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【酷暑対策】プロが育てる“夏に強い”植物! 手間いらず&キレイな最強コンビ

Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich
「夏の庭づくりはもう無理…」と諦めていませんか? 年々厳しさを増す日本の夏にも元気に育ち、彩りや香りを楽しませてくれる“夏に強い植物”を選べば、真夏もガーデンを維持できます。この記事では、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが実際に育てている「暑さに負けない植物」と「相性抜群のコンビネーション」をご紹介。ローメンテでも美しい庭づくりのヒントが満載です!
目次
「まるで温室⁉」な日本の夏
今年の梅雨はとても短く、私が暮らす湘南地域ではもうほとんど終わり。地域にもよりますが、ムシムシと暑い夏が本格的に始まっています。海の家も建ち始めるこの時期、熱気になんとか耐えられているのは海風のおかげ。盆地や風が吹かない地域に比べると、太平洋側の大きなメリットです。
この季節になると、毎年家族や友人たちと交わす会話のお題は、どうやって人間も植物もこの蒸し暑い時期を乗り切るかということ。

日本に来る前は、こんな気候は植物園の温室の中でしか経験したことがありませんでした。そうした場所では、入ったら周囲のトロピカルプランツやセミトロピカルプランツをざっと見渡し、その美しさを堪能したら、なるべく早く外へ出るようにしていました。当時は、夏の気候が温室そっくりの国で長年暮らすことになるとは想像もしていなかったのです。
スリランカやタイ、マレーシア、シンガポールを訪れたこともありますが、そこで感じた湿気と暑さは、ほんの一瞬の印象に過ぎませんでした。いま、関東で私を待ち受けていたのは、まさにそんな夏なのです。

豊かな植生を持つ高温多湿な地域には、蒸し暑さなどデメリットもありますが、さまざまなメリットもあります。
例えば、亜熱帯地域では木々やバルコニーの半日陰に育つランの花の美しさは格別です。カリフォルニアでは、植物園の入り口のアイキャッチャーとして、扉に下がるビカクシダがスタイリッシュでした。シンガポールのランはまるで色鮮やかなチョウのよう。ウィンドウボックスに入ったペラルゴニウムがバルコニーや窓辺に置かれ、家々を彩るドイツの夏とは対照的です。ドイツでは、夏はバラの季節。種類や地域にもよりますが、6月には咲き始め、8月まで咲き続きます。

夏の庭のおすすめコンビネーション例
素敵な植物の組み合わせを試し、また信頼できる植物を見つけていくのは、ガーデナーにとって終わりのない作業。選ぶ植物は常に変化していくもので、ある場所では元気に育つ植物でも、別の環境で植えると、うまく育たないこともあります。
今回は、私のお気に入りの頼れる植物と、今までに見つけたコンビネーション例をご紹介。夏の庭づくりの参考になれば嬉しいです。
また、今回の裏テーマは、暑い夏に嬉しい爽やかな「レモン」。香りや色など、なにかレモンと関連するコンビネーションをチョイスしたので、ぜひそちらにも注目を!
Case. 1
レモンタイム×レモンバーベナ×レモンマリーゴールド
レモンタイム

まずは、使い勝手のよいハーブの組み合わせから。タイムのような手入れが簡単なグラウンドカバーは、初めの一歩にぴったりです。
私が一番好きなタイムはレモンタイム(シトラスタイム)。その名のとおりレモンの香りを持つ、シソ科の常緑多年草です。高さ10cmほど、およそ30cmの範囲にマット状に広がります。日当たりがよく、水はけのよい環境を好みます。
開花期は晩春から夏にかけて。ラベンダーピンクの花は昆虫たちにも大人気で、多くのミツバチやチョウなどの昆虫を呼び寄せます。小さな葉はハーブとして使え、料理の飾りにはもちろん、サラダのドレッシング、ピザやパスタのトッピングにもおすすめです。
園芸店では、葉色や柑橘系の香りが異なるたくさんの品種が販売されています。斑入り品種もあり、品種によってそれぞれ成長の仕方が異なります。実際に試してみて、どれがあなたの庭に最適かを決めることが大切です。
レモンバーベナ

レモンタイムとは全く大きさが異なり、環境によっては150cm以上にも成長する大型ハーブです。光沢のある長い葉は少しざらざらしていて、傷つけると強いレモンの香りがします。晩春には小さな紫色の花が咲きます。こんもり茂らせるためには、春に剪定するのがおすすめです。

