えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
遠藤 昭 -「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー-の記事
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ストーリー
日本最北の離島 利尻島・礼文島の花を愛でる旅案内【36種の花図鑑】
予習しなくても次々感動に出会える旅 Rainer Lesniewski/Shutterstock.com 北海道の北部、稚内の西方の日本海上に位置する島、礼文島と利尻島は、高山植物の宝庫として有名です。両島とも最北の厳しい寒さと短い夏という、本州の高山の気候と似ており、貴重な高山植物が育ち、花の浮島とも呼ばれています。正直な所、「世界でも礼文島でしか咲かない“レブンアツモリソウ”は、6月にしか見られない」くらいの知識しかないなか、漠然と日本に残る貴重な高山植物たちに会いたい! とツアーに参加しました。 礼文島。makieni/Shutterstock.com 特に事前に予習することもなく、北海道の新鮮な海の幸も楽しめるラクチンなツアーで出かけたのです。2泊3日の短い旅でしたが、沢山の「思いがけない」草花に遭遇。目から鱗の3日間! その感動をガーデンストーリーの読者の方にもお伝えしたいと思います。 朝9時に羽田を出発し、13時半には利尻空港に到着。島へは、千歳空港から乗り換え、利尻空港に向かったのですが、てっきり小型プロペラ機に乗り換えと思い込んでいたら、なんと165席もあるボーイング737という立派なジェット機。それも満席で驚くと共に、少し安心しました。 礼文島から望む利尻山。applevinci/Shutterstock.com 利尻空港では、利尻富士が迎えてくれました。「利尻富士」と愛称で呼ばれる利尻山は、最北に位置する日本百名山で、標高は1,721m。まるで海面から浮かんでいるように裾野を広げ、島のどこからでも眺められました。また、礼文島からも雄大な美しい姿を見ることができたことは、今回の旅の中で最も印象に残る景色でした。 初日に出会った利尻の植物14種 早速、バスが向かったのは、富士野園地。ここは、吉永小百合さん主演の映画「北のカナリアたち」のロケ地で有名な場所ですが、エゾカンゾウ咲き乱れる野原にはほど遠く、まだ時期が早く、チラホラ咲く程度。野性の花を見る旅は時期が難しいですね。エゾカンゾウは他で写真を撮れたので、後ほどご紹介します。 富士野園地は、海の見えるのどかな草原でした。マムシが居ないので、草原でのロケも安全とか……。かろうじて、遠くにエゾカンゾウが咲いているのが見えました。 姫沼を一周、散策中も雄大な利尻富士が眺められ、可憐な花を咲かせるエンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ノビネチドリなどを見ることができました。 延齢草、延根千鳥、舞鶴草 写真左上から時計回りに、エンレイソウ、シロバナエンレイソウ、ノビネチドリ、マイヅルソウ。 初日最後の訪問地は、島最南端の仙法志御崎公園。海抜ゼロメートルから見る利尻富士が有名です。 利尻富士 ここでは、エゾタメネツメクサ、イワベンケイソウ、ハマカンザシ、チシマフウロ、エゾカンゾウ、ハマナス、シロヨモギなど、たくさんの有名な高山植物や海浜植物に出会うことができました。 蝦夷高嶺爪草 エゾタカネツメクサ エゾタカネツメクサ(蝦夷高嶺爪草)は、高山の砂礫地や岩場にマット状に生育する性質で、本州の高山で見られるタカネツメクサの母種とされています。楚々として可愛いですね。 岩弁慶草 イワベンケイソウ まさか利尻島で多肉植物のイワベンケイソウ(岩弁慶草)に出会うとは。多肉植物は寒さに弱いイメージでしたので、後ほど触れるイワレンゲ同様、ここで見られることが驚きでした。 浜簪 ハマカンザシ 和名ではハマカンザシ(浜簪)と呼ばれるアルメリアにも出会いました。アルメリアが利尻島で自生しているとは驚きでした。 千島風露 チシマフウロ チシマフウロソウ(千島風露)といえば、フウロソウ(ゲラニウム)もイングリッシュガーデンがブームの頃から人気の植物ですね。アルメリアと共に、フウロソウも利尻が原生地なのも驚きでした(驚きが続きます)。他にも、園芸品種でお馴染みの、オダマキやアサギリソウも、原種は利尻・礼文にあったのです。まさに植物の宝庫です。 蝦夷萱草 エゾカンソウ エゾカンゾウ(蝦夷萱草/エゾゼンテイカ)は、本州でも有名なニッコウキスゲと見た目はさほど違いを感じませんでした。しかし、僕の好きな、ヘメロカリスの原種に、こんな日本最北の地で会えたのも驚きと感動でした。 浜茄子 ハマナス ハマナス(浜茄子)はハマハシ(浜梨)とも言います。「知床旅情」で一躍有名になったハマナスです。バラ科の植物でJapanese Roseとも言われています。寒さに強いのですね。 白蓬 シロヨモギ 海岸にはシルバーリーフのシロヨモギ(白蓬)が地面に張り付くように群生していました。できることなら園芸に使用してみたい植物です。 黒百合 クロユリ 初日の宿泊先、知床温泉のホテル周辺にも利尻の代表的な花が植えられていました。 それは、僕の大好きな憧れの黒花、クロユリです。以前、自宅の庭で育てた黒花10選でもご紹介しましたが、いつしか絶えてしまいました。 礼文草 レブンソウ レブンソウ(礼文草)には、紫やピンクの花があり、同属の仲間に「リシリゲンゲ(利尻紫雲英)」もあります。通販などでも苗が売られているようですが、当然のことながら、他の地域では夏越しが難しそうです。 礼文苧環 ミヤマオダマキ(現地名:レブンオダマキ)。礼文島で咲くオダマキの正式名称は、一般的にミヤマオダマキです。 ミヤマオダマキは、日本各地の高山に分布する種で、礼文島でもその美しい姿を見ることができます。礼文島では、特に“レブンオダマキ”と呼ばれることもありますが、これはミヤマオダマキの変種や品種という扱いになります。 ミヤマオダマキは、ガーデンプランツとしても多種育てられている西洋オダマキの仲間です。利尻の街中でたくさん見かけました。 地元の日本酒「最北航路」。 驚きの連続の一日でしたが、温泉に入って、ウニ、サーモン、ホタテ、ホッケ等々海鮮類がぎっしりの夕飯を食べ、満足な一日でした。 二日目に出会った礼文の植物12種 Terence Toh Chin Eng/Shutterstock.com 二日目は、海の幸が中心の朝食でスタートです。午前中は生憎の小雨で真冬並みの寒さでしたが、午後からは天気が回復しました。朝、フェリーで礼文島に渡りました。 早速北上し、今回のツアーのメインイベントである礼文島にしかない固有種のレブンアツモリソウの群生地へ。バスを降りて少々歩きましたが、小雨はさほど大したことが無かったものの、冷たい強風が吹き、まるで真冬のような寒さでした。 礼文敦盛草 レブンアツモリソウ レブンアツモリソウ(礼文敦盛草)の開花は、6月に限られています。この日をめがけてタイミングを合わせたツアーでしたので、寒空の下で無事出会うことができました。ぷっくりとしたクリーム色の可愛らしい花です。この日、花が小雨に濡れていましたが、かえって情緒がありました。 延根千鳥 ノビネチドリ この群生地には、ラン科のノビネチドリ(延根千鳥)も咲いていました。和名の由来は、根が横に伸び、花の形が鳥の飛ぶ姿に似ていることに由来しているそうです。このノビネチドリは、その後もあちこちで見かけました。 春咲山芥子 ハルザキヤマガラシ 黄色い花を見つけましたが、ハルザキヤマガラシという名でした。ヨーロッパ原産の多年草です。貴重な植生環境の場所にも入りこんで繁茂し、問題になっているようです。 次は直ぐ近くの澄海岬(スカイ岬)へ。透明度の高い青い海で有名な観光スポットで、歌手の中島みゆきさんが「銀の龍の背に乗って」のPVの撮影を行ったことでも有名です。残念ながら青空は見えませんでした。 しかし、途中の小路にはネムロシオガマや、エゾイヌナズナ、エゾシシウド、ハクサンチドリなどを見ることができました。 根室塩竈 ネムロシオガマ ネムロシオガマ(根室塩竈)は、根室という名がついているとおり、北海道本土でも海岸を中心に見られます。葉がシダのように繊細できれいな宿根草です。 蝦夷犬薺 エゾイヌナズナ エゾイヌナズナ(蝦夷犬薺)は一見、アリッサムに似ています。イヌナズナといえば、普通は黄花ですが、エゾイヌナズナは白花で、アリッサムとも同じアブラナ科です。 蝦夷猪独活 エゾシシウド エゾシシウド(蝦夷猪独活)は、草丈100~150cmの大型多年草で、海岸近くに群生していました。イノシシが食べそうな花なので、この名前が付いたそうです。 白山千鳥 ハクサンチドリ ハクサンチドリ(白山千鳥)は、石川県の白山に多く見られるので、この名前がついたそうです。本州では標高が高い山に登らねば見られない高山植物が、一度にまとめて見られるのが、礼文島訪問の魅力ですね。 岩弁慶 イワベンケイ イワベンケイ(岩弁慶)は多肉植物扱いされることもあり、最近はサプリでも有名ですが、もともとは高山植物だったのですね。 礼文岩蓮華 レブンイワレンゲ イワレンゲ(岩蓮華)は多肉植物でお馴染みですが、メキシコ原産だと思っている方も多いのでは? 一般的なイワレンゲは、本州の沿岸の関西以西地方の海岸に育ち、あまり耐寒性が無いと思っていました。見た目はイワレンゲと余り変わらないレブンイワレンゲ、こんな寒い礼文島に自生しているとは、本当に驚きです。 蝦夷延胡索 エゾエンゴサク エゾエンゴサク(蝦夷延胡索)は、生薬に使用されるヤマエンゴグサと似ていますが、苞の形が異なります。 千島風露 チシマフウロ 利尻でも出会った礼文のチシマフウロ。フウロソウ科フウロソウ属の多年草です。別名は、エゾフウロ、エゾノフウロ、トカチフウロ、ハクサンフウロなどがあります。チシマフウロは、園芸用に栽培されることもあります。 チシマフウロソウとセンダイハギのコラボ。 深山金鳳花 ミヤマキンポウゲ 北海道から本州中部の高山の草原に生えるミヤマキンポウゲ(深山金鳳花)は、特に湿り気のあるゆるやかな斜面では大群落をつくることもあります。初夏の高山の草原を彩る花の代名詞ともされています。 礼文苧環10種の礼文の植物を一気見! 昼頃から天気が回復しました。昼食も海鮮です。これからご紹介する種類の中には、すでに登場しているものもありますが、あちらこちらで咲いていた様子を景勝地も交えてお伝えしたいと思います。 桜草擬 サクラソウモドキ サクラソウモドキ(桜草擬)は、サクラソウ科サクラソウ属の多年草です。別名は、チシマサクラソウ、エゾサクラソウなどがあります。栽培も比較的容易です。日当たりと水はけのよい場所で育てると、よく育ちます。 礼文苧環 ミヤマオダマキ(レブンオダマキ) レブンオダマキは礼文島のみに生息します。青紫色または白色です。北海道本島にはミヤマオダマキが生息し、白、紫、ピンクです。 今回の旅行で、野山に限らず街中の住宅の庭にもレブンオダマキが植えられているのを各所で見かけ、一番多く見かけた花の一つです。関東地方でも西洋オダマキはガーデニングでも一般的ですが、利尻・礼文島に原種が沢山咲いていたのには驚きです。 根室塩竈 ネムロシオガマ ネムロシオガマ(根室塩竈)は、別名エゾシオガマとも呼ばれています。ネムロシオガマは、絶滅危惧種に指定されています。 礼文小桜 レブンコザクラ 一見、日本桜草かと思いましたが、レブンコザクラは、礼文島の代表的な花の一つであり、花期は5月下旬~6月上旬。