- TOP
- ガーデン&ショップ
-
神奈川県
宿根草とグラスの美しいハーモニーで話題のガーデン「服部牧場」を訪ねる
初夏の服部牧場を訪ねて 左から時計回りに、クナウティア、ルドベキア・ゴールドスターム(黄花)、アスチルベ、ヘメロカリス・クリムゾンパイレーツ(中央赤花)、銅葉のニューサイラン、クナウティア・マケドニカ(赤い小花)、スティパ・テヌイッシマ、ヤブカンゾウ(ニューサイラン手前のオレンジの花)、バーベナ・ボナリエンシス(淡紫の背の高い植物)。 ガーデンストーリーで服部牧場を紹介した最初の記事は、2020年1月に公開しました(前回記事はこちら)。ついこの間くらいに思っていたら、もう3年半の月日が経っていました。前回は、晩秋から初冬のグラスや宿根草の枯れ姿を中心に紹介していましたが、今回は今年2023年6月後半に訪ねた、さまざまな花が生き生きと咲き乱れる彩りがあり美しい服部牧場の紹介です。 左からヘメロカリス・ベラルゴシ(赤花)、アキレア(白)、ベルケア・パープレア(淡いピンクの花)、ダリア・サックルピコ(ヘメロカリス上のオレンジ)が左ボーダーの彩りに。小道奥で黄色く輝く葉は、ニセアカシアフリーシア、その左で丈高く茂るのはバーノニア。右手前では、バーベナ・ボナリエンシスが咲き、奥の銅葉のニューサイランの手前で、赤花のポンポン咲きダリア・サックルバーミリオンがアクセントに。 グラスがいい仕事をするガーデン 左下から時計回りに、スティパ・テヌイッシマ、フクシア・マジェラニカ(赤花でつり下がった形状)、銅葉のニューサイラン、アメリカテマリシモツケ‘サマーワイン’(銅葉の木)ホルディウム・ジュバタム(中央の生成り色のグラス)、ルドベキア・マキシマ(右上背の高い黄花)、フロックス‘レッドライディングフット’(赤ピンク花)、ヘメロカリス(桃色花)。 思い起こせば、3年前の僕は“グラスを多用したガーデン”こそが新しいガーデンの形だと信じ、夕陽に輝くグラスやシードヘッドの写真ばかり追い求めていました。グラスが多数植栽されているこのガーデンにも何回も足を運んだものです。 左下から時計回りに、バーベナ・ボナリエンシス、バーベナ‘バンプトン’(ボナリエンシスの株元のこんもり姿)、ダリア‘サックルブリリアントオレンジ’(ポンポンダリア)、ダリア‘サックルコーラル’(隣のポンポンダリアの赤)、スティパ・テヌイッシマ、アガスターシェ・ルゴサ・アルビフローラ(スティパの上に写る縦長の花穂)フロックス‘ブライトアイズ’(ピンク)、ミソハギ(ピンクのフロックスの後ろに写る縦の紫色の花穂)、クロコスミア‘ルシファー’(ミソハギの後ろ)、カライトソウ(中央ピンクの垂れ下がる花穂)、アメリカテマリシモツケ‘ディアボロ’(右上端の銅葉の木)、フロックス‘ブルーパラダイス’(右側中段の横に広がる紫の花)。手前で2本の花穂が上がるアカンサス・スピノサス‘レディムーア’がこのコーナーを印象付けている。 秋から冬にかけてこのガーデンを訪れた際は、グラスの美しいシーンをカメラに収めることで満足していましたが、やがて季節が変わり、春から夏になるとグラス類に変わって宿根草たちがこのガーデンの主役となっていました。 左/上からアリウム‘サマードラマー’、ダリア‘ミズノアール’、ユーパトリウム・アトロプルプレウム(右上)、ベロニカストラム‘ダイアナ’(白のとんがった花)、グラジオラス‘バックスター’、アスチルベ・プルプランツェ(右端のピンク花)、メリカ・キリアタ(手前下のグラス)。右/ベロニカストラム‘ダイアナ’、ユーパトリウム・アトロプルプレウム(左上)、奥の彩りは、ヘリオプシス‘サマーナイツ’(黄色)とダリア‘熱唱’(赤花)。 宿根草が生き生きと育つそのそばには、グラス類が存在しています。代わる代わる咲く宿根草の花々を引き立てる名脇役のグラスが組み合わされているからこそ美しいのだと、改めてこの庭に気付かせてもらったように思います。 カメラマンを唸らせる美しいガーデン 左下から時計回りに、アガスターシェ・ルゴサ・アルビフローラ(縦の花穂)、バーベナ・ハスタータ‘ピンクスパイヤー’、フロックス‘ブライトアイズ’(ピンク)、ダリア‘サックル・ルビー’(赤いポンポンダリア)、ミソハギ(サイロの屋根の下に写る縦の紫の花)、クロコスミア‘ルシファー’、カライトソウ(中央ピンクの垂れ下がる花穂)、ヘリオプシス‘サマーナイツ’(カライトソウの後方右に写る黄色)、アリウム‘サマードラマー’、ダリア‘ティトキポイント’(いろんなダリアが重なって写ってるが、一重のピンクで中央がオレンジっぽいダリア)、オレガノ‘ヘレンハウゼン’(カライトソウの手前右)、バーベナ‘バンプトン’(カライトソウ左下のふんわり姿)、カラミンサ(オレガノの手前)、ミューレンベルギア・カピラリス(手前右角に写るグラス)。 この多くの宿根草やグラス類をナチュラルに組み合わせて美しいシーンを作り、いくつも僕に見せてくれる“寝ても覚めてもガーデンと植物のことが気になってしまう”服部牧場のガーデナーである平栗智子さんは、僕のガーデンフォトの最良のパートナーだと感謝しています。 上左/ヘメロカリス‘ブラックアローヘッド’ 上中/下からダリア‘冬の星座’、ユーパトリウム‘アイボリータワー’、アリウム‘サマードラマー’、バーノニア 上右/エキナセア‘ミルクシェイク’ 下左/モナルダ・プンクタータ 下中/ベルケア・パープレア 下右/カライトソウとフロックス‘クレオパトラ’ ここでご覧いただいている写真は、伸び伸びと育った大型の植物をふんだんに使う“平栗智子流のガーデンデザイン”による、生命感溢れるシーンばかりの6月の服部牧場です。夕方の沈みかけた綺麗な光で思う存分撮影してきた大満足の写真満載です。 左下から奥の順に、エキナセア‘ピンクパッション’、トリトマ‘アイスクイーン’、スタキス、アスター‘アンレイズ’(緑色のこんもり姿)、パニカム‘ブルーダークネス’(アンレイズ左のグラス)、チダケサシ(アンレイズの後ろの淡いピンクの花穂)。右側、斑入りのフロックス‘ノーラレイ’とエキナセア、株元の丸葉は、ヒマラヤユキノシタ。 そして、各写真に添えられた解説は、平栗さんがこの写真を見ながら丁寧に品種名を書き出してくれたものです。この景色を作る鍵となる宿根草の具体的な品種名の数々は、ガーデンラバーズさんにとって最良のテキストになると思います。この記事で服部牧場の魅力の秘密が伝わることを期待しています。
-
スウェーデン
【北欧の美しい暮らし】カール&カーリン・ラーションの家と庭
スウェーデンを代表する芸術家が残した家と庭 19世紀から20世紀にかけて活躍した画家カール・ラーション(1853-1919)は、スウェーデンを代表する国民的な芸術家。そして彼が妻カーリンと7人の子どもたちと暮らした家と庭、リラ・ヒュットネース(Lilla Hyttnäs、岬の小さな精錬小屋の意)は、現代に続く北欧スタイルのインテリアデザインにも大きな影響を与えた、理想の美しい暮らしの場として知られます。 このリラ・ヒュットネースがあるのは、湖と森の風光明媚な自然に恵まれたスウェーデン中部、ダーラナ地方の小さな村スンドボーン。現在はカール・ラーション記念館となって公開されています(家の中は予約制のガイドツアーのみで見学可能)。 芸術家カップルの理想の暮らしの場 カールの妻カーリンも元々は画家であり、2人はフランス留学中に出会って恋に落ち、結婚。スウェーデンに戻ったのちには、7人の子どもたちとともに1888年よりカーリンの父から譲られたこの家に住まうことになります。そして、1837年に建てられたスウェーデンの伝統的な木造家屋にコツコツとリノベーションを重ねた彼らの創造性が溢れる室内装飾は、現在に続く北欧スタイル・インテリアデザインの元祖となりました。 子育てのために絵筆を置いたカーリンでしたが、伝統的なテキスタイルなどの手仕事に、アール・ヌーヴォーなどの当時最新のデザイン傾向を合わせて、家族との暮らしのための家具やテキスタイルのデザインにその才能を開花させます。 室内は、当時さながらの可愛いカーリン・デザインのドレスの女の子が案内してくれるガイドツアーで見学できるものの、写真撮影は不可なのが残念。しかしじつは、カールが家族の暮らしの様子を描き、大人気となった画集「わたしの家」から、現在も残される家の様子をそのまま知ることができます。 「わたしの家」 1895年制作, Our Home (メシュエン・チルドレンズ・ブックス, 1976年)より ※カール・ラーション『わたしの家』オリジナルの画集は1899年出版 美しく静謐な自然に囲まれた家は芸術家の制作にふさわしい場所で、多くの近隣の風景が次々とカールの作品の中に描かれました。しかし、長雨が続き戸外制作ができなかったある夏、家の中を描いたら? というカーリンの発案から生まれたのが、画集『わたしの家(Ett hem/ Our Home)』でした。 1895年制作, Our Home (メシュエン・チルドレンズ・ブックス, 1976年)より 明るい色合いで繊細に描かれた暮らしの風景は、朗らかな歌声が聞こえてきそうなほどに、あたたかな彼らの暮らしの様子を生き生きと伝えます。インテリアや服装のディテールまでが仔細な描写で描かれ、今でもお家のインテリアに取り込みたいような可愛いアイデアが詰まった本です。また、スウェーデンの家庭の季節行事などの様子にも興味深々です。 「家」と「庭」がつくる家庭 カール・ラーション《大きな白樺の下での朝食》 1896年 画集の中には、家族全員が庭のシラカバの木の下の大きなテーブルで朝食を摂っているシーンがあります。「家庭」という語が「家」と「庭」で構成されるのには、さまざまな意味で説得力を感じているのですが、特に夏は庭で過ごす時間も長かった彼らの暮らしにとって、庭は不可欠な、大切な存在でした。 画集に描かれたラーション家の庭のガーデナーは、妻であり母であった芸術家カーリンです。 当時の最新流行だったイギリスのコテージガーデン風をよりシンプルにアレンジした庭は、湖と森に囲まれた周囲の風景と、ファールン・レッドが基調の木造家屋を程よくシームレスに繋ぎ、子どもたちが芝の上で遊び回ったり、家族で食事をしたりお茶を飲んだりするのに、とても居心地のよい、緑の暮らしの空間だったことでしょう。 現在は記念館を運営する財団のスタッフの方々が、当時の面影をなるべくとどめるような形で庭の管理をしているそうです。 湖畔の庭のチャームポイントは、眺めとガーデン・ファニチャー 庭の最大のチャームポイントは、なんといってもダイレクトに面した湖畔の眺め。白い桟橋から眺める対岸の風景とキラキラ輝き変化する水面の様子は、穏やかな心休まる美しさ。 また、彼ららしさが表れるのは、庭のそこかしこでフォーカルポイントにもなっているオリジナルのガーデン・ファニチャー。水辺の大きな柳の木の側には、ファールンレッドの椅子とテーブル、湖を眺める半円形の白いベンチのコーナーなど、彼らがデザインした素朴なあたたかさと機能性を合わせ持った木製のガーデン・ファニチャーは、タイムレスな北欧スタイルのお手本です。 湖畔を眺める半円形のベンチ。 北欧の春は遅く、訪問した5月中旬のタイミングのボーダー植栽の植物たちは、やっと芽を出したばかりといったところで、花咲き乱れる姿を見ることはできませんでしたが、軽やかに揺れる柳の木の爽やかな新緑や、リンゴやリラなど果樹や花木の花が咲き、もう、それだけでとても魅力的です。 ファールンレッドの犬小屋もかわいい。 庭の外柵の細い丸太を斜めに使った形は、ダーラナ地方の農場などでも多く使われる、この地方特有のスタイル。 地元食材レストランのランチタイム 庭は自由に散策でき、いつまでもいることができます。これでお茶でもできれば最高! なのですが、残念ながらカフェなどは併設されておらず……と思いきや、すぐ隣にテラスのある地元の食材を使った自然派レストランを発見。 ランチタイムには、食べ放題のビュッフェ形式で野菜豊富なさまざまな郷土料理からデザートまでがサーヴされます。テラスでいただいたお料理は、ホッとする素朴な美味しさ。シナモンロールとコーヒーでフィーカ(おやつタイム)も楽しめます。 カーリンのデザイン作品の展示 スンドボーンの村を5分ほど歩くと、ギャラリーに到着。村の中も牧歌的。 また、スンドボーン村内のラーション家の住まいの近隣に増設されたギャラリーでは、カーリンのデザイン作品の展覧会が開催中で、カーリンがデザインしたさまざまなファニチャーやテキスタイルのリプロダクトが展示されており、彼らの美しい暮らしの世界観にたっぷり浸ることができます。 ギャラリー入り口。 展示風景の例。 絵画に描かれていた窓辺のシェルフも展示されていました。左/1912年制作、 スウェーデンの国民画家 カール・ラーション展 (読売新聞社/美術館連絡協議会, 1994年)より ミュージアムショップも充実。 自然の中の、北欧の美しい暮らしの世界 豊かな自然と庭に囲まれたラーション家の丁寧な美しい暮らしの様子は、隅々まで美意識を感じる、しかし気取らず素朴な、どこか懐かしく温かな記憶を呼び覚ますよう。今でも、1世紀以上を経たとも思われないような、タイムレスな魅力に満ちています。
-
ドイツ
ドイツ・マンハイムで開催中! ドイツ最大のガーデンショーをレポート! 2
BUGA2023の体験レポート第2弾! Daniela Baumann/Shutterstock.com 現在ドイツ・マンハイムで開催中のドイツ最大のガーデンイベント、BUNDESGARTENSCHAU(BUGA)。BUGA2023は、マンハイム市とその周辺地域における持続可能な生活の質とライフスタイルを向上させることをコンセプトに行われていて、178日間という長期の開催期間中には、さまざまなテーマのガーデンが見られることに加え、フラワーショーや文化交流、レジャーやスポーツといったアクティビティーなど5,000以上のイベントも企画されています。 ちなみにBUGAは2年に1度、ドイツのどこかの街で開催されるのですが、今回BUGAの会場となったマンハイムには、BUGAのエリアのほかにも魅力的なガーデンがあります。例えばオーグステンパークのウォータータワー。今回宿泊した、BUGAの会場から徒歩10分ほどのホテルの目の前にあり、BUGAへ向かうまでにも。楽しい時間を過ごすことができました。 BUGA2023のもう一つのエリア、スピネッリパークへ BUGA2023の会場には、大きく分けてルイーゼンパークとスピネッリパークの2つのエリアがあります。ルイーゼンパークをご紹介した前回に続き、第2回となる今回は、前回はご紹介できなかったスピネッリパークをご案内しましょう。 Daniela Baumann/Shutterstock.com 印象的で魅力的なBUGAの前半部分で、大きな木々やしっかりした植物、多くの建物があるルイーゼン公園をしっかり堪能した後、ケーブルカーに乗っていざスピネッリパークへ。ネッカー川にかかるこのケーブルカーが、ルイーゼンパークとスピネッリパークを結んでいます。ケーブルカーからは市民農園やネッカー川、古い農家の建物とたくさんの野菜畑があるロマンチックな農場、本物の芝生の上に大きなサッカー場があるスポーツエリア、小麦畑を一望でき、美しい景色を眺めながらBUGAの会場を巡ることができます。空中の旅を楽しみながら、7分ほどで広く開けた目的地に到着。遠く離れたコーナーにマンハイム・タワーが見え、他の方角には片側にネッカー川が、その反対側にはマンハイムの住人のための高層居住区があります。BUGAのケーブルカーのよい所は、ケーブルカー料金が既に入場料金に含まれていること! 歩き疲れた後にぴったりですし、ケーブルカーに乗るだけでも楽しいので、もしもっと時間があったら、もう一度乗りたいくらいでした。 Ingrid Balabanova/Shutterstock.com スピネッリパークの8つのエリア Daniela Baumann/Shutterstock.com スピネッリパークはかつての軍事基地跡地の、およそ80ヘクタールの敷地につくられたガーデンです。建物のいくつかは保存され、カラフルな花や展示のための場所としてリモデルされて利用されています。スピネッリパークのエリアをご案内しましょう。 1.ウェルカムエリア Daniela Baumann/Shutterstock.com ここでは、シャトルバスや公共交通機関、自転車、徒歩などで南エントランスから入場してきた人々を迎えます。南ウェルカムガーデンには、気候耐性の強いムギワラギクやサルビア類、スターチス、ユーフォルビアの仲間などを生かしたボーダーガーデンがあり、ジニアやケシの花が咲くエリアもありました。 乾燥や直射日光に強く、種類豊富なユーフォルビア。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Vazquez, Domingo カサカサとした花弁のムギワラギクとカラフルなチガヤの組み合わせ。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich カラフルな花を咲かせるケシ。日本でもよく栽培される花ですが、品種によっては日本で栽培が禁止されているものもあります。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Mann, Dirk 2.U-HALL Ingrid Balabanova/Shutterstock.com 21,000㎡のエリアに19の小さなホールが、アルファベットのUの形に並ぶこのエリアが、BUGAの中心部。その形から、U-HALLと呼ばれています。 フラワーショーの中でも重要なハートピースで、さまざまなテーマのホールはクリエイティブで見るべきものがたくさんあり、天気が悪い日にゆっくり楽しむのにも最適です。休憩スペースやグルメも充実していますよ。 U-Hallの周囲には、武骨な建造物をカバーするつる植物がたくさん植わり、グラス類やさまざまなサイズのワイルドフラワーも植栽されています。 クレマチスなどのつる植物は構造物のカバーにぴったり。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Niemela, Brigitte 細長い葉が周囲の花を引き立てるグラス類。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich フラワーショーやガーデンなど屋外の空間は、天気や訪れるタイミングによって印象が大きく異なるものです。私の知人の一人、花やガーデンの愛好家が、春にBUGAを訪れたそうなのですが、彼女の感想は私のものとは全く違いました。まだ植物が小さかったため、全体に植物の量が少なく見えて、あまり満足できなかったそうです。 株もまだ小さい春の庭は、花が咲いていても少し寂しい印象も。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich 植物にとっては太陽光や暖かさ、十分な水と時間がパフォーマンスを発揮するために必要ですが、春はまだ気温が上がらず、水が不足することもあって、春のガーデンで生き生きとした植物たちの姿を見るのはなかなか難しいもの。そのため、彼女の印象は私とは異なるものになったのでしょう。 頼りなかった苗も、夏にはしっかりと茂ってくれます。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich 幸い、私が訪れた時期は、少々暑すぎではあったものの、ベストな天候の時期。植物たちはよく管理されて最盛期の姿を見せてくれました。 3.トライアルエリア トライアルエリアでは、BUGAの4つのメインテーマである、気候、環境、エネルギー、食料安全保障をテーマにした展示が見られます。 4.SDGsガーデン いまやSDGsに配慮することはすっかり定着しましたが、BUGA2023でもSDGsは重要な課題。ここでは、17のトライアルガーデンが、それぞれSDGsの17のゴールを表しています。それぞれのガーデンルームはブナの生け垣で区切られていて、テーマとなったSDGsの目標とガーデンの解釈についての説明がイラストを用いて示されています。例えば「健康」のテーマは、ハーブガーデンで表現。時にはポイントを理解するのに相当想像力をたくましくさせなくてはいけないこともあります。 5.未来の木 ナーセリーのように長い列になって木々が並ぶエリア。これらの木は、BUGAの終了後には市全体に植えられる予定です。 6.クライメイトパーク スピネッリパークの中にある、およそ62ヘクタールの広大なクライメイトパークは、新鮮な空気が感じられる都会のオアシスでもあります。都市の気候を大幅に改善し、都市住民に広々としたオープンスペースを与えてくれる場所です。このエリアの一角は、いわゆるステップ地帯風になっていて、栄養の乏しい草原を再現していますが、その部分は野生生物、昆虫、トカゲ、その他の小動物にとっても重要な場所になっています。 Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Wothe, Konrad 7. パノラマビュースポット 川にかかる長さ81m、高さ12mの錆びた赤い展望台は、一見橋のように見えますが、川の上で終わっています。そこからは、下の湿地帯と遠く離れた街のスカイラインを眺めることができる、素晴らしいビュースポットになっています。 8.遊びとウェルネスエリア Daniela Baumann/Shutterstock.com アパートとスピネッリ公園の間にある都市の住居エリアの隣には、たくさんの屋外遊戯スペースを備えた子供向けのエリアが。できたばかりなので、まだ木陰もほとんどありませんが、年々改善されて、そこに住む家庭にとっては大きなメリットになることでしょう。広々としていて空気も美味しいので、トレーニングに励むのもいいですね。 Daniela Baumann/Shutterstock.com 他にも楽しい場所がいろいろ! こうした数々のガーデンアイデアの中で、最も印象に残ったのが、サンプルガーデンで見つけたプール! 土を掘ってつくった美しい楕円形の低いプールの周囲には、グラスを取り入れた宿根草ボーダーガーデンが広がり、温暖な気候らしい雰囲気が漂います。プールを見渡すウッドデッキには、広々とした日よけと快適なデッキチェアが備え付けられ、着替えもできる小さな可愛い小屋も魅力的です。 若者や年配の訪問者がプールに挑戦したり、水温をチェックしたりしている姿を眺めながら、何時間でも過ごせそうでした。このプールのトリッキーで面白い点は、形が正方形で均一な深さではなく、端がわずかにアーチ状になっており、中にいるときにバランスを崩す人が続出していたこと。10 代ぐらいの少年 4 人のグループは最終的にかなり濡れてしまい、そのうちの 1 人は完全に水の中に浸かってしまっていました。天気もよかったし、引率の先生が怒る様子もなかったのでよかったです。 小さな足湯に入っている人もいて、皆、とても幸せそうでした。隣にあった3つのデッキチェアもすぐに埋まり、その人たちと会話が生まれて、素敵な時間を過ごすことができました。 Daniela Baumann/Shutterstock.com BUGA2023のお気に入りのポイントは、芝生などどこにでもスチール製や木製の、休憩用の椅子やベンチが豊富にあったことです。こうした場所があると、広いガーデンを歩き回った後に、ちょっと一息つくことができますね。 こうして何時間も歩いた後、スピネッリ公園のエリアを一周する小さな「パークトレイン」に乗る機会がありました。電車の中ではまたしても、スイスから来たカップルと会話が生まれ、この素晴らしい場所の感想を交換することができ、楽しい時間になりました。 ガーデンショーにいってみよう Ingrid Balabanova/Shutterstock.com こうした国立のガーデンショーは都市の発展にとって非常に重要かつ不可欠であり、植物や自然と触れるショーケースになっています。 何年にもわたるガーデン巡りの中で、すでにいろいろなガーデンショーを訪れていますが、それぞれに独自の魅力ポイントがあり、毎回、たくさんの刺激と新しいアイデアをもらうことができる場です。 ぜひ、植物に興味のある友人と一緒に訪問し、時間をたっぷり使って、会場に向かう時間から楽しんでみてはいかがでしょう。大抵のガーデンイベントは敷地が広いので、楽しむためには十分な休憩も欠かせません。また、一年の中で適切な季節、あなたの好きな季節や天候も考慮して訪れる日程を決めるのがおすすめです。 今回の私の訪問は夏のピーク。幸運にも一年で最高の季節で、この素晴らしくて幸せなイベントを堪能することができました。ぜひ皆さんも、いろいろなガーデンイベントを訪問してみてくださいね。
-
東京都
都立公園を花の魅力で彩る画期的コンテスト「東京パークガーデンアワード@代々木公園」は夏花開花中!