フランス語ではVERVEINE(ベルベーヌ)と呼ばれ、美しい名を持つ素晴らしい香りのハーブとして、化粧品や石鹸にも利用されています。この表記を見たことがある方も多いかもしれませんね。生食もでき、サラダ、デザート、リフレッシュドリンクとして楽しめるほか、リラックスタイムには、温かいハーブティーにしていただくのもおすすめですよ。
レモンマリーゴールド

レモンマリーゴールドは一年草のハーブで、高さ50cm以上にもなります。3cmほどの葉は、深く切れ込みが入るのが特徴。鮮やかな黄色の小さな花を茎の先にたくさん咲かせます。夏の間ずっと美しく、生き生きと咲いてくれ、切り戻しも簡単です。
虫よけ効果があるとされ、コンパニオンプランツとしてよく使われます。
Case. 2
サザンウッド×ツルバギア×モナルダ
やはり香りのあるハーブの組み合わせとして、サザンウッド、ツルバギア、モナルダもおすすめです。
サザンウッド(アルテミシア/オキナヨモギ)

ヨモギの仲間で、コーラに似た独特の香りを持つことから、コーラプラントやコーラハーブとも呼ばれています。葉に触れると、レモンやミカン、樟脳のような香りがします。灰緑色の葉は小さく、細く羽のように切れ込んで繊細な印象。他の植物とも組み合わせやすく、見た目も軽やかです。
ツルバギア

別名ワイルドガーリック。英語ではソサエティガーリックやピンクアガパンサスなど、さまざまな名前で呼ばれています。
アガパンサスのミニチュア版のような可愛らしい見た目で、高さは最大60cmまで成長します。多年草で、群生するように成長し、涼し気な細長い葉に、香りのよい紫色の花を咲かせ、夏を美しく彩ります。
モナルダ

モナルダは、シソ科に属する花が美しいミントの仲間。通称にはベルガモット、ビーバーム、ホースミントなどがあり、このうちベルガモットという名は、ベルガモットオレンジを思わせる葉の香りに由来しています。
品種によっても異なりますが、直立して高さ約90cmまで成長します。花はピンクまたは紫色が主流で、花房のように集まって咲きます。日当たりのよい場所から明るい日陰まで育ちます。ハチドリや受粉昆虫を引き寄せる蜜源植物であることも魅力です。
Case. 3
ガイラルディア×コレオプシス×ノコギリソウ
最後に、レモンのような鮮やかな黄色の花の組み合わせ例を。
ガイラルディア

ブランケットフラワーとも呼ばれるガイラルディアもまた、非常にローメンテナンスな植物です。耐塩性が高く、肥沃な土壌よりも痩せた土壌を好むため、痩せた砂地や海岸地帯に色鮮やかなガーデンをつくるのに最適。ゆっくりと広がるので、コントロールも難しくありません。
ガイラルディアは、夏の間ずっと咲き続ける優秀プランツ。中心部が盛り上がった花は大きく、花弁の鮮やかな黄色と花心の赤色のコントラストが目を引きます。よく目立つ中心部は、花粉を媒介する昆虫たちにとっても魅力的なことでしょう。乾燥には非常に強い反面、根腐れしやすいため、水はけのよい土壌が必要です。
コレオプシス

驚くほど丈夫で長く咲き続けるコレオプシスは、まるで降り注ぐ太陽光のようにガーデンをパッと明るくしてくれます。開花期は夏~秋ですが、時に違う季節にちらほらと咲くことも。花がら摘みにはちょっと手がかかりますが、その少しの手間により、長くたくさん咲き続けてくれます。元気な印象の花は多くのチョウを引き寄せ、バタフライガーデンのように庭のアクセントになる効果もありますよ。
コレオプシスは日当たりのよい場所から明るい日陰まで、場所を選ばずよく育ちます。水やりも気を遣う必要はありませんが、どちらかといえば砂質で水はけのよい土壌を好みます。定期的に水やりをすることで開花し続けますが、一度根付いてしまえば、乾燥にも非常に強いです。
ノコギリソウ(アキレア)