礼文島の高山地帯では一面をピンク色に染めるほど咲き誇ります。 桃岩は、北海道礼文町にある景勝地です。日本海の断崖絶壁に突き出た巨大な岩で、その形が桃に似ていることから名付けられました。 舞鶴草 マイヅルソウ マイヅルソウ(舞鶴草)は山野草としてはポピュラーですね。本州の高山地帯に分布し、ブナ林などの林床に生えています。栽培も比較的容易で、日当たりと水はけのよい場所で育てるとよく育ちます。 蝮草 マムシグサ マムシグサ(蝮草)は、サトイモ科テンナンショウ属の多年草です。別名は、ヘビノダイハチ、ヤカゴンニャク、ムラサキマムシグサ、アオマムシグサ、ヤクシマテンナンショウなどがあります。 日本全国の山野に生え、やや湿った場所に多く見られます。茎には紫褐色の模様があり、マムシの皮膚の模様に似ていることからマムシグサという名が付けられました。 延根千鳥 ノビネチドリ ノビネチドリは、ラン科ノビネチドリ属の多年草です。別名は、ネジバナ、ネジバナソウ、ネバナなどがあります。 朝霧草 アサギリソウ アサギリソウ(朝霧草)は、2000年のガーデニングブームの頃、人気があり、原生地はイギリスかヨーロッパかと思っていました。まさか、礼文島に原生しているとは! 見つけた時は、またまた驚きです。日本全国の山地や亜高山帯に分布しているようです。 白毛菊葉鍬形 シラゲキクバクワガタ シラゲキクバクワガタ(白毛菊葉鍬形)は、ゴマノハグサ科多年草植物です。別名にキクバクワガタ、ゴマノハグサモドキなどがあります。 礼文島のみならず北海道の高山帯に分布し、岩場や海岸の岩礫地などに生えます。草丈は5~25cmほどで、全体に白い毛で覆われています。 礼文島の地蔵岩は、北海道礼文島の元地海岸(もとじかいがん)に位置する高さ約50mの奇岩です。2つの切り立った岩が手を合わせた姿から地蔵岩と呼ばれています。近くにあるメノウ海岸は、その名のとおりメノウの原石が拾えることで知られるほか、夕日の絶景スポットとしても人気です。地蔵岩は、礼文島の三大奇岩(猫岩・桃岩・地蔵岩)の1つとしても知られています 蝦夷薄雪草 エゾウスユキソウ エゾウスユキソウ(蝦夷薄雪草/レブンウスユキソウ)は、北海道礼文島にのみ分布する固有種で、高山帯の草地や岩場に生えます。 利尻紫雲英 リシリゲンゲ リシリゲンゲ(利尻紫雲英)は、マメ科オヤマノエンドウ属の多年草植物です。リシリシウンエイとも呼ばれています。 姫石楠花 ヒメシャクナゲ ヒメシャクナゲ(姫石楠花)は、ツツジ科ヒメシャクナゲ属の常緑小低木です。別名は、ニッコウシャクナゲ(日光石楠花)です。 蝦夷伊吹虎の尾 エゾイブキトラノオ エゾイブキトラノオ(蝦夷伊吹虎の尾)は、タデ科イブキトラノオ属に属する多年草です。 日本最北端の植物に触れる旅を終えて 以上約36種の植物を紹介しましたが、現地では、夏時期は咲く花が2週間ごとに替わると言われ、短い期間しか見ることのできない花も多いようです。その年の気候によっても開花時期も異なり、高山植物を見る旅のタイミングは難しいものですが、巡り合えた時の感動と驚きは格別ですね。 ガーデニングを愛する私たちは、日常的にさまざまな品種改良された園芸品種に接していますが、今回の旅を通して、最近、ガーデニングで人気の園芸植物のじつに多くの原種が利尻・礼文島には存在していることを知ることができました。 利尻島 Robert Harding Video/Shutterstock.com その原種が大自然の野に凛として咲く姿は、園芸品種とは異なった生命力にあふれ、パワーのある純粋な美しさでした。今回の花旅は、本当に驚きの連続でしたが、日本列島にも、じつに多くの高山植物が咲く大自然が残っていることに感動し、この自然を大切に後世に残せたらと、純粋な気持ちになりました。
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ガーデンデザイン
【庭のリニューアル事例】オージー&イングリッシュ・ガーデンに変身
イングリッシュガーデン+オージープランツの融合に挑戦 今年4月から約1カ月半かけて、庭の一部をリニューアルしました。じつは「庭の終活」の一環なのですが、「庭の終活」については別の機会に詳しく書くことにして、今回は、僕の独自路線のオージー&イングリッシュ・ガーデンを試みたリニューアルについてレポートしたいと思います。華やかなイングリッシュ・ガーデンとワイルドなオージープランツとが融合すると、果たしてどうなるでしょうか? まずは、リニューアル後の様子です。これらの植物は、すべて鉢植えです。つまり、寄せ置きガーデンなのです。庭の終活で処分した巨大化したソテツやジャカランダの跡地を利用しました。今後の庭の終活を考え、大きくなる植物の地植えは避け、26年もののニューサイランと、胞子から育てて28年もののディクソニアの2鉢も、もともと地植えしていた株を鉢上げして移動しました。 2階から写したビフォア。 植えて6年のジャカランダは、樹高5m。樹齢60年のソテツは、株張り3m。もともとは、こんな緑のグラデーションが楽しめる鬱蒼としたトロピカルプランツのコーナーでした。 ソテツとジャカランダを移動すべく作業中の様子。なんせ、自分の背丈以上の巨大株、掘り上げるのが大変でした! この苦労話は、また次回レポートします。 木生羊歯のディクソニアとニューサイランも鉢上げした現在の姿。 想像力を働かせて試行錯誤するリニューアル作業 リニューアル前の様子です。ずいぶん暗い雰囲気で、通路の行き来に不便を感じていました。 まず、ジャカランダ、ソテツ、ニューサイラン、ディクソニアを抜き去って、すっかり空いたスペースに、今回の庭のリニューアルに活躍してくれそうな鉢植えを集めてみました。実際に鉢を並べ始めたのは5月の連休明けです。それまでは、この鉢を置くためのスペースを空けるのに時間がかかりました。 これはリニューアル途中の写真ですが、ちょうど20年前の同じ時期の写真があったので、下の写真と見比べてみましょう。 これが、同じ場所の20年ほど前です。園芸雑誌のガーデニングコンテストでグランプリを受賞し、副賞でハワイ旅行をゲットしたときの応募写真です。 正直、この20年の風景の違いは、あたかも20年歳をとった己の姿を見るようで、ショックでした。庭は主の鏡といいますから……。20年前の写真はコンテスト応募のために作り込んだ庭ですので、現在の自分の好きな植物を並べた庭と比較するものではないかもしれません。しかし、一つ明らかなことは、背景の違いです。20年前は、背景に公道の街路樹の緑が生い茂り、それが庭を引き立ててくれていましたが、今はその街路樹が枯れてしまい、近隣の家々が写り込んでしまっています。 私自身、庭のデザインをするときには、写り込ませたくない外部のものは、できるだけ植物で遮断するよう意識してきたのですが、今回はそれができていませんでした。 そこで、翌日には改良した写真を撮ってみました。少しはよくなりました。 背景になる位置に、大株のグレヴィレア・バンクシーと、銅葉ネムノキの‘サマーチョコレート’を配置しているので、もう少し季節が進んで茂ってくれば、背景の景色を遮断してくれると思います。 写真の撮り方でもずいぶん印象が変わりますが、ある程度近くで撮ったほうが、花の美しさはよく分かりますね。 これが、さらに修正を加えた冒頭と同じ位置から撮った写真です。着手から約1カ月半が経過していて、ほぼ完成に近づいた時期には、ジギタリスやデルフィニウムの花がかなり終わってしまい、ちょっと残念でした。2024年はバラも初夏の花も、見頃が短かったですね。 オージー&イングリッシュ・ガーデンの植物たち オージープランツをPick up! 今回のリニューアルに使用した植物をご紹介しておきたいと思います。 まずは、手前のオージープランツたちです。意外とジギタリスやデルフィニウムとも似合うと思いませんか? ファッショナブルな庭木として近年注目が高いグレヴィレアを4種入れています。左上から、時計回りに‘ロビンゴードン’、エレガンス、‘ココナッツアイス’、‘ピーチ&クリーム’。絶妙な花色の違いを楽しめます。 グレヴィレアの育て方は、下記の記事を参考に。 カンガルーポーも2種使用しました。右写真の2枚は、今年初めて見る色で、紫がかるカッコイイ色です。 カンガルーポーの育て方は、こちらを参考に。 米粒のように小さい花蕾が周囲の個性的な植物との繋ぎ役になってくれるライスフラワー(写真左)とニューサイランに寄り添い咲くワックスフラワー。 今回鉢上げした大物の木生シダ、ディクソニアと、ニューサイランです。ニューサイランの手前にはプルメリアを配置して、5月中旬には新芽が出てきました。8月頃にはプルメリアも咲くでしょう。 左からアガベ・アテナータ、ディクソニア、デルフィニウム、ユッカ・ロストラータ、バンクシアと、右後方は、コルディリネ‘レッドスター’。ドライ系の植物も使用してモダンな感じにしています。こうして、栽培環境が異なる植物を組み合わせることができるのは、鉢植えで集合させているからなのです。 ドライ系では、アロエベラも。 オージー&イングリッシュ・ガーデンの植物たち イングリッシュガーデン系をPick up! 手前に咲く紫の花は、カンガルーポー。 さて、イングリッシュガーデンの雰囲気を発揮してくれる植物をご紹介します。まずは、ジギタリスとデルフィニウムが咲く風景から。 存在感のあるジャーマンアイリスや、香りのよいジャスミンも使用しました。 今回は薔薇が少ないですが、20年前から我が庭に華を添えてくれる‘クィーンエリザベス’も健在です。 リニューアルを終えて思うこと 今回、「庭の終活」を念頭に、まずは、巨大化したソテツやジャカランダをお嫁に出し、このまま放置して育つにまかせていては掘り上げもできなくなりそうなディクソニアとニューサイランを鉢上げすることから始まったリニューアル。 10月にタネを播き自家製苗を作っています。デルフィニウムの栽培記事は下記から。 一念発起のおかげでスペースが空いたので、苗がたくさんできたデルフィニウムとジギタリス、そして手持ちのオージープランツの鉢植えを動員して、私が得意とする“寄せ置きガーデン”の手法で、オージー&イングリッシュ・ガーデンづくりを試みたところ、忙しい時期ではありましたが、とても楽しかったです。 2020年にプチリニューアルした別のエリア。 ふと思いついて20年前の同じ場所の写真と見比べて、一瞬ショックを受けたものの、よくよく見れば、今の庭のほうが、数段進化していると自負しております。この20年間を振り返ると、サラリーマンを卒業し、14年間はプロのガーデナーとして活動、植物園の相談員を10年近くしたり、また、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版社)を出版する機会にも恵まれました。 オージープランツマストバイ7選 この記事が掲載されている「ガーデンストーリー」サイトにも、毎月、原稿を書かせていただき、かれこれ6年(この記事でなんと100本!)。読者の皆様にも支えられ、刺激をもらい、勉強をさせていただきました。今回は、庭の一部のリニューアルでしたが、いつか残りのエリアも、今の自分が反映された庭にアップデートしたい! という願望が湧いてきています。改めて、ガーデニングって楽しいし、人生をかけられるクリエイティブな趣味だと思った次第です。 G'day, mate. 我が主の作った、オージー&イングリッシュ・ガーデンはいかがでしたか? ボクはヨークシャーテリアなのでイングリッシュ系だけれど、主の喋る英語も訛りのあるオージーイングリッシュだよ。See Ya!
