉢の形に合う銅葉を選んでいます。壁を背にして半球状のハンギングバスケットを作る場合は、中央部を高く、コンテナは後方から前方へ草丈を低く作るのがきれいに見えるセオリーです。 コンテナの後方を彩るのはロフォミルタス‘マジックドラゴン’とドドナエア。ハンギングバスケットではヘーベとドドナエアを。 花瓶に飾ったパンジーにも、ハンギングバスケットとコンテナの間をつなぐ効果が。 連続ハンギングバスケット+地植えで作る花咲く小径 細い棒状のハンギングスティックを使い、ハンギングバスケットを連続させた庭の小径。ハンギングスティックは土に差すだけでどこでも手軽にハンギングバスケットが飾れる新しいツールで、細くて目立たず風景の邪魔にならないのも魅力です。ピンクのグラデーションがかわいい大輪のパンジー‘ピーチシェード’を植え、ハンギングも足元の花も揃えて小径を華やかに演出しました。 大輪で華やかなパンジー‘ピーチシェード’。 空中に浮かぶようなハンギングバスケットは、冬枯れの庭で存在感抜群。凝った花の組み合わせにしなくても、花付きのよい種類を選べば1種類でもかわいく仕上がるので、ハンギングバスケット初心者にもおすすめです。 室内から庭を眺める時間も長くなる冬だからこそ、武島さんのようにさまざまな手法を組み合わせて庭を立体的に演出し、冬も美しい庭景色を楽しみたいですね。新しいツールも活用し、まだまだ店頭にたくさん並ぶパンジー&ビオラで新しい冬の庭づくりにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
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都立公園を花の魅力で彩る画期的コンテスト「第3回 東京パークガーデンアワード 砧公園」全国から選ばれた…
第3回会場となる「都立砧公園」 芝生が青々としたみんなの広場をはじめ、バラ園、サイクリングコース、‘子供の森’などのエリアがある。秋にはイチョウなどの紅葉・黄葉が楽しめる。 今回のコンテストの舞台となる都立砧公園は、東京世田谷区の成城学園、二子玉川など閑静な住宅街からほど近い場所にあり、昭和32年4月1日に開園しました。総面積は約39万㎡と広く、戦時中は防空緑地、戦後は都営のゴルフ場として開放されていました。のちにその起伏のある地形を生かして、芝生の広場と樹林で構成されたファミリーパークのほか、運動施設や遊具等が設置された広場が整備され、区民みんなが楽しめる公園です。 コンテストのテーマは「みんなのガーデン」 今回のコンテストエリアの向かいに広がる、‘みんなのひろば’。これから育っていく5つのガーデンは多くの人の目を楽しませてくれることでしょう。 天気のよい休日には、家族連れがお弁当を広げる砧公園。‘みんなのひろば’前で開催される「第3回東京パークガーデンアワード」のコンテストテーマは『みんなのガーデン』です。宿根草をメインとして活用しながら、五感を刺激し、見ていて楽しいと感じる要素を取り入れ、ロングライフ・ローメンテナンスなガーデンが制作されます。多数の応募の中から審査を通過した5名の入賞者が作るのは、それぞれ約40㎡のスペース。土壌改良や植え付けなどの作庭は、2024年12月と2025年2月に行われます。その後、11月の最終審査まで、ガーデナーにより必要に応じてメンテナンスが行われ、3回の審査を経てグランプリが決定します。 「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」であることに加え、審査で見る重要なポイント 2024年に3回行われた「第2回 東京パークガーデンアワード神代植物公園」の審査の様子。2025年の審査員は、福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授) 正木 覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師) 吉谷桂子(ガーデンデザイナー) 佐々木 珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事) 第3回も「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」であることが外せないルール。丈夫で長生きする宿根草・球根植物(=多年草)を中心に季節ごとの植え替えをせず、季節の花が順繰りに咲かせられることが求められています。 ● 公園の景観と調和していること ● 公園利用者の関心が得られる工夫があること●公園利用者が心地よく感じられること● 植物が会場の環境に適応していること ● 造園技術が高いこと● 四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること● 「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること● メンテナンスがしやすいこと● テーマに即しており、デザイナー独自の提案ができていること ● 総合評価※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。審査は次の視点からも行われます。 昨夏はかつてない酷暑でしたが、昨今の異常気象を乗り切るために、暑さや乾燥に耐えるもの、繁茂しすぎないものの選定が重要となり、成長して倒れたり蒸れて病害虫が発生したりするなどのダメージを回避するための手入れのテクニックも判定されます。メンテナンスはガーデナーの申請によって行われるのが条件ですが、手入れの頻度(回数)も審査の対象となります。 第2回のガーデン内に設けられた堆肥ヤード(Dガーデン)。 また、手入れの際に発生した剪定枝などは、自身のガーデン内で堆肥化させるなどで処理・循環させる考慮も重要です。ゴミとして焼却すれば二酸化炭素が発生しますが、ガーデン内で微生物に分解されるような仕組みが整えられていれば、二酸化炭素を発生させずに、土壌内微生物を多様化させることができます。 全国から選ばれた5人のガーデンコンセプト どのエリアでガーデンを制作するかを決めるため2024年10月中旬に集合した5名のガーデナー。 コンテストのテーマとルールをふまえて制作するそれぞれのガーデンのコンセプトをご紹介します。 コンテストガーデンAGathering of Bouquet 〜庭の花束〜 【作品のテーマ・制作意図】 皆さんの日常に癒やしや潤いを届けたいという願いを込め、プランツ・ギャザリングの視点で、ガーデンをひとつの大きなブーケに見立ててデザインを構成しました。動物たちが次の訪問者のために心遣いを残していく絵本から着想を得て、あらゆる世代の方が見て触れて、香りなどを楽しめるように、花の形や手触りがおもしろいものを用いた植栽計画をしています。ぜひ手に取って、お気に入りの植物を見つけてください。たくさんの感動や気づきが新たな会話を生み、笑顔になるシーンが増えますように。 【植栽計画について】 フラワーデザインの花束を構成する際に考慮する「自然環境の中で成長している植生本来の姿や形を意識すること」を踏まえ、本計画では草花の形状が持つ役割と全体のバランスに気をつけながら配植計画を作成しました。春のガーデンは、ナチュラルなグリーンとパステルカラーの花を中心にして構成。初夏からぐんぐんと葉の旺盛さが増し、夏のガーデンでは花色が分かりやすい鮮やかな植物を中心に構成しました。晩夏から秋では、庭全体がシードヘッドとグラスが中心になり、ナチュラルの中にどこか秋の上品さを感じられるような植栽計画となっています。 【主な植物リスト】 宿根草:エキナセア‘マグナススーペリア’/ペンステモン‘ストリクタス’/アガパンサス‘ピッチュンホワイト’/クラスペディア‘ゴールドスティック’/オルレア・グランディフローラ‘ホワイトレース’ などグラス類:ペニセタム・ビロサム‘銀狐’/メリニス‘サバンナ’/ホルデューム・ジュバタム/カラマグロスティス・ブラキトリカ など低木:コルヌス・ステラピンク/ビルベリー‘ローザスブラッシュ’/ニシキギ・コンパクター/コバノズイナ など球根:チューリップ‘フレーミングピューリシマ’/レウコジャム‘スノーフレーク’/アリウム‘グレイスフルビューティ’ など コンテストガーデンBCircle of living things 〜おいでよ、みんなのにわへ〜 【作品のテーマ・制作意図】 季節によってカラーリングが変化する植物や、実をつけて味わい深い風景を作ってくれる植物に集まる多様な生き物たち。そして各所に配置したサークルネストはそんな生き物たちの拠り所に。命の循環というキーワードをもとに植物だけではなく生きとし生けるものたちの集まる「庭」をテーマにデザインしました。人間だけに限らず、あらゆる生き物たち「みんな」にとっても楽しめる「命を感じられるガーデン」は「みんなのにわ」となり、命を循環させてゆきます。 【植栽計画について】 互い違いに築山をつくり、背丈の高い植物を配置することにより奥の植栽を目隠しする効果を出しています。S字型に配置した窪みは水捌けだけではなく空気の通り道として。区切られた築山・フラットな部分それぞれにテーマカラーを設定して、その色の花を植栽。眺める場所によって違う印象の風景を作ります。植えるのは草木や花だけでなく、味覚や嗅覚でも楽しめる実のなるものやハーブなど。風や、季節、味わいや集まる命を感じられる庭。人間だけに限らず、生き物たちにとっても楽しめるようなガーデンを考えています。 【主な植物リスト】 宿根草:バプティシア‘ブルーベリーサンデー’/アガスター‘シェゴールデンジュビリー’ /糸葉丁子草/スタキス・オフィシナリス などグラス類:カレックス‘プレーリーファイア’/メリニス‘サバンナ’/ぺニセタム・オリエンターレ など低木:ブルーベリー/イチジク/紫式部 など球根:アリウム各種/チューリップ各種 など コンテストガーデンCLadybugs Table 「てんとう虫たちの食卓」 【作品のテーマ・制作意図】 砧公園で暮らす「小さな住人(虫たち)」がこのガーデンを訪れて住みやすいように生態系を意識した植栽のデザインをしています。植栽は、見る場所や角度によって印象が変わるように、カマキリなどの天敵が身を潜められるような複雑さが出るよう工夫しました。植物は、てんとう虫やカマキリの食料となるアブラムシなどが好む「バンカープランツ」や蝶やミツバチたちの蜜源となる植物を植えています。「小さな住人(虫たち)」の生活をそっとのぞき見ることができる場所を目指しています。ここでの小さな体験が、自分の身近な自然環境を考えるきっかけになってもらえたら嬉しいです。 【植栽計画について】 ガーデンは、敷地に高低差をつけて作業通路と大型のグラスがあるブロック植栽で区切り、4つのマトリックスエリアで構成。1.西日や乾燥に強い植栽エリア、2と3.緩やかなミラーボーダーで蝶々やミツバチの蜜源になる植栽エリア、4.半日陰に強い植栽エリア、とそれぞれ特徴は異なります。見る場所や角度によって印象が変わり、より複雑に見えるような視覚効果があり、春から夏は花数が多くてにぎやかな植栽、秋はグラスをメインとした風情のある植栽となっています。 【主な植物リスト】 バンカープランツ:へメロカリス/ユウスゲ/イタリアンパセリ など宿根草:モナルダ・ブリドブリアナ/エキナセア‘メローイエロー’/アスター‘オクトーバースカイ’ などグラス類:スキザキリウム‘ハハトンカ’/ぺニセタム・カシアン/パニカム‘シェナンドア’ など低木:キンカン/アロニア/コバノズイナ など球根:ダッチアイリス‘ブルーマジック’/カマシア/カノコユリ‘ブラックビューティー’ など コンテストガーデンDKINUTA “One Health” Garden 【作品のテーマ・制作意図】 ヒトの健康、生きものの健康、環境の保全を包括的な繋がりとして捉えるワンヘルス (One Health)の概念を軸に、それら3つの主体が密接に関わり合う「ワンヘルスガーデン」をつくります。土壌環境を改善し、植物や微生物を豊かに育て、鳥や虫などの地域の生きものを呼び込む。ガーデンの香りや触れ合いを通し、ヒトの健康と安らぎを生み出すガーデンをつくり、いろいろな生きものがやってくる「みんなのガーデン」を実現します。 【植栽計画について】 みんなのワンヘルスガーデンにするために、植栽計画は見るだけでなく触れる、香るなど五感で楽しめるハーブやカラーリーフやクラフトの素材などを用い、植物に触れるための仕掛けを散りばめます。また、四季を通じて彩りのある品種やシードヘッドの美しいものも使用し、管理が容易で楽しみながら持続できるガーデンを作ります。 【主な植物リスト】 宿根草(蜜源植物):ルドベキア/オミナエシ/モルダナ/アザミ/ガウラ/スミレ/チェリーセージ など宿根草(四季の移ろい):グラス類のフェスツカ/カレックス/イトススキ/フウチソウ/チカラシバ/レモングラス/ミューレンベルギア’カピラリス’ など低木類(鳥類・昆虫類来訪):スモークツリー‘グレース’/ガマズミ/アロニア‘メラノカルパ'’カラーリーフ:カラスバセンリョウ/カリステモン‘リトルジョン’/イリシウム‘フロリダサンシャイン’その他(季節の果実や葉):ビルベリー/コバノギンバイカ/レモンマートル コンテストガーデンE「みんなのガーデン」から「みんなの地球(ほし)」へ 【作品のテーマ・制作意図】 私は「みんなのガーデン」を、来園者だけでなく、花を訪れる虫、土壌菌類などの分解者、そして庭の先につながるこの生きた星「地球」の環境といった全ての「生あるもの」をつなげる庭と捉えました。温暖化する東京の気候に合った植物を差別なく組み合わせ、虫や菌たちによる循環系の形成、見るだけでなく庭づくりに参加もできる「みんなのガーデン」。「みんな」が共に助け合いながら、末長く幸せに暮らす世界、生命共存の尊さ・美しさを伝えたい。この想いが、この庭から未来へ・社会へ・地球へと広がっていけば、と考えています。 【植栽計画について】] 宿根草やカラーリーフの低木類、球根類を中心に、国籍や古今の流行、有名無名を問わず、植物の多様性や季節変化の諸相を楽しめるバラエティ豊かな植物選びで植栽を構成します。また、蜜蜂や蝶などの昆虫が好んで訪れる蜜源植物や香りのよい植物を積極的に使用し、植物の美観だけでなく、生物が共存する世界の美しさや、嗅覚や聴覚(葉ずれや虫の羽音)、味覚(蜜やハーブへの想像)、触覚(植物のテクスチャーからの連想や肌に触れる風が植物の動きを介して理解される)など、五感で楽しめる植栽表現を目指します。 【主な植物リスト】 宿根草:マンガベ ‘マッチョモカ’/アムソニア ‘ストームクラウド’/アガパンサス ‘ブラックマジック’ /アネモネ トメントーサ/ジンジバー(ミョウガ)斑入り/イリス・エンサタ(ハナショウブ)‘バリエガータ’/パトリニア プンクティフローラ/タリクトラム ‘エリン’ /ユーフォルビア ‘ファイアーグロー’/ユーパトリウム ‘リトルレッド’ などグラス類:カラマグロスティス ‘カールフォースター’/モリニア ‘トランスペアレント’ /アンドロポゴン ‘ブラックホークス’ /スキザキリウム ‘ハハトンカ’ /コルタデリア ‘ミニパンパス’/メリニス ‘サバンナ’/ムーレンベルギア/スティパ/ホルデウム など低木:ネリウム(キョウチクトウ)‘ペティットサーモン’/コルヌス(サンゴミズキ)‘ケッセルリンギィ’/ロロペタルム (トキワマンサク) ‘黒雲’ /ブッドレア・ グロボサ など球根:ナルキッスス(スイセン)タリアなど数種/チューリップ(原種、園芸種含めて多品種)/アリウム (開花期をずらして数種)/イキシア・バビアナ・ワトソニアなどの南アフリカ原産種 など コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立砧公園「みんなのひろば」前所在地: 東京都世田谷区砧公園1-1電話: 03-3700-0414https://www.tokyo-park.or.jp/park/kinuta/index.html開園時間:常時開園※サービスセンター及び各施設は、年末年始は休業。営業時間等はサービスセンターへお問い合わせ下さい。入園料:無料アクセス:東急田園都市線「用賀」から徒歩20分。または東急コーチバス(美術館行き)「美術館」下車/ 小田急線「千歳船橋」から東急バス(田園調布駅行き)「砧公園緑地入口」下車/小田急線「成城学園前駅」から東急バス(二子玉川駅行き)「区立総合運動場」下車駐車場:有料
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愛知県
【画期的!】庭中に浮かぶパンジー&ビオラ?!新ガーデンツールで変わる冬の庭景色
冬はハンギングバスケット作りにベストな季節 濃いパープルに覆輪が入るパンジー‘横浜セレクション フレアブルー’やハボタン、ネメシアなどを組み合わせたシックなハンギングを玄関前に。 「パンジー&ビオラは毎年、目が釘付けになるような魅惑的な花色が登場するので、創作意欲がかきたてられます」と話すのは、武島由美子さん。ハンギングバスケット協会の理事を務め、これまでたくさんの生徒を育成してきたハンギングバスケットの達人です。 クリスマスを演出した庭へ続くレンガの小径。ガーデンシェッドの壁にもハンギングバスケットを。 ハンギングバスケットとは、植物を立体的に楽しむガーデニング手法の1つで、球体や半円状の容器に植物を植え込み、チェーンやフックを使って吊して飾ります。地面を使わず、玄関先やベランダなど狭い空間も華やかに彩ることができるのが魅力。彩りが寂しくなりがちな冬でも、武島さんの庭ではそこここでパンジー&ビオラのハンギングバスケットが華やかです。 パンジー‘シエルブリエ’を使ったハンギングバスケット。雪をイメージさせるシルバーリーフやイベリスとともに。 「冬の花の代表、パンジー&ビオラはユニークで素敵な色合いが豊富ですが、草丈が低いので、庭植えにするとせっかくのかわいい花が目立たなくなってしまいます。でも、ハンギングバスケットなら目線の高さで花の美しさを強調することができるんです」(武島さん) スキミアやパンジー、ハボタンなどを組み合わせたコンテナとハンギングバスケットをコーディネート。 ハンギングバスケットは鉢植えと異なり、目線やそれ以上の高さに飾れるため、まるで絵画を眺めるように花を堪能できるのが魅力。ハンギングバスケットに加えて、寄せ植えのコンテナを組み合わせれば、さらに華やかな演出も楽しめます。ただし、ハンギングバスケットは引っ掛けるための頑丈な場所が必要になるため、これまでは飾れる場所が限られていました。 庭のどこにでもハンギングバスケットが飾れる「ハンギングスティック」 パンジー&ビオラのハンギングバスケットが連続し、バラのスタンダード仕立てのようなフォーマルな雰囲気も新鮮。 「でも、今年からはハンギングスティックという新たなツールの登場で、庭のどこでもハンギングが楽しめるようになりました。ハンギングスティックは支柱のような直径1.5cmほどの細い棒状で、目立たないのでハンギングの花がすごく映えるんです。シンプルな作りなのに、丈夫で重さのあるバスケットもしっかり支えてくれ、とても気に入っています」(武島さん) ハンギングスティックは二股になった下部30cmを土に差し、上部の丸い穴にフックでハンギングバスケットを吊り下げて飾ります。庭はもちろん、深さが30cm以上あるコンテナにも使用可能で、どこでも簡単にハンギングバスケットが楽しめる画期的なツールとして、2024JHBS(日本ハンギングバスケット協会)新器材・装飾アイデアコンテスト金賞を受賞しました。 高さ違いのハンギングスティックでリズミカルに小径を彩って。 まるで花が浮かぶように空中を彩るハンギングバスケット。さまざまな植物を組み合わせるハンギングバスケットは作るのにコツが必要ですが、パンジー&ビオラ1種だけに絞ってもこんなに華やか。ハンギングスティックを使えば複数のハンギング鉢を連続して飾ることもでき、これまでにはなかった見応えのある冬の庭景色が作れます。 「庭のような広い空間に連続して飾るときは、パンジーやビオラ1種類だけのほうが印象的かもしれません。昔からある品種ですが、透明感のあるブルーのビオラ‘ビビ ヘブンリーブルー’は、冬中花上がりが素晴らしくおすすめ。大輪の‘ピーチシェード’も庭のなかでよく目立ちます。どちらも手に入りやすい品種なのもいいですね」(武島さん)。 左/パンジー‘ピーチシェード’。右/ビオラ ‘ビビ ヘブンリーブルー’。 奥行き30cm程度の花壇でもハンギングスティックが活躍。 ハンギングバスケットは、空間を彩り豊かに演出し、季節感や創造性を楽しむガーデニングテクニックです。設置する場所や植物の選び方で個性を発揮でき、手入れをしながら植物の成長を見守る喜びも得られます。ハンギングスティックのような便利なツールも活用し、新しい冬のガーデンづくりを楽しんでみてはいかがでしょうか?
