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神奈川県
宿根草とグラスの美しいハーモニーで話題のガーデン「服部牧場」を訪ねる
初夏の服部牧場を訪ねて 左から時計回りに、クナウティア、ルドベキア・ゴールドスターム(黄花)、アスチルベ、ヘメロカリス・クリムゾンパイレーツ(中央赤花)、銅葉のニューサイラン、クナウティア・マケドニカ(赤い小花)、スティパ・テヌイッシマ、ヤブカンゾウ(ニューサイラン手前のオレンジの花)、バーベナ・ボナリエンシス(淡紫の背の高い植物)。 ガーデンストーリーで服部牧場を紹介した最初の記事は、2020年1月に公開しました(前回記事はこちら)。ついこの間くらいに思っていたら、もう3年半の月日が経っていました。前回は、晩秋から初冬のグラスや宿根草の枯れ姿を中心に紹介していましたが、今回は今年2023年6月後半に訪ねた、さまざまな花が生き生きと咲き乱れる彩りがあり美しい服部牧場の紹介です。 左からヘメロカリス・ベラルゴシ(赤花)、アキレア(白)、ベルケア・パープレア(淡いピンクの花)、ダリア・サックルピコ(ヘメロカリス上のオレンジ)が左ボーダーの彩りに。小道奥で黄色く輝く葉は、ニセアカシアフリーシア、その左で丈高く茂るのはバーノニア。右手前では、バーベナ・ボナリエンシスが咲き、奥の銅葉のニューサイランの手前で、赤花のポンポン咲きダリア・サックルバーミリオンがアクセントに。 グラスがいい仕事をするガーデン 左下から時計回りに、スティパ・テヌイッシマ、フクシア・マジェラニカ(赤花でつり下がった形状)、銅葉のニューサイラン、アメリカテマリシモツケ‘サマーワイン’(銅葉の木)ホルディウム・ジュバタム(中央の生成り色のグラス)、ルドベキア・マキシマ(右上背の高い黄花)、フロックス‘レッドライディングフット’(赤ピンク花)、ヘメロカリス(桃色花)。 思い起こせば、3年前の僕は“グラスを多用したガーデン”こそが新しいガーデンの形だと信じ、夕陽に輝くグラスやシードヘッドの写真ばかり追い求めていました。グラスが多数植栽されているこのガーデンにも何回も足を運んだものです。 左下から時計回りに、バーベナ・ボナリエンシス、バーベナ‘バンプトン’(ボナリエンシスの株元のこんもり姿)、ダリア‘サックルブリリアントオレンジ’(ポンポンダリア)、ダリア‘サックルコーラル’(隣のポンポンダリアの赤)、スティパ・テヌイッシマ、アガスターシェ・ルゴサ・アルビフローラ(スティパの上に写る縦長の花穂)フロックス‘ブライトアイズ’(ピンク)、ミソハギ(ピンクのフロックスの後ろに写る縦の紫色の花穂)、クロコスミア‘ルシファー’(ミソハギの後ろ)、カライトソウ(中央ピンクの垂れ下がる花穂)、アメリカテマリシモツケ‘ディアボロ’(右上端の銅葉の木)、フロックス‘ブルーパラダイス’(右側中段の横に広がる紫の花)。手前で2本の花穂が上がるアカンサス・スピノサス‘レディムーア’がこのコーナーを印象付けている。 秋から冬にかけてこのガーデンを訪れた際は、グラスの美しいシーンをカメラに収めることで満足していましたが、やがて季節が変わり、春から夏になるとグラス類に変わって宿根草たちがこのガーデンの主役となっていました。 左/上からアリウム‘サマードラマー’、ダリア‘ミズノアール’、ユーパトリウム・アトロプルプレウム(右上)、ベロニカストラム‘ダイアナ’(白のとんがった花)、グラジオラス‘バックスター’、アスチルベ・プルプランツェ(右端のピンク花)、メリカ・キリアタ(手前下のグラス)。右/ベロニカストラム‘ダイアナ’、ユーパトリウム・アトロプルプレウム(左上)、奥の彩りは、ヘリオプシス‘サマーナイツ’(黄色)とダリア‘熱唱’(赤花)。 宿根草が生き生きと育つそのそばには、グラス類が存在しています。代わる代わる咲く宿根草の花々を引き立てる名脇役のグラスが組み合わされているからこそ美しいのだと、改めてこの庭に気付かせてもらったように思います。 カメラマンを唸らせる美しいガーデン 左下から時計回りに、アガスターシェ・ルゴサ・アルビフローラ(縦の花穂)、バーベナ・ハスタータ‘ピンクスパイヤー’、フロックス‘ブライトアイズ’(ピンク)、ダリア‘サックル・ルビー’(赤いポンポンダリア)、ミソハギ(サイロの屋根の下に写る縦の紫の花)、クロコスミア‘ルシファー’、カライトソウ(中央ピンクの垂れ下がる花穂)、ヘリオプシス‘サマーナイツ’(カライトソウの後方右に写る黄色)、アリウム‘サマードラマー’、ダリア‘ティトキポイント’(いろんなダリアが重なって写ってるが、一重のピンクで中央がオレンジっぽいダリア)、オレガノ‘ヘレンハウゼン’(カライトソウの手前右)、バーベナ‘バンプトン’(カライトソウ左下のふんわり姿)、カラミンサ(オレガノの手前)、ミューレンベルギア・カピラリス(手前右角に写るグラス)。 この多くの宿根草やグラス類をナチュラルに組み合わせて美しいシーンを作り、いくつも僕に見せてくれる“寝ても覚めてもガーデンと植物のことが気になってしまう”服部牧場のガーデナーである平栗智子さんは、僕のガーデンフォトの最良のパートナーだと感謝しています。 上左/ヘメロカリス‘ブラックアローヘッド’ 上中/下からダリア‘冬の星座’、ユーパトリウム‘アイボリータワー’、アリウム‘サマードラマー’、バーノニア 上右/エキナセア‘ミルクシェイク’ 下左/モナルダ・プンクタータ 下中/ベルケア・パープレア 下右/カライトソウとフロックス‘クレオパトラ’ ここでご覧いただいている写真は、伸び伸びと育った大型の植物をふんだんに使う“平栗智子流のガーデンデザイン”による、生命感溢れるシーンばかりの6月の服部牧場です。