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【プロが厳選】秋バラが「春より美しく」咲く! 病気に負けないおすすめ品種10選と栽培のコツ

【プロが厳選】秋バラが「春より美しく」咲く! 病気に負けないおすすめ品種10選と栽培のコツ

春よりも色が濃く、芳醇な香りをまとう「秋バラ」は、花がゆっくり開くため観賞期間が長く、一輪の魅力では春をもしのぎます。この美しい秋バラを実現するためには、猛暑や病害虫に負けない耐病性に優れた品種選びが不可欠です。本記事では、植物専門家である河合伸志さんが、秋までよく咲かせるための品種選びのコツと、厳選した注目品種10選を詳しく解説します。宿根草とコラボする秋バラが美しいと話題の「あやせローズガーデン」の最新写真とともにご紹介します。

春に咲く「一番花」と「秋バラ」の違いとは

「あやせローズガーデン」
10月下旬~11月下旬まで秋バラが見頃の神奈川県綾瀬市にある「あやせローズガーデン」。オーストラリアやニュージーランド産の植物を背景に紫やピンクのバラがコラボする「オセアニア・ガーデン」の秋。健全に生育したバラは、秋にもたくさんの花を咲かせる。

多くのバラは春(初夏)の一番花の開花後も、断続的に花を咲かせます。関東地方以西の平地では6月後半~7月にかけて二番花が咲き、その後も盛夏にかけて開花しますが、これらの花は春の花に比べるとおおよそ1/4程度のサイズにまで小さくなってしまいます(品種によって小さくなる度合いは異なります)。また、高温期の花は色も浅く、花弁数も減り、花もちが悪く、正直に述べて魅力度が劣ってしまうものです。

春と秋の‘ル・デパール・ド・アヤセ’
左は春、右は秋に開花した ‘ル・デパール・ド・アヤセ’。花色はさほど違いがないが、秋の花は花形がふっくらと抱えるような印象になる。

一方、秋になって気温が下がってくると、バラの魅力度は急上昇。この時期の花を一般に「秋バラ」と呼んでいますが、再び大きく色鮮やかな美しい花が咲くようになります。地域やバラ園の管理方針によって変わりますが、一般に秋バラの見頃は10~11月です。関東地方以西の平地では以前は10月に入ると美しい秋バラが楽しめましたが、昨今の地球温暖化により残暑が厳しくなったため、美しい秋バラが見頃を迎える期間は10月末~11月にかけてとなっています。

秋に美しく咲かせる栽培条件と秋バラの特徴

秋バラ‘チェリー・スプラッシュ’
ダリアやセロシアなどと咲く秋バラ。品種は‘チェリー・スプラッシュ’。

バラには、初夏のみに開花する「一季咲き性」と、春以降も不規則に繰り返し開花する「返り咲き性」や規則的に開花する「四季咲き性」があります。秋にも再び多くの花を咲かせるのは、主に「四季咲き性」の品種が中心です。気温が下がった時期に、整った株姿で、ある程度揃えて秋バラを咲かせるために、一般に夏剪定を実施します。剪定のタイミングは、その年の気候や株の生育状態、株が植えられている場所の微気象の違いから判断して決定するため、ある意味では高度なテクニックを要します。

あやせローズガーデンの秋バラ‘シャルール’
春の「トロピカル・ガーデン」で株全体を覆うほど花を咲かせる‘シャルール’。株元の紫の葉は、トラディスカンチア・パリダ‘パープル・ハート’(通称「紫御殿」で流通)。
‘シャルール’の秋バラ
‘シャルール’の秋バラ。春と花数がほとんど変わらない優れた品種。色は春よりも濃く鮮やかな分だけ、魅力度はアップしている。株元を彩るのはコリウスの小型品種‘ブロンド・ガール’。

一般に春に比べると、秋は花数が少なくなる品種もありますが、中には上写真の‘シャルール’のように、秋も春もさほど花数が変化しない品種もあります。ただし、このような品種であっても、適切な栽培管理をしないと、本来の能力を発揮できないことがあります。たとえ花数では春に負けたとしても、秋バラは一輪そのものの魅力で春に勝る部分があります。まずは、日毎に気温が下がっていくことで花がゆっくりと開くので、春よりも観賞期間が長くなります。

春と秋のバラ‘マイローズ’
左は春、右は秋に開花した ‘マイローズ’。花形はさほど違いがないが、秋の花は赤の色合いが深みを増す。

また、秋になると昼夜の気温差があるため、多くの品種は春の花よりも、色が濃く咲きます。そして、開花するまでに多くの時間を要する分、花弁が十分に伸長し、カップ咲きなどではより深いカップになって、全体がふっくらした印象になるのも秋バラの特徴です。

春秋どちらの花が好きかは、好みにもよりますが、多くの方は趣深い秋の花を好ましく思うようです。

秋バラを咲かせるための品種選びのポイント

あやせローズガーデン
エリゲロン・カルビンスキアヌスやガウラ‘イノセント・フェアリー’が株元を覆い、サルビア‘ビッグ・ブルー’、セロシア‘シルフィード’、ジニア‘ジャイアント・ライム’がピンク系のバラと調和するウォーター・ガーデンの入り口。