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東京都
「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」1年の取り組み
毎日見学者が訪れる第2回コンテスト会場は「神代植物公園」正門手前プロムナード[無料区域] コンテスト会場となった神代植物公園の正門手前プロムナード[無料区域]の1年間の景色の移り変わり(右上/4月 左下/7月 右下/11月)。入口付近に設置されたガーデンの案内板(左上)が目印。 第1回の都立代々木公園での開催に続き、第2回の舞台は、武蔵野の面影が残る都立神代植物公園。広大な敷地を有する園内には、四季折々に咲き継ぐ10万本もの花木のコレクションに加え、ばら園や貴重な植物が育つ大温室などがあり、歴史ある植物公園として知られています。第2回のコンテスト会場は、公園の正門手前のプロムナード[無料区域]。書類審査を通過した5名の入賞者がそれぞれ約70㎡のスペースにガーデンを制作し、3回の審査を経て2024年11月にグランプリが決定しました。 第2回コンテストのテーマは「武蔵野の“くさはら”」 5人が作庭した花壇は、プロムナード(公道)を挟んで向かい合う日向と日陰の2つのエリアに設けられました。日陰の花壇(写真手前側)は、常緑高木のシラカシが日を遮ります。11月の様子。 今回のコンテストのテーマは「武蔵野の“くさはら”」です。 かつて、ここ調布市を含む武蔵野エリアは見渡す限りの原野でした。ススキやハギなどが背を超えるまでに茂り、視界を遮る 山や木もなく、野から出た月が野に沈む、月見の名所としても知られていました。そんな背景に現代的な解釈を加えることで、挑戦者であるガーデナーたちは、豊かな色彩も取り入れながら新しい風景=ガーデンを制作しました。 コンテストガーデンが作られている敷地の平面図。A〜Eの各面積は約70㎡ 。どのエリアでガーデンを制作するかは、2023年11月に抽選により決定しました。 第1回に引き続き、“持続可能なロングライフ・ローメンテナンス”であることが「東京パークガーデンアワード」の外せないルールです。丈夫で長生きする宿根草を中心に選び、季節ごとの植え替えをせず、四季ごとに花の彩りがあることが求められています。今回の植栽は、1名ごとに北側(日向)と南側(日陰)の異なる環境に花壇を制作されたのも特徴でした。 2023年12月に行われた5つのガーデン制作に関わった皆さん。 【第2回 東京パークガーデンアワード in 神代植物園 最終審査までのスケジュール】 「東京パークガーデンアワード」は、5名の参加者決定から最終審査の結果発表まで1年かけて行われる、新しい試みのコンテストです。2023年12月上旬にはそれぞれの区画で1回目の作庭が完了。2024年2月下旬には、2回目の作庭日が設けられ、切り戻しなどのメンテナンスや追加の植栽など、花壇のブラッシュアップ作業が行われました。5つのエリアがそれぞれ日増しに彩りがあふれる4月は『ショーアップ審査』、梅雨空の7月中旬には『サステナブル審査』、11月上旬に秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する『ファイナル審査』が行われました。酷暑を乗り越え、晩秋のガーデン風景へと移り変わったコンテスト会場をぜひご覧ください。 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」すべての審査が終了しました! 審査員は以下の6名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、佐々木珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)、松井映樹(神代植物公園園長) 4月、7月、11月の3回の審査では、6名の審査委員による採点と協議により行われました。審査基準は、以下の項目です。【審査基準】公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」授賞式 2023年12月のガーデンの施工から約1年が経過し、3回目の審査となる『ファイナル審査』が2024年11月7日に行われ、入賞5作品の中より「グランプリ」、「準グランプリ」、「審査員特別賞」が決定。晴天の2024年11月24日、東京都江東区にある清澄庭園内の大正記念館にて授賞式が行われました。式典では、賞状とクリスタルメダルの贈呈、6名の審査員による講評、授賞者5名による喜びのコメントが発表され、参列者より大きな拍手が贈られました。 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の受賞者と審査員。 審査委員長の講評 審査委員長 福岡孝則さん(東京農業大学地域環境科学部 教授) パークガーデンというのはパブリックな場であり、私的な庭とは異なります。誰でも来ること、使うことができ、色々な方に体験していただけるのが最大の特徴かと思います。今年の「東京パークガーデンアワード」を通して感じたことをお伝えします。 東京パークガーデンアワードでは、植物の持っている美しさを単体の植物として見るだけではなく、植物全体で作る雰囲気やそのフィールドの色、テクスチャーや形などが見せる魅力を大いに感じることができました。成長前の春先などは、植物の下に設けられた小さな地形のアンジュレーションのつくる変化や水の動き、植物と地形でつくる全体のボリュームなどの細かい配慮からも作者の目的や意図を感じながら、審査しています。 私の専門はランドスケープアーキテクトなので、都市緑地などの屋外空間を計画設計するのが仕事で、植栽も含めた空間の全体像に重点をおいて考える傾向にありました。しかし今回改めて感じたことは、成長する過程のその瞬間瞬間にその植物を中心とした世界が輝いている瞬間があり、そこに感動があるということ。そして、ガーデンを訪れる人たちの実に多様で自由な感じ方、捉え方があることも強く感じました。パブリックガーデンは植物好きな人だけではなくて、多くの人に訴求していく必要があります。このような中で、出展者のみなさんが植物の形やテクスチャーで創意工夫を凝らし、繊細なものや明るいもの、そして渋いものなど、個性あふれるガーデンを創り出し、多くの人を惹きつけていました。私も含めて、改めて植物やガーデンの偉大さを考えさせられ、多くを学んだ審査となりました。 今年の夏は非常に暑かったですね。庭をつくる上で、サステナブルであることはとても大切なことです。一方で、「自然の下では、私たちで全てコントロールできず、思い通りにならないこともある」ということも学び、知る必要があります。日々、植物の状態を見たり、土の状態を学んだりして、その変化の中で自分たちが少しずつその土地に手を入れる感覚が大切だと考えます。今年は私の大学でも、研究室で設計に関わってきた食の庭プロジェクトで、土づくりからキャンパス内の庭や緑地のメンテナンスをするところまで取り組んでみました。ここでも意外な発見がありました。あれこれ試行錯誤しているうちに、いつもより学生同士のコミュニケーションが生まれていること。ガーデンづくりはサステナビリティを学ぶ実験場にもなると同時に、コミュニケーションが生まれるきっかけの場になるのです。夏の暑い日も、秋の心地よい日も、屋外で自然と向き合う時間をもつことで、新しい関係が生まれます。そう思うと、この東京パークガーデンアワードというのは、素晴らしい取り組みであり、まだ大きな可能性が隠されているといえるでしょう。 有名なガーデナーもランドスケープアーキテクトも、1人でできることは限られていると思います。ですから、皆さんがご自身が生活されている地域で、そしてチームでプラットフォームをつくっていただき、今回の東京パークガーデンアワードを基に日本中にパークガーデンが広がっていくような礎となって頂きたいと思います。また、ガーデンの技術とか、高い知識を持った公園管理者や造園技術者同志で切磋琢磨することも大事ですが、同時に、植物の育て方をまだ知らない人たちも含めて、いろんな人たちと関わりながら、このパークガーデンを広げていくということが大切だと感じております。 5名の授賞ガーデンと審査員講評 グランプリ コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 ⚫︎コンテストガーデンAの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 公園のエントランスにふさわしく、華やかさのある“のはら”でした。グラスや葉のテクスチャーの流れの中で、花が踊っているようにも感じられました。特に日陰の庭は植物の選定がしっかりしていて、多様な植物が秋まで乱れず、花後の姿も美しく見せていました。日向の庭は、混みあって見える時季もありましたが、流れを持たせたデザインコンセプトが秋にはしっかり生きてきました。シードヘッドもきれいに残り、キラキラしたグラスも印象的でした。全体に葉や花の色彩の対比が美しく計算されていて、光と風を感じさせてくれるステキな庭でした。 古橋 麻美さん コンテストを終えた受賞者のコメント 自身の今までの経験をうまく生かせたと思っています。当初、皆さんのプランを見たときにその素晴らしさに怖気づいたのですが、自身が長年メンテナンスをしている強みを生かし、きれいな庭に仕上げることができました。多くの人々に見て頂けるガーデンをつくりたいと長年思っていたので、1年間とても有意義な時間でした。 準グランプリ コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 ⚫︎コンテストガーデンCの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 「武蔵野の“くさはら”」というテーマに向き合う真摯な姿勢が伝わってきました。低木を植え、背景となるカシの木も利用し、限られた敷地で自然の景色をうまく表現していました。地形に起伏をもたせ、風の通り道も作り、「奥に何かあるのではないか」と草を分け入っていきたくなるような雰囲気を感じました。赤い実・ワイルドオーツ・ミズヒキなどとの出会いが楽しい一方、花壇手前に小花を枝垂れさせるなど、遠景も含めてバランスがよく、立体的で透明感のある景観になっていました。夏から秋にかけてやや繁りすぎ、地形のアンジュレーションなど細かな部分に目が届きにくくなる面もありましたが、「草原は、やがて森へ還る。」というタイトルに向き合った結果とも感じます。 吉野 ひろきさん コンテストを終えた受賞者のコメント 普段は個人邸をメインに、木を植えて森のような庭をつくっていますが、今回は宿根草メインということで当初はアウェー感があり、私自身にとって大きなチャレンジでした。思った通りには行かず失敗もありましたが、普段やっていることを表現できました。途中、審査員の厳しい言葉に一喜一憂しましたが、それをアドバイスとして捉えて、その後に生かすことができました。 審査員特別賞 コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 ⚫︎コンテストガーデンEの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 日本の在来種を大胆に使って風通しよく配置していました。多様な葉の形やテクスチャーの違いが面白く、じっくり見ていたくなりました。草(くさ)感が強いので、花壇とは思われないかも…と心配してしまうくらいでしたが、緑から青色まで一年を通じて植物の葉の表情の変化が美しかったです。その辺の草っぱらだって、見ようによっては美しい! ということを気付かせてくれたともいえます。メンテナンスの回数を少なくする努力も見られ、日本における宿根草ガーデンの一つのスタイルとして、可能性を感じる庭でした。 清水 一史さん コンテストを終えた受賞者のコメント 都内の緑地をする仕事では、いつも『人々の背景になりそこに生き物がいること』を想像して計画していますが、よく言われるのが『在来種は地味』。今回、そんな在来種の魅力に焦点を当てた庭づくりは意義のある試みでした。ただコンセプトに寄りすぎたことで難しい点もありましたが、見に来てくれた人たちとの交流を通して、多くの学びを得ることができました。 入賞 コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら ⚫︎コンテストガーデンBの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 日向の庭は、草原の広々とした感じが伝わってきました。高さの違う植物を連ね、黄色の色あいにも強弱があって、見て楽しい華やかな庭になっていました。日陰の庭は近くで見ると、流れのような小道の周りに色々な花が咲いています。春から初夏にかけての優しい白、黄色系の花と多様な表情をもつグラスが作り出す世界は圧巻でした。グラウンドカバーにしている葉の微細なテクスチャーやグラデーションも美しかったです。ウィットに富んだ作り手のオリジナリティーを感じる庭でした。 メイガーデンズ 柵山 直之さん コンテストを終えた受賞者のコメント 今回『命巡る草はら』というコンセプトでしたが、一番の成果としては、1年で命の巡りが見られたということです。ツマグロヒョウモンの幼虫がたくさんついていて、数カ月後にはたくさんの成虫が飛び交う光景が見られました。人々の心を潤わせる街なかの楽園・パークガーデン。街の中にたくさんあったら、世の中が変わるのではと思います。 入賞 コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ ⚫︎コンテストガーデンDの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員講評 季節の花がいつも咲いていて、多くの来園者を喜ばせてくれるすてきなガーデンでした。くさはらにポップなテイストを入れるというアイデアも秀逸で、日向の庭はゴージャスな植物のかたまりが連なり、春のチューリップなどが来園者をワクワクさせました。秋には多様なグラスの穂も美しく、ススキとアスター‛ジンダイ’の取り合わせがステキでした。日陰の庭は、グラウンドカバーも含めさまざまな色合いが混じりあい、光の明暗などデザインの狙いがよく伝わってきました。1年を通じてボリューミーでエネルギッシュ、色鮮やかな表情が印象的なガーデンでした。 藤井 宏海さん コンテストを終えた受賞者のコメント 私は中学3年生の時からこの仕事をしたいと思っており、いつも『笑顔になるような風景を作りたい』と考えてきました。今回はそれと併せて、小さい時に遊んだ草原などを基にデザインしました。庭を一から作って管理してみて、植物の成長の旺盛さに驚かされましたし、メンテナンスの大切さも改めて実感し、あらゆる視点で発見がありました。 