猛暑でも快適に! “夏の庭空間”をもっと楽しむヒント&日本とヨーロッパの庭園比較
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
暑さが続く日本の夏、外に出るのもひと苦労…そんな中でも、涼やかで心が安らぐ“庭時間”を楽しむ方法があります。この記事では、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが、日本と欧州の違いから見るガーデン文化をご紹介するとともに、サマーガーデンにおすすめの室内から楽しむ庭づくりのアイデアや、実際に活用中の猛暑に強いおすすめ植物をご案内。夏の庭をもっと楽しむヒントをお届けします。
目次
猛暑が続く日本

連日の暑さに休む間もないエアコンの稼働音が、まだまだ夏真っ盛りであることを実感させてくれます。8月に入ってから、エアコンやポータブル扇風機のお世話にならなかった日は1日たりともありません。この暑さでは、家のどこにいてもこうした冷房器具が必要不可欠です。
この時期になると、蒸し暑い夏の間はドイツで過ごせたらどんなに素敵だろうという考えが頭をよぎります。残念ながら、ヨーロッパへの旅行は数年前、特にコロナ禍以前と比べとても贅沢な存在になりました。
その一方で、日本はとても人気の高い旅行先で、世界中から多くの人が熱心にこの美しい国を訪れます。私の家にも、ドイツからの友人がすでに2回遊びに来ていますし、1人は家族全員を連れて来てくれました。1組は2カ月日本に滞在し、日本に住んでいる私もまだ耳にしたこともなかった場所を訪れる予定なのだとか。ちなみに、日本の庭園について訪日客と話をすると、多くの人が京都御所の美しい庭園や「日本三名園」の兼六園、後楽園、偕楽園を思い浮かべるそうです。
公共空間の緑に見る日本とヨーロッパの違い

先日、猛暑の中で東京を訪れ、娘と一緒に少し観光をしつつ活気あふれる街の賑わいを楽しんできました。この日の一番のお楽しみは美術館を訪れたことで、涼しく清潔な館内はとても気持ちがよく、無料の水と紙コップまで用意されていました。
もっとも印象的だったのは、エントランスです。長い竹の列と、濃い灰色の小石が敷き詰められた屋根付きの入り口。賑やかな高級ショッピング街の真ん中にありながら、木陰が多くとても涼しく感じました。たくさんの花が咲き乱れていなくても、涼やかなアイテムが配されたシンプルな緑があれば十分に美しいということに、改めて気づかされました。
美術館の入り口とミュージアムショップはガラスの壁面に囲まれ、館の裏手にある日本庭園の美しい景観を見ることができます。庭園には古い木々や小さな池、石や彫像などの歴史ある展示物、そして小さな建物が点在していました。

こうした東京の美術館の庭に対し、ドイツやヨーロッパ諸国の公共空間の庭や緑化空間は、全く異なります。博物館などの建造物は大抵非常に歴史あるものなので、壁一面のガラス窓があるようなことはなく、むしろ小さめの窓がほとんど。建物には外階段が付いていることが多く、上階からは前庭や裏庭を見下ろすことができます。
伝統的なガーデンは四方、少なくとも三方を建物に囲まれ、一辺には生け垣や歴史的な細工が施された金属のフェンスが設置されていることが多いです。広々とした芝生と、その周囲を彩る色鮮やかな一年草の植栽も定番。芝生は背の低いツゲで縁取られ、庭園全体にフォーマルな雰囲気を与えます。水と噴水もまた、この種の庭園では欠かせないものです。もっともすべてがこうしたつくりの庭という訳ではなく、ここでご紹介したのはほんの一例にすぎません。

