えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-の記事
-
樹木
ミモザ(アカシア)は庭木におすすめ! 黄色い花が魅力のミモザの育て方や種類を解説
ミモザ(アカシア)の基本情報 植物名 ミモザ(アカシア)学名 Acacia英名 Mimosa和名 アカシア、ギンヨウアカシア科名 マメ科属名 アカシア属原産地 オーストラリア形態 常緑性高木 ミモザ(アカシア)は、オーストラリア原産の常緑性高木。ヨーロッパでは、ミモザといえばフサアカシアのことをいうが、日本では、ミモザはマメ科アカシア属の植物の総称で、ギンヨウアカシアやフサアカシアなども含まれる。 ギンヨウアカシア(Acacia baileyana)は、一般的に日本ではミモザとして知られているが、もともとアカシアは、実に多くの品種が世界中に分布するといわれる。しかし、多くがオーストラリア原産で、現地ではワトル・ツリー(wattletree)と呼ばれている。ボンボリ状の可愛らしい黄色の花と、ミモザという響きも素敵で、近年、庭木としても人気だ。マメ科植物なので、比較的痩せた土地でも育つのも魅力。 ミモザ(アカシア)の花の季節はいつ? 花や葉の特徴 園芸分類 庭木、花木開花時期 2〜4月樹高 5〜10m耐寒性 普通耐暑性 強い花色 黄色 「春は黄色い花からやって来る」といわれるが、我が家で真っ先に咲くのがギンヨウアカシアだ。毎年、バレンタインデーには開花する。早春の青空にふわふわイエローの可憐な花が舞い、葉も銀葉で明るく美しく、春を感じて心ウキウキさせてくれる魅力的な花だ。 アカシアというと、「♪アカシアの雨に打たれて……」という流行歌を思い出す方がおられるかもしれないが、この歌のアカシアはニセアカシア(Robinia pseudoacacia)で、北アメリカ原産のマメ科ハリエンジュ属の落葉高木。和名は「ハリエンジュ」といい、ミモザとは異なるので、ミモザ・アカシアの仲間ではない。 僕もかれこれ25年ほど、さまざまなミモザの品種を育ててきたが、多くは成長が早く、数年で丈高くなり、風や雪で枝が折れたり、夏の蒸し暑さで枯れてしまったものだ。 成長が早いと木の寿命も短くなりがちで、花後には剪定をして小型に保ったほうが寿命は長く保てるという。翌年の花芽が7月頃には上がってくるので、剪定は花の直後にしないと、花芽を落とすことになる。 ミモザとアカシアの違いとは 厳密に言うと、ミモザとアカシアは異なる。どちらもマメ科の植物ではあるが、ミモザはオジギソウ属、アカシアはアカシア属に分類される。 ただ、日本でいうミモザはアカシア属に分類され、前述のようにギンヨウアカシアやフサアカシアも含まれるので、この記事では日本式を基準に書いていくこととする。 ちなみに本来のミモザ(オジギソウ属)とアカシア(アカシア属)には、ミモザは触るとお辞儀するように葉を閉じるという特徴があるが、アカシアは触れられても葉が閉じることはない、という違いがあり、それで見分けることができる。 ミモザ(アカシア)の名前の由来 ミモザという名前は、ギリシャ語で「真似る人」という意味の「mimos」に由来している。本来のミモザはオジギソウ属であり、葉に触れるとお辞儀するように動くその動作が、古代ギリシャの劇「ミモスmimos」の劇中に出てくる動きに似ていたことから、その名がついたということだ。 なお、「パントマイム」という言葉は、ギリシャ語の「pantos=すべて」と「mimos」の合成語が語源となっている。 その後、オーストラリア原産のアカシアがヨーロッパに渡来した際、ミモザ(オジギソウ)と見間違えられたことから、アカシアが「ミモザ」と呼ばれるようになったということだ。 ミモザ(アカシア)の花言葉 ミモザの花言葉は、国によって異なる。 日本では、「優雅」「友情」。イタリアでは、「感謝」。フランスでは、「思いやり」「豊かな感受性」。 特にイタリアでは3月8日を「ミモザの日」として、男性から女性へ日々の感謝と敬意の気持ちを込めてミモザの花を贈る、という素敵な習慣がある。ここでいう「女性」は、恋人や妻に限らず、母や祖母、同僚や友人も含めてである。女性たちは、贈られたミモザを飾って楽しむだけでなく、その日は日常から離れて外食やお出かけを楽しむのだ。 ミモザ(アカシア)の代表的な種類 ミモザ(アカシア)には1,000を超える種類がある。ここでは代表的な5種を紹介しよう。 ギンヨウアカシア tamu1500/Shutterstock.com 我が家の庭にもあるギンヨウアカシアは、名前のとおり銀色の葉が美しく、日本でよく出回っている種類。葉の長さが短めなのが特徴で、樹高も低め。コンパクトで育てやすいといえる。 パールアカシア パールアカシア(Acacia podalyriifolia)は、丸い葉と丸いふわふわの花が特徴のミモザ。 上の写真はパールアカシアの実生で、成長が早く4年目で樹高が4mほどになった。一度、夏に枯れたが、残った枝を挿し木にしたら成功して、この木は2代目だ。亜熱帯のクイーンズランド州の南東部に分布しているが、耐寒性があり、雪が降っても枯れることはなかった。ただし、雪の重みで枝が折れることがあるので注意が必要だ。 丸く平たいシルバーリーフがきれいだ。 三角葉アカシア こんな三角葉アカシアという品種もある。名前のとおり三角形の葉が特徴で、シャープなイメージも持ち合わせる。樹高は低めで、他のミモザより花が咲く時期が若干遅い。 プルプレア種 また、新芽が銅葉(紫色ともいわれる)の、プルプレア種も魅力的だ。葉の形はギンヨウアカシアと同じで、銅葉は成長すると銀色に変わる。さらに冬が終わる頃には緑色に変化するので、季節とともにさまざまな色を楽しめる。花の数はあまり多くはない。 ちなみに、「プルプレア」はラテン語で紫という意味だ。 フサアカシア FatimeBarut/Shutterstock.com フサアカシア(Acacia dealbata)は、ギンヨウアカシアより葉が長く緑色なのが特徴。葉は触ると柔らかくて、鳥の羽根やレース編みのようにも見える。樹高が高く10mを超えることもあるので、スペースの考慮とこまめな剪定が必要だ。ヨーロッパでは、「ミモザ」というと、このフサアカシアをさすことが多く、「フランスミモザ」とも呼ばれる。 ミモザ(アカシア)の栽培12カ月カレンダー 開花時期:2〜4月植え付け・植え替え適期:4〜5月、9〜10月肥料:4〜5月剪定:5〜6月 ミモザ(アカシア)の栽培環境 日当たり・置き場所 ミモザは日光が大好きだ。日当たりのよい場所で育てると花付きもよくなる。冬でも気温がマイナス5℃を下回らない地域であれば、地植えもできる。 水はけも大事。そして風通しのよい場所も好む。だが、ミモザの枝は柔らかいので、雨や風で倒れやすくもある。地植えにするときは、幹を支柱などで支えるなどの工夫をしたり、鉢植えの場合は、梅雨や台風のときには安全な場所へ移動させるなど対策はしたほうがいい。 温度 ミモザは、冬でも最低気温マイナス5℃くらいまでは耐えることができる。それを下回ると冬越しは難しいだろう。 夏は25〜30℃くらいが適温だが、水切れには注意が必要だ。 ミモザ(アカシア)の育て方 ミモザの育て方や手入れ方法を解説しよう。 用土 ミモザはあまり土質を選ばない。水はけさえよければ、庭土や市販の培養土でもきちんと育つ。もし用土を自分で配合する場合は、赤玉土6、腐葉土3、軽石1の割合をおすすめする。 水やり ミモザは地植えの場合、植えてから1年くらいは土の表面が乾いたらたっぷりの水やりをしたほうがいいが、根が定着した後は水やりの必要はない。自然の雨に任せるので十分。 鉢植えの場合は、土が乾いたらたっぷりの水をあげるとよい。特に夏はとても乾きやすいので、鉢底から流れ出るくらい十分に水をあげよう。 肥料 ミモザに肥料が必要だとしたら、開花後の4月から5月頃。花が咲き終わったら、長い時間をかけてゆっくり効果を発揮する化成肥料や油粕を使うとよい。 ミモザには自分で窒素を吸収する力があるので、肥料は窒素成分が少ないものをあげるように。 ただ、育ちが悪いなどでないかぎり、必要以上に肥料を与える必要はない。 植え付け ミモザの植え付けの適期は春(4〜5月)と秋(9〜10月)。植え付ける際は前述の日当たりなどを考慮し、慎重に場所を選ぶことが重要。ミモザは移植が苦手だからだ。 市販の苗を購入したら、根鉢のサイズの倍くらいの大きさと深さの穴を掘って植え付けて、水をたっぷりあげる。 植えてすぐは風などで倒れやすいので、支柱を添えるのもおすすめだ。 ミモザは成長が早くどんどん大きくなるので、基本的に地植えが向いているが、鉢植えの場合は、深さのある鉢を選び、植え替えのたびに少しずつ鉢の大きさをサイズアップしていこう。 剪定 ミモザは生育旺盛。放っておくとグングン高さが増して5mは超える高木になる。美しい樹形のミモザに保つためには、そして、細い枝が伸び過ぎて強風で折れてしまうのを防ぐためにも、定期的な剪定が必要だ。 剪定時期は花が咲き終わった5〜6月頃。伸びた枝は切り戻し、混み合っている枝や葉も剪定して、バランスを取るのが重要。 遅くとも7月までに剪定作業は終わらせたい。なぜなら、7月頃からは次の花芽がつき始めるからだ。その後剪定すると、翌年の花つきに影響が出てしまうのだ。 夏越し 耐暑性は強い。夏でも地植えの場合、水やりはしなくても大丈夫。7月から8月にかけて、翌年の花芽がつき始める。 冬越し マイナス5℃を下回らなければ越冬可能。下回る場合は、鉢植えでの管理が必要だ。 ミモザ(アカシア)の増やし方:挿し木、種まきのすすめ ミモザの増やし方には、挿し木や種まきがある。 ミモザは、日本ではあまり長寿ではなく、大きくなるし、夏に突然枯れてしまうことが多いので、梅雨時期に挿し木苗をつくっておくとよいかもしれない。 挿し木苗の作り方は、ミモザの枝を、10〜15cmほど切り出す。その枝の下から半分ほど葉を取り除いて、切り口を斜めに切ったら2〜3時間、コップなどに入れた水に浸す。その後、挿し穂の切り口に発根剤を塗布したら、挿し木用の培養土をポットなどに1/3程度入れたら、割り箸などで穴を開けてゆっくりと植える。表土が乾いたら水を忘れずに。根が出るまで1~2カ月は、なるべく動かさないのがポイント。 また、花後にマメ科特有の鞘に入った種子ができるので、採取して播いて苗を育てるのも楽しい。タネは熱湯に一晩浸けておくと発芽しやすい(オーストラリアの植物は山火事を経験して発芽するものが多い。詳しくは、『オージーガーデニングのすすめ「発芽させる6つの方法」』参照)。 ミモザ(アカシア)のトラブル-害虫、根腐れ- ミモザの害虫被害で最も多いのは、イセリアカイガラムシによる被害。イセリアカイガラムシは、ほかのカイガラムシと同じように、一気に大量発生する。幹につくと樹液を吸って株を弱らせてしまう。 また、カイガラムシの排泄物が葉に付着すると、カビが発生して葉が黒いすすのような粉で覆われるすす病になることも。こうした被害を防ぐためにも、1匹でもイセリアカイガラムシを見つけたら、地道にこそげとるか、薬剤を散布するなど、早めの対処が必要だ。 ミモザの葉が落ちてしまったという場合には、根詰まりによって水が行き届かない乾燥や、逆に水のやり過ぎによる根腐れが原因として考えられる。冬の寒さが厳しい地域では、低温による影響もあるかもしれない。適正な管理で未然に防ぐことができる。 春はミモザ(アカシア)の花粉症に注意 ミモザの咲く春先、この時期は日本ではスギ花粉が飛び散っているが、僕はアカシア(ミモザ)花粉症なのである。あのボンボリのような花は、見るからに花粉がいっぱいではないか! 僕が最初に花粉症になったのは、メルボルン駐在中である。多くの日本人がワトル・ツリーと呼ばれるアカシアの花粉症で悩まされたのだ。 オーストラリアのミモザのシーズン。 Photo/ taewafeel /Shutterstock.com ガーデン都市と呼ばれるメルボルンの花粉の量は、きっと東京の比ではないと思う。家々の庭にはたくさんの花が咲き乱れ、花粉を撒き散らしているのだ。春先から夏にかけて、芝刈りをした夜はもう、花粉症の症状で眠れないほど苦しんだ。アカシアは花も葉も美しいが、花粉症の方は庭で育てるのは要注意かも知れない。 