Pick up 月々の植物の様子 11月の植物の様子 左から/サルビア‘ファイヤーセンセーション’(A日向エリア)、清澄白山菊(A日向エリア)、コレオプシス‘レッドシフト’(B日向エリア)、ミューレンベルギア・カピラリス(B日向エリア) 左から/ノコンギク‘夕映え’(C日向エリア)、バーベナ・オフィシナリス‘ハンプトン’(C日陰エリア)、シュウメイギク‘クイーンシャーロット’(D日陰エリア)、カライトソウ(E日向エリア) 10月の植物の様子 左から/ヒガンバナ(A日向エリア)、コルチカム(A日陰エリア)、ヘリアンサス‘レモンクイーン’(B日向エリア)、ホトトギス(B日陰エリア) 左から/アスター'アポロ'(C日向エリア)、アスター‘ジンダイ’(D日向エリア)、ヤマハギ(E日向エリア)、ノダケ(E日向エリア) 9月の植物の様子 ルドベキア‘タカオ’(Aエリア日向)、ペニセタム‘ルーメンゴールド’(Aエリア日向)、モミジアオイ(Bエリア日向)、アスター‘トワイライト’(Cエリア日陰) ムラサキシキブ(Cエリア日陰)、ユーパトリウム‘グリーンフェザー’(Dエリア日陰)、シュウメイギク(Eエリア日陰)、ツリガネニンジン(Eエリア日陰) 8月の植物の様子 左から/リグラリア‘ミッドナイトレディ’(Aエリア日陰)、ルエリア‘パープルシャワー’(Bエリア日向)、オミナエシ(Bエリア日向)、バーノニア'クリニタ'(Cエリア日向) 左から/カノコユリ(Cエリア日向)、オトコエシ(Dエリア日向)、ユーパトリウム‘ベイビージョー’(Dエリア日向)、トウテイラン(Eエリア日陰) 7月の植物の様子 左から/ミソハギ(Aエリア日向)、ヤマユリ‘オーラタムゴールドバンド’(Aエリア日陰)、ツルバギア(Bエリア日陰)、エキノプス‘プラチナムブルー’(Cエリア日陰) 左から/アンジェリカ‘エボニー’(Cエリア日陰)、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’(Dエリア日向)、シキンカラマツ(Eエリア日向・日陰)、シラヤマギク(Eエリア日向) 6月の植物の様子 左から/カンパニュラ・ラプンクロイデス(Aエリア日陰)、トリテレイア‘ルディ’ と ‘クイーンファビオラ’ (Bエリア日向)、ヤマアジサイ‘藍姫’(Bエリア日陰)、エキナセア‘プレーリーブレイズグリーン’(Cエリア日向) 左から/シャスタデージー(Cエリア日陰)、アリウム‘レッドモヒカン’(Dエリア日向)、アガスターシェ‘ビーリシャスピンク(Dエリア日向)、コオニユリ(Eエリア日向) 5月の植物の様子 左から/ツツジ ホンコンエンシス(Aエリア日陰)/ダッチアイリス(Bエリア日向)/バイカウツギ(Cエリア日向)/ゲラニウム‘ジョンソンズブルー’(Cエリア日陰) 左から/オーニソガラム・アラビカム(Dエリア日向)/アリウム‘パープルセンセーション’(Dエリア日陰)/ミツバシモツケ(Eエリア日向)/チョウジソウ(Eエリア日陰) 4月の植物の様子 左から/カマッシア・ライヒトリニー(Aエリア日向)/スイセン‘タリア’(Aエリア日向)/ヒマラヤユキノシタ(Bエリア日向)/チュューリップ‘クルシアナシンシア’(Bエリア日向) 左から/ゲラニウム'チュベロサム'(Cエリア日陰)/リクニス‘フロスククリ’(Cエリア日向・日陰)/ラナンキュラス ラックスシリーズ(Dエリア日向・日陰)/シラー・シビリカ(Eエリア日陰) 3月の植物の様子 左から/バイモユリ(Aエリア日陰)/クロッカス‘ホワイトウェルパープル’(A・Cエリア日向)/スイセン‘イエローセイルボート’(Bエリア日向)/チューリップ‘アルバコエルレアオクラータ’(Cエリア日向) 左から/クリスマスローズ(Cエリア日陰)/ベロニカ‘オックスフォードブルー’(Dエリア日向)/原種チューリップ・トルケスタニカ(Eエリア日向)/フクジュソウ(Eエリア日陰) 2月の植物の様子 左から/リナリア・プルプレア(Aエリア日向)/ヤブラン’シルバードラゴン’(Aエリア日陰)/スイセン‘ペーパーホワイト’(Bエリア日向) /メリアンサス・マヨール(Bエリア日陰) 左から/カレックス・ペンデュラ(Cエリア日陰) /ツワブキ(Dエリア日陰) /ディアネラ・ブルーストリーム(Eエリア日陰) /タマシダ(Eエリア日陰) 1月の植物の様子 左から/カラスバセンリョウ(Aエリア日陰)/黒葉スミレ(Bエリア日陰)/ホトトギス(Bエリア日陰) /アシズリノジギク(Cエリア日陰) 左から/シュウメイギク(アネモネ‘ホノリージョバート’)(Cエリア日向) /リョウメンシダ(Dエリア日陰) /タイニーパンパ( Dエリア日向) /カタクリ(Eエリア日向) 全国から選ばれた5人のガーデンコンセプト 「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマに、各ガーデナーが提案するガーデンコンセプトは、5人5様。それぞれが目指す庭のコンセプトや図面、植物リストの一部をご紹介します。 コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 【作品のテーマ・制作意図】武蔵野のくさはらを表現するにあたり、オーナメンタルグラスとカラーリーフ、特徴的な葉を持つ植物をメインにしたガーデンをつくってみたいと思いました。「グラスガーデン」は馴染みが薄かったり、地味にとらえられたりすることもあるかと思いますが、宿根草に加え、球根植物も多用し華やかさをプラスすることで、多くの方に楽しんでいただけるガーデンを目指しています。 【主な植物リスト】〇北側(日向)グラス類…イトススキ/カラマグロスティス/ペニセタム/パニカム/モリニア など季節の花…アガスターシェ/フロックス/ルドベキア/アガパンサス など和の花…キキョウ/オミナエシ/フジバカマ類/ヤブカンゾウ/ヒオウギ など球根…ユリ類/スイセン/カマッシア/ダッチアイリス/アリウム など〇南側(日陰)グラス・葉物類…フウチソウ/ベニチガヤ/ギボウシ類/クジャクシダ/クサソテツ など季節の花…アスチルベ/プルモナリア/ティアレラ/ムラサキツユクサ など和の花…イカリソウ/ヤマブキショウマ/シュウメイギク/チョウジソウ/ミヤコワスレ など球根…ユリ類/スイセン/コルチカム など コンテストガーデンA 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 見応えたっぷりの、スパイク状に穂を伸ばすカラマグロスティス ‘カールフォースター’や空間を埋めるミスカンサス‘モーニングライト’、そして無数の花をつける清澄白山菊が晩秋の庭の見どころ。そのほか、暗赤色に色づくミソハギやペンステモン‘ダークタワーズ’のシックな葉色が風景に深みを添え、初夏から咲き続けているフロックス‘ブルーパラダイス’が華やかさを加えています。 【11月の日陰エリア】 カラーリーフとオーナメンタルなフォルムの植物が最後まで崩れることなく、季節の花とともに整然とした美しさをキープ。赤や茶色に染まる風景の中で、初夏から咲いているカンパニュラ・ラプンクロイデスやムラサキツユクサ‘スイートケイト’がちらほら名残の花をつけ、ヤマラッキョウの小さな花とともに、秋のひなびた風情を強めています。 10月の様子 【10月の日向エリア】 秋の陽に輝くたくさんのグラス類の中で、夏の名残りのルドベキアやフジバカマなどの花が美しく映えています。派手な印象を与えがちな黄×ピンクの組み合わせも、グラス類の絶妙な配分によって、落ち着きのあるナチュラル感を漂わせています。植栽の手前一角では、白いタマスダレとヒガンバナが瑞々しいアクセントを効かせています。 【10月の日陰エリア】 10月に入り花壇の手前側で人目を引いているのは、コルチカム(イヌサフラン)。透明感のあるピンクの花が、トーンの低い色彩の中で効果的なコントラストを生み出しています。暗くなりがちな後方では、オトコエシの白花やホスタの白斑が明るい印象を与えていることで奥行き感が高まり、花壇の見応えが増しています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 9月に入ると黄×ピンクの花々とグラスのボリュームが半々となりました。ルドベキア‘タカオ’やミソハギの鮮やかな花が、落ち着いたトーンの中で輝くように咲いて見えます。数本枯れ始めた株もありますが、さまざまな形のグラスの穂によく馴染み、情趣あふれる風景が生まれています。 【9月の日陰エリア】 真夏のダメージがなく、気持ちよい眺めが楽しめるリーフガーデン。整然と立ち並ぶアスチルベの穂はややかたい印象ですが、風をはらんだベニチガヤやフウチソウが点在していることで硬軟のバランスをキープ。オトコエシと共にガーデンが軽やかに見えます。 8月の様子 【8月の日向エリア】 先月に続き旺盛に花々が群れ咲き、草丈のあるグラス類が加わってきたことで、ぐっと野趣に富んできました。グラス類の中でも特に、エラグロスティス・スペクタビリスのエアリーな穂が株と株の間を埋め、カラマグロスティス ‘カールフォースター’が背後を目隠しし、花々の引き立て役として効果を発揮しています。 【8月の日陰エリア】 瑞々しかった春~夏の花々は終わりを迎え、ひと足早く秋を感じる風景となりました。この時期は、オレンジがかった黄花のリグラリア‘ミッドナイトレディ’や深紅のペルシカリア ‘ブラックフィールド’の濃厚な花色が、植栽に深みを与えています。 7月の様子 【7月の日向エリア】 野趣あふれたガーデンは、花真っ盛り。バーベナ・ボナリエンシスやミソハギなどの花が奔放に広がり、隣り合う植物がうまく交わりながら、それぞれの美しさを発揮しています。一角では、ピンク×黄の色彩の中に、カノコユリ‘ブラックビューティー’の濃ワイン色がスパイスを効かせて、花壇の存在感をより一層高めています。 【7月の日陰エリア】 清楚さと華やかさをもたらしていたヤマユリが上旬で咲き終わり、下旬からはリーフで魅せる時期となりました。フウチソウなどのグラスが細いラインを、リグラリアやホスタの葉が広い面を描き、色や形が異なるリーフ類の対比の妙が楽しめます。株張りが大きく旺盛に伸びる日向の花壇とは対照的に、日陰の花壇は、花色は控えめながら、全体的にまとまりを感じさせます。 6月の様子 【6月の日向エリア】 6月の庭で最も目を引くのは右前面のコーナーで盛りを迎えるフロックス‘ブルーパラダイス’。植わるのは1カ所のみですが、同じ花色のバーベナ・ボナリエンシスで背景を埋めることで、まとまりと見応えが生まれています。後半になるとアリウム‘丹頂’とヒオウギが開花。濃いワインレッドと反対色となる黄花が、ガーデン全体のピリリとしたスパイス的存在となっています。 【6月の日陰エリア】 ピンクのアスチルベ‘タケッティスペルバ’や‘ビジョンズインピンク’、そしてカンパニュラ・ラプンクロイデスの花穂があちこちで上がり、縦のラインを強調したデザインが楽しめます。後方ではホスタやリグラリアなどのカラーリーフが明るさや陰影を生み出し、植栽の表情に深みを与えています。 5月の様子 【5月の日向エリア】 すらりと伸びて高くなった草丈が、初夏の風に揺られながらワイルドなうねりを見せています。中旬になるとリナリア・プルプレアやバーベナ・ボナリエンシス、フロックス‘ブルーパラダイス’、ペンステモン‘ダークタワーズ’ の花が一斉に開花。後方ではカラマグロスティス‘カールフォスター’がブルーグリーンの花穂を上げ、ガーデンは青みを帯びたピンクに色づきました。 【5月の日陰エリア】 ティアレアやムラサキツユクサ‘スイートケイト’、アスチルベなどの、明るくやわらかい葉色が美しいガーデンを構成。上旬はピンクの花を咲かせるツツジ ホンコンエンシスがアクセントになり、下旬になるとリーガルリリーの大輪花が開花して、初夏到来のインパクトを高めています。ホスタやリグラリアなどの葉物がガーデンに落ち着いた印象を与えるなか、手前ではルズラ・ニベアが幻想的な風景を描いています。 4月の様子 【4月の日向エリア】 4月前半に咲いていた白や黄色のスイセンが中旬には終わり、後方のブルーのカマッシア‘ライヒトリニー’にバトンタッチ。スラリと伸びる花穂が乱立するように広がり、この時季らしい勢いを見せています。まだ花をつけていないその他の宿根草も、形の異なるリーフをこんもりと茂らせ、共演する様子も見どころです。 【4月の日陰エリア】 4月上旬はコンパクトなスイセン‘ベビームーン’が主役で、緑が少なく素朴な風景でしたが、中旬には白いスイセン‘タリア’とプルモナリア‘トレビファウンテン’が咲き始め、ぐっと華やさが増してきました。また、手前ではイカリソウやティアレラの小さい花が咲き、デザイナーがイメージする‘春の森の景色’が表現されています。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアでは、上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’が彩りを添えるものの、表土がまだ寂しい印象でしたが、後半になると随所に散らしたスイセン‘ベビームーン’の明るい黄花が咲いて、春らしさがぐんとアップ。一方、数か所に植わる銅葉のペンステモン‘ダークワーズ’のダークカラーが引き締め役となり、アイリス類の細い葉が青々と伸び始め、空間を埋めています。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアでは、上旬はカレックスや銅葉のティアレラ‘ピンクスカイロケット’の葉の間から球根の芽色が確認できる程度でしたが、下旬になると日なたと同じスイセン‘ベビームーン’が開花をスタート。まとめて数か所に植えられた小さなシラー・ミスクトスケンコアナも満開を迎え、原生地の林床のような風景を描いています。奥の方ではユリがニョキリと芽を上げ始め、穏やかながらも秘めたパワーを感じさせています。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、リナリア・プルプレアの銀葉やペンステモン‘ダークワーズ’の紫の葉がアクセントになって、パニカムやペニセタムの枯れ色の葉が風に揺れています。地際をよく見ると小さな芽が伸び始めています。日陰のエリアでは、イカリソウやティアレラの赤紫の葉が寒さに耐え、花壇の奥では、ヤブラン’シルバードラゴン’が細葉を伸ばして明るい彩りになっています。日向・日陰とも後方に剪定枝で形作ったバイオネストが備えられ、メンテナンス時に出た枯葉などが入れられています。 1月の様子 「Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜」作庭後、1月の様子。 コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら 【作品のテーマ・制作意図】ガーデンの美しさは緑量や花の色目や形状だけで測れるものでなく、空や光や風や生きもの全ての関わり合い、生命の尊さを感じることでガーデンがより輝いて見えます。ガーデンに長く根付いて、地域に馴染む風景、生態系の一部になることを想定し、植えっ放しに耐えられる丈夫な品種を中心に、蜜源植物や、風や光の動きを反映しやすい植物を多く取り入れ、地味な在来種でも組合せや配置で奥行ある豊かな草はらの表現を目指します。 【主な植物リスト】〇北側(日向)フジバカマ/パニカム‘ブルージャイアント’/ノリウツギ‘ライムライト’/ヘリアンサス‘レモンクイーン’/パブティシア/キキョウ/アヤメ/バーベナ・ボナリエンシス/ダイアンサス・カルスシアノラム/ペニセタム・マクロウルム/ジャーマンアイリス/ルドベキア‘ゴールドスターム’/ヒオウギ(オレンジ花・キバナmix)/ペンステモン‘ハスカーレッド’/スティパ、カッコウセンノウ/ミニスイセン・ティタティタ(球根)/オミナエシ/ダッチアイリス(球根)/アリウム‘丹頂’(球根)/ミューレンベルギア・カピラリス/カマッシア(球根)/イトススキ/ロシアンセージ〇南側(日陰)ラナンキュラス‘ゴールドカップ’/カレックス・オメンシス・エバリロ/アジュガ/ベニシダ/フウロソウ/ツワブキ/ユキノシタ/ジャノヒゲ/ヤブラン/ハナニラ(球根)/スイセン各種(球根)/フリチラリア(球根)/ペンステモン/ホタルブクロ/ヒヨドリバナ/アスチルベ/カレックス/アガパンサス(青花・白花mix)/クサソテツ/ヤツデ/スミレ/セキショウ コンテストガーデンB 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 黄×パープルの植栽が、秋からぐんぐんと美しい色彩を放ち始めました。下旬になるとシードヘッドが増え、ぐっと大人っぽい印象へと移り変わり、その朽ちた立ち姿は絵になる風景となっています。後方では、アスター‘ジンダイ’が見ごろを迎え、ミューレンベルギア・カピラリスやパニカム‘ブルージャイアント’のなかで、幻想的な景色を作っています。 【11月の日陰エリア】 日向と同様、秋にクライマックスを迎えたナチュラルガーデン。2種のホトトギスと清澄白山菊のピンクの落ち着いた彩りが、青々としたグラウンドカバーとのコントラストで、ひときわガーデンを引き立てます。今月目を引いているのが、明るさをもたらしているツワブキの黄色い花。ノリウツギの枯れた花穂との対比も見どころです。秋の小道を歩いているような雰囲気のある、愛らしい風景が広がっています。 10月の様子 【10月の日向エリア】 勢いよく成長する草丈のある植物が、秋空に向かって伸びるさまが爽やかで印象的です。ユニークな穂を揺らすペニセタム・ピロサム‘ギンギツネ’などのグラス類が、この時期ならではの黄×紫の艶やかな色彩を一層引き立てています。手前ではクリーム色のヒガンバナが開花しました。 【10月の日陰エリア】 先月のツルバキアからバトンを受け、今月はホトトギスが咲き始めました。右側端では、ディスカンプシア‘ゴールドタウ’の乾いた穂がふわふわと風に揺れています。野原のような風景に、可憐な彩りとオーナメンタルな植物がほんの少し加わっていることで、このガーデンの大きな魅力となっています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 上旬までは8月に続いて明るい黄色が目をひく風景でしたが、下旬になると深みのある色味に変化し始めました。青花のルエリア‘パープルシャワー’が鮮やかに開花を進め、後方では、パニカム‘ブルージャイアント’やバーベナ・ボナリエンシスが爽やかに空間を埋め、ライムグリーンのノリウツギの花穂がオーナメンタルな存在感を発揮しています。 【9月の日陰エリア】 瑞々しかった風景も下旬になると、少し色みに深みが増し始めました。通路沿いの右角ではグラス類のディスカンプシア‘ゴールドタウ’とカレックス・フラジェリフェア‘キウイ’が、メリアンサス・マヨールと共にワイルドに葉や穂を展開。それとは対照的に花壇の左右手前ではピンクのツルバギアの花が愛らしい彩りをプラス。コントラストの妙が楽しめます。 8月の様子 【8月の日向エリア】 オミナエシやヒオウギ、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、ヘリアンサス‘レモンクイーン’の黄花がメインの季節を迎えています。ルドベキアの黒い花心が、ペンステモン‘ハスカーレッド’の茶褐色の枯れ穂に呼応。紫花のルエリア‘パープルシャワー’が、きりりとした大人っぽいアクセントとなり、対比的な美しい配色が絵画的な印象を与えています。 