秋バラを咲かせるために最も重要なことは、耐病性の強い品種を選ぶこと。しばしば起こりうることですが、梅雨時期に病害虫により葉を落としてしまうと、バラは光合成ができなくなるため株の力がなくなり、秋バラが順調に咲かなくなってしまいます。

梅雨に限らず、秋雨、台風の襲来と生育期に雨が多く、病害(特に黒星病)が発生しやすい日本では、最高の秋バラを咲かせることは、じつはプロにとっても決して容易ではありません。見事な秋バラを咲かせているバラ園は、数多くのバラ園の中でもほんの一握りといっていいかもしれません。

あやせローズガーデン
2025年5月に一般公開がスタートした「あやせローズガーデン」(入場無料)。秋も赤いバラ‘フェアリー・クイーン’が鮮やかに開花してお客様を出迎える。

バラを育てたいと思う初心者には、なおさら秋バラを咲かせることは難しいようにも思えますが、近年は病害に悩まされにくい耐病性の強い品種が次々と登場しているので、以前に比べると秋バラを咲かせるハードルはだいぶ下がっています。秋バラを咲かせるためには、耐病性の強い品種を選ぶことが一番大切です。

あやせローズガーデンでよく咲くバラ10選

写真では印象が異なることがあるので、秋に咲いている姿を各地のバラ園で確認し、実際の花を見て選ぶのがおすすめです。以下からは、神奈川県綾瀬市の「あやせローズガーデン」の庭で、秋によく咲く注目の10品種をご紹介します。

Select 1
ディープ・ボルドー

ディープ・ボルドー

四季咲き性/木立性/中輪/2014年/作出者 コルデス

やや落ち着いたトーンのチェリー・レッドのロゼット咲きで、花色は気温によってやや濃淡が変化する。春の花は、時に花心がクウォーター・ロゼット咲きのように複数に割れる。花にはラズベリーのような中程度の心地よい香りがある。

‘ディープ・ボルドー’
秋のウェルカム・ガーデンに咲く‘ディープ・ボルドー’。秋の花は色が濃くなり、ややカップ状の花形になる。

数輪の房で開花し、花付きがよい。コルデス社の品種は春以降の返り咲き性が劣る品種が多いが、本品種は例外的に繰り返しよく開花し、秋の花数も多い。枝はやや細くすらりと直立に伸長し、中程度の株に生育する。耐病性が強く、樹勢も強く、育てやすい。

Select 2
ベン・ウェザースタッフ

ベン・ウェザースタッフ

四季咲き/木立性/中輪/2020年/作出者 木村卓功

春の花は、アプリコット色の花弁に切れ込みが入る。中輪としてはやや大きめのロゼット咲きの花。数輪の房で開花し、花付きはややよい。早咲きで、心地よいティー系の中程度の香りがある。春以降も開花するが、スムーズに咲かせるためにはやや多めに肥培したほうがよい。枝はしっかりと硬く、直立性のがっしりとした中程度の株に生育する。耐病性が強く、樹勢も強く、育てやすい。

Select 3
グラシアール

グラシアール

四季咲き/木立性/中輪/2022年/作出者 木村卓功

くすみや濁りのない美しい純白の整った丸弁平咲き。花にはダマスクからフルーティーの心地よい中程度の香りがある。数輪の房で咲き、花付きがとてもよい。春以降もよく返り咲き、秋の花付きもとてもよい。

春に咲く‘グラシアール’
春のホワイト・ガーデンに咲く‘グラシアール’。濁りのない美しい純白の花は光に輝いて、白花で統一したエリアの主役になる。*

枝はやや細くしなやかさがあり、すらりと直立に伸び、中型から大型の株に生育する。耐病性が強く、樹勢もとても強く、極めて生育旺盛で育てやすい。往年の名花‘アイスバーグ’を全ての点で超えている品種。

Select 4
ニューサ

ニューサ

四季咲き/木立性/小輪/2014年/作出者 木村卓功

つぼみの時は淡いピンク色で、開くと白になる。一重咲きの花にはスパイシーな中程度の香りがあり、ポリネーター(花粉媒介者)が集まりやすい。円錐形の大房で咲き、花付きがとてもよい。花がらをそのまま残せば、秋には多数のローズ・ヒップが実る。

春に咲く‘ニューサ’
春のメドウ・ガーデンに咲く‘ニューサ’。素朴な花は、宿根草などナチュラルな景観を作る植物との相性がよい。

枝は細くしなやかで、半横張りのふわりとしたややコンパクトな株に生育し、鉢栽培にも向く。耐病性が強く、樹勢もやや強く、育てやすい。シンプルな花と繊細な株姿は、ナチュラル嗜好の人にも受け入れられる。

Select 5
サマルカンド

サマルカンド

四季咲き/木立性/中輪/2022年/作出者 木村卓功

ラベンダー色の花弁がやや波を打った丸弁平咲きで、数輪の房になって開花し、花付きがとてもよい。ティー系の微香。春以降も繰り返しよく咲き、特に秋の花付きが優れ、3シーズン花数が変化しない。