時にこうしたミュージアムや古城の庭では、人があまり通らない片隅に蜂の巣があることもあります。日本の庭ではそんな光景を見たことはありませんし、想像するのも難しいですね! 植栽も全く異なり、ドイツのミュージアムや城の庭園には、花木、低木、多年草、一年草など、さまざまな植物が植えられています。
もう一つ大きな違いはベンチの数。日本では気軽に座れる場所があまり用意されておらず、先日訪れた美術館でも、美しく静かな屋外エリアのどこにも座る場所がありませんでした。ドイツやヨーロッパ諸国では、ガーデンには多くのベンチやガーデンチェアが設置され、訪問者が一息ついて美しく静かな景色を長く楽しめるようになっていますし、ほとんどの場所では飲食も許可されています。眺めのよいミュージアムカフェはありましたが、私はただ座ってセミや鳥の鳴き声、水音、木々の間を通り抜ける風の音を聞くほうが好きです。もっとも、夏の間は湿度が高く、気温も30~35℃を超えるので、空調が完備された、座って外の景色を楽しめる場所があるのは理にかなっています。

夏は涼しい屋内から庭を活用するのがおすすめ

このように、猛暑が続き屋外では過ごしにくい夏の間は、室内からも庭を楽しみたいもの。窓越しに眺める景色を最適化することは、限られた広さのスペースを最大限に活用するための夏の庭づくりの重要な仕事の1つです。ポイントとなるのは、庭やテラス、バルコニーなどの実際の広さではなく、どのように配置し、植物を植えるかです。
ポイント1 窓からの庭景色を意識する

我が家の場合は、幸いにもダイニングからは掃き出し窓を通して庭を眺めることができ、また1畳ほどの大きさのウッドデッキを通れば直接庭に行くこともできます。リビングの窓からは、木々の上部しか見えないため、庭を楽しむためにはある程度の高さがある植栽が必要です。キョウチクトウはそんな場所にぴったりで、夏は美しい木陰をもたらし、冬は剪定することでより多くの光を取り込むことができます。
ポイント2 自分がよく過ごす場所を把握する

庭空間を最適化するにあたり、家の中のどの場所で多くの時間を過ごしているのかを把握することも重要です。リビング、ダイニング、キッチン、あるいは寝室でという事情もあるかもしれません。
私自身のことを考えると、毎食の支度を合わせると少なくとも1日2時間はキッチンで過ごします。それから、午前中はリビング・ダイニングにある机で庭を眺めながら仕事をし、残りのほとんどの時間は、日々の家事で家の中や時々外を行き来しています。
時には郵便物を回収するためにしか家の外に出ない日もあり、いかに屋外で過ごす時間が短いかと思うと、私の場合はわざわざ目の届かない屋外に手の込んだ花飾りをすることもないことに気づかされます。
ポイント3 庭空間をどのようにしたいかを考える

アプローチガーデンはガーデニング愛を表現し、帰宅時に明るい気持ちになれる重要な庭の一部です。日中頻繁に家に出入りする活動的な人なら、そこに素敵な植物を飾ったプランターを置けば、より観賞することができますね。植物や花は、友達作りのきっかけ作りや素晴らしいコミュニケーションツールにもなります。
どんな空間を楽しみたいか、それを決めるのはあなた次第です。
夏は、エアコンの訊いた涼しい部屋で、じっくり考えて計画を立ててみませんか。
我が家の夏のガーデンの楽しみ方
夏のガーデンを活用するヒントとして、私が夏の庭で実際に楽しんでいることをご紹介します。
青ジソを「切り花」に