【8月の日陰エリア】 ジャノヒゲやヤブランなどのグラウンドカバーが地面をみっちりと覆い、猛暑期間であっても、以前からの瑞々しさを維持しています。ディスカンプシア‘ゴールドタウ’やカレックスなどのグラス類が涼しげな動きをもたらし、静と動のコントラストを強調。のどかな風景が広がっています。 7月の様子 【7月の日向エリア】 ルドベキア‘ゴールドスターム’やヒオウギ、オミナエシ、コレオプシス‘レッドシフト’などたくさんの黄色い花があちらこちらで開花し、パワーあふれる夏の植栽を演出。やわらかい穂のペニセタム・ビロサムやペニセタム・マクロウルムがふわりとした動きをもたらして、花壇全体に強弱をつけています。 【7月の日陰エリア】 アジサイ‘アナベル’が明るさを、ツルバギアが愛らしさをプラスしています。下旬になるとアジサイに代わって、メリアンサス・マヨールが数々の葉を広げ、彫刻的な造形で特異な雰囲気を醸し出します。ともすると唐突感が出てしまいそうですが、その手前でさらさらとした穂を上げるディスカンプシア‘ゴールドタウ’が配されていることで、ナチュラルなガーデンにまとまりを持たせています。 6月の様子 【6月の日向エリア】 春の見せ場だったアイリスに代わり、涼しげなブルーの花を咲かせるトリテレイア‘クイーンファビオラ’が咲き始めました。後半になるとルドベキア‘ゴールドスターム’の黄色い花が鮮やかさをプラス。青×黄にアリウム‘丹頂’やダイアンサス・カルスシアノラムの濃いピンクが寄り添い、色彩豊かな風景となりました。 【6月の日陰エリア】 青々としたヤブラン、ジャノヒゲが広がる野原のような植栽に、2種のアジサイが開花し、立体感をもたらしています。手前に咲くヤマアジサイ‘藍姫’の青花と後方で咲くアジサイ‘アナベル’の白花が、涼やかな彩りをプラス。中央を横断する溝は、小道のような雰囲気を維持しています。 5月の様子 【5月の日向エリア】 春のガーデンは数種のアイリスが主役で、上旬はアヤメや各色(青・黄・白)のダッチアイリス、ジャーマンアイリスが随所で咲き乱れていました。主役と混ざり咲いていたダイアンサス・カルスシアノラムは、中旬になるとペンステモン‘ハスカーレッド’とともに、主役級の存在感を発揮。背後ではパブディシア トワイライトが開花し、シモツケのライム葉と共にガーデンに奥行きを感じさせています。 【5月の日陰エリア】 一面に咲いていた黒葉スミレが終わり、ヤブランやジャノヒゲが広がる草原のような風景に。そこに清らかな華を添え続けているのは、白いレースのような花を咲かせるオルラヤ。絶妙な透け感とふわふわとした草姿が、風の動きをもたらし、素朴な野草の雰囲気があります。中旬には、ガーデン中央に植わるヤマアジサイ 藍姫が咲き始め、オモトやツワブキとともに、どことなく和の雰囲気を漂わせています。 4月の様子 【4月の日向エリア】 線状の葉を持つアイリスなどが溝に沿って多数立ち上がり、緑と花のコントラストによって花壇のデザインが際立ってきました。上旬に咲いていたスイセンは咲き終わり、中旬にはカッコンセンノウやシラー・ペルビアナのブルーがアクセントに。アイリスのつぼみもぐんぐんと膨らんできているので、一斉に咲く5月は風景が一変すると予感させます。 【4月の日陰エリア】 上旬はリュウノヒゲと黒葉スミレが春の庭の骨格となって、スイセン・テタテートがアクセントとして効果的に見えていましたが、中旬になると前方で淡い黄色のミニチューリップが開花。差し色としての役割も担いながら、黒葉スミレの紫との反対色で彩りにコントラストをつけます。また、ペンステモンやオルラヤが大きくなりはじめ、立体感が出てきました。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアでは、上旬はカットバックしたグラスのドーム型のフォルムが目立っていましたが、下旬になるとアイリスの細い葉やペニセタム・マクロウルムの緑が瑞々しく展開。黄色いスイセン‘イエローセイルボート’やチューリップ‘シルベストリス’が、あちこちでにぎやかさを放っています。また、中央を渡る溝に沿って植物が並ぶ規則性が、気持ちの良さを感じさせます。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアは、上旬はノシランやリュウノヒゲ、ツワブキなど常緑のリーフ類+スミレの小花で覆われるのみでしたが、下旬になると黄花のスイセン‘ティタティタ’や、大輪のスイセン‘ラスベガス’、そのまわりには青花のムスカリが開花をスタート。やわらかい花色が加わることで、春の訪れが少しずつ感じられるようになりました。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、イトススキやミューレンベルギア・カピラリスのダイナミックな枯れ姿がアクセントになりながら、等間隔に植る常緑アヤメやダッチアイリスの芽吹きが緑のアクセントになっています。奥では早くもスイセン‘ペーパーホワイト’が咲き始めました。日陰のエリアでは、ツワブキや黒葉スミレ、ヤブラン、メリアンサス・マヨール、ヤツデなど、さまざまな常緑の葉が花壇に彩りを添えています。 1月の様子 「花鳥風月 命巡る草はら」作庭後、1月の様子。 コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 【作品のテーマ・制作意図】森では、様々な木々が壮絶な生存競争を繰り広げています。しかしそれは草原もまた同じ。草原は生命力に溢れる草花たちの戦いの場です。そしてやがて、草原の中から樹木が芽生え、最終的には森へと遷移していきます。私は、草原から森へと還るこのはじまりの瞬間を、美しくもドラマティックに演出したいと思いました。ここは、森が好きなガーデンデザイナーが解釈し表現したペレニアルガーデンです。 【主な植物リスト】〇北側(日向)グラス類:アオチカラシバ/エラグロスティス‘スペクタビリス’/カレックス‘フェニックスグリーン’/スティパ‘テヌイッシマ’/ディスカンプシア‘ゴールドタウ’ など球根類:コオニユリ/カノコユリ/スノーフレーク/ハナニラ(イフェイオン)‘ジェシー’/原種系チューリップ ‘アルバコエルレアオクラータ’/クロッカス‘ホワイトウェルパープル’/アリウム‘カメレオン’/アリウム‘グレースフルビューティー’ など宿根草:ノカンゾウ/アヤメ/ミソハギ/ウツボグサ/シュウメイギク/チョウジソウ/ワレモコウ/フジバカマ/ハゴロモフジバカマ/オミナエシ/ノコンギク‘夕映え’/アスター‘アポロ’/シオン‘ジンダイ’/エキナセア‘パープレア’/エキナセア‘ロッキートップ’/ルドベキア‘ヘンリーアイラーズ’/セントーレア‘ニグラ’/オルレア(一年草)/ガウラ‘クールブリーズ’/ペルシカリア‘ブラックフィールド’/フロックス‘フジヤマ’ など低木類:ガマズミ/バイカウツギ/コバノズイナ/テマリシモツケ など 〇南側(日陰)グラス類:カレックス‘ペンデュラ’/カレックス‘テスタセア’/シマカンスゲ/ワイルドオーツ/フウチソウ など球根類:ヒアシンソイデス‘ヒスパニカエクセルシオール’/シラー・シベリカ‘アルバ’/フリチラリア‘バイモユリ’/フリチラリア‘エルウィシー’/カマシア‘クシキー’/ゲラニウム‘チュベロサム’/コリダリス・ソリダ‘ベスエヴァンス’ など宿根草:キチジョウソウ/ヤブラン/ギボウシ/オカトラノオ/ホタルブクロ/イカリソウ/ミツバシモツケ/クリスマスローズ/シュウメイギク/チョウジソウ/ハゴロモフジバカマ/ベニシダ/ニシキシダ/クサソテツ/アスター‘トワイライト’/アスター‘リトルカーロウ’/ワイルドチャービル/サラシナショウマ(シミシフーガ)‘ブルネット’/カラマツソウ(タリクトラム)‘ヒューイットダブル’/モウズイカ(バーバスカム)‘ビオレッタ’/ペンステモン‘ミスティカ’ など低木類:ナツハゼ/ノリウツギ/ムラサキシキブ/ヤツデ‘スパイダーウェブ’/コバノズイナ など コンテストガーデンC 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 秋の代表格であるキク科のアスター‘夕映え’や、初夏から咲き続けるガイラルディア、ふわりと咲く花々が多様なグラスと渾然一体となり、晩秋の情緒たっぷりの風景となっています。先月に引き続き、ブラシのような穂を上げるアオチカラシバが、ランドマークのような存在感を発揮。反対側に植わるクランベ・マリティマとともに、オーナメンタルで面白味のあるアクセントとなって、見応えある景観をつくり出しています。 【11月の日陰エリア】 爽やかなピンクやブルーの小花が咲く植栽のなかで、赤く色づくナツハゼの紅葉が温かみを与えています。その傍らで秋風になびくワイルドオーツの乾ききった穂や、後方に植わるノリウツギの枯れた花穂が、自然の秋の美しさを引き立て、山の谷筋の風景を切り取ったような風情が楽しめます。 10月の様子 【10月の日向エリア】 今月に入り、ペニセタム(アオチカラシバ)のボリュームのある穂が勢いよく上がり、見事な存在感を放ち始めました。全体的に夏から咲き続けている花がより一層花数を増やし、たくさんの蝶が飛来しています。なかでも長期に渡りピンクの花をつけているガイラルディア‘グレープセンセーション’が道行く人の目を引いています。 【10月の日陰エリア】 手前のナツハゼが植わるゾーンとその向かいのノリウツギの植わるゾーンが、谷合に見立てた溝を挟んで見事に調和。アガスターシェ‘ブラックアダー’やアスター‘トワイライト’、ムラサキシキブの実などのブルートーンの彩りが、爽やかな秋の空気に美しく映えています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 どっしりとした株のフロックス‘フジヤマ’(オイランソウ)やルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’が、左右・中央の3カ所で開花。そのまわりの空間をガウラやバーベナ・オフィシナリス‘バンプトン’などのふわりと広がる草花が美しく咲き乱れています。後方では、ガマズミの赤く色づいた実が静かに秋らしさをアピール。 【9月の日陰エリア】 ナツハゼやノリウツギなどの低木のまわりでフウチソウやワイルドオーツが流れるように葉や穂を揺らすさまは、いつまでも暑さが残る9月の風景に清涼感をプラス。後方ではノリウツギの枯れた花穂と共にムラサキシキブやアスター‘トワイライト’が繊細な初秋の風景を描いています。 8月の様子 【8月の日向エリア】 押し寄せる大波のごとく茂っていた上旬。成長しすぎた植物がざっくりと刈り込まれた下旬は、それまでとはひと味異なる風景が楽しめるようになりました。この時期は、鮮やかな花色のバーノニア'クリニタ'やフロックス‘フジヤマ’(オイランソウ)、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’が、まわりを牽引するように華やかに咲き誇っています。 【8月の日陰エリア】 日向エリアと同様に、下旬までに大胆な剪定が行われ、前側と後側の区分けがはっきり見えるようになりました。その効果で、ノリウツギの花房がアクセントとなり、中央でアガスターシェ'ブラックアダー'がどっしりとした安定感を強調。眺めていて心地よい風景が生み出されています。 7月の様子 【7月の日向エリア】 7月に入ると花数は減ったものの、全体のボリュームはさらにアップ。宿根草に加えて数本の低木が植えられているガーデンは、ゆうに人の背丈を越し、迫りくるような迫力を感じさせます。それはまるで植物と虫の聖域。その旺盛に茂る植物を目の前にすれば、思わず奥へとかき分けて入って行きたくなる衝動に駆り立てられます。コオニユリに代わりカンゾウのオレンジ色がアクセントとなっています。 【7月の日陰エリア】 フウチソウやワイルドオーツなど、さらさらとした穂が風に揺れるさまが涼を感じさせます。下旬になると、ガーデン中央部にアンジェリカ‘エボニー’のシックな花穂が上がり、植栽に大人っぽい表情が見られるように。そのほか、白や淡いブルーなど楚々とした花が随所に咲きはじめ、小さな変化を見つける楽しさもあります。 6月の様子 【6月の日向エリア】 前半は淡いトーンで優しい印象でしたが、中旬になると全体的に深みのあるトーンに変化。ガイラルディア‘グレープセンセーション’やエキナセアなどのキク科の花が、素朴ながらも賑やかさをプラスしています。また、オレンジ色のコオニユリがアクセントとなり、品の良さを保ちつつワイルドな風景となっています。 【6月の日陰エリア】 6月の主役はシャスタデージーとリクニス・コロナリアの白花。バリエーション豊富なリーフ類が旺盛に茂り、大きなうねりを見せていますが、中央に横断させた深めの溝がデザインを切り替え、ボリュームのある植栽をすっきりと見せています。 5月の様子 【5月の日向エリア】 コバノズイナやバイカウツギ、アメリカテマリシモツケ‘サマーワイン’などの低木が開花の時期を迎えました。中旬になると草花は人の背丈を超えはじめ、溝の部分がけもの道のような雰囲気を醸しています。印象深いのは、ガーデン右側半分にたくさん植わるスティパ・テヌイッシマ(エンジェルヘアー)。風に吹かれて波のような動きを作り、どこかファンタスティックなシーンとなっています。 【5月の日陰エリア】 こんもりと茂る植栽の中で、随所で多種多様な姿の花が咲いているのが印象的です。手前ではゲラニウム‘ブームショコラッタ’やサルビア・ネモローサ‘スノーヒル’、ヒメケマンソウ、中央ではシャスターデージー‘スノードリフト’、脇・後方ではペンステモン・ミスティカ、シシリンシウム・ストリアタム、カマッシア・ライヒトリニー‘セミプレナ’などが開花し、見る人を飽きさせない初夏の植栽プランが楽しめます。 4月の様子 【4月の日向エリア】 低木のガマズミが柔らかな葉を展開し始め、より立体的な風景に変化しています。中央の谷溝にはブルーの小花のベロニカ‘ウォーターペリーブルー’が咲き広がり、投げ込まれた木片と相まって野趣たっぷりに。後方ではフェスツカやフェンネルなどの茂みの中からアリウム・リグラムがつぼみを上げ、手前ではピンクのシャボンソウやシレネなどの花が下垂、幻想的な風景を描いています。 【4月の日陰エリア】 上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’とクリスマスローズのピンク色が主役となり、愛らしさを感じる風景でしたが、中旬になると全体的にボリュームが出て、ワイルドさを感じさせる風景に。リクニス'フロスククリ'やゲラニウム'チュベロサム'などの繊細な小花が存在しながら、季節が進むとヒメケマンソウやシラーカンパニュラータ、ワイルドチャービルが存在感を放ちはじめ、主役が次々と移り変わっています。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアは、上旬はクロッカス‘ホワイトウェルパープル’が一番乗りで開花を謳歌していましたが、下旬ともなると原種のチューリップ‘アルバコエルレアオクラータ’やスノーフレークが群生するように開花。株姿をコンパクトに、かつ白花で統一することで、野趣あふれる早春の風景が実現しています。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアは、上旬の開花は数株あるクリスマスローズのみでしたが、下旬になると、クロッカス‘ホワイトウェルパープル’が加わり、楚々としながらも華やかさのある風景が見られるようになりました。クリスマスローズは花色や咲き方にバリエーションがあるので、うつむいて咲く花を一輪一輪見比べるのも一興です。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、敷き詰められた落ち葉や杉皮樹皮バークの間からシレネやガウラ、オルレア、サルビアなどが少しずつ緑を増やし、つんつんと球根の芽吹きも出始めています。日陰のエリアでは、細葉を放射状に伸ばすキチジョウソウが緑のラインを作り、小高い場所ではクリスマスローズが生き生きと茂っています。ひと際明るいライムグリーンの葉を茂らせているのは、ワイルドチャービル(ヤマニンジン)。 1月の様子 「草原は、やがて森へ還る。」作庭後、1月の様子。 コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ 【作品のテーマ・制作意図】人々の心に残る武蔵野の情景を骨格に、新たな要素を組み足して、これからの愛される武蔵野の風景を植物の魅力や武蔵野の風景を「伝え」「感じる」ことを軸に提案しました。武蔵野の草原を連想させるグラスをベースに、季節の流れの中で、さまざまな色や形の草花がガーデンを彩っていくような配置を心がけました。自然との距離が遠くなった現代で、このガーデンが少しでも自然と人とが寄り添うきっかけになればと思っています。 