夕方の沈みかけた綺麗な光で思う存分撮影してきた大満足の写真満載です。 左下から奥の順に、エキナセア‘ピンクパッション’、トリトマ‘アイスクイーン’、スタキス、アスター‘アンレイズ’(緑色のこんもり姿)、パニカム‘ブルーダークネス’(アンレイズ左のグラス)、チダケサシ(アンレイズの後ろの淡いピンクの花穂)。右側、斑入りのフロックス‘ノーラレイ’とエキナセア、株元の丸葉は、ヒマラヤユキノシタ。 そして、各写真に添えられた解説は、平栗さんがこの写真を見ながら丁寧に品種名を書き出してくれたものです。この景色を作る鍵となる宿根草の具体的な品種名の数々は、ガーデンラバーズさんにとって最良のテキストになると思います。この記事で服部牧場の魅力の秘密が伝わることを期待しています。
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東京都
都立公園を花の魅力で彩る画期的コンテスト「東京パークガーデンアワード@代々木公園」は夏花開花中!
日々成長するコンテストガーデンは「代々木公園」で毎日見学可能 コンテストガーデンとモデルガーデンがあるのは、JR山手線「原宿」駅から徒歩3分の「都立代々木公園」の中。原宿門から入ってすぐ右手の「オリンピック記念宿舎前広場」です。敷地の奥は、緑深い明治神宮の森が背景となり、右手から日が昇る日当たりがよい開けた場所。かつては陸軍代々木練兵場だったところで、その後はワシントンハイツ、東京オリンピックの選手村と時代とともに変遷しましたが、「オリンピック記念宿舎」として今も保存されています。 「オリンピック記念宿舎」までの通路沿いの左右に、5つのガーデンが作られています。右奥の広場には、吉谷桂子さんによるモデルガーデン「the cloud」も公開中。8月中旬の様子。 「第1回 東京パークガーデンアワード」の最大の特徴は、主に宿根草などを取り入れた「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマとする点。一度植え付けて根付いたあとは、最小限の手入れで維持されること、また同時にデザイン性と植物や栽培環境に対する高度な知識が求められる、新スタイルのガーデンコンテストです。 コンテストガーデンが作られている敷地の平面図。A〜Eの各面積は約72〜85㎡ 。どのエリアでガーデンを制作するかは、11月に抽選により決定しました。 ここでテーマとなる「ロングライフ・ローメンテナンスな花壇」とは、季節ごとの植え替えをせずに、丈夫で長生きな宿根草や球根植物を中心に使って、植えっぱなしで、異なる季節に開花の彩りが楽しめる花壇のこと。2022年10月に5つのデザインの作庭が決定し、同年12月上旬にはそれぞれの区画で1回目の土づくりと植え付けが完了しました。 <News>第2回参加者募集&オンラインイベント開催 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物園」の参加者の募集がスタートしています! 代々木公園での第1回開催に続き、第2回のコンテストの舞台は、都立神代植物公園正門手前プロムナード[無料区域](調布市深大寺)。コンテストのテーマは「武蔵野の“くさはら”」です。応募の締め切りは、2023年9月1日(金)必着。応募方法など詳細はこちら 第1回東京パークガーデンアワードの入賞者によるオンライン座談会 「第1回 東京パークガーデンアワード 代々木公園」の入賞者5名が登壇。応募に向けた準備や植物の調達から造園、メンテナンスまで、現場の“生”の声が聞ける座談会が2023年8月10日(木)にオンラインで開催されました。ご視聴はこちらから。 「第1回 東京パークガーデンアワード」グランプリは11月上旬に決定! 2022年12月に行われた5つのガーデン制作に関わった皆さん。審査委員の正木覚さんと吉谷桂子さんを囲んで。 【第1回 東京パークガーデンアワード in 代々木公園 最終審査までのスケジュール】 2022年10月20日 応募締め切り10月31日 書類による本審査 5名の参加者決定12月5〜9日 参加者によるガーデン制作①2023年2月27日〜3月3日 参加者によるガーデン制作②4月 ショーアップ審査(春の見ごろを迎えた観賞性を審査)7月 サステナブル審査(梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査)11月上旬 ファイナル審査(秋の見ごろの観賞性と年間の管理状況を審査)全3回の審査を踏まえ、総合評価のうえ、グランプリ・準グランプリ・特別審査委員賞の決定11月 審査結果の発表・表彰式 「第1回 東京パークガーデンアワード」は、5名の参加者決定から最終審査の結果発表まで1年かけて行われる、新しい試みのコンテストです。現在、12月の1回目のガーデン制作に続き、2月下旬の2回目の植え付けや手入れが終了。4月に「ショーアップ審査」、7月に「サステナブル審査」を終え、次回は、秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する「ファイナル審査」が11月に予定されています。季節の変化に合わせて日々成長する今後の庭にもご期待ください。 