日々成長するコンテストガーデンは「代々木公園」で毎日見学可能 コンテストガーデンとモデルガーデンがあるのは、JR山手線「原宿」駅から徒歩3分の「都立代々木公園」の中。原宿門から入ってすぐ右手の「オリンピック記念宿舎前広場」です。敷地の奥は、緑深い明治神宮の森が背景となり、右手から日が昇る日当たりがよい開けた場所。かつては陸軍代々木練兵場だったところで、その後はワシントンハイツ、東京オリンピックの選手村と時代とともに変遷しましたが、「オリンピック記念宿舎」として今も保存されています。 「オリンピック記念宿舎」までの通路沿いの左右に、5つのガーデンが作られています。右奥の広場には、吉谷桂子さんによるモデルガーデン「the cloud」も公開中。8月中旬の様子。 「第1回 東京パークガーデンアワード」の最大の特徴は、主に宿根草などを取り入れた「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマとする点。一度植え付けて根付いたあとは、最小限の手入れで維持されること、また同時にデザイン性と植物や栽培環境に対する高度な知識が求められる、新スタイルのガーデンコンテストです。 コンテストガーデンが作られている敷地の平面図。A〜Eの各面積は約72〜85㎡ 。どのエリアでガーデンを制作するかは、11月に抽選により決定しました。 ここでテーマとなる「ロングライフ・ローメンテナンスな花壇」とは、季節ごとの植え替えをせずに、丈夫で長生きな宿根草や球根植物を中心に使って、植えっぱなしで、異なる季節に開花の彩りが楽しめる花壇のこと。2022年10月に5つのデザインの作庭が決定し、同年12月上旬にはそれぞれの区画で1回目の土づくりと植え付けが完了しました。 <News>第2回参加者募集&オンラインイベント開催 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物園」の参加者の募集がスタートしています! 代々木公園での第1回開催に続き、第2回のコンテストの舞台は、都立神代植物公園正門手前プロムナード[無料区域](調布市深大寺)。コンテストのテーマは「武蔵野の“くさはら”」です。応募の締め切りは、2023年9月1日(金)必着。応募方法など詳細はこちら 第1回東京パークガーデンアワードの入賞者によるオンライン座談会 「第1回 東京パークガーデンアワード 代々木公園」の入賞者5名が登壇。応募に向けた準備や植物の調達から造園、メンテナンスまで、現場の“生”の声が聞ける座談会が2023年8月10日(木)にオンラインで開催されました。ご視聴はこちらから。 「第1回 東京パークガーデンアワード」グランプリは11月上旬に決定! 2022年12月に行われた5つのガーデン制作に関わった皆さん。審査委員の正木覚さんと吉谷桂子さんを囲んで。 【第1回 東京パークガーデンアワード in 代々木公園 最終審査までのスケジュール】 2022年10月20日 応募締め切り10月31日 書類による本審査 5名の参加者決定12月5〜9日 参加者によるガーデン制作①2023年2月27日〜3月3日 参加者によるガーデン制作②4月 ショーアップ審査(春の見ごろを迎えた観賞性を審査)7月 サステナブル審査(梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査)11月上旬 ファイナル審査(秋の見ごろの観賞性と年間の管理状況を審査)全3回の審査を踏まえ、総合評価のうえ、グランプリ・準グランプリ・特別審査委員賞の決定11月 審査結果の発表・表彰式 「第1回 東京パークガーデンアワード」は、5名の参加者決定から最終審査の結果発表まで1年かけて行われる、新しい試みのコンテストです。現在、12月の1回目のガーデン制作に続き、2月下旬の2回目の植え付けや手入れが終了。4月に「ショーアップ審査」、7月に「サステナブル審査」を終え、次回は、秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する「ファイナル審査」が11月に予定されています。季節の変化に合わせて日々成長する今後の庭にもご期待ください。 左上下/4月の「ショーアップ審査」の様子。右上下/7月の「サステナブル審査」の様子。 Pick up 8月の植物の様子 左から/ペニセタム‘テールフェザー’(Aエリア)/ヘレニウム’レッドシェード’(Aエリア)/バーノニア・ファスキクラータ(Bエリア)/ユーパトリウム‘レッドドワーフ’(Bエリア) 左から/リアトリス・スカリオサ ‘アルバ’(Cエリア)/ルドベキア・サブトメントーサ‘ヘンリーアイラーズ’(Dエリア) /アリウム’サマービューティ’(Eエリア) /アネモネ・トメントーサ(モデルガーデン) Pick up 7月の植物の様子 左から/フロックス‘フジヤマ’(Aエリア)/ヒオウギ‘ゴーンウィズザウィンド’(Bエリア)/アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’(Bエリア)/エキナセア‘バージン’(Cエリア) 左から/カンナ(Dエリア)/アメリカフヨウ(Dエリア)/エキノプス‘プラチナムブルー’( Eエリア) /ヘリオプシス’ブリーディングハーツ’ (Eエリア) Pick up 6月の植物の様子 左から/サルビア・ウルギノーサ(Aエリア)/エキナセア‘ラズベリートリュフ’(Aエリア)/アキレア‘ウォルターフンク’(Bエリア)/フロックス‘ブライトアイズ’(Bエリア) 左から/リアトリス‘コボルト’(Cエリア)/ラティビタ ‘レッドミジェット’(Cエリア)/ポピーマロウ(Dエリア)/ポンポン咲きダリア( Eエリア) Pick up 5月の植物の様子 左から/エレムルス‘ロマンス’(Aエリア)/クニフォフィア・シトリナ(Aエリア)/ダウクス・カロタ‘ダラ’(Bエリア)/クラスペディア・グロボーサ(Bエリア) 左から/エリンジウム‘ブルーグリッター’(Cエリア)/リクニス・コロナリア(Dエリア)/ホルデューム・ジュバタム(Eエリア)/カンパニュラ‘サマータイムブルース’(モデルガーデン) Pick up 4月の植物の様子 左から/ユーフォルビア・ウルフェニー(Aエリア)/フリチラリア・エルウェシー(Bエリア)/ラナンキュラス・ラックス‘アリアドネ’(Bエリア)/アジュガ'チョコチップ’(Cエリア) 左から/フロックス・ピロサ(Dエリア)/エリゲロン・カルビンスキアヌス(Dエリア)/アリウム・シルバースプリング(Eエリア)/アリム‘パープル・レイン’(モデルガーデン) Pick up 3月の植物の様子 左から/アネモネ・デカン(Aエリア)/スイセン 'ペーパーホワイト’(Bエリア)/フリチラリア‘ラッデアナ’(Bエリア)/イベリス(Cエリア) 左から/サルビア・ネモローサ(Dエリア)/ベロニカ‘オックスフォードブルー’(Eエリア)/イフェイオン‘アルバートキャスティロ’(モデルガーデン)/シラー・シビリカ(モデルガーデン) Pick up 2月の植物の様子 左から/スイセン‘ティタティタ’(モデルガーデン)/アリウム 'シルバースプリング’(Aエリア)/ユーフォルビア ウルフェニー(Aエリア)/カレックス テヌイクルミス(Bエリア) 左から/アジュガ レプタンス(Cエリア)/リナリア プルプレア 'アルバ' (Cエリア)/ガウラ リンドヘイメリ ’クールブリーズ'(Dエリア)/アリウム ‘サマードラマー’(Eエリア) Pick up 1月の植物の様子 左から/アネモネ(エントランス花壇)/パンパスグラス‘タイニーパンパ’(エントランス花壇)/スティパ・イチュー(Aエリア)/苗から植え付けたアリウム‘サマードラマー’(Bエリア) 左から/レモンバームやオレガノ'ヘレンハウゼン’、 'ノートンゴールド’など(Cエリア)/ユーフォルビア‘ブラックバード’(Dエリア)/エルサレムセージ(Dエリア)/ニューサイラン(Eエリア) 全国から選ばれた5人のガーデンコンセプト 「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマに、各ガーデナーが提案するガーデンコンセプトは、5人5様。それぞれが目指す庭のコンセプトや図面、植物リストの一部をご紹介します(応募時に提出された創作意図や植物リストを抜粋してご紹介)。 コンテストガーデンAChanging Park Garden ~変わりゆく時・四季・時代とともに~ 【作品のテーマ・創作意図】時間や四季の移ろいと共にドラマチックに展開する宿根草ガーデンは見る人の心を豊かにします。たとえば秋の夕景は、光が植物たちの魅力をいっそう引き出してくれる、もっとも美しい時間でしょう。公園の緑花空間は、来園者に感動や癒やしを提供する場所であり、さらに植物を通してコミュニティが生まれ「共感」の時代へと変化しつつあります。人々に愛される場所であることが真の持続可能なガーデンとなるのではないでしょうか。さまざまな意味で変化する公園のガーデン≪Changing Park Garden≫をテーマに、◆Chillax (チラックス) ◆Community(コミュニティ) ◆Challenge(チャレンジ)3つの「C」をコンセプトにガーデンデザインを計画します。【主な植物リスト】サルビアネモローサ カラドンナ/ユーフォルビア ウルフェニー/エキナセア パープレア/アガスターシェ ゴールデンジュビリー/ネペタ シックスヒルズジャイアント/ヘリオプシス ブリーディングハーツ/サルビア ミスティックスパイヤーズ/アジュガ ディキシーチップ/ペニセタム ビロサム/カレックス フェニックスグリーン/ペニセタム テールフェザー/アリウム イエローファンタジー など 合計84種 コンテストガーデンA 月々の変化 【8月中旬】 7月から穂が伸び始めたペニセタム‘テールフェザー’(上写真右側)が大株に育ち存在感を発揮しています。6月から引き続き咲き続けているサルビア‘ミスティック・スパイヤーズ’(下左)やバーベナ‘バンプトン’に加え、8月は、ヘレニウム’レッドシェード’(下中)が花束のようにダイナミックに咲き、夏に切り戻したベロニカ‘ファーストキス’(下右)が再び咲き始めています。 【7月中旬】 各株が大きくなり、混ざり合って茂る真夏。6月から引き続き咲き続けるスカビオサ・オクロレウカやサルビア‘ミスティック・スパイヤーズ’などに加え、メリカ・シリアタ(写真下左)スティパ・イチュー(写真下中)、ペニセタム‘テールフェザー’(写真下右)など、さまざまなグラスの穂が伸びていて、花壇に動きが感じられます。 【6月中旬】 植物の成長が進み、一つずつの植物のボリュームが増して緑の量も増えました。6月に開花が始まったエキナセアの鮮やかなピンク色の花にペニセタム・ピロサムの穂が寄り添っていたり、5月に白花を咲かせていたバレリアナ・オフィシナリスの花がらが雲のように優しい景色を作っています。サルビアの青花、ペニセタム・テールフェザーなどが丈高い植物が背景でスクリーンのようになり、アリウムが宙に浮かんでアクセントになっています。 【5月中旬】 5月になると一気に成長が進み、まったく地面が見えないほど、どの植物もボリュームアップ。4月中旬に花壇のフレームからはみ出すほど成長していたスタキス ビザンティナ(右下)は、花穂を立ち上げ、周囲の植物と色の対比を見せています。花壇の後方では、白花のバレリアナ・オフィシナリスやエレムルスが背丈ほどに伸び、景色が立体的になりました。 【4月中旬】 3月に咲き始めたアネモネ・デカンは、まだまだ花数を増やし、他の植物も2倍、3倍と草丈が高くボリュームが増してきました。スタキス・ビザンティナ(英名ラムズイヤー、右下)は、花壇のフレームからはみ出るほどに葉を伸ばし、アリウムにはつぼみがついています。葉の形状の違いや草丈の差が出て、花壇が立体的になってきました。 【3月中旬】 アネモネ・デカンの葉が増え、白・紫・赤・ピンクとカラフルに花が咲き出しています。また、原種チューリップ‘ポリクロマ’も開花中。スタキス・ビザンティナやアリウム 'シルバースプリング’、ユーフォルビア ウルフェニーも存在感を増し、緑の量が日に日に増えています。 【2月中旬】 斑入り葉のカレックス・オシメンシスや黄金葉のカレックス‘ジェネキーが日に輝くなか、サルビア・ネモローサ‘カラドンナ’やスカビオサ・オクロレウカ、スタキス・ビザンティナなどが地面に張り付くように葉を広げています。 【1月中旬】 コンテストガーデンBLayered Beauty レイヤード・ビューティ 【作品のテーマ・創作意図】季節を感じる宿根草ガーデンを作るということは、さまざまなレイヤーを組み合わせて、美しさを構築するということだと考えています。<植物のレイヤー・時間差のレイヤー・バランスのレイヤー・地下部のレイヤー>これまで、多くのデザイナーやガーデナーとの交流の中で、どの植物がガーデンの中でどんな役割を果たしているか、また、どんな植物が耐久性があるのか、今後どういった植物を提案したらよいかなどについて蓄積してきた引き出しとアイデアがあり、それらを、今回提案できればと考えました。デザインにおいては、感性だけではなく、植物生産者としてサステナブルで、かつ美しく見える植栽の構築について理詰めでデザインする(=一般化できる)手法を取り入れ、その過程をオープンにできればと思っています。 【主な植物リスト】 <グラス類>パニカム チョコラータ/カラマグロスティス ブラキトリカ/ミスカンサス モーニングライト/ルズラ ニベア/スキザクリウム スモークシグナルなど <宿根草(高)>ユーパトリウム レッドドワーフ/パトリニア プンクティフローラ/ヒオウギ ゴーンウィズザウィンド/フィリペンデュラ ベヌスタなど <宿根草(中)>エキナセア(オレンジパッション、マグナス スーペリア他)/ヘリオプシス ブリーディングハーツ/アムソニア ストームクラウドなど <宿根草(低)>ゲウム マイタイ/アリウム(サマービューティ、イザベル、メデューサ)/ベロニカウォーターペリーブルー/カラミンサ ブルークラウドなど <日本由来の植物>イカリソウ(4-5種)/ヤマトラノオ/ノコンギク夕映/ユーパトリウム羽衣/シュウメイギク パミナなど <一年草・二年草>ラークスパー/アンスリスクス/アンミ/フロックス クリームブリュレ/タゲテス ミヌタ/クラスペディアなど <球根類>フリチラリア(ラッデアナ、ペルシカ、エルウェシー)/シラー ミスクトケンコアナ/クロッカス プリンスクラウス/ミニチューリップなど 合計142種 コンテストガーデンB 月々の変化 【8月中旬】 8月になると園路に沿ったの花壇の縁を隠すほどグラスの穂がふわふわと茂り、まるでスモークのよう。8月に咲き始めた多数のアリウム‘メデューサズヘア’(下左)やヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’(下右)、ガイラルディア‘グレープセンセーション’などが穂と混ざり合い、ユーモラスな景色が見られます。7月から涼しけなブルーの花が継続して咲いているアガスターシェ‘ブルーフォーチュン’は、突然の強い雨風や猛暑にも耐えて彩りに貢献しています。 【7月中旬】 5〜6月から咲き続けているダウクス・カロタ‘ダラ’やフロックス‘ブライトアイズ’、エキナセア‘ミニベル’に加え、7月は、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やアガスターシェ‘ブルーフォーチュン’が花を増やしています。花壇の中には、秋に向けてぐんぐん成長するものや、これから咲く蕾もスタンバイしています。 【6月中旬】 6月になると、エキナセア‘イブニンググロー’や‘ブルーベリーチーズケーキ’、アキレア‘アプリコットデライト’や‘ウォルターフンク’などの暖色系の花に主役がバトンタッチして、さまざまな色彩が楽しめます。間に茂る銅葉のアンスリスクス ‘レイヴンズウィング’によって花色が際立って見えたり(左下)、ゲラニウムの黄金色の葉にエキナセアが引き立って見える(右下)など、植物同士のコラボレーションが楽しめます。 【5月中旬】 4月中旬からアクセントになっていた大小さまざまなアリウムは、次の開花を迎えるアリウムとバトンタッチしながら、咲き終わってボール状の花がらのまま残っているなか、エリンジウム(右下)やクラスペディア・グロボーサなど、新しい花色が多数組み合わさって、場所ごとに異なるカラーハーモニーが楽しめます。花から種になるもの、蕾から花を咲かせるもの、いろいろな植物の姿が一緒に見られます。 【4月中旬】 12種も植えられていたチューリップは3月から順次咲き始めて、4月中旬までバトンタッチするように咲き継ぎました。4月中旬は、ラナンキュラス・ラックスやカマシア、アリウムの彩りが加わって一層華やかに。花壇の土を盛り上げた効果で、奥に咲く花の様子もよく見えます。 【3月中旬】 花壇手前には、ピンクやブルー、白のムスカリが次々と開花し、花壇中央では、スイセン‘ペーパーホワイト’が開花。黄花のミニチューリップ・シルベストリスも花束のように咲いています。アリウム・ギガンテウムは、葉をダイナミックに繁らせ、地面を隠すほどに成長。暖かい日が続いて、多くの植物が目覚めています。 【2月中旬】 苗から植え付けたアリウム‘サマードラマー’が前月よりも2倍の高さまで伸び、スイセン‘ペーパーホワイト’(左下写真中央)はつぼみが膨らんでいます。オーニソガラムやチューリップ、クロッカスなど、あちこちで芽吹きが確認できます。ふわふわと茶色の細葉を伸ばすのは、カレックス・テヌイクルミス。 【1月中旬】 コンテストガーデンCGarden Sensuous ガーデン センシュアス 【作品のテーマ・創作意図】私たちの感覚に訴えかけるガーデン、Garden Sensuous。日本の古の歌人・俳人たちは、森羅万象、感情の機微や情緒、美しい風景を歌に詠んできました。その美しさへの眼差しは自然環境への知見を踏まえた、高度に知的で文化的なものであったと考えられます。そしていま、これからの環境について考える場合、サステナブルやエシカルであることは、無視できないトピックです。サステナブルなガーデンであること、エシカルなガーデンであることが、人の感覚に訴えかける条件の一つであると考えます。また私たちの感覚に訴える美しさとはそういったものであって欲しい、という願いを込めてこの庭をデザインしました。【主な植物リスト】<Spring>アスチルベ/アガパンサス/ガウラ/カラミンサ<Summer>エキナセア/ヘレニウム/ルドベキア/ガイラルディア/アガスターシェ/ヘリオプシス/バーベナ/リアトリス<Autumn>オミナエシ/オトコエシ/フジバカマ<Ground cover>オレガノ/レモンバーム/ワイルドストロベリー<Grass 他>イトススキ/ペニセタム/フェンネル など 合計65種 コンテストガーデンC 月々の変化 【8月中旬】 7月から咲き続けているバーベナ・ボナリエンシスやオミナエシ、カラミンサ・ネペトイデス、エキナセアが彩る中で、花が終わったリアトリス‘フロリスタンホワイト’の長い花穂やエキナセアのシードヘッドがアクセントになっています。3月にシードボール(種団子)を播いて育ったアカジソの銅葉(上写真内右)やレモンバーム‘ゴールドリーフ’のライムグリーンの葉(下右)もガーデンの彩りに一役買っています。 【7月中旬】 5月までは場所が確認できていた4つのバグホテル(虫たちの住処になる場所)が隠れるほど各植物のボリュームが一層増して、花の彩りも豊かです。カラミンサ・ネペトイデスのような細かな花に対比して、エキナセアやガイラルディアの花が引き立ち、リアトリスやアガスターシェのような穂状の花もアクセントになっています。花壇の後方では、バーベナ・ボナリエンシスやオミナエシが丈高く開花。 【6月中旬】 各植物のボリュームが一段と増して、植物の高低差がリズミカルです。花々の中で昆虫が休んでいる様子が見られたり、花穂を伸ばす植物は風に揺れ、ワイルドストロベリーには赤い果実がなっています。この庭のテーマである「生き物たちの住処になる」ことや、風による動きや花や緑の香りを感じられたり、食べられるものも育つという「五感を刺激するガーデン」を花壇の中で実際に見ることができます。 【5月中旬】 地面がほぼ隠れるほど、どの植物も葉を増やし、ガウラやエキナセア・パラドクサ、アスチルベ、リナリアなどが開花して、花の彩りも増えています。花壇の後方では、グラスの穂が風に揺れたり、背丈より高く伸びたバーベナ・ボナリエンシスが紫の花を咲かせ、植物の高低差にリズムを感じます。2月下旬に設置されたバグホテル(虫たちの住処になる場所)が隠れるほど、周囲の植物がよく成長しています。 【4月中旬】 それぞれの植物が勢いよく成長し、イベリスの白い花とオレガノ 'ノートンゴールド’などの黄色い葉が明るいアクセントになっています。