【主な植物リスト】〇北側(日向)イトススキ/カラマグロスティス/カレックス/ユーパトリウム ‘ベイビージョー’/ムギ/ソバ/ダンギク/ベルガモット/オミナエシ/ワレモコウ/ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’/エキナセア/バーベナ・ボナリエンシス/アリウム/チューリップ 〇南側(日陰)カレックス/ギボウシ/ツワブキ/クサソテツ/アカンサス・モリス/バプティシア/ユーパトリウム’チョコレート’/ペルシカリア‘ファイヤーテール’/アジサイ‘アナベル’/オトコエシ/オミナエシ/カクトラノオ/ペンステモン/アリウム/チューリップ コンテストガーデンD 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 ホットな雰囲気があったヘレオプシス‘ブリーディングハーツ’の花や銅葉の色に、ぐっと深みが増し始めました。ソバの花やイトススキ‘パープルフォール’、アスター‘ジンダイ’と相まって、若々しさやひなびた印象を併せ持つ、重層的な風景が広がっています。 【11月の日陰エリア】 アネモネ‘クイーンシャーロット’(シュウメイギク)の花が盛りを迎えた晩秋のガーデン。花色のピンクが一般的な品種よりもやや濃い花色のため、つややかなグリーンの植栽にあたたかい印象を与えています。また、こんもりとした葉群れにダークな色合いのペンステモン等のシードヘッドが混在し、変化を与えながら落ち着いた印象をもたらしています。 10月の様子 【10月の日向エリア】 夏から旺盛に咲いていたヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やルドベキア‘ブラックジャックゴールド’の花の勢いが衰えていく一方で、後方のアスター‘ジンダイ’の花がピークを迎えました。イトススキの華奢な穂と相まって、やさしい雰囲気を紡いでいます。 【10月の日陰エリア】 先月から存在感を見せ始めたユーパトリウム‘グリーンフェザー’の丈がさらに高くなり、リーフで作る植栽の見応えを高めながら、背後を隠す独特な世界観を確立。線の細い葉が秋の陽光に透けて、きらめいています。また、ペンステモン‘ダコタバーガンディ’やアスチルベ‘ダークサイドオブザムーン’、アジュガなど銅葉のリーフ類が、植栽に深みを与えています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 無数の花を咲かせて元気いっぱいに存在感を発揮していたルドベキア‘ブラックジャックゴールド’の開花も落ち着きを見せてきました。花数が減った分、カレックス・テヌイクルミスのオレンジ味のあるブラウンが際立つようになり、イトススキの穂も上がり始めました。暑さが残るものの、一気に季節が進んでいます。 【9月の日陰エリア】 9月も引き続き瑞々しい風景を維持しつつ、全体的に深みのあるトーンに変化し始めました。依然ノリウツギとアジサイアナベルのライムグリーンの花穂がシーンに明るさをもたらし、そこにダークな枯れ穂をつけるペンステモン‘ダコタバーガンディ’がピリリとスパイスを効かせています。 8月の様子 【8月の日向エリア】 メインカラーとなる赤×黄の中で、バーベナ・ボナリエンシスの紫ピンクやオトコエシなどの白花が加わって、植栽の表情がより変化に富んでいます。ススキ‘パープルフォール’やカラマグロスティス‘カールフォースター’など、随所で穂を伸ばす多様なグラス類が存在感を出し始めました。 【8月の日陰エリア】 ノリウツギとアジサイ‘アナベル’×リーフ類で織り成す夏の植栽は、ずっと瑞々しいシーンを提供。その中で、白花のオトコエシと赤花のペルシカリア‘ファイヤーテール’が、さりげないアクセントになっています。この時期は、花壇の後方でぐんぐん伸びているユーパトリウム‘グリーンフェザー’も見どころ。 7月の様子 【7月の日向エリア】 色彩豊かな時期が過ぎ、トーンに落ち着きを見せる7月のガーデン。先月に引き続き、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やルドベキア‘ブラックジャックゴールド’の鮮やかな花色が目を引いています。奥と両脇の草丈が高くなるように設計された花壇は、波のうねりのようなダイナミックな高低差を感じさせ、迫力と同時にリズム感も生み出しています。 【7月の日陰エリア】 瑞々しかったアジサイ‘アナベル’が下旬になるとくすみはじめ、グリーンのグラデーション×ダークカラーのシックな組み合わせが際立つようになりました。まるで大波が押し寄せてくるかのようなボリューム感で見る人を圧倒する植物群。手前に広がるシダ類は明るさと動きをもたらしながら、ワイルドさもプラス。艶やかな葉や雫をつける葉が輝き、雨も似合うガーデンです。 6月の様子 【6月の日向エリア】 アキレア‘パイナップルマンゴー’やモナルダ(赤)、ヘレオプシス‘ブリーディングハーツ’など、ホットな彩りでまとめられた初夏の植栽。その中で、アガスターシェ‘クレイジーフォーチューン’やベロニカ・ロンギフォリアのブルーが爽やかなアクセントとなっています。ボルドー色のアリウム‘レッドモヒカン’の球体の花が、あちこちで浮遊するように顔を出しているのもユニーク。 【6月の日陰エリア】 盛りを迎えたアジサイ‘アナベル’。大きな白い花が植栽の背景となり、さまざまな色形のカラーリーフが各々の魅力を発揮しています。ツワブキやペンステモン‘ダコタバーガンディ’、アジュガなど、緑×ダークトーンを基調としたリーフ合わせの中に、リョウメンシダなどの明るいグリーンを入れ込むことで、コントラストを効かせています。また、白い小花を咲かせるニホンムラサキが株間を埋めているのも見どころ。 5月の様子 【5月の日向エリア】 春の庭を牽引していたチューリップから、アリウム類にバトンタッチ。上旬は‘パープルセンセーション’、中旬は‘クリストフィー’ が主となり、それを支える花もラナンキュラス ラックスからアキレア‘パイナップルマンゴー’に移り変わりました。ポイントで植えたスティパ・テヌイッシマ(エンジェルヘアー)の輝きが、初夏の植栽をふんわりと支えています。 【5月の日陰エリア】 日向のガーデンと同様、チューリップが終わり、愛らしかった植栽はぐっと大人っぽい表情を見せ始めました。上旬は左側がラナンキュラス ラックスシリーズが間を埋めていましたが、中旬になると花が終わり、アリウム‘パープルセンセーション’や‘フォーロック’の開花がスタート。銅葉のアスチルベ‘ダークサイドオブザムーン’やペンステモン‘ダコタバーガンディ’が瑞々しい植栽を引き締めています。 4月の様子 【4月の日向エリア】 上旬は、赤・白・オレンジのチューリップ×ラナンキュラス ラックスシリーズの愛らしいカラーリングから、赤とブラックに花色が移り変わり、きりりとした表情が加わりました。また、それらを引き立てるように淡い花色のアネモネの株がボリュームアップ。スラリと縦に伸びるムギが瑞々しいアクセントになって、春を謳歌する花々の競演が楽しめます。 【4月の日陰エリア】 上旬にはほとんど咲いていなかったチューリップが中旬には一斉に開花し、日向に少し遅れて春爛漫の風景に変化しました。低い場所ではアジュガが小さなブルーのつぼみを無数につけ、後方ではノリウツギ類が柔らかい葉を少しずつ展開。春の見せ場から次の見せ場へと移りゆく季節の流れが、そよ風にのってふんわりと感じられます。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアは、上旬は最前列や溝の縁に咲くベロニカ‘オックスフォードブルー’の青い小花がナチュラルな彩りを添えていました。下旬になると、コンパクトなチューリップ‘スワラ’(赤)、‘ショーグン’(オレンジ)、‘ホワイトバレー’(白)がラナンキュラス‘ラックス’とともに咲き始め、一気に春本番のにぎやかさを演出。ムギやスティパ・テヌイッシマのやわらかい葉が、花の可憐さを一層引き立てています。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアは、上旬は冬から常緑性の濃い緑葉のリーフ類が青々と茂っているので、既に瑞々しい風景です。数センチほど芽が出始めていたチューリップの葉が、下旬になると20cmを超えるまでに成長。全体的にリーフの色にバリエーションが生まれ、変化のある表情になってきました。ポツンぽつんと植えられたラナンキュラス ラックスの赤や白い花が、アクセントになっています。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、スティパやカレックス、タイニーパンパ、セスレリアなどさまざまな細葉が風に揺れるなか、地際ではベロニカの銅葉やルドベキアなどが少しずつ葉を増やし、多数の球根類の芽も出始めています。日陰のエリアでは、アナベルの株元にアカンサスの鮮やかな葉が茂り、ツワブキやリョウメンシダなどの常緑の葉がリズミカルな彩りになっています。立ち上がる細葉や地面を這うように広がる丸葉など、フォルムの違いが楽しめます。 1月の様子 「feeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~」作庭後、1月の様子。 コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 【作品のテーマ・制作意図】世界的に"Climate Change(気候変動)"が叫ばれ、日本でも夏の猛暑、雨不足による水ストレスが植物を苦しめました。農業技術である完熟した堆肥をはじめ有機資材を使い、微生物に富み団粒構造を持つ土壌を作ることからはじめ、これまで武蔵野の草原風景を担ってきた在来植物を中心にガーデンを構成します。都市の暮らしの中でこぼれ落ちてきた技術、植物でこれからの武蔵野の風景を模索していきます。 【主な植物リスト】〇北側(日向)ヤマハギ/ミソハギ/オミナエシ/ノガリヤス/チカラシバ/フジバカマ/オトコエシ/コマツナギ/ワレモコウ/シラヤマギク/カワミドリ/フジアザミ/ノダケ/ヒヨドリバナ/キセワタ/マツムシソウ/クララ/オカトラノオ/ヤマホタルブクロ/ツルボ/キキョウ/アサマフウロ/タカノハススキ/ミスカンサス‘モーニングライト’/ミツバシモツケ/カタクリ/ムラサキ/カライトソウ/タムラソウなど 〇南側(日陰)フクジュソウ/ヒトリシズカ/フタリシズカ/ツリガネニンジン/キバナノアキギリ/チダケサシ/シュウメイギク/クジャクシダ/ナチシダ/クサソテツ/ヒトツバ/ナキリスゲ/ゲンノショウコ/ナガボノシロワレモコウ/ヤグルマソウ/キョウガノコ/チョウジソウ/アキカラマツ/フシグロセンノウ/キリンソウ/エゴポディウム・バリエガータ/ツワブキ・アージェテリウム‘浮雲錦’など コンテストガーデンE 月々の変化 11月の様子 【11月の日向エリア】 チカラシバの穂がさらに開き、赤みを帯びたイトススキとともに、秋風を強く感じさせるようになりました。ガーデンの隅ではこんもりと茂るヤマハギが、11月下旬もたくさんのピンクの花をつけています。植栽の奥をのぞき込むと、小さな小菊やコマツナギが最後の花を咲かせており、まさに晩秋の草むらといった味わいです。タムラソウのシードヘッドもユニーク。 【11月の日陰エリア】 ナチシダやイトシマススキが晩秋まで勢いよく茂り、どこか原始的な雰囲気を漂わせています。中央ではシキンカラマツやシラヤマギクの枯れ姿が荒涼とした風情を、それとは反対に奥ではエゴボディウム‘バリエガータ’やツワブキ・アージェテリウム‘浮雲錦’の一塊が、明緑色のホスタとともに明るいアクセントをつくり、デザイン性を感じさせます。 10月の様子 【10月の日向エリア】 ボリュームのある穂を上げるチカラシバが案内板の傍らでこんもりと広がり、訪れる人を出迎えているよう。初夏から咲いているキキョウやカライトソウ、秋の花のオトコエシやヤマハギが素朴な彩りを添え、この時期ならではの和の風情がたっぷり楽しめます。 【10月の日陰エリア】 奔放に広がるナチシダやヒヨドリバナなどのワイルドな趣と、シキンカラマツなど地上部が枯れ始めた植物のひなびた趣とが見事に調和し、深みのある表情を見せています。日向のエリアと同様に、チカラシバの赤みを帯びた穂がメリハリを生み、効果的なアクセントとなっています。 9月の様子 【9月の日向エリア】 成長期を終えてすっかり丈が高くなった植物によって、背景が見えなくなりました。9月の開花は小さなピンクの花をつけるコマツナギと白い小花をつけるキセワタ。花は少ないですが、初秋の風にそよぐ景色には、どこか郷愁を感じます。 【9月の日陰エリア】 日向の植栽とは異なる趣で、ダイナミックに株を広げる山野草。上旬にはシラヤマギクやトウテイラン、シュウメイギクが見頃を迎えました。下旬になると、ラインを描くイトススキやギザギザの葉を展開するナチシダなどが見せる“組み合わせの妙”がより分かりやすく楽しめます。 8月の様子 【8月の日向エリア】 8月に入ると全体的に丈が高くなり、迫力のあるシーンが楽しめるようになりました。下旬になると花数は少し減りましたが、人の背丈ほどあるノダケやキセワタがつぼみや花をつけ始め、山野草をセレクトしているからこそのユニークな花が観賞できます。 【8月の日陰エリア】 シラヤマギクの白花が満開となり、つぼみをつけたヒヨドリバナやナチシダなどが量感たっぷりに枝葉を伸ばしています。一方、手前ではクールなトウテイランのシルバーリーフと青花が引き締め役となり、ひねりを効かせたデザイン性が植栽の表情を深めています。 7月の様子 【7月の日向エリア】 ますます草丈が高くなり、見応えが出てきました。紫の穂をたくさん上げるカワミドリや、繊細な白花を咲かせるシラヤマギクによって爽やかな風景が楽しめる中、キキョウやタムラソウが可憐な彩りを加えています。先月に引き続きフジアザミが個性的な姿を見せ、道行く人の足を止めています。 【7月の日陰エリア】 上旬は、丈のあるシキンカラマツが控えめながらも目を引いていましたが、下旬になるとフシグロセンノウとオオバギボウシの花にバトンタッチ。鮮やかなオレンジ花が加わって、よりにぎやかになりました。中央から四方に向けて、リーフの緑のグラデーションが伸びやかに広がり、見る人に心地よさを与えています。 6月の様子 【6月の日向エリア】 上旬は前面のホタルブクロや寺岡アザミがメインでしたが、中旬になるとシキンカラマツ、コマツナギ、シラヤマギクなどが開花。オレンジ色のコオニユリの花がポツンポツンと点在する様は野趣にあふれ、自然な風景を思わせています。右手前コーナーでは、彫刻的な形の花を咲かせているフジアザミが道行く人の目を引き、山野草ガーデンの奥深い世界へといざなっているようです。 【6月の日陰エリア】 つややかな緑のグラデーションの中央でピンクの花をつけるシキンカラマツが、楚々としながらもシンボリックな存在感を放っています。まわりにはシマイトススキやホスタなどが瑞々しく成長。スカビオサ‘ムーンダンス’の薄クリーム色の花を無数に上げる様子は、幻想的な雰囲気たっぷりです。 5月の様子 【5月の日向エリア】 山野草たちの開花がスタートしました。前面ではほかの宿根草に先立ち、ヤマホタルブクロ‘アケボノ’や寺岡アザミ、ミツバシモツケが開花のピークを迎えています。中でも目を引くのが黄色い花をつける多肉質のキリンソウ。フジアザミの尖った葉とともに、ユニークな雰囲気を醸しています。植栽奥では、赤花のアストランティア‘ベニス’が彩りをプラス。 【5月の日陰エリア】 木漏れ日の下でやわらかな山野草が広げる姿は、林床を思わせます。上旬はチョウジソウが可憐な花を咲かせていましたが、中旬になるとミツバシモツケやタマガワホトトギスが開花。後方では、繊細な切れ込みが入るナチシダが瑞々しい野性味を放っています。 4月の様子 【4月の日向エリア】 他よりも少し遅れて芽吹きはじめた山野草も、春の日差しに誘われて成長を進め、中旬になると繊細な葉をあちこちで展開させているのがわかります。花壇の前方で一番早く成長し、存在感を出していた寺岡アザミ。そこに追いつく勢いで、シキンカラマツやフジバカマが柔らかい葉を旺盛に茂らせます。武蔵野の野原を感じさせる瑞々しい風景が見られるようになりました。 【4月の日陰エリア】 日向のエリアと同じく、あちこちで芽吹きが進み、さまざまな葉が展開し始めています。白い華やかなスイセンと野趣のある小さな花を下げるスノーフレークが清楚な彩りをプラス。こちらでもシキンカラマツが茂り、日向との共演が予想できます。山野草の芽吹きの楚々としたたたずまい、繊細な葉の違いなどをじっくり眺められるのは、この季節ならではの楽しみ。 3月の様子 【3月の日向エリア】 日向のエリアは、上旬はまだまだ表土が見える場所が多いですが、最前列に原種チューリップ・トルケスタニカが咲き始め、道行く人を楽しませています。下旬になると奥の方でシキンカラマツなどの葉が展開をスタート。ガーデンの前方コーナーでピンクのカタクリが愛らしい花の楚々とした姿が楽しめるようになりました。 【3月の日陰エリア】 日陰のエリアは、ガーデンの中央高台に植わる常緑のディアネラ‘ブルーストリーム’が中心となり、この時期のアクセントになっています。上旬にはまだ地上部に出てくる野草の数は少なかったのですが、下旬になるとガーデンのあちこちで各種の植物が成長を開始。野草は成長が遅いだけに、やっと顔をのぞかせる姿が見る人の心を和ませているよう。上旬に咲いていたフクジュソウは花後、繊細な葉を茂らせています。 2月の様子 【2月上旬】 日向のエリアでは、地上部が残されていたフジバカマなどの株元をよく見ると、新芽が吹き始めています。また、ところどころで原種チューリップの芽も確認できます。1月は小さかったノアザミ(寺岡アザミ)が地面を這うように葉を広げています。日陰のエリアでは、小高い場所でディアネラ・ブルーストリームが力強く葉を茂らせ、その背景にはタマシダやナキリスゲ、ヒトツバなどが緑の彩りとなっています。 1月の様子 「武蔵野の“これから”の原風景」作庭後、1月の様子。 第2回 東京パークガーデンアワードの入賞者によるオンライン座談会イベント開催 2024年8月6日(火)15:30〜オンラインで開催された「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の入賞者5名による座談会では、自身の応募書類の紹介、植物の調達から造園、メンテナンス、コンテストに参加して得たことなどがたっぷり語られました。アーカイブ動画はYouTubeにて公開中。以下バナーよりご覧いただけます。 5つの花壇のコンセプトや作庭の詳しいレポートはこちらをチェック! コンテストガーデンを見に行こう! Information 神代植物公園での東京パークガーデンアワード開催に伴い、園内の宿根草園のリニューアル、人にも環境にも優しいガーデン「JINDAIペレニアルガーデンプロジェクト」を市民のみなさんと進すすめていま す。3分の1がリニューアルを終え、こちらでもガーデンをお楽しみいただけます。プロジェクトの詳しい内容は こちらから! https://note.com/jindai_perennial 都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)開園時間:9:30〜17:00(入園は16:00まで)休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。
