庭の骨格やシンボルともなる庭木は、ガーデンの印象を決めるキーアイテムです。そんな庭木として、プロが選ぶユニークで新感覚な樹木を取り入れてみませんか? 園芸歴30年以上のベテランガーデナー、遠藤昭さんが、期待の庭木ベスト7をご紹介。海外では人気があっても、まだ日本では育てている人が少ない樹種なので、新鮮な庭シーンの演出に一役買ってくれること間違いなし! 日本でも比較的育てやすいセレクトです。
目次
感度の高い人々が選ぶ先端の庭木
趣味のガーデニングが高じて、定年退職後専門学校に通い、プロのガーデナーとなった。それから既に10年以上になるが、私のガーデニングはオーストラリア原産の「オージープランツ」が中心である。そして、仕事をしてきたなかで、オージープランツを好む客層は、かなり先進的なライフスタイルを好む人々であると感じている。お客様は、在日のイギリス人やオーストラリア人、海外生活経験者、そしてパイロットや海外出張の多い人、あるいはデザイナーや感度の高い職業の人などさまざまだ。
そんな彼らから学ぶことはたくさんあるのだが、特にオージープランツと同時に注文をいただく樹木が、とても興味深い。私自身が密かに、「これ、いいなあ~」と思っている樹木がズバリ、注文されることが多いのだ。それも一人ではなく、カブる。こうした樹木の多くは、私が海外旅行などで目にして気になったもので、注文主のきっかけも、やはり“海外で見て”欲しくなったというケースが目立つ。ある意味、彼らが選ぶ樹木は世界の先端を行くものたちなのだ。
今回は、そんな先端的でマストバイな樹木を7種ピックアップしてみよう。
おすすめ①
西洋ニワトコ‘ブラックレース’
黒葉の西洋ニワトコを初めて目にしたのは、約15年前のオーストラリア旅行でのこと。私にとって「一目ぼれ」で、ネームタグを写真に残し、帰国後に探したが、日本では当時入手できなかった。
その後、5年前にイギリスのガーデン巡りのツアーで再会し、やはりカッコいいなあ~と写真を撮ったが、日本では入手できないモノと思い込んでいた。
ところが昨年、ベテランガーデナーのお客様から西洋ニワトコの注文をいただき、遅ればせながら国内でも流通していることを知った。
その後、ほかのお客様からも西洋ニワトコの注文をいただき、いろいろ調べてみると、いまアメリカで人気らしい。黒葉の庭木としては、20年くらい前にネムノキ‘サマーチョコレート’が話題になったことがあったが、この西洋ニワトコや後述するスモークツリーなどにも黒葉種があり、これから人気が出ると確信している。
学名:Sambucus nigra ‘Black Lace’
別名:西洋ニワトコ、エルダーフラワー
科名:スイカズラ科
原産地:ヨーロッパ、北アフリカ
分類:落葉低木
【育て方】
日当たりのよい場所、あるいは明るい半日陰でも育つ。肥沃な土壌を好むため、鉢植えの場合は赤玉6:腐葉土3:堆肥1の割合でブレンドした用土に植え付け、成長期に追肥を施す。西日は避けたほうがいいだろう。落葉樹なので、剪定は落葉の2月末ぐらいまでに済ませよう。
おすすめ②
ロシアンオリーブ
ロシアンオリーブとの初めての出会いは、4年前の中央ヨーロッパ旅行だった。まずハンガリーで見かけ、シルバーリーフのオリーブのようだと思い、そのしなやかな枝ぶりが印象に残った。その後、スロバキアやオーストリアでも目にした。
旅行中、ガイドさんに尋ねたが、樹種は不明だった。帰国後に調べ、ロシアンオリーブであることが判明。一見オリーブに似ているが、じつはグミ科の植物なのだ。
ロシアンオリーブのよいところは、寒さに強いことである。一般的なオリーブの耐寒性はマイナス3℃程度とされているが、ロシアンオリーブはマイナス20℃ともいわれる。グミの仲間なので、実った果実はジャムにして食べることもできる。
学名:Elaeagnus angustifolia
別名:ヤナギバグミ、ホソバグミ
科名:グミ科
原産地:中央アジア
分類:落葉樹
【育て方】
丈夫で耐寒性もあり育てやすいが、成長が早いため、剪定はマメにしたほうがよい。
地植えにする場合は日当たりのよい場所に植える。
鉢植えの場合は、水はけのよい土(例:赤玉7、腐葉土3)を使用し、表土が乾いたらたっぷりと水を与える。施肥は地植えの場合は不要だが、鉢植えの場合は2月に緩効性化成肥料か発酵油かすを与えるとよい。
害虫はアブラムシが発生するので、オルトランなどを散布して対処する。
おすすめ③
スモークツリー
スモークツリーはかなりポピュラーな部類だが、さまざまな品種があり、まだまだ人気の出る庭木だと思う。日本ではあまり大木は見たことがないが、海外に行くと驚くほどの大木に出くわして、「カッコいい~」と思う。私が見たのは、イギリスのコッツウォルズ。スモークツリーがこんな高木になるのに驚いた。
スモークツリーの魅力は、言うまでもなく煙のようなふわふわとした不思議な花だが、銅葉の品種もあり、花の咲かない季節も庭木として魅力的である。
スモークツリーは、アカシア・ブルーブッシュなどのシルバーリーフと合わせるとカッコいい。紅葉も綺麗だ。
学名:Cotinus coggygria
別名:ケムリノキ、カスミノキ
科名:グミ科
原産地:南ヨーロッパ~中国
分類:落葉樹
【育て方】