カラス除けとして刺さされていた枝は、丈高く育ってきた植物の支えに転用し、花壇の中で馴染んでいます。 【3月中旬】 2月下旬に設置されたバグホテル(虫たちの住み家になる場所)の周囲に植わるリナリア・プルプレア 'アルバ' がぐんぐん成長し、窪んだ低地では、アスチルベが存在感を出してきました。築山には、イベリスの白花やシラーの青花が彩りに。黄金葉のワイルドストロベリー 'ゴールデンアレキサンドリア’ にも花が見られます。 【2月中旬】 銅葉のガウラ 'フェアリーズソング’や黄金葉のワイルドストロベリー 'ゴールデンアレキサンドリア’、緑葉のシャスターデージー ’スノードリフト’が低く、地表に彩りを添えています。植物を守るように刺さる枝は、カラス除け。 【1月中旬】 コンテストガーデンDTOKYO NEO TROPIC トウキョウ ネオ トロピック 【作品のテーマ・創作意図】地球温暖化と共に東京で越冬するようになった亜熱帯植物を取り入れ、花壇をつくります。また「循環型再生管理」を目指し、維持管理の過程で発生する植物の発生材は現場で更新、循環するガーデンをつくります。亜熱帯植物が力強く越冬する姿から緑のうるおいとあわせ、環境への意識「地球温暖化への警鐘」のきっかけをつくります。そして、地球温暖化による気温上昇、豪雨などの異常気象が多発するなかで、改めて「植物」や「土」の環境改善の役割を見つめ直し、緑の大切さを発信します。【主な植物リスト】<PURPLE >アンドロポゴン‘ブラックホース’ /アスター‘レディーインブラック’ /リグラリア‘ミッドナイトレディ’/アルストロメリア‘インディアンサマー’/エンセテ‘マウエリー’/ユーホルビア ‘ブラックバード’/カレックス ‘プレーリーファイヤー’/リシマキア ‘ファイヤークラッカー’/パニカム ‘チョコラータ’/ニューサイラン ‘ピンクストライプ’/トラディスカンチア ‘ムラサキゴテン’/ダリア<SILVER>ルドベキア ‘マキシマ’/リクニス‘コロナリア’/アガベ ‘姫滝の白糸’/アガベ ‘ボッテリー’/ユーホルビア/スティパ/エルサレムセージ/パンパスグラス<GREEN>ユーパトリウム‘グリーンフェザー’/トリトマ ‘アイスクイーン’/アロエベラ/ナチシダ/アガパンサス/ストレリチア/ガウラ ‘クールブリーズ’/アスパラガス ‘マコワニー’/アガスターシェ ‘ブラックアダー’<YELLOW>ワイルドストロベリー ‘ゴールデン アレキサンドリア’/ジャスミン ‘フィオナサンライズ’/カンナ ‘ベンガルタイガー’<GROUND COVER>クリーピングタイム/エリゲロン/スイセン‘チタテート’/チューリップ‘タルダ’/ハナニラ/アリウム ‘サマービューティ’/ゼフィランサス/イベリス 合計40種 コンテストガーデンD 月々の変化 【8月中旬】 5〜6月から咲いているガウラやアガスターシェ、アルストロメリアに加え、7月に咲き始めたルドベキアが引き続き彩りになっている8月。パンパスグラスも大きな穂を立ち上げて、さらにガーデンに立体感が出てきました。ストレリチアが植わるウィーピングレイズドベッドでは、イポメアやベンガルヤハズカズラがフレームを覆い隠すほど旺盛に葉を増やして緑豊かです。 【7月中旬】 スティパの穂が風に揺れ、5〜6月から咲いているガウラやアガスターシェ、ポピーマロウ、トリトマ、アルストロメリアが引き続き咲き続けるなか、4種のルドベキアやダリアとクロコスミアの彩りも加わって鮮やかです。丸く剪定枝を積み重ね、落ち葉などを入れて堆肥を作るバイオネストの縁に、隣から伸びてきたベンガルヤハズカズラが絡んで花壇に馴染んでいます。 【6月中旬】 各植物がより一層茂ったことで、銀色がかる葉、青みがかる葉、銅色の葉など、葉色や草姿の違いが際立ってわかるようになってきました。6月は、トリトマやアルストロメリア‘インディアンサマー’のオレンジ色の花が鮮やかに引き立っています。「Look at me!」と記された札が立つウィービングレイズドベッドには、ワイルドストロベリーの茂みの中でパッションフルーツが丸い実をつけています。夏の日差しを受けて、花壇は日に日にトロピカルな雰囲気が増しています。 【5月中旬】 花壇の中に作られた9つある「ウィービングレイズドベッド」の中の植物も、枠からはみ出るほど成長し、レイズドベッドごとに異なる景色が楽しめます。植えつけ時期の3月は、とても小さかったエンセテ(左下中央)は、赤みを帯びた緑葉を大きく広げて存在感が日に日に増し、目を惹いています。尖った葉、ふわふわ茂る葉、這って広がる緑、ワイルドに育つさまざまな草姿の違いも注目のポイントです。 【4月中旬】 スイセンやチューリップは見頃を終え、桃色のフロックス・ピロサや青花のアジュガ・レプタンス、白花のイベリス・センペルビレンスが、花を増やし彩りを添えています。メシダ‘バーガンディレース’の葉の間に咲くのは、アネモネ・フルゲンス(右下)。マルバダケブキの間から丸いつぼみを伸ばしているのはアリウム・ニグラム(左下)。 【3月中旬】 これまで姿が見えていなかったスイセン‘ティタティタ’があちこちで芽吹き、ワイルドストロベリーやアガベ、エルサレムセージなど、周囲の植物たちと面白いコラボレーションを見せています。自然素材を使った「ウィービングレイズドベッド」に植えられた植物は地面よりも高い位置にあるので、植物の様子が近くに感じられます。銀色や銅色、斑入りなど、いろんな葉色が楽しめます。 【2月中旬】 12月の植え付け時から地上部が残っているパンパスグラスやエルサレムセージ、ユーフォルビアが寒さに耐えているなか、レイズドベッドに植わる植物が少しずつ芽吹き始めています。 【1月中旬】 コンテストガーデンEHARAJUKU 球ガーデン 【作品のテーマ・創作意図】初夏からのアリウム~秋のダリア を中心とした、球状の花の組み合わせでポップに楽しく魅せるガーデンです。アリウムはその形状が非常にユニークかつアート的で、原宿に集う人々のアンテナに触れる植物ではないでしょうか。ほかにも、エリンジウムやヘレニウム‘オータムロリポップ’、モナルダ、ニゲラの花後の球果など、観て楽しい植物で構成しました。また、秋のダリアはデスカンプシア‘ゴールドダウ’との合わせで、一見存在が浮いて見えてしまいがちなダリアを、幻想的に他の植物たちと融合させます。「球ガーデン」のネーミングは、某超有名ガーデンを原宿ならではの遊び心でもじらせていただきました。【主な植物リスト】アリウム/ダリア/エキナセア/モナルダ/ワレモコウ/ゲウム リバレ/ムスカリ/ニゲラ/カカリア/バーノニア/エリンジウム/ディアネラ/ユーパトリウム チョコレート/ヘレニウム オータムロリポップ/パニカム/ニューサイラン/カレックス/デスカンプシア ゴールドタウなど 合計88種 コンテストガーデンE 月々の変化 【8月中旬】 強い日差しを受けて輝くディスカンプシア‘ゴールドタウ’の穂が煙のように花壇全体に広がり、隣り合う植物の間を繋げています。穂に浮かび上がって見える球状花のエキノプス(右下)は、花後もガーデンのアクセントとして活躍。7月から咲き続けているオレンジ花のヘリオプシス’ブリーディングハーツ’やピンク花のガイラルディア‘グレープセンセーション’などが彩りになっているなか、サクシサ・プラテンシス(左下)が球状花として仲間入りしています。 【7月中旬】 6月から咲いているポンポンダリアやヘレニウム‘オータムロリポップ’、エキノプス‘プラチナムブルー’、スカビオサ・オクロレウカがさらに花数を増やす中、オレンジ花のヘリオプシス’ブリーディングハーツ’が咲き始めてさまざまな花色が楽しめます。株間から、ディスカンプシア‘ゴールドタウ’の穂が見え始め、次の季節へと成長を進めています。 【6月中旬】 5月は、アリウム・ギガンチウムやアリウム‘グレースフルビューティー’などが、この花壇のタイトル「HARAJUKU 球ガーデン」を表現していましたが、6月は、背丈を越すほどまで伸びたアリウム ‘サマードラマー’をはじめ、ポンポンダリアやヘレニウム‘オータムロリポップ’(下左)、エキノプス‘プラチナムブルー’(下中)、アリウム‘丹頂’(下右)などが球状花として花壇を彩り、にぎやかです。 【5月中旬】 花壇のタイトル「HARAJUKU 球ガーデン」を表現する球状の花の一つであるアリウムが5月上旬に多数開花。5月中旬になると残った丸い花がらが、ホルディウム・ジュパタムやスティパ‘エンジェルヘアー’などのグラス類の上に浮いているように見え、個性的な風景を作っています。花壇の後方では、背丈よりも大きく育ったバーベナ・ボナリエンシスと競うように丈高く伸びるアリウム ‘サマードラマー’の蕾がスタンバイ。球状の花の開花リレーが続きます。 【4月中旬】 さまざまなアリウムの葉の間をつなぐようにグラスの細葉が風に揺れるほど成長してきました。アリウムの中でいち早く、白花のアリウム・シルバースプリングが開花。緑の間にオレンジや黄色のゲウム・リバレやゲウム‘テキーラサンライズ’が咲いて華やかなアクセントになっています。 【3月中旬】 この庭の特徴となる玉のような花を咲かせる多品種のアリウムも存在感を出し、ディスカンプシア‘ゴールドタウ’やホルデウム ユバツムなどグラスも葉を増やしています。花壇の縁付近では、ベロニカ’オックスフォードブルー’の紫花やムスカリも次々開花中。いろんな植物がたくましく混ざり合って育つ様子が見られます。 【2月中旬】 アリウム‘サマードラマー’やアリウム‘シルバースプリング’が勢いよく伸び出し、切り戻されていたグラスのディスカンプシア‘ゴールドタウ’は細い葉を伸ばし始めています。地面に張り付いたように葉を残す緑のニゲラや赤い葉のペンステモン‘ハスカーレッド’が彩りを添えています。 【1月中旬】 庭づくりの舞台裏記事も公開中! 5つのコンテストガーデンは、2022年12月に第1回目の作庭が行われました。その様子をご紹介する記事『【舞台裏レポ】「第1回 東京パークガーデンアワード」5つの庭づくり大公開』もご覧ください。
-
スウェーデン
北欧のドリーム・ガーデン「ローゼンダール庭園」案内
自然豊かな市民の憩いの場所 スウェーデンの首都、ストックホルムを構成する14の島々のひとつ、ユーゴルデン島は、中心から自転車やトラムで10〜15分程度とアクセス抜群の立地でありながら、水に囲まれた豊かな森の自然に触れられる市民の憩いの場所です。5月下旬にはスズランの群生を足元に、この森のなかを進んでいくと、北欧のドリーム・ガーデン、広い林檎園や温室、ポタジェ(菜園)が並ぶローゼンダールトレードゴード(トレードゴードは庭園の意)が見えてきます。 ローゼンダール庭園への道のり、至る所が爽やかな水と緑に彩られるユーゴルデン島の遊歩道。 小さくて見えにくいかもしれませんが、シカも散策者をお出迎え。 森の林床のグラウンドカバーは野生のブルーベリー。 歴史ある開かれた王立庭園 右のイラスト版のローゼンダール庭園の案内図がかわいい! ショップにはトートバックやポスターのグッズもありました。 19世紀までは王族の狩猟の獲物の保護地区だったゆえに自然がそのまま残されたこの場所に、1810年、スウェーデン王となった仏人ベルナデットが夏の離宮とイギリス風景式庭園をつくったのがローゼンダール庭園の始まりでした。森に囲まれた庭園は当初より市民に開放され、王族の避暑地であるとともに、市民の散策の場所にもなりました。開かれた市民のための庭という伝統は、現在に続くローゼンダール庭園の進化のバックボーンになります。 19世紀につくられたオランジュリー。手前にはバラ園と葡萄畑、ラベンダー畑。 この開かれた庭園をさらに拡張したのは、園芸愛好家だったベルナデットの息子オスカー1世とその妻ジョゼフィーヌ女王でした。1860年には園芸協会によって、スウェーデンで初めてのガーデナー養成学校がローゼンダールに開校し、700人のガーデナーを養成します。それは、ガーデナーの養成に限らず、スウェーデン全体にガーデニングを普及するムーブメントの発端となり、ローゼンダール庭園は、スウェーデンの人々にとって憧れのモデル・ガーデンの役割を果たしていきます。 庭園のコアである、1世紀半の歴史がある林檎園。不思議なほどピースフルな場所。 森の中の林檎園 ローゼンダールを訪れる際に、ひときわ印象的なのが自然溢れる立地環境です。現在では王立公園として管理される、苔や野生のブルーベリーがグラウンドカバーになった素晴らしい自然の森の中では、シカがゆったりと佇んでいたり、水辺には様々な水鳥たちが行き来するなど、都市にいることを完全に忘れてしまうほど。鳥の歌を聞きながらゆるゆると散策を続けていくと、19世紀のオランジュリーの建物や広大なポタジェ(菜園)、ベーカリーやカフェ、レストランなどの入ったお洒落な温室、そして林檎園が見えてきます。 温室を利用したカフェやベーカリー・ショップは素朴なのにおしゃれ。 樹木のアーチをくぐると林檎園への入り口。 150年前に植えられたという400本の立派なリンゴの老樹が並ぶ広い林檎園は、ローゼンダール庭園がつくられた19世紀から残る歴史的な場所。収穫されたリンゴの出来のよいものは、販売用にショップへ、またレストランとベーカリーに届けられ、それ以外のものはリンゴジュースなどに加工されるそうで、1世紀半を経たリンゴの木々は現在も活躍中です。 5月はリンゴの花盛りでした! そこかしこに設置された椅子やテーブル、ベンチでは、リンゴの木の傍で、ゆったり読書をする人、見つめ合う若いカップル、賑やかな家族連れなど、さまざまな人が思い思いの時間を過ごしています。ピースフルな空気感が溢れるこの場所には、ただいつまでもここでそのまま過ごしたい、そんな気持ちになる、マジカルな時間が流れています。 林檎園の片隅では養蜂も行われています。 この林檎園は、歴史的であるとともに庭園全体のコアになっている場所で、林檎園を囲むように、ベーカリー、レストラン、ガーデニングショップなどの入った温室と野外テラス、子どもの遊び場、オランジュリーの前には小さなブドウ畑とバラ園、そして広大なポタジェが作られています。 理想の庭のかたちとは? ビオディナミ農法のポタジェ 野菜の季節の到来を静かに待つ、中央の小さなガーデンシェッドがポイントの5月中旬のポタジェ。 ところで、ローゼンダールでも、20世紀初頭には庭師養成の学校が廃止され、庭園が忘れられつつある存在となった時期がありました。その後1980年代、ここで未来のための新しいパーフェクト・ガーデンをイメージしようという動きが生まれ、再びローゼンダールガーデンが活性化され始めた際に取り入れられたのが、大地と自然のリズムを尊重するビオディナミ農法でした。 ワインのためのブドウ生産などでもよく利用されるビオディナミ農法は、ごく簡単にいえば月のリズムに基づいた自然農法。ポタジェの一角のコンポストは、土壌づくりから始まる栽培サイクルのカギとなる重要な要素です。 カフェ・レストランの風景。中央に並ぶ旬のポタジェの野菜や果物を使った日替わりのメニューは、全部食べたくなる! 花咲き乱れる美しいポタジェで採れた野菜は、採れたてが園内のレストランとベーカリーに届けられます。毎日のレストランのメニューと皿数を決めるのはポタジェの収穫。良質な季節の恵みをダイレクトに味わえるよう、調理はシンプルを心がけているのだそう。見ただけでも、食べたらさらに、幸せそのものを味わうよう。 温室内のテーブル席、野外のテラス席、はたまた前出の林檎園で、と園内の好きな場所を選んで、心地よくオーガニックのランチやお茶を楽しめます。 冬が長い北欧では野外の庭を楽しめる季節が短いだけに、美しい景観も美味しい自然の食べ物もぜんぶ合わせて、心地よい庭の楽しみ方に敏感なのかもしれません。 遠足の子どもたちも楽しそう。天使の彫像の奥には、子どものためのメイズ(迷路)があります。 分かち合う庭、ナチュラルでシンプルな幸せ空間 大地と自然のリズムにしっかりと繋がった、美しいばかりでないエディブルな庭である、ローゼンダール庭園は、誰でもに開かれたみんなのための庭です。数十年前、2人の若い庭師ラース・クレンツ(Lars Krentz)とパル・ボルグ(Pal Bolg)が19世紀につくられた歴史的庭園を土台に、未来の庭はこうであったらいいだろうとイメージしてつくり続けているこの庭は、訪れる人々すべてに庭の楽しみと癒やしを分かちつつ、現在も進化を続けています。
-
高知県
【牧野植物園広報部インタビュー】愛されキャラの牧野富太郎と博士の思いをつなぐ牧野植物園の未来
牧野植物園について 牧野植物園には、県内のほとんどの人が、子どもの時に遠足で来たって言うんですよ ガーデンストーリー編集部(以下GS):植物園のあるこの地は、牧野富太郎博士が何度か植物採集に訪れていたそうですが、そうしたことからこの場所に植物園ができたのでしょうか? 橋本:そうですね 牧野博士はここに限らず、高知全体をフィールドとして調査に行っています。その中でも、この植物園のある五台山にも何度か植物調査に訪れています。しかし、ここに植物園の設立が決まったのは、その調査からもっと後の話になります。 園の設立に関しては、明確に博士からの希望があったわけではなく、県民はじめ有志の働きかけによるものだと聞いていますが、牧野博士自身も「植物園」というものの建設の必要性はかねがね明言されていたことが書籍などで確認できます。計画が具体的になったのは昭和29年で、まず「牧野博士記念植物園設立準備会」ができ、昭和31年に設立が決定しました。 これは推測ですが、おそらくその準備会の中で、いくつか候補地が挙がったのではないでしょうか。地形の調査も行ったようですし。でも結局は、博士に「どこがいいですか?」と伺ったところ、博士が「それなら五台山がいい!」という鶴の一声で、ここに建てられるということが決まりました。 当時のここ五台山は、いくつかの私有地が混在していて、最終的に竹林寺の当時のご住職からご厚意をいただき、お寺の一角であった宿坊(寺院の宿泊施設)と呼ばれるエリアにつくることになったと聞いています。 北園の山頂付近に広がる「こんこん山広場」に横たわる2本のスモモの木は私有地時代の名残で、当時は無数のスモモの木が花を咲かせ、山肌を白く染めたそうだ。 GS:植物園の存在は、地元にどのような影響を与えて来たと思いますか? 橋本:当園は地元の方々に親しんでいただいており、来園のお客さま、特に県内の方に「過去に園に来たことありますか?」と尋ねると、多くの方が「子どもの時に遠足で来た」っておっしゃるんですよ。 今でも小中高と、遠足や課外授業で来られる方も多いのですが、県民の多くの方が幼少期から学生時代に、少なくとも一度は訪れているように思います。 私どももさまざまなイベントを催していますので、大人になってからはそういった催事の話題をきっかけに再訪しようかな、という流れもあるようです。 GS:それは素敵な話ですね。幼少期の思い出にこんな素敵な植物園の思い出があるなんて、うらやましいですよ。 橋本:特に高知市内にお住まいの方には、そういった思い出が深いのではないでしょうか。また、今回NHKの連続テレビ小説の題材になったこともあり、多くの方が「我が地元に牧野植物園在り!」と再認識され、再訪される方も多いですね。 GS:地元の方にとっては、今回連続テレビ小説の題材になったことは、これ以上ない誇りでしょうね。 橋本:そう思います。 牧野植物園がきっかけでさらに植物愛が増してもらえるのは嬉しい GS:植物園が日本の園芸文化にもたらした影響についてはいかがでしょうか? 橋本:地元に対してはこのように大きな影響を持つ牧野植物園ですが、日本の園芸文化への影響というところでは、私自身の考えとしては、当園の在り方が、園芸のそれとはちょっと方向性が異なるかなと思います。しかし牧野博士の研究は、その垣根をまたいでいたものもあるため、人の手によって愛でられ栄えてきた日本の園芸文化と、自然界の植物を分類していく博士の研究とは、少なからず交わる部分もあるとは思います。GS:確かに、日本の園芸文化というと、例えば変化朝顔とか江戸菊のように、人の手によって改良を重ねられ、美術工芸品のような位置付けで楽しまれる植物が代表的ですね。 橋本:そうですね。もちろん、植物を愛する畏敬の念に隔たりはないのですが、ただ、牧野植物園に来園される方は、どちらかというと園芸植物よりも、山野草や高山植物のような人の手によるものでない野生の植物、ありのままの自然が好きな方が多い印象です。 しかし最近では、蘭が好きな方が来園されたり、多肉植物が好きな方が来園されたりと、近年は割とボーダーレスでお客さまが来園されるようになったと思います。 私たちとしては、きっかけはなんでもいいんです。研究としては線引きがあっても、植物を愛でる気持ちに線引きなどあろうはずもなく、お散歩がてら来ていただくのも嬉しいですし、博士のことを伝記などで読んだり、今回の連続テレビ小説を通じて興味を持たれたり、さまざまなきっかけで牧野植物園に遊びに来ていただければ嬉しいんです。 