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グランプリ決定!「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の『ファイナル審査』を迎えた11月…
年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」 5人のガーデナーが手掛ける日向と日陰の2つのガーデン。最終的な結果が決まるまでに4・7・11月の3回に渡り審査が行われますが、ガーデンの施工から約1年が経過した今回は、最終回となる『ファイナル審査』です。審査日:2024年11月7日。 審査員は以下の6名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、佐々木珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)、松井映樹(神代植物公園園長) 事前に公表されているコンテスト審査基準 公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 「ファイナル審査」は、秋の見ごろの観賞性と年間の管理状況を見る審査。これまで行われた審査は、春の見ごろの観賞性を見る4月の「ショーアップ審査」と、梅雨を経て猛暑に向けて植栽と耐久性を見る7月の「サステナブル審査」の2回です。 今回は「ファイナル審査」を含めた全3回の結果を踏まえ、「植物個々の特性・魅力がしっかり見せられていたか」、「葉や花の組み合わせがデザイン的に美しいか」、そして「今回のテーマ=武蔵野の“くさはら”、が表現されているか」などが総合的に審査され、最終的な評価として、グランプリ・準グランプリ・特別審査委員賞も決定しました。※年によって気象条件が変わるため、開花の時期がずれていても評価に影響しません。 11月の審査時期を迎えた5名の授賞ガーデンと一年の振り返りコメントをご紹介 コンテストガーデンA 【グランプリ】Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 ルドベキア ‘タカオ’、フロックス‘ブルーパラダイス’、清澄白山菊、サルビア‘ファイヤーセンセーション’ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 シュウメイギク 【今回の庭づくりを振り返って】 日向・日陰どちらの庭も、イメージ図に近い形で育ってくれたので、思い描いていたものから大幅に離れることなく庭づくりができたと思います。日向はグラス類が多めの植栽で、私なりに「華やかさのあるくさはら」をつくりました。切り戻しで花数や株の大きさを調整することで、開花リレーをほぼ途切れることなく続かせることができました。日陰の庭に関しては、アスチルベのシードヘッドがきれいに残ってくれたため、花がない時期でも見どころを提供でき、1年を通して比較的ローメンテナンスですみました。 リーフやグラスで魅せるガーデンに見応えを出してくれたのは、季節感を演出してくれた球根植物。春先のクロッカス、スイセンとバイモ、秋のタマスダレやコルチカムは花が少ない時期に彩りを与え、初夏のアイリス、夏のユリが華やぎを添えてくれました。 病気や読みの甘さから一部枯れ込んだ部分もありましたが、日向と日陰それぞれの環境を活かした美しい庭を提案できました。 コンテストガーデンB 【入賞】花鳥風月 命巡る草はら 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 コレオプシス‘レッドシフト’、オミナエシ、アスター‘ジンダイ’、ルドベキア‘ゴールドスターム’、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、ルレリア‘パープルシャワー’、ノコンギク‘夕映え’、ミューレンベルギア・カピラリス 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 ホトトギス‘江戸の花’、ホトトギス‘松風’、清澄白山菊、青花フジバカマ、ノコンギク‘夕映え’、ツワブキ、ヒヨドリバナ 【今回の庭づくりを振り返って】 宿根草と球根による「イエロー&ブルー」のカラーコンビネーションを様々なパターンで年間通して計画通り表現することができました。開花が少ない時期はあったものの、途切れることなく何かしらの開花が見られました。また、蜜源や食草を意図的に取り入れたので、スミレに産卵するツマグロヒョウモンの幼虫が日陰の庭の黒葉スミレに何匹もおり、秋には成虫が飛んでいたので、タイトル通り命を巡らせることができました。 想像以上に生育旺盛で、イメージと異なる姿になったりしましたが、切り戻しや間引きなどメンテナンスで何とかカバー。品種ごとに、切り戻しをタイミングよく行うことで倒伏させず、開花を保ちながら株姿をコントロールできました。ほとんどの植物が、株が消えずに残っています。酷暑の夏でしたが、何年も先まで植えっぱなしでこのまま継続維持でき、生きものの住処にもなる、ロングライフ・ローメンテな庭を提示できたと思います。 コンテストガーデンC 【準グランプリ】草原は、やがて森へ還る。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 アスター‘アポロ’、ガウラ‘クールブリーズ’、ガイラルディア‘グレープセンセーション’、ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’、エキナセア‘ファタルアトラクション’、ノコンギク‘夕映え’、ハゴロモフジバカマ、白花フジバカマ、アオチカラシバ、メリニス‘サバンナ’ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 アガスターシェ‘ブラックアダー’、アスター‘アイデアル’、アスター‘リトルカーロウ’、ヒメケマンソウ、バーベナ‘・オフィシナリス‘ハンプトン’、ミズヒキ 【今回の庭づくりを振り返って】 土中での空気や水の流れ、微生物や菌類の活性化を考え、環境づくりに力を入れたので、想定外のこともありましたが、乾燥や高温等による枯損等もなく初期段階から順調に育ちました。 共通テーマ“武蔵野のくさはら”の私の解釈は、平地ではなく山を背景に広がりさまざまな草花が風に揺れる草原でしたが、今回、自分のタイトルからも関連づけて“武蔵野の森”とも解釈。優しくてノスタルジックで、ジブリ的な世界観をどこかに感じる景色をイメージしました。大小の起伏をつけることで奥行と立体感を出し、その環境に応じた適地適草(木)の配植をしたため、作為的に造られた感が少ない、連続性のあるナチュラルな風景を演出できました。日本在来種を要所に入れつつ多種多様なプランツを組み合わせ、植物たちのドラマティックな「競争」と「協奏」を表現しました。色彩や形重視のデザインプランティングというより、物語を感じる風景ガーデンとして見てほしいと思います。 コンテストガーデンD 【入賞】feeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’、アスター‘ジンダイ’、ダンギク、ソバ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 シュウメイギク‘クイーンシャルロット’、ホスタ、ユーパトリウム‘チョコレート’ 【今回の庭づくりを振り返って】 温暖化する都市環境に耐えられる在来種と、日本の草原・里山の雰囲気をもったポップな印象を与える植物を組み合わせました。春~初夏にかけてかわいらしかったガーデンが、夏~秋にかけてだんだん落ち着き侘びていくよう、四季を通して移ろうように計画しています。アスター‘ジンダイ’や麦・蕎麦などで地域らしさを出して、植物に興味のない方や子供たちにも興味を持って見てもらえました。 虫や蝶などの生き物を呼ぶことができ、ガーデン内に生態系が生まれました。その反面、食害にあった植物がありましたが、真夏前に花をつけている株を含め切り戻したことで、株が大きなダメージを受けず秋まで宿根草の見栄えを保つことができ、三番花まで咲く種類もありました。とくに日陰側では、低木を骨格にしてツワブキやシダなどのオーナメンタルな宿根草を用いたことで、葉の形や色の重なりを表現できた上に、ローメンテナンスな管理ですみました。 コンテストガーデンE 【審査員特別賞】武蔵野の“これから”の原風景 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 ハギ、カライトソウ、タムラソウ、シラヤマギク、ヒヨドリバナ 【日陰のエリア】 開花期を迎えていた植物 キバナノアキギリ、ヒヨドリバナ 【今回の庭づくりを振り返って】 武蔵野の“くさはら”の昔の風景を取り入れ、そこに思いを馳せることで、過去と未来をつなぐ新たな視点を提案しました。都市緑化では生物多様性を意識し、都の「在来種選定ガイドライン」に基づいた植栽が数多く計画されていますが、草原のような景観はあまり重視されていないのが現状です。私の理想は、風景の中で目立つ存在ではなく、背景として人々や生き物が共存できる空間を作ることと、それらに愛着を持ちともに語らう人々が増えること。今回、日本の野草の魅力を語る場を設けられたことは、ひとつの成果だと捉えています。 コンセプトを重視して初めて育てる植物を多数導入したため、配置や密度の調整が難しく、イメージ通りの景観を作ることができなかった場所も多くありましたが、メンテナンスは月1回と、計画通りにローメンテナンスで管理できました。これからも東京の風景を模索し続けたいです。
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あなたの多肉植物みせてください! 激レア塊根専門店主がおすすめの逸品4選を拝見
あなたの多肉植物みせてください! とは 「あなたの多肉植物見せてください!」は、街で噂の多肉植物や、ご自慢の多肉植物について、編集部員Kが直接見に行ってお話を伺うという、連載「多肉植物狂い」のスペシャル企画です。読者から寄せられた情報だけでなく、編集部員Kが自らの足と嗅覚を使って探し当てたお宝多肉植物も紹介しちゃいます! 今回紹介するのは新規オープンしたばかりの激レア多肉植物専門店! 今回ご紹介するのは今年の9月14日に開店したばかりの園芸店gadintzki plants(ガディンツキープランツ)。店内は多肉植物以外のプランツも充実しているのですが、店主が多肉植物に造詣が超深く、マニア垂涎モノの激レアコーデックスが目白押しのため、ご紹介させていただきます。 その店主の正体は・・・ じつはその店主、ガーデンストーリーで人気の連載「街の園芸店がお悩みを解決!」でお馴染みの、関ヨシカズ氏なのです! 件の連載では顔出しNGでしたが、今回晴れて皆さまにお目にかかります。 その連載でもお世話になった目黒区祐天寺のフラワーガーデン・セキは、今年3月に30年の歴史を閉じ、装い新たに同区の自由が丘(最寄駅は東急大井町線九品仏駅)の地にて、gadintzki plants(ガディンツキープランツ)として生まれ変わりました。 「gadintzki plants」(ガディンツキープランツ)とは gadintzki plantsは2024年9月14日開業。祐天寺でフラワーガーデン・セキを営んでいた関ヨシカズ氏(以下関さん)が、その豊富な園芸知識と経験を活かすべく新たな業態としてスタートさせた園芸店。旧店では生花が中心でしたが、gadintzki plantsが主に扱うのは観葉植物と珍奇植物(ビザールプランツ)。じつは、旧店舗でもひっそりと塊根植物やサボテンのレア品種などを販売しており、特に型のよいグラキリスの輸入株や、関さん自らが親株から採種して手がけた実生株(みしょうかぶ=国内で種から育った株)のウィンゾリーなどが破格の値段で販売されていたため、常連プランツマニアの誰もがこの店の存在を知られたくなかったという・・・。 実際に旧店で販売していたパキポディウム・バロニー(実生)。目利きの良さが感じられる逸品であった。 もちろん闇市のようにやっていたわけでないのですが(笑)、旧店のフラワーガーデン・セキは、なにぶん店の見た目も街のお花屋さん感が強かったため、まさか奥様方がガーデニングの花を選んでいる傍で、数千〜数万円のビザールプランツ(珍奇植物)が売られていたとは、ちょっと驚きですよね! かくいう私も、関さんにより塊根植物に開眼し、初めてパキポディウム“サンデルシー”を購入したのも旧店でした。そんな多くのファンを持つ関さんが新たに始めた新店舗、期待せずにはいられません。 店名の由来 gadintzki plantsのgadintzki(ガディンツキー)は関さん考案の造語。関さんが友人のオーストラリア人に、旧店名の“フラワーガーデンセキ”を英語で発音でしたら、その友人にはそれが“ガディンツキー”と聞こえたそうで、自分の拙い英語の発音が通じなかったのは残念ながらも、“ガディンツキー”にはドイツ語っぽいニュアンスがあってcoolだな、と感じたため、そのまま新店名に採用したという。なんとも関さんらしいユニークなエピソードですね。 店内紹介 店の奥では近隣の古着屋さんのポップアップストアなども不定期でおこなわれています。 関さんおすすめ多肉植物の逸品4選 関さんに取材時(2024年10月上旬)の在庫の中から、おすすめの4商品を選んで、解説してもらいました。掲載の商品は全て1点ものなので、ご購入希望の場合は事前に店に問い合わせてください。 ①パキポディウム・グラキリス(輸入株) 価格:49,500円(税込) 大きさ:高さ(鉢含まず)25cm 幹幅12cm 特徴 根や幹、茎に水分を蓄え、肥大化したフォルムが特徴的な塊根植物(コーデックス)の中でも人気のパキポディウム属。その人気を牽引してきた最大の功労者こそ「グラキリス」です。主な原産地はマダガスカルを中心に、南アフリカ、ナミビア、アンゴラといった、アフリカ大陸南部で、その多くが岩場やインゼルバーグと呼ばれる広大な平原に孤立した丘陵地帯など、通常の植物であれば生育できない過酷な環境で自生しています。近年は観賞用植物としての乱獲が相次ぎ、国際間取引にはワシントン条約による厳しい規制がかけられているため入手も難しくなってきましたが、gadintzki plantsでは原産地政府が公認している正式なルートからの株しか仕入れていないため、安心して大自然が生んだ奇跡の造形美をお楽しみいただけます。 関さん推しの理由 人気のグラキリスも"輸入株(現地球)"なんて肩書きが付くと上級者向きでは? と難しく考えている方も多いのですが、意外にもグラキリスの現地球は塊根植物初心者にもおすすめなんです。自生地の様子をそのまま楽しめる輸入塊根植物の醍醐味を存分に味わえるのがこのグラキリス。サボテンなんかよりも全然ラクに育てられるんですよ! 大きさ、価格、共に幅広く取り揃えています。 グラキリスは低重心で扁平な球状が整っていれば整っているほど高値が付くのですが、僕がまん丸よりはちょっと変わった形のほうが好きなので、それを選んで仕入れているため価格が抑えられつつ、僕の好みが反映されているのが当店のグラキリスの特徴ですかね。 ②パキポディウム・ウィンゾリー(実生) 価格:3,000〜6,000円(税込) 大きさ:高さ(鉢含まず)5〜7cm 幅全て約2cm 特徴 パキポディウム・バロニーの変種として原種のバロニーよりも人気を誇るパキポディウム・ウィンゾリー。