【プロに学ぶ!】冬に差がつくクリスマスローズの育て方|11〜12月の「古葉取り」と「施肥」で春の開花が決まる!
冬〜早春の庭の主役、クリスマスローズ。開花を左右するのは、11〜12月にどれだけしっかり「古葉取り」と「施肥」ができたかどうか。1月・2月はもう肥料を必要としない時期になり、3月にはいよいよ開花期を迎えます。つまり「今やらないと、開花のためにやる時がもうない」というくらい、この時期の作業が勝負どころ。この記事では、クリスマスローズ育種の第一人者・横山直樹さんに教わった冬の作業を軸に、11〜12月にやるべき「古葉取り」と「施肥」を中心に解説します。
目次
冬こそ生育期! クリスマスローズのリズムを知ろう

多くの植物は夏にぐんぐん育ち、冬はゆっくり休むリズムで成長しますが、クリスマスローズは少し逆。
- 夏の暑い時期は地上部を休ませる「夏休眠」期
- 10月頃に再び目覚めて生育をスタート
- 11〜12月は根や葉、花芽をしっかり充実させる生育のピーク
- 1〜2月は寒さの中でじわじわ花芽を太らせるが、新たな施肥は基本的にストップ
- 3月前後に、一気に花を咲かせる

このように、開花期の3月に使うエネルギーは、前の秋から冬にかけて蓄えたもの。とくに11〜12月は、生育がまだ十分に動いているため、肥料を吸収して株の力に変えやすいタイミングです。逆に、1〜2月になってからあわてて肥料をやっても、開花やや遅め。
だからこそ、「11〜12月にどれだけきちんと肥料を与えられたかで、春の開花が決まる」と言っても大げさではありません。古葉取りと施肥という“2大重要ポイント”を、ここでしっかり押さえておきましょう。
開花を左右する2大ポイント「古葉取り」「11〜12月の施肥」
① 古葉取りが大事な理由

春に茂った葉は、秋以降になると傷んだり、株の外側に倒れてきます。これを「古葉」と呼びます。株の中心では、翌春に咲く花芽がぐっと充実してくるため、それに押し出されるように葉柄が横に倒れてくるのです。
この古葉をそのままにしておくと、
- 株元に日が当たりにくく、地温が上がりにくい
- 風通しが悪くなり、灰色かび病などの原因にも
- 新しいつぼみや芽が、古い葉に埋もれて目立たない
といった不都合が生じます。
古葉取りをして株元をすっきりさせると、
- 株元まで日光が入り、地温が上がって花芽の成長を後押し
- 風通しがよくなり、病気の予防にもつながる
- つぼみが光を受けて、しっかり太りやすくなる
- カットする刺激でホルモンが働き、開花のスイッチが入る
という大きなメリットが。
まさに「古葉取り=開花スイッチをオン」にする大事な作業なのです。
② 11〜12月の施肥が大事な理由

一方、肥料はクリスマスローズにとって「花を咲かせるためのガソリン」のようなもの。とくに、八重咲きや多弁咲きは一重の花より開花にパワーを使います。ただし、肥料はいつ与えてもいいわけではありません。
- 11〜12月:根がよく動き、肥料を吸収して株の力に変えられる時期
- 1〜2月:寒さで生育が鈍り、肥料を与えても吸収効率が低い
- 3月:開花期。肥料ではなく、すでに蓄えた養分を使って咲く
だからこそ、肥料は11〜12月にきちんと与え、1〜2月は基本的にストップ。
「今(11〜12月)やらないと、開花のためにやる時がもうない」と覚えておくと、冬の作業の優先度がはっきりします。
11月の仕事|植え替え・株分け・追肥はこの月に終わらせる
11月の管理場所は「風通し+日当たり」が基本
11月は、クリスマスローズにとって本格的な生育期。
管理場所は、
- 風通しがよい
- よく日が当たる
この2つを満たす場所がベストです。日光をたっぷり浴びることで、株の中心部にある花芽が充実し、翌春の花数や花の大きさに直結します。
鉢植えは、ベランダや軒下でなるべく日当たりのよい位置に。夏に半日陰へ移していた鉢も、冬は“日向席”に戻してあげましょう。
鉢植えの施肥と管理

緩効性固形肥料+2週間に1回の液体肥料
鉢植えは肥料の管理がとても重要です。11月のポイントは、
- 鉢土の表面に緩効性固形肥料を置く
〇ゆっくり溶けて長く効く、ベースの肥料 - 2週間に1回のペースで液体肥料を与える
〇水やり代わりに、規定の倍率に薄めた液肥をたっぷり
この「固形+液肥」のダブル使いで、11〜12月のうちにしっかりと栄養を蓄えさせるイメージです。
植え替え・株分けは11月中に

