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- 【プロが選ぶ】秋から冬に美しい実をつける庭木 マストバイ10
日に日に秋も深まり、草花も冬姿に変わる時期になりました。木々が葉を落とす頃に美しさを発揮するのが、木の実です。小さくて見落とすことが多いかもしれませんが、改めて観察すると、どれもとても素敵なことに気づかされます。また、庭で育てていれば、木の実は料理に添えたり、スワッグやリースなどに使用することもできて重宝します。今回は、そんな秋から冬に美しい実をつける庭木を10種ピックアップ! ガーデンプロデューサーの遠藤昭さんに解説していただきます。
目次
実のなる庭木1
ビバーナム・ティヌス

木の実というと、パッと思い浮かぶのは赤い実かもしれませんが、私が今までに見た中で一番感動したのは、スペイン旅行で出会ったビバーナム・ティヌスです。
学名:Viburnum tinus
和名:ビバーナム・ティヌス、トキワガマズミ
英名:Laurustinus
科名 :レンプクソウ科(スイカズラ科)
属名: ガマズミ属
原産地:ヨーロッパ・東アジア

このメタリックなブルーの実が、ビバーナム・ティヌスです。ビバーナムというと、「おおでまり」を思い浮かべますが、これもビバーナムの仲間です。常緑の品種で春に白花を咲かせ、秋には、こんな明るいブルーの実をつけます。

アルハンブラ宮殿でビバーナム・ティヌスを3月に見かけましたが、花が咲いていて、前年の実も残っている状態でした。

上写真は、帰国後に苗を購入して、寄せ植えにした大鉢です。もちろん春にはビバーナムの白花が咲きますが、株元にビオラなどを植え込んで彩りをプラスしました。
【ビバーナム・ティヌスの育て方】
剪定は、多くの花木と同様に春の花後に行います。夏になると花芽分化期を迎え、翌年の花を咲かせるための花芽ができます。夏以降に剪定すると、花芽を切り落とすことになるので注意してください。
植え付けの時期は、真夏・真冬を除いた春・秋がおすすめです。植え付けは、根鉢より一回り大きな植え穴を掘り、植え土に等量の腐葉土を混ぜるとよいでしょう。植え付け後は支柱を立てて幹に添え、十分に水を与えます。
実のなる庭木2
サワフタギ

青い実のつく、日本に自生する植物です。日本原産で青い実をつける植物は珍しいです。北海道~九州の各地に分布しており、近年、庭木としても注目されています。
「サワフタギ」という名前は、沢をふさぐように茂るところに由来するようです。

学名:Symplocos sawafutagi
和名:サワフタギ(沢蓋木)、ルリミノウシコロシ
英名:Asiatic sweet leaf
科名 :ハイノキ科
属名: ハイノキ属
原産地:日本・東アジア
【サワフタギの育て方】
国内に自生する丈夫な落葉広葉樹。低木から小高木で、樹高は2~6m。特に施肥などの必要はなく、半日陰~日向の風通しのよい場所で育てます。春からはよく日に当たる場所で、日差しが強くなる5月以降は西日が当たらないような場所が適しています。枝を横に広げる樹形になるので、剪定をこまめにして、整えましょう。
実のなる庭木3
紫式部(ムラサキシキブ)

とても日本的情趣を感じさせる落葉低木ですね。古来、紫は気品のある色とされてきました。花言葉も「聡明」「上品」です。我が家の紫式部は庭の片隅の日当たりの悪いところに植わっていますが、毎年、実をつけてくれます。
学名:Callicarpa japonica
和名:紫式部
科名:シソ科
属名:ムラサキシキブ属
原産地:東アジア(日本・中国・朝鮮半島・台湾)
樹高:2~3m
【ムラサキシキブの育て方】
丈夫な植物で特別な手入れは必要ありませんが、やや湿り気のある環境を好むようです。肥料を与えなくても育ちますが、花後に、発酵油粕などのお礼肥を与えるとよいでしょう。
実のなる庭木4
南天(ナンテン)

赤い実をつける庭木の代表選手のような存在ですね。北側の日当たりの悪い場所に植えていても、毎年赤い実をつけてくれる、家の守り神のような存在です。正月になると、庭に植えていてよかった! と実感させられるのが南天です。“難を転ずる”めでたい木として親しまれています。
学名:Nandina domestica
和名:ナンテン(南天)
英名:Sacred bamboo(聖なる竹)、Heavenly bamboo(天国の竹)
科名 :メギ科
属名: ナンテン属
原産地:日本・中国・東南アジア