左上下/4月の「ショーアップ審査」の様子。右上下/7月の「サステナブル審査」の様子。 Pick up 8月の植物の様子 左から/ペニセタム‘テールフェザー’(Aエリア)/ヘレニウム’レッドシェード’(Aエリア)/バーノニア・ファスキクラータ(Bエリア)/ユーパトリウム‘レッドドワーフ’(Bエリア) 左から/リアトリス・スカリオサ ‘アルバ’(Cエリア)/ルドベキア・サブトメントーサ‘ヘンリーアイラーズ’(Dエリア) /アリウム’サマービューティ’(Eエリア) /アネモネ・トメントーサ(モデルガーデン) Pick up 7月の植物の様子 左から/フロックス‘フジヤマ’(Aエリア)/ヒオウギ‘ゴーンウィズザウィンド’(Bエリア)/アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’(Bエリア)/エキナセア‘バージン’(Cエリア) 左から/カンナ(Dエリア)/アメリカフヨウ(Dエリア)/エキノプス‘プラチナムブルー’( Eエリア) /ヘリオプシス’ブリーディングハーツ’ (Eエリア) Pick up 6月の植物の様子 左から/サルビア・ウルギノーサ(Aエリア)/エキナセア‘ラズベリートリュフ’(Aエリア)/アキレア‘ウォルターフンク’(Bエリア)/フロックス‘ブライトアイズ’(Bエリア) 左から/リアトリス‘コボルト’(Cエリア)/ラティビタ ‘レッドミジェット’(Cエリア)/ポピーマロウ(Dエリア)/ポンポン咲きダリア( Eエリア) Pick up 5月の植物の様子 左から/エレムルス‘ロマンス’(Aエリア)/クニフォフィア・シトリナ(Aエリア)/ダウクス・カロタ‘ダラ’(Bエリア)/クラスペディア・グロボーサ(Bエリア) 左から/エリンジウム‘ブルーグリッター’(Cエリア)/リクニス・コロナリア(Dエリア)/ホルデューム・ジュバタム(Eエリア)/カンパニュラ‘サマータイムブルース’(モデルガーデン) Pick up 4月の植物の様子 左から/ユーフォルビア・ウルフェニー(Aエリア)/フリチラリア・エルウェシー(Bエリア)/ラナンキュラス・ラックス‘アリアドネ’(Bエリア)/アジュガ'チョコチップ’(Cエリア) 左から/フロックス・ピロサ(Dエリア)/エリゲロン・カルビンスキアヌス(Dエリア)/アリウム・シルバースプリング(Eエリア)/アリム‘パープル・レイン’(モデルガーデン) Pick up 3月の植物の様子 左から/アネモネ・デカン(Aエリア)/スイセン 'ペーパーホワイト’(Bエリア)/フリチラリア‘ラッデアナ’(Bエリア)/イベリス(Cエリア) 左から/サルビア・ネモローサ(Dエリア)/ベロニカ‘オックスフォードブルー’(Eエリア)/イフェイオン‘アルバートキャスティロ’(モデルガーデン)/シラー・シビリカ(モデルガーデン) Pick up 2月の植物の様子 左から/スイセン‘ティタティタ’(モデルガーデン)/アリウム 'シルバースプリング’(Aエリア)/ユーフォルビア ウルフェニー(Aエリア)/カレックス テヌイクルミス(Bエリア) 左から/アジュガ レプタンス(Cエリア)/リナリア プルプレア 'アルバ' (Cエリア)/ガウラ リンドヘイメリ ’クールブリーズ'(Dエリア)/アリウム ‘サマードラマー’(Eエリア) Pick up 1月の植物の様子 左から/アネモネ(エントランス花壇)/パンパスグラス‘タイニーパンパ’(エントランス花壇)/スティパ・イチュー(Aエリア)/苗から植え付けたアリウム‘サマードラマー’(Bエリア) 左から/レモンバームやオレガノ'ヘレンハウゼン’、 'ノートンゴールド’など(Cエリア)/ユーフォルビア‘ブラックバード’(Dエリア)/エルサレムセージ(Dエリア)/ニューサイラン(Eエリア) 全国から選ばれた5人のガーデンコンセプト 「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマに、各ガーデナーが提案するガーデンコンセプトは、5人5様。それぞれが目指す庭のコンセプトや図面、植物リストの一部をご紹介します(応募時に提出された創作意図や植物リストを抜粋してご紹介)。 コンテストガーデンAChanging Park Garden ~変わりゆく時・四季・時代とともに~ 【作品のテーマ・創作意図】時間や四季の移ろいと共にドラマチックに展開する宿根草ガーデンは見る人の心を豊かにします。たとえば秋の夕景は、光が植物たちの魅力をいっそう引き出してくれる、もっとも美しい時間でしょう。公園の緑花空間は、来園者に感動や癒やしを提供する場所であり、さらに植物を通してコミュニティが生まれ「共感」の時代へと変化しつつあります。人々に愛される場所であることが真の持続可能なガーデンとなるのではないでしょうか。さまざまな意味で変化する公園のガーデン≪Changing Park Garden≫をテーマに、◆Chillax (チラックス) ◆Community(コミュニティ) ◆Challenge(チャレンジ)3つの「C」をコンセプトにガーデンデザインを計画します。【主な植物リスト】サルビアネモローサ カラドンナ/ユーフォルビア ウルフェニー/エキナセア パープレア/アガスターシェ ゴールデンジュビリー/ネペタ シックスヒルズジャイアント/ヘリオプシス ブリーディングハーツ/サルビア ミスティックスパイヤーズ/アジュガ ディキシーチップ/ペニセタム ビロサム/カレックス フェニックスグリーン/ペニセタム テールフェザー/アリウム イエローファンタジー など 合計84種 コンテストガーデンA 月々の変化 【8月中旬】 7月から穂が伸び始めたペニセタム‘テールフェザー’(上写真右側)が大株に育ち存在感を発揮しています。