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寄せ植え・花壇
【初心者でも簡単!】ミニ観葉植物で作る「苔玉(こけだま)」
初心者向け! 観葉植物で苔玉を作ってみよう 外出はちょっと避けたいこの時期は、涼しい部屋でフレッシュな緑を楽しめる苔玉作りにチャレンジしてみませんか? 手のひらに乗るくらいの可愛いサイズ感なので、場所を選ばないのも魅力です。 苔玉の作り方はいろいろありますが、今回は初心者向けに、室内のテーブルでもできる方法をご紹介します。苔玉に使うのは、2種の観葉植物。観葉植物は室内でも育てやすく入手もしやすいので、苔玉作りにおすすめです。上の写真はこの方法で実際に作った苔玉で、製作から約2カ月経ったもの。 観葉植物で作る苔玉の材料 【材 料】 苔玉 小ぶりの観葉植物の苗(今回はネフロレピスとシマトネリコ) ハイゴケ 1シート ケト土 赤玉土 マグァンプK ハイゴケ 苔玉用糸(今回は「華の糸」) 皿 水 使用する道具 ハサミ ビニール袋 使い捨てビニール手袋 45ℓのゴミ袋 粘着テープ 寄せ植えにしたネフロレピスとシマトネリコ。 写真左がネフロレピス、右がシマトネリコ。ネフロレピスとシマトネリコは、どちらもホームセンターや園芸店の「ミニ観葉」のコーナーなどで販売されています。ハイゴケもホームセンターなどで入手できます。 ハイゴケ。 ケト土(けとつち)とは、湿地や沼地に生えるマコモやヨシなどの水辺植物が水底に堆積し、分解してできる黒色の土です。繊維分を多く含み、粘着性が強く保水性にも優れています。苔玉や盆栽、ビオトープに向いている土です。苔玉や石付盆栽などの接着剤としても使用されます。大袋のほか、苔玉用として小袋に分けた製品もネットで見かけます。 苔玉をのせる皿は、家にある不要のモノでOK! なんでもよいのですが、グリーン系の皿のほうが調和しやすく落ち着きます。ハサミはクラフトバサミなどお手持ちのもので。苔玉を形作るために使用する糸は、黒い木綿糸を使う場合もありますが、私のおすすめは「華の糸」というグリーンの針金です。手芸店で入手できます。 テーブルの上が汚れないよう、45ℓのゴミ袋を敷いて四方をテープで留めておくと、ストレスなく作業できます。 苔玉の作り方 ケト土の準備 ケト土(左)と赤玉土。両手で包み込んで大きな球ができるくらいの量を用意してください。 1.ケト土と赤玉土を7:3で混ぜ、マグァンプKも少量加えます。 ケト土と赤玉土、マグァンプKをビニール袋に入れ、水を少しずつ加えながらよく混ぜ、丸くした状態。混ざったら、さらによく捏ねて粘り気を出します。 水を加える量は、耳たぶぐらいの柔らかさが目安です。 2.ビニール袋の上に1の土を置き、ボール状にした後に、直径20cm程度まで薄く広げます。 観葉植物を包む 3.シマトネリコとネフロレピスをポットから出し、根鉢はそのままに周囲の余分な土を取り除いて形を丸く整えたら、2の土の上にのせます。 4.ビニール袋ごと根鉢を包んで握り、団子状にします。崩れないようにしっかり握りましょう。 ハイゴケで包むときのポイント ここからの作業は、ハイゴケを崩さずに、上手に苔玉を包むためのステップです。作業するときは、おにぎりをラップで包んで握るように、ハイゴケをビニール袋ごと包む状態のほうがやりやすいので、その準備をします。 5.ハイゴケを裏返しにします。裏返し方は、まずハイゴケの表面にビニール袋を被せ、ビニール袋の上に崩れ防止の新聞紙をのせ、ひっくり返します。 根が下の状態の苔の表面にビニール袋を被せ、さらにその上に新聞紙をのせて…。 新聞紙が下になるようにひっくり返します。 ハイゴケの裏側(根がある面)に台紙がついた状態。 こうすることで、ハイゴケの形を崩さずに裏返して、ビニール袋の上にのせることができます。 ハイゴケで包む 6.裏返したハイゴケに観葉植物をのせます。 ハイゴケの台紙として敷かれていた紙をはがし、4の観葉植物を置きます。 7.最初はビニール袋ごと苔玉をくるみ、しっかり握り固めて苔と土を密着させます。その後、ある程度形が整ったらビニール袋を剥がし、手に持って直接苔玉を握り、形を整えます。 ハイゴケの下に敷いておいたビニール袋で、ハイゴケと土玉をくるんで握ります。 ビニール袋をはがして仕上げ。 糸をかけて完成 8.最後に、華の糸で苔を固定させます。 苔玉全体に糸をかけ、ハイゴケをしっかり固定します。 糸が見えにくいので、端にテープを貼って目印を作っておきましょう。テープがついたスタートの糸端を上にして、苔玉全体にグルグルと均等に巻き(垂直や放射状など球になるのをイメージして)、最後にテープを貼った糸端を一緒にねじって留めます。 最後にスタート部分の糸とねじり合わせて留めます。 9.皿の上に苔玉をのせて、飛び出した苔を切り落として整え、完成です。 苔玉の管理方法 皿の色が変わると雰囲気も一変。 完成した苔玉は、直射日光の当たらない明るい室内に置き、苔が乾いたら霧吹きで湿らせます。霧吹きに加え、数日に1回程度、苔玉部分をバケツの水に浸け、湿らせるとよいでしょう。緩効性肥料を土に混ぜてあるので、半年程度は施肥の必要はありません。その後は、2週間に1回程度を目安に液肥を与えます。 バケツに水を張り、苔玉部分を沈めて水やりを。 苔玉をのせる皿によって、ずいぶん雰囲気が変わります。いろいろ試して気分を変えるのも楽しいですね。 シマトネリコとネフロレピスの育て方 今回寄せ植えに選んだシマトネリコは、亜熱帯から熱帯に育つモクセイ科の半常緑樹です。明るい屋内でも、半日陰の屋外でも育てられる丈夫な樹木で、近年、日本でもシンボルツリーや観葉植物として人気です。 5~6月に花が咲くので、花後に剪定しましょう。 ネフロレピスはシダの仲間なので耐陰性が強く、直射日光の当たらない明るい場所で育てます。耐寒性が弱いので冬は屋内に入れ、レースのカーテン越しに日が当たるような場所で育てます。乾燥を嫌うので、こまめに霧吹きをすると綺麗に育ちます。 あなたのお部屋にも外の緑に負けない、爽やかなグリーンの苔玉を作って飾ってみませんか? 以前、クリスマスローズの苔玉作りもご紹介したことがありますので、ぜひこちらにも挑戦を。いろいろな植物で、苔玉作りをお楽しみください。
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宿根草・多年草
【プロもおすすめ】可憐で可愛い! やっぱり素敵な花、マーガレットの魅力と育て方
愛らしいイメージのマーガレット 「マーガレット」という響きは、なんとなく愛らしく、「ある年代」の人々の中には、少女漫画雑誌の『マーガレット』を思い出す方もいるでしょうか。もしかすると、そんな「ある年代」の人たちは、この少女漫画雑誌の名前から、マーガレットの花に、少女っぽく愛らしい、可憐なイメージを持っているでしょうか。ジェンダーフリーの時代ではあっても、大の男が「僕はマーガレットが好きで育てています」というのは少々気恥ずかしさが伴うかもしれません。しかし、園芸歴が30年に近い僕は、マーガレットを随分と育ててきて、さまざまな思い出もありながら、また、ぜひ栽培をおすすめしたい花の一つです。気恥ずかしさなんて乗り越えて、“素敵なマーガレット”について紹介したいと思います。 栽培のポイントは原生地を知ること 僕は、自分のPCに長年の間撮影した3万枚を超える植物写真を蓄積しています。多くはオージープランツや、多肉植物やアガベといった葉物やマニアック系という、どちらかというとワイルド系の植物が多いのですが、なんと今回、マーガレットを検索したら、驚くほどたくさんの写真が出てきたのです。 じつは、「隠れマーガレットファン」でした! 愛犬たちもマーガレットファンです。 前置きはさておき、僕が植物をご紹介するときに、必ずこだわるのがその植物の原生地です。原生地を知ることは、適した気候を知るヒント。すなわち「育て方」を理解するうえで大切な項目です。 原生地の気候から季節ごとの気温や雨量を知れば、そこに近い環境を庭に作るため気をつけるべき、置き場所や使用する土、水やり方法などが分かります。 マーガレットの原生地 カナリア諸島の原生マーガレット。Amovitania/Shutterstock.com マーガレットの原生地は、アフリカ大陸の西北に浮かぶ、スペイン領カナリア諸島です。基本的に、冬は温暖で雨が降り、夏は高温で乾燥する地中海式気候ですが、アフリカのサハラ砂漠にも近く、スペイン最高峰の3,718mのテイデ火山もあり、砂漠気候と亜熱帯気候に区分されます。年間の日照時間がおよそ3,000時間と多く、それに対し雨量は200mm程度とかなり乾燥しています。気温は冬でも平均が20℃近くあり、夏は25℃程度と、まさに常夏ですね。ちなみに、カナリア諸島原産の植物には、フェニックス・カナリエンシス、多肉植物の黒法師、エキウム、サイネリアなどがあります。いかにも乾燥している気候のようですね。 多肉植物の黒法師も原生地はカナリア諸島。 マーガレットの基本情報 学名:Argyranthemum和名:モクシュンギク(木春菊)英名: Margaret、Marguerite(フランス)科名:キク科属名:モクシュンギク属(アルギランセマム属)原産地:スペイン領カナリア諸島 現在、一般に市場に出回っているマーガレットは本来のマーガレットであるモクシュンギク(アルギランセマム・フルテッセンス)の園芸品種のほか、モクシュンギクと近縁種を交配させた園芸品種です。草花扱いしていますがじつは低木で、我が家でも10年ぐらいの大株に育ったことがあります。 この株は毎年刈り込み、10年ほど持ちました。 マーガレットの魅力 マーガレットというと、昔は清楚な白が主流でしたが、最近は黄色やピンク、赤、そして八重咲きなども出てきました。そんなマーガレットの種類をご紹介していきましょう。 昔ながらの白いマーガレット。 優しいピンクの親しみやすいマーガレット。 白花と、ピンクの八重花のツーショット。花心にボリュームがあり特徴的。 イエローの八重咲き品種。 八重咲きのピンク花。たくさん咲くと景色が華やぎます。 ピンクの八重咲きで埋まる、豪華マーガレットガーデンは、とても愛らしい光景です。 マーガレットは、単体で楽しむのはもちろん、寄せ植えにも使いやすい花です。花期が長いのも魅力ですね。 乾燥に強いので、ハンギングにも最適。秋に植え込んで、10月から5月いっぱいまで咲き続けてくれました。 マーガレットの育て方 ●置き場所 先にご紹介した通り、原生地のカナリア諸島の気候は日照時間が年間およそ3,000時間と、日本ではありえないのですが、できるだけ日当たりの場所で育てます。 また、原生地は常夏の国なので、寒さにはやや弱いのですが、関東以西でしたら、寒風や強い霜が当たらなければ越冬します。冬は南向きの陽だまりで育てましょう。もし、霜が当たるようでしたら、寒冷紗で防寒すると安心です。 鉢植えの場合は、12月から3月までは、日当たりのよい室内で管理します。4月から11月までは、日当たりのよい戸外で管理します。高温多湿を嫌うので、梅雨どきは雨の当たらない風通しのよい場所へ移動させ、梅雨明けから8月までは半日陰で管理します。 ●管理 パンジーなどの多花性の草花同様に、花がらをマメに摘むことが、次の花を咲かせるためには大切です。鉢植えの場合は、生育期は2週間に1度程度、液肥を施します。乾燥気味に育て、水やりは表面が十分に乾いたらたっぷりとやります。地植えの場合の施肥は、植え付け時及び春と秋に緩効性肥料を施します。便利な資材は「マグァンプK」。鉢植えの場合も、植え付けのときに「マグァンプK」を施すのがおすすめです。 ●増やし方 挿し芽で増やします。適期は5月から6月と、9月から10月です。芽の先端を長さ5~7cmに切り取り、バーミキュライト、またはパーライトに挿します。酸性をやや嫌うので、鹿沼土は避けます。 ●植え付け・植え替え 成長が早いので、鉢植えの場合は毎年、鉢増しをします。適期は3月から6月と、9月から10月です。入手したポット苗は根詰まりを起こしている場合が多いので、一回り大きな鉢に植え替えて生育を促します。根鉢を少々ほぐして植え替えますが、適期以外に植え替える必要がある場合は、根鉢をくずしません。 ●土の選び方 高温多湿を嫌うので、水はけのよい用土で植え付けます。 あと、最後に「僕はマーガレット花粉症」です! 可愛いでしょう? 発症はミモザ花粉症と同じくメルボルン在住時代。何故かクシャミと鼻水が出ると思ったら、テーブルに庭のマーガレットが活けてあり、その下には花粉が落ちていたのです。マーガレット花粉症の人、じつは結構いるのです。確かにマーガレットには花粉がいっぱいです。 でも、ミモザ同様、花粉症にメゲず、マーガレットもこれからも育てます。 爺さんが約20年間に育てて、学んだマーガレットの魅力、伝わりましたでしょうか? これからがマーガレットの美しい季節です。ぜひ、お気に入りのマーガレットを探して育ててみませんか? マーガレット・リバー地域のワイン MargaretでPC検索をしていたら、Margaret river wineの写真がヒットしました。マーガレット・リバーはワイナリーで有名な地域。僕の愛する西オーストラリアの美味しいワインです。ぜひ、マーガレットの花を観賞しながらご賞味ください。日本でも購入できますよ!