大きな花房で色の面を作るノコギリソウは、乾燥や暑さ、湿気に強く、とても丈夫。羽のように切れ込みが入る繊細な葉はカビに強く、また昆虫たちの好物でもあります。日当たりのよい場所に植え、株が広がるためのスペースを確保しましょう。一度根付いてしまえば、途切れることなく愛らしい花が楽しめます。
ノコギリソウは水はけがよく、弱酸性の土壌を好みます。庭に益虫を誘引するだけでなく、一部の害虫を寄せ付けない効果もあるとされています。最も一般的な色は黄色ですが、ほかにも美しい色合いがたくさんあり、単色で植えてもいいですし、さまざまな色を混ぜて植えるのも素敵ですね。
単体植えに向くおすすめ植物
ここまでは植物の組み合わせ例をご紹介しましたが、一部の生育旺盛な植物は、単体で植えたほうがよい場合もあります。
ブーゲンビリア

南米原産のブーゲンビリアは、世界中の熱帯および亜熱帯気候の多くのガーデンで目にする人気の花木。地中海の街路から鮮やかな壁の彩りにまで、育てやすく手入れも簡単なブーゲンビリアは、景観に豊かな彩りをもたらしています。伊豆半島などの温暖で日当たりのよい地域では、石垣や家の壁沿いでよく見られます。小さく仕立てたり、つる植物として扱ったり、使い方はさまざまですが、通常はつるを伸ばして仕立てるケースが多いです。
ブーゲンビリアの栽培には十分な日光が必要不可欠です。最大限に開花を楽しむには、日当たりのよい場所に、風が当たらないスペースを作って植えるとよいでしょう。鮮明な花色の美しさは息を呑むほど。周囲全体を明るく彩ります。
カンナ

カンナは、非常にトロピカルな雰囲気を持つ植物の一つですが、私が暮らす湘南地域を含め温暖な気候の地域であれば、日本でも戸外で冬越しできます。ただし寒冷地では、根茎を掘り出し、冬の間はガレージや温室で保管する必要があります。その際、気温が0℃を下回らないように注意しましょう。ショウガと似た性質ですが、実際に近縁種で、ショウガのように時間の経過とともに株が増え、見事な群生を作り出します。
カンナは「カンナリリー」と呼ばれることもありますが、球根植物ではなく、ユリの仲間でもありません。通常、1シーズンで最大180cmまで成長する大型の宿根草です。斑入りなどバリエーションに富んだバナナを思わせる大きく美しい葉に、暖色系のエキゾチックな花を咲かせるカンナは、トロピカルガーデンの素晴らしい主役となります。
ルリマツリ(プルンバゴ)

ドイツではブルージャスミンとも呼ばれる常緑低木。代表的なブルーの花のほか、白花品種もあります。1株でも美しく、生育旺盛で、日当たりのよい場所ではかなり大きく育ちます。
夏の快適アイデア! 使わなくなった傘でシェード作り

最後に、先日教えてもらった、庭の日陰作りに役立ち、SDGsにも貢献できるアイデアをお届けします。
それは、いらなくなった傘を利用したガーデンの日陰作り。古くなったり流行に外れて使わなくなった傘やパラソルは、庭の一角に日陰を用意するのに最適なのです。作業中やちょっとした休憩の時に、日陰があるととてもラクになります。

作り方は、傘の持ち手部分を取り外して小さなパイプに差し込むだけ。パイプが即席のスタンドになりますよ。庭のどのコーナーにも簡単に移動でき、パイプを支柱につなげば簡単に地面に差し込むことができます。不用品を再利用できるので、SDGsの視点からもGood!

この素敵なアイデアは、近所の菜園で見かけたもの。そこの庭主さんとは20年以上の知り合いですが、素晴らしいアイデアに感銘を受けていたところ、喜んで話をしてくれました。
彼は40年以上野菜を栽培している経験豊かなベテランで、キュウリやカボチャ、つる性のマメなど、夏野菜はすべてすくすくと育っています。おまけに、親切にもその場の野菜を収穫してお裾分けしていただきました。お返しに渡したのが、今回もご紹介したレモンタイム。どんな料理にも合いますが、特にドレッシングや、そうめんなど料理のトッピングにぴったり。こうした収穫物のやりとりも楽しいものですね。
Credit
話 / Elfriede Fuji-Zellner - ガーデナー -

エルフリーデ・フジ・ツェルナー/南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。
Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood
まとめ / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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