南天といえば、和の植物の印象が強いですが、上写真はイタリア旅行中に出会った南天の大鉢です。ダイナミックでカッコよかったです。

やはり南天が活躍する季節といえば、お正月ですね。スワッグに使用したり、手作りする伊達巻きにも南天を添えています。また、茂りすぎた南天を大きな壺に活けると、玄関が華やかになり、お正月気分も盛り上がります。庭にあると、とても便利です。
【南天の育て方】
南天は、庭のあちこちによく生えてきますが、野鳥が運んで来ているのでしょうね。ほとんど手がかからず、ほったらかしで育ってくれるありがたい植物です。ただし、実を沢山ならせるには日照と施肥が必要です。肥料は、春先と秋に与えましょう。
実のなる庭木5
千両(センリョウ)

千両といえば、南天と並ぶお正月の定番花材です。赤い実が美しく、お正月や暮らしの中で活躍するので、庭に1株あると便利です。

夏場の千両の実は、写真のようにまだグリーンで、これもまた可愛いものです。
学名:Sarcandra glabra(Chloranthus glaber)
和名:センリョウ(千両)
英名:Japanese Sarcandra, Senryou
科名 :センリョウ科
属名:センリョウ属
原産地:日本・東アジア

【千両の育て方】
関東以南では、地植えで問題ありませんが、もともと林の中などに自生しているので、明るい半日陰で、あまり風の当たらない場所で育てます。寒冷地では鉢植えにして、冬は屋内に移動し寒さをしのぐほうが無難です。また、開花時期に雨に当たると実がつきにくいともいわれているので、鉢植えの場合は花のある時期は雨を避けましょう。
地植えの場合は、根付いてしまえば施肥や水やりは不要ですが、実つきをよくしたい場合は、発酵油粕などのリン酸を含む寒肥を与えます。鉢植えの場合も施肥は同様です。3年以上の古枝や細い枝には実がつかないので、3月に株元から剪定します。増やす場合は、挿し木か種まきで。種子を採取して実生苗にする場合は、熟した実の果肉を取り除き、よく洗って、種子を乾燥させないように気をつけながら、赤玉土など清潔な土に播きます。土を乾燥させないように管理すると、春には発芽します。
実のなる庭木6
万両(マンリョウ)

千両とくれば、次は万両ですね。野鳥が運んでくるのか、庭の至る所に生えてきます。見逃しがちですが、うつむいて咲く花が意外と可愛いのです。
「千両と万両の違いは?」という質問がよくありますが、万両は実が下向きにつきます。ふと、万両は英名ではMillion dollarとでもいうのかな? と調べたら、英名はcoral bush、学名はArdisia crenataでした。
南天、千両、万両。いずれも、庭の隅っこに植わっていて存在を忘れがちですが、正月には生け花やおせちの盛り付けに活躍してくれる大切な庭木です。
学名:Ardisia crenata
和名:マンリョウ(万両)
英名:Coral bush
科名 :サクラソウ科
属名: ヤブコウジ属
原産地:日本・東南アジア
【万両の育て方】
千両と同様に、関東以南では地植えで問題ありませんが、もともと林の中などに自生しているので、明るい半日陰で、あまり風の当たらない場所で育てます。寒冷地では鉢植えで冬は寒さをしのげる屋内が無難です。また、開花時期に雨に当たると実がつきにくいともいわれていますので、鉢植えの場合は花のある時期は雨が当たらないようにするとよいでしょう。
地植えの場合は、根付いてしまえば施肥や水やりは不要ですが、実つきをよくしたい場合は発酵油粕などのリン酸を含む寒肥を与えます。鉢植えの場合も施肥は同様です。剪定は、必要ありません。背が高くなりバランスが悪くなったら、切り戻しますが、その場合、3年ぐらいは実がつきません。挿し木と種子で増やせます。種子を採取して実生にする場合は、熟した実の果肉を取り除き、よく洗い、種子を乾燥させないようにして、赤玉土など清潔な土に播きます。土を乾燥させないように管理すると、春には発芽します。
実のなる庭木7
クリスマスホーリー