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おすすめ植物(その他)
2024年の干支「辰年」にちなんだ植物7選
今年の干支にちなんだ植物を探そう! 我が家のリュウゼツラン。これも竜の植物。 ご存じのとおり、2024年の干支は辰。十二支の中で唯一、空想上の動物で成功や繁栄の象徴とされ、縁起のよい年といわれています。植物の中には、そんな「辰」にゆかりのある名を持つものもあり、育てているだけで運気がアップするかも⁈ さて、皆さんの庭や身近な場所に、辰にちなんだ植物がいくつありますか? 冬も葉が生き生きしている常緑のリュウノヒゲ。これも竜の植物。 我が家で育てているのは、ざっと書き出すと、リュウゼツラン、リュウノヒゲ、多肉植物のリュウノツメ、金魚草(スナップドラゴン)。4種ありました。 オーストラリアに住んでいたときは、ドラゴンフルーツがスーパーに売っていて食べたことがありました。ちょっと調べると、リンドウが漢字で書くと「竜胆」だったり、聴いたことのあるドラゴンツリーなども出てきます。12年に1度のチャンスなので、今年の干支である辰(竜・龍)に因んだ植物をご紹介したいと思います。 セレクト1リュウゼツラン Yulia YasPe/Shutterstock.com 私の好きなカッコイイ剣葉系の植物「リュウゼツラン(竜舌蘭)」。これは巨大化するので育てるのはやめようと思いながらも、いま我が家には数年前に知人からもらったアオノリュウゼツランと斑入りのリュウゼツランがあります。とても存在感がある植物で、ガーデンテーブルの上に1鉢置くだけで全体が引き締まります。 アイアンの器に植えた斑入りのリュウゼツラン。青銅色のガーデンテーブルに調和。 学名:Agave americana variegata(斑入り種は variegata)英名:Agave和名:リュウゼツラン(竜舌蘭)科名 / 属名:キジカクシ科(リュウゼツラン科)/ リュウゼツラン属原産地:メキシコ 真っ赤なオージープランツのカリステモン(ブラシノキ)を背景に、葉を自由に伸ばすリュウゼツラン。カッコよすぎます。Alexander Denisenko/Shutterstock.com テキーラの原料としても有名で、100年に1度しか咲かないとされることから“センチュリープランツ”とも呼ばれ、よく新聞記事やメディアで開花が報道されます。実際には数十年に1度は開花するらしいですが……。大きく育つと花茎は数メートルもの高さに達して、見応えがあります。リュウゼツランは開花後に枯れるのも有名ですね。 2年で巨大に成長した我が家のリュウゼツラン。数センチの苗が、植えて2年後には右写真の姿に! 私が子どもの頃から、結構見かけた植物ですが、近年は、斑入りのバリエガータ種が人気のようです。肉厚の葉の先端は鋭く、地植えにすると巨大化するので要注意です。我が家では鉢植えで育てていたのですが、1本だけ数センチの小さな苗を地植えにしたら(上写真左)、2年後には葉の長さが40cmくらいになり、恐ろしくなって処分しました。 Piotr Piatrouski/Shutterstock.com 上写真は、花の様子。花茎が伸びてずいぶん高い位置で咲きますが、これは野鳥や風が種子を遠くまで運んでくれるように進化したからだといわれています。開花後に枯死する運命なので、なんとしても種を生かさないといけないと進化したのでしょうね。 【リュウゼツラン 育て方】 メキシコ原産なので、乾燥気味に育てます。耐寒性も比較的強く、−8℃程度といわれています。丈夫なのですが、私が経験したように地植えにすると巨大化し、株張りが直径5mくらいに達するようなので、狭い庭では、鉢植えをおすすめします。鉢植えの場合は水はけのよい土に植え、乾燥気味に管理します。増やし方は、下の写真のように子株がたくさん出てきますので、それを株分けします。 親株のそばに、子株が育っている様子。 また、リュウゼツランと近い、アガベ・ベネズエラの開花について以前レポートした記事も参考に。 セレクト2リュウノヒゲ 日本で古くからグラウンドカバーとして使用されてきたリュウノヒゲ(竜の髭)ですね。日陰でも育ち、管理が芝に比べて楽なことからも、冬も常緑のリュウノヒゲが重宝されてきました。じつは我が家でも、当初は憧れの芝生の庭を目指した時期もありましたが、雑草対策やら緑の維持管理がうまくいかず、敷石と砂利にリニューアルして、一部アクセント的に「潤い感」を出すリュウノヒゲを植えています。 学名:Ophiopogon japonicus英名:Mondo Grass和名:ジャノヒゲ(蛇の髭)、竜の髯、猫玉科名 / 属名:キジカクシ科 / ジャノヒゲ属原産地:日本、東アジア コクリュウはこんな花が咲きます。guentermanaus/Shutterstock.com 【リュウノヒゲ 育て方】 表土を覆うグラウンドカバーとして古くから使われている植物です。丈夫な性質で日陰でも育つので植え場所を選びません。また、手入れは不要ですから初心者にもおすすめです。花や実を期待する場合は、ある程度の日照と施肥が必要です。 紅葉に引き立つコクリュウと、和の寄せ植えに引き立つコクリュウ。 同様の育て方ができるリュウノヒゲの仲間のコクリュウとハクリュウも魅力的なのでご紹介しておきましょう。コクリュウは、紅葉の季節に黒葉が映えます。また、イワシャジンなどの和の雰囲気に合います。寄せ植えのワンポイントに使うのもいいですね。 セダムの中からシルバーがかる葉が伸び出て面白い調和を見せるハクリュウと花。 セレクト3リュウノツメ 多肉植物のリュウノツメ(竜の爪)です。まあ、竜は髭(リュウノヒゲ)やら、舌(リュウゼツラン)やら、爪やらと、姿から例えやすいですね。確かに葉先が竜の爪のようです。 我が家では、小さな鉢で屋内の窓辺に置いて20年以上生存しています。置き場所は点々と移動してきましたが、現在は摺りガラスの窓辺で、直射日光に当てなくても順調に成長しています。なんといっても手がかからず丈夫です。 学名:Haworthia margaritifera和名:リュウノツメ(竜の爪)科名 / 属名:キジカクシ科(ツルボラン亜科) / ハオルチア属原産地:南アフリカ 窓辺でゆっくり育つリュウノツメ。 多くの多肉植物がメキシコ原産ですが、これは南アフリカ原産です。ハオルチア系は南アフリカ原産ですね。ちなみに最近、いわゆる“珍奇植物”と称される植物の多くは南アフリカ原産です。 【リュウノツメ 育て方】 多肉植物というと、日照が不可欠のように思いがちですが、ハオルチア系は半日陰でも育つようです。逆に直射日光は苦手です。実際、我が家も屋内で20年以上育てています。やはり多湿には弱いので、乾燥気味に育てるのが大切です。特に夏と冬は乾燥させます。春秋が成長期なので、2,000倍の液肥を月1回程度与えます。 セレクト4リンドウ 秋の山野草の代表ともいえるリンドウは、漢字で書くと“竜胆”です。清楚で可憐なリンドウが竜胆と表記されるとは、少々意外ですよね。 リンドウの根は、現代でも竜胆(リュウタン)として漢方の胃腸薬として使用されています。その味が「熊の胆」以上に苦いため、熊以上に強い想像上の動物「竜」を想起させ、「竜の胆」と称されたのだとか。 学名:Gentiana scabra var. buergeri英名:Japanese gentian和名:リンドウ(竜胆)科名 / 属名:リンドウ科 / リンドウ属原産地:日本、中国 【リンドウ 育て方】 Flower_Garden/Shutterstock.com リンドウを育てるポイントは、十分な日光と、肥料不足・水不足に注意することです。 暖かく日当たりのよい場所が適していますが、真夏の直射日光は避け、寒冷紗で保護します。肥料不足に弱いので、春秋に緩効性肥料を与えます。緩効性肥料の代わりに、春と秋に液肥を2週間に1回程度与えてもよいでしょう。また、水不足にも弱いので、表面が乾いたらたっぷりと与えます。 セレクト5キンギョソウ(金魚草) 竜にちなむ植物の中でも、ちょっと意外なのがキンギョソウです。日本ではこの花を金魚に似ているとしていますが、イギリスではスナップドラゴン(Snap Dragon)と呼びます。“竜が噛みついている”ように見えたのでしょうか。我が家では、辰年に因んでお正月仕立てに、竹と縄の梅結びで、辰年をスナップドラゴンで祝いました。 左右対称に大株のスナップドラゴン(キンギョソウ)を植えた2024年の正月仕立て。 花がら摘みをしっかりやると、冬でも咲き続けてくれます。私が子どもの頃の昭和時代はポピュラーな花だった記憶がありますが、しばらく姿を隠していたような。最近はストックと同じ時期に、つまり秋から冬に見かけたりします。昔はキンギョソウというと、春から初夏に登場する花材でしたが、最近は周年咲きの品種もあるため、季節感が曖昧な印象です。 学名:Antirrhinum majus英名:Snap Dragon和名:キンギョソウ(金魚草)その他の名前:スナップドラゴン科名 / 属名:オオバコ科 / キンギョソウ属(アンティリナム属)原産地:地中海沿岸部 【キンギョソウ 育て方】 Boryana Manzurova/Shutterstock.com 日当たりと水はけがよいことが必須です。日陰やジメジメした場所では育ちません。また、酸性土壌を嫌いますので、あらかじめ苗を植える場所には苦土石灰をまいて、酸度の補正をしておきましょう。鉢植えの場合は、液肥を成長期に2週間に1回程度与え、花がら摘みをこまめに行うと、次々と咲いて長く楽しめます。 セレクト6ドラゴンフルーツ Bigc Studio/Shutterstock.com メルボルン駐在中に、日本ではあまり見かけないパッションフルーツと並んで、真っ赤なドラゴンフルーツをスーパーで見つけ、チャレンジしたことがありました。見た目のインパクトに反して、意外と薄味……。なんとなく物足りない印象に残らない味だったので、一度限りの試食となりました。蜂蜜をかけていただくとよいようです。 Chen Liang-Dao/Shutterstock.com 今回、ドラゴンフルーツを取り上げるにあたり、ドラゴンフルーツがクジャクサボテンの実であることを知って驚き、興味を持ったため。花は、ゲッカビジン(月下美人)と似ています。 これがクジャクサボテンの花。 こちらは、ドラゴンフルーツの花。tea maeklong/Shutterstock.com サボテン科ですが、中南米の熱帯雨林原産です。砂漠でないところがなんとも意外でした。まさしくゲッカビジンと近縁種で、花も果実も似ています。まさかクジャクサボテンと似た植物の実とは! 驚きでした。2024年も早々に、植物は私を驚かせてくれます。 学名:Hylocereus英名:Pitaya科名 / 属名:サボテン科 / ヒロセレウス属原産地:メキシコ、中南米の熱帯雨林 【ドラゴンフルーツ 育て方】 ドラゴンフルーツの発芽。Gheorghe Mindru/Shutterstock.com ドラゴンフルーツの育て方については、熱帯植物を得意とする園芸研究家の小川恭弘さんが詳しく解説していますので、以下を参考に。果実の中のタネからの栽培も興味深いものですよ。 セレクト7ドラゴンツリー Makabas/Shutterstock.com 最後に、最も竜に相応しい雄姿のドラゴンツリーをご紹介します。 ドラゴンツリーは、リュウゼツラン科の常緑高木で、大西洋のカナリア諸島原産です。樹齢6千年ともいわれる長寿の木で、幹を傷つけると暗い赤色の樹液が採れることから、「竜血樹」の別名があります。正しく竜を名乗るにふさわしい樹木ですね。 学名:Dracaena draco英名:Dragon Tree和名:リュウケツジュ(竜血樹)科名 / 属名:リュウゼツラン科 / ドラセナ属原産地:カナリア諸島 【ドラゴンツリー 育て方】 Mr Dmitry/Shutterstock.com ドラゴンツリーの樹脂は、少し甘さにスパイシーさを加えたような奥深い香りを持ち、お香の調香や樹脂の塊をそのまま香りを楽しむために使ったりします。また、古代ローマでは染料や薬として用いられ、18世紀のイタリアではバイオリンに塗るニスとして使われました。バイオリンの名器、ストラディバリウスの音色の秘密はニスに在り、という説も。そのため、バイオリン愛好家としては、とてもドラゴンツリーの魔力に惹かれてしまいます。 ドラゴンツリーは葉が美しく、ある程度の寒さにも耐えるので、観葉植物としても利用されているようです。最近、日本でも苗や種子が、通販などでたまに販売されているようですので、育て方と種子の発芽方法を記しておきます。 【ドラゴンツリー 育て方】 水はけのよい土で、日向または明るい半日陰でも育ちます。寒さに弱いので、鉢植えにして冬は屋内で管理します。乾燥には強いですが、表土が乾いたらたっぷり水を与えます。根腐れしやすい植物ですので、鉢受け皿には決して水をためないでください。もともとカナリア諸島などが原産地で、風や塩害には強いとされています。増やす場合は、種子を播きます。 もし、種子を入手した場合は、殻が硬いのでサンドペーパーで表皮を傷つけ、ぬるま湯に 24 時間浸します。播種には種まき用土を使用し、温度を25℃に保ちます。土壌は常に湿っている必要がありますが、濡れたままではいけません。発芽には数カ月かかることもあります。 2024年も幕を開けて早1カ月。植物たちはガーデニングシーズンに向けて、日々成長しています。ご紹介した“辰(竜・龍)”に因んだ元気のある植物を筆頭に、さまざまな植物と親しみながら、ガーデニングを楽しむ豊かな一年をお過ごしください。
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宿根草・多年草
世界でもっとも大きな花⁉︎ ショクダイオオコンニャク(燭台大蒟蒻)が咲いた!