6月から引き続き咲き続けているサルビア‘ミスティック・スパイヤーズ’(下左)やバーベナ‘バンプトン’に加え、8月は、ヘレニウム’レッドシェード’(下中)が花束のようにダイナミックに咲き、夏に切り戻したベロニカ‘ファーストキス’(下右)が再び咲き始めています。 【7月中旬】 各株が大きくなり、混ざり合って茂る真夏。6月から引き続き咲き続けるスカビオサ・オクロレウカやサルビア‘ミスティック・スパイヤーズ’などに加え、メリカ・シリアタ(写真下左)スティパ・イチュー(写真下中)、ペニセタム‘テールフェザー’(写真下右)など、さまざまなグラスの穂が伸びていて、花壇に動きが感じられます。 【6月中旬】 植物の成長が進み、一つずつの植物のボリュームが増して緑の量も増えました。6月に開花が始まったエキナセアの鮮やかなピンク色の花にペニセタム・ピロサムの穂が寄り添っていたり、5月に白花を咲かせていたバレリアナ・オフィシナリスの花がらが雲のように優しい景色を作っています。サルビアの青花、ペニセタム・テールフェザーなどが丈高い植物が背景でスクリーンのようになり、アリウムが宙に浮かんでアクセントになっています。 【5月中旬】 5月になると一気に成長が進み、まったく地面が見えないほど、どの植物もボリュームアップ。4月中旬に花壇のフレームからはみ出すほど成長していたスタキス ビザンティナ(右下)は、花穂を立ち上げ、周囲の植物と色の対比を見せています。花壇の後方では、白花のバレリアナ・オフィシナリスやエレムルスが背丈ほどに伸び、景色が立体的になりました。 【4月中旬】 3月に咲き始めたアネモネ・デカンは、まだまだ花数を増やし、他の植物も2倍、3倍と草丈が高くボリュームが増してきました。スタキス・ビザンティナ(英名ラムズイヤー、右下)は、花壇のフレームからはみ出るほどに葉を伸ばし、アリウムにはつぼみがついています。葉の形状の違いや草丈の差が出て、花壇が立体的になってきました。 【3月中旬】 アネモネ・デカンの葉が増え、白・紫・赤・ピンクとカラフルに花が咲き出しています。また、原種チューリップ‘ポリクロマ’も開花中。スタキス・ビザンティナやアリウム 'シルバースプリング’、ユーフォルビア ウルフェニーも存在感を増し、緑の量が日に日に増えています。 【2月中旬】 斑入り葉のカレックス・オシメンシスや黄金葉のカレックス‘ジェネキーが日に輝くなか、サルビア・ネモローサ‘カラドンナ’やスカビオサ・オクロレウカ、スタキス・ビザンティナなどが地面に張り付くように葉を広げています。 【1月中旬】 コンテストガーデンBLayered Beauty レイヤード・ビューティ 【作品のテーマ・創作意図】季節を感じる宿根草ガーデンを作るということは、さまざまなレイヤーを組み合わせて、美しさを構築するということだと考えています。<植物のレイヤー・時間差のレイヤー・バランスのレイヤー・地下部のレイヤー>これまで、多くのデザイナーやガーデナーとの交流の中で、どの植物がガーデンの中でどんな役割を果たしているか、また、どんな植物が耐久性があるのか、今後どういった植物を提案したらよいかなどについて蓄積してきた引き出しとアイデアがあり、それらを、今回提案できればと考えました。デザインにおいては、感性だけではなく、植物生産者としてサステナブルで、かつ美しく見える植栽の構築について理詰めでデザインする(=一般化できる)手法を取り入れ、その過程をオープンにできればと思っています。 【主な植物リスト】 <グラス類>パニカム チョコラータ/カラマグロスティス ブラキトリカ/ミスカンサス モーニングライト/ルズラ ニベア/スキザクリウム スモークシグナルなど <宿根草(高)>ユーパトリウム レッドドワーフ/パトリニア プンクティフローラ/ヒオウギ ゴーンウィズザウィンド/フィリペンデュラ ベヌスタなど <宿根草(中)>エキナセア(オレンジパッション、マグナス スーペリア他)/ヘリオプシス ブリーディングハーツ/アムソニア ストームクラウドなど <宿根草(低)>ゲウム マイタイ/アリウム(サマービューティ、イザベル、メデューサ)/ベロニカウォーターペリーブルー/カラミンサ ブルークラウドなど <日本由来の植物>イカリソウ(4-5種)/ヤマトラノオ/ノコンギク夕映/ユーパトリウム羽衣/シュウメイギク パミナなど <一年草・二年草>ラークスパー/アンスリスクス/アンミ/フロックス クリームブリュレ/タゲテス ミヌタ/クラスペディアなど <球根類>フリチラリア(ラッデアナ、ペルシカ、エルウェシー)/シラー ミスクトケンコアナ/クロッカス プリンスクラウス/ミニチューリップなど 合計142種 コンテストガーデンB 月々の変化 【8月中旬】 8月になると園路に沿ったの花壇の縁を隠すほどグラスの穂がふわふわと茂り、まるでスモークのよう。8月に咲き始めた多数のアリウム‘メデューサズヘア’(下左)やヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’(下右)、ガイラルディア‘グレープセンセーション’などが穂と混ざり合い、ユーモラスな景色が見られます。