畑の手入れをしていると、植物をいろいろな形で活用する機会が得られます。今月は青ジソがすくすくと育ち、食べきれないほどに。そこで、枝を数本切り取って、キッチンの花瓶に飾ってみました。
キッチンの青ジソは新鮮で素敵なアクセントになりましたが、こんなサプライズも。数日間はいいコンディションを保ってくれたのですが、4日ほどした頃に花瓶の下に黒い粒が落ちていることに気づきました。なんとアオムシが孵化して、私の目の前に置かれた青ジソを食べ始めていたのです。幸い早めにこの事態に気づけたので、すぐに問題の葉を処分できました。青ジソの葉はキッチンにあるととても便利で、ドレッシングや私のお気に入りの「シソチーズ巻き」に毎日のように利用しています。
<シソチーズ巻き>
餃子の皮とチーズ、新鮮なシソの若葉を使ったお手軽レシピ。餃子の皮1枚の上にシソの葉を1枚のせ、チーズを掛け、餃子の皮を巻きます。餃子の皮は端を水で少し濡らし、縁を軽く引っ張るようにして閉じましょう。巻きあがると葉巻のような感じです。
フライパンに少量の油をひき、両面をこんがりと焼き色がつくまで焼きます。マヨネーズに少量の醤油を加えた醤油マヨネーズをつけていただきます。パーティーやフィンガーフードにもぴったりで、とても美味しいですよ。ちょっとした付け合わせとして、またはビールやサラダと一緒にハッピーアワーにもおすすめです。
料理に使った分も含め、素敵な青ジソの飾りは1週間ほど楽しむことができました。キッチンにシソがあれば、そのまま使えるのでとても便利です。
ドイツではまだシソはあまり知られていませんが、我が家を訪れたドイツの友人たちは皆、その味を楽しんでくれます。
ドイツの夏は日本に比べ気温、特に夜間の気温が低く、シソは温暖な気候を好みます。
我が家には赤ジソもあり、日陰の場所でもよく育っています。夏にいつも作るシソジュースは、友人や客人に大好評です。
猛暑に負けない植物

私の暮らす地域の夏は、暑く雨が少ない状態。その中で、レモングラス、レモンバーベナ、レモンマリーゴールド、タイム、ジニアなどが最も安定して生育し、乾燥にも強く、見栄えもよい植物の一例です。シソも生育がよいのですが、葉が縮れやすいのが難点で、ほとんど枯れたようになってしまいました。こうした状況は環境によっても変わりますし、そもそもこの夏の個人的な経験談にすぎませんが、参考になるかもしれません。また
この夏に収穫したものは、ニラ、モロヘイヤ、レモングラス、パプリカ、タイム、ゴーヤ、ワタなど。ブドウやキュウリは枯れてしまいましたが、キウイフルーツはまだ元気に育っています。
盛夏の庭におすすめ! アスクレピアス・ツベロサ

特に今月のおすすめ植物が、アスクレピアス・ツベロサ(ヤナギトウワタ)です。アスクレピアスは英語では「butterfly weed」と呼ばれ、アメリカ大陸などを原産とし、乾燥した岩だらけの土、草原、野原、道端などに自生しています。開花期は6~10月で、夏~秋に最盛期を迎えます。明るいオレンジ色の花はその場をパッと明るくしてくれ、また名前どおり蝶たちを呼び寄せる効果も。日当たりのよい環境を好み、花後には装飾性の高い莢をつけます。

屋外で過ごすのがためらわれる暑い夏は、冷房の効いた室内で庭の恵みを楽しみながら、これからやってくる涼しい季節に向けて計画を立てましょう。
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
- リンク
記事をシェアする
新着記事
-
ガーデン&ショップ

都立公園を新たな花の魅力で彩る「第3回 東京パークガーデンアワード」都立砧公園【ファイナル審査を迎え…
新しい発想を生かした花壇デザインを競うコンテストとして注目されている「東京パークガーデンアワード」。第3回コンテストは、都立砧公園(東京都世田谷区)を舞台に2024年12月の作庭後、さまざまな植物が日々成長…
-
宿根草・多年草

毎年咲かせるラナンキュラス・ラックスの秋ケア完全ガイド|植え替え・株分け・夏越しの見…PR
春の訪れを告げる植物の中でも、近年ガーデンに欠かせない花としてファンの多い宿根草「ラナンキュラス・ラックス」。春早くから咲き始め、1株で何十輪という花が咲き、誰しもが虜になる魅力的な植物です。年々新し…
-
ガーデン&ショップ

【秋バラが本格的に開花!】煌めくクリスマスの雰囲気を先取り「横浜イングリッシュガーデ…PR
希少なアンティークローズから最新品種まで、国内外でも屈指のコレクション数を誇る「横浜イングリッシュガーデン」は、秋に色香を増すバラも続々開花が進んでいます。11月4日(火)からは、季節を先取りしてクリス…


