紅葉深まる植物園で初めて目撃した世界一大きなつぼみ 紅葉が美しい小石川植物園。旧東京医学校本館を背景に。 世界一大きな花として度々メディアで取り上げられる、ショクダイオオコンニャク(燭台大蒟蒻)が、2023年12月に東京都文京区にある「小石川植物園」で開花しました。私がその花の存在を認識したのは12月3日のこと。小石川植物園の近所で音楽仲間の会合があり、帰りに数名の仲間とモミジの紅葉を見に立ち寄ったら、偶然にも開花直前のつぼみ状態に遭遇。 小石川植物園温室にて。12月3日のつぼみの様子。 音楽仲間たちは当然、ショクダイオオコンニャクにはあまり関心がなさそうでした。その後、開花の情報を聞いたのに見に行くことができず悔しい思いをしていたら、開花を見に行ったという園芸仲間が、12月8日の開花の写真をSNSにアップしていたのを発見。 小石川植物園温室にて。開花した12月8日の様子。撮影/Yuri Endo そして、茨城のつくば方面に住む音楽仲間の一人が、地元の筑波実験植物園で11月にたまたま撮っていたという写真を思い出しました。なんだか変な植物だと思っていたのですが、それがまさにショクダイオオコンニャクの実の姿であることを認識。こんな経緯から、ショクダイオオコンニャクの開花前・開花・花後の実の経過が分かる貴重な写真が揃ったので、ここで皆さんに見ていただこうと筆を執った次第です。 ショクダイオオコンニャクとは 小石川植物園で公開された2010年のショクダイオオコンニャク。 国内にある数カ所の植物園で、このショクダイオオコンニャクは栽培されているようですが、毎年咲くことはなく、不定期のようです。小石川植物園での開花は13年ぶりですし、筑波実験植物園の開花も3年ぶり。さらにこの花は、こんなに大きいのに、何と一日花。一日経つと萎んでしまうのですから、開花の瞬間に出会えるのは非常に貴重なことなのです。 調べてみると、国内での開花は、2023年12月の段階で30例にも満たない希少なもの。次はいつ話題になるのか分かりませんが、世界一大きな花であるショクダイオオコンニャクについて解説しておきましょう。また後半では、今の時期になると食卓に上ることの多い、いわゆる「おでんの蒟蒻」の原料であるコンニャク芋についても触れたいと思います。 森の中のショクダイオオコンニャク。Bpk Maizal/Shutterstock.com 和名:ショクダイオオコンニャク(燭台大蒟蒻)学名:Amorphophallus titanum英名:Titan arum科名:サトイモ科属名:コンニャク属別名:スマトラオオコンニャク原産地:インドネシア、スマトラ島 小石川植物園の生育記録。写真/Yuri Endo ショクダイオオコンニャクは、インドネシア、スマトラ島に生育するサトイモ科コンニャク属の希少植物(絶滅危惧種)。日本国内でも数カ所の植物園にあるだけで、人工的な実生は極めて難しく、増やすこともなかなかできないようです。別名をスマトラオオコンニャクといい、世界最大級の花を咲かせる植物として知られ、大きいものではなんと高さ3m超え。小石川植物園では成長の記録が白板に書かれていましたが、開花時で213.5cm。ギネスブックで認定された世界最大の記録は高さ3.1mなので、少し及ばなかったようです。 ショクダイオオコンニャクの花の香り 花が終わると中央の突起部分がくたっとする。 thomascanss/Shutterstock.com その名前のとおり、ロウソク立ての燭台のような形をした花を数年(7年説もある)に1度咲かせるといわれていますが、その花は一日花で、長くても2日間しか花姿が保たれません。花は肉が腐ったような強烈な悪臭がすることでも有名で、見学に行くと服に匂いが移り、帰りの電車で気まずい思いをするともいわれるほど。そんな悪臭を放つことから、「死体花」(corpse flower)とか、またその大きさから「お化けコンニャク」とか呼ばれています。 国内での開花は稀で、同一株が複数回開花した例はさらに限られます。最近の開花記録を調べてみました。 最近の国内の開花記録は下記のとおり、滅多に開花しません。 2023年12月 東京・小石川植物園(13年ぶり)2023年7月 愛知・東山動植物園(栽培12年で初開花)2023年5月 茨城・筑波実験植物園(この10年間で2014年、2016年、2018年、2020年に開花)2022年12月 東京・神代植物園(この10年間で2015年、2019年、2021年に開花) *国内ではほかに、鹿児島・フラワーパークかごしまでも栽培されているようですが、2010年が最後の開花記録のようです。 ショクダイオオコンニャクの雄花と雌花。prajit48/Shutterstock.com 世界最大級の花といわれていますが、厳密には、小さな花が集まった花序です。このように、花序全体がまとまって1輪の花のように見えるものは「偽花(ぎか)」と呼ばれます。 絶滅危惧種で繁殖が難しいとされていますが、腐肉や獣糞の臭いで昆虫を集めて花粉を媒介させるようです。意味があって悪臭を放っているんですね。 ショクダイオオコンニャクの生態 栽培・成長に関しては文献がなく、ショクダイオオコンニャクの栽培経験がある植物園「フラワーパークかごしま」より下記引用させていただきます。 「種子をまいてから花が咲くまで14~16年ほどかかるといわれ、その間十数回にわたり破れ傘をひっくり返したような1枚の巨大な葉を広げ、地中のコンニャクイモに栄養を貯えます。そしてある時、イモから花芽が出芽し約1ヶ月後には開花します。肉穂花序の先端は棍棒状の付属体となり、その下の仏炎苞に包まれた部分の上部に雄花、下部に雌花が密生します。花序は高さ3m、直径1.5mに達するとされ、本種は花序(花の集合体)として世界最大の花であり、ラフレシアは1個の花として世界最大です。当園では2008年に2株、2010年に1株が開花しました。開花時に付属体が発熱発臭し、腐臭を周りに拡散させて花粉媒介甲虫を集めます。栽培には最低18℃が必要です。」 参考出典:フラワーパークかごしま つくば実験植物園にて。撮影/Naoki Kawada また今年、つくば実験植物園で結実や種子の採取に成功しましたが、これは国内初とのこと。これまでも人工授粉を複数回試みたものの、失敗したそうです。今回は、1週間差で咲いた2株を使って人工授粉できたのだといいます。この実の写真は非常に貴重ですね。さらに、この種子を播いて、日本初のショクダイオオコンニャクの発芽に成功したとのニュースがネットに流れていました。 配信記事によると、「同園によると、発芽が確認されたのは12月12日。20日現在で3つが発芽し、いずれも11月10日に植えたものという。約20個の種子を植えており、残りも順次発芽するとみられる。順調に育てば約3カ月で葉が出て、10~12年で開花する見通しという」とのこと。写真を提供してくれた後輩のK君に感謝! 下の2枚はニュージーランドのオークランド植物園とニューヨーク植物園の開花の写真ですが、どちらも、凄い人だかりですね。 ニュージーランドのオークランド植物園。Moritz Fraisl/Shutterstock.com 2016年のニューヨーク植物園にて。lev radinl/Shutterstock.com ショクダイオオコンニャクの仲間、日本の食用蒟蒻は? sasazawa/Shutterstock.com さて、蒟蒻というと、最近ではダイエット食でも人気のようですし、これからはおでんの季節で蒟蒻は欠かせませんが、原料はコンニャク芋であることはご存じの通り。その生産トップは群馬県で、日本の全生産数の95%を占めています。私は東京で生まれ育っているため群馬は比較的近く、旅行で度々訪れてはいるものの、「コンニャク畑」も植物としてのコンニャクも見たことがありませんでした。では、いわゆるコンニャクの花とか、いったいどうなのでしょうか? ショクダイオオコンニャクのような花と葉っぱなのでしょうか? この機会に調べてみることにしました。 和名:コンニャク(植物はカタカナでコンニャク、食品は蒟蒻と漢字で示して区別されます)学名:Amorphophallus konjac英名:elephant foot、devil's tongue(悪魔の舌)科名:サトイモ科属名:コンニャク属原産地:原産地はインドまたはインドシナ半島(ベトナム付近)とされ、東南アジア大陸部に広く分布 英名が凄いですね。それぞれ芋と花の形態に由来するようです。 左/これがコンニャク芋の花。やはりフォルムが似ていますね。 Leela Mei/Shutterstock.com 右/栽培されているコンニャクの姿。yoshi0511/Shutterstock.com コンニャク芋は、ジャガイモやサツマイモ同様に種芋から増やしますが、ジャガイモと違って収穫まで2~3年必要とのこと。通常は3年生または4年生の2~3kgにまで成長した芋を、秋に出荷するそうです。 コンニャク芋は低温に弱く、腐りやすいため、収穫から植え付けまでの保管が難しいそうです。丈夫そうに見えますが、じつはデリケートな植物で、強い日光・風・干ばつを嫌い、水はけの悪い場所ではうまく育ちません。 コンニャク芋(栽培用の種芋)Yohanes Setiyawan/Shutterstock.com コンニャク芋は、年平均気温が13℃以上必要なため、寒冷地での栽培は難しく、東北南部が北限となっているようです。 食用の蒟蒻の作り方は、大雑把にいうと、コンニャク芋を蒸してすり潰し、石灰水(アルカリ水)を混ぜて煮込み、型に入れて固めるそうです。 Isabelle OHara/Shutterstock.com 身近な食べ物の蒟蒻ですが、この神秘的な花を見ると育ててみたくなりますね。今度、おでんを囲んだときは、ぜひコンニャク芋や、その花や葉、世界一大きな花を咲かせるショクダイオオコンニャクを話題に、お召し上がりください。
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「クリスマス」が名前に入る植物10選
クリスマスの名を持つ植物、何種類ご存じですか? Pixel-Shot/Shutterstock.com 気がつけばクリスマスシーズン。植物の中でクリスマスにまつわるものといえば、クリスマスローズやクリスマスホーリーなどが有名ですが、真夏にクリスマスを迎える南半球ではモミの木をはじめ入手しづらいものばかり。そのため、代わりに花木などに“クリスマス〇〇”と名付けて飾るようになったと思われます。そんなわけで、じつは南半球にはクリスマスが名前につく植物が多いのです。 AMCImagery/Shutterstock.com 日本でもそんな名前をもつ植物を見かけるようになっています。今後、ますます出回るようになるかもしれませんね。ここでは、定番の植物はもちろん、まだ認知度が低いものも先取りして、由来や育て方をご紹介します。 定番のクリスマスプランツBest3 初めに、すでに定番になっている植物を3種ご紹介します。 1. クリスマスローズ Natalia Greeske /Shutterstock.com あまりにも有名ですね。当サイトGarden Storyにもたくさんの記事が公開されていて、ガーデニングの栽培品種としてはもちろん、最近は切り花でも見かける根強い人気の宿根草です。 学名:Helleborus俗名:クリスマスローズ、ガーデン・ハイブリッド、レンテンローズ、科名 :キンポウゲ科属名:クリスマスローズ属(ヘレボルス属)原産地:ヨーロッパ全域から地中海沿岸、バルカン半島、黒海沿岸、中国に自生 日本でクリスマスローズの人気が上昇したのは、この20~30年のことです。それまでは、ヘレボレスと呼ばれていて、どちらかいうとマニアックな園芸愛好家が育てる地味目な植物でした。急速に品種改良が進んだのも、この20年間のように感じます。「クリスマス」「ローズ」というネーミングも人気の一つの要因かもしれません。私も、30年近く育てています。 育て方など詳しくは下記の記事をご覧ください。 20年近く前に撮影した我が家のクリスマスローズの様子と今年3月を比較してみると、時代の流れを感じます。 20年前は一重が主流でした。 今では、八重が人気ですね。 2. クリスマスホーリー(西洋ヒイラギ) nnattalli/Shutterstock.com 鉢物やリースなど、クリスマスの花材では定番ですね。日本ではあまり大きな木は見かけませんが、樹高が7mに達する常緑高木です。日本の節分に使用するヒイラギに似ていますが、ヒイラギはモクセイ科で、クリスマスホーリー(西洋ヒイラギ)はモチノキ科なので、植物学的には異なります。 学名:Ilex aquifolium和名:クリスマスホーリー、セイヨウヒイラギ(西洋柊)、イングリッシュ・ホーリー英名:European holly、English holly科名:モチノキ科属名: モチノキ属原産地:ヨーロッパ、北アメリカ、西アジア、アフリカ slowmotiongli/Shutterstock.com 【育て方】 クリスマスホーリーは比較的丈夫で育てやすい植物です。赤い実を付けさせるには、十分な太陽と施肥、水やりなどの管理が必要ですが、夏の西日と乾燥に弱いので注意。鉢植えの場合、夏の間は日差しの強い場所は避け、半日陰に移動するとよいでしょう。生け垣に使用する場合は、4月頃と9月頃に剪定します。 3. クリスマスフラワー(ポインセチア) 一番上の苞のつけ根にあるつぼみのような小さな突起部分が花。Wirestock Creators/Shutterstock.com クリスマスの代表的な植物、ポインセチアは、クリスマスの頃に花屋に出回ることからクリスマスフラワーとも呼ばれます。一見、花に見える赤い部分は苞(ほう)で、苞葉ともいいます。 学名:Euphorbia pulcherrima和名:ショウジョウボク(猩々木)、ポインセチア科名:トウダイグサ科属名: トウダイグサ属(ユーフォルビア属)原産地:メキシコ 真っ赤なポインセチアと真っ白なシクラメンの組み合わせは、クリスマスムードが盛り上がる寄せ植えになります。 