7月から涼しけなブルーの花が継続して咲いているアガスターシェ‘ブルーフォーチュン’は、突然の強い雨風や猛暑にも耐えて彩りに貢献しています。 【7月中旬】 5〜6月から咲き続けているダウクス・カロタ‘ダラ’やフロックス‘ブライトアイズ’、エキナセア‘ミニベル’に加え、7月は、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やアガスターシェ‘ブルーフォーチュン’が花を増やしています。花壇の中には、秋に向けてぐんぐん成長するものや、これから咲く蕾もスタンバイしています。 【6月中旬】 6月になると、エキナセア‘イブニンググロー’や‘ブルーベリーチーズケーキ’、アキレア‘アプリコットデライト’や‘ウォルターフンク’などの暖色系の花に主役がバトンタッチして、さまざまな色彩が楽しめます。間に茂る銅葉のアンスリスクス ‘レイヴンズウィング’によって花色が際立って見えたり(左下)、ゲラニウムの黄金色の葉にエキナセアが引き立って見える(右下)など、植物同士のコラボレーションが楽しめます。 【5月中旬】 4月中旬からアクセントになっていた大小さまざまなアリウムは、次の開花を迎えるアリウムとバトンタッチしながら、咲き終わってボール状の花がらのまま残っているなか、エリンジウム(右下)やクラスペディア・グロボーサなど、新しい花色が多数組み合わさって、場所ごとに異なるカラーハーモニーが楽しめます。花から種になるもの、蕾から花を咲かせるもの、いろいろな植物の姿が一緒に見られます。 【4月中旬】 12種も植えられていたチューリップは3月から順次咲き始めて、4月中旬までバトンタッチするように咲き継ぎました。4月中旬は、ラナンキュラス・ラックスやカマシア、アリウムの彩りが加わって一層華やかに。花壇の土を盛り上げた効果で、奥に咲く花の様子もよく見えます。 【3月中旬】 花壇手前には、ピンクやブルー、白のムスカリが次々と開花し、花壇中央では、スイセン‘ペーパーホワイト’が開花。黄花のミニチューリップ・シルベストリスも花束のように咲いています。アリウム・ギガンテウムは、葉をダイナミックに繁らせ、地面を隠すほどに成長。暖かい日が続いて、多くの植物が目覚めています。 【2月中旬】 苗から植え付けたアリウム‘サマードラマー’が前月よりも2倍の高さまで伸び、スイセン‘ペーパーホワイト’(左下写真中央)はつぼみが膨らんでいます。オーニソガラムやチューリップ、クロッカスなど、あちこちで芽吹きが確認できます。ふわふわと茶色の細葉を伸ばすのは、カレックス・テヌイクルミス。 【1月中旬】 コンテストガーデンCGarden Sensuous ガーデン センシュアス 【作品のテーマ・創作意図】私たちの感覚に訴えかけるガーデン、Garden Sensuous。日本の古の歌人・俳人たちは、森羅万象、感情の機微や情緒、美しい風景を歌に詠んできました。その美しさへの眼差しは自然環境への知見を踏まえた、高度に知的で文化的なものであったと考えられます。そしていま、これからの環境について考える場合、サステナブルやエシカルであることは、無視できないトピックです。サステナブルなガーデンであること、エシカルなガーデンであることが、人の感覚に訴えかける条件の一つであると考えます。また私たちの感覚に訴える美しさとはそういったものであって欲しい、という願いを込めてこの庭をデザインしました。【主な植物リスト】<Spring>アスチルベ/アガパンサス/ガウラ/カラミンサ<Summer>エキナセア/ヘレニウム/ルドベキア/ガイラルディア/アガスターシェ/ヘリオプシス/バーベナ/リアトリス<Autumn>オミナエシ/オトコエシ/フジバカマ<Ground cover>オレガノ/レモンバーム/ワイルドストロベリー<Grass 他>イトススキ/ペニセタム/フェンネル など 合計65種 コンテストガーデンC 月々の変化 【8月中旬】 7月から咲き続けているバーベナ・ボナリエンシスやオミナエシ、カラミンサ・ネペトイデス、エキナセアが彩る中で、花が終わったリアトリス‘フロリスタンホワイト’の長い花穂やエキナセアのシードヘッドがアクセントになっています。3月にシードボール(種団子)を播いて育ったアカジソの銅葉(上写真内右)やレモンバーム‘ゴールドリーフ’のライムグリーンの葉(下右)もガーデンの彩りに一役買っています。 【7月中旬】 5月までは場所が確認できていた4つのバグホテル(虫たちの住処になる場所)が隠れるほど各植物のボリュームが一層増して、花の彩りも豊かです。カラミンサ・ネペトイデスのような細かな花に対比して、エキナセアやガイラルディアの花が引き立ち、リアトリスやアガスターシェのような穂状の花もアクセントになっています。花壇の後方では、バーベナ・ボナリエンシスやオミナエシが丈高く開花。 【6月中旬】 各植物のボリュームが一段と増して、植物の高低差がリズミカルです。花々の中で昆虫が休んでいる様子が見られたり、花穂を伸ばす植物は風に揺れ、ワイルドストロベリーには赤い果実がなっています。この庭のテーマである「生き物たちの住処になる」ことや、風による動きや花や緑の香りを感じられたり、食べられるものも育つという「五感を刺激するガーデン」を花壇の中で実際に見ることができます。 【5月中旬】 地面がほぼ隠れるほど、どの植物も葉を増やし、ガウラやエキナセア・パラドクサ、アスチルベ、リナリアなどが開花して、花の彩りも増えています。