こうして、今まで植物に興味があった方も、なかったけど持ち始めた方も、園芸というよりは、もっと大きなところで植物への興味の足掛かりに牧野植物園を使っていただければ嬉しいですね。それにより日本の園芸文化にも、植物を愛する方を一人でも多く生み出す、というフィードバックができるのではないかと思います。 GS:園を散策してみて、植物一つひとつにじつに細かくプレートが立てられていて、いかに博士が植物分類学に心血を注いでいたかがうかがえました。来園者はこのプレートからより深い植物の知識を得ることができ、より関心も高まりますよね。そういった意味でも博士の研究と現在の園芸文化とのクロスオーバーの役目を、この植物園が果たしているのだな、と思います。 私たちの生活とも関わりの深い植物などが多数植えられた薬用植物区の一部。植えられている全ての植物の側には、その植物の詳細が記されているプレートが立つ。 橋本:当園は自然風植栽を意識しているため、例えばご自身が鉢植えとして楽しまれているものが、自然の中でどのように息づいているかを見ると、よりその植物への愛も増すと思いますし、栽培のヒントにもなったりするのではないでしょうか。 博士自身も園芸文化を決して否定せず、むしろ植物を愛する気持ちに対しては心は一つ、という考えの方だったので、牧野植物園がきっかけで来園者の植物愛がさらに増すというのは嬉しい限りではないかと思います。 GS:ここは場所柄、山に吹き抜ける強風が植物の幹を太くし、強くしていると伺いましたが、言ってみればそれが自然の創り出す造形美であり、植物が健康に育つためには、いかに風が重要かも分かりました。 牧野富太郎博士について <写真提供:高知県立牧野植物園> 研究って一方通行では決して醸成されないもの GS:牧野富太郎博士は植物について並々ならぬ関心と情熱を持ち、研究や教育普及活動に生涯を捧げた方ですが、同じ道を歩まれている後進の方々から見るとどんな方ですか。 橋本:やはり日本の植物学や植物分類学というものについて、まだ当時(明治〜昭和期)は欧米に遅れをとっていた日本のレベルを世界レベルまで引き上げたのは牧野博士なので、そのレガシーを継承し、同様の研究を専門とする現在の学者たちから見れば牧野博士はまさに先駆け的な存在です。 また、牧野博士は採集した植物を描いた植物図の分野でも日本では先駆者であり、そのディテールの再現性と息を呑むような美しさには、先進的だったはずの海外の植物学者も驚嘆したと言われています。 明治11年、牧野富太郎が16歳の時に描いたもの。少年の頃にすでにここまで緻密な植物図を描いていた。 GS:牧野博士は植物分類学の研究を世界水準まで高めたということですが、そもそも当時、日本の植物学は海外から注目はされていたのでしょうか? それとも、謎めいた極東の小国から、牧野博士が積極的に海外に向け情報を発信していて、それが功を奏して海外からも注目を浴びるようになったのですか? 橋本:すでに世界から注目されていたとは思いますが、当時は、文明的、歴史的な背景もあり、情報流通は極端に少なかったと思います。おっしゃるように、未知なことが多い極東の小国から、博士のほうから積極的に発信したのだと思います。そもそも研究って一方通行では決して醸成されないものなので、徐々に情報のネットワークが作られ、レベルも上がり、評価を得た、ということだと思います。 GS:一方通行だった研究を双方通行にして、日本の学術レベルを底上げした博士の功績は偉大ですね。 そもそも、牧野博士が一般常識人であったら植物分類学者牧野富太郎は生まれていなかった GS:そんなフロンティア精神溢れる博士には、ユニークなエピソードもたくさんありそうですね。 橋本:牧野博士はとにかく、どんなことにも探究心が旺盛で、凝り性だったようですね。幼少期には実家の番頭が持つ懐中時計を借りた博士は、その仕組みが知りたくて、借り物にもかかわらず、バラバラに分解してしまったそうなんです。 GS:貸した方はさぞびっくりしたでしょうね・・・。連続テレビ小説でもそのようなシーンが盛り込まれると面白いですね!(実際に放映で、子供時代に番頭さんの懐中時計を分解しちゃったという形で再現された)。 橋本:そうですね(笑)、あとは、博士は海外から大量のシリーズ物の書籍を取り寄せたりもしていたんですが、それらも抜け落ちることなく、ちゃんと全巻揃えてコンプリートしていたそうです。とにかく凝り性だったようですね。凝り性がゆえに、家計が傾いたのですが・・・。GS:家計を傾ける凝り性のことを「Rock ‘n’ Roller」というんですよ(笑)。独り身ならいざ知らず、妻君のご苦労は察して余りあります。 橋本:全財産を研究に注ぎ込んでしまうわけですから、確かに妻の壽衛さんは大変だったと思います。でも壽衛さんは、お子さんには「お父さんは世界的な研究をしている人だから、我が家は決して裕福ではないけれど、決して恥ずべきことではないんだよ」と言って、最大限の理解を示して家庭を支えていたんです。 そもそも論ですが、牧野博士が一般常識人であったら、植物分類学者牧野富太郎は生まれていなかったのではないかと思います。 若き日の牧野富太郎と妻壽衛。<写真提供:高知県立牧野植物園> GS:ある分野で突出した人は、一般常識が通じない部分が必ずどこかにあると聞きます。まさにそれですね。私の経験則では、そういう人は自己陶酔型が多いですが、牧野博士にはそれが感じられない。 橋本:そうなんです! 博士は大人子供老若男女の分け隔てなく、誰にでも同じように接して植物の知識を広めていった方なので、そんなところが多くの人に愛され、愛されるから支援者が現れ、親しみを持たれるからこそ、日本全国から標本が集まり、博士も知識を集積することができたんです。その結果、現在語り継がれている偉業の数々を成し遂げることができたんです。 GS:細い一本の糸が束になって、太い一本になった、ということですね。 橋本:はい。博士のお人柄の成せる技ではないかと思いますね。 出生の地、佐川町の風土も大きな影響を与えた GS:14歳の頃に小学校を自主退学し、早くも植物研究の道を歩み始めている博士ですが、牧野富太郎博士が若くして植物に強く関心を持つに至ったのはなぜなんでしょうか? 橋本:牧野博士は幼少の頃に両親と祖父を亡くされて、祖母に育てられました。そんな少年時代に、肉親の愛に代わって心を満たしてくれるものが植物だったと自らも語っています。つまり、何か一つきっかけがあったというより、常に植物に寄り添い、共に日々を送っていたわけです。加えて、日本の野生植物の種類の約4割が自生しているともいわれている地元高知の自然の豊かさも大きな影響を与えたのではないでしょうか。10代〜20代前半の頃は、博士はすでに高知県の植物をくまなく調査していました。ですから影響というか、高知の自然こそ、博士の研究の源になったのだと思います。 GS:植物王国土佐の大地を駆け巡るフットワークの軽さもさることながら、そもそも学習意欲も旺盛だったのですね。 橋本:それは間違いないですね。地元でも有数のレベルの高い私塾に通い、そこで読書、天文学や物理学、英語の読み書きを学んでいました。教育に熱心に取り組み、多くの識者を輩出しているこの佐川町の風土も大きな影響を与えたのではないでしょうか。 高知は山を越えるごとに地域の特色も変わるのですが、佐川町は「佐川山分学者あり」(佐川は山も多いが学者も多いという意味)という言葉ができるほど、学問が盛んな町だったため、そのあたりも後年の富太郎を形成する苗床になったはずです。 GS:学問で肥えた土から、まさに黄金の苗が芽生えたわけですね。 橋本:いろんな要素はあると思いますが、やはり牧野富太郎を突き動かしたのは、ひとえに植物への愛ではなかったのかなと思います。 GS:歴史の必然というかなんというか、どれか一つでも欠けていたらもしかしたら牧野富太郎は生まれなかったのかもしれませんね。 橋本:そうですね、もし両親と言わずとも、どちらかの親が存命だったり、他の子どもみたいにちゃんと学校に通っていたり、場所が高知でなかったり、このどこかが異なるだけで牧野富太郎の人生は私たちが知っているものとは違う歩みになっていたのかもしれません。 今回のドラマをフックにして、牧野富太郎の存在を広く周知したい GS:ところで、その牧野博士は昨年生誕160年を迎えましたが、博士の存在がクローズアップされている今年2023年、牧野植物園としては博士が日本の園芸に残した博士の足跡、功績をどのように伝えていきたいですか? 橋本:牧野富太郎は、まだ全国的に知名度は低いと思うんですよ。確かにドラマのおかげで知った方も多いとは思いますが、それでもいまだに高知のパブリックイメージは、高知=坂本龍馬、だと思うんです。 我々としては、今回のドラマをフックにして、牧野富太郎という世界レベルの植物分類学者がいたんだという事実、そしてそれを生んだのが高知であるということを発信し、その結果植物に興味をもってもらい、牧野富太郎のエッセンスを当園で感じてもらう。いわば、「情報」を「体感」へと繋げていければ、と考えています。 なので、私たちとしてはひたすら牧野富太郎という人の偉業と人間性を発信していき、今までの高知=坂本龍馬が、高知=牧野富太郎というように瞬時にイコールで結びつく、そんなところを目指しています。 園内に植えられていた高知の特産品「ブンタン」。マーマレードにすると絶品! 高知は果物も豊富なのだ。 NHKの連続テレビ小説「らんまん」について ドラマ化を推進する会が結成され、署名活動が行われた経緯もあります GS:NHKの連続テレビ小説「らんまん」について、地元の方、そして植物園の皆さまはどんな風に受け止めていらっしゃるのでしょうか? 橋本:じつは以前からぜひドラマの題材に、というリクエストは県内の複数の箇所から出ていました。また、それを推進する会が結成され、署名活動が行われた経緯もあります。署名活動が直接的にNHK側の選考判断材料になったかは分かりかねますが、県民を挙げて牧野博士の周知を願っていたわけですから、これはあくまでも私の予想ですが、そういった活動が少なからず選考に影響を与えた部分もあるのかな、とは思います。 GS:橋本さん自身は、テレビ化の決定を聞いたとき、どう思いました? 橋本:それは嬉しかったですよ! ここ(牧野植物園)に携わっている全ての人が、牧野博士のことを愛し、敬意を払っているので、博士の偉業と魅力が世間に、しかも全国ネットで周知されることを名誉に感じています。 GS:実際に署名活動に携わった方たちにとっては、まさに思いが報われた瞬間だったのですから、これはもうシャンパンファイトでもしたい気分だったでしょうね。こうして、ドラマの題材になったことによって、牧野植物園はどう変化すると思いますか? 橋本:そうですね、まぁ忙しくはなるでしょうね(笑)。 でも先ほども言ったように、それがきっかけで牧野富太郎に興味を持ち、植物に興味を持ってもらうことは、私たちにとっては嬉しい相乗効果です。お客さまに今後どのようなアプローチで植物に興味を持ち続けていただくのかを考えながら、牧野植物園もコンテンツをブラッシュアップしていかなければなりません。このたび、正面入り口と南門の間に植物研究交流センターという建物を新たにオープンしました。 そこではさまざまなワークショップやイベントを行っています。また、リニューアルしたレストランやミュージアムショップもお楽しみいただけるのではないかと思います。 牧野博士は“植物は楽しいものだ”ということを世界中の人に知らせたかったし、実際に知らせたわけですから、変化するというよりは、変わらずにその思いを継承していきたいですね。 建設中(2022年12月当時)の植物研究交流センター。 牧野植物園のこれから 牧野植物園を通じて、植物に関する正しい情報を発信していくことが私たちの使命 GS:Webマガジン「ガーデンストーリー」の読者は園芸を愛好する人たちがさまざまな形で園芸を楽しんでいます。読者の皆さまに対し、牧野富太郎博士のどんな部分を知ってほしいですか? また、牧野植物園のこれからの取り組みなどを教えてください。 橋本:博士の行っていた植物研究は、基本的に人の手が加わっていない自然そのものの植物が対象であったため、人の手が加えられる園芸文化と必ずしも合致する部分ばかりではないのですが、ベースにある植物愛というところでは大きく共通していると思います。 ただ牧野博士の場合は(想いが)突き抜けてしまっていたために、研究者として偉大な功績を遺すことができたのですが、その突き抜けていた部分を、連続テレビ小説や当園を通じて、感じて、そしてファンになっていただければ嬉しいですね。なにしろ牧野富太郎は生前、自身のことを「草木の(妖)精」と言ってはばからなかったそうですから。 GS:植物への興味の有無に関わらず、牧野富太郎という人の生き様に対して、連続テレビ小説を通じて興味を持つ方は多いと思います。 橋本:牧野博士の時代と違い現代は情報が氾濫しているため、一つの分野を追求するのって難しいと思うんです。それがいばらの道になったら、楽な道も簡単に探せるわけですから。だからある意味博士みたいなブレない生き方に憧れを覚える視聴者の方も多いのではないでしょうか。 そうして興味を持っていただいた方に、植物の種を本来あるべき姿で保存していくということの大切さ、そして高知県の自然の豊かさを、私たちも牧野博士のそれにならい、ブレずに積極的に発信していかなければなりません。発信する上で、この牧野植物園は重要な拠点となっているので、今後ますますその価値を高めていきたいと思います。 近年は植物の情報をネットで簡単に検索できますが、誤った情報も非常に多く見受けられます。私たちは、この牧野植物園を通じて、植物に関する正しい情報を発信していくことを使命としています。 GS:粛々と、牧野博士の偉業を紡いでいくと。 橋本:そうですね、そんなところです。すいません、答えになっているかな(笑)。 GS:いや、情報の信頼性を追求するのは、私たち園芸メディアにとってもそれは使命であるので、正しい情報を元に植物愛好者を増やしていくという形で、牧野博士を見習い、その想いを紡いでいけたら嬉しいです。今回はいろいろお話を聞かせていただき、ありがとうございます。南園に牧野博士の立派な銅像がありましたが、博士にくれぐれもよろしくお伝えください。 橋本:伝えておきます(笑)。 南園にある牧野富太郎博士像 取材後記 35年ぶりの高知。35年も経つと、初めて来た土地のような感覚でしたが、以前のことで鮮明に覚えているのは高知市民の親しみやすさ。すごくソウルフルで、今回の取材でお世話になった広報の橋本さんも、そんな方でした。 好青年で、時にクールに、またある時は熱っぽく語る、植物愛に溢れる橋本さんですが、牧野富太郎という人物をリスペクトしまくっているその姿を見ていて、この方は牧野富太郎と同時代に生を受けていたら、きっと牧野博士に可愛がられたのだろうな、と思いながら、お話を聞いていました。 ちなみに、この記事を作っている今(6月)、予見した通り連続テレビ小説効果で園内はだいぶ混み合い、忙しいらしいです。忙しいけれど、ホスピタリティー溢れる橋本さんのことだから、きっと手を抜かないのだろうな…。 話に聞く牧野博士も、それはホスピタリティー溢れる方だったそうです。今回の取材は、そんな土佐っ子の心意気を肌で感じる取材となりました。
-
北海道
北海道ガーデン街道を訪ねて<2023夏>十勝&富良野編
花も団子も楽しむ、初夏の北海道ガーデン街道 みなさま、ごきげんよう!どちらかといえば、花も団子も楽しみたいタイプの私です。いつもはレシピをお届けしていますが、今回は番外編で「北海道ガーデン紀行」をお届けします。というのも、少し早めの夏休み気分で、7月初旬に北海道に行ってきたから。目指すは「北海道ガーデン街道」です! 北海道ガーデン街道とは、人気ガーデンがある地域を結んだ観光ルート。上川町 〜 旭川市 〜 美瑛町 〜 富良野市 〜 十勝地方を結ぶ、約250kmの街道として2009年に命名された「北海道ガーデン街道」は、街道沿いに8つのガーデンがあり、さまざまな観光地をスムーズに巡ることができます。 食いしん坊な私。北海道名物スープカレーやザンギを楽しみながら、ガーデン巡りをしました。 ガーデンでは豊かな自然に咲く野の花々を満喫し、ドライブの車中からはダイナミックな小麦畑やジャガイモ畑などの丘陵風景を楽しみ、休憩がてら美味しいものを食べる。そんな最高の時間を楽しめるのが「北海道ガーデン街道」を巡る旅です。 今回の目的地は十勝エリアにある5つのガーデン。そのなかでも個人的にイチオシな3つのガーデンをご紹介します。夏の避暑旅行にもおすすめ。それでは出発進行〜! 穏やかな空気を纏う「六花の森」 はい! あっという間に北海道に到着です。まず1日目は帯広空港から車で15分ほどの、「六花の森」へ。受付で十勝エリアの5つのガーデンがお得に巡れる「とかち花めぐり共通券」を購入して、いざ出庭! 「六花の森」はマルセイバターサンドで有名な「六花亭」によるガーデンで、「六花亭と言えば」の包装紙に描かれた北海道の山野草を見ることができます。敷地内には美術館、ミュージアムショップ&レストラン、工場が併設されています。 六花亭の包装紙でひときわ目を引く赤い花。それがこのハマナス。 私が訪れた7月初旬は、ハマナスが満開。あたりに立ちこめる、フルーティーで艶っぽく甘〜い香りで夢見心地に。力強い北海道の大地を踏みしめる私の足、呼吸のリズムで身体に入るハマナスの香り、全てが一体となり「もしかして、アタシ! ハマナスになっちゃったのかも」という不思議な感覚を味わいました。 私の住む神奈川県では見かけない植物たちにご挨拶。自然豊かな北海道の大地で育つ植物は、とってもパワフル! 広い園内には7つのギャラリーが点在し、山小屋のような素敵な建物の中で、六花亭の花の包装紙を手掛けた坂本直行氏の作品などを見ることができます。 左はアイスサンド、右が出来たてホヤホヤのバターサンド。 さてさて、散策後は併設された素敵なカフェでひとやすみ♡ こちらは敷地内に工場があるので、なんと出来たてのマルセイバターサンドが頂けちゃう。いつものしっとりとしたクッキーに、ラムレーズンクリームの「一体感」があるバターサンドも大好きですが、ここで食べる出来たてバターサンドは全くの別物! クッキーがサクッとしていて、柔らかいクリームを包み込む感じは新食感! こちらでしか頂くことができないので、ぜひガーデン散策後のお楽しみに。アイスサンドも絶品でした。 「道の駅 なかさつない」にて。大きいマリーゴールド「アフリカンマリーゴールド」ですが、ついついアメリカンと書いてしまったのかしら。おおらかな訂正がいい感じ。 帯広空港に到着して、その足でこちらに伺いましたが、大正解! 早起きして忙しなく、バタバタと飛行機でやってきた北海道。「六花の森」は、そんな心拍数高めの状態から、リラクシングモードへと気持ちを切り替えるのにピッタリな場所でした。木陰も多く、小川の流れの音も心地よい、穏やかな空気を纏ったガーデンです。 ちなみに、「六花の森」からすぐの「道の駅 なかさつない」もおすすめ。美味しそうな採れたて野菜や卵、苗などが売っていました。旅のお供に道の駅、どこへ行くにも私のお決まりコースです。 家族みんなで楽しめる「十勝ヒルズ」 六花の森を後にした私は、そこから車で15分ほどのところにあるお花好きのおばあちゃんがつくった「紫竹ガーデン」に立ち寄ってから、一路「十勝ヒルズ」へ。「花と食と農」をテーマにしたガーデンとのことで、期待が高まります。ダンサブルでイケイケなミュージックがお出迎えしてくれる入り口にはショップ&カフェもあり、賑やか! 小躍りしたくなるような楽しい雰囲気。 こちらはその名のとおり、丘にあるガーデン。抜け感のある景色が爽快! 高低差を生かしたリズミカルな造りで、園内のさまざまな場所にイスやベンチが置かれていました。おかげさまで、何度も休憩しながら眺めを楽しみました。芝生にゴローンも最高です。 こちらのガーデンで特に印象的だったのが、ガーデナーの方が、ニコニコと楽しそうにお仕事をされていたこと。当たり前なことかもしれませんが、働く側が楽しんでいる職場っていいですよね。植物たちもとても綺麗にお手入れされて、イキイキと嬉しそうでした。 後から調べてみたら、十勝ヒルズのガーデナーの方々が発信しているインスタグラムがありました。毎日ガーデンや植物の様子をアップされていて、とても楽しい! 勝手にご紹介しちゃいます。 tokachihillsgardeners ガーデン入り口に併設されたカフェ。 園内には、入り口のカフェとは別にガーデンレストランもありました。私はあいにくお腹いっぱいだったので利用はしませんでしたが、ハンガリー人シェフが腕を振るう、十勝食材とハンガリー料理のマッチングが楽しめるそう。次回は堪能してみたい! Processed with VSCO with f2 preset 結局、散策後は小腹が空いてしまい、入り口のカフェで一休み。フルーティーなアイスティーとおにぎりを。