鉢がパンパンになって根詰まりしている株や、何年も植え替えていない株は、11月中に植え替え・株分けを済ませておきます。
- 一回り大きな鉢に替える
- 大株は、健康な芽がついている部分ごとに株分けする
11月なら、作業後にまだ生育期が続くため、新しい根が動き出しやすく、春までにしっかり回復してくれます。植え替え&施肥をセットで行うと効果的です。
地植えの株には「有機質肥料」と「寒肥」を
地植えの株には、土づくりを兼ねて、11月にしっかりと養分を与えます。
- 腐葉土や油かすなどの有機質肥料を株の周囲にすき込む
- さらに「寒肥」として、堆肥を株元に敷き詰める
堆肥は5cmほどの厚みでマルチングするのがおすすめ。特に、前年春の花の勢いが弱かった場所は、しっかりマルチングして土壌改良も兼ねると、翌年の花付きがぐっとよくなります。
11月から始める「古葉取り」
11月には、いよいよ古葉取りもスタートします。
古葉取りを始めるサイン

- 春から残っている葉が傷んできた
- 株の中心部が盛り上がってきて、外側の葉柄が横に倒れてきた
こんな様子が見えたら、古葉取り開始のサインです。
古葉取りの基本

- 倒れてきた古い葉を中心に、5cmほど茎を残してカット
- 方法は2通り
- 手でもぎ取るように折り取る
- よく切れるハサミでカットする
ハサミを使う場合は、あらかじめ消毒してから。複数の株を続けて作業する時は、株ごとにハサミを消毒しながら進めると、ウイルス病などの感染予防にもなります。
12月の仕事|つぼみを太らせる古葉取り&日当たり管理
12月に入ると、気温の低下とともに生育スピードはやや鈍りますが、株の中心部では花芽が着々とふくらみ、早い株では小さなつぼみが顔をのぞかせてきます。

この時期も、基本は11月と同じく
- 風通しがよい
- よく日が当たる
場所で管理します。つぼみが見え始めた株は、特に日当たり優先の場所に置いてあげましょう。
12月も続けたい「古葉取り」
古葉取りは、11月に始めたらそこで終わりではなく、12月も引き続き行うのがポイントです。
古葉を取ることで、
- 株元に日が差し込み、地温が上がって花芽の動きを後押し
- 株の中心部の風通しが良くなり、灰色かび病などの病気予防に
- 切られる刺激でホルモンが働き、開花を促すスイッチがオンに
と、冬の株にとっていいことづくめ。
クリスマスローズでは、この古葉取りが開花を左右する最重要作業の1つといえます。
古葉取りの「やり方」と「残してよい葉」
古葉を切るときは、次の点を守りましょう。
- 株元から5cmほど茎を残して切る
あまり短く切ると、切り口から出る水滴が株元にたまり、カビや病気の原因になることがあります。 - すべての葉をきれいに取り去る必要はありません
まだ青々としていて美観上残したい葉は、そのまま残してOK。
有茎種やH.ニゲル系など、一部のタイプは古葉をすべて落とさず、傷んだ部分だけをカットするのが基本です。品種によって適した古葉取りが少しずつ違うので、慣れてきたら種類ごとの特徴も意識してみてください。
冬の水やりは「暖かい日中」に
冬は土の乾きがゆっくりになるため、過湿にならないよう注意が必要です。
- 土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出るまでたっぷり
- ただし、水やりの時間帯がとても大事
避けたいのは、
- 冷え込みの厳しい早朝
- 気温が下がる夕方〜夜
水やりは、気温が少し上がった暖かい日中(おおよそ午前10時〜午後2時)に行いましょう。こうすることで、与えた水が夜の冷え込みで凍って根を傷めるリスクを減らすことができます。
11〜12月は「古葉取り」と「施肥」で勝負!
ここまでのポイントを、もう一度ぎゅっとまとめると——
- クリスマスローズは冬が生育期
- 1〜2月はもう肥料をやらない時期。開花期の3月には、すでに蓄えた力で咲く
- だからこそ、11〜12月の施肥が「最後の追い込み」
- 同時に、古葉取りをすることで株元に光と風を入れ、開花スイッチをオンに
つまり、春の花つきは「11〜12月の古葉取り&施肥」でほぼ決まると言っても過言ではありません。
「今やらないと、開花のためにやる時がない」
この合言葉を思い出しながら、今シーズンのクリスマスローズの冬作業に取り組んでみてください。
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11〜12月の古葉取りと施肥でしっかり準備を整え、3月の開花シーズンには、ぜひページの中の花と、あなたの庭の花を見比べて楽しんでみてください。
Credit
写真&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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