【育て方】 ポインセチアは、メキシコの山地を原産とするユーフォルビアの仲間を改良して作出されました。冬に出回りますが、寒さに弱いので、最低温度10℃以上で管理します。 ポインセチアは日が短くなると花芽ができる短日植物で、流通している鉢植えは、人工的に短日処理をしています。2年目以降に、短日処理のために自宅でダンボールを被せたりしても、綺麗な花のような苞を育てるには温度調整も必要なので、かなり難度は高いです。 越冬させて育て続けるには、鉢植えを明るい暖かい場所で乾かし気味に管理します。4月頃からは、明るい半日陰で育てて、成長期に液肥を月に2回程度与えます。挿し木で増やすことができます。 これもクリスマスプランツ! 南半球原産7選 これまでご紹介した3種は、北半球原産の馴染みの深いクリスマスの植物でしたが、ここからは、これから人気が期待される南半球のクリスマスが名前につく植物を7種ご紹介します。 4. クリスマスカクタス(シャコバサボテン) Simona Bottone/Shutterstock.com もともとはシャコバサボテンと呼ばれていましたが、クリスマスの頃に出回るので、最近はクリスマスカクタスと呼ばれることも増えた多肉植物です。 学名:Schlumbergera(Zygocactus)和名:シャコバサボテンその他の名前:クリスマスカクタス、デンマークカクタス、カニバサボテン科名:サボテン科属名:カニバサボテン属(シュルムベルゲラ属)原産地:ブラジル南東部 シャコバサボテンはメキシコ原産ではなく、ブラジルの高山などで樹上や岩の上などに自生するサボテンの仲間です。和名は葉の形が蝦蛄(シャコ)に似ていることに由来します。“シャコ”ってどんな形? と思った方は検索してみてください。 Elena_Gr/Shutterstock.com 【育て方】 シャコバサボテンの生育適温は20〜30℃ですが、花芽ができる適温は15℃前後です。ポインセチアと同じく短日性の植物で、日が短くなる11月頃からつぼみをつけ、クリスマス前後に開花します。 育て方で大切なのは、4月頃に各茎(扁茎)を3節以上残して先端を摘み取り、株の形を整えることです。摘み取った茎(扁茎)は、挿し芽にも利用できます。 シャコバサボテンの挿し芽。GreenThumbShots/Shutterstock.com 意外と暑さが苦手で、夏は風通しのよい日陰になる場所で管理します。急に環境が変化するとつぼみが落ちたりしますので、寒くなって屋内に取り込む場合は、徐々に慣らしていきましょう。 5. オーストラリアン・クリスマスブッシュ(セラトペタルム) Ken Griffiths/Shutterstock.com オーストラリアン・クリスマスブッシュと呼ばれているのが、セラトペタルム(Ceratopetalum gummiferum)ですが、じつはニューサウスウェールズ・クリスマスブッシュともいいます。ちなみに、ニューサウスウェールズ州の州都はシドニーです。オーストラリアは州ごとに、クリスマスブッシュや、クリスマスツリーがあります。南半球ならではですね。 学名:Ceratopetalum gummiferum英名:New South Wales Christmas Bush(ニューサウスウェールズ・クリスマスブッシュ)、サマークリスマスブッシュ科名:クノニア科原産地:ニューサウスウェールズ州 セラトペタルムは、オーストラリアのニューサウスウェールズ州原産のクノニア科の常緑中高木で、現地ではかなり大きくなるようです。日本では4~5月に花が咲きますが、現地では11~1月に開花することからこの名前が付いています。最近、鉢植えで出回っていますが、つぼみは早くから付いて、4~5月にかけて白い花が咲きます。花が終わると萼が大きくなって赤く色づき、花のように見えます。オージープランツのドドナエアと同様で、赤く色づいた萼のほうが花よりも美しいです。 KarenHBlack/Shutterstock.com 【育て方】 オージープランツですので、日当たりのよい暖かい場所で、水はけのよい土で育てます。原産地が東オーストラリアなので、比較的日本でも育てやすく、最近は苗が流通しています。 6. オーストラリアン・クリスマスツリー(ニューシア) David Steele/Shutterstock.com オーストラリアン・クリスマスツリーは、西オーストラリア原産の寄生樹であるニューシア・フロリバンダ(Nuytsia floribunda)のこと。ニューシアやヌイチア・フロリバンダとも表記されます。オーストラリアでは花が咲く時期がクリスマスシーズンと重なるため、クリスマスツリーと呼ばれています。 現地では高さ10m、幅3mにも成長し、長い針のような緑の葉をつけ、オレンジイエローの花をたくさん咲かせます。 学名:Nuytsia floribunda英名:Australian Christmas tree科名:ミズナラ科(Loranthace)原産地:西オーストラリア州樹高:5~10m alybaba/Shutterstock.com 【育て方】 暑さには強いですが、寒さには若干弱いため、冬は寒波や霜を避け、なるべく0℃以上で管理します。西オーストラリア原産なので、夏は乾燥して暑く、冬は雨が多い地中海式気候を好みます。つまり夏の高温多湿に弱く、冬は寒さと乾燥に弱いです。水はけのよい土で、水を切らさないように育てますが、用土の湿りすぎは根腐れを引き起こすため注意。水やりは、表土がしっかり乾いてからたっぷりと与えます。冬を含め、日当たりのよい場所で育てましょう。 7. ビクトリア・クリスマスブッシュ Ines Porada/Shutterstock.com 日本でも最近人気のオージープランツの一つ、シソ科ミントブッシュ(Prostanthera)の仲間です。原産地では11〜1月に開花することから、クリスマスブッシュと呼ばれています。 上写真が日本で流通しているミントブッシュです。日本では初夏に咲きます。 学名:Prostanthera lasianthos英名:Victorian Christmas Bush科名:シソ科流通名:ビクトリア・クリスマスブッシュ原産地:ビクトリア州、クイーンズランド州、ニューサウスウェールズ州、タスマニア州など東オーストラリア 【育て方】 オージープランツの栽培ポイントと同様に、日当たりのよい場所・水はけのよい土・乾かし気味・肥料は控えめに育てます。冬も温暖な地域では外で越冬しますが、屋内に入れるほうが無難です。 8. クリスマスベル(コーレア・レフレクサ) コーレアは東オーストラリア原産のベルフラワーです。10~12月にサーモンピンクから赤に色づいた美しいベル状の花を咲かせるので、クリスマスベルと呼ばれています。寄せ植えのセンターツリーやアクセントにおすすめです。 学名:Correa reflexa別名:Native fuchsia、Australian Christmas Bell科名:ミカン科原産地:東オーストラリア 【育て方】 寒さに弱いので、鉢植えで管理し、冬は0℃以上を保つようにしてください。 日当たりのよい所を好みます。他のオージープランツ同様に、できるだけ梅雨の雨などに当てないようにして、乾燥気味に育てます。施肥は春秋に、緩効性肥料を少量与えます。 9. ニュージーランド・クリスマスブッシュ(メトロシデロス・エクセルサ) ChameleonsEye/Shutterstock.com ニュージーランドのクリスマスブッシュは、マオリ語で「ポフツカワ」と呼ばれています。ニュージーランドのクリスマスツリーとも呼ばれ、毎年夏になると一斉に真っ赤な花を咲かせます。真夏のニュージーランドを象徴する木です。花が散ると木の下に真っ赤な絨毯が広がります。クリスマスブッシュの蜂蜜も土産物として有名です。 ポフツカワは、メトロシデロス・エクセルサ(Metrosideros excelsa)の通称です。ニュージーランド北東約 900kmの火山ケルマデック諸島に固有の植物で、ケルマデク ポフツカワとも呼ばれます 学名:Metrosideros excelsa(メトロシデロス・エクセルサ)英名:ニュージーランド・クリスマスツリー現地名称:Pohutukawa(ポフツカワ)科名:フトモモ科メトロシデロス属分類:常緑高木(最大樹高25mぐらいまで成長)原産地:ニュージーランド Alan Dunn/Shutterstock.com 【育て方】 日向~明るい日陰で育ちます。水はけのよい土壌ならば、さほど場所を選びません。手間のかからない庭木として、ニュージーランドでは好まれています。剪定は花後にします。 10. クリスマスエリカ Pershko Krystyna/Shutterstock.com クリスマスエリカは、もともとは南アフリカ原産のツツジ科のスズランエリカ(Erica formosa)です。通常エリカは、春に開花しますが、南半球ではクリスマスシーズンに開花するので“クリスマス”の名がつきました。「formosa」はラテン語で「美しい」という意味です。 学名:Erica formosa別名:Christmas Erica、クリスマスエリカ、鈴蘭エリカ科名:ツツジ科原産地:南アフリカケープ州 Jcaley/Shutterstock.com 【育て方】 南アフリカの地中海式気候の下で育つ植物なので、夏の高温多湿と冬の寒さ・乾燥を嫌います。 関東以西では露地植えで育ちますが、寒さの厳しい冬は、防寒が必要です。 クリスマスの名を持つ植物を覚えよう! Tanya Puntti/Shutterstock.com 10種すべて知っていた! という方は、とても園芸レベルが高いですね。多くの方は、まさか南半球にクリスマスの名がついた植物があるとは! と、驚かれたのではないでしょうか。クリスマスツリーに憧れる気持ちから、その時期に咲く花にこんな名前を付けているのかもしれませんね。クリスマスの頃に南半球に旅する機会があったら探してみてください。
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樹木
【プロが選ぶ】秋から冬に美しい実をつける庭木 マストバイ10
実のなる庭木1ビバーナム・ティヌス 木の実というと、パッと思い浮かぶのは赤い実かもしれませんが、私が今までに見た中で一番感動したのは、スペイン旅行で出会ったビバーナム・ティヌスです。 学名:Viburnum tinus和名:ビバーナム・ティヌス、トキワガマズミ英名:Laurustinus科名 :レンプクソウ科(スイカズラ科)属名: ガマズミ属原産地:ヨーロッパ・東アジア このメタリックなブルーの実が、ビバーナム・ティヌスです。ビバーナムというと、「おおでまり」を思い浮かべますが、これもビバーナムの仲間です。常緑の品種で春に白花を咲かせ、秋には、こんな明るいブルーの実をつけます。 アルハンブラ宮殿でビバーナム・ティヌスを3月に見かけましたが、花が咲いていて、前年の実も残っている状態でした。 上写真は、帰国後に苗を購入して、寄せ植えにした大鉢です。もちろん春にはビバーナムの白花が咲きますが、株元にビオラなどを植え込んで彩りをプラスしました。 【ビバーナム・ティヌスの育て方】 剪定は、多くの花木と同様に春の花後に行います。夏になると花芽分化期を迎え、翌年の花を咲かせるための花芽ができます。夏以降に剪定すると、花芽を切り落とすことになるので注意してください。 植え付けの時期は、真夏・真冬を除いた春・秋がおすすめです。植え付けは、根鉢より一回り大きな植え穴を掘り、植え土に等量の腐葉土を混ぜるとよいでしょう。植え付け後は支柱を立てて幹に添え、十分に水を与えます。 実のなる庭木2サワフタギ JIANG TIANMU/Shutterstock.com 青い実のつく、日本に自生する植物です。日本原産で青い実をつける植物は珍しいです。北海道~九州の各地に分布しており、近年、庭木としても注目されています。 「サワフタギ」という名前は、沢をふさぐように茂るところに由来するようです。 花も繊細で、5〜6月に開花。Tamotsu Ito/Shutterstock.com 学名:Symplocos sawafutagi和名:サワフタギ(沢蓋木)、ルリミノウシコロシ英名:Asiatic sweet leaf科名 :ハイノキ科属名: ハイノキ属原産地:日本・東アジア 【サワフタギの育て方】 国内に自生する丈夫な落葉広葉樹。低木から小高木で、樹高は2~6m。特に施肥などの必要はなく、半日陰~日向の風通しのよい場所で育てます。春からはよく日に当たる場所で、日差しが強くなる5月以降は西日が当たらないような場所が適しています。枝を横に広げる樹形になるので、剪定をこまめにして、整えましょう。 実のなる庭木3紫式部(ムラサキシキブ) とても日本的情趣を感じさせる落葉低木ですね。古来、紫は気品のある色とされてきました。花言葉も「聡明」「上品」です。我が家の紫式部は庭の片隅の日当たりの悪いところに植わっていますが、毎年、実をつけてくれます。 学名:Callicarpa japonica和名:紫式部科名:シソ科属名:ムラサキシキブ属原産地:東アジア(日本・中国・朝鮮半島・台湾)樹高:2~3m 【ムラサキシキブの育て方】 丈夫な植物で特別な手入れは必要ありませんが、やや湿り気のある環境を好むようです。肥料を与えなくても育ちますが、花後に、発酵油粕などのお礼肥を与えるとよいでしょう。 実のなる庭木4南天(ナンテン) 赤い実をつける庭木の代表選手のような存在ですね。北側の日当たりの悪い場所に植えていても、毎年赤い実をつけてくれる、家の守り神のような存在です。正月になると、庭に植えていてよかった! と実感させられるのが南天です。“難を転ずる”めでたい木として親しまれています。 学名:Nandina domestica和名:ナンテン(南天) 英名:Sacred bamboo(聖なる竹)、Heavenly bamboo(天国の竹)科名 :メギ科属名: ナンテン属原産地:日本・中国・東南アジア 南天といえば、和の植物の印象が強いですが、上写真はイタリア旅行中に出会った南天の大鉢です。