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春の景色は秋に仕込む! 9月中旬の今、春の庭景色に欠かせない球根類は今が最も品種を選べるタイミングです。ただし、植えるのはもう少し先が鉄則。この記事では人気のチューリップやアネモネ、フリチラリア、ムスカリ、スイセン、原種チューリップ、チオノドクサの買い方・植えどき・植え方を一気にガイド。鳥取県米子のガーデニスト、面谷ひとみさんの植栽実例とスケジュール付きで、失敗しない“春の花壇”づくりを後押しします。

春球根をいま買うべき理由(9月〜)

フリチラリア
流通量が少なめのフリチラリア・ウバブルピス。黄色い縁取りと茶紫の壺形が特徴。探せば買えるが、早い者勝ち。

春咲き球根は、ネット販売も店頭も9月〜10月初旬が品種のバリエーションと在庫が充実しています。特に人気色(ワインカラーやブルー系)や人気形状(フリル咲きなど)、流通量が限られる原種などの珍しい品種は早い者勝ちです。

チューリップの小道
同一品種で揃えて列植したい場合などは、早めのまとめ買いが必須。この小道で50〜60球植えています。

また、群植で春にダイナミックな景色を演出したい場合も、球根数=景色になるので、早めにお目当ての球根をまとめ買いしておきましょう。お得なまとめ買い割り引きなどのサービスを受けられる場合もあります。

密閉厳禁! 球根は呼吸しています

球根の保管
通気性のよい状態で植え時まで保管を。

球根の「買い時」と「植え時」には、ズレがあることが多いです。植栽適期(後述)まで劣化させないよう、購入後の球根は通気性のよい紙やネット、麻などの袋に入れて、風通しのよい冷暗所で保管しましょう。球根は生きて呼吸しています。ビニール袋などに入れておくと、結露してカビが生えたり腐敗してしまうので、密閉や高温、湿気は厳禁です。

早植えNG!「冷えた土+湿度」で発根スイッチON!

球根の生育サイクルは「休眠→発根→冬越し→開花」という流れです。店頭の球根は「休眠」状態で、地温10〜15℃の土に入れ、水分がプラスされると「発根スイッチ」が入ります。地温が高すぎると病原菌が活発化して球根が腐敗したり、徒長の原因となります。逆に遅すぎると根張り不足になることが。

球根植え付け
面谷さんの庭がある鳥取県米子市では12月初旬、球根の植え時を迎える。

植え時適期は「最低気温が15℃が1週間以上続いたら」。その条件下では地温も安定して10〜15℃になると考えてよいでしょう。チューリップ栽培のプロ「富山県花卉球根農業共同組合」は、紅葉に見頃を植え時の目安にすることを推奨しています。気温で考えるより、周囲の紅葉を合図にすると、分かりやすいですね。高冷地は季節が前倒し、沿岸の暖地はさらに遅らせてOKです。

【球根成功ポイント】今は買う→すぐ植えない→紅葉の見頃に植える

失敗しない植え付け5カ条

1. 排水最優先:球根は呼吸していると前述したとおり、球根は空気を必要とする器官です。水に浸かった状態では、呼吸ができずに一気に弱るので、排水性のよい環境に植えましょう。軽く盛り土をしたり、砂利やパーライトを混ぜることでも排水性をよくすることができます。鉢の場合は、底に軽石+水はけのよい培養土で植えましょう。

2. 深さ=球根高さの2〜3倍(アネモネは塊茎なので浅めでもOK)。

球根用の穴掘りツール
球根用の穴掘りを使うと、ピンポイントで穴があけられて便利。

3. 向き:尖ったほうを上(アネモネは平らな部分を下に)。

4. 肥料:球根は自前の栄養タンクを持っており、発根から芽出しまでは球根内部のデンプン&栄養でまかなえます。むしろ、発根時に肥料が多いと根が肥料焼けしたり、腐敗や葉だけ茂って花芽がつかないなどのデメリットが出やすくなります。元肥は控えめ、芽出し後に緩効性肥料少量 or 薄め液肥をあげるのがポイントです。

5. 植えっぱなし可否:ムスカリ/原種系チューリップ/スイセンは◎、大輪チューリップは翌年咲きづらい。

球根植え付けの早見表(目安)