スモークツリーは、日当たりと水はけのよい場所に植えるとよい。比較的、横にも広がりやすいので、植えるときにスペースを確保しておこう。寒さ暑さともに強いので、育てやすいが、原産地が南ヨーロッパなので、乾燥気味に育てたほうがよいだろう。
おすすめ④
シルバーティーツリー
最近、オージープランツブームで、庭木にメラレウカやユーカリ、ブラシノキなどが使用されることが増えてきた。メラレウカやブラシノキは育てやすく、おすすめだが…ちょっとポピュラーになりすぎた感じがする。ティーツリーというとメラレウカを指すが、今回取り上げたシルバーティーツリーはメラレウカではなく、レポトスパルマム、分かりやすく言うとギョリュウバイと同じ仲間である。
シルバーティーツリーの魅力は、なんともいえない細長く美しいシルバーグリーンの葉だ。しなやかな枝がそよ風に揺れる姿には、とても癒やされる。そしてギョリュウバイのような可愛い花を咲かせる。東オーストリア原産なので日本でも育てやすく、寒さにも強い。
学名:Leptospermum brachyandrum
別名:ウィーピング・ティーツリー
科名:フトモモ科
原産地:オーストラリア・ニューサウスウェールズ州
分類:常緑低木
【育て方】
オージープランツなので、日当たりのよい場所で水はけのよい土を使用するのは定番だが、意外と乾燥に弱いので、鉢植えの場合、水切れには注意が必要。
おすすめ⑤
ジャカランダ
この数年、急に人気が出てきた庭木だ。葉も花も美しく、世界三大花木としても有名だ(他の2種はカエンボクとホウオウボク)。以前は寒さに弱いとされてきたが、太い木になるとマイナス3℃程度までは十分に耐えるようである。「ジャカランダフェスティバル」が開催される熱海が、近年ジャカランダの名所として有名だ。
実生苗だと開花に10年以上かかるといわれるので、花を楽しみたいなら接ぎ木苗を買うことをおすすめする。観葉植物として売られているジャカランダは、鉢植えのままの開花は期待できない。
ブリスベンのジャカランダ。こんなに巨大に育つので、一般家庭には矮性品種をおすすめする。
ジャカランダに関しての記事もご参照いただきたい。
学名:Jacaranda
別名:キリモドキ
科名:ノウゼンカズラ科
原産地:中南米
分類:落葉樹
【育て方】
寒さには比較的強く、東京以西の太平洋岸では露地植えが可能だが、厳しい寒さの年は枝が傷み、細い枝は枯れこむ。大きな木になると耐寒性も出てくるが、苗木のうちは鉢植えで育て、冬は屋内に取り込むか、軒下や霜のあたらない場所で越冬させるほうが無難。
日当たりと水はけのよい場所で育てる。つぼみにアブラムシが付きやすいので注意。肥料は、成長期に液肥を2週間に1度程度与える。
おすすめ⑥
アカシア・コグナータ
えっ? これがミモザの仲間? と驚くほど優美な樹形。ヤナギのように枝垂れる姿が特徴的だ。多くの人が、まだ見たことがないであろう、期待のアカシア・コグナータである。現物を見たら、きっと惚れ込んでしまうに違いない美しさだ。風にそよぐ姿は、見ていて本当に癒やされる。花色は上品なクリームイエロー。
アカシアの仲間はオーストラリアだけでも700種以上あるといわれるが、私は最も美しいアカシアだと思う。オーストラリア南東部の原産なので、比較的日本でも育てやすい。
学名:Acacia cognata
別名:リバーワトル
科名:マメ科
原産地:オーストラリア南東部
分類:常緑低木
【育て方】
一般のオージープランツ同様に、日当たりと水はけのよい場所で育てる。栽培の際は支柱を必ず立てること。耐寒性は比較的あるが、強い霜にはあてないほうがよい。樹形の問題か枝が密集すると枯れこむことがあるので、風通しがよくなるよう剪定を行う。カイガラムシが発生しやすいので注意。肥料は控えめでよい。
おすすめ⑦
グレヴィレア・エレガンス
オージープランツブームの中でもグレヴィレアは人気だが、その中でも有望株が、このグレヴィレア・エレガンス。名前の通りエレガントな樹木だ。グレヴィレアの花は、咲いてすぐに散ってしまう品種が多いが、このエレガンスは花もちがよい。開花時は赤だが、日々ピンクに変化してゆく。Grevillea longistyla とG. johnsonii の交配種で成長が早く、丈夫で高さ4m程度になる。シンボルツリーにぴったりだ。
2週間くらい経ってもほとんど色褪せない。
雨に濡れる細い葉も美しい。
学名:Grevillea longistyla x johnsonii 、 Grevillea ‘Elegance’
科名:ウアマモガシ科
原産地:オーストラリア東部
分類:常緑樹
【育て方】
一般のオージープランツ同様に、日当たりと水はけのよい場所で育てる。耐寒性は比較的あるが、強い霜にはあてないほうがよい。病害虫はめったにない。成長が早いので、地植えの場合はスペースを確保しておくこと。鉢植えの施肥は、リン酸分の少ない肥料を控えめに。地植えの場合、肥料は不要。
今回ご紹介した7種は、いずれも葉や花、全体の姿にも個性があって、毎日眺めても見飽きない、これから日本での人気が期待できる樹木です。一足先に、新感覚な庭木をガーデンに取り入れてみませんか?
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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