他にも美味しそうなメニューがありましたが、おにぎりを売っているってのがいいですねえ。好感度高め。 こちらの「十勝ヒルズ」、独断と偏見の私視点で総合的にパーフェクト! 家族全員が楽しめる巨大な公園みたい。庭園やガーデンというと少し大人向けで、子どもやヤングは退屈してしまうこともありますが、こちらでは心配ご無用! ぜひ親子3世代で訪れてほしいガーデンです。 油絵のような木々が見られる「真鍋庭園」 2日目は「真鍋庭園」へ。なんとこちら、1966年から一般開放しているのだとか。しかも樹木の「輸入・生産・販売」会社が運営しており、60年以上かけて世界中から収集し続けている数千品種の植物コレクションが、どのように育つのかを確認できるショールームのような植物園とのこと。花のガーデンとは、また違った迫力です。 入り口ではケン君がお出迎え。隣には同じく木彫りのトミー君もいました。 この「真鍋庭園」は25,000坪の敷地内に、なんと「日本庭園」「西洋風庭園」「風景式庭園」の3つがつくられており、まるで異なる国を旅するように風景が変わっていきます。いろいろ楽しめて、欲張りな私にぴったり。 突如現れる日本庭園。奥に見えるのは、明治44年に当時の皇太子による北海道行啓のため帯広市中心部に建築された御在所。その後こちらに移築し、昭和43年に完成。 日本庭園のすぐ横には、赤い屋根がチャーミングな可愛い建物。オーストリアのチロルハウスをモチーフにしたもので、「真鍋庭園」の4代目オーナーが昭和52年に自身の住居として建てたそうです。一見チグハグな日本庭園と西洋風建築、全てが溶け込み和洋折衷。違和感はありません。 内部は非公開だそうですが、とにかくかわいい! こんなお家に住みたい。 日本初のコニファーガーデンとしても知られている「真鍋庭園」。コニファーとは針葉樹の総称で、マツ科・スギ科・ヒノキ科など、いくつもの科をまたいだ常緑性の針葉樹の総称です。日本でコニファーというと、オーソドックスな生け垣がポピュラー。最近では、ブルーアイスなどのコニファーを植えているお宅も多く見かけます。やはりコニファーは葉の色が美しい! 針葉樹のいい香りが漂い、自然と呼吸が深くなるのを感じます。ふと、木陰から視線を感じると思ったら、エゾリスが私を見つめていました。 同じグリーンでも、トーンがさまざま。まるで油絵のよう。もぅ、とにかくすごい!「わーっ!」とか「すごい!」とか、子どものような感想しか出てこない、なんて乏しい私の語彙力よ。とほほ。でもこれこそ、純粋無垢で素直な感動なのかもしれません。 私のお気に入りは、西洋ヤナギの木。すんごい大きいのよ。大きい私と比べても、この大きさ。これだけ大きい柳の下では「うらめしや〜」と幽霊が出ても目立たなそう。 散策のあとは併設されているカフェへ。イギリスのガーデンも大体カフェとショップが併設されていますが、こちらの「真鍋庭園」にも気持ちのよいカフェがありました。 ガーデンショップではさまざまな種類の苗が売っていて魅力的! ゆっくり散策しながら50分ほどのお散歩コースでした。しみじみと、あぁ本当に楽しかった。花よりも木がメインですが、とにかくスケールが別次元。 この後は、「真鍋庭園」の近所にあるスープカレー屋さんで舌鼓を打ち、「十勝千年の森」を満喫して2日目は終了。これで十勝エリアにある5つのガーデンをコンプリート。さて、残りあと1日です。やっぱりラベンダーが見たいなぁ。 少し足を伸ばして、ラベンダー香る富良野へ ファーム富田のラベンダー畑。 ってなわけで、3日目は少し足を伸ばして富良野へ。初夏の北海道といえば、ラベンダー。十勝エリアから富良野までは車で2時間ほど。日帰りでも十分に楽しめるドライブコースです。ラベンダーといえば「富田ファーム」。昨年は8月上旬に訪れ、満開の「ラバンジン」を楽しみました。今回は昨年よりも少し早い7月初旬、昨年は見頃が終わり刈り取り&蒸留されていたイングリッシュラベンダーが、今年は満開! 7月初旬。イングリッシュラベンダーよりも開花が少し遅いラバンジンは五分咲き。 お花も好きですが、特にハーブが大好きな私。一面のラベンダー畑を目の前に、テンションあげあげの心臓ドキドキ。動悸がするほどのラベンダーの香りに包まれて、ラベンダーハイ! あぁ幸せ。本来ラベンダーには「鎮静作用」があるのですが、このときばかりは「高揚作用」です。 フレッシュなラベンダーの束がこの時期だけ販売されています。 こちらでも、「ぎゃー、いい香り!」とか「すごいムラサキ!!」とか、口から出てくるのは 子どものような感想でした。だって、本当にいい香りで、一面ムラサキなんだもん。 大きな釜でラベンダーを蒸留する様子も見ることができます。 ラベンダーの蒸留の様子は、昨年こちらを訪れた際に書いた『ラベンダー香るハーブレモネード』の記事に詳しくレポートしていますので、こちらもぜひ。 締めは、ラベンダーを見ながらラベンダーティーを飲んで、ひと休み。 以上で私のサマーバケーション2023「北海道ガーデン巡りの旅」は無事におしまい、おしまい。北海道の恵みを盛大に楽しみ、大満足です。 英語の諺には、こんな一節があります。「Stop and smell the roses」直訳すると、「立ち止まってバラの匂いをかぐ」ですが、 私の意訳は「この世は急ぐ旅でもあるめぇし。たまには立ち止まり、花の香りで一服。リラックスすれば、今までとは違う景色が見えるはず♡ 」。みなさま、素敵な夏を過ごしてね! イベント情報 8月30日から東京「日本橋三越本店」にて「英国展」が開催されます。会場では、以前ガーデンストーリー記事でもご紹介した「ローズボウル式のアレンジメント」を実演します。ぜひお越し下さい! 「ティーカップを使ったローズボウル式アレンジメント デモンストレーション」 日時:9月8日 (金) 午後2時〜2時30分 場所:日本橋三越本館7階催事場 ※予約不要 気軽に季節を楽しむことができるローズボウル式アレンジメントで、お庭の草花を可愛く飾るとっておきのアイデアをご紹介します。
-
高知県
高知県立牧野植物園は見どころ満載! 牧野富太郎の想いが詰まった園内おすすめスポットを一挙紹介!
牧野植物園の見所をもっと知る! 日本の植物分類学に偉大な足跡を遺した牧野富太郎。その生涯をモチーフに描かれたNHKの連続テレビ小説「らんまん」が絶賛放映中です。 ガーデンストーリー編集部ではこれに先立つこと2022年初冬、牧野富太郎の業績を顕彰してつくられた、高知県立牧野植物園を訪れ、一足先に牧野富太郎の足跡をたどってきました。そして牧野博士と牧野植物園の関係を解説した第1回目に引き続き、今回はその広さゆえに一度ではお伝えしきれなかった牧野植物園にクローズアップし、その見どころや、おすすめスポットを映像と共に紹介したいと思います。 おすすめスポット① エントランスまでの道のり 日本最後の清流とも称される美しい四万十川をはじめ、日本一の消費量を誇る鰹料理など、見どころ食いどころ満載の観光王国高知県。さらに、牧野富太郎博士がクローズアップされたことにより、植物王国としての顔に注目が集まっています。 日本で確認されている植物のうち約40%の植物が生育しているといわれる高知県の自然を体感できるのが、牧野植物園正面玄関からエントランスまでの約100mのアプローチ「土佐の植物生態園」。このエリアでは、高知県の豊かな植物生態を、山→川→海辺と、段階的に体感することができます。 山野草が好きな方の中には、この場所で半日過ごす方もいるのだとか。まだエントランス前ですよ! こんなところにも、牧野植物園の「自然のままの植物の生態を知ってほしい」という本気度が伝わってきます。 おすすめスポット② エントランスと本館建屋 エントランスを抜けるとすぐ、右側にボタニカルショップ nonoca(野の花)と、レストラン「アルブル」(現在は新店舗C.L.GARDENとして南園に移転し、ここではカフェ・アルブルとして営業中)があります。 ボタニカルショップ nonocaでは、季節の花の鉢植えや、牧野博士の植物図をあしらったグッズなどの牧野植物園オリジナルグッズ、高知産の土産ものなどを購入することができます。 私のイチ推しは、スコットランド沖合のアイラ島に自生する22種の希少な野生のボタニカルを手摘みで採取して造られた蒸留酒(ジン)「THE BOTANIST」。 一般的なジンの持つハーブ感というよりは、いくつもの花の香りが複雑に交わるような、フローラルアロマが特徴。お酒の強い方はロックで心地よいアロマをダイレクトに楽しんでほしいですが、弱い方はトニックウォーターで割ってジントニックにして楽しんでください。 ちなみに、商品名のBOTANISTとは植物学者のことを指します。牧野博士を顕彰した牧野植物園のお土産としてはもってこいですね。 BOTANISTをはじめ、アルコール等の飲料類は取材時の nonocaから植物研究交流センター 3Fの牧野ミュージアムショップ「サクラ」に販売場所が移っているためご注意ください。 おみやげ類は売り切れるものもあるため、先に購入して散策中は園内のコインロッカーに入れておくのがおすすめです。コインロッカーは本館nonoca、植物研究交流センター 3Fサクラ、共に入り口付近に設置されています。 さて、本館建屋を中央に進むと、空に向かって存在感を示しているのはタイワンマダケ。 ある意味、エントランスを抜けてきたお客様を最初にお出迎えするのがタイワンマダケだ。 タイワンマダケは1896年に牧野博士が東京帝国大学(現在の東京大学)の依頼で台湾を調査した際に発見した台湾固有種で、1916年に「台湾植物図譜」の著者、早田文蔵博士が発見者の牧野博士にちなんで、学名の種小名をmakinoiとして発表しました。原産地の台湾では工芸品の材料としても使用されています。 建築家内藤廣の意匠が反映された独特の傾斜の屋根、タイワンマダケ、土佐の空、この3つが揃うと誠に美しい。 おすすめスポット③ 植物研究交流センター3Fレストラン「C.L.GARDEN」 C.L.GARDENは「子どもの頃に憧れた木の上の小屋のようなレストラン」をコンセプトに、ココット(鋳物ホーロー鍋)のハンバーグランチや、ふもとの市場で仕入れたお魚ランチなど、旬の野菜をふんだんに使ったシェフ自慢の地産地消の洋食メニューが魅力。そんなC.L.GARDENから、夏限定のメニューの情報が届きましたのでご紹介します。 窓の向こうのガラス張りの建物は温室棟。 夏限定ドリンク ベリースカッシュ ブルーベリーやストロベリーなど数種類のベリーが味わえるスカッシュ(炭酸ジュース)です。 管理栄養士曰く、ベリーに多く含まれるポリフェノールには、暑さによる疲労の回復効果がある「抗酸化作用」、血管を拡張し熱中症状を改善する「血流改善作用」、熱中症に起因する炎症の予防と罹患後の緩和に効果のある「炎症抑制作用」という3つの効能が、熱中症への対策として有効であるとされています。 夏の園内は無理して歩くと大変なことになるので、こまめな休憩を心がけ、美味しく体にもよいベリースカッシュを熱中症対策にお役立てください。 ブルーレモネードスカッシュ 定番のレモネードスカッシュにブルーシロップが加わり、見た目にも涼しげな夏らしいドリンクです。南国のような土佐の空に溶け込む色彩は映えること間違いなしです! ティーソーダ アイスティーシロップを炭酸で割ったドリンクで、レモンを添えていますので、さわやかな味わいが暑い日にぴったりです。 余談ですが、牧野博士が育った佐川町は日本産の紅茶「土佐和紅茶」の産地でもあるんです。残念ながらこちらのティーシロップには使用されていませんが、渋みが少なくマイルドな味わいの土佐和紅茶、ぜひお土産にいかがですか? 夏季限定フードメニュー シェフ特製ハンバーグのココットランチ 玉ねぎの旨みたっぷりの自家製ハンバーグメニューは幅広いお客様に愛されているメニューです。メイン(スープ・サラダ・ハンバーグ)にライスが付きます。 鶏ひき肉と野菜のカレー 人気のカレーは、これ目当てに五台山を登ってくるお客さまもいるほどファンが多い一品です。 キッズプレート 小学生までのお子様がご注文可能なお子様ランチです。思わず大人も頼みたくなる、美味しいがつまったプレートです(ふりかけごはん・ミニスープ・フライドポテト・鶏のから揚げ・ミニハンバーグ・フルーツ)。 <レストラン内外観写真提供:高知県立牧野植物園 メニュー写真提供:C.L.GARDEN> 「C.L.GARDEN」【場所】植物研究交流センター 3F【営業時間】9:00~17:00モーニング 9:00~11:00(オーダーストップ 10:30)ランチ 11:00~15:00 (オーダーストップ 15:00)カフェタイム 15:00~17:00(オーダーストップ 16:30)【座席数】約60席【TEL】088-802-6951メニュー詳細はこちらから おすすめスポット④ 回廊 本館と展示館を結ぶ170mの回廊は、周辺を四季折々の草花が彩り、遠くに高知市街が望めるため、映え必至のフォトスポットとしても大人気です。 冬季の回廊は晴れた午前中に歩くと、乾いた空気が景色をより一層美しく魅せる。 初夏の回廊は生命力溢れる緑に満ちている。 <写真提供:高知県立牧野植物園> 取材時(12月)は園を彩る花が少ないながらも、ツワブキの黄色い花が回廊に彩りを添えていました。冬季にしか出会えない花の中で、最も見たかった花のひとつがバイカオウレン。牧野博士ゆかりの花で、その葉が牧野植物園のシンボルにもなっています。 バイカオウレンを見てみたい方は、ぜひ冬の牧野植物園を訪れてみてください。この回廊途中、展示館への曲がり角の直前右側の石垣の上に目をやると、可愛らしいバイカオウレンがあなたを待っています。 <写真提供:高知県立牧野植物園> 「まきのQRガイド」を使おう! 園内の植物の多くは、解説が記載されたプレートが立っているため、その植物の情報を知ることができます。特に牧野博士にゆかりの深い植物には、プレートによる説明プラス、お手持ちのスマホでプレートに表示されているQRコードを読み込むことで「まきのQRガイド」につながり、より詳しい情報を得ることができます。積極的に使えば「まきの通」になれるかも。 おすすめスポット⑤ ふむふむ広場 ふむふむ広場は植物を五感で感じるエリア。今回は展示館近くにあるハーブ園エリアを散策しましたが、ちょうどお手入れをしていた園の管理スタッフ渡辺さんに出会い、ここでの楽しみ方を伝授していただきました。 その極意はなんと、ここに植えられているハーブは、遠慮せずに葉をちぎったり花を摘んだりしてください! とのこと。園内の植物の葉や花をむしり取るなんてちょっと気が引けますが、実際に植物に触れ、香りや手触りを楽しみながら植物と触れ合うことができます。特にお子さんの情操教育に役立ててほしいと、高知の植物をこよなく愛する渡辺さんは語っておりました。 ただし、この楽しみ方はハーブ園に限ってのことなので、他のエリアで植物の葉をちぎることは固く禁じられています。 こんなにも綺麗な花を咲かせていると、葉をむしるのも少々気が引けるが・・・。 おすすめスポット⑥ 展示館とスエコザサ 回廊の終点、展示館ではさまざまな企画展が催されています。取材時は牧野博士の生誕160年の特別企画展「牧野博士と図鑑展」という、博士の研究の歩みを紹介するブースが設けられており、そこには博士直筆の植物図などが展示されていました。中でも感銘を受けたのは博士直筆の「植物随記」。いわゆるメモ書きと察しますが、160年以上前に植物のことをこんなにも克明に記した博士直筆のノートを間近で見ることができたのは大変貴重な体験でした。 ちなみに、展示館では現在、写真家菅原一剛「MAKINO 植物の肖像」展が行われています(2023年10月1日まで)。牧野博士の標本となった植物一点一点の、写真家菅原一剛氏による「肖像写真(ポートレイト)」が展示されているので、また違った視点から牧野博士の偉業を堪能することができると思います。これから牧野植物園に行かれる方は、ぜひ展示館に足を運んでみてはいかがでしょうか。【詳細はこちらから】展示館では期間限定の催しが行われているため、事前にスケジュールをチェックして行かれることをおすすめします。【イベントカレンダーはこちらから】※「企画展」の部分が展示館の催事情報です。展示館中庭には水盤が設置されていて、夏場は水面を吹き抜ける風がこの中庭に冷気をもたらしてくれます。 自宅にお庭がある(もしくはこれから作る)方はデザインの参考にもなるのでは。 一歩下がって眺めると、鏡のような水面に映る木々や空が、周囲の景色と迎合して、まるで絵画を眺めているような気分にさせてくれるため、フォトスポットとしてもおすすめです。この水盤の水は雨水を循環させたもので、昨今、資源循環型社会が声高に唱えられていますが、遥か以前に環境保全とデザイン性を融合させた建物を設計した建築家内藤廣氏の先見性には感嘆を禁じ得ません。展示館手前の回廊脇には、牧野博士が、前年他界した妻の名にちなんで命名したスエコザサを見ることができます。 スエコザサは昭和2年(1927年)に牧野博士が仙台市内で発見しました。博士が名付けた数ある植物のうち、愛妻の名を付けたのがなぜこのササだったのかは諸説ありますが、仙台市野草園の元園長でスエコザサ研究の第一人者でもある上野雄規氏によると、実は牧野博士はササの研究にもかなり注力しており、ササの葉のしなやかでありながらも凛とした力強い姿(実際ササは冬にマイナス10℃〜マイナス20℃になっても芽を残して生き残る)に、妻壽衛さんの姿を重ね合わせたことが大きな理由ではないかとされています。そして、研究に理解を示し、身を挺してサポートしてくれた妻の分まで、今後より一層研究に力を注ぐという強い意志を、妻の名を命名することで自他に示したかったのではないか、と語っています。まぁ、実際のところは博士のみ知るですが。 何にせよ、愛妻を失った時の博士の喪失感は察するに余りあります。風にそよぐスエコザサの乾いたざわめきは、まるで博士の悲しみが音になったようでした。このような曰くを持つこのスエコザサ、来園されたらぜひご覧になってください。そして在りし日の牧野夫妻の姿に想いを馳せてみてください。といっても、NHKの連続テレビ小説を視聴されている方は、あの二人の姿で想像してしまうでしょうね(笑)。ドラマではそのあたりがどう描かれるのかも楽しみですね。 おすすめスポット⑦ 板根 板根(ばんこん)という根をご存じですか? 板根とは、巨木の横走する根の背面全体が肥大化してまるで屏風のようになる現象を指します。熱帯多雨林※でよく見られ、表土が浅く、土中の酸素や栄養が乏しい環境で、呼吸や栄養吸収を補い、また自らを支えるためにこのように根を発達させると考えられています。ここ牧野植物園でも、北園と南園をつなぐ通路を横切る「お遍路道(四国霊場を巡るための道)」を下ると、ツブラジイという四国や九州で見られるブナ科の樹木の板根を見ることができます。映像でもわかりますが、上り下りそれぞれ1分ほどの所用時間ですが、ここを歩くのは正直運動靴でないとキツいですね。園内を散策していても大々的な看板があるわけではないので、意外と見逃されがちなこの板根。こんな奇怪な根っこ、多分見たことないと思うので一見の価値アリです! 【POINT】 ※熱帯多雨林とは、年間の平均気温が25℃以上で年間降水量が2,000mmを超える多雨な森林を指します。高知県は日本でも有数の多雨地帯で、年間の降水量が山間部だと3,000mmを超え、東部では4,000mmを超える場所もあります。 おすすめスポット⑧ 温室 温室の中はまさに南国! 異国情緒漂う棟内は、観葉植物として人気の植物や、サボテン、蒐集家が多いことでも話題の塊根植物、童話に出てきそうな水生植物などなど、非日常を感じさせてくれる植物たちがひしめき合う空間。ちょっとしたジャングル探訪気分にさせてくれます。 特におすすめなのは温室に入ってすぐのドームと高い壁の間を抜けていく通路。映像の中でも触れていますが、宮崎駿氏のアニメ作品、天空の城ラピュタをご存じの方は、まるでラピュタの城内に入り込んだかのような錯覚を覚えます。もちろんスタジオジブリと温室は関係ありませんが、劇中で重要な役どころを担う「ロボット兵」がどこかから現れそうな鬱蒼とした雰囲気は、同作が好きな方は思わずニヤリとしてしまうのではないでしょうか。 取材後記 私の今回の牧野植物園初来園は、取材(仕事)ということもあり、牧野博士のゆかりに絡めて物を見がちでしたが、牧野博士に対する予備知識ゼロで来園しても、見る人が決して飽きないルート設定がなされているため、植物が、自然が好き、という動機だけでも十分に広大な植物園を楽しむことはできると思いました。でも結局はね、歩き回っていると牧野富太郎のことをもっと知りたくなるのですよ。 私の場合は広報課の担当者が付きっきりで案内してくださったためそういう胸中に至りましたが、植物と牧野博士の学び、というところでは単独で周るのには限界があると思うので、そう頻繁に行けない方は、同行ガイドが園内を案内してくれる有料の「園内ガイド」を申し込むことをおすすめします。 【園内ガイドの詳細はこちらから】 ただ、ガイドのアテンドは10名以上からとなっているので、お友達を集めて行くのが一番ですが、SNSで当日の同行者を募るのもアリかもですね。 高知県立牧野植物園、私が近くに住んでいたらおそらく毎週末通うことでしょう。植物の知識も増え、とにかく起伏の多い園内を歩くことによりよいダイエットにもなるという、一石二鳥ですからね。またぜひ訪れたく、そしてこんな植物園が地元にある近隣住民が羨ましい、そんな取材でした。