種類深さ日照植えっぱなし
チューリップ6–10cm(球根の高さの2〜3倍)日向△(掘り上げ推奨)
原種系チューリップ6–8cm日向〜半日陰、やや乾き気味
アネモネ(塊茎)3–5cm(浅め)明るい日陰〜日向
フリチラリア(小型種)8–10cm日向、水はけ命
ムスカリ5–7cm日向〜半日陰
スイセン8–12cm日向〜半日陰
チオノドクサ3–5cm日向〜半日陰
チューリップの庭

7種ミニガイド(買い方・植え方・合わせ方)

1. チューリップ(定番の主役)

チューリップ
  • 買い方:遅咲き、早咲きがあるので、一斉開花で豪華演出するか、リレー咲きで長く咲かせるか、開花時期を意識して。群植設計なら同品種で数を確保しましょう。
  • 植え方:深さ6〜10cm。球根の向きに注意。
  • 合わせ方:株元に同系色のパンジー・ビオラを合わせると上品。

2. 原種系チューリップ(自然風の名脇役)

原種チューリップ
  • 買い方:‘リトルビューティー(赤)’や‘タルダ(黄色)’などいくつかを組み合わせて群植すると愛らしい。
  • 植え方:深さ6〜8cm。水はけを好むので自然石などで囲んで盛り土するとよい。
  • 合わせ方:草丈の揃う極小輪ビオラと相性よし。
原種系チューリップ

3. アネモネ・フルゲンス(鮮やかな前景に)

アネモネ・フルゲンス
  • 買い方:山野草店などで苗が入手可能。
  • 植え方:深さ3〜5cmの浅植え、平らな面を下に。塊茎は一晩吸水で発芽安定。
  • 合わせ方:シレネ‘スターリードリーム’などの小花と好相性。

4. フリチラリア(繊細模様で上級感)

アネモネとフリチラリア
  • 買い方:小型種(ウバブルピス、メレアグリスなど)からが挑戦しやすい。
  • 植え方:深さ8〜10cm。砂利や軽石を混ぜ、水はけを徹底する。
  • 合わせ方:白花系+ブルー系で“静かに映える”小景づくり。

5. ムスカリ(超丈夫! 群植で映え)

ムスカリ
  • 買い方:白や淡青を混ぜると上品。大量まとめ買いがおすすめ。
  • 植え方:深さ5〜7cm。1穴に10〜15球まとめて植栽。帯状植えや点々群植で。
  • 合わせ方:どんな花とも似合う。

6. スイセン(先陣の光を呼ぶ)

房咲きスイセン
草丈約30cmの八重咲きの房咲きスイセン。
  • 買い方:大輪〜小輪、香りの有無で決める。
  • 植え方:深さ8〜12cm。植えっぱなしOK。
  • 合わせ方:ムスカリや原種系チューリップなどで段差を。
小型原種スイセン・バルボコディウム
草丈15cm程度の小型原種スイセン・バルボコディウム。

7. チオノドクサ(極早春を知らせる星形花)

チオノドクサ
  • 買い方:他の原種系小球根とともに購入するのがおすすめ。
  • 植え方:深さ3〜5cmの浅植え。小道の縁・樹木下で小群植に。
  • 合わせ方:クリスマスローズやムスカリ、クロッカスなどと開花タイミングが重なりやすい。