ダイナミックでカッコよかったです。 やはり南天が活躍する季節といえば、お正月ですね。スワッグに使用したり、手作りする伊達巻きにも南天を添えています。また、茂りすぎた南天を大きな壺に活けると、玄関が華やかになり、お正月気分も盛り上がります。庭にあると、とても便利です。 【南天の育て方】 南天は、庭のあちこちによく生えてきますが、野鳥が運んで来ているのでしょうね。ほとんど手がかからず、ほったらかしで育ってくれるありがたい植物です。ただし、実を沢山ならせるには日照と施肥が必要です。肥料は、春先と秋に与えましょう。 実のなる庭木5千両(センリョウ) 千両といえば、南天と並ぶお正月の定番花材です。赤い実が美しく、お正月や暮らしの中で活躍するので、庭に1株あると便利です。 夏場の千両の実は、写真のようにまだグリーンで、これもまた可愛いものです。 学名:Sarcandra glabra(Chloranthus glaber)和名:センリョウ(千両) 英名:Japanese Sarcandra, Senryou科名 :センリョウ科属名:センリョウ属原産地:日本・東アジア 庭の植物でちょっとした飾りを作るのも楽しいもの。 【千両の育て方】 関東以南では、地植えで問題ありませんが、もともと林の中などに自生しているので、明るい半日陰で、あまり風の当たらない場所で育てます。寒冷地では鉢植えにして、冬は屋内に移動し寒さをしのぐほうが無難です。また、開花時期に雨に当たると実がつきにくいともいわれているので、鉢植えの場合は花のある時期は雨を避けましょう。 地植えの場合は、根付いてしまえば施肥や水やりは不要ですが、実つきをよくしたい場合は、発酵油粕などのリン酸を含む寒肥を与えます。鉢植えの場合も施肥は同様です。3年以上の古枝や細い枝には実がつかないので、3月に株元から剪定します。増やす場合は、挿し木か種まきで。種子を採取して実生苗にする場合は、熟した実の果肉を取り除き、よく洗って、種子を乾燥させないように気をつけながら、赤玉土など清潔な土に播きます。土を乾燥させないように管理すると、春には発芽します。 実のなる庭木6万両(マンリョウ) 千両とくれば、次は万両ですね。野鳥が運んでくるのか、庭の至る所に生えてきます。見逃しがちですが、うつむいて咲く花が意外と可愛いのです。 「千両と万両の違いは?」という質問がよくありますが、万両は実が下向きにつきます。ふと、万両は英名ではMillion dollarとでもいうのかな? と調べたら、英名はcoral bush、学名はArdisia crenataでした。 南天、千両、万両。いずれも、庭の隅っこに植わっていて存在を忘れがちですが、正月には生け花やおせちの盛り付けに活躍してくれる大切な庭木です。 学名:Ardisia crenata和名:マンリョウ(万両) 英名:Coral bush科名 :サクラソウ科属名: ヤブコウジ属原産地:日本・東南アジア 【万両の育て方】 千両と同様に、関東以南では地植えで問題ありませんが、もともと林の中などに自生しているので、明るい半日陰で、あまり風の当たらない場所で育てます。寒冷地では鉢植えで冬は寒さをしのげる屋内が無難です。また、開花時期に雨に当たると実がつきにくいともいわれていますので、鉢植えの場合は花のある時期は雨が当たらないようにするとよいでしょう。 地植えの場合は、根付いてしまえば施肥や水やりは不要ですが、実つきをよくしたい場合は発酵油粕などのリン酸を含む寒肥を与えます。鉢植えの場合も施肥は同様です。剪定は、必要ありません。背が高くなりバランスが悪くなったら、切り戻しますが、その場合、3年ぐらいは実がつきません。挿し木と種子で増やせます。種子を採取して実生にする場合は、熟した実の果肉を取り除き、よく洗い、種子を乾燥させないようにして、赤玉土など清潔な土に播きます。土を乾燥させないように管理すると、春には発芽します。 実のなる庭木7クリスマスホーリー nnattalli/Shutterstock.com ギザギザな葉が特徴で、クリスマス飾りでもお馴染みのクリスマスホーリー。日本ではあまり大きな木は見かけませんが、本来は樹高7mほどに達する常緑高木です。日本の節分に使用するヒイラギに似ていますが、ヒイラギはモクセイ科で、クリスマスホーリー(西洋ヒイラギ)はモチノキ科なので、植物学的には異なります。 Nahhana/Shutterstock.com 学名:Ilex aquifolium和名:クリスマスホーリー、セイヨウヒイラギ(西洋柊)、イングリッシュ・ホーリー英名:European holly、English holly科名 :モチノキ科属名: モチノキ属原産地:ヨーロッパ、北アメリカ、西アジア、アフリカ 【クリスマスホーリーの育て方】 我が家では鉢植えで過去に育てていましたが、夏の西日と乾燥に弱いようで枯らした経験があります。赤い実をつけさせるには、十分な太陽と施肥、水やりなどの管理が必要です。鉢植えの場合、夏の間は直射日光が当たる場所は避け、半日陰に移動するとよいでしょう。 実のなる庭木8オリーブ Andrii Oleksiienko/Shutterstock.com シルバーリーフと実の色とのコンビネーションがおしゃれな雰囲気で、洋風住宅の庭木や、シンボルツリーとして根強い人気があります。商業施設などで樹齢100年超えの風格があるオリーブが植えられているケースも増えました。オリーブの実の色も時期によって異なりますが、これは品種の違いではなく、成長段階によるものです。花後に小さなグリーンの実がつき、粒がだんだん大きくなり、次第に黒へと変化します。 Studiovd/Shutterstock.com 学名:Olea europaea和名:オリーブ科名:モクセイ科属名: オリーブ属原産地:西アジア 【オリーブの育て方】 結実させるには、受粉のために異なる品種を2本以上一緒に育てる必要があります。日照を好むので、日当たり良好な場所を選びます。鉢土の表面が乾いたら、鉢底の穴から少し流れ出るくらいたっぷり水を与えます。庭植えの場合は、水やりはほとんど必要ありません。施肥のタイミングは2月と10月です。 実のなる庭木9ピラカンサ ピラカンサの盆栽仕立て。clayton harrison/Shutterstock.com 明治時代に日本に入ってきたので、比較的馴染みのある庭木で、住宅街でも大きくなった株をよく見かけます。あまり手をかけなくても、毎年、たくさんの実をつけてくれるのが魅力です。 我が家では、クリスマスをイメージしたこんな寄せ植えを作ったことがあります。ピラカンサの株元にガーデンシクラメンを植えて、12月から3月くらいまでこの姿を楽しめました。 学名:Pyracantha和名:トキワサンザシ、タチバナモドキ、ピラカンサス科名:バラ科属名:トキワサンザシ属原産地:南ヨーロッパ、西アジア 【ピラカンサの育て方】 丈夫な植物で、日当たりと水はけがよい場所であれば、土質を選びません。地植えの場合は、施肥も不要です。鉢植えは寒肥として緩効性化成肥料を与えます。水やりは表土が乾いたらたっぷりと与えます。地植えの場合、成長力が旺盛で、棘もあるので、一度伸ばしてしまうと厄介です。毎年3月頃に剪定しましょう。ただ、5~6月に開花し、それが実になるので、剪定で花芽を落としてしまわないよう気をつけましょう。剪定のときは、徒長枝を中心に行い、ある程度、花芽は残るようにしましょう。 実のなる庭木10マユミ Kristine Rad/Shutterstock.com マユミが属するニシキギ科の“ニシキギ”の名前は、錦のような紅葉の美しさからつけられましたが、その仲間のマユミも、秋になるときれいに紅葉する落葉樹です。そしてなんといってもマユミの最大の魅力は、赤とオレンジの四角い実です。木にぶら下がるようについた実が熟すと、中から紅オレンジ色のタネが現れ、落葉後も残ります。 美しく紅葉するマユミ。Traveller70/Shutterstock.com 学名:Euonymus sieboldianus和名:マユミ英名:Spindle tree科名:ニシキギ科属名:ニシキギ属原産地:日本 【マユミの育て方】 マユミは日本各地の山地に自生する植物なので、栽培は容易です。暑さ、寒さに強く、病害虫の心配もほとんどなく、日向に植えれば、毎年美しい紅葉と実を楽しむことができます。 木質は粘りがあり、古くはマユミの木で弓を作ったことから「真弓」と呼ばれるようになりました。ほかにも将棋の駒の材料としても利用されています。 半日陰でも育ちますが、美しく紅葉させるためには、日向で育てます。土質は選びませんが、乾燥する場所は避けましょう。
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ストーリー
花の名前が題名や歌詞に出てくる日本の歌17曲
曲に乗って登場する花々 「花は思い出があるから美しい」といわれますが、同じく歌にも人それぞれの思い出があることでしょう。そして多くの歌の中で取り上げられ、その歌詞に表現される花の姿は、「花の図鑑」で説明される無機質なものではなく、豊かな形容表現があったり、恋愛や人生の比喩があったりして楽しいものです。私自身、サラリーマン時代は音楽普及の仕事に携わり、今でも音楽はガーデニングと並ぶ趣味なので、今回、Jポップスを中心に、歌に登場した花を15種取り上げてみたいと思います。 ① 秋に花盛りのコスモス 百恵ちゃんが歌う歌詞の冒頭に合わせ、写真は我が家で咲かせた淡紅のコスモスと八重咲き品種です。 コスモスはメキシコが原産で、初心者にも育てやすい草花です。5月頃にタネを播いて育てます。過湿に弱いものの、日照・風通しのよい場所なら、どこでも育ちます。群生させると美しいです。切り花にも使えて、庭にあると重宝します。 「秋桜(コスモス)」(山口百恵)1977年 思い出の歌は、その人の青春時代のものが多いといいますが、多分、これを「思い出の曲」とする人々は60代の方ではないでしょうか? さだまさし作詞・作曲(上記曲へのリンクは、歌:さだまさし)。当時、山口百恵さんは18歳。「淡紅の秋桜」で始まる、あまりにも有名な歌です。 もう1曲のコスモスの歌といえば、 「コスモス街道」(狩人)1977年 旅する女の切なさを歌ったとか…。 ② トロピカルなプルメリア 原産地は熱帯アメリカで、最近はホームセンターなどでも初夏から鉢植えが出回っています。熱帯植物なので、冬は陽当たりのよい屋内で管理します。20℃以上に保つと落葉せず、夏から咲きますが、室温が低いと落葉し、枝葉が充実しないと開花しません。開花が遅れて9~10月頃になり、タイミングが外れるとつぼみの状態で寒さを迎え、開花せずに終わってしまうので、冬の管理が開花のポイントのようです。 「プルメリア 〜花唄〜」(Aqua Timez)2009年 「この夢がこの夢がいつか叶う時には…」で始まり、歌詞の中にはプルメリアという花が出てこないのです。 ③ 揺れるマリーゴールド メキシコ・中南米原産でキク科の植物。暑さに強く、花期が7〜10月と長いので夏花壇によく使用されている一年草です。丈夫で、タネからでも簡単に育てられます。 花色はオレンジ系が中心ですが、近年はクリーム色なども流通しています。寄せ植えにも使いやすい花材です。 「マリーゴールド」(あいみょん) 2018年 歌詞の途中に、「揺れたマリーゴールドに似ている」という一節があります。はて? 何がマリーゴールドに似ているのか? 私が所属するバンドで、この曲を演奏したことがありますが、リズムが今風で、中高年のオヤジには難しい曲。 ④ この歌で有名になったデイゴ topimages/Shutterstock.com マメ科の落葉高木で、インド、マレー半島が原産。日本では沖縄で育ちます。沖縄を代表する花。デイゴは耐寒性がありませんが、近似種のアメリカデイゴは東京近辺でも越冬し、神奈川・湘南平塚にはデイゴの並木道があります。 makieni/Shutterstock.com 「島唄」(THE BOOM)1993年 ⑤ 神聖なハス インド原産のハス科多年性水生植物で、根は根菜の蓮ですね。横浜・三渓園の蓮が有名です。実の様子が面白いので、写真を以下にアップしておきます。 この神聖な花が、まさかの大ヒットのアニメ「鬼滅の刃」のオープニングテーマになるとは! ViratSittichai/Shutterstock.com 「紅蓮華(ぐれんげ)」(LiSA)2019年 「強くなれる理由を知った……」で始まる曲で、一般的な人が持つ蓮の花のイメージとは異なるように感じますが。時代の変化でしょうか? ⑥ 燃えるダリア ダリアは古くから親しまれてきた植物ですが、メキシコ原産で、やや日本の夏の蒸し暑さが苦手です。また、冬には球根を掘り上げて寒さを避けなければならず、素晴らしい花なのですが、栽培がやや難しくブームにはなりません。ですが、豪華で種類も多く、切り花としても根強い人気があります。オーストラリアで作出された‘エモリ―ポール’という世界一の巨大輪もあります(写真下)。 「DAHLIA」(X JAPAN)1996年 「果てしない夜空に……」、ダリアとの関連があまりよく分からないのですが、なかなかに激しい曲です。 ⑦ 実家のサボテンの花 fon.tepsoda/Shutterstock.com サボテンの花は、とても鮮やかな色が多く、長年育てていると、突然に開花することがあります。下の写真は、20年くらい経って開花した我が家のサボテンですが、その後、枯れてしまいました。 「サボテンの花」(チューリップ)1975年 チューリップなのにサボテンの花? 作詞・作曲は財津和夫さんで、福岡の実家に帰ったときに母親が育てていたサボテンの花に感動したのが本曲の原点とか。さて、財津さんは、サボテンの花をどのように表現しているでしょうか? ⑧ まさかのハナミズキ 庭木や街路樹に人気のハナミズキです。