-
ドイツ
ドイツ・マンハイムで開催中! ドイツ最大のガーデンショーをレポート! 1
ドイツ最大のガーデンショー BUNDESGARTENSCHAU(BUGA) Daniela Baumann/Shutterstock.com 現在、私はヨーロッパのガーデンを巡るツアーを一人開催中です。厳しい暑さが続く夏の間、ガーデニングでは乗り越えるべき困難がいろいろ発生しますが、実際にガーデンを訪れてみると、この気候変動に対応するためのさまざまなアイデアやシチュエーションがたくさん見つかります。 さて、ドイツではただいま、ドイツでも最も大きなガーデンイベント、BUNDESGARTENSCHAU(BUGA)が開催中です。BUGAは、2年に一度、6カ月にわたりドイツのどこかの町で開催されるガーデンショー。オランダで10年に一度開催されるフロリアードにこそ及びませんが、こちらもかなり盛大なイベントです。2023年は4/14〜10/8の日程で、ドイツ・バーデン=ヴュルテンベルク州のマンハイムにて開催されていて、これまでに81万人以上が来場しました。 今回は、このガーデンショーをレポートしたいと思います。 BUGAを目指してマンハイムへ マンハイムの街。Antonina Polushkina/Shutterstock.com 私の生家はミュンヘン近郊のバイエルンにあり、今回の目的地であるマンハイムまではなかなかの距離があります。特に鉄道を使えばなおさらです。ドイツの鉄道会社は日本ほど予定通りに運行しないこともあり、より大変ですが、それもまた旅の醍醐味ですよね。というわけで鉄道での行程を選び、ローカル線を乗り継いで到着した、人生で初めてのマンハイム。BUGAがなければ、生涯訪れることはなかったかもしれません。 天気にも恵まれた青い空が広がる日、26℃という過ごしやすい気候のもと、開場から30分ほど経った午前9時半ぐらいにエントランスに到着しました。ちょうど学校が数週間の夏季休暇に入る直前の時期だったため、集まっていた学生や幼稚園児のグループの数に圧倒されてしまいました。ちなみにBUGAは14歳以下の入場料は無料。若い世代に来てもらうためにとてもいいアイデアです。 3歳から18歳ぐらいまでの子供たちが数百人、教師やサポーターと共にBUGAにやってきていました。学期末の体験先として、子供たちが熱心にBUGAを訪れ、生き生きとした素晴らしい体験をしているのは素晴らしいことですね。もっとも、遠足なのでどうしても行かなくてはならないのかもしれませんが。女の子も男の子も(男女分けなくて、みんなでもいいかも)、飲み物やお菓子をいっぱいに詰めたバックパックを背負っていました。まだメインゲートに入る前から、小学4年生ぐらいの子供たち30人ほどのグループが「Essen Essen Essen…」、つまり「食べたい!」と叫んでいるのを聞きました。日本では、これほど自分の要求を表明してくる生徒は想像しづらいかもしれませんね。 入り口を入ってすぐに、芝生に広がる大きな木陰に幼稚園児たちが座り、朝食を楽しんでいる様子が見えました。ちょうどいいタイミングでBUGAを訪れたからこそ見ることができた、のどかなワンシーンです。私は子供が大好き。ガーデナーとしても一人の母親としても、子供たちを自然や緑と結びつけるのは私のライフワークです。エントランスエリアにはたくさんの花壇があり、色とりどり、高さや葉の形もさまざまな宿根草が溢れんばかりに植えてあります。古い大きな木や広々とした緑の芝生が広がる背景と合わせ、息を呑むほど美しい光景でした。 BUGAの2つのエリア ルイーゼンパークとスピネッリパーク BUGA 2023の花々やガーデンのディスプレイは大きく2つのエリア、ルイーゼンパーク(LUISEN PARK)とスピネッリパーク(SPINELLI PARK)に分かれ、さらにエリアごとにテーマが設定されています。広大な面積のこのガーデンショーでは、2つのエリアはおよそ2kmも離れているので、どちらから見るかで印象が変わってくるかもしれません。今回、私はルイーゼンパークのほうから会場に入りましたので、ここからはルイーゼンパークの様子をレポートします。 さまざまなエリアのあるルイーゼンパーク 私にとって、ルイーゼンパークからの入場は大正解でした。豊かな緑に、よく馴染んだ構造物や花々は、穏やかな気持ちにさせてくれます。このルイーゼンパークは、1975年にもBUGAの会場となった場所。BUGA 2023にあたり、中央エリアの一部を改修して、リニューアルして利用されています。 さまざまな宿根草が育つ花の玄関ホール グラス類やサルビアなどが育つ宿根草ボーダー。 丈夫でナチュラルな雰囲気、昆虫にも人気の三尺バーベナは、夏のガーデンに欠かせない宿根草の一つ。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Mann, Dirk 約1,400㎡の「花の玄関ホール」には、130種以上の宿根草とさまざまなグラス類が植えられています。宿根草ボーダーに植えられた植物の多くは、昆虫が好むもの。昆虫にとって優しく、限られた資源を保全することが意識された作りになっています。 昆虫に優しい花々でつくるガーデンの一例。最近のドイツではこうした昆虫に配慮したガーデンが増えています。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Jutta Schneider/Michael Will Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Goldbach, Karin この美しいボーダーガーデンを通り過ぎると、続いて地中海ガーデンが現れます。 バカンス気分を味わえる地中海ガーデン 地中海ガーデンには、イタリアやスペインの雰囲気を強く感じさせる背の高いイトスギが。レンガの壁と温室の前に植えられた、この印象的な2〜3mほどの木により、ガーデンに構造的な美しさが加わります。 地中海ガーデンにぴったりのイトスギ。剪定次第でトピアリーに仕立てることもできます。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich イトスギの間には、白やソフトピンク、赤の花を咲かせる、もう少しコンパクトな1~1.4mほどのキョウチクトウが植えられ、ガーデンのあちらこちらに植えられたシュロの木が広げる大きな葉が優しいアクセントに。木々の合間をつなぐ草花としては、ラベンダーなど昆虫が好む花々が豊かに育ちます。 エキゾチックな雰囲気満点のシュロの木。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich そして、ここで見逃せないのが暑さ対策。土壌からの過度な水分蒸発を防ぐマルチング材として、赤や茶色系統の砂利が利用されていました。グラベルガーデンは、夏にふさわしいガーデンスタイルの代表的な存在ですね。 地中海ガーデンに欠かせないラベンダーは、グラベルガーデンとも相性抜群。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Lauermann, Andreas 地域の特色が見られる温室 地中海ガーデンに隣接する温室は、いくつかの気候ゾーンに分かれていて、それぞれ特色のある展示がされています。例えばその一つ、 “南アメリカ・ハウス”では、南アメリカ原産の植物たちが育つハウス内に熱帯のチョウが飛び交い、さらにマーモセットや爬虫類、カメなど、地域の小動物が数種飼育されています。ハウスの中では、植物はもちろん、こうした動物たちも間近で観察することができるのです。 温室の隣にはレストランがあり、白、黄色、ピンク、赤など、色とりどりのが咲き誇る池に沿った公園の風景を眺めることができます。レストランからは高さ217mのテレビタワーを眺めることもでき、公園の中でゆったりとしたランチやディナーを過ごすのにぴったりの場所です。今回訪れた7月は、ちょうどスイレンが満開を迎えていました。 ちなみに、ルイーゼンパークの中には何年も前に建てられた素敵な茶館があり、鯉が泳ぐ大きな池や美しいカメリアガーデンを眺めるオリエンタルで落ち着いた雰囲気の中で、ゆっくりとお茶をいただくこともできますよ。 植物以外にも見どころたくさん 水族館や動物園の人気者、フンボルトペンギン。Eric Gevaert/Shutterstock.com 温室を出てさらに進むと、ガラスに囲まれたプールエリアがあり、なんと屋外でフンボルトペンギンを見ることができるスペースが! 水に飛び込む瞬間や泳ぎ回っている可愛い姿が見られます。隣の湖に浮かぶ「ゴンドレッタ」と呼ばれる黄色いシェードがついたボートも、ペンギンのビュースポット。公園の小さな湖を周回する約1.8kmのコースを、およそ50分かけて航行します。パドルもないこの小さなかわいいボートは水中ロープでつながれていて、誰もなにもしなくても魔法のように動き出すのです! 今回は時間の関係で乗船できませんでしたが、ボートに乗る子供たちや大人たちは見るからにリラックスして幸せそうで、とてもうらやましかったです。 ほかにもたくさんの鳥がいる広々としたエリアもあり、高さ16mまで飛ぶコウノトリをはじめ、数羽の鳥を見かけました。ファームエリアでは、ニワトリや羊、ポニーなどがいて、よく手入れされた屋外や屋内のスペースで触れ合うことができます。子供連れの家族に人気のスポットで、長時間過ごす人もたくさん。美しい自然に囲まれ、動物たちとこれほど近くで触れ合えることはとても楽しく興味深い体験になるはずです。 コウノトリ。Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Fotohof Blomster 移動可能なレイズドベッドは人気アイテム BUGAの会場内を結ぶゴンドラ。Ingrid Balabanova/Shutterstock.com 会場内を結ぶゴンドラ乗り場のすぐ近くには、背の高い木々や低木の間に「パークファーム」がありました。ここで目を引いたのは、移動可能なカラフルなレイズドベッド。コンパクトなパレットサイズで、上部に木製のケースが付いており、フォークリフトや専用のリフターで簡単に移動できます。こうしたレイズドベッドなら、どこにでも必要な場所に簡単に設置できますね。このアイテムは最近ドイツで人気があるようで、ホテルから公園までの道のりでも、道路脇や他の公園などにこうした植栽をたくさん見かけました。 友好都市との絆の証も ルイーゼンパークの中には、マンハイムの友好都市の記念庭園もあり、およそ800㎡のエリアに個性豊かな12のガーデンが集まっています。こうした庭園は、友好都市との絆の証になりますね。 友好都市の庭では、それぞれの地域における典型的なライフスタイルを表した庭づくりを見ることができます。このエリアが完成したのは、2022年夏。マンハイムと姉妹都市の若い庭師、学生、見習いガーデナーが参加した国際サマーキャンプ中に行われました。このサマーキャンプの参加者が、たったひと夏の間にこれほどのガーデンをつくり上げたのは驚くべきことです。植物はルイーゼンパークに馴染むまでに与えられた時間は基本的にこの夏の間だけですが、ガーデンにはベンチや椅子など、座れる場所も用意され、公園全体には、くつろいだり、休憩したり、リラックスするための場所がたくさんある、素敵な空間が出来上がりました。きっとこの庭は今回のBUGAだけでなく、長い将来にわたって保存され、親密な友情を示す印となることでしょう。 Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich このように、植物やガーデンは、ユニークかつ素晴らしい友好の証になります。自宅の庭で育つ植物を友人にプレゼントすれば、時が経つにつれて成長する友好の印になりますし、ガーデニングのアイデアや経験をシェアするのも素敵なコミュニケーションになりますね。 ルイーゼンパークではこのように、ガーデンに関するさまざまなアイデアや組み合わせの実践例を見ることができます。7月、8月と、ヨーロッパで夏のピークを迎えるこの時期は、ガーデンを訪れるのにぴったりの季節です。 BUGAのエリアは非常に広大なので、今回はご案内するのはここまで。もう一つのスピネッリパークは、ルイーゼンパークから7分ほどゴンドラに乗った場所にある、約60ヘクタールの庭園です。次回はこちらのガーデンをご紹介しましょう。
-
オシャレに飾る!! 多肉やサボテン、観葉植物、エアープランツなどインテリアプランツが豊富な園芸店「プロ…
東京都内最大級のガーデン専門店を訪問! いろいろな植物が満載!! 東京都世田谷区にある都内最大級の園芸店「プロトリーフ」。東急田園都市線二子玉川駅で下車し、沿線の坂道を10分ほど歩いた右手にガーデンアイランドがありました。 プロトリーフは、それぞれの階ごとにテーマ別で植物を置いています。( )内がテーマです。 ⚫︎2階(育てる):花苗、観葉植物、樹木、プロトリーフ製品の土、鉢、雑貨⚫︎1階(飾る):小さ目の観葉植物、鉢、吊り鉢、ファニチャー、樹木⚫︎B2階(集める):PROTOLEAF SELECTIONS 特殊樹形の観葉、大型樹木、サボテン、多肉、エアープランツ、作家鉢 今回はB2階を取材しました。 緑で覆われたビビッドなグリーンの入口から店内に入り、そこを抜けると通路左手にさまざまなカラーの植栽を見渡すことができます。 階段を下りた先の店内には、観葉植物や色とりどりの多肉が並んでいました。このフロアの担当は主任の菊地翼さんです。植物について説明していただきました。 葉が斑入りや変わった模様をした観葉植物が勢ぞろい まずは観葉植物のコーナー。可愛らしい斑入りのパキラや葉の葉脈が白っぽいアンスリウム、一風変わった模様のモンステラが印象的です。多肉植物のコーナーも赤、黄、黄緑とさまざまな色合いのものが並び、にぎわいがあります。 多彩なカラーを楽しめる多肉植物。 可愛い斑入りのパキラ。 葉脈が白っぽいアンスリウム。 斑の入り方がおしゃれなモンステラ。 幹なのか根っこなのか、不思議な形の塊根植物? サボテン類もたくさんあり目を楽しませてくれましたが、中でも目を引いたのは見るも不思議な形をした塊根植物。塊根植物(コーデックス)とは茎や根が肥大化して塊状となった植物で、ユニークなフォルムがインテリアプランツとして人気です。 幹がずんぐりしている塊根植物のひとつにパキポディウムがあります。 幹がずんぐりしているパキポディウム(最上段右端を除く)。 一風変わった形をしたユーフォルビアやネーミングが面白いアガベも 見慣れない細長い形をしたユーフォルビアも独特の魅力を放っていました。ユーフォルビアには低木状のものやタコのような容姿のものなど、さまざまなタイプがありますが、柱型や球形など、塊根状のものは見応えがあります。 最上段の右から3つがユーフォルビア。 今話題の葉がポタっとして幅広く、トゲトゲがある「アガベ」にも興味をそそられました。「姫厳龍(ひめげんりゅう)」や「地獄猫(じごくねこ)」というようなインパクト強めなネーミングも気になります。寿命は10年ほどで、暑さや寒さに強く、初心者でも育てやすいことからアガベファンが急増中。長い付き合いができるので、まるでペットみたいに可愛がっている人も少なくないとか。 鉢植えのアガベ。 アガベ(姫厳龍:ひめげんりゅう)。 アガベ(地獄猫:じごくねこ)。 土がなくても育つ植物! エアプランツにビカクシダ さまざまなエアプランツの品種がたくさん並びます。 エアプランツのコーナーにもたくさんの品種が並びます。エアプランツとは主にティランジア(ハナアナナス属)という植物の種類を総称した呼称で、葉の表面から水分を吸収し、樹木や岩などに着生して成長する植物。土がなくても空気中の水分で育つことから、この名前で呼ばれています。スカポーサやジュンセアなどの種類があり、ロゼッタ状に伸びる品種が多い一方、一方向に伸びている種類もあります。原産地はアメリカ南東部から南米あたりです。 イオナンタは水牛の頭骨と並んでディスプレイしてありましたが、お互いにフィットしていて独特の世界観が作りあげられそうです。 水牛の頭骨とイオナンタ。 近年大人気のビカクシダは、鹿角のような葉のフォルムが存在感のある観葉植物です。インドネシア、太平洋諸島、オーストラリアなど南国が原産の植物のため、屋外では春夏秋は日陰などに、冬は室内の明るく暖かいところに飾るとよいでしょう。 根に水苔を巻いたビカクシダ。 鹿の角のようなビカクシダ。 株元に張り付くように出た「貯水葉」と、シカの角のような形の「胞子葉」で構成されており、水苔で包み込んだ根っこをワイヤーなどで板に固定し、壁掛けにして楽しむスタイルが流行中。胞子葉は成長と共に形状が変わってくるので、生きた絵画のように飾って楽しめます。お手入れは、成長期の春〜秋は水苔の表面が乾いていたら、冬は表面が乾いてから2〜3日経過してから、水を入れたバケツに漬けるか、シャワーでしっかり湿らせましょう。 南アフリカやマダガスカル産で、実生株(国内で種からの育てられたもの)の多くはトゲを多く持ちますが、原産地からの輸入株の多くは、トゲが少なく、子供のお腹のようにぽっちゃりした容姿が可愛らしいですね。このように、幹が独特の形をしているのが特徴で、室内空間でも楽しめますが、屋外で育てたほうが良い形に成長します。春から秋に成長し、秋になって葉が落ちてきたら水やりを控え、真冬は断水して冬眠するという植物で、動物のモグラみたいで面白いですね。 個性的な作家鉢や3Dプリンターでつくった鉢もある? 規則正しい突起物がある作家の鉢。 東南アジアにありそうな芸術的な作家鉢。 鉢も植物に負けないほど種類がたくさん。リブがついたようなもの、突起物が規則正しく並んだものなど芸術的な鉢もたくさんありました。 3Dプリンターでつくられた鉢もあり、現代らしさを感じました。幾何学的でシンプルなデザインは、ミニマルなインテリアやシンプルモダンなアウトドアリビングに似合いそうです。 3Dプリンターで制作された鉢。 リビングの前の屋外に多肉植物や観葉植物を飾るスペースをつくってみよう! それでは、リビングと繋がるデッキなどの屋外スペースに、アウトドアリビングをつくり、多肉や観葉植物を飾る提案をしましょう。 リビングと繋がるデッキなどの屋外スペース。 4本の支柱を建て四方に梁を回して四角いアウトドアリビングをつくります。イラストのように、屋根にはシェードを掛け、壁は可動できるルーバー付きにして、採光を取りやすくしたり、風通しをよくして多肉植物や観葉植物の居心地のよいスペースにします。ルーバーの代わりに安価な簾(すだれ)を使ってもナチュラルでステキですね。 壁際にはいろいろな多肉植物を飾れる棚をつくります。棚の下部は鉢や小物などのガーデングッズを収納するスペースにして機能的に。ガーデンファニチャーなどを置けば、居心地のよいアウトドアリビングとしても活躍するスペースになることでしょう。 このセカンドリビングはDIYでつくるのは難易度が高いので、エクステリアメーカーの商材を使い、工事はエクステリアの設計施工店に依頼するか、ホームセンターのエクステリア担当の方に相談してもよいでしょう。 ここで植物が心地よく過ごすための注意点をあげておきます。 多肉植物や観葉植物は日当たりがよいところを好みますが、品種によっては直射日光により葉焼けを起こし、それにより枯れてしまう場合があるため、夏にかけて天気の良い日にはシェードの開け閉めで、光の調整をするよう心がけましょう。 風通しが悪いと湿気が多くなり、湿気を嫌う多肉植物にとっては根腐れを起こす原因にもなるため、壁面は可動できるルーバーにして風通しをよくします。リビングにも風を通せるので、室内の植物も大喜びです! ルーバーはクリアでなく半透明なものにすると直射日光を弱めることができます。 冬場の寒さは耐えられない植物もあります。多肉植物は概ね11月下旬頃から気温が10℃以下になってきたら室内に移動しましょう。鉢が重い観葉植物は、室内に移動が楽な「植木鉢台キャスター」を利用するとよいでしょう。通販やガーデンセンターなどで購入できます。屋外のセカンドリビングと室内のリビングは床レベルを同じにすると、鉢物の観葉植物の移動がしやすくなります。車いすなどの移動にも便利です。 ぜひ、皆さんも「ガーデンアイランド」で面白い植物を見つけて、室内や屋外にステキ空間を創造してはいかがでしょうか?