花壇の後方では、グラスの穂が風に揺れたり、背丈より高く伸びたバーベナ・ボナリエンシスが紫の花を咲かせ、植物の高低差にリズムを感じます。2月下旬に設置されたバグホテル(虫たちの住処になる場所)が隠れるほど、周囲の植物がよく成長しています。 【4月中旬】 それぞれの植物が勢いよく成長し、イベリスの白い花とオレガノ 'ノートンゴールド’などの黄色い葉が明るいアクセントになっています。カラス除けとして刺さされていた枝は、丈高く育ってきた植物の支えに転用し、花壇の中で馴染んでいます。 【3月中旬】 2月下旬に設置されたバグホテル(虫たちの住み家になる場所)の周囲に植わるリナリア・プルプレア 'アルバ' がぐんぐん成長し、窪んだ低地では、アスチルベが存在感を出してきました。築山には、イベリスの白花やシラーの青花が彩りに。黄金葉のワイルドストロベリー 'ゴールデンアレキサンドリア’ にも花が見られます。 【2月中旬】 銅葉のガウラ 'フェアリーズソング’や黄金葉のワイルドストロベリー 'ゴールデンアレキサンドリア’、緑葉のシャスターデージー ’スノードリフト’が低く、地表に彩りを添えています。植物を守るように刺さる枝は、カラス除け。 【1月中旬】 コンテストガーデンDTOKYO NEO TROPIC トウキョウ ネオ トロピック 【作品のテーマ・創作意図】地球温暖化と共に東京で越冬するようになった亜熱帯植物を取り入れ、花壇をつくります。また「循環型再生管理」を目指し、維持管理の過程で発生する植物の発生材は現場で更新、循環するガーデンをつくります。亜熱帯植物が力強く越冬する姿から緑のうるおいとあわせ、環境への意識「地球温暖化への警鐘」のきっかけをつくります。そして、地球温暖化による気温上昇、豪雨などの異常気象が多発するなかで、改めて「植物」や「土」の環境改善の役割を見つめ直し、緑の大切さを発信します。【主な植物リスト】<PURPLE >アンドロポゴン‘ブラックホース’ /アスター‘レディーインブラック’ /リグラリア‘ミッドナイトレディ’/アルストロメリア‘インディアンサマー’/エンセテ‘マウエリー’/ユーホルビア ‘ブラックバード’/カレックス ‘プレーリーファイヤー’/リシマキア ‘ファイヤークラッカー’/パニカム ‘チョコラータ’/ニューサイラン ‘ピンクストライプ’/トラディスカンチア ‘ムラサキゴテン’/ダリア<SILVER>ルドベキア ‘マキシマ’/リクニス‘コロナリア’/アガベ ‘姫滝の白糸’/アガベ ‘ボッテリー’/ユーホルビア/スティパ/エルサレムセージ/パンパスグラス<GREEN>ユーパトリウム‘グリーンフェザー’/トリトマ ‘アイスクイーン’/アロエベラ/ナチシダ/アガパンサス/ストレリチア/ガウラ ‘クールブリーズ’/アスパラガス ‘マコワニー’/アガスターシェ ‘ブラックアダー’<YELLOW>ワイルドストロベリー ‘ゴールデン アレキサンドリア’/ジャスミン ‘フィオナサンライズ’/カンナ ‘ベンガルタイガー’<GROUND COVER>クリーピングタイム/エリゲロン/スイセン‘チタテート’/チューリップ‘タルダ’/ハナニラ/アリウム ‘サマービューティ’/ゼフィランサス/イベリス 合計40種 コンテストガーデンD 月々の変化 【8月中旬】 5〜6月から咲いているガウラやアガスターシェ、アルストロメリアに加え、7月に咲き始めたルドベキアが引き続き彩りになっている8月。パンパスグラスも大きな穂を立ち上げて、さらにガーデンに立体感が出てきました。ストレリチアが植わるウィーピングレイズドベッドでは、イポメアやベンガルヤハズカズラがフレームを覆い隠すほど旺盛に葉を増やして緑豊かです。 【7月中旬】 スティパの穂が風に揺れ、5〜6月から咲いているガウラやアガスターシェ、ポピーマロウ、トリトマ、アルストロメリアが引き続き咲き続けるなか、4種のルドベキアやダリアとクロコスミアの彩りも加わって鮮やかです。丸く剪定枝を積み重ね、落ち葉などを入れて堆肥を作るバイオネストの縁に、隣から伸びてきたベンガルヤハズカズラが絡んで花壇に馴染んでいます。 【6月中旬】 各植物がより一層茂ったことで、銀色がかる葉、青みがかる葉、銅色の葉など、葉色や草姿の違いが際立ってわかるようになってきました。6月は、トリトマやアルストロメリア‘インディアンサマー’のオレンジ色の花が鮮やかに引き立っています。「Look at me!」と記された札が立つウィービングレイズドベッドには、ワイルドストロベリーの茂みの中でパッションフルーツが丸い実をつけています。夏の日差しを受けて、花壇は日に日にトロピカルな雰囲気が増しています。 【5月中旬】 花壇の中に作られた9つある「ウィービングレイズドベッド」の中の植物も、枠からはみ出るほど成長し、レイズドベッドごとに異なる景色が楽しめます。植えつけ時期の3月は、とても小さかったエンセテ(左下中央)は、赤みを帯びた緑葉を大きく広げて存在感が日に日に増し、目を惹いています。尖った葉、ふわふわ茂る葉、這って広がる緑、ワイルドに育つさまざまな草姿の違いも注目のポイントです。 【4月中旬】 スイセンやチューリップは見頃を終え、桃色のフロックス・ピロサや青花のアジュガ・レプタンス、白花のイベリス・センペルビレンスが、花を増やし彩りを添えています。メシダ‘バーガンディレース’の葉の間に咲くのは、アネモネ・フルゲンス(右下)。マルバダケブキの間から丸いつぼみを伸ばしているのはアリウム・ニグラム(左下)。 