種まきをして発見した感動 長いこと園芸をやっていると、さまざまな感動があるが、僕は新しい植物の神秘を発見した時に感動する。咲いて当たり前の花が咲いても感動はあまりないが、植物の未知の世界に遭遇し、未知が既知のものとなる瞬間に感動がある。このミモザ(オーストラリア原産のアカシア)は普通、偶数羽状複葉であるが、中には三角葉や平葉のアカシアがある。 数年前に、パールアカシア(Acacia podalyriifolia)という、平たい葉っぱの少し変わったアカシアの種子を入手して播いたら、普通のアカシアのような偶数羽状複葉の芽が出てきた。「あれ? 品種が違ったのかな?」と思いつつそのまま育てていたら、ある時、異変に気がついた。なんと羽状複葉の根元が平葉になっているではないか! ユーカリにも幼木の時は丸い葉で、成木になると普通の長い葉になる品種があるが、パールアカシアも成長過程で葉のカタチが変化するようだ。不思議大陸の植物は本当に面白い。 3月8日はミモザの日(国際女性デー) Alena Gridushko/Shutterstock.com 3月8日は国際女性デーとして知られている。国際女性デーは、女性の権利を守り、ジェンダー平等の実現を目指すために、国連により1977年に定められた。 なぜ3月8日かというと、それは1904年3月8日にニューヨークで女性労働者が婦人参政権を求めて起こしたデモに由来する。 また、イタリアでは、3月8日を「ミモザの日」として、男性から女性へ感謝の意を表してミモザの花束を贈る風習があった。3月8日はミモザの花が咲き誇る時期であり、ミモザは国際女性デーのシンボルとなった。 ミモザ(アカシア)を飾る〜剪定枝を活用したスワッグや、リース、ドライフラワーの作り方〜 ところで、このミモザは、最近流行のスワッグの材料にもぴったりだ。つぼみの状態も可愛い。ユーカリやメラレウカと一緒に束ねるのがオススメだ。そうだ、この原稿執筆の手を休めて、スワッグを作ろう…と、庭からつぼみのついたパールアカシアやオージープランツの枝を切ってきて、束ねて、ほんの数分で仕上がったのが上写真だ。庭にオーストラリアの木々があると、ユーカリの香りと共に、おしゃれなインテリアが思い立ったときすぐ楽しめる。 ミモザで作ったリースも、この時期花屋などの店頭で多く見られる。玄関先に、自分で手作りしたリースやスワッグを飾るのも、お客様を出迎えるのに華やかでいい。ドライフラワーにするだけでも、絵になって可愛い。 ミモザのスワッグやリース、ドライフラワーの作り方は、ガーデンストーリーの下記記事をぜひご参考に。 また、伐採したアカシアの木は、オーストラリア・レンガのアクセントに埋め込んで使用している。こうして考えてみると、いろいろと活用方法があるものだ。庭に植えて季節を感じるばかりでなく、生活に活用できるオージープランツ、ぜひ育ててほしい。
-
樹木
美しくたくましい植物「ソテツ(蘇轍)」《我が人生と共に生きた植物》
日本や海外でたくましく育つソテツ お寺でもよく見かけるソテツ。Moonpixel/Shutterstock.com 私にとって、トロピカルなイメージがあるソテツは、九州南部から南西諸島、台湾、中国南部に自生し、園芸植物として世界中で育てられている。TVの時代劇の庭の植え込みには必ずと言ってよいほど登場したり、各地には樹齢数百年の大株が存在したりする。また、お寺や学校や公共施設のエントランスで育つ立派な株立ちも思い出す。日本で古くから盆栽などでも人気の植物であるが、国内のガーデニングの世界では、あまり話題にならないようだ。 最近旅で出会った、箱根の老舗旅館の巨大ソテツ。 宮﨑を象徴する絶景、日南海岸にもソテツが育つ。kan_khampanya/Shutterstock.com 昨今のガーデニングの潮流で、スタイリッシュで育てやすく手間のかからない植物が選ばれているドライガーデンの流行から、ソテツの人気が高まるのではないかと私は期待している。 イギリス、ロンドンの植物園Kew Gardenでもソテツは人気。 アメリカのジョージア州の住宅街にも見られるソテツ。洋風建築に映えますね。Sabrina Janelle Gordon/Shutterstock.com ソテツは「生きている化石」と呼ばれ、中生代、つまり恐竜が出現した時代から姿形が変わらない植物なのだ。私の好きなシダ同様に、2億5000万年前から風雪に耐え、大自然の中で研ぎ澄まされて最適な形で生き残った自然の芸術作品なのだ。 私とソテツの出会いは小学生のころ COULANGES/Shutterstock.com 私が初めてソテツに出会ったのは小学生の時で、親戚の家に、ソテツの盆栽があり、子供ながらに「カッコイイ!」と思った。 私は、中学生の頃はサボテンに興味を持ち、高校生の頃は観葉植物に興味を持ち始めていたが、ソテツに関しては、何と18歳の時に苗を3本買い、半世紀以上も人生をほぼ共にしてきた「我が人生思い出の植物」なのだ。 2005年に上から撮ったソテツ。 私がソテツで魅力的に感じるのは、たくましい葉の美しさと共に、新芽が萌えて出る時のエネルギーだ。それは爆発のように凄い! なんとも生命力を感じる瞬間だ! 毎年6~7月に新芽が勢いよく伸び出て、まるで爆発するようなエネルギッシュな成長が感動的だ。下の写真は、実家から我が家に来て10年目の2005年の写真。樹齢約37年。 左から、2005年6月30日、7月6日、7月19日と、凄い成長を遂げた。 同じく2005年に上から撮った写真。 18歳の時、ソテツの苗木を植木市でなんとなく購入 2008年9月。 このソテツは、私が18歳の時に大学の「不合格発表」を見に行った帰り道に、通りがかった植木市でなんとなく購入したものである。もう、半世紀以上も前のことである。結局、半世紀以上、このソテツとは人生を共にしたことになる。 あの日、第一志望の大学から突き放され、浪人が決まった。この時、何故ソテツを購入したのか? 1本50円で、根も無く葉も無くイモみたいに、ころがされて売られていた。 「え? これが本当に育つの?」と尋ねると、店のオッチャンは「ソテツは生命力が強いから育つんだよ」と答えた。こんな姿から生命を吹き返すなんて思えなかったが……。 私は衝動的に、このソテツを3本購入した。 2005年に植え付けて順調に成長。狭くなったので南側に移植した。2017年7月のこと。 たぶん入試に失敗し、絶望のどん底に突き落とされた自分の姿と、このソテツの惨めな姿が重なって足が止まったのだろう。 そのオッチャンの「強い生命力」という言葉に、若き日の失意の私は揺さぶられたのである。 我が家の一等地に移植後、2024年2月にはこんな立派になった。 2023年8月。 あれから、なんと56年が過ぎた。大学を卒業して実家を離れてから四半世紀は、実家に戻った時にしか見なかったが、45歳の時にオーストラリアから帰国して現在の家に住むようになり、実家から移植した。 3本購入したが、1本は実家で枯れてしまった。実家から連れ帰ってきたソテツは、上手く掘り上げられず、根鉢も崩れてしまい、もうダメかなと思ったが復活した。まさに「強い生命力」を実感したのである。我が家に来てから、既に約30年近くになり、我が家でも大きくなり1回移植した。そして、日当たりのよい我が家の一等地に余裕を持って植えたつもりだが、成長が遅いというものの、30年でかなり成長。巨大化し我が家の庭で育てる限界を感じるようになった。 庭の終活、ソテツを他所へ移植 ソテツを掘り上げるには1週間かかった。大人4人でようやく抱えられる重さだった。 おそらく、いずれいつかは、この家を処分することになるが、ご近所を見ても、家を取り壊すときは庭の植木も根こそぎブルドーザーで処分してしまう。 ソテツ以外にも、自分が大切に育ててきた樹木がブルドーザーで処分されるのは耐えがたい。庭の終活を考えるようになって、幸い大きくなったこのソテツや、ジャカランダ、木生シダのディクソニア、コルディリネなどを広い敷地で引き取っていただける庭が見つかった。 移植場所は、広い敷地のレンタルガレージの一角、日当たりのよい場所だ。2024年4月に移植して、無事に根づき、第二の人生をスタートした。 そして、1本は初めて花を咲かせた。長寿のソテツ、50歳越えは、これから人生の花が開くのだ。ソテツは雌雄別株でこの丸い花は、雌花だ。雄花は長い形だ。 これが雄花。Opachevsky Irina/Shutterstock.com ソテツの寿命は数百年とも言われる。新天地は、どんなに巨大化しても十分なスペースがある。56年前は小さなイモのようなソテツが、こんなに育ち、狭い庭から脱出して、広い土地で伸び伸びと葉を広げる姿に、なんだかホッとした。 本当に長い間、人生を共にしたソテツである。辛いことがあったり、くじけそうになったりした時に、ソテツを見ると元気が出るのだ。私の人生の良きライバルでもある。 立派に育てよう! ソテツの育て方 さて、どんな荒れ地でも育つといわれるソテツだが、育て方に触れておこう。 日当たりのよい場所を好む。 水やりは控えめに乾燥気味に育てる。 地植えの場合には施肥は必要ないが、鉢植えの場合は春と秋に緩効性肥料を与える。 植え替えや移植は春が適期で、鉢植えの場合は2~3年に1回、鉢増しをする。根詰まりを起こしやすいので注意。 寒さに比較的弱く、寒冷地では冬は屋内に入れる。 ソテツ栽培の注意点 成長が遅く、1年で数センチしか育ちません。 種子だけでなく、葉や根にも毒性がある。 雌雄異株で花の形が異なる。 ソテツの増やし方「実生と株分け」 実生で増やす注意点 実生(種まき)も可能だが、発芽するまで数カ月から数年かかることもあるそうだ。植物園勤務時代に挑戦したことがあるが失敗した。種子を植える時は、半分は地上に出すそうだ。また、温度と湿度を保つ必要があり、私は挑戦したものの失敗。おそらく、湿度管理ができなかったのが原因だと思う。 株分けで増やす方法 株が大きくなると根元から子株ができるので、株分けをする。あまり小さいと育ちにくいので、幹が直径5cmを目安にするとよい。 子株からの成長過程 昨春、移植する際に掘り上げたら、たくさんの子株ができていたので植えてみた。 ① 堀り上げ前の親株。② 次々と子株が出てくる。③ たくさんの株ができた。④ 鉢に植えておいた。 56年前に、植木市で1本50円の芋のような苗を、3本購入した時のことを思い出した。あの時の株は、葉も無くてもっと小さかったかもしれない。あれから、半世紀以上も経ち、子株からまた新しい株が誕生した。 この子株も、50年後には巨大化するのだろうか。新天地に移植した2本のソテツは100歳を超え、きっと立派に育っている未来を想像した。 3カ月後には、こんなに新芽が出た。 私が18歳の青春の時から、人生を共にした、“青春のソテツ”が、何故か石川達三の小説『青春の蹉跌(せいしゅんのさてつ)』と重なる。 『青春の蹉跌』の主人公は、夢と野望がやがて破滅して行く青春だったが、私の“青春のソテツ”は違うのだ!(ちなみに蹉跌とは、物事が見込みと食い違って、うまく進まない“失敗の”状態になること) あれから長い歳月が流れた。結局、私は浪人しても、第一志望校に行くことはなかった。もしかするとアノ大学に行っていたら、エリートコースを歩んで、『青春の蹉跌』の主人公のような破滅の人生を歩んだかも知れない……なんて負け惜しみを言ってみたりする。 私は、夢と野望よりも、余裕のあるロマンと微笑みに満ちた人生がスキだ。今、老後を好きな美しくたくましい植物たちと、ピアノとバイオリン&ビオラを奏でて音楽に囲まれ、植物三昧&音楽三昧。自分では幸せと思える日々を送っている。これが、私の“青春のソテツ”。 ソテツは、ずっと私の人生を見守っていてくれた。 田中一村の晩年の作品には「不喰芋と蘇鐵」があるが、その作品をイメージして撮った写真。光に透けて葉が美しく引き立つ。 そして、ソテツはボクの好きな画家、田中一村の絵を思い出させる。 本当に美しくて、たくましいソテツだ。こんなソテツを見ると、加齢で弱音を吐く自分が愚かに思える。残りの人生をソテツのように、美しくたくましく生きよう!
-
一年草
【冬のガーデニング】定番花パンジー&ストックで栽培上手を目指そう!