-
フランス
パリのサステナブル・ガーデンショー「ジャルダン・ジャルダン2023」
パリのガーデニングの最新情報を知るイベント 日本と同様、6月にはバラ、シャクヤク、アジサイと次々花が咲く花あふれる季節。フランスでもガーデンイベントが集中する時期です。 2023年はコロナ明け2年振り開催だったパリのアーバン・ガーデンショー、ジャルダン・ジャルダン。18回目を迎える今年は例年のリズムを取り戻し、6月最初の週末(2023年6月1~4日)にチュイルリー公園の一角で開催されました。 テーマは「豊穣でレスポンシブルなリソース・ガーデン」 今年のテーマは「環境に負荷をかけない」「人にも他の生き物にも寛容な、資源としての庭」また、「人が原点回帰して元気が取り戻せるような庭」といったイメージで、エコロジーやサステナビリティを強く意識したガーデニングという今日的なメッセージがダイレクトに伝わってくるものでした。 庭のオーナメンタルなアクセントにもなる個性的なデザインのトレリス。 これまでも、都市緑化・アーバンガーデニングに的を絞った構成が、小規模なガーデニングショーならではのピリリと気の利いた存在感を放ってきましたが、今年はさらに自然環境・生物多様性保護に貢献する、現在と未来へ向けてのアーバン・ガーデンのあり方を模索する示唆に富んだ内容になってきました。 フレンチ・ガーデンの伝統を表現する幾何学的なトピアリーをアクセントにした端正な庭も健在。 大(50㎡~200㎡)小(15㎡)合わせて30数個のショーガーデンと、80ほどのガーデニング関連の出展者たちのプレゼンテーションに共通している、サステナビリティやエコロジーへの配慮は、もはやパリのアーバン・ガーデニングのマストになったと言えるでしょう。 人と自然に優しいガーデンのかたち 責任感があり、自然にも人にも優しい豊穣な庭、というキーワードからは、都市のヒートアイランド現象の蓄熱を抑える緑の働きや、土壌の大切さ、水の大切さを振り返るようなコンセプトのガーデンだったり、積極的にリサイクルやリユースを利用したデザインや、温暖化に対応した水を大量に必要としない丈夫な植物にスポットを当てたドライガーデン、ワイルドフワラーと、オーナメンタルかつ食用にもなるハーブなどのエディブルな要素を分け隔てなくランダムに植栽に取り入れつつ、懐かしい田舎の庭を思わせるようなガーデンなど、全体的にはナチュラルな雰囲気ながら、さまざまなスタイルの庭が提案されています。 フェ・ドモワゼル(ドモワゼルの妖精)の庭(Demoiselle VRANKENがスポンサー)。 そのなかで、メインガーデンのデザイン大賞に輝いたのは、庭づくりの匠、フランク・セラによる作品でした。フランスの田舎の祖父母の家の庭をイメージした、レトロで新しいナチュラル・ガーデンです。エディブルな植物とワイルドフラワーが混じりあって彩る、丸太で構成された小道を通って庭に入り、中央の池の上を渡っていくと、涼しい日陰の小さな小屋や、ひっそりメディテーションしたくなるようなシーティングスペースが待っています。 ナチュラルな田舎の風景を思わせる、ワイルドフラワーが彩る丸太の小道を通って、池を渡り小さな小屋へ。 ポタジェの野菜やハーブを収穫して皆で賑やかに食事したり、植物に囲まれてゆったりと寛いで英気を養う、人の暮らしと自然が温かに共存する庭の池の水は、生命の象徴として取り入れられていました。 スモール・アーバンガーデン大賞が新設 涼やかなシェードの下に、食事が楽しめるテーブルコーナー、ゆったり寛ぐためのコクーンのようなシーティング、とアイデアが盛りだくさんの小さなガーデン。 また、新たに創設されて注目を集めたのが「スモール・アーバンガーデン大賞」です。15㎡という狭小な敷地は、一般的なパリのバルコニーやテラスなどにもすぐ応用できるリアリティのある面積。「小さな空間に大いなるアイデア」という選考基準で、書類選考で選抜された9つのガーデンが実際に会場に設置されました。木材などの自然素材、リサイクルやリユースの素材を上手に使って、狭い中にもそれぞれの個性が生きる素敵なスモール・ガーデンが並びます。 「スモール・アーバンガーデン大賞」に選ばれた「出現 Apparaître」。 大賞に選ばれたのは「出現 Apparaître」というタイトルがついたガーデン。リサイクルのガラス素材などが上手く組み合わされて、透明感と反射の加減で空間を広く軽やかに見せる工夫がなされています。 「スモール・アーバンガーデン大賞」に選ばれた「出現 Apparaître」。木材とガラス材を多用した空間の構成が面白い作品。植栽はシンプルに、ワイルドなグリーンで。 今年のシャネルはオレンジ・ガーデン さて、見逃してはならないのが、毎年楽しみになっているシャネルのガーデンです。ハイブランドの世界観を表現するガーデンは、いつも上品かつスタイリッシュ。今年はシャネルのパルファンの5つの基本の香りの中から、ビターオレンジ(橙、Citrus aurantium)をメイン・テーマにしたガーデンです。 ビターオレンジの若苗が南仏に造られたオレンジ畑の風景を彷彿とさせます。 イル=ド=フランスをはじめ、フランスのほとんどの地方では露地栽培が不可能なオレンジの木ですが、シャネルのパルファンのために、温暖な南仏の契約農家で、環境配慮した無農薬栽培で大切に育てられた花が採取されているそうです。 ブース内ではビターオレンジから作られる香料ネロリとプチグランを嗅ぎ比べたり、香料さらに香水の製造過程について学べます。 かつては盛大だった南仏のビター・オレンジの栽培も、化学的な香料の発展で現在は大幅に減少してしまっています。シャネルでは契約農家とともに、700本のビターオレンジを新たに植樹して無農薬栽培のオレンジ畑をつくっています。畑の造成は、南仏で昔から使われている石壁制作の技術を専門学校の生徒たちに伝授する機会にするなど、伝統技術の継承の場にもなっています。 子どもたちのためのワークショップの特設スペースもとってもおしゃれで、参加できる子どもが羨ましい。 ガーデニンググッズもカッコよくサステナブルに 大手ガーデンセンターによるガーデニング超初心者さん向け定植体験ブース。バジルやラベンダーなど沢山の植物の中から好きな苗を選んで植木鉢に定植。家に持ち帰れます。 ガーデニンググッズにも、やはりリサイクル、リユースといったサステナビリティを大切にしたデザインがみられ、会場のさまざまな製品のプロトタイプのトレンドになっていました。最新のリサイクル技術などを取り入れ、かつ自然な素材や伝統的な技術にも目を配った、エコロジカル・ガーデニングに欠かせないお洒落なプロダクトを発見するのも、会場での楽しみの一つ。 こちらは軽さがポイントのテキスタイル製のアウトドア用コンテナーシリーズのプロトタイプ。10年以上の耐久性があり、かつ何度かのリサイクルが可能な素材が使われています。 最近はすっかり一般化してきた素焼きのオヤ(Ollya)。水やり回数を抑えることができる優れもの。 パリのハチミツ業者のブース。時期により蜜源は変わるが、写真は世界的なハチミツコンクールで入賞したものだそうで、さすがに一際味が濃くて美味しい。 また、庭といえば、養蜂を趣味にする人も多いフランス。パリのハチミツ業者も出店。農薬などの使用がほとんどないパリの方が、農業地帯よりもよいハチミツが採れる、のだそうです。時期によって蜜源が異なるので、味も軽いものから複雑に深いものまであり、中には世界ランキングでも評価される美味なパリ産ハチミツも。 憧れのクラシカルな温室 そして、ヨーロッパらしさが溢れているのが、おしゃれな温室です。大小さまざまなサイズ展開で、展示されている色に限らず、カスタムメイドもできます。庭に温室があれば、寒さに弱い植物の冬囲いや播種にと便利に使えますし、または、お茶を飲むスペースにしたりと、部屋が一つ増えたようにも使えます。お値段は張りますが、いつかは欲しい、憧れの温室です。 無農薬有機栽培の野菜・ハーブ苗 無農薬栽培で育てられた伝統野菜や希少品種の野菜苗たち。 さて、サステナビリティへのこだわりは、苗販売にも行き届いていて、無農薬・有機栽培で育てられたじつに多彩な種類の野菜の種子と、この季節すぐ植えられる苗も揃っています。話を聞くと特に伝統野菜に力を入れているそうで、例えば、フランスの家庭のポタジェ(菜園)で栽培するのに一番人気のトマトなどは、それだけでも何十種類もあります。 自家栽培の固有種、伝統種の野菜や花の種がよりどりみどり。 食文化が豊かなフランス、野菜や果物の品種にもこだわって栽培する人が多い様子。私も一般的なガーデンセンターではほぼ見つからないカクテル・キュウリの苗を発見、お買い上げできて大満足でした(翌日早速ポタジェに定植、収穫できる夏になるのが楽しみです!)。 すべてはご紹介できなかったのですが、会場では、こだわりのガーデナーもガーデニング初心者も、誰でもがどこかに満足できる展示・物販が用意されていて、しかもフランスの6月は、野外にいるだけで気持ちのよい季節でもあり、大変満足度の高いイベントになっています。 セイヨウボダイジュの並木はカフェサロンに早変わりして、寛ぐ来訪者たち。 さらに、会場のチュイルリー公園は、花が咲き始めたセイヨウボダイジュの並木道が美しい、彫刻作品なども充実した有数の歴史的庭園。ちょうどバラの季節でもあり、会場を出てからも、美しい庭の世界の延長をうっとり楽しむことができるのもいいところ。今後も注目していきたいイベントです。 チュイルリー公園、花が始まったセイヨウボダイジュの並木や、バラが植栽されたクラシカルな美しい庭園空間が広がります。
-
神奈川県
【話題のスポット】森の中の北欧が香るヒーリングガーデン 『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』
フラワーアーティスト ニコライ・バーグマンが考える誰もが心癒やされるガーデン デンマーク出身のフラワーアーティスト ニコライ・バーグマンさん。ボックスに花を敷き詰めた‘フラワーボックス’を生み出し、国内外に多数のフラワーブティックを展開する、今をときめくフラワーアーティストです。 20年以上日本に暮らし、切り花の世界で培った感覚を“ガーデン”という形を用いて新たに表現。アーティストとしての次なるステージをここ箱根でスタートさせました。 エントランスから見上げた風景。きらきらとした風景に心躍る。* 9,000坪もある手つかずの森を極力そのまま生かし、9年の時間を費やしながら自ら仲間と開墾してつくった『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』。一昨年の2022年4月にオープンしました。緩やかな傾斜が続く敷地内では、散策路を歩きながら自生する植物や鳥のさえずり、新鮮な空気が味わえ、多くの人々が自然を求め訪れています。 箱根はアジサイの名所ですが、園内の約2,000株ものアジサイは、バーグマンさんが植えたもの。7月中旬頃が見頃。 バーグマンさんはかねてより「日々得られるインスピレーションを形にして永続的に残したい」という思いを抱きながら、それにふさわしい場所を探していました。そんなとき、箱根の土地を大切に扱ってくれる人を長年探していた地主さんに出会ったことで、庭づくりの計画が進展。そして、9年の歳月を費やして完成したのが、『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』。「身近な自然を新たな視点で味わってもらいながら、僕の大好きな箱根ももっと知ってもらいたいんです」とバーグマンさん。 デンマークの国土は平らで、最高地点でも海抜わずか173mほどしかないため、日本の連なる山々はとても新鮮で、海抜600mの箱根もとても魅力的でした。この起伏に富んだ地に、デンマークの豊かな自然や慣れ親しんだ近所の農園、家族の庭など、心の原風景を映し出し、日本とデンマークの自然を融合させています。 敷地中に生茂る約2mもあるクマザサを刈って設けた平らな広場。デンマークのアウトドア家具ブランド『SKAGERAK(スカゲラック)』のファニチャーを点在させているので、ここでランチを食べたりお茶をしたりしても。* 風景をデザインするだけでなく、サステナブルであることも大切にしています。例えば、伐採したクマザサは短くカットして、園路をマルチングするチップとして活用。雨後に水がはけやすいほか、ふかふかとして歩きやすいなど利点がいっぱいです。 倒木の幹は花台に、枝葉はガーデン内のオブジェの材料として活用しています。バーグマンさんの豊かな発想は、生命の循環を意識することからも生まれています。 切り株や古い木の根元に着いたさまざまなキノコ。自然な森の姿に出会える。 「箱根には、箱根特有の色や香りのある独自の自然が息づいているんです。ユニークな生態の保全を第一に、自然と融合できる機会を提供しつつ、癒やしと新しい発見、インスピレーションを得られるような場所を目指しています」。 枯れ枝をスクエアにまとめたものと、ツゲのトピアリーをリズミカルにレイアウトした、見せ場となっている造形的なシーン。 左/木のツルを繭型に編んで吊るした、不思議な雰囲気を醸すオーナメント。中/折れた木の枝を束ねて作ったオブジェ。左/伐根したクマザサの根をボール状にまとめたオブジェ。 左/梅の剪定枝を園路脇の柵に活用。ところどころに芽吹いた葉が見られる。中/枯れ枝や剪定枝を鉢植えのマルチに活用。サークルを描いて施すところが、やはりデザイナーならではの小技。 右/流れるように並べられた本小松石。アーティストらしい小技があちこちで見られる。 パビリオンが感じさせるフラワーアーティストが紡ぐ洗練 自然に親しみながら木漏れ日の輝く園路をたどると、空間で都会的な雰囲気を放つパビリオン(グラスハウス)が出現します。黒いフレームの北欧の雰囲気がたっぷり感じられるガラスの温室。バーグマン氏が気に入っているデンマークのメーカー『JULIANA社』のものです。色は森の中で悪目立ちしないブラックをセレクト。 最初に出会うショップパビリオンは、バーグマンさん氏がセレクトした草花を販売するコーナー。初夏は大好きなアジサイをメインに、白・ブルー・紫・ピンクの花が、『SKAGERAK』のファニチャーとともに、洗練されたディスプレイで並べられていました。 マメツゲのトピアリーが、都会的なデザイン性を加えている。 パビリオン内には、見頃を迎えているあでやかな植物が、効果的に配置されています。これらは盛りを過ぎたら切り花のように捨てるのではなく、ほかの場所で養生してまた見頃を迎えたらディスプレイに出していますが、このスタイルをバーグマンさんは「モバイルガーデン」と称し、飾るだけでなく、植物の健やかな栽培・生育にも意識を向けています。 ウッドデッキを斜面側に設置した、一番高い場所にある見晴らしのよいバレービューパビリオン。 イベント時などは、バーグマンさんの豪華なアレンジが見られることも。 北欧の洗練が香る心にくい演出をチェック! パビリオンだけでなく、園内あちこちに散りばめられたデンマークらしいデザインも見逃せません。最も効果的なのがフォーマルな印象が強いツゲやコニファーのトピアリーのレイアウト。一般的には野趣に富んだ空間ではほとんど用いられませんが、あえて異なるスタイルのものを導入させることで、自然な風景を洗練されたシーンまで昇華させることができるのです。これをさりげなくやってのけるのは、バーグマンさんだからこそ。クマザサが茂る原生林に見事に溶け込ませています。 急な傾斜になっている場所に設けられた蛇行する階段は、グラスハウスと合わせてブラックにペイント。北欧らしいしつらい。 園路の分岐点にもゲッケイジュのトピアリーやツゲのコンテナが。箱根の自然に不思議とマッチしている。 大きなコンテナがシンメトリーに置かれた、新たな空間への入り口。自然と相反するスタイルも、コンテナの色形・質感をうまく選べば、こんなにも素敵によくなじむ。 園内には、『SKAGERAK』などのファニチャーがポイントで設置されています。手触りのよいチェアでくつろぎながら、自然の息づかいを感じてみましょう。 北欧インテリアが用いられたカフェで、こだわりのメニューを味わって 散策のあとは、エントランス奥にある『ノム ハコネ(NOMU hakone)』で、オーガニックコーヒーとこだわりのスイーツでひと休みを。心地よい陽光が差し込む空間には、デンマークの老舗家具ブランド『フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)』や、照明ブランド『ルイス・ポールセン(LOUIS POULSEN)』など、スカンジナヴィアスタイルを取り入れており、北欧のくつろぎ時間を楽しむことができます。 北欧らしいブラックの建物の中は、あたたかみにあふれる素敵なしつらい。 カフェでは、ガーデン内の倒木を切り出してバーグマンさん自らデザインした、無垢のテーブルを使っています。すべての人や物に感謝するバーグマンさんの精神が、あちこちで見られます。 「箱根の素材をふんだんに使用したデンマークらしい料理」をテーマに、箱根周辺で育った野菜や果物などを取り入れたサラダやスイーツを提供。国産小麦にこだわったパンは自家製発酵をさせて、毎日キッチンで焼き上げています。ここでしか味わうことができない季節のメニューをぜひ味わってみて。 またすべてのメニューは、ガーデン内のベンチや広々としたカフェパビリオンでいただけます。バスケットに入れてもらえるので、森の中でピクニック気分を味わってみても。 カフェ内には、『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』でしか購入できないさまざまなオリジナルグッズが揃う。またプリザーブドフラワーのボックスも販売。 カフェ横の段差にも、たくさんのツゲのトピアリーが。濃紺の背景に美しく映えているが、きれいに並べすぎないところがポイント。 アジサイが咲き誇る入り口からの坂道。アジサイは、ニコライ・バーグマンの南青山のフラワースクールで花部分を花材として使った株を植えたもの。無駄をせず、循環させることを徹底している。* フラワーアーティスト ニコライ・バーグマンの感性と箱根の自然が共鳴した『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』。ここにつながるすべてのものを大切にする思いと、自然を守ることを核とした姿勢で育まれています。雨の日も楽しめるガーデン。ぜひ、四季折々に彩られる美しい風景を見に訪れてみてください。 ニコライ・バーグマン(Nicolai Bergmann)デンマーク出身のフラワーアーティスト。20年以上日本を拠点として活躍し、現在、国内外に多数のフラワーブティックを展開している。日本の伝統、文化、風土から得られる和のインスピレーションとデンマーク(洋)スタイルと融合させたデザインに定評がある。 【Garden Data】 ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ神奈川県 足柄下郡 箱根町 強羅 1323-119TEL: 0460-83-9087https://hakonegardens.jp/開園時間:10:00~17:00休園日:水曜日 (水曜日が祝日の場合は開園し翌木曜日を休園)アクセス:箱根登山電車・「強羅駅」下車→箱根登山バス・観光施設めぐりバス「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」バス停下車すぐ。「強羅駅」からタクシーの場合約5分。車の場合は、御殿場ICから国道138号→国道733号経由(22km)で約40分。箱根湯本から国道1号→強羅駅→国道733号経由(10km)で約25分
-
フランス
【フランスの庭】ル・ヴァストリヴァル、プリンセスの庭