【3月中旬】 これまで姿が見えていなかったスイセン‘ティタティタ’があちこちで芽吹き、ワイルドストロベリーやアガベ、エルサレムセージなど、周囲の植物たちと面白いコラボレーションを見せています。自然素材を使った「ウィービングレイズドベッド」に植えられた植物は地面よりも高い位置にあるので、植物の様子が近くに感じられます。銀色や銅色、斑入りなど、いろんな葉色が楽しめます。 【2月中旬】 12月の植え付け時から地上部が残っているパンパスグラスやエルサレムセージ、ユーフォルビアが寒さに耐えているなか、レイズドベッドに植わる植物が少しずつ芽吹き始めています。 【1月中旬】 コンテストガーデンEHARAJUKU 球ガーデン 【作品のテーマ・創作意図】初夏からのアリウム~秋のダリア を中心とした、球状の花の組み合わせでポップに楽しく魅せるガーデンです。アリウムはその形状が非常にユニークかつアート的で、原宿に集う人々のアンテナに触れる植物ではないでしょうか。ほかにも、エリンジウムやヘレニウム‘オータムロリポップ’、モナルダ、ニゲラの花後の球果など、観て楽しい植物で構成しました。また、秋のダリアはデスカンプシア‘ゴールドダウ’との合わせで、一見存在が浮いて見えてしまいがちなダリアを、幻想的に他の植物たちと融合させます。「球ガーデン」のネーミングは、某超有名ガーデンを原宿ならではの遊び心でもじらせていただきました。【主な植物リスト】アリウム/ダリア/エキナセア/モナルダ/ワレモコウ/ゲウム リバレ/ムスカリ/ニゲラ/カカリア/バーノニア/エリンジウム/ディアネラ/ユーパトリウム チョコレート/ヘレニウム オータムロリポップ/パニカム/ニューサイラン/カレックス/デスカンプシア ゴールドタウなど 合計88種 コンテストガーデンE 月々の変化 【8月中旬】 強い日差しを受けて輝くディスカンプシア‘ゴールドタウ’の穂が煙のように花壇全体に広がり、隣り合う植物の間を繋げています。穂に浮かび上がって見える球状花のエキノプス(右下)は、花後もガーデンのアクセントとして活躍。7月から咲き続けているオレンジ花のヘリオプシス’ブリーディングハーツ’やピンク花のガイラルディア‘グレープセンセーション’などが彩りになっているなか、サクシサ・プラテンシス(左下)が球状花として仲間入りしています。 【7月中旬】 6月から咲いているポンポンダリアやヘレニウム‘オータムロリポップ’、エキノプス‘プラチナムブルー’、スカビオサ・オクロレウカがさらに花数を増やす中、オレンジ花のヘリオプシス’ブリーディングハーツ’が咲き始めてさまざまな花色が楽しめます。株間から、ディスカンプシア‘ゴールドタウ’の穂が見え始め、次の季節へと成長を進めています。 【6月中旬】 5月は、アリウム・ギガンチウムやアリウム‘グレースフルビューティー’などが、この花壇のタイトル「HARAJUKU 球ガーデン」を表現していましたが、6月は、背丈を越すほどまで伸びたアリウム ‘サマードラマー’をはじめ、ポンポンダリアやヘレニウム‘オータムロリポップ’(下左)、エキノプス‘プラチナムブルー’(下中)、アリウム‘丹頂’(下右)などが球状花として花壇を彩り、にぎやかです。 【5月中旬】 花壇のタイトル「HARAJUKU 球ガーデン」を表現する球状の花の一つであるアリウムが5月上旬に多数開花。5月中旬になると残った丸い花がらが、ホルディウム・ジュパタムやスティパ‘エンジェルヘアー’などのグラス類の上に浮いているように見え、個性的な風景を作っています。花壇の後方では、背丈よりも大きく育ったバーベナ・ボナリエンシスと競うように丈高く伸びるアリウム ‘サマードラマー’の蕾がスタンバイ。球状の花の開花リレーが続きます。 【4月中旬】 さまざまなアリウムの葉の間をつなぐようにグラスの細葉が風に揺れるほど成長してきました。アリウムの中でいち早く、白花のアリウム・シルバースプリングが開花。緑の間にオレンジや黄色のゲウム・リバレやゲウム‘テキーラサンライズ’が咲いて華やかなアクセントになっています。 【3月中旬】 この庭の特徴となる玉のような花を咲かせる多品種のアリウムも存在感を出し、ディスカンプシア‘ゴールドタウ’やホルデウム ユバツムなどグラスも葉を増やしています。花壇の縁付近では、ベロニカ’オックスフォードブルー’の紫花やムスカリも次々開花中。いろんな植物がたくましく混ざり合って育つ様子が見られます。 【2月中旬】 アリウム‘サマードラマー’やアリウム‘シルバースプリング’が勢いよく伸び出し、切り戻されていたグラスのディスカンプシア‘ゴールドタウ’は細い葉を伸ばし始めています。地面に張り付いたように葉を残す緑のニゲラや赤い葉のペンステモン‘ハスカーレッド’が彩りを添えています。 【1月中旬】 庭づくりの舞台裏記事も公開中! 5つのコンテストガーデンは、2022年12月に第1回目の作庭が行われました。その様子をご紹介する記事『【舞台裏レポ】「第1回 東京パークガーデンアワード」5つの庭づくり大公開』もご覧ください。
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【話題のスポット】森の中の北欧が香るヒーリングガーデン 『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』