パキポディウム属の中で唯一赤い花を咲かせるバロニーの変種のため、ウィンゾリーも同様に美しい赤花を咲かせます。原種のバロニーは幹高30cm以上まで成長しないと開花株にはなりませんが、ウィンゾリーは比較的小さい12cmくらいの幹高でも開花するため、花を早く見たい人にはウィンゾリーがおすすめです。 筆者所有株の開花の瞬間。もちろん、関さんの旧店から迎え入れたものだ。 Photo by JOHN CHEESEBURGER FOTOG. 徳利のような愛嬌のある形も人気で、真っ直ぐ上に成長するバロニーに対し、ウィンゾリーは分枝も多く、横方向にも旺盛に成長していくため、低重心で盆栽的な味のある株に出会うことができたらラッキーでしょう。ただ、徳利型が綺麗でバランスよく分枝した株となると価格も急上昇し10万円など悠に超えてしまうため、ウィンゾリーは現在でも高級レアプランツの地位を不動のものとしています。 関さん推しの理由 おすすめの理由は、なんといっても僕が手塩にかけて育て上げた親株(写真下)で自家採種したタネからの実生株なので、将来的に親株のような良株に育ってくれるであろうというロマンが詰まっているからです。 一時期に比べるとレア感も減少した感のあるウィンゾリーですが、それはあくまで愛好家目線でのことであって、やはり一般的なお花屋さんではまず出会うこともない植物なので、ぜひこの機会に育ててみていただきたいなと思います。 ちなみにここでご紹介している稚苗は現在の大きさからだと開花するまでに6年以上を要しますが、年を重ねるごとに目に見えて肥え太っていくので、形ができ上がってしまっている中型以上の株とは異なり、稚苗は成長が見える楽しさ、育てる楽しさを存分に味わえるのが魅力です。ともに時を過ごした株に赤く可愛らしい花が咲いた瞬間は、万感の思いがこみあげてきますよ。 ③コミフォラ・ピュアカタフ(輸入株) 価格:55,000円(税込) 大きさ:高さ(鉢含まず)40cm 幹幅6cm 特徴 コミフォラ・ピュアカタフは、カンラン科に属する植物で、アフリカ北東部および東部の熱帯地域、そしてアラビア半島南西部に自生しています。多肉のようで多肉でない、塊根のようで塊根でない、いわゆる「灌木系(かんぼくけい)」というジャンルで括られます。神々しい独特な雰囲気、視線を釘付けにする観賞価値、所有感をくすぐる希少性と三拍子が揃った、とても魅力的な植物です。 白い表皮は成長とともに、まるで材木をカンナで削ったようにめくれていくので、それがまた味わい深さを増しています。予測できない方向に伸びていく黒い枝も面白いです。これは時間の経過により黒くなるわけではなく、幹から出た瞬間にもう黒いので、この色彩の妙は自生地アフリカらしい野生味を感じさせますね。香木としても利用されており、その歴史は数千年前にまで遡るといわれています。もちろん、これも枝を切ると甘く上品な香りがします。分泌される樹脂はその高貴な香りとともに鎮静鎮痛の薬効も持つため、古代エジプト文明や西洋宗教では没薬(お清めの薬)として珍重されてきました。 関さん推しの理由 コミフォラの謎めいた姿に取り憑かれて沼落ちしてしまったマニアも決して少なくはありません。マニアはこの盆栽チックな形が異形であればあるほど10万、20万と高値を付けるのですが、僕は暴れた感じの樹形よりも、コミフォラ独特の表情がありつつ、穏やかな表情も見せる株が好きなので、値段のほうも同品種としては抑えられていると思います。そもそも、数年前までまったく流通していなかったので、その頃はピュアカタフが出るとネット界隈がざわつくほど幻の植物だったんです。もしその時代にこの株が出ていたら、おそらく20万円は下らなかったはずです。現在はある程度流通が確立されたとはいえ、グラキリスやウィンゾリーほど安定しているものではないので、今当店にあるこの株は、希少性、樹形の美しさ、価格の3点から考えてもかなりおすすめです。 ④オトンナ・カカリオイデス(実生) 価格:4,400円(税込) 大きさ:高さ(鉢含まず)3cm 幹幅4.5cm 特徴 オトンナ・カカリオイデスは南アフリカの山岳地帯が原産のキク科の植物。糸のように細い花軸の先にキク科らしい黄色く可愛らしい花を咲かせます。塊根から不規則に出てくる薄緑色の小さな葉の可愛らしさは、店頭で実物を見ると悶絶級です。この葉、よ〜く目を凝らして見ると、何気に多肉らしく肉厚であることが分かります。(写真下) この株は実生株ですが、元来が極小型の塊根植物なので、現地で自生しているものでも塊根幅10〜12cmくらいまでしか大きくはなりません。しかも岩ばかりのかなり荒い土壌のわずかな砂溜まりで塊根部が全部埋まった形で自生しているんです。6〜8月が休眠期となり、葉を全て落としたこの時期の姿はまるで生姜のよう。秋口から目覚めて、翌年の5月くらいまで塊根が隠れるほど葉が生い茂ります。決して多くは出回らない、かなりのレアプランツです。 関さん推しの理由 冬型の塊根植物なので、これからの季節に葉を出し、成長していく姿を楽しめます。うちでは割とよく販売しているのですが、大きめの専門店でもあまり置いていないかなりレアな植物です。オトンナ属もさまざまな種類があり、僕もけっこういろいろ扱ってきたのですが、旧店新店ともにこのカカリオイデスがとても人気なんですよ。見た目が可愛らしいからでしょうか、新店オープンしてからもう5つが売れ、5つとも女性のお客様にご購入いただきました。しかも5人ともまったくの塊根植物未経験者で、「かわい〜」の一言でお買い上げという(笑)。動機なんてそれでいいんですよ。 “生姜のような塊根”の形も様々なものを取り揃えているので、ぜひ見に来てください! おすすめ商品の育て方 ここで紹介した関さんおすすめの4つのプランツは、全て乾燥地帯で自生している植物なので、用土は乾燥気味に保つという部分は共通しています。そして塊根系を育てるうえでの基本3原則、①太陽ガッツリ ②空気循環 ③水やり控えめ、は必須条件です。 オトンナ・カカリオイデス以外の3商品、グラキリス、ウィンゾリー、ピュアカタフは成長期が春〜秋の夏成長型植物。このため、昨今の亜熱帯化した日本の気候を考えると、3月末〜10月中旬くらいまでは屋外でたっぷりと太陽光(直射日光OK)を浴びせながら管理し、3〜4日おきに鉢底から溢れ出るくらいたっぷりの水を与えます。ただし梅雨時は屋内管理に切り替え、水やりも週1回程度に留めておきます。オトンナ・カカリオイデスは成長期が日本の冬にあたる冬成長型の塊根植物のため、秋から春にかけての成長期は屋外でたっぷりと陽射しをあてて育てます。真冬も氷点下にさえならなければ屋外でOK。ただし風の強い日は落葉を防ぐために屋内に取り込んでください。また、オトンナ・カカリオイデスは蒸れを極度に嫌うため、成長期といえど土が完全に乾燥するまでは水を与えないでください。完全に乾燥したら、他の3商品同様にたっぷりと水を与えます。土の乾燥具合は慣れれば感覚で分かるのですが、初心者の方は竹串を用いると便利ですよ。 鉢の縁に挿し、引き抜いた串が汚れていれば、まだ水のあげ時ではないことがわかる。 4商品とも、肥料は成長期に月に1回、規定量より薄めにした液肥を水やりの際にあげてください。液体肥料『ハイポネックス』原液の場合、目安としては2Lのペットボトル満水に対し市販飲料のペットボトルキャップ内側の枠すり切り(=1cc)での希釈がベスト。 休眠期の管理 4商品とも、休眠期は室内で管理します(グラキリス、ウィンゾリー、コミフォラは冬季に14℃以下にならないよう注意)。休眠中とはいえ、屋外と同様の環境づくりをしてあげることは植物栽培にとって重要なこと。室内で管理すると自ずと日照と風が不足がちになるため、これを補うために植物育成LEDライトとサーキュレーターの使用をおすすめします。 【それぞれの使用方法はこちらの記事にて】植物育成LEDライトサーキュレーター植物育成LEDライトを導入しない場合は、陽の当たる場所で管理してください。ただし、オトンナ・カカリオイデスは休眠中に夏の直射日光を浴びるとストレスになるため、レースのカーテン越しなどの遮光した環境下で管理します。また、陽当たりが悪い、あるいは屋外管理が難しい場合は、植物育成LEDライトとサーキュレーターを用いることにより、4商品とも1年を通じて室内栽培することは可能です。 休眠期の水やり 4商品とも休眠期は水やりを基本的には休止しますが、細根を生かして休眠明けの立ち上がりを良くするために、週一回程度、土表面が湿るくらいの水はあげてください。この時、グラキリス、ウィンゾリー、ピュアカタフは昼に、オトンナ・カカリオイデスは夜に、いずれもボディーに極力水がかからないように注意しながら与えます。また、成長期と休眠期の間は、急激に水やりを再開したり、やめたりするのではなく、間隔、水量ともに徐々に増減を行うようにしてください。 関さんおすすめのグッズ gadintzki plantsは園芸関係のグッズも取り揃えています。今後も、グローブ、スコップ、ジョウロなどを増やしていく予定なので、商品の在庫状況は店にお問い合わせください。 鉢 左奥:磁器製(黒)受皿付き3号鉢 2,310円(税込) 右手前:陶器製(濃藍)受皿付き3.5号鉢 3,300円(税込) 鉢もメーカー量産鉢から数量限定の作家鉢まで、多数取り揃えています。写真の鉢は、ミニマルな感じの色彩とフォルムが植物を絶妙に引き立てるのでおすすめです。ウィンゾリーの稚苗を合わせてみましたが、オトンナ・カカリオイデスにも似合うと思います。 オリジナル多肉植物用土 容量:2L 価格:715円(税込) 赤玉土と鹿沼土をベースにした完全に関さんオリジナルブレンドの多肉専用土。関さん配合の用土は筆者も旧店時代から愛用しており、筆者宅の全ての多肉植物の成長に欠かせない最高品質の用土。用土をふるいにかけて、細粒や粉末化した土を除去する“ミジン抜き”をしていないので、通気性速乾性を確保しながらも、細根が細かい土をしっかりと捕まえて栄養を吸収できるため、活着も早く塊根の幹も肥大化が促進されます。まさにここでしか購入できないプロの知識と経験が詰まった土です。 関さんの土を使ったグラキリス。細根が細粒を捕まえてギッシリと生えている様子が分かる。 関さんに聞きました gadintzki plantsオープンに至る経緯 以前から観葉植物と塊根植物を主体としたお店をやりたいと考えていた関さん。そんな折、先代のお父様が引退し、また店も老朽化が著しかったため、これを契機にと心機一転の独立。夢を実現すべく、この自由が丘エリアは九品仏の地を選び、新たな店の準備が始動したのは昨年2023年の夏。 九品仏は日頃、自由が丘でお酒を飲んでいる関さんにとっては庭みたいなもので、なおかつ、周辺地域には切花を扱う園芸店は数店舗あるものの、観葉植物や塊根植物などの専門的な植物を扱う店がないことも、この地を選んだ理由です。こうして入念なリサーチをした結果、2024年に入り現物件に出会ったわけですが、物件の状態は居住仕様だったため、店舗仕様へと自身で大幅なリノベーションを敢行することになるのです。 この状態から自身の手で全てを築くことを決意。真の男は夢の実現のためには自ら泥に塗れることをいとわない。 写真提供:gadintzki plants 本人曰く「必要最小限の金で最良のものを作りたかった。」とのことですが、その行動力と実現力の源は、自分が選んだ最高の植物を地域の皆様へという情熱が彼を突き動かすのだと思います。 gadintzki plantsがオープンするまでのエピソード 作業を進めるうえで、どうしてもその道のプロの知識と経験がなければ先に進めない部分も出てきます。スタイロ(断熱材)剥がしがまさにそれでしたが、専門業者に任せきりにせず、関さん自ら率先して作業に参加しました。 スタイロ剥がしは関さん自身もかなり汗をかいた難作業だった。 写真提供:gadintzki plants フロア中心を飾る自作のモルタル台は自慢の逸品。 写真提供:gadintzki plants 入店してまず目線が向かうここに店の看板商品となるものを配置するわけですが、考えが柔軟な関さんは、この台を植物だけに限らず、自分がよいと思ったアイテムや、要望があれば、ポップアップストアの展示台としても活用していく予定です。 関さんの目指すもの 「gadintzki plantsで販売している観葉植物や多肉植物の多くは、庭のガーデニングに用いる植物というよりは、どちらかといえば室内でインテリアグリーンの一つとして楽しむもの。まずは地域の方々に、型どおりのインテリアグリーンだけではなく、ちょっとほかでは見られない塊根植物などのビザールプランツ(珍奇植物)を用いた、インドアグリーンの新たな楽しみ方を提案し、この地域にプランツマニア(植物好き)をどんどん増殖させ、店が皆の情報発信地になれば嬉しいですね。その結果として店を拡大できればいうことないですね。」と関さんは語ります。でも、人との繋がりを大切にしたい関さん的には、買う買わない関係なく、単に店を休憩所と思って気軽に遊びに来てほしい、のだそう。そんな思いが自然に人を引き寄せるのか、取材中も近所の奥様が「これ植え替えして!」とフランクにお願いしにきたり、店の奥でポップアップストアを展開する古着屋さんの友達が集ったりと、この地で育む人間関係を次の未来に生かしたいという、関さんの新たな世界地図が広がっています。 関ヨシカズという人の人柄、園芸への愛と見識をもってすれば、gadintzki plantsの未来、すなわち関さんが目標として掲げている店舗の拡大は遠からず実現するものと確信しています。そんな愛と夢がつまった珠玉の植物たちを、ぜひ散歩ついでに見にきませんか? gadintzki plantsへのアクセス 東京都世田谷区奥沢7丁目18-1ハドル自由が丘101東急大井町線九品仏駅から徒歩1分 東急東横線/大井町線自由が丘駅から徒歩8分OPEN 11時〜19時(場合によっては20時) お店周辺のおすすめスポット gadintzki plantsの周辺には、関さんお気に入りのお店やパワースポットなど、つい寄り道してみたくなっちゃう場所が盛りだくさん! その中から関さん特にお気に入りのスポットを紹介します。 Comme’N TOKYO(コム・ン トウキョウ) gadintzki plantsから徒歩30秒もかからないご近所のパン屋さんComme’N TOKYOは関さんのお気に入り。 美味いですからぜひ、とすすめられていざ行ってみたら、なんとお店のオーナーシェフ大澤秀一氏はパンの世界大会で日本人初の総合優勝に輝いた“世界一”のパン職人だというではありませんか! 関さん曰く普段は結構並ぶのだそうですが、この日は奇跡的にすぐに入店できたので、早速お店一番人気という「生ハムとカマンベール」(写真下)を購入してみました。 かぶりついた瞬間にバゲットの香ばしさと、もっちりとした食感が心地よく、直後に具材の塩味と旨味が絶妙な調和を楽しませてくれるという、一見スタンダードな組み合わせでここまで感動するパンを作るとは、驚きです。出た答えはこれ一つです。「並んででも食べるべき。」 お店の場所 東京都世田谷区奥沢7-18-5 1F自由が丘駅徒歩10分 九品仏駅徒歩1分年中無休7:00〜18:00URL : https://commen.jp 九品仏浄真寺 Comme’N TOKYOの前の交差点を渡ったらすぐに参道の入り口がある九品仏浄真寺(くほんぶつじょうしんじ)は浄土宗の寺で、開山は今から346年前というから驚きです。本堂まで大人の足で6分かかる参道は、絶好のお散歩コースです。参道を抜け緑豊かな境内に入ると、東京都が天然記念物に指定している巨大なイチョウをはじめとした緑の競演に、都心の住宅街にこんな場所が!? と驚かせてくれます。その奥にある3つのお堂には、それぞれ都が有形文化財に指定している阿弥陀如来像が3体ずつ安置されていて、合計9体の像が"九品往生"という人の品性を顕していることから、この地が「九品仏」という地名になったといわれています。地元のみならず全国から参拝者が来る名刹、関さんのところでお買い物がてら、ぜひ立ち寄ってみては? お寺の場所 東京都世田谷区奥沢7丁目41-3Tel:03-3701-2029 (9:00~16:00)開門時間 6:00~16:30URL:https://kuhombutsu.jp 編集後記 初めて店(旧店)で買い物した2017年から数えれば知己を得て7年になりますが、その間私の園芸知識(特に多肉植物)の向上には関さんの存在は欠かせないものでした。もちろんこれからも。彼の話す情報やアドバイスは、一般的な園芸店や専門家から聞くそれとは異なり、いささか型破りなところがあり、そして常に直球。彼の園芸トークの中には方便がなく、本質を見据えた辛辣な言葉が時折ギターソロのように放り込まれ、そこにシンパシーを感じた私は、縁あってこのガーデンストーリーで関さんをフューチャーした連載記事「街の園芸店がお悩み相談」を書かせていただくことになりました。そして回を重ねるごとに本編でも記述したように、もっと彼の見識が活きる場があるのではないか、という思いが強くなって行ったのです。そこで今回の船出を聞き、正直嬉しかったですね。新たな大海で、まさに水を得た魚のように激しく泳ぎ回ることでしょう。そんな彼の活躍を、今後もガーデンストーリーは追っていきたいと思います。関さん、Godspeed!