プリンセスの庭の始まり 庭づくりの始点となった、コテージガーデンの雰囲気がある建物周辺と、針葉樹にクレマチスが這うフォレスト・ガーデンへの入口(写真右)。 前回ご紹介したヴァロンジュヴィル=シュル=メールの近隣に位置するこの庭は、世界大戦後の1950年代に家族と共にフランスに移り住んだモルダヴィア(現モルドバ民主共和国)のプリンセス、グレタ・ストュルザ(Greta Sturdza 1915-2009)によってつくられました。かつて作曲家のアルベール・ラッセルの住居だったという、荒れ放題になっていた小さな家と12ヘクタールの土地を気に入って購入するとともに、ここを「四季を通じていつでも美しい庭にする」と決意します。 ガーデニング成功のカギ フォレストガーデンは、さまざまな樹木や草花の協奏曲のよう。よく見ると植栽の足元はみな枯葉でマルチングされています。 家の周辺からマツやカシなどが生える林の方に向かって、ぼうぼうの草地を整備するために、自ら生い茂ったシダを抜き去るところから始まった庭づくり。まったくの独学ながら、それまでに住んだモルダヴィアとノルウェーでの経験から体得していたことが、彼女の庭づくりの大きな指針となりました。それは、若木の定植を丁寧に行うことと、マルチングを欠かさないという2つです。枯葉やコンポストなど現場にある自然の材料で行うマルチングは、土壌を保護しながら豊かにし、乾燥を抑え、冬には防寒にもなる優れものです。 さりげなく庭の片隅に積み上げた枯葉などはそのままコンポストになる。 美しき調和の庭風景の秘密 高木からグラウンドカバーまで、それぞれの層がしっかり確保され、重なるように景観が作られている。 そして、絵画のような圧倒的な美空間を構成する秘密は、プリンセス・ストュルザが自ら開発したという、高木からグラウンドカバーまでの植物層を明確に分けつつ重ねる構成と、透かし型の剪定です。 雨が多く湿度が比較的高い、また海沿いの強風が吹き付ける土地柄から、庭園での倒木の危険を避け、樹冠に風と光を通すための樹木の剪定は必要不可欠でした。 剪定で形作られたシャクナゲの大木の幹は、独特な美しい造形を見せている。 樹幹部分を十分に透かし、枝の重なりを段々状に整えるような剪定によって樹形が作られます。そのことで、庭の構成に美的なタッチが加わり、さらに生まれるグラウンドカバーから灌木類、中木、高木へときれいな層の重なりのグラデーションが、この庭ならでは。どこから見ても美しい光景を描き出しています。また、しっかり剪定された樹木がある層の下に密に植栽されたグラウンドカバーの植物は、マルチングと併せて、雑草の繁殖を防ぐという意味からも有用です。 和庭園で行われている透かし剪定ともまた違った、オリジナルな剪定により形作られた樹木が庭のデザインのポイントになっている。 四季の美をつかさどる植栽コレクション 森に自生する丈夫な花、ドロニクを群生させた庭の一角は、春らしいナチュラルな華やかさ。 植栽の選定もこの庭らしい魅力が現れているポイントです。プリンセス・ストュルザの植物選びは、徹底した自らの審美眼と、自然に寄り添うものでした。庭好きの例に漏れず、彼女の植物へ向けられた情熱には並々ならぬものがありました。シャクナゲ、ツツジ、ビバーナム、アセビ、ミズキ、ウツギ、アジサイ、マグノリアなどは、土地柄によく合い、彼女の美意識にもかなって、それぞれ沢山の品種が植えられて、庭園に彩りを加えています。 さまざまな針葉樹も庭のデザインポイントに。 例えば園内に700本以上が植えられている、大型のものでは10m以上にもなるシャクナゲは、開花時期の異なるさまざまな品種を選ぶことで、12月(Christmas cheer)から翌年9月(Polar Bear)まで次々に咲き継ぎます。花や葉の造形的な美しさとともに芳香も放ち、庭の四季を彩ります。 オレンジベースのツツジと銅葉のヤグルマソウ。 プリンセス・ストュルザは、気に入った品種はどんどん取り入れ、何年かかけて観察し、必要があれば場所を変え、結果自分の望む庭のイメージに合わないものは容赦なく撤去するというスタイル(他の庭園愛好家に分けるなどして)で、庭の植物を選定してきました。この地の自然の気候の中でよい状態で生き残る丈夫さを必須条件とし、温室などの設置はしていません。 フォレストガーデンを抜けて、開かれた傾斜地へつづくエリア。さまざまな異なる雰囲気の植栽の島々が連なる芝地が広がる。このエリアでは現在も維持管理だけでなく、プリンセスが育成した庭師たちにより新しい作庭が続けられている。 特定の植物を多品種網羅するという植物学的な意味でのコレクションではなく、野生種も希少な栽培種も含め、あくまで彼女の審美眼に沿って長年選ばれてきたことで、庭のための魅惑的な植物が膨大にコレクションされました。 こちらも、フォレストガーデンを抜けて、開かれた傾斜地へつづくエリア。 コレクションには希少な植物が多数含まれていますが、希少性よりも大切なのは自らの庭のイメージと、全体の調和です。自生のオークやシラカバ、ヒイラギなどの樹木は積極的に生かしながら、エキゾチック過ぎる竹類やユーカリや木生シダなどは、ノルマンディーらしい風景にならないとして取り入れていません。逆に、冬の庭の見所となる針葉樹類の珍しい品種などは積極的に取り込んでいます。 オーナメンタルな樹木を積極的に利用。 また、四季を通じて美しい庭というコンセプトにとって“冬にも美しい庭”を実現することが特に重要な部分です。落葉樹の葉がすべて落ちた冬季に、開けた空間で何を見どころとするか。それは、常緑樹の姿や装飾的な風合いを持つ樹木の幹の色や形、質感などで、それらが冬の庭を魅力的にするということをフランスでいち早く広めたのも、プリンセス・ストュルザの功績の一つだったと言えるでしょう。 プリンセスの贈り物 ノルマンディーの地での庭づくりに当たっては、95歳で亡くなる2009年まで、庭のコンセプト作り、植栽のプランニングばかりでなく、芝刈りや雑草取り、花がら摘み、樹木の剪定に至るまで、ガーデニング全般をプリンセス自ら率先して行っていました。 こちらはハンカチの木やシラカバがアクセントに使われ、グリーン〜ホワイトのグラデーションが爽やか。 また、庭園を公開し始めてからは、見学者の案内も自らが中心となって行ったプリンセス・ス トュルザ。彼女はお気に入りの植物について熱意を込めて見学者に語り、惜しみなく知識をシェアし、フランスの園芸愛好家たちや造園・園芸界に多大な影響を残すことになります。雇った庭師の数はそう多くなかったといいますが、そこには自らが実際の庭仕事を知るガーデナーが庭主だからこそ。実用的でローコスト・ローメンテナンスのナチュラル・ガーデニングを実現させるための知恵が、そこかしこに組み込まれている庭にもなったのです。 現在は遺族が所有する12ヘクタールのこの庭園は、プリンセス自らが庭仕事をレクチャーした4人の庭師たちによって維持管理が続けられています。ノルマンディーの地にやってきた北方のプリンセスの審美眼と植物への情熱、弛まぬ努力が生んだ四季を通して美しい珠玉の庭園。機会があれば季節を変えて何度でも、訪れてみたいものです。 春先は美しい新緑に魅了されるこのエリア、秋には日本とはまた違った紅葉の風景が見られるはず。
-
フランス
【フランスの庭】ノルマンディー珠玉の庭園「モルヴィルの庭」を訪ねて
名園が集まるノルマンディー地方の庭園「モルヴィルの庭」 自宅建物近くに位置する「オレンジの庭」コーナーは、イエロー〜オレンジ色のトーンの植栽に美しく彩られたアンチームな空間。 ノルマンディー地方、英仏海峡を臨む断崖絶壁のあるヴァロンジュヴィル=シュル=メールの村は、冬も比較的に温暖かつ降雨量が多いという点で庭づくりに恵まれた環境ゆえか、フランスでも選りすぐりの名園が集まる場所として知られています。 その中でも、いつか訪れてみたいと思い続けていた庭が、フランス造園界の貴公子と呼ばれたパスカル・クリビエ (Pascal Cribier)が40年以上をかけてつくり続けた自邸モルヴィルの森の庭です。 フランス造園界の貴公子パスカル・クリビエ アメリカ原産の球根花カマッシアは、土地によく合い手がかからずに美しく、クリビエもお気に入りだった花だとか。背景には満開のビバーナム。 パスカル・クリビエ(1953- 2015)は、モデル、仏ナショナル・チームに所属するカートのレーサーなど、造園家としては異色の経歴の持ち主。アートと建築を学んだのち、パートナーのエリック・ショケが1972年にモルヴィルの森の土地を購入したことがきっかけで、独学で庭づくりを始めます。富裕層が主な顧客であったことから造園界の貴公子と評され、また、施主との意見が合わないとさっさとプロジェクトから手を引くこともあり、自由分子などと呼ばれることも。 庭づくりにあたっては、自然に対峙しその意を汲みつつ、細部にわたって自身の美意識を貫き、ルイ・ベネシュとともに手がけたチュイルリー公園の大規模改修プロジェクトなど、数多くの優れた庭園デザインを国内外に残しました。 モルヴィルの森の庭 かつては放牧地と森だった、急傾斜で断崖絶壁の海へと下っていく10ヘクタールの土地は、クリビエにとっての実験の庭となります。急斜面ゆえに、トラクターなどを乗り入れることができず、庭づくりはクリビエとショケ、そして彼らを支えた地元出身の庭師ロベール・モレルの3人によって、すべて手作業で行われました。創始者の3人亡き後の現在は、クリビエの弟ドニ・クリビエが庭園を継承し管理に当たっています。 下枝は残しつつ大胆に透かし剪定された独特のフォルムの松。 海への眺め、空への眺め 下枝は残しつつ大胆に透かし剪定された独特のフォルムの松。 樹齢40年以上の見事な姿で来訪者を魅了するクリビエらが植えた松の木々は、日本庭園とはまた違った形で厳しく剪定された樹形の、独特のフォルムが印象的。剪定は真向かいの海からの強風による倒木を避けるために必須であったとともに、独自のフォルムを形造る手段ともなりました。また空への眺めを確保し光を通すために積極的に剪定によって木々の枝を透かす手法が、独自の美的な景観を作り出します。 自宅の居間の窓からの海に向かう見事な眺望も、もともとあったものではなく、彼らが切り開いて作り出した景観。一刻一刻変わる海と空の光の表情の眺めは、一日見続けても飽きないほど。 自宅窓から海へ向かう眺めも、人工的に作り出したもの。天候によって、一日の時間によって、刻々と表情を変える。 悪条件もチャームポイントに しっかり形作られたオークの木がアクセントとなった。すり鉢状の渓谷となっていく芝地。 丸みをつけつつ刻まれた溝は、手作業で作られた排水のための手段ですが、見た目も美しく面白い効果を出しています。 夏には野の花が溢れる草原を越えると、オークの大樹がある、すり鉢状の傾斜の芝地に至ります。粘土質の土壌ゆえに水捌けが非常に悪いという条件を改善するために、手作業で刻まれた溝が、そのままデザインのアクセントとなっているのも見事なセンスで感動します。 植物へのこだわりから生まれるデザイン モルヴィルの庭では、在来の植物も栽培種の植物も、それぞれの特性に合う場所を選んで共存しています。植物の特性と土地の条件を見極めて適材適所に配置することは、その植物がしっかり育つためにも、その後のローメンテナンスのためにも必須。実地で庭づくりを学んだクリビエの植物への造詣は深く、「庭づくりをより完璧なものにするために」と協力を依頼された植物学者も驚くほどだったと言います。植物をよく知ることが、庭のデザインにとっても非常に重要だということを体得していたのでしょう。 海に向かって芝地を下る途中の、枯れ葉の香りからカラメルの木と呼ばれるカツラの木もフランスでは珍しい。 例えば、日本では方々に自生するシャクナゲやツツジ、カメリアなどの花木が、フランスでは栽培の難易度が高い希少な花木なのですが、多雨に加えて酸性が強い土壌を利用して積極的に庭に取り入れたそれらの花木が見事に育った姿は、見所の一つになっています。 日本には自生するお馴染みのカメリア。フランスでは難易度の高い希少な花木として大人気です。 カメリアやツツジがラビリンスのような一角を作っていたり、また、森の中にポツポツと植えられたカメリアが既存の森の植物たちと自然に調和した風景も魅力的。一見、自然のままに残したように見える森エリアの散策路には、自らのお気に入りのグラス類をさりげなく補植してボリュームを調整するなど、細かに手が入っています。 シラカバの木々の葉っぱを通して柔らかい光が降り注ぐヒイラギのラビリンスは、オリジナルかつポエティック。 また、ヒイラギの生け垣とシラカバの木々を合わせたラビリンスは、シンプルな組み合わせながら詩的で素敵な空間に。合わせて植栽されたマンサクが咲く早春の情景をイメージして作られた場所だそうで、その頃にはさらに素晴らしい景観が見られるのだろうと想像します。 シャクナゲやカメリアなど、日本でも馴染みが深い花木たちが、ノルマンディーの地でも愛されています。 庭の管理をラクにおしゃれするデザイン 庭の至る所で出会うスカート型剪定の生け垣。 また、敷地のスペースや、車も通る道路の区切りに使われている生垣の裾広がりの形にも注目です。スカート型剪定と呼ばれる、クリビエが好んで生け垣に使った形ですが、優雅な雰囲気を醸しつつ、じつはこれで下方の枝にも光が当たりやすくなり、また生け垣の下に生える雑草抜きをしなくて済むという、優れモノなのだそう。用の美の精神が至る所に行き渡ったクリビエのデザインの一例です。 庭園入り口近くのコーナー。デザイン性に富んだ果樹と灌木・多年草を合わせた植栽。 それぞれの植物への深い理解と愛着をもって、地の利も不利も生かしきって、自然と人為が美しく協調したクリビエの現代の庭。変奏曲を奏でるようにどこまでも美しくさまざまな表情を見せるそのデザインの根底には、自然と対峙し、完璧な美の世界を完成するために、どこまでも自らの意志を貫き、コントロールしようとする、フランスのフォーマル・ガーデンの伝統が滔々と流れているように感じられたのが印象的です。
-
静岡県
「フラワーガーデンコンテスト浜名湖花博2024」参加者募集中!
あなたのアイデアで浜名湖花博に新たな魅力を! 2004年に開催された国際園芸博覧会「浜名湖花博」の会場跡地を再整備し、2005年にオープンした「浜名湖ガーデンパーク」。20周年を記念し、2024年春に「浜名湖花博2024」が開催されます。会場となる浜名湖ガーデンパークの水辺の景観を充実させるため、「心安らぐ水辺の風景」をテーマに、フラワーガーデンコンテストの参加者を募集中です。あなたのガーデンアイデアを浜名湖ガーデンパークで発揮させるチャンスです! コンテスト概要 コンテストテーマ/心安らぐ水辺の風景会場/浜名湖ガーデンパーク内 国際庭園エリア(静岡県浜松市西区村櫛町5475-1)応募書類/応募用紙・デザイン画・使用予定植物リスト応募受付期間/2023年6月9日(金)*当日消印有効募集部門・対象者(以下) ●詳細はこちらからご確認ください 浜名湖ガーデンパークとは 浜名湖の景観を生かし、楽しいレクリエーションの場として古今東西の庭文化を表現することがこの公園のコンセプトで、入場無料なのも嬉しいところです。56万㎡にも及ぶ敷地は、「西側エリア」、「街のエリア」、「里のエリア」に区分され、特に花壇や美しい庭園を持つのが「里のエリア」内の「花の美術館」、「百華園」、「国際庭園」、「花木園」です。早春から冬まで四季を通してうまく草花や花木による開花リレーをつないでいるため、いつでも見ごたえがあり、年間130万人が訪れる人気のフラワースポットです。訪れた方々からは「素敵な花をたくさん見ることができて心が癒されました」「散歩がとてもしやすかった、芝生がきれい」などの感想が寄せられています。園内は2時間くらいで周遊でき、お弁当や飲み物の持ち込み可。ペットの同伴もOKです。 一番の見せ場は「印象派庭園 花美の庭」 光り輝くような色彩美に優れた庭園 浜名湖花博でつくられた「花の美術館 モネの庭」を再整備し、2005年に披露されたのが「印象派庭園 花美の庭」。印象派の画家、モネが愛したフランス、ジベルニーの自邸の庭を模してつくられた庭を、15年かけて進化させた芸術的な庭園です。広い園内は、整形式フランス庭園の「花の庭」と回遊式日本庭園の「水の庭」で構成。写真はバラのアーチを連ねたシーンで、色彩豊かに空間を彩っています。「花の庭」では、約300品種、500株のバラが見られます。 「花の庭」の各花壇エリアでは、モネの時代に表現できなかった多彩な色彩の花々、優美なフォルムを持つ植物を用いて、現代的な印象派の庭園をつくりだしています。朝の透明感ある爽やかな光を表現する「朝陽の花壇」、太陽が沈んで茜色へと移りゆく色彩を表現した「夕陽の花壇」、すべての色が溶け合いグレーに変わってゆく「薄暮の花壇」など、「光」をテーマにした情感あふれる植栽が見どころです。 春はネモフィラ、夏はヒマワリ、秋はコスモス 群稙で魅せるフラワーカーペット 「浜名湖ガーデンパーク」内の「花ひろば」では、メインの花壇として季節によって草花を入れ替えて群植し、ダイナミックな景色をつくっています。春に彩るのはネモフィラで、4月頃が見頃。3,000㎡に約30万本が植栽され、青いカーペットのように一面を埋め尽くします。 「花ひろば」の夏を盛り上げるのは、なんといってもヒマワリ。‘サンマリノ’一品種のみが約4万本植栽されています。‘サンマリノ’は草丈160〜170㎝、ちょうど人の背丈くらいで咲く、写真映えのする品種です。大輪で華やかな表情のヒマワリを背景に、ぜひ記念写真を撮りましょう。 秋に「花ひろば」で華やぐのは、コスモス。品種は‘ドワーフセンセーション’で、濃いピンク〜淡いピンク、白の花色をミックスして、約40万本も群植しています。見頃は10月で、レジャーにぴったりの清々しい季節ですから、ぜひ足を運んでください。 12月中旬〜2月は、「里のエリア」にある百華園のシクラメンが見頃に。写真は「青いシクラメンの小径」で、青みが強い紫色のシックな品種‘アロマブルー’と‘ライラックフリル’を約1,000株植栽しています。花が少なくなる真冬に、これほどの花でいっぱいの景色が見られるのは嬉しいですね。 遊覧船クルーズ&展望塔も利用してみよう 「浜名湖ガーデンパーク」では、遊覧船クルーズが15〜20分間隔で運航しています。見頃の花や庭園のガイドがあり、10分かけて水路を進みます。料金は大人が片道600円(往復1,000円)、子ども(3歳〜小学生)が300円(往復500円)。公園中央を東西に水路をクルーズするため、園内からは見られない景色や花を楽しむことができます。車椅子やベビーカーの使用可、ペット同伴の乗船もOKです。 「浜名湖ガーデンパーク」のほぼ中央に、ガーデンパーク全景を一望できる高さ50mの展望塔があります。料金は1人1回のみで一般・高校生300円、小・中学生100円、高齢者(70歳以上)・障がい者200円。利用時間は9:00〜16:30(9〜5月)、9:00〜17:00(6〜9月)。 展望室の壁面はガラス張りになっており、公園内はもとより、美しい浜名湖まで見渡せます。展望台の一部には屋根のない場所があり、屋外の風を感じることもできます。東西南北、四方を一望できる見晴らしのよい景色を楽しみましょう。 2018年7月に、新しく食事処「のたね」がオープンしました。営業時間は10:00〜16:00、客席数は36席あります。オススメメニューは、通年食べられるうなぎ丼(1,600円)、春〜夏期間限定の鱧かば丼(1,200円)・釜揚げシラス丼800円、秋〜冬期間限定の牡蠣かば丼(1,200円)。ほかにコーヒー、生姜湯、梅ジュース(各200円)、生姜湯200円などのソフトドリンク、ソフトアイスクリーム350円、ジャム氷300円などもあります。 写真はうなぎ丼ミニ(1,000円)。地元の名物を良心的な値段で食べられます。 鱧かば丼ミニ(800円)。春から夏の旬の味を楽しめます。