フラワーアーティスト ニコライ・バーグマンが考える誰もが心癒やされるガーデン デンマーク出身のフラワーアーティスト ニコライ・バーグマンさん。ボックスに花を敷き詰めた‘フラワーボックス’を生み出し、国内外に多数のフラワーブティックを展開する、今をときめくフラワーアーティストです。 20年以上日本に暮らし、切り花の世界で培った感覚を“ガーデン”という形を用いて新たに表現。アーティストとしての次なるステージをここ箱根でスタートさせました。 エントランスから見上げた風景。きらきらとした風景に心躍る。* 9,000坪もある手つかずの森を極力そのまま生かし、9年の時間を費やしながら自ら仲間と開墾してつくった『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』。一昨年の2022年4月にオープンしました。緩やかな傾斜が続く敷地内では、散策路を歩きながら自生する植物や鳥のさえずり、新鮮な空気が味わえ、多くの人々が自然を求め訪れています。 箱根はアジサイの名所ですが、園内の約2,000株ものアジサイは、バーグマンさんが植えたもの。7月中旬頃が見頃。 バーグマンさんはかねてより「日々得られるインスピレーションを形にして永続的に残したい」という思いを抱きながら、それにふさわしい場所を探していました。そんなとき、箱根の土地を大切に扱ってくれる人を長年探していた地主さんに出会ったことで、庭づくりの計画が進展。そして、9年の歳月を費やして完成したのが、『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』。「身近な自然を新たな視点で味わってもらいながら、僕の大好きな箱根ももっと知ってもらいたいんです」とバーグマンさん。 デンマークの国土は平らで、最高地点でも海抜わずか173mほどしかないため、日本の連なる山々はとても新鮮で、海抜600mの箱根もとても魅力的でした。この起伏に富んだ地に、デンマークの豊かな自然や慣れ親しんだ近所の農園、家族の庭など、心の原風景を映し出し、日本とデンマークの自然を融合させています。 敷地中に生茂る約2mもあるクマザサを刈って設けた平らな広場。デンマークのアウトドア家具ブランド『SKAGERAK(スカゲラック)』のファニチャーを点在させているので、ここでランチを食べたりお茶をしたりしても。* 風景をデザインするだけでなく、サステナブルであることも大切にしています。例えば、伐採したクマザサは短くカットして、園路をマルチングするチップとして活用。雨後に水がはけやすいほか、ふかふかとして歩きやすいなど利点がいっぱいです。 倒木の幹は花台に、枝葉はガーデン内のオブジェの材料として活用しています。バーグマンさんの豊かな発想は、生命の循環を意識することからも生まれています。 切り株や古い木の根元に着いたさまざまなキノコ。自然な森の姿に出会える。 「箱根には、箱根特有の色や香りのある独自の自然が息づいているんです。ユニークな生態の保全を第一に、自然と融合できる機会を提供しつつ、癒やしと新しい発見、インスピレーションを得られるような場所を目指しています」。 枯れ枝をスクエアにまとめたものと、ツゲのトピアリーをリズミカルにレイアウトした、見せ場となっている造形的なシーン。 左/木のツルを繭型に編んで吊るした、不思議な雰囲気を醸すオーナメント。中/折れた木の枝を束ねて作ったオブジェ。左/伐根したクマザサの根をボール状にまとめたオブジェ。 左/梅の剪定枝を園路脇の柵に活用。ところどころに芽吹いた葉が見られる。中/枯れ枝や剪定枝を鉢植えのマルチに活用。サークルを描いて施すところが、やはりデザイナーならではの小技。 右/流れるように並べられた本小松石。アーティストらしい小技があちこちで見られる。 パビリオンが感じさせるフラワーアーティストが紡ぐ洗練 自然に親しみながら木漏れ日の輝く園路をたどると、空間で都会的な雰囲気を放つパビリオン(グラスハウス)が出現します。黒いフレームの北欧の雰囲気がたっぷり感じられるガラスの温室。バーグマン氏が気に入っているデンマークのメーカー『JULIANA社』のものです。色は森の中で悪目立ちしないブラックをセレクト。 最初に出会うショップパビリオンは、バーグマンさん氏がセレクトした草花を販売するコーナー。初夏は大好きなアジサイをメインに、白・ブルー・紫・ピンクの花が、『SKAGERAK』のファニチャーとともに、洗練されたディスプレイで並べられていました。 マメツゲのトピアリーが、都会的なデザイン性を加えている。 パビリオン内には、見頃を迎えているあでやかな植物が、効果的に配置されています。これらは盛りを過ぎたら切り花のように捨てるのではなく、ほかの場所で養生してまた見頃を迎えたらディスプレイに出していますが、このスタイルをバーグマンさんは「モバイルガーデン」と称し、飾るだけでなく、植物の健やかな栽培・生育にも意識を向けています。 ウッドデッキを斜面側に設置した、一番高い場所にある見晴らしのよいバレービューパビリオン。 イベント時などは、バーグマンさんの豪華なアレンジが見られることも。 北欧の洗練が香る心にくい演出をチェック! パビリオンだけでなく、園内あちこちに散りばめられたデンマークらしいデザインも見逃せません。最も効果的なのがフォーマルな印象が強いツゲやコニファーのトピアリーのレイアウト。一般的には野趣に富んだ空間ではほとんど用いられませんが、あえて異なるスタイルのものを導入させることで、自然な風景を洗練されたシーンまで昇華させることができるのです。これをさりげなくやってのけるのは、バーグマンさんだからこそ。クマザサが茂る原