冬は「のんびり」ガーデニングを推奨 長年ガーデニングをやっていて、常日頃、草花の水やりをはじめとした世話に追われ、時に、「のんびり」ガーデニングを素敵に楽しみたいと思うことがある。その絶好の機会は、雑草など生えず、樹木も成長を止める冬である。そんな「のんびり」ガーデニングを楽しみたい冬に、何を植えようかと悩まないよう、例年、パンジーとストックを「冬の定番」としてかれこれ30年近く育ててきた。 キモッコウバラ(左奥)やロベリア(右)が咲く時期でも、パンジーの花付きは衰えていない。 なぜパンジーとストックなのか? それは10月中旬から5月の連休までと長い期間咲き続けてくれる優等生だからだ。比較的、苗も安く入手でき、余裕のある時は実生(種まき)で育てたりするのも楽しい。ほかの季節はオージープランツをはじめ、比較的マニアックな手の掛かる植物を育てている反動からか、冬は手間の掛からないパンジーとストックを定番に育てることに落ち着いた訳である。 平凡なパンジーとストックを冬の定番にして30年になると言うと、なんだか「進歩の無い人」に思われるかもしれない。しかし、毎年の定番という花の存在は、ホッと安らぎを感じさせてくれるのである。 パンジーとストックを定番にした理由 日々のガーデニングをSNSで情報発信していると、つい新しい情報や背伸びした内容をアップしたくなるものだが、やはり、自分が癒やされ、くつろげる自然体のガーデニングが一番である。30年前を振り返れば、私はガーデニング初心者だった。その時に「初心者でも育てられる植物」がパンジーとストックだったのだ。それに加え、毎年定番の草花を育てるメリットは、「育て方」を毎年経験し、熟知するので失敗がなく、安心していられることだ。 また、この20年でパンジーもストックも品種の性質が向上しているので、安心して育てられるのを年々実感している。昔から親しまれているオールドパンジーやストックこそ、私にとって親しみがある冬の定番なのである。 私のパソコンで過去20年間の写真の中から、パンジーとストックを検索したら約1,000枚の写真がヒットした。年間にすると50枚だから、11月から4月の6カ月間に、ひと月9枚の写真を撮った計算になる。そんな20年間に撮った写真で冬の定番草花のパンジーとストックの魅力をお伝えしたいと思う。 パンジーの基礎知識 Ermak Oksana/Shutterstock.com 学名/Viola和名/三色スミレ英名/Pansy科名・属名/スミレ科スミレ属原生地/ヨーロッパ 私が子供の頃、つまり60年位前には、パンジーは「三色すみれ」と呼ばれていた。江戸時代に日本に渡ったとされるが、60年前の当時は、春の花であり、販売されるのも3〜4月だったと記憶している。20年程前であっても12月頃から販売されていて、その後、年々販売開始が早まり、ご存じのとおり今では10月から園芸店に開花苗が並んでいる。ただし、今年のような猛暑の中では早く購入しすぎても徒長するので、やや寒さを感じる時期まで待ったほうが賢明だ。実生の場合は8月にタネを播けば、12月には開花すると言われるが、今年のような猛暑では難しいかも知れない。 パンジーとビオラの区別についてだが、一時、花径が何センチ以下はビオラと言われたが、最近はミックス品種も多く、学名も両者ともViolaだ。原産地はビオラの方が北部ヨーロッパとされ、寒さにも強いと言われている。 ストックの基礎知識 学名/Matthiola incana和名/アラセイトウ英名/Stock科名・属名/アブラナ科アラセイトウ属原生地/地中海沿岸 ストックも、江戸時代に日本に入り、房総半島で切り花として栽培された。私自身もストックは「切り花」のイメージが強く、我が家で庭で育て始めたのは20年位前からである。パンジーと開花時期がほぼ同じで、育つ環境も似ているので管理しやすい。草丈があるので、パンジーとの寄せ植えなどもバランスがよく、扱いやすい。 パンジーとストックの庭での活用実例 我が家はパンジーもストックも、ごく平凡な一般的な品種を育てているが、写真を紹介しながら説明していこう。 【単植】 1鉢に1~2品種のみをシンプルに植えると、花が引き立って豪華。鉢自体が庭のアクセントになる。 【寄せ植え】 シルバーレースはパンジーを引き立てる。 パンジーは他の植物とも合わせやすく、寄せ植えにおすすめ。 左上/黒花をヒューケラと合わせて大人の雰囲気に。右上/常緑低木のカルーナと暖色系の同系色でまとめた。左下/一年草のアリッサムとの組み合わせは無難だが失敗がない。右下/サラダ用のミックスリーフと寄せ植え。なかなか渋い。 パステルカラーのネメシアなどとも相性がよい。 【庭風景】 小型の安定のよい鉢に植えると、塀の上など狭い場所に飾ることもできる。 次に、庭風景に映える組み合わせやディスプレイの例を紹介しよう。 左/数鉢のパンジーを足元に置き、デンドロビウム・キンギアナムを豪華に引き立てる。右/シダのあるワイルドな庭もパンジーが入ると優しい景色に。 パンジーとストックを一緒に植えると高低差が出てバランスがとりやすい。 ストックもパンジーも雪が降っても寒さに強い。 パンジーとストックの育て方 種まきから育てたパンジー。ある年の8月下旬の様子。 パンジーもストックも育て方はほぼ同じで、種子から育てる場合は、年内に開花させる場合は8月が播種のタイミングと言われてきたが、猛暑の昨今、このスケジュールではかなり厳しい。発芽適温は15~20℃、最高気温が25℃を超えない時期がよいとされているので、今年のような猛暑の年は10月でもまだ暑く、実生の場合は年内の開花は諦めたほうがよい。苗を購入する場合、10月には出回っているが、暑いと徒長するので充分に涼しくなってから購入したほうが無難だと思う。そして、本格的な寒さがやってくる頃までにはしっかり根付かせたいので、地域にもよるが、紅葉の見頃を迎える11月下旬から12月上旬頃が買い時ではないだろうか。 我が家は、毎年、ケース買いをしている。 【植え付け時期】 植え付けは、パンジーは6号鉢に1株、プランターで3~4株と余裕をもって植えるとよい。地植えは20~30cm間隔に。 ストックはやや密に植えないと見栄えがよくないので、8号鉢に3株、プランターで5~6株程度でよいだろう。寄せ植えの場合は、これより若干、密に植えるとよい。地植えは20cm程度。 【用土】 用土はあらかじめブレンドされている培養土が簡単。植え付け時に長期間効く緩効性肥料を施しておくとよい。 【置き場所】 日当たりがよく、寒風は当たらないような場所がよい。 【肥料】 鉢植えの場合は、2週間に1回程度、液肥を与える。 【水やり】 鉢植えやコンテナ栽培の場合、表面が乾いたらたっぷりと与える。 【花がら摘み】 特にパンジーのように種子を作る草花は、花がら摘みをマメにすることが花を長く咲かせるコツ。種子ができてしまうと養分が取られ、子孫を残すのに安心して新しいつぼみを作らなくなる性質がある。花がら摘みを都度することで、子孫を残そうと新しい花が次々に咲く。 今年の冬は基本に戻って、冬の定番のパンジーとストックを育てて、園芸の醍醐味を味わってみませんか? 基本的な草花は、丁寧に育てると見違えるほど立派に育つものです。ぜひチャレンジしてください。
-
ストーリー
日本最北の離島 利尻島・礼文島の花を愛でる旅案内【36種の花図鑑】
予習しなくても次々感動に出会える旅 Rainer Lesniewski/Shutterstock.com 北海道の北部、稚内の西方の日本海に位置する礼文島と利尻島は、高山植物の宝庫として有名です。両島の厳しい寒さと短い夏という環境は、本州の高山の気候と似ており、特に礼文島には多くの貴重な高山植物が育ち、花の浮島とも呼ばれています。正直なところ、「世界でも礼文島でしか咲かない“レブンアツモリソウ”は、6月にしか見られない」くらいの知識しかないなか、漠然と日本に残る貴重な高山植物たちに会いたい! とツアーに参加しました。 礼文島。makieni/Shutterstock.com 特に事前に予習することもなく、北海道の新鮮な海の幸も楽しめるラクチンなツアーで出かけたのです。2泊3日の短い旅でしたが、たくさんの「思いがけない」草花に遭遇。目から鱗の3日間! その感動を、ガーデンストーリーの読者の方にもお伝えしたいと思います。 朝9時に羽田を出発し、13時半には利尻空港に到着。島へは、新千歳空港で乗り換えたのですが、てっきり小型プロペラ機で向かうのだと思い込んでいたら、なんと165席もあるボーイング737という立派なジェット機。それも満席で、驚くと共に、少し安心しました。 礼文島から望む利尻山。applevinci/Shutterstock.com 利尻空港では、利尻富士が迎えてくれました。「利尻富士」と愛称で呼ばれる利尻山は、日本百名山の中では最北に位置し、標高は1,721m。まるで海面から浮かんでいるように裾野を広げ、島のどこからでも眺められました。また、その雄大な美しい姿は礼文島からも見ることができ、今回の旅の中で最も印象に残る景色でした。 初日に出会った利尻の植物14種 早速、バスが向かったのは、富士野園地。ここは、吉永小百合さん主演の映画「北のカナリアたち」のロケ地で有名な場所ですが、エゾカンゾウが咲き乱れる野原…というイメージにはほど遠く、まだ時期が早いため、チラホラ咲いている程度でした。野生の花を見る旅は時期が難しいですね。エゾカンゾウは他で写真を撮れたので、後ほどご紹介します。 富士野園地は、海の見えるのどかな草原でした。マムシがいないので、草原でのロケも安全とか……。かろうじて、遠くにエゾカンゾウが咲いているのが見えました。 姫沼を一周、散策中も雄大な利尻富士が眺められ、可憐な花を咲かせるエンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ノビネチドリなどを見ることができました。 延齢草、延根千鳥、舞鶴草 写真左上から時計回りに、エンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ノビネチドリ、マイヅルソウ。 初日最後の訪問地は、島最南端の仙法志御崎(せんほうしみさき)公園。海抜ゼロメートルから見る利尻富士が有名です。 利尻富士 ここでは、エゾタカネツメクサ、イワベンケイソウ、ハマカンザシ、チシマフウロ、エゾカンゾウ、ハマナス、シロヨモギなど、たくさんの有名な高山植物や海浜植物に出会うことができました。 蝦夷高嶺爪草 エゾタカネツメクサ エゾタカネツメクサ(蝦夷高嶺爪草)は、高山の砂礫地や岩場にマット状に生育する性質で、本州の高山で見られるタカネツメクサの母種とされています。楚々として可愛いですね。 岩弁慶草 イワベンケイソウ まさか利尻島で多肉植物のイワベンケイソウ(岩弁慶草)に出会うとは。多肉植物は寒さに弱いイメージでしたので、後ほど触れるイワレンゲ同様、ここで見られることが驚きでした。 浜簪 ハマカンザシ 和名ではハマカンザシ(浜簪)と呼ばれるアルメリアにも出会いました。アルメリアが利尻島で自生しているとは驚きでした。 千島風露 チシマフウロ チシマフウロ(千島風露)といえば、フウロソウ(ゲラニウム)もイングリッシュガーデンがブームの頃から人気の植物ですね。アルメリアと共に、フウロソウも利尻が原生地なのも驚きでした(驚きが続きます)。ほかにも、園芸品種でお馴染みの、オダマキやアサギリソウも、原種は利尻・礼文にあったのです。まさに植物の宝庫です。 蝦夷萱草 エゾカンゾウ エゾカンゾウ(蝦夷萱草/エゾゼンテイカ)は、本州でも有名なニッコウキスゲと見た目はさほど違いを感じませんでした。しかし、僕の好きな、ヘメロカリスの原種に、こんな日本最北の離島で会えたのも驚きと感動でした。 浜茄子 ハマナス ハマナス(浜茄子)はハマハシ(浜梨)ともいいます。「知床旅情」で一躍有名になったハマナスです。バラ科の植物でJapanese Roseともいわれています。寒さに強いのですね。 白蓬 シロヨモギ 海岸にはシルバーリーフのシロヨモギ(白蓬)が地面に張り付くように群生していました。できることなら園芸に使用してみたい植物です。 黒百合 クロユリ 初日の宿泊先、知床温泉のホテル周辺にも利尻の代表的な花が植えられていました。 それは、僕の大好きな憧れの黒花、クロユリです。以前、自宅の庭で育てた黒花10選でもご紹介しましたが、いつしか絶えてしまいました。 礼文草 レブンソウ レブンソウ(礼文草)には、紫やピンクの花があり、同属の仲間に「リシリゲンゲ(利尻紫雲英)」もあります。通販などでも苗が売られているようですが、当然のことながら、ほかの地域では夏越しが難しそうです。 深山(礼文)苧環 ミヤマオダマキ(現地名:レブンオダマキ)。礼文島で咲くオダマキの正式名称は、一般的にミヤマオダマキです。 ミヤマオダマキは、日本各地の高山に分布する種で、礼文島でもその美しい姿を見ることができます。礼文島では、特に“レブンオダマキ”と呼ばれることもありますが、これはミヤマオダマキの変種や品種という扱いになります。 ミヤマオダマキは、ガーデンプランツとしても多種育てられている西洋オダマキの仲間です。利尻の街中でたくさん見かけました。 地元の日本酒「最北航路」。 驚きの連続でしたが、温泉に入って、ウニ、サーモン、ホタテ、ホッケ等々海鮮類がぎっしりの夕飯を食べて、満足な1日でした。 2日目に出会った礼文の植物12種 Terence Toh Chin Eng/Shutterstock.com 2日目は、海の幸が中心の朝食でスタートです。午前中は生憎の小雨で真冬並みの寒さでしたが、午後からは天気が回復しました。朝、フェリーで礼文島に渡りました。 早速北上し、今回のツアーのメインイベントである礼文島にしかない固有種のレブンアツモリソウの群生地へ。バスを降りて少々歩きましたが、小雨はさほどではなかったものの、冷たい強風が吹き、まるで真冬のような寒さでした。 礼文敦盛草 レブンアツモリソウ レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)の開花は、6月に限られています。この日をめがけてタイミングを合わせたツアーでしたので、寒空の下で無事出会うことができました。ぷっくりとしたクリーム色の可愛らしい花です。この日、花が小雨に濡れていましたが、かえって情緒がありました。 延根千鳥 ノビネチドリ この群生地には、ラン科のノビネチドリ(延根千鳥)も咲いていました。和名は、根が横に伸び、花の形が鳥の飛ぶ姿に似ていることに由来しているそうです。このノビネチドリは、その後もあちこちで見かけました。 春咲山芥子 ハルザキヤマガラシ 黄色い花を見つけましたが、ハルザキヤマガラシ(春咲山芥子)という名でした。ヨーロッパ原産の多年草です。貴重な植生環境の場所にも入りこんで繁茂し、問題になっているようです。 次は、すぐ近くの澄海岬(スカイ岬)へ。透明度の高い青い海で有名な観光スポットで、歌手の中島みゆきさんが「銀の龍の背に乗って」のPVの撮影を行ったことでも有名です。残念ながら青空は見えませんでした。 しかし、途中の小路ではネムロシオガマや、エゾイヌナズナ、エゾシシウド、ハクサンチドリなどを見ることができました。 根室塩竈 ネムロシオガマ ネムロシオガマ(根室塩竈)は、根室という名がついているとおり、北海道本土でも海岸を中心に見られます。葉がシダのように繊細できれいな宿根草です。 蝦夷犬薺 エゾイヌナズナ エゾイヌナズナ(蝦夷犬薺)は一見、アリッサムに似ています。イヌナズナといえば、普通は黄花ですが、エゾイヌナズナは白花で、アリッサムとも同じアブラナ科です。 蝦夷猪独活 エゾシシウド エゾシシウド(蝦夷猪独活)は、草丈100~150cmの大型多年草で、海岸近くに群生していました。イノシシが食べそうな花なので、この名前が付いたそうです。 白山千鳥 ハクサンチドリ ハクサンチドリ(白山千鳥)は、石川県の白山に多く見られるので、この名前がついたそうです。本州では標高が高い山に登らねば見られない高山植物が、一度にまとめて見られるのが、礼文島訪問の魅力ですね。 岩弁慶 イワベンケイ イワベンケイ(岩弁慶)は多肉植物扱いされることもあり、最近はサプリでも有名ですが、もともとは高山植物だったのですね。 礼文岩蓮華 レブンイワレンゲ イワレンゲは多肉植物でお馴染みですが、メキシコ原産だと思っている方も多いのでは? 一般的なイワレンゲは、本州の関西地方以西の海岸に育ち、あまり耐寒性がないと思っていました。見た目はイワレンゲとあまり変わらないレブンイワレンゲ(礼文岩蓮華)、こんな寒い礼文島に自生しているとは、本当に驚きです。 蝦夷延胡索 エゾエンゴサク エゾエンゴサク(蝦夷延胡索)は、生薬に使用されるヤマエンゴグサと似ていますが、苞の形が異なります。 千島風露 チシマフウロ 利尻でも出会った礼文のチシマフウロ(千島風露)。フウロソウ科フウロソウ属の多年草です。別名は、エゾフウロ、エゾノフウロ、トカチフウロ、ハクサンフウロなどがあります。チシマフウロは、園芸用に栽培されることもあります。 チシマフウロとセンダイハギのコラボ。 深山金鳳花 ミヤマキンポウゲ 北海道から本州中部の高山の草原に生えるミヤマキンポウゲ(深山金鳳花)は、特に湿り気のあるゆるやかな斜面では大群落をつくることもあります。初夏の高山の草原を彩る花の代名詞ともされています。 礼文苧環10種の礼文の植物を一気見! 昼頃から天気が回復しました。昼食も海鮮です。これからご紹介する植物の中には、すでに登場しているものもありますが、あちらこちらで咲いていた様子を景勝地も交えてお伝えしたいと思います。 桜草擬 サクラソウモドキ サクラソウモドキ(桜草擬)は、サクラソウ科サクラソウ属の多年草です。別名は、チシマサクラソウ、エゾサクラソウなどがあります。栽培も比較的容易です。日当たりと水はけのよい場所で、よく育ちます。 礼文苧環 ミヤマオダマキ(レブンオダマキ) レブンオダマキは礼文島のみに生息するミヤマオダマキの変種とされ、花色は青紫色または白色です。北海道本島にはミヤマオダマキが生息し、花色は白、紫、ピンクです。 今回の旅行で、野山に限らず街中の住宅の庭にもレブンオダマキが植えられているのを見ました。各所で一番多く見かけた花の一つです。関東地方でも西洋オダマキはガーデニングで一般的ですが、利尻・礼文島に原種がたくさん咲いていたのは驚きです。 根室塩竈 ネムロシオガマ ネムロシオガマ(根室塩竈)は、別名エゾシオガマとも呼ばれています。ネムロシオガマは、絶滅危惧種に指定されています。 礼文小桜 レブンコザクラ 一見、日本桜草かと思いましたが、レブンコザクラ(礼文小桜)は、礼文島の代表的な花の1つであり、花期は5月下旬~6月上旬。礼文島の高山地帯では一面をピンク色に染めるほど咲き誇ります。 桃岩は、北海道礼文町にある景勝地です。日本海の断崖絶壁に突き出た巨大な岩で、その形が桃に似ていることから名付けられました。 舞鶴草 マイヅルソウ マイヅルソウ(舞鶴草)は山野草としてはポピュラーですね。本州の高山地帯に分布し、ブナ林などの林床に生えています。栽培も比較的容易で、日当たりと水はけのよい場所でよく育ちます。 蝮草 マムシグサ マムシグサ(蝮草)は、サトイモ科テンナンショウ属の多年草です。別名は、ヘビノダイハチ、ヤカゴンニャク、ムラサキマムシグサ、アオマムシグサ、ヤクシマテンナンショウなどがあります。 日本全国の山野に生え、やや湿った場所に多く見られます。茎には紫褐色の模様があり、マムシの皮膚の模様に似ていることからマムシグサという名が付けられました。 延根千鳥 ノビネチドリ ノビネチドリ(延根千鳥)は、ラン科ノビネチドリ属の多年草です。別名は、ネジバナ、ネジバナソウ、ネバナなどがあります。 朝霧草 アサギリソウ アサギリソウ(朝霧草)は、2000年のガーデニングブームの頃、人気があり、原産地はイギリスかヨーロッパかと思っていました。まさか、礼文島に自生しているとは! 見つけたときは、またまた驚きです。日本全国の山地や亜高山帯に分布しているようです。 白毛菊葉鍬形 シラゲキクバクワガタ シラゲキクバクワガタ(白毛菊葉鍬形)は、ゴマノハグサ科の多年草です。別名にキクバクワガタ、ゴマノハグサモドキなどがあります。 礼文島のみならず北海道の高山帯に分布し、岩場や海岸の岩礫地などに生えます。草丈は5~25cmほどで、全体に白い毛で覆われています。 礼文島の地蔵岩は、北海道礼文島の元地海岸(もとじかいがん)に位置する高さ約50mの奇岩です。2つの切り立った岩が手を合わせているように見える姿から地蔵岩と呼ばれています。近くにあるメノウ海岸は、その名のとおりメノウの原石が拾えることで知られるほか、夕日の絶景スポットとしても人気です。地蔵岩は、礼文島の三大奇岩(猫岩・桃岩・地蔵岩)の1つとしても知られています 蝦夷薄雪草 エゾウスユキソウ エゾウスユキソウ(蝦夷薄雪草/レブンウスユキソウ)は、北海道礼文島にのみ分布する固有種で、高山帯の草地や岩場に生えます。 利尻紫雲英 リシリゲンゲ リシリゲンゲ(利尻紫雲英)は、マメ科オヤマノエンドウ属の多年草です。リシリシウンエイとも呼ばれます。 姫石楠花 ヒメシャクナゲ ヒメシャクナゲ(姫石楠花)は、ツツジ科ヒメシャクナゲ属の常緑小低木です。別名は、ニッコウシャクナゲ(日光石楠花)です。 蝦夷伊吹虎の尾 エゾイブキトラノオ エゾイブキトラノオ(蝦夷伊吹虎の尾)は、タデ科イブキトラノオ属の多年草です。 日本最北端の離島の植物に触れる旅を終えて 以上約36種の植物をご紹介しましたが、現地では、夏の時期は咲く花が2週間ごとに代わるといわれ、短い期間しか見ることのできない花も多いようです。その年の気候によっても開花時期は異なり、高山植物を見る旅のタイミングは難しいものですが、巡り合えたときの感動と驚きは格別ですね。 ガーデニングを愛する私たちは、日常的にさまざまな品種改良された植物に接していますが、今回の旅を通して、最近、ガーデニングで人気の園芸植物のじつに多くの原種が利尻・礼文島に存在していることを知ることができました。 利尻島 Robert Harding Video/Shutterstock.com その原種が大自然の野に凛として咲く姿は、園芸品種とは異なった生命力にあふれ、パワーのある純粋な美しさでした。今回の花旅は、本当に驚きの連続でしたが、日本列島にこんなにも多くの高山植物が咲く大自然が残っていることに感動し、この自然を大切に後世に残せたらと、純粋な気持ちになりました。
-
ガーデンデザイン
【庭のリニューアル事例】オージー&イングリッシュ・ガーデンに変身
イングリッシュガーデン+オージープランツの融合に挑戦 今年4月から約1カ月半かけて、庭の一部をリニューアルしました。じつは「庭の終活」の一環なのですが、「庭の終活」については別の機会に詳しく書くことにして、今回は、僕の独自路線のオージー&イングリッシュ・ガーデンを試みたリニューアルについてレポートしたいと思います。華やかなイングリッシュ・ガーデンとワイルドなオージープランツとが融合すると、果たしてどうなるでしょうか? まずは、リニューアル後の様子です。これらの植物は、すべて鉢植えです。つまり、寄せ置きガーデンなのです。庭の終活で処分した巨大化したソテツやジャカランダの跡地を利用しました。今後の庭の終活を考え、大きくなる植物の地植えは避け、26年もののニューサイランと、胞子から育てて28年もののディクソニアの2鉢も、もともと地植えしていた株を鉢上げして移動しました。 2階から写したビフォア。 植えて6年のジャカランダは、樹高5m。樹齢60年のソテツは、株張り3m。もともとは、こんな緑のグラデーションが楽しめる鬱蒼としたトロピカルプランツのコーナーでした。 ソテツとジャカランダを移動すべく作業中の様子。なんせ、自分の背丈以上の巨大株、掘り上げるのが大変でした! この苦労話は、また次回レポートします。 木生羊歯のディクソニアとニューサイランも鉢上げした現在の姿。 想像力を働かせて試行錯誤するリニューアル作業 リニューアル前の様子です。ずいぶん暗い雰囲気で、通路の行き来に不便を感じていました。 まず、ジャカランダ、ソテツ、ニューサイラン、ディクソニアを抜き去って、すっかり空いたスペースに、今回の庭のリニューアルに活躍してくれそうな鉢植えを集めてみました。実際に鉢を並べ始めたのは5月の連休明けです。それまでは、この鉢を置くためのスペースを空けるのに時間がかかりました。 これはリニューアル途中の写真ですが、ちょうど20年前の同じ時期の写真があったので、下の写真と見比べてみましょう。 これが、同じ場所の20年ほど前です。園芸雑誌のガーデニングコンテストでグランプリを受賞し、副賞でハワイ旅行をゲットしたときの応募写真です。 正直、この20年の風景の違いは、あたかも20年歳をとった己の姿を見るようで、ショックでした。庭は主の鏡といいますから……。20年前の写真はコンテスト応募のために作り込んだ庭ですので、現在の自分の好きな植物を並べた庭と比較するものではないかもしれません。しかし、一つ明らかなことは、背景の違いです。20年前は、背景に公道の街路樹の緑が生い茂り、それが庭を引き立ててくれていましたが、今はその街路樹が枯れてしまい、近隣の家々が写り込んでしまっています。 私自身、庭のデザインをするときには、写り込ませたくない外部のものは、できるだけ植物で遮断するよう意識してきたのですが、今回はそれができていませんでした。 そこで、翌日には改良した写真を撮ってみました。少しはよくなりました。 背景になる位置に、大株のグレヴィレア・バンクシーと、銅葉ネムノキの‘サマーチョコレート’を配置しているので、もう少し季節が進んで茂ってくれば、背景の景色を遮断してくれると思います。 写真の撮り方でもずいぶん印象が変わりますが、ある程度近くで撮ったほうが、花の美しさはよく分かりますね。 これが、さらに修正を加えた冒頭と同じ位置から撮った写真です。着手から約1カ月半が経過していて、ほぼ完成に近づいた時期には、ジギタリスやデルフィニウムの花がかなり終わってしまい、ちょっと残念でした。2024年はバラも初夏の花も、見頃が短かったですね。 オージー&イングリッシュ・ガーデンの植物たち オージープランツをPick up! 今回のリニューアルに使用した植物をご紹介しておきたいと思います。 まずは、手前のオージープランツたちです。意外とジギタリスやデルフィニウムとも似合うと思いませんか? ファッショナブルな庭木として近年注目が高いグレヴィレアを4種入れています。左上から、時計回りに‘ロビンゴードン’、エレガンス、‘ココナッツアイス’、‘ピーチ&クリーム’。絶妙な花色の違いを楽しめます。 グレヴィレアの育て方は、下記の記事を参考に。 カンガルーポーも2種使用しました。右写真の2枚は、今年初めて見る色で、紫がかるカッコイイ色です。 カンガルーポーの育て方は、こちらを参考に。 米粒のように小さい花蕾が周囲の個性的な植物との繋ぎ役になってくれるライスフラワー(写真左)とニューサイランに寄り添い咲くワックスフラワー。 今回鉢上げした大物の木生シダ、ディクソニアと、ニューサイランです。ニューサイランの手前にはプルメリアを配置して、5月中旬には新芽が出てきました。8月頃にはプルメリアも咲くでしょう。 左からアガベ・アテナータ、ディクソニア、デルフィニウム、ユッカ・ロストラータ、バンクシアと、右後方は、コルディリネ‘レッドスター’。ドライ系の植物も使用してモダンな感じにしています。こうして、栽培環境が異なる植物を組み合わせることができるのは、鉢植えで集合させているからなのです。 ドライ系では、アロエベラも。 オージー&イングリッシュ・ガーデンの植物たち イングリッシュガーデン系をPick up! 手前に咲く紫の花は、カンガルーポー。 さて、イングリッシュガーデンの雰囲気を発揮してくれる植物をご紹介します。まずは、ジギタリスとデルフィニウムが咲く風景から。 存在感のあるジャーマンアイリスや、香りのよいジャスミンも使用しました。 今回は薔薇が少ないですが、20年前から我が庭に華を添えてくれる‘クィーンエリザベス’も健在です。 リニューアルを終えて思うこと 今回、「庭の終活」を念頭に、まずは、巨大化したソテツやジャカランダをお嫁に出し、このまま放置して育つにまかせていては掘り上げもできなくなりそうなディクソニアとニューサイランを鉢上げすることから始まったリニューアル。 10月にタネを播き自家製苗を作っています。デルフィニウムの栽培記事は下記から。 一念発起のおかげでスペースが空いたので、苗がたくさんできたデルフィニウムとジギタリス、そして手持ちのオージープランツの鉢植えを動員して、私が得意とする“寄せ置きガーデン”の手法で、オージー&イングリッシュ・ガーデンづくりを試みたところ、忙しい時期ではありましたが、とても楽しかったです。 2020年にプチリニューアルした別のエリア。 ふと思いついて20年前の同じ場所の写真と見比べて、一瞬ショックを受けたものの、よくよく見れば、今の庭のほうが、数段進化していると自負しております。この20年間を振り返ると、サラリーマンを卒業し、14年間はプロのガーデナーとして活動、植物園の相談員を10年近くしたり、また、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版社)を出版する機会にも恵まれました。 オージープランツマストバイ7選 この記事が掲載されている「ガーデンストーリー」サイトにも、毎月、原稿を書かせていただき、かれこれ6年(この記事でなんと100本!)。読者の皆様にも支えられ、刺激をもらい、勉強をさせていただきました。今回は、庭の一部のリニューアルでしたが、いつか残りのエリアも、今の自分が反映された庭にアップデートしたい! という願望が湧いてきています。改めて、ガーデニングって楽しいし、人生をかけられるクリエイティブな趣味だと思った次第です。 G'day, mate. 我が主の作った、オージー&イングリッシュ・ガーデンはいかがでしたか? ボクはヨークシャーテリアなのでイングリッシュ系だけれど、主の喋る英語も訛りのあるオージーイングリッシュだよ。See Ya!
-
寄せ植え・花壇
【初心者でも簡単!】ミニ観葉植物で作る「苔玉(こけだま)」
初心者向け! 観葉植物で苔玉を作ってみよう 外出はちょっと避けたいこの時期は、涼しい部屋でフレッシュな緑を楽しめる苔玉作りにチャレンジしてみませんか? 手のひらに乗るくらいの可愛いサイズ感なので、場所を選ばないのも魅力です。 苔玉の作り方はいろいろありますが、今回は初心者向けに、室内のテーブルでもできる方法をご紹介します。苔玉に使うのは、2種の観葉植物。観葉植物は室内でも育てやすく入手もしやすいので、苔玉作りにおすすめです。上の写真はこの方法で実際に作った苔玉で、製作から約2カ月経ったもの。 観葉植物で作る苔玉の材料 【材 料】 苔玉 小ぶりの観葉植物の苗(今回はネフロレピスとシマトネリコ) ハイゴケ 1シート ケト土 赤玉土 マグァンプK ハイゴケ 苔玉用糸(今回は「華の糸」) 皿 水 使用する道具 ハサミ ビニール袋 使い捨てビニール手袋 45ℓのゴミ袋 粘着テープ 寄せ植えにしたネフロレピスとシマトネリコ。 写真左がネフロレピス、右がシマトネリコ。ネフロレピスとシマトネリコは、どちらもホームセンターや園芸店の「ミニ観葉」のコーナーなどで販売されています。ハイゴケもホームセンターなどで入手できます。 ハイゴケ。 ケト土(けとつち)とは、湿地や沼地に生えるマコモやヨシなどの水辺植物が水底に堆積し、分解してできる黒色の土です。繊維分を多く含み、粘着性が強く保水性にも優れています。苔玉や盆栽、ビオトープに向いている土です。苔玉や石付盆栽などの接着剤としても使用されます。大袋のほか、苔玉用として小袋に分けた製品もネットで見かけます。 苔玉をのせる皿は、家にある不要のモノでOK! なんでもよいのですが、グリーン系の皿のほうが調和しやすく落ち着きます。ハサミはクラフトバサミなどお手持ちのもので。苔玉を形作るために使用する糸は、黒い木綿糸を使う場合もありますが、私のおすすめは「華の糸」というグリーンの針金です。手芸店で入手できます。 テーブルの上が汚れないよう、45ℓのゴミ袋を敷いて四方をテープで留めておくと、ストレスなく作業できます。 苔玉の作り方 ケト土の準備 ケト土(左)と赤玉土。両手で包み込んで大きな球ができるくらいの量を用意してください。 1.ケト土と赤玉土を7:3で混ぜ、マグァンプKも少量加えます。 ケト土と赤玉土、マグァンプKをビニール袋に入れ、水を少しずつ加えながらよく混ぜ、丸くした状態。混ざったら、さらによく捏ねて粘り気を出します。 水を加える量は、耳たぶぐらいの柔らかさが目安です。 2.ビニール袋の上に1の土を置き、ボール状にした後に、直径20cm程度まで薄く広げます。 観葉植物を包む 3.シマトネリコとネフロレピスをポットから出し、根鉢はそのままに周囲の余分な土を取り除いて形を丸く整えたら、2の土の上にのせます。 4.ビニール袋ごと根鉢を包んで握り、団子状にします。崩れないようにしっかり握りましょう。 ハイゴケで包むときのポイント ここからの作業は、ハイゴケを崩さずに、上手に苔玉を包むためのステップです。作業するときは、おにぎりをラップで包んで握るように、ハイゴケをビニール袋ごと包む状態のほうがやりやすいので、その準備をします。 5.ハイゴケを裏返しにします。裏返し方は、まずハイゴケの表面にビニール袋を被せ、ビニール袋の上に崩れ防止の新聞紙をのせ、ひっくり返します。 根が下の状態の苔の表面にビニール袋を被せ、さらにその上に新聞紙をのせて…。 新聞紙が下になるようにひっくり返します。 ハイゴケの裏側(根がある面)に台紙がついた状態。 こうすることで、ハイゴケの形を崩さずに裏返して、ビニール袋の上にのせることができます。 ハイゴケで包む 6.裏返したハイゴケに観葉植物をのせます。 ハイゴケの台紙として敷かれていた紙をはがし、4の観葉植物を置きます。 7.最初はビニール袋ごと苔玉をくるみ、しっかり握り固めて苔と土を密着させます。その後、ある程度形が整ったらビニール袋を剥がし、手に持って直接苔玉を握り、形を整えます。 ハイゴケの下に敷いておいたビニール袋で、ハイゴケと土玉をくるんで握ります。 ビニール袋をはがして仕上げ。 糸をかけて完成 8.最後に、華の糸で苔を固定させます。 苔玉全体に糸をかけ、ハイゴケをしっかり固定します。 糸が見えにくいので、端にテープを貼って目印を作っておきましょう。テープがついたスタートの糸端を上にして、苔玉全体にグルグルと均等に巻き(垂直や放射状など球になるのをイメージして)、最後にテープを貼った糸端を一緒にねじって留めます。 最後にスタート部分の糸とねじり合わせて留めます。 9.皿の上に苔玉をのせて、飛び出した苔を切り落として整え、完成です。 苔玉の管理方法 皿の色が変わると雰囲気も一変。 完成した苔玉は、直射日光の当たらない明るい室内に置き、苔が乾いたら霧吹きで湿らせます。霧吹きに加え、数日に1回程度、苔玉部分をバケツの水に浸け、湿らせるとよいでしょう。緩効性肥料を土に混ぜてあるので、半年程度は施肥の必要はありません。その後は、2週間に1回程度を目安に液肥を与えます。 バケツに水を張り、苔玉部分を沈めて水やりを。 苔玉をのせる皿によって、ずいぶん雰囲気が変わります。いろいろ試して気分を変えるのも楽しいですね。 シマトネリコとネフロレピスの育て方 今回寄せ植えに選んだシマトネリコは、亜熱帯から熱帯に育つモクセイ科の半常緑樹です。明るい屋内でも、半日陰の屋外でも育てられる丈夫な樹木で、近年、日本でもシンボルツリーや観葉植物として人気です。 5~6月に花が咲くので、花後に剪定しましょう。 ネフロレピスはシダの仲間なので耐陰性が強く、直射日光の当たらない明るい場所で育てます。耐寒性が弱いので冬は屋内に入れ、レースのカーテン越しに日が当たるような場所で育てます。乾燥を嫌うので、こまめに霧吹きをすると綺麗に育ちます。 あなたのお部屋にも外の緑に負けない、爽やかなグリーンの苔玉を作って飾ってみませんか? 以前、クリスマスローズの苔玉作りもご紹介したことがありますので、ぜひこちらにも挑戦を。いろいろな植物で、苔玉作りをお楽しみください。
-
宿根草・多年草
【プロもおすすめ】可憐で可愛い! やっぱり素敵な花、マーガレットの魅力と育て方
愛らしいイメージのマーガレット 「マーガレット」という響きは、なんとなく愛らしく、「ある年代」の人々の中には、少女漫画雑誌の『マーガレット』を思い出す方もいらっしゃるのではないでしょうか。もしかすると、そんな「ある年代」の人たちは、この雑誌の名前から、マーガレットの花に、少女っぽく可憐なイメージを重ねているのかもしれません。ジェンダーフリーの時代ではあっても、大の男が「僕はマーガレットが好きで育てています」というのは少々気恥ずかしさが伴うものです。しかし、園芸歴が30年に近い僕にとってマーガレットにはさまざまな思い出があり、また、ぜひ栽培をおすすめしたい花でもあります。そこで気恥ずかしさなんて乗り越えて、“素敵なマーガレット”についてご紹介したいと思います。 栽培のポイントは原産地を知ること 僕は、自分のPCに長年の間撮影した3万枚を超える植物写真を蓄積しています。多くはオージープランツや多肉植物、アガベといった葉物やマニアック系という、どちらかというとワイルド系の植物が多いのですが、なんと今回、マーガレットを検索したら、驚くほどたくさんの写真が出てきたのです。 じつは、「隠れマーガレットファン」でした! 愛犬たちもマーガレットファンです。 前置きはさておき、僕が植物をご紹介するときに必ずこだわるのが、その植物の原産地です。原産地を知ることは、適した気候を知るヒント。すなわち「育て方」を理解するうえで大切な項目です。 原産地の気候から季節ごとの気温や雨量を知れば、そこに近い環境を庭に作るために気をつけるべきこと、置き場所や使用する土、水やり方法などが分かります。 マーガレットの原産地 カナリア諸島の原生マーガレット。Amovitania/Shutterstock.com マーガレットの原産地は、アフリカ大陸の西北に浮かぶ、スペイン領カナリア諸島です。基本的に、冬は温暖で雨が降り、夏は高温で乾燥する地中海式気候ですが、アフリカのサハラ砂漠にも近く、スペイン最高峰の3,718mのテイデ火山もあり、砂漠気候と亜熱帯気候に区分されます。年間の日照時間がおよそ3,000時間と多く、それに対し雨量は200mm程度とかなり乾燥しています。気温は冬でも平均が20℃近くあり、夏は25℃程度と、まさに常夏ですね。ちなみに、カナリア諸島原産の植物には、フェニックス・カナリエンシス、多肉植物の黒法師、エキウム、サイネリアなどがあります。いかにも乾燥している気候のようですね。 多肉植物の黒法師も原産地はカナリア諸島。 マーガレットの基本情報 学名:Argyranthemum和名:モクシュンギク(木春菊)英名: Margaret、Marguerite(フランス)科名:キク科属名:モクシュンギク属(アルギランセマム属)原産地:スペイン領カナリア諸島 現在、一般に市場に出回っているマーガレットは、本来のマーガレットであるモクシュンギク(アルギランセマム・フルテッセンス)の園芸品種のほか、モクシュンギクと近縁種を交配させた園芸品種です。草花扱いされていますがじつは低木で、我が家でも10年ぐらいの大株に育ったことがあります。 この株は毎年刈り込み、10年ほど持ちました。 マーガレットの魅力 マーガレットというと、昔は清楚な白が主流でしたが、最近は黄色やピンク、赤、そして八重咲きなども出てきました。そんなマーガレットの種類をご紹介していきましょう。 昔ながらの白いマーガレット。 優しいピンクの親しみやすいマーガレット。 白花と、ピンクの八重花のツーショット。花心にボリュームがあり特徴的。 イエローの八重咲き品種。 八重咲きのピンク花。たくさん咲くと景色が華やぎます。 ピンクの八重咲きで埋まる、豪華マーガレットガーデンは、とても愛らしい光景です。 マーガレットは、単体で楽しむのはもちろん、寄せ植えにも使いやすい花です。花期が長いのも魅力ですね。 乾燥に強いので、ハンギングにも最適。秋に植え込んで、10月から5月いっぱいまで咲き続けてくれました。 マーガレットの育て方 ●置き場所 先にご紹介したとおり、原産地のカナリア諸島の気候は、日照時間が年間およそ3,000時間。これは日本ではありえないのですが、できるだけ日当たりのよい場所で育てます。 また、原産地は常夏の国なので、寒さにはやや弱いのですが、関東以西でしたら、寒風や強い霜が当たらなければ越冬します。冬は南向きの陽だまりで育てましょう。もし霜が当たるようでしたら、寒冷紗で防寒すると安心です。 鉢植えの場合は、12~3月は、日当たりのよい室内で管理します。4~11月は、日当たりのよい戸外で管理します。高温多湿を嫌うので、梅雨時は雨の当たらない風通しのよい場所へ移動させ、梅雨明けから8月までは半日陰で管理します。 ●管理 パンジーなどの多花性の草花同様に、花がらをマメに摘むことが、次の花を咲かせるためには大切です。鉢植えの場合は、生育期には2週間に1度程度、液肥を施します。乾燥気味に育て、水やりは表土が十分に乾いたらたっぷりと。地植えの場合の施肥は、植え付け時、及び春と秋に緩効性肥料を与えます。便利な資材は「マグァンプK」。鉢植えの場合も、植え付けのときに「マグァンプK」を施すのがおすすめです。 ●増やし方 挿し木で増やします。適期は5~6月と、9~10月です。枝の先端を長さ5~7cmに切り取り、バーミキュライト、またはパーライトに挿します。酸性をやや嫌うので、鹿沼土は避けます。 ●植え付け・植え替え 成長が早いので、鉢植えの場合は毎年、鉢増しをします。適期は3~6月と、9~10月です。入手したポット苗は根詰まりを起こしている場合が多いので、1回り大きな鉢に植え替えて生育を促します。根鉢を少々ほぐして植え替えますが、適期以外に植え替える必要がある場合は、根鉢をくずしません。 ●土の選び方 高温多湿を嫌うので、水はけのよい用土に植え付けます。 あと、最後に「僕はマーガレット花粉症」です! 可愛いでしょう? 発症はミモザ花粉症と同じくメルボルン在住時代。なぜかクシャミと鼻水が出ると思ったら、テーブルに庭のマーガレットが活けてあり、その下には花粉が落ちていたのです。マーガレット花粉症の人、じつは結構いるのです。確かにマーガレットには花粉がいっぱいです。 でも、ミモザ同様、花粉症にメゲず、これからもマーガレットを育てます。 爺さんが約20年間育てて、学んだマーガレットの魅力、伝わりましたでしょうか? これからがマーガレットの美しい季節です。ぜひ、お気に入りのマーガレットを探して育ててみませんか? マーガレット・リバー地域のワイン MargaretでPC検索をしていたら、Margaret river wineの写真がヒットしました。マーガレット・リバーはワイナリーで有名な地域。僕の愛する西オーストラリアの美味しいワインです。ぜひ、マーガレットの花を観賞しながらご賞味ください。日本でも購入できますよ!
-
おすすめ植物(その他)
2024年の干支「辰年」にちなんだ植物7選
今年の干支にちなんだ植物を探そう! 我が家のリュウゼツラン。これも竜の植物。 ご存じのとおり、2024年の干支は辰。十二支の中で唯一、空想上の動物で成功や繁栄の象徴とされ、縁起のよい年といわれています。植物の中には、そんな「辰」にゆかりのある名を持つものもあり、育てているだけで運気がアップするかも⁈ さて、皆さんの庭や身近な場所に、辰にちなんだ植物がいくつありますか? 冬も葉が生き生きしている常緑のリュウノヒゲ。これも竜の植物。 我が家で育てているのは、ざっと書き出すと、リュウゼツラン、リュウノヒゲ、多肉植物のリュウノツメ、金魚草(スナップドラゴン)。4種ありました。 オーストラリアに住んでいたときは、ドラゴンフルーツがスーパーに売っていて食べたことがありました。ちょっと調べると、リンドウが漢字で書くと「竜胆」だったり、聴いたことのあるドラゴンツリーなども出てきます。12年に1度のチャンスなので、今年の干支である辰(竜・龍)に因んだ植物をご紹介したいと思います。 セレクト1リュウゼツラン Yulia YasPe/Shutterstock.com 私の好きなカッコイイ剣葉系の植物「リュウゼツラン(竜舌蘭)」。これは巨大化するので育てるのはやめようと思いながらも、いま我が家には数年前に知人からもらったアオノリュウゼツランと斑入りのリュウゼツランがあります。とても存在感がある植物で、ガーデンテーブルの上に1鉢置くだけで全体が引き締まります。 アイアンの器に植えた斑入りのリュウゼツラン。青銅色のガーデンテーブルに調和。 学名:Agave americana variegata(斑入り種は variegata)英名:Agave和名:リュウゼツラン(竜舌蘭)科名 / 属名:キジカクシ科(リュウゼツラン科)/ リュウゼツラン属原産地:メキシコ 真っ赤なオージープランツのカリステモン(ブラシノキ)を背景に、葉を自由に伸ばすリュウゼツラン。カッコよすぎます。Alexander Denisenko/Shutterstock.com テキーラの原料としても有名で、100年に1度しか咲かないとされることから“センチュリープランツ”とも呼ばれ、よく新聞記事やメディアで開花が報道されます。実際には数十年に1度は開花するらしいですが……。大きく育つと花茎は数メートルもの高さに達して、見応えがあります。リュウゼツランは開花後に枯れるのも有名ですね。 2年で巨大に成長した我が家のリュウゼツラン。数センチの苗が、植えて2年後には右写真の姿に! 私が子どもの頃から、結構見かけた植物ですが、近年は、斑入りのバリエガータ種が人気のようです。肉厚の葉の先端は鋭く、地植えにすると巨大化するので要注意です。我が家では鉢植えで育てていたのですが、1本だけ数センチの小さな苗を地植えにしたら(上写真左)、2年後には葉の長さが40cmくらいになり、恐ろしくなって処分しました。 Piotr Piatrouski/Shutterstock.com 上写真は、花の様子。花茎が伸びてずいぶん高い位置で咲きますが、これは野鳥や風が種子を遠くまで運んでくれるように進化したからだといわれています。開花後に枯死する運命なので、なんとしても種を生かさないといけないと進化したのでしょうね。 【リュウゼツラン 育て方】 メキシコ原産なので、乾燥気味に育てます。耐寒性も比較的強く、−8℃程度といわれています。丈夫なのですが、私が経験したように地植えにすると巨大化し、株張りが直径5mくらいに達するようなので、狭い庭では、鉢植えをおすすめします。鉢植えの場合は水はけのよい土に植え、乾燥気味に管理します。増やし方は、下の写真のように子株がたくさん出てきますので、それを株分けします。 親株のそばに、子株が育っている様子。 また、リュウゼツランと近い、アガベ・ベネズエラの開花について以前レポートした記事も参考に。 セレクト2リュウノヒゲ 日本で古くからグラウンドカバーとして使用されてきたリュウノヒゲ(竜の髭)ですね。日陰でも育ち、管理が芝に比べて楽なことからも、冬も常緑のリュウノヒゲが重宝されてきました。じつは我が家でも、当初は憧れの芝生の庭を目指した時期もありましたが、雑草対策やら緑の維持管理がうまくいかず、敷石と砂利にリニューアルして、一部アクセント的に「潤い感」を出すリュウノヒゲを植えています。 学名:Ophiopogon japonicus英名:Mondo Grass和名:ジャノヒゲ(蛇の髭)、竜の髯、猫玉科名 / 属名:キジカクシ科 / ジャノヒゲ属原産地:日本、東アジア コクリュウはこんな花が咲きます。guentermanaus/Shutterstock.com 【リュウノヒゲ 育て方】 表土を覆うグラウンドカバーとして古くから使われている植物です。丈夫な性質で日陰でも育つので植え場所を選びません。また、手入れは不要ですから初心者にもおすすめです。花や実を期待する場合は、ある程度の日照と施肥が必要です。 紅葉に引き立つコクリュウと、和の寄せ植えに引き立つコクリュウ。 同様の育て方ができるリュウノヒゲの仲間のコクリュウとハクリュウも魅力的なのでご紹介しておきましょう。コクリュウは、紅葉の季節に黒葉が映えます。また、イワシャジンなどの和の雰囲気に合います。寄せ植えのワンポイントに使うのもいいですね。 セダムの中からシルバーがかる葉が伸び出て面白い調和を見せるハクリュウと花。 セレクト3リュウノツメ 多肉植物のリュウノツメ(竜の爪)です。まあ、竜は髭(リュウノヒゲ)やら、舌(リュウゼツラン)やら、爪やらと、姿から例えやすいですね。確かに葉先が竜の爪のようです。 我が家では、小さな鉢で屋内の窓辺に置いて20年以上生存しています。置き場所は点々と移動してきましたが、現在は摺りガラスの窓辺で、直射日光に当てなくても順調に成長しています。なんといっても手がかからず丈夫です。 学名:Haworthia margaritifera和名:リュウノツメ(竜の爪)科名 / 属名:キジカクシ科(ツルボラン亜科) / ハオルチア属原産地:南アフリカ 窓辺でゆっくり育つリュウノツメ。 多くの多肉植物がメキシコ原産ですが、これは南アフリカ原産です。ハオルチア系は南アフリカ原産ですね。ちなみに最近、いわゆる“珍奇植物”と称される植物の多くは南アフリカ原産です。 【リュウノツメ 育て方】 多肉植物というと、日照が不可欠のように思いがちですが、ハオルチア系は半日陰でも育つようです。逆に直射日光は苦手です。実際、我が家も屋内で20年以上育てています。やはり多湿には弱いので、乾燥気味に育てるのが大切です。特に夏と冬は乾燥させます。春秋が成長期なので、2,000倍の液肥を月1回程度与えます。 セレクト4リンドウ 秋の山野草の代表ともいえるリンドウは、漢字で書くと“竜胆”です。清楚で可憐なリンドウが竜胆と表記されるとは、少々意外ですよね。 リンドウの根は、現代でも竜胆(リュウタン)として漢方の胃腸薬として使用されています。その味が「熊の胆」以上に苦いため、熊以上に強い想像上の動物「竜」を想起させ、「竜の胆」と称されたのだとか。 学名:Gentiana scabra var. buergeri英名:Japanese gentian和名:リンドウ(竜胆)科名 / 属名:リンドウ科 / リンドウ属原産地:日本、中国 【リンドウ 育て方】 Flower_Garden/Shutterstock.com リンドウを育てるポイントは、十分な日光と、肥料不足・水不足に注意することです。 暖かく日当たりのよい場所が適していますが、真夏の直射日光は避け、寒冷紗で保護します。肥料不足に弱いので、春秋に緩効性肥料を与えます。緩効性肥料の代わりに、春と秋に液肥を2週間に1回程度与えてもよいでしょう。また、水不足にも弱いので、表面が乾いたらたっぷりと与えます。 セレクト5キンギョソウ(金魚草) 竜にちなむ植物の中でも、ちょっと意外なのがキンギョソウです。日本ではこの花を金魚に似ているとしていますが、イギリスではスナップドラゴン(Snap Dragon)と呼びます。“竜が噛みついている”ように見えたのでしょうか。我が家では、辰年に因んでお正月仕立てに、竹と縄の梅結びで、辰年をスナップドラゴンで祝いました。 左右対称に大株のスナップドラゴン(キンギョソウ)を植えた2024年の正月仕立て。 花がら摘みをしっかりやると、冬でも咲き続けてくれます。私が子どもの頃の昭和時代はポピュラーな花だった記憶がありますが、しばらく姿を隠していたような。最近はストックと同じ時期に、つまり秋から冬に見かけたりします。昔はキンギョソウというと、春から初夏に登場する花材でしたが、最近は周年咲きの品種もあるため、季節感が曖昧な印象です。 学名:Antirrhinum majus英名:Snap Dragon和名:キンギョソウ(金魚草)その他の名前:スナップドラゴン科名 / 属名:オオバコ科 / キンギョソウ属(アンティリナム属)原産地:地中海沿岸部 【キンギョソウ 育て方】 Boryana Manzurova/Shutterstock.com 日当たりと水はけがよいことが必須です。日陰やジメジメした場所では育ちません。また、酸性土壌を嫌いますので、あらかじめ苗を植える場所には苦土石灰をまいて、酸度の補正をしておきましょう。鉢植えの場合は、液肥を成長期に2週間に1回程度与え、花がら摘みをこまめに行うと、次々と咲いて長く楽しめます。 セレクト6ドラゴンフルーツ Bigc Studio/Shutterstock.com メルボルン駐在中に、日本ではあまり見かけないパッションフルーツと並んで、真っ赤なドラゴンフルーツをスーパーで見つけ、チャレンジしたことがありました。見た目のインパクトに反して、意外と薄味……。なんとなく物足りない印象に残らない味だったので、一度限りの試食となりました。蜂蜜をかけていただくとよいようです。 Chen Liang-Dao/Shutterstock.com 今回、ドラゴンフルーツを取り上げるにあたり、ドラゴンフルーツがクジャクサボテンの実であることを知って驚き、興味を持ったため。花は、ゲッカビジン(月下美人)と似ています。 これがクジャクサボテンの花。 こちらは、ドラゴンフルーツの花。tea maeklong/Shutterstock.com サボテン科ですが、中南米の熱帯雨林原産です。砂漠でないところがなんとも意外でした。まさしくゲッカビジンと近縁種で、花も果実も似ています。まさかクジャクサボテンと似た植物の実とは! 驚きでした。2024年も早々に、植物は私を驚かせてくれます。 学名:Hylocereus英名:Pitaya科名 / 属名:サボテン科 / ヒロセレウス属原産地:メキシコ、中南米の熱帯雨林 【ドラゴンフルーツ 育て方】 ドラゴンフルーツの発芽。Gheorghe Mindru/Shutterstock.com ドラゴンフルーツの育て方については、熱帯植物を得意とする園芸研究家の小川恭弘さんが詳しく解説していますので、以下を参考に。果実の中のタネからの栽培も興味深いものですよ。 セレクト7ドラゴンツリー Makabas/Shutterstock.com 最後に、最も竜に相応しい雄姿のドラゴンツリーをご紹介します。 ドラゴンツリーは、リュウゼツラン科の常緑高木で、大西洋のカナリア諸島原産です。樹齢6千年ともいわれる長寿の木で、幹を傷つけると暗い赤色の樹液が採れることから、「竜血樹」の別名があります。正しく竜を名乗るにふさわしい樹木ですね。 学名:Dracaena draco英名:Dragon Tree和名:リュウケツジュ(竜血樹)科名 / 属名:リュウゼツラン科 / ドラセナ属原産地:カナリア諸島 【ドラゴンツリー 育て方】 Mr Dmitry/Shutterstock.com ドラゴンツリーの樹脂は、少し甘さにスパイシーさを加えたような奥深い香りを持ち、お香の調香や樹脂の塊をそのまま香りを楽しむために使ったりします。また、古代ローマでは染料や薬として用いられ、18世紀のイタリアではバイオリンに塗るニスとして使われました。バイオリンの名器、ストラディバリウスの音色の秘密はニスに在り、という説も。そのため、バイオリン愛好家としては、とてもドラゴンツリーの魔力に惹かれてしまいます。 ドラゴンツリーは葉が美しく、ある程度の寒さにも耐えるので、観葉植物としても利用されているようです。最近、日本でも苗や種子が、通販などでたまに販売されているようですので、育て方と種子の発芽方法を記しておきます。 【ドラゴンツリー 育て方】 水はけのよい土で、日向または明るい半日陰でも育ちます。寒さに弱いので、鉢植えにして冬は屋内で管理します。乾燥には強いですが、表土が乾いたらたっぷり水を与えます。根腐れしやすい植物ですので、鉢受け皿には決して水をためないでください。もともとカナリア諸島などが原産地で、風や塩害には強いとされています。増やす場合は、種子を播きます。 もし、種子を入手した場合は、殻が硬いのでサンドペーパーで表皮を傷つけ、ぬるま湯に 24 時間浸します。播種には種まき用土を使用し、温度を25℃に保ちます。土壌は常に湿っている必要がありますが、濡れたままではいけません。発芽には数カ月かかることもあります。 2024年も幕を開けて早1カ月。植物たちはガーデニングシーズンに向けて、日々成長しています。ご紹介した“辰(竜・龍)”に因んだ元気のある植物を筆頭に、さまざまな植物と親しみながら、ガーデニングを楽しむ豊かな一年をお過ごしください。
-
宿根草・多年草
世界でもっとも大きな花⁉︎ ショクダイオオコンニャク(燭台大蒟蒻)が咲いた!
紅葉深まる植物園で初めて目撃した世界一大きなつぼみ 紅葉が美しい小石川植物園。旧東京医学校本館を背景に。 世界一大きな花として度々メディアで取り上げられる、ショクダイオオコンニャク(燭台大蒟蒻)が、2023年12月に東京都文京区にある「小石川植物園」で開花しました。私がその花の存在を認識したのは12月3日のこと。小石川植物園の近所で音楽仲間の会合があり、帰りに数名の仲間とモミジの紅葉を見に立ち寄ったら、偶然にも開花直前のつぼみ状態に遭遇。 小石川植物園温室にて。12月3日のつぼみの様子。 音楽仲間たちは当然、ショクダイオオコンニャクにはあまり関心がなさそうでした。その後、開花の情報を聞いたのに見に行くことができず悔しい思いをしていたら、開花を見に行ったという園芸仲間が、12月8日の開花の写真をSNSにアップしていたのを発見。 小石川植物園温室にて。開花した12月8日の様子。撮影/Yuri Endo そして、茨城のつくば方面に住む音楽仲間の一人が、地元の筑波実験植物園で11月にたまたま撮っていたという写真を思い出しました。なんだか変な植物だと思っていたのですが、それがまさにショクダイオオコンニャクの実の姿であることを認識。こんな経緯から、ショクダイオオコンニャクの開花前・開花・花後の実の経過が分かる貴重な写真が揃ったので、ここで皆さんに見ていただこうと筆を執った次第です。 ショクダイオオコンニャクとは 小石川植物園で公開された2010年のショクダイオオコンニャク。 国内にある数カ所の植物園で、このショクダイオオコンニャクは栽培されているようですが、毎年咲くことはなく、不定期のようです。小石川植物園での開花は13年ぶりですし、筑波実験植物園の開花も3年ぶり。さらにこの花は、こんなに大きいのに、何と一日花。一日経つと萎んでしまうのですから、開花の瞬間に出会えるのは非常に貴重なことなのです。 調べてみると、国内での開花は、2023年12月の段階で30例にも満たない希少なもの。次はいつ話題になるのか分かりませんが、世界一大きな花であるショクダイオオコンニャクについて解説しておきましょう。また後半では、今の時期になると食卓に上ることの多い、いわゆる「おでんの蒟蒻」の原料であるコンニャク芋についても触れたいと思います。 森の中のショクダイオオコンニャク。Bpk Maizal/Shutterstock.com 和名:ショクダイオオコンニャク(燭台大蒟蒻)学名:Amorphophallus titanum英名:Titan arum科名:サトイモ科属名:コンニャク属別名:スマトラオオコンニャク原産地:インドネシア、スマトラ島 小石川植物園の生育記録。写真/Yuri Endo ショクダイオオコンニャクは、インドネシア、スマトラ島に生育するサトイモ科コンニャク属の希少植物(絶滅危惧種)。日本国内でも数カ所の植物園にあるだけで、人工的な実生は極めて難しく、増やすこともなかなかできないようです。別名をスマトラオオコンニャクといい、世界最大級の花を咲かせる植物として知られ、大きいものではなんと高さ3m超え。小石川植物園では成長の記録が白板に書かれていましたが、開花時で213.5cm。ギネスブックで認定された世界最大の記録は高さ3.1mなので、少し及ばなかったようです。 ショクダイオオコンニャクの花の香り 花が終わると中央の突起部分がくたっとする。 thomascanss/Shutterstock.com その名前のとおり、ロウソク立ての燭台のような形をした花を数年(7年説もある)に1度咲かせるといわれていますが、その花は一日花で、長くても2日間しか花姿が保たれません。花は肉が腐ったような強烈な悪臭がすることでも有名で、見学に行くと服に匂いが移り、帰りの電車で気まずい思いをするともいわれるほど。そんな悪臭を放つことから、「死体花」(corpse flower)とか、またその大きさから「お化けコンニャク」とか呼ばれています。 国内での開花は稀で、同一株が複数回開花した例はさらに限られます。最近の開花記録を調べてみました。 最近の国内の開花記録は下記のとおり、滅多に開花しません。 2023年12月 東京・小石川植物園(13年ぶり)2023年7月 愛知・東山動植物園(栽培12年で初開花)2023年5月 茨城・筑波実験植物園(この10年間で2014年、2016年、2018年、2020年に開花)2022年12月 東京・神代植物園(この10年間で2015年、2019年、2021年に開花) *国内ではほかに、鹿児島・フラワーパークかごしまでも栽培されているようですが、2010年が最後の開花記録のようです。 ショクダイオオコンニャクの雄花と雌花。prajit48/Shutterstock.com 世界最大級の花といわれていますが、厳密には、小さな花が集まった花序です。このように、花序全体がまとまって1輪の花のように見えるものは「偽花(ぎか)」と呼ばれます。 絶滅危惧種で繁殖が難しいとされていますが、腐肉や獣糞の臭いで昆虫を集めて花粉を媒介させるようです。意味があって悪臭を放っているんですね。 ショクダイオオコンニャクの生態 栽培・成長に関しては文献がなく、ショクダイオオコンニャクの栽培経験がある植物園「フラワーパークかごしま」より下記引用させていただきます。 「種子をまいてから花が咲くまで14~16年ほどかかるといわれ、その間十数回にわたり破れ傘をひっくり返したような1枚の巨大な葉を広げ、地中のコンニャクイモに栄養を貯えます。そしてある時、イモから花芽が出芽し約1ヶ月後には開花します。肉穂花序の先端は棍棒状の付属体となり、その下の仏炎苞に包まれた部分の上部に雄花、下部に雌花が密生します。花序は高さ3m、直径1.5mに達するとされ、本種は花序(花の集合体)として世界最大の花であり、ラフレシアは1個の花として世界最大です。当園では2008年に2株、2010年に1株が開花しました。開花時に付属体が発熱発臭し、腐臭を周りに拡散させて花粉媒介甲虫を集めます。栽培には最低18℃が必要です。」 参考出典:フラワーパークかごしま つくば実験植物園にて。撮影/Naoki Kawada また今年、つくば実験植物園で結実や種子の採取に成功しましたが、これは国内初とのこと。これまでも人工授粉を複数回試みたものの、失敗したそうです。今回は、1週間差で咲いた2株を使って人工授粉できたのだといいます。この実の写真は非常に貴重ですね。さらに、この種子を播いて、日本初のショクダイオオコンニャクの発芽に成功したとのニュースがネットに流れていました。 配信記事によると、「同園によると、発芽が確認されたのは12月12日。20日現在で3つが発芽し、いずれも11月10日に植えたものという。約20個の種子を植えており、残りも順次発芽するとみられる。順調に育てば約3カ月で葉が出て、10~12年で開花する見通しという」とのこと。写真を提供してくれた後輩のK君に感謝! 下の2枚はニュージーランドのオークランド植物園とニューヨーク植物園の開花の写真ですが、どちらも、凄い人だかりですね。 ニュージーランドのオークランド植物園。Moritz Fraisl/Shutterstock.com 2016年のニューヨーク植物園にて。lev radinl/Shutterstock.com ショクダイオオコンニャクの仲間、日本の食用蒟蒻は? sasazawa/Shutterstock.com さて、蒟蒻というと、最近ではダイエット食でも人気のようですし、これからはおでんの季節で蒟蒻は欠かせませんが、原料はコンニャク芋であることはご存じの通り。その生産トップは群馬県で、日本の全生産数の95%を占めています。私は東京で生まれ育っているため群馬は比較的近く、旅行で度々訪れてはいるものの、「コンニャク畑」も植物としてのコンニャクも見たことがありませんでした。では、いわゆるコンニャクの花とか、いったいどうなのでしょうか? ショクダイオオコンニャクのような花と葉っぱなのでしょうか? この機会に調べてみることにしました。 和名:コンニャク(植物はカタカナでコンニャク、食品は蒟蒻と漢字で示して区別されます)学名:Amorphophallus konjac英名:elephant foot、devil's tongue(悪魔の舌)科名:サトイモ科属名:コンニャク属原産地:原産地はインドまたはインドシナ半島(ベトナム付近)とされ、東南アジア大陸部に広く分布 英名が凄いですね。それぞれ芋と花の形態に由来するようです。 左/これがコンニャク芋の花。やはりフォルムが似ていますね。 Leela Mei/Shutterstock.com 右/栽培されているコンニャクの姿。yoshi0511/Shutterstock.com コンニャク芋は、ジャガイモやサツマイモ同様に種芋から増やしますが、ジャガイモと違って収穫まで2~3年必要とのこと。通常は3年生または4年生の2~3kgにまで成長した芋を、秋に出荷するそうです。 コンニャク芋は低温に弱く、腐りやすいため、収穫から植え付けまでの保管が難しいそうです。丈夫そうに見えますが、じつはデリケートな植物で、強い日光・風・干ばつを嫌い、水はけの悪い場所ではうまく育ちません。 コンニャク芋(栽培用の種芋)Yohanes Setiyawan/Shutterstock.com コンニャク芋は、年平均気温が13℃以上必要なため、寒冷地での栽培は難しく、東北南部が北限となっているようです。 食用の蒟蒻の作り方は、大雑把にいうと、コンニャク芋を蒸してすり潰し、石灰水(アルカリ水)を混ぜて煮込み、型に入れて固めるそうです。 Isabelle OHara/Shutterstock.com 身近な食べ物の蒟蒻ですが、この神秘的な花を見ると育ててみたくなりますね。今度、おでんを囲んだときは、ぜひコンニャク芋や、その花や葉、世界一大きな花を咲かせるショクダイオオコンニャクを話題に、お召し上がりください。
-
おすすめ植物(その他)
「クリスマス」が名前に入る植物10選
クリスマスの名を持つ植物、何種類ご存じですか? Pixel-Shot/Shutterstock.com 気がつけばクリスマスシーズン。植物の中でクリスマスにまつわるものといえば、クリスマスローズやクリスマスホーリーなどが有名ですが、真夏にクリスマスを迎える南半球ではモミの木をはじめ入手しづらいものばかり。そのため、代わりに花木などに“クリスマス〇〇”と名付けて飾るようになったと思われます。そんなわけで、じつは南半球にはクリスマスが名前につく植物が多いのです。 AMCImagery/Shutterstock.com 日本でもそんな名前をもつ植物を見かけるようになっています。今後、ますます出回るようになるかもしれませんね。ここでは、定番の植物はもちろん、まだ認知度が低いものも先取りして、由来や育て方をご紹介します。 定番のクリスマスプランツBest3 初めに、すでに定番になっている植物を3種ご紹介します。 1. クリスマスローズ Natalia Greeske /Shutterstock.com あまりにも有名ですね。当サイトGarden Storyにもたくさんの記事が公開されていて、ガーデニングの栽培品種としてはもちろん、最近は切り花でも見かける根強い人気の宿根草です。 学名:Helleborus俗名:クリスマスローズ、ガーデン・ハイブリッド、レンテンローズ、科名 :キンポウゲ科属名:クリスマスローズ属(ヘレボルス属)原産地:ヨーロッパ全域から地中海沿岸、バルカン半島、黒海沿岸、中国に自生 日本でクリスマスローズの人気が上昇したのは、この20~30年のことです。それまでは、ヘレボレスと呼ばれていて、どちらかいうとマニアックな園芸愛好家が育てる地味目な植物でした。急速に品種改良が進んだのも、この20年間のように感じます。「クリスマス」「ローズ」というネーミングも人気の一つの要因かもしれません。私も、30年近く育てています。 育て方など詳しくは下記の記事をご覧ください。 20年近く前に撮影した我が家のクリスマスローズの様子と今年3月を比較してみると、時代の流れを感じます。 20年前は一重が主流でした。 今では、八重が人気ですね。 2. クリスマスホーリー(西洋ヒイラギ) nnattalli/Shutterstock.com 鉢物やリースなど、クリスマスの花材では定番ですね。日本ではあまり大きな木は見かけませんが、樹高が7mに達する常緑高木です。日本の節分に使用するヒイラギに似ていますが、ヒイラギはモクセイ科で、クリスマスホーリー(西洋ヒイラギ)はモチノキ科なので、植物学的には異なります。 学名:Ilex aquifolium和名:クリスマスホーリー、セイヨウヒイラギ(西洋柊)、イングリッシュ・ホーリー英名:European holly、English holly科名:モチノキ科属名: モチノキ属原産地:ヨーロッパ、北アメリカ、西アジア、アフリカ slowmotiongli/Shutterstock.com 【育て方】 クリスマスホーリーは比較的丈夫で育てやすい植物です。赤い実を付けさせるには、十分な太陽と施肥、水やりなどの管理が必要ですが、夏の西日と乾燥に弱いので注意。鉢植えの場合、夏の間は日差しの強い場所は避け、半日陰に移動するとよいでしょう。生け垣に使用する場合は、4月頃と9月頃に剪定します。 3. クリスマスフラワー(ポインセチア) 一番上の苞のつけ根にあるつぼみのような小さな突起部分が花。Wirestock Creators/Shutterstock.com クリスマスの代表的な植物、ポインセチアは、クリスマスの頃に花屋に出回ることからクリスマスフラワーとも呼ばれます。一見、花に見える赤い部分は苞(ほう)で、苞葉ともいいます。 学名:Euphorbia pulcherrima和名:ショウジョウボク(猩々木)、ポインセチア科名:トウダイグサ科属名: トウダイグサ属(ユーフォルビア属)原産地:メキシコ 真っ赤なポインセチアと真っ白なシクラメンの組み合わせは、クリスマスムードが盛り上がる寄せ植えになります。 【育て方】 ポインセチアは、メキシコの山地を原産とするユーフォルビアの仲間を改良して作出されました。冬に出回りますが、寒さに弱いので、最低温度10℃以上で管理します。 ポインセチアは日が短くなると花芽ができる短日植物で、流通している鉢植えは、人工的に短日処理をしています。2年目以降に、短日処理のために自宅でダンボールを被せたりしても、綺麗な花のような苞を育てるには温度調整も必要なので、かなり難度は高いです。 越冬させて育て続けるには、鉢植えを明るい暖かい場所で乾かし気味に管理します。4月頃からは、明るい半日陰で育てて、成長期に液肥を月に2回程度与えます。挿し木で増やすことができます。 これもクリスマスプランツ! 南半球原産7選 これまでご紹介した3種は、北半球原産の馴染みの深いクリスマスの植物でしたが、ここからは、これから人気が期待される南半球のクリスマスが名前につく植物を7種ご紹介します。 4. クリスマスカクタス(シャコバサボテン) Simona Bottone/Shutterstock.com もともとはシャコバサボテンと呼ばれていましたが、クリスマスの頃に出回るので、最近はクリスマスカクタスと呼ばれることも増えた多肉植物です。 学名:Schlumbergera(Zygocactus)和名:シャコバサボテンその他の名前:クリスマスカクタス、デンマークカクタス、カニバサボテン科名:サボテン科属名:カニバサボテン属(シュルムベルゲラ属)原産地:ブラジル南東部 シャコバサボテンはメキシコ原産ではなく、ブラジルの高山などで樹上や岩の上などに自生するサボテンの仲間です。和名は葉の形が蝦蛄(シャコ)に似ていることに由来します。“シャコ”ってどんな形? と思った方は検索してみてください。 Elena_Gr/Shutterstock.com 【育て方】 シャコバサボテンの生育適温は20〜30℃ですが、花芽ができる適温は15℃前後です。ポインセチアと同じく短日性の植物で、日が短くなる11月頃からつぼみをつけ、クリスマス前後に開花します。 育て方で大切なのは、4月頃に各茎(扁茎)を3節以上残して先端を摘み取り、株の形を整えることです。摘み取った茎(扁茎)は、挿し芽にも利用できます。 シャコバサボテンの挿し芽。GreenThumbShots/Shutterstock.com 意外と暑さが苦手で、夏は風通しのよい日陰になる場所で管理します。急に環境が変化するとつぼみが落ちたりしますので、寒くなって屋内に取り込む場合は、徐々に慣らしていきましょう。 5. オーストラリアン・クリスマスブッシュ(セラトペタルム) Ken Griffiths/Shutterstock.com オーストラリアン・クリスマスブッシュと呼ばれているのが、セラトペタルム(Ceratopetalum gummiferum)ですが、じつはニューサウスウェールズ・クリスマスブッシュともいいます。ちなみに、ニューサウスウェールズ州の州都はシドニーです。オーストラリアは州ごとに、クリスマスブッシュや、クリスマスツリーがあります。南半球ならではですね。 学名:Ceratopetalum gummiferum英名:New South Wales Christmas Bush(ニューサウスウェールズ・クリスマスブッシュ)、サマークリスマスブッシュ科名:クノニア科原産地:ニューサウスウェールズ州 セラトペタルムは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州原産のクノニア科の常緑中高木で、現地ではかなり大きくなるようです。日本では4~5月に花が咲きますが、現地では11~1月に開花することからこの名前が付いています。最近、鉢植えで出回っていますが、つぼみは早くから付いて、4~5月にかけて白い花が咲きます。花が終わると萼が大きくなって赤く色づき、花のように見えます。オージープランツのドドナエアと同様で、赤く色づいた萼のほうが花よりも美しいです。 KarenHBlack/Shutterstock.com 【育て方】 オージープランツですので、日当たりのよい暖かい場所で、水はけのよい土で育てます。原産地が東オーストラリアなので、比較的日本でも育てやすく、最近は苗が流通しています。 6. オーストラリアン・クリスマスツリー(ニューシア) David Steele/Shutterstock.com オーストラリアン・クリスマスツリーは、西オーストラリア原産の寄生樹であるニューシア・フロリバンダ(Nuytsia floribunda)のこと。ニューシアやヌイチア・フロリバンダとも表記されます。オーストラリアでは花が咲く時期がクリスマスシーズンと重なるため、クリスマスツリーと呼ばれています。 現地では高さ10m、幅3mにも成長し、長い針のような緑の葉をつけ、オレンジイエローの花をたくさん咲かせます。 学名:Nuytsia floribunda英名:Australian Christmas tree科名:ミズナラ科(Loranthace)原産地:西オーストラリア州樹高:5~10m alybaba/Shutterstock.com 【育て方】 暑さには強いですが、寒さには若干弱いため、冬は寒波や霜を避け、なるべく0℃以上で管理します。西オーストラリア原産なので、夏は乾燥して暑く、冬は雨が多い地中海式気候を好みます。つまり夏の高温多湿に弱く、冬は寒さと乾燥に弱いです。水はけのよい土で、水を切らさないように育てますが、用土の湿りすぎは根腐れを引き起こすため注意。水やりは、表土がしっかり乾いてからたっぷりと与えます。冬を含め、日当たりのよい場所で育てましょう。 7. ビクトリア・クリスマスブッシュ Ines Porada/Shutterstock.com 日本でも最近人気のオージープランツの一つ、シソ科ミントブッシュ(Prostanthera)の仲間です。原産地では11〜1月に開花することから、クリスマスブッシュと呼ばれています。 上写真が日本で流通しているミントブッシュです。日本では初夏に咲きます。 学名:Prostanthera lasianthos英名:Victorian Christmas Bush科名:シソ科流通名:ビクトリア・クリスマスブッシュ原産地:ビクトリア州、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、タスマニア州など東オーストラリア 【育て方】 オージープランツの栽培ポイントと同様に、日当たりのよい場所・水はけのよい土・乾かし気味・肥料は控えめに育てます。冬も温暖な地域では外で越冬しますが、屋内に入れるほうが無難です。 8. クリスマスベル(コーレア・レフレクサ) コーレアは東オーストラリア原産のベルフラワーです。10~12月にサーモンピンクから赤に色づいた美しいベル状の花を咲かせるので、クリスマスベルと呼ばれています。寄せ植えのセンターツリーやアクセントにおすすめです。 学名:Correa reflexa別名:Native fuchsia、Australian Christmas Bell科名:ミカン科原産地:東オーストラリア 【育て方】 寒さに弱いので、鉢植えで管理し、冬は0℃以上を保つようにしてください。 日当たりのよい所を好みます。他のオージープランツ同様に、できるだけ梅雨の雨などに当てないようにして、乾燥気味に育てます。施肥は春秋に、緩効性肥料を少量与えます。 9. ニュージーランド・クリスマスブッシュ(メトロシデロス・エクセルサ) ChameleonsEye/Shutterstock.com ニュージーランドのクリスマスブッシュは、マオリ語で「ポフツカワ」と呼ばれています。ニュージーランドのクリスマスツリーとも呼ばれ、毎年夏になると一斉に真っ赤な花を咲かせます。真夏のニュージーランドを象徴する木です。花が散ると木の下に真っ赤な絨毯が広がります。クリスマスブッシュの蜂蜜も土産物として有名です。 ポフツカワは、メトロシデロス・エクセルサ(Metrosideros excelsa)の通称です。ニュージーランド北東約 900kmの火山ケルマデック諸島に固有の植物で、ケルマデク ポフツカワとも呼ばれます 学名:Metrosideros excelsa(メトロシデロス・エクセルサ)英名:ニュージーランド・クリスマスツリー現地名称:Pohutukawa(ポフツカワ)科名:フトモモ科メトロシデロス属分類:常緑高木(最大樹高25mぐらいまで成長)原産地:ニュージーランド Alan Dunn/Shutterstock.com 【育て方】 日向~明るい日陰で育ちます。水はけのよい土壌ならば、さほど場所を選びません。手間のかからない庭木として、ニュージーランドでは好まれています。剪定は花後にします。 10. クリスマスエリカ Pershko Krystyna/Shutterstock.com クリスマスエリカは、もともとは南アフリカ原産のツツジ科のスズランエリカ(Erica formosa)です。通常エリカは、春に開花しますが、南半球ではクリスマスシーズンに開花するので“クリスマス”の名がつきました。「formosa」はラテン語で「美しい」という意味です。 学名:Erica formosa別名:Christmas Erica、クリスマスエリカ、鈴蘭エリカ科名:ツツジ科原産地:南アフリカケープ州 Jcaley/Shutterstock.com 【育て方】 南アフリカの地中海式気候の下で育つ植物なので、夏の高温多湿と冬の寒さ・乾燥を嫌います。 関東以西では露地植えで育ちますが、寒さの厳しい冬は、防寒が必要です。 クリスマスの名を持つ植物を覚えよう! Tanya Puntti/Shutterstock.com 10種すべて知っていた! という方は、とても園芸レベルが高いですね。多くの方は、まさか南半球にクリスマスの名がついた植物があるとは! と、驚かれたのではないでしょうか。クリスマスツリーに憧れる気持ちから、その時期に咲く花にこんな名前を付けているのかもしれませんね。クリスマスの頃に南半球に旅する機会があったら探してみてください。