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里帰りした宿根草「アスター‘ジンダイ’」が初めての開花! 東京パークガーデンアワード@神代植物公園で観…
日本から海外に渡り、再び戻ってきて愛される植物たち 都立神代植物公園(調布市深大寺)を舞台に一般公開されている「第2回 東京パークガーデンアワード」。そのコンテストガーデンで10月上旬、グラスの穂と共演するアスター‘ジンダイ’。撮影/松井映樹 今、私たちが季節の移り変わりを感じたり、眺めて癒やされたりする花や植物のなかには、日本から海外に渡って、新たな価値を見出されて世界各地で育てられているものが多く存在します。その代表的な植物には、アジサイやギボウシ、ツバキなどが挙げられますが、今年東京・神代で開花したアスター‘ジンダイ’(Aster tataricus 'Jindai')もその一つです。 海外で撮影されたアスター‘ジンダイ’。yakonstant/shutterstock.com アスター‘ジンダイ’は、ニューヨークのハイラインや、イギリスのハウザー&ワース・サマセットなど、昨今注目される「ナチュラリスティック」デザインのガーデンで広く栽培され、欧米では定番の美しいアスターとして愛されています。 「第2回 東京パークガーデンアワード」のコンテストガーデンで多数のつぼみをつけるアスター‘ジンダイ’。 宮城県で「はるはなファーム」というナーセリーを営み、ガーデナーでもある鈴木学さんも、「ナチュラリスティック」で活躍する植物に魅了され、苗を集めてきました。そのなかで、どうしても入手できなかった品種がアスター‘ジンダイ’でした。 「あきらかに日本のものと分かる名前でしたから、かつて日本から海外へ紹介された植物の1種だと思い、同業者や山野草関係の知人に聞いて回ったのですが、まったくといっていいほど手がかりがありませんでした」。 イギリスの新刊書籍で見つけたアスター‘ジンダイ’の由来 『Planting the Oudolf Gardens at Hauser & Wirth Somerset』by Rory Dusoir, Foreword by Piet Oudolf, Photographs by Jason Ingram 出版/Filbert Press その謎のアスター‘ジンダイ’の由来を解き明かす糸口を鈴木さんが見つけたのは、2020年に出版されたイギリスのガーデン「ハウザー&ワース・サマセット」の解説書『Planting the Oudolf Gardens at Hauser & Wirth Somerset』でした。 世界的に活躍するガーデン・デザイナー、ピート・アウドルフ氏が手がけた庭の新刊出版を心待ちにしていた鈴木さんが胸を躍らせページをめくっていると、アスター‘ジンダイ’の解説に目がとまりました。そこにはなんと「アメリカのプランツマン、リック・ダーク(Rick Darke)氏が神代植物公園で見つけた」と記されていたのです。 アスター‘ジンダイ’は神代植物公園で栽培されていた株が親株 それから数年が経った2023年。「第1回 東京パークガーデンアワード 代々木公園」の入賞ガーデナーの1人として鈴木さんが座談会に登壇した際、神代植物公園の松井映樹園長と面識ができたことがきっかけで、アスター‘ジンダイ’の謎解きが再び始まりました。 松井園長が、開園当時から現在までの目録をあたってくださり、アスター‘ジンダイ’の親株と考えられる植物を発見。ただし、いつ、どのような経緯でリック・ダーク氏がそれを入手したかは分からない、というところまで辿り着いたのです。 2023年に東京・代々木公園内で開催された「第1回 東京パークガーデンアワード」で準グランプリを受賞した鈴木学さんによるコンテストガーデン「Layered Beauty レイヤード・ビューティ」の6月。 それから少し後、鈴木さんが代々木公園でコンテストガーデンのメンテナンスをしているとき、北海道「十勝千年の森」のヘッドガーデナー新谷みどりさんと会う機会がありました。じつは新谷さんはナチュラリスティックガーデンの考えを日本に広めた第一人者でもあり、鈴木さんにアスター‘ジンダイ’を探してほしいと頼んでいたのです。そこで、これまでの調査の経緯を話したところ、なんと、新谷さんは書籍に記載されていたアメリカのプランツマン、リック・ダーク氏と知り合いであることが判明。リック氏本人にアスター‘ジンダイ’について聞けることになったのです。 ‘ジンダイ’の名付け親リック・ダーク氏は1985年に神代植物公園を訪問 当時、神代植物公園内でアスター‘ジンダイ’の親株が育っていたのではと想定されているのは「宿根草園」と呼ばれている場所で、2023年にリニューアルされた。写真は2024年7月の様子。 2023年暮れ、リック氏にアスター‘ジンダイ’のことを問い合わせていた新谷さんにメールの返信がきました。そこにはこう書かれていました。 「1985年、ペンシルヴァニア州のロングウッドガーデン(Longwood Gardens)に勤務していた当時、同園と米国国立樹木園(U.S. National Arboretum)の共同調査のため、樹木園のチーフ、シルベスター・マーチ(Sylvester March)氏と一緒に訪日しました。その目的は、日本の植物苗の生産者や植物園、在来植物の自然植生地を訪れて、北米を中心とした園芸業界に役立つ日本の植物を見いだすことにありました。 アスター‘ジンダイ’の親株と思われるもの。宿根草園にあった株をリニューアル時に掘り上げて鉢植えで栽培。今年は10月上旬に咲き始めました。撮影/松井映樹 その際に神代植物公園を訪れ、当時の園長に園内を案内していただいたとき、展示植栽地でひときわ草丈の低いシオン(Aster tataricus)系の植物が目に留まりました。それが特別な品種(交配種)なのかを聞いたところ、『いいえ、純粋に種から育てているものです』という答えが返ってきました。 神代植物公園で2024年10月上旬に開花したアスター‘ジンダイ’の親株。ヤマトシジミアやイチモンジセセリ、ツマグロヒョウモンが蜜を求めてやってきた。撮影/松井映樹 草丈が低く、コンパクトでありながらまっすぐに成長する姿を見て、アメリカでは草丈が高く育ちすぎて倒伏しやすい従来のシオンよりも、庭でずっと育てやすいと確信しました。神代植物公園の当時の園長はとても協力的で、寛大にその植物を分けてくださいました。 無事にアメリカにその株を連れて帰り、後に神代植物公園に敬意を表して、‘Jindai’の名前を付けて世の中に紹介しました。今や生産栽培分野においても、この種の持つ草丈の低さは安定しており、北米の環境に見事に適応して、非常に優秀で美しいアスターとしてたくさんの方々に愛されています」 現在開花中のアスター‘ジンダイ’の親株は、神代植物公園内の植物会館前で10月20日まで秋の七草とともに展示中。アスター‘ジンダイ’は花が咲いている期間、同場所でその様子をご覧いただけます。撮影/松井映樹 その後、アスター‘ジンダイ’の親株を渡した当時の園長が柴沼弘さんであったことが分かりました。1961年の開園当初の神代植物公園の植物目録には「しおん(だるま)」の記載があります。1991年の植物目録では「シオン Aster tataricus」と記載されており、現在も、「シオン Aster tataricus」のラベルの付いた矮性のシオンが神代植物公園で栽培されています。つまり、アスター‘ジンダイ’は、日本では「ダルマシオン」の名で長年親しまれていた草丈の低いシオンの1種と考えられ、アメリカのプランツマンによってその価値を高く評価され、固有品種名‘ジンダイ’の名を冠して世界中に広がったのです。 38年ぶりに里帰りしたアスター‘ジンダイ’ はるはなファームで植え付けを待つアスター‘ジンダイ’の苗。2月。写真/鈴木学 この由来の解明と並行して、鈴木さんが営むはるはなファームでは、2023年の9月にオランダからアスター‘ジンダイ’のプラグ苗を輸入し、育てた苗が12月に「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」のコンテストガーデンに植えられることになりました。1985年にリック・ダーク氏が‘ジンダイ’をアメリカに持ち帰ってから、38年ぶりに里帰りしたことになります。 2023年12月に植え付けたアスター‘ジンダイ’の場所を示すプレートが設置されたコンテストガーデンA 「Grasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜」。 そして、いよいよ迎えた10月上旬。コンテストガーデンで開花したアスター‘ジンダイ’は、草丈130〜160cmと従来のシオンと比べてコンパクトながら、分枝した先にたくさんの淡紫色の小花を次々と咲かせています。 里帰りして初めて開花したアスター‘ジンダイ’を見て、鈴木さんは「もう1つ興味深いのは、花色が濃い点」だと言います。「一般的なシオンは、もう少し花色が薄くて、写真を撮る際の条件によっては白に近く見えることもありますが、これはしっかり色を感じますね。海外で栽培されている‘ジンダイ’は花色が濃いと聞いていたので、期待どおりでした」。 ガーデンプランツとして期待されるアスター‘ジンダイ’の可能性 コンテストガーデンで10月上旬に開花したアスター‘ジンダイ’。 鈴木さんは、今年秋に日本の気候で約1年育てて開花したアスター‘ジンダイ’を確認して、これからのガーデンで活躍する植物であることを確信したと言います。 「まず一番の魅力は、日本の気候に合った宿根草だということです。特に秋、宿根草ガーデンの最後のシーズンを飾るものとして加えられるのはいいことだと思います。 シンフィオトリクム Alex Manders/Shutterstock.com 西洋のアスター(シンフィオトリクムとかユーリビアなど)は、基本的に日本の気候に合うものが多いものの、グンバイムシなどの害虫に弱かったり、酸性度の高い土壌では育ちにくい場合があります。例えば、ノコンギクやシオンなどの日本に自生していたアスターは、気候に合うのはもちろん、病害虫にも耐性があり、長い期間、持続可能で魅力的な植栽を計画するうえでは欠かせないと思います。 ノコンギク 一方、ノコンギクやその他のアスターの多くは、植栽の中で構造的に使えるか(長い期間、形としての植栽を維持できるかどうか)という点で劣るものも多く、その点からもシオンは、構造的な宿根草として使えるというメリットがあります。 コンテストガーデンで10月上旬に開花したアスター‘ジンダイ’。支柱をせずに自立するのも特徴。 しかし、従来のシオンは2m前後と草丈が高すぎるので、必ずしもすべての現場で重宝するというわけではありません。ですので、アスター‘ジンダイ’のような130〜160cmにとどまる草丈は、“ちょうどいい”と思います」 鈴木さんが、今ナチュラリスティックな植栽に関わるなかで、昨今よく外来種と在来種が話題になり、慎重に扱うべきテーマだとしたうえで、 「このアスター‘ジンダイ’は、人と人とのつながりがきっかけで海を渡り、世界中でガーデンプランツとして使われ、そして40年近く経て故郷に帰ってきました。今回、その環をつなぐ一助となれたことは、忘れがたい経験になりました」と語ります。 アメリカ合衆国イリノイ州にある「シカゴ・ボタニック・ガーデン(Chicago Botanic Garden)」で開花するアスター‘ジンダイ’。2019年10月25日撮影。撮影/新谷みどり また、海外で育つアスター‘ジンダイ’を実際に何度も見た経験があり、長年その由来と性質に関心を寄せてきた新谷さんは「Rickの言うとおり、シオンAster tataricusより倒れにくく育てやすいうえ、野の趣がいいなと感じた」と、その魅力を語ります。 「私が実際に見たシカゴ・ボタニック・ガーデンのアスター‘ジンダイ’(上写真)は、背景にあるカラマグロスティス‘カール・フォースター’より低い草丈(130〜140cm)であると分かります。草丈や花色は、気候の違いによっても差が出ますが、シカゴ・ボタニック・ガーデンで見たときは寒暖差のある秋で、湿度が高くない状態で、北海道の秋とも少し似ているような気候でした。 シカゴ・ボタニック・ガーデン内の「GARDENS OF THE GREAT BASIN」と呼ばれる6つの庭で構成された一大エリアに開花するAster tataricus 'Jindai'。 2019年10月25日撮影。撮影/新谷みどり 昼夜の寒暖差が大きくなると、それまでの季節より花色が濃くなっていくことは植物では珍しいことではないため、アスター‘ジンダイ’の本当の性質は、本州の高温多湿な温暖地と北海道の寒冷地の両方でテスト栽培をしてみなければ判断できないと考えています。 そして、Aster 'Jindai'の物語が判明した今、何よりも私が一番育てたいのは、日本のダルマシオンにほかなりません。アメリカのプランツマンを魅了した日本の植物が絶えることのないよう、植物への思いに満ちた園芸愛好家ならば誰もが手に入れることのできるようになることを願っています。それこそがアスター‘ジンダイ’に注目した当時のRickの使命であり、Aster tataricus 'Jindai'の故郷である日本として見習うべきことだと思います」 海外で撮影された、霜をまとうアスター‘ジンダイ’。Wiert nieuman/Shutterstock.com 今、里帰りして初めて開花したアスター‘ジンダイ’が、第2回 東京パークガーデンアワードのコンテスト会場である神代植物公園、正門手前のプロムナードで秋のガーデンに彩りを添えています。さらに咲き進み、冬が近づくと、綿毛をまとったタネの姿もオーナメンタルに活躍するのではと期待されています。ぜひ、ガーデナーが注目する宿根草、アスター‘ジンダイ’の様子をご覧に、お出かけください。 アスター‘ジンダイ’が育つコンテストガーデンを見に行こう! Information 都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)開園時間:9:30〜17:00(入園は16:00まで)休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。