ギザギザな葉が特徴で、クリスマス飾りでもお馴染みのクリスマスホーリー。日本ではあまり大きな木は見かけませんが、本来は樹高7mほどに達する常緑高木です。日本の節分に使用するヒイラギに似ていますが、ヒイラギはモクセイ科で、クリスマスホーリー(西洋ヒイラギ)はモチノキ科なので、植物学的には異なります。

学名:Ilex aquifolium
和名:クリスマスホーリー、セイヨウヒイラギ(西洋柊)、イングリッシュ・ホーリー
英名:European holly、English holly
科名 :モチノキ科
属名: モチノキ属
原産地:ヨーロッパ、北アメリカ、西アジア、アフリカ
【クリスマスホーリーの育て方】
我が家では鉢植えで過去に育てていましたが、夏の西日と乾燥に弱いようで枯らした経験があります。赤い実をつけさせるには、十分な太陽と施肥、水やりなどの管理が必要です。鉢植えの場合、夏の間は直射日光が当たる場所は避け、半日陰に移動するとよいでしょう。
実のなる庭木8
オリーブ

シルバーリーフと実の色とのコンビネーションがおしゃれな雰囲気で、洋風住宅の庭木や、シンボルツリーとして根強い人気があります。商業施設などで樹齢100年超えの風格があるオリーブが植えられているケースも増えました。オリーブの実の色も時期によって異なりますが、これは品種の違いではなく、成長段階によるものです。花後に小さなグリーンの実がつき、粒がだんだん大きくなり、次第に黒へと変化します。

学名:Olea europaea
和名:オリーブ
科名:モクセイ科
属名: オリーブ属
原産地:西アジア
【オリーブの育て方】
結実させるには、受粉のために異なる品種を2本以上一緒に育てる必要があります。日照を好むので、日当たり良好な場所を選びます。鉢土の表面が乾いたら、鉢底の穴から少し流れ出るくらいたっぷり水を与えます。庭植えの場合は、水やりはほとんど必要ありません。施肥のタイミングは2月と10月です。
実のなる庭木9
ピラカンサ

明治時代に日本に入ってきたので、比較的馴染みのある庭木で、住宅街でも大きくなった株をよく見かけます。あまり手をかけなくても、毎年、たくさんの実をつけてくれるのが魅力です。

我が家では、クリスマスをイメージしたこんな寄せ植えを作ったことがあります。ピラカンサの株元にガーデンシクラメンを植えて、12月から3月くらいまでこの姿を楽しめました。
学名:Pyracantha
和名:トキワサンザシ、タチバナモドキ、ピラカンサス
科名:バラ科
属名:トキワサンザシ属
原産地:南ヨーロッパ、西アジア
【ピラカンサの育て方】
丈夫な植物で、日当たりと水はけがよい場所であれば、土質を選びません。地植えの場合は、施肥も不要です。鉢植えは寒肥として緩効性化成肥料を与えます。水やりは表土が乾いたらたっぷりと与えます。地植えの場合、成長力が旺盛で、棘もあるので、一度伸ばしてしまうと厄介です。毎年3月頃に剪定しましょう。ただ、5~6月に開花し、それが実になるので、剪定で花芽を落としてしまわないよう気をつけましょう。剪定のときは、徒長枝を中心に行い、ある程度、花芽は残るようにしましょう。
実のなる庭木10
マユミ

マユミが属するニシキギ科の“ニシキギ”の名前は、錦のような紅葉の美しさからつけられましたが、その仲間のマユミも、秋になるときれいに紅葉する落葉樹です。そしてなんといってもマユミの最大の魅力は、赤とオレンジの四角い実です。木にぶら下がるようについた実が熟すと、中から紅オレンジ色のタネが現れ、落葉後も残ります。

学名:Euonymus sieboldianus
和名:マユミ
英名:Spindle tree
科名:ニシキギ科
属名:ニシキギ属
原産地:日本
【マユミの育て方】
マユミは日本各地の山地に自生する植物なので、栽培は容易です。暑さ、寒さに強く、病害虫の心配もほとんどなく、日向に植えれば、毎年美しい紅葉と実を楽しむことができます。
木質は粘りがあり、古くはマユミの木で弓を作ったことから「真弓」と呼ばれるようになりました。ほかにも将棋の駒の材料としても利用されています。
半日陰でも育ちますが、美しく紅葉させるためには、日向で育てます。土質は選びませんが、乾燥する場所は避けましょう。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -

えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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