写真で学ぶ「配色と配置」実例

鳥取県米子市でクリニックの庭を丹生する面谷ひとみさんとガーデナーの安酸友昭さんの植栽例から、配色と配置をひもといていきましょう。

庭に青いビートを刻むムスカリの点状群植

ムスカリの群植

配置の役割】
青いムスカリを“点々の小さな塊”で複数配置。視線を「手前→奥」へ誘導し、庭に奥行きと動きが生まれています。

【小さな塊の大きさ】
1塊あたり7〜15球程度(直径25〜35cm目安)。“点”に見える最小限のまとまりなので、密度がスカスカにならず青が際立つ。

間隔】
塊と塊は60〜120cmほど離して、等間隔すぎないランダム配置で自然なリズム感を。

色の効かせ方】
青は春庭の焦点色。黄のスイセンやピンクのチューリップ、白小花(デージーなど)の中でコントラストの芯になり、全体の色を引き締めます。

高さバランス】
ムスカリ(低〜中景)の“点”を、中〜高のチューリップや宿根草が囲う三層構成。低い青点→中高の花へ段差がつき、雑然としない。

維持管理】
花後は葉が黄変するまで切らない。毎年増やしたい場合は、塊の外周に+3〜5球ずつ足して“広がる点”に。

2色咲きチューリップの2段レイヤー花壇

チューリップの花壇

配置の役割】
濃いワインカラー×白のチューリップ25〜30球を、花壇縁に沿って帯状に配置しつつ、前後にずらしながらゆるくランダムに植栽し、リズム感を演出。

【前後2段のレイヤー】
花壇は高さ30cmほどの高低段差の前後2段のレイヤー構成で立体感を。

【間を埋める一年草】
ランダムに配置されたチューリップの間をパンジー・ビオラで埋めて、花姿のコントラストを強調しながら、土が見えないよう緑の密度感をアップ。

【色のまとめ方】
ワイン×白+渋めアプリコット。強い色のチューリップの間を、淡色ビオラで埋め、色数を抑えて雑然とさせない工夫。

【次シーズンのバラとの共存】
次シーズンを彩るバラの株元の空きに球根を差し込み、春だけ立ち上がる主役に。初夏以降はバラが場所を引き継ぎ、庭の見どころをバトンダッチ&ロングシーズン化に成功。

真似しやすい実践レシピ(m²あたりの目安)

球根の庭
  • あたりの目安/チューリップ25〜35球、ムスカリ40〜60球。寄せ植えや帯植えは“塊で置く”と絵になります。
  • 株元は一年草:ビオラ(同系色or白~渋色・淡色)、アリッサムなど。
  • アクセント色:ブルー系(早咲きのデルフィニウム‘チアブルー’、ネモフィラなど)を株間に配植。
  • 背景:宿根草や低木の株元を緑の壁として活用。

球根ガーデニングスケジュール

球根

9〜10月:買い時…今が最も選べるタイミング。色・テーマを決め、必要数を確保。

球根の植え付け

10〜11月:植え時…地温が下がってから、周囲の紅葉を目安に。植え付け直後のみたっぷり灌水。

2〜3月:仕上げ…徒長防止に日当たりを確保、薄め液肥を施肥。

球根ガーデニングQ&A

Q. 掘り上げは必要?

A. 大輪チューリップは葉が黄色になるまでたっぷり栄養を補給させてから、掘り上げて冷暗所で保管すると、来年も咲かせられます。植えっぱなしでも咲くことはありますが、前年より花が小さくなったり、同じ色で咲かないことがあります。ムスカリや原種系チューリップ、またスイセンは植えっぱなしでOKです。

Q. 半日陰でも咲く?

A. 咲きはしますが、花数は日向より減る可能性があります。落葉樹の下は早春は日が差すため相性◎。

Q. 肥料は?

A. 元肥は控えめ、芽が上がってから薄めの追肥が安全。

今日からすべき球根ガーデニングのアクション

球根ガーデン
  1. 色テーマを決める(主役色+つなぎ色)。
  2. 必要数を逆算(m²:チューリップ25〜35球、ムスカリ40〜60球)。
  3. 今、球根を確保。紅葉を目安に植える。ビオラ等の同色苗を予約すると準備万端。

まとめ|この秋の球根ガーデニングの“正解手順”

  1. 今は買い時。人気色・サイズは早い者勝ち。保管は紙袋+風通しのよい冷暗所で。
  2. 植え時は焦らない:最低気温が15℃未満の日が5〜7日続いたら本格GO(鉢は3日でも可)。
  3. 排水最優先:盛り土・軽石・粗砂で“湿るけど溜まらない土”に。
  4. 元肥は控えめ(もしくは無し)。芽が動いてから薄めに追肥。
  5. 深さの基本:球根高さの2〜3倍/球根1個分。
  6. 一括作業でOK:スイセンやムスカリも、チューリップなどと同タイミングでまとめて植えて問題なし。
  7. 配置のコツ:
    チューリップ=帯×ランダムで流れを作る。
    ○ 小球根=点状群植で庭の“リズム”を刻む。

合言葉は——「今は買い、植えるのは“冷えてから”」。

木々の葉が色づき、夜がひんやりしてきたら、いよいよ仕込みの本番です。来春の景色は、この秋の数時間で決まります。さあ、あなたの“春の色”を仕込もう!

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