秋に咲く‘サマルカンド’
秋のオセアニア・ガーデンに咲く‘サマルカンド’。秋でもこの数の花を咲かせるのは驚異的。

花弁質が優れ、雨などで傷みにくい。枝は中程度の太さで、ややしなやかさもある。半横張り性のコンパクトな株で、ほどよくまとまり、鉢栽培にも向く。耐病性が強く、樹勢もやや強く、育てやすい。

Select 6
こうぞめ

こうぞめ

四季咲き/木立性/中輪/未発表/作出者 河合伸志

花弁が時に波打つ黄土色の、丸弁平咲き。ティー系の微香。早咲きで、数輪の房になって開花し、花付きがとてもよい。春以降も繰り返しよく咲き、3シーズン花数が変化しない。花弁質が優れ、雨などで傷みにくい。

秋に咲く‘こうぞめ’
秋のフラワー・ヒルに咲く‘こうぞめ’。写真左はミューレンベルギア・カピラリス。線が細く、重くないブラウン系の花はグラス類との相性がよい。

枝はやや細く繊細な印象で、半横張りにやや自由な感じで広がるように生育する。耐病性が強く、樹勢は中程度だが育てやすい。重すぎない花と繊細な枝葉は、グラス類など他の植物との相性がよい。また結実しやすくローズ・ヒップが美しいので、あえて二番花以降を咲かせずに秋にヒップを楽しむのもよい。‘くるみ’の姉妹品種で、特性がよく似る。

春に咲く‘こうぞめ’
春のフラワー・ヒルに咲く‘こうぞめ’。スティパ・テヌイッシマとコラボする軽やかで美しい景色。*

Select 7
くるみ

くるみ

四季咲き/木立性/中輪/未発表/作出者 河合伸志

花弁が時に波打つ桃茶色の、丸弁平咲き。ティー系の微香。早咲きで、数輪の房になって開花し、花付きがとてもよい。春以降も繰り返しよく咲き、3シーズン花数が変化しない。花弁質が優れ、雨などで傷みにくい。枝はやや細く繊細な印象で、半横張りにやや自由な感じで広がるように生育する。耐病性が強く、樹勢は中程度だが育てやすい。

春に咲く‘くるみ’
春のフラワー・ヒルに咲く‘くるみ’。麦の穂と草丈も合って引き立て合うナチュラルな風景。*

重すぎない花と繊細な枝葉は、グラス類など他の植物との相性がよい。また結実しやすくローズ・ヒップが美しいので、あえて二番花以降を咲かせずに秋にヒップを楽しむのもよい。‘こうぞめ’の姉妹品種で、特性がよく似る。

Select 8
ステラ・ルーチェ

ステラ・ルーチェ

四季咲き/木立~半つる性/中輪/2025年/作出者 入谷伸一郎

丸弁平咲きで、白い花弁の中心に赤いブロッチが入る。ティー系の微香。早咲きで、数輪の房になって開花し、花付きがとてもよい。春の株姿はカチッとコンパクトにまとまるが、秋はシュラブ状に枝が直立にやや伸びる。鉢栽培にも向く。耐病性が強く、樹勢は強く、育てやすい。

Select 9
紫陽(シヨウ)

紫陽(シヨウ)

四季咲き/木立性/小輪/2000年/作出者 上山洋

紫がかった淡い桃色のポンポン咲きで、大房で開花し花付きがとてもよい。花には中程度のスパイシーな香りがある。可憐な花は和の雰囲気にもよくマッチする。

秋に咲く‘紫陽’
秋の古都の庭に咲く‘紫陽’。嫌味のない小ぶりな花は和の空間にも相性がよい。

春以降も繰り返しよく咲き、秋の花付きもよい。やや横張りのコンパクトな株で、鉢栽培に向く。樹勢は中程度で、耐病性が強く、育てやすい。

春に咲く‘紫陽’
春の古都の庭に咲く‘紫陽’。株全体を覆い尽くすほどの圧倒的な花数が楽しめる。*

Select 10
タイガー・アイズ

タイガー・アイズ

四季咲き/木立性/中輪/2006年/作出者 クリス・ワーナー

やや山吹色を帯びた黄色の花弁に、大きな赤いブロッチが入る一重咲き。大きめの房で開花し、花付きがよい。ティー系の微香。早咲きで、綾瀬市ではゴールデン・ウィーク後半に見頃を迎える。

春に咲く‘タイガー・アイズ’
春のトロピカル・ガーデンに咲く‘タイガー・アイズ’。黄色の花弁にくっきりとした大きな赤いブロッチはやや個性が強く使いにくさを感じるが、刺激的なトロピカル・ガーデンにはよくなじむ。

株は半横張りの中型で、春の株姿はまとまりがよいが、秋はややシュラブ状に広がるように伸びる。樹勢は強く、耐病性が強く、育てやすい。結実しやすい品種のため、二番花以降を咲かせるためには花がら切りは必須。

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