一部にアメリカハナミズキと呼ぶ方がいますが、これはハナミズキが北アメリカ原産で、かつてアメリカヤマボウシと呼ばれたことがあるため、混乱が生じたようです。アメリカハナミズキという正式な花木はありません。 花びらに見えるのは4枚の総苞片で、花は中央に小さく密集して咲いています。 「ハナミズキ」 (一青窈)2004年 この歌は、2001年にアメリカ同時多発テロの発生時、ニューヨークの友人の無事を祈って書いたそうです。テロで急に命を奪われた人に捧げる鎮魂歌です。誕生の由来を知ってから聞くと、また違った印象を受けるものですね。 ⑨ 春色のスイートピー 我が家で育てたスイートピーは、微かに紫がかる淡い花色でした。 イタリアのシチリー島が原産地のマメ科植物です。つる性植物なので、タネを播いて支柱に絡めながら育てるのが一般的です。「スイートピー」は、その名前通りに甘い香りのするかわいい花です。ピンクや水色、赤、紫、白など花色が豊富です。 Anna Derewacz-Czuprynska/Shutterstock.com 「赤いスイートピー」(松田聖子)1982年 聖子ちゃんの代表作の一つですね。「心に春が来た日は赤いスイートピー」だそうです。 ⑩ たくましく咲くスミレ Olexandr Panchenko/Shutterstock.com ガーデニングでは、スミレの仲間はパンジーやビオラが主流で、スミレはベテランガーデナーに人気があります。花言葉は「謙虚」「誠実」「小さな幸せ」。道端に咲くスミレは、素朴で奥ゆかしいですね。 flaviano fabrizi/Shutterstock.com 「スミレ」(ゆず)2003年 歌詞に「踏まれては立ち上がる」とあり、野生の、それもアスファルトの道路脇に生えているスミレを連想します。ちなみに歌詞には「スミレ」が一度も出てこない、青春の応援歌ですね。 ⑪ 苦いレモン レモンは5月頃に花が咲き、11月頃から収穫できます。我が家のレモンは樹齢30年近くになりますが、毎年、食べきれないほどのレモンが収穫できて、とても重宝しています。 育て方や活用法などはこちらもご参照ください。 『感動の果樹栽培「レモンの木」育て方と楽しみ方』 「Lemon」(米津玄師) 2018年 「胸に残り離れない 苦いレモンの匂い」という歌詞があり、甘酸っぱいレモンの思い出とは異なるようです。 ⑫ 麦 YRABOTA/Shutterstock.com 草花の範疇からは外れる番外編ですが、私が中島みゆきさんのファンなのでご容赦ください。麦は実になる前に、穂の表面に白い小さな花が付きます。写真にも、それらしきものが見えるでしょうか。 Vitalii Nesterchuk/Shutterstock.com 「麦の唄」(中島みゆき) 2014年 NHK連続テレビ小説「マッサン」の主題歌です。中島みゆきさんは、文化庁の国語審議会委員を務めたこともあり、彼女の日本語力の素晴らしさには定評があります。さて、麦をどのように歌っているでしょうか? ⑬ 日本を代表する花:桜 日本に桜は約600種あるといわれており、ソメイヨシノが桜の代名詞になっていますが、最近は早咲きの河津桜や、江戸彼岸桜も人気が出ているようです。 「さくら」(森山直太朗) 2003年 日本を代表する桜は、古くからたくさん歌われてきましたが、今よくメディアに出るのは森山直太朗さんの曲でしょうか? お母様の森山良子さんも「この広い野原いっぱい咲く花を~♪」と、花の歌を歌っていましたね。 もう一曲 「SAKURA」(いきものがかり) 2006年 サクラと少女の気持ちが、よく表現されている曲です。 ⑭ 薫るシクラメン Lois GoBe/Shutterstock.com シクラメンの原産地は、地中海沿岸のギリシャからチュニジアにかけて。一昔前は高級鉢花として扱われていましたが、耐寒性のあるガーデンシクラメンの普及もあり、入手しやすくなりました。シクラメンにはもともと香りはありませんでしたが、近年、芳香性のシクラメンも誕生し「シクラメンのかほり」が現実のモノに。さらに品種改良が進んで、紫系の品種やフリンジ咲きの品種も誕生している冬の風物詩です。 LUMIKK555/Shutterstock.com 「シクラメンのかほり」(布施明) 1975年 小椋佳さんの名曲です。当時、香りのするシクラメンはなく、「かおり」ではなく「かほり」にしたのは、じつは小椋佳氏の奥様の名前が桂穂里さんで、シクラメンを奥様になぞらえて歌にしたとか。え~っ? ですね。 ⑮ 今でも人気のバラとパンジー Serhii Brovko/Shutterstock.com バラとパンジーは、今でもガーデニングの双璧をなす人気の花で、ガーデニングをしていない方でも花姿をイメージできる世界的人気の植物ですね。50年前から今のブームを予測していた? Tanya Vasilek/Shutterstock.com 「あなた」(小坂明子) 1973年 小坂明子さんが高校生の16歳のときに作詞・作曲。第6回ヤマハポピューラーソングフェスティバル及び第4回世界歌謡祭でグランプリを獲得し、200万枚のレコードを売り上げた作品です。50年経った今でも通用する夢のマイホームを歌っています。 秋の夜長に花を聴く finwal89/Shutterstock.com いかがでしたか? 花をテーマに思い出す17曲をピックアップしてみました。若干、自分の好みが入っておりますが、お許しください。この原稿を書きながら、できるだけ自分で撮った写真を探し、YouTubeで曲を選んでいると、つい思い出にはまってしまい、まるで“部屋の片づけをして昔の写真を発見! 作業がストップしてしまう"のと同じ状態になってしまいました。書き終えて、改めて新しい世界が広がり、花と音楽の関係って、面白いな! と新鮮な気持ちです。花と音楽、ともに毎日を元気に生きてゆくのになくてはならないものですね。
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樹木
【四季を楽しむ花木】見直したい伝統の庭木「サルスベリ」
サルスベリとは Matthewshutter/Shutterstock.com 夏の花木といえば、代表格はサルスベリ。近年はさまざまな品種が出回っていて、洋風ガーデンでも人気が復活していることをご存じでしょうか。花が長期間(100日間も!)咲くので百日紅と書き、サルスベリ、またはヒャクジツコウと読ませます。サルスベリという名前は、木登りのうまい猿でも滑るほど幹がスベスベしているという意味でつけられたといわれています。 我が家のサルスベリには巣箱を設置しているので、シジュウカラが毎年、巣作りをして雛が飛び立つ姿が見られます。 花の色は主に赤、ピンク、紫、白の4色ですが、近年、交配品種の登場によって他の色も誕生しているので、今後もますます楽しみな花木です。 koro / PIXTA 赤花の代表的な品種である、‘カントリーレッド’。 昔ながらの代表的なピンクの花。 drsuntzu/Shutterstock.com そして、最近人気急上昇の紫系の花。 Flyingbird YF /Shutterstock.com 純白の花は、夏に涼しげです。 海外でも人気のサルスベリ サルスベリが咲き誇るサマーパティオ。Olesia Bilkei/Shutterstock.com さて、このサルスベリ、海外でも近年人気ですが、英名はCrape myrtleで、Monkey slipperとはいわないようです。そう、先進国で猿がいるのは日本だけで、ヨーロッパや北アメリカにはいないのです。Crapeは、夏のリラックスウェアでもあるステテコにもよく使われている素材のクレープのことで、つまりシワシワという意味。花弁がシワシワのmyrtle=ギンバイカといったところでしょうか。 dtateiwa/Shutterstock.com 花期が長く、なかなか優れた花木だと思うのですが、サルスベリ(百日紅)という日本での呼び名がイケテナイのか、今ひとつお洒落感に欠ける印象があるかもしれません。もともとをたどると中国の花木です。海外では、カリフォルニアのディズニーランドやスペインのグラナダでも見たことがあります。「Crape myrtle」で検索すると、欧米ではなかなかに有望視されている花木と見てとれます。 Linda Jensen/Shutterstock.com 特に画像検索で「Crape myrtle」を見ると、我々が持つサルスベリのイメージが変わるかもしれません。植物をネット検索する場合、日本名だけでなく、英名や学名で検索すると、素敵で新鮮な画像に出会えたりします。 日本では平凡なヤツデやアオキ、そしてモミジが海外で人気なのと同じように、サルスベリも国内より海外での評価のほうが高いように見受けられます。 以前、カリフォルニアのディズニーランドでサルスベリを見かけたときは驚きました。 そして、こちらがスペインのグラナダ・アルハンブラ宮殿の庭園で見かけたサルスベリ。素敵な剪定です。まさかスペインでサルスベリに遭遇するとは、驚きでした。日本ではサルスベリというと、コブを作る剪定が多いですが、スペインではこんな素敵な剪定をするんですね。サルスベリの枝は混雑すると曲がるといわれていますが、その性質をうまく利用した素晴らしい剪定です。 サルスベリが咲くアルハンブラ宮殿。Sergii Figurnyi/Shutterstock.com 海外旅行で日本の伝統植物に出会うと、なんだか嬉しいですね。 サルスベリのプロフィール 学名:Lagerstroemia indica英名:Crape myrtle和名:サルスベリ、ヒャクジツコウ(百日紅)科名:ミソハギ科属名: サルスベリ属原産地:中国南部、世界の熱帯各地に分布 原産地が中国南部で世界中の熱帯地域に分布していることから察せられますが、常緑樹ですが耐寒性もあり、日本や温帯地域では落葉する性質です。春に出る新芽はやや遅く、熱帯花木の名残が感じられます。 2階から撮った我が家のサルスベリ。 我が家には30年近くになるサルスベリが3本ありますが、夏中咲いてくれて、丈夫な優等生です。夏は屋外の草花の手入れが大変ですが、サルスベリのような花木は手入れがほとんどいらず、楽な点もいいですね。植えて30年近く経ち、今ではすっかり大きくなって2階から花が楽しめます。 ユーカリの木を背景にしたサルスベリもおしゃれ。 樹齢30年の我が家のサルスベリ 30年前というと、私はまだオージープランツにも手を出しておらず、ガーデニング初心者でした(30年前はガーデニングという言葉すらなかったですね。「ガーデニング」は1997年の流行語大賞です!)。ちょうど庭づくりを始めた頃で、植木屋さんで勧められたのが、このサルスベリです。現在ある我が家のその他の庭木は自分で植えたのですが、このサルスベリだけは植木屋さんに植えてもらいました。 30年も経過すると周りの樹木も変化して風景が変わり、面白いものですね。上写真は、左からネグンドカエデ、サルスベリ、ユーカリですが、下写真は、右側手前にレモンの葉、右にジャカランダの葉が見えます。いずれも2階からの風景です。2階から楽しめるのもサルスベリの魅力。 すっかり大きくなって、お隣に飛び出しそうな枝は切って壺に活けています。ただし、サルスベリは花弁が散りやすいので、屋内に飾るのは避けたほうがよいでしょう。我が家では玄関の外に置いています。 花屋に売っていない、自宅で咲いた枝ものを飾ることができるのもガーデニングの醍醐味。 サルスベリの花 街路樹などのサルスベリは、遠くて花の細部がよく見えません。上写真は房咲きのサルスベリですが、 近寄って観察してみると、花の間につぼみがあります。 花弁は6枚、黄色く一見雄しべに見えるのは昆虫を引き付ける役の「餌雄しべ」といわれるもの。さらに実際に受粉効果のある長い雄しべが6本、そして雄しべに紛れて、雌しべが1本です。面白い花ですね。 サルスベリの四季の移り変わり サルスベリは花だけでなく紅葉もきれいです。秋の青空に映えるサスルベリも風情があります。上写真は9月20日撮影。7月に咲き始め、本当に100日近く咲き続けます。 さらに2カ月ほど経った11月20日頃には紅葉します。 そして写真下のように、12月には落葉し、実が残ります。この実も魅力的で、クリスマスリースなどにも使用できます。 冬の実のアップ。 弥七 /PIXTA そして、冬は幹の美しさが目立ちます。猿が滑るほどの滑らかさなので、光沢感もあり、ともすると寂しい冬の庭の景色の中で、ひときわ幹の美しさが目を引きます。 我が家の冬のサルスベリ。 サルスベリの栽培ポイント Feng Cheng /Shutterstock.com ご紹介してきたように、夏の花に限らず、一年中魅力のあるサルスベリですが、最近は、街路樹にも多く利用されています。大きく育つとサルスベリの並木道も素敵になるでしょうね。 神奈川県某所の街路樹。 では実際に、庭木として育てるとどうでしょう。私が30年間育ててきた経験では、地植えして大きくなった成木は2月に剪定をするくらいで、特に水やりも施肥も不要です。 鉢植えでも育てていますが、日当たりのよい場所に置き、表土が乾いたらたっぷり水やりを忘れずに。鉢植えの場合は、2月に寒肥を施します。 なお、詳しい育て方は、以下の記事もご参照ください。 ●サルスベリ(百日紅)に注目しているあなたへ! これを読んで栽培に挑戦しよう うどんこ病が発生したバラ。Bunina Darya /Shutterstock.com 病害虫で、一つ注意したいのは、バラやキュウリにも発生するうどんこ病です。 6月頃に発生することが多いので、風通しをよくして用心しましょう。もし発生したら、早めに殺菌剤を散布するとよいでしょう。 Noel V. Baebler/Shutterstock.com サルスベリについて、知っているようで知らなかった発見があったでしょうか。一年中楽しめて、優雅で丈夫で長もち。ぜひ、お気に入りの花色を見つけて、あなたのお庭の仲間に入れてあげてください。きっと、これから長年にわたって、素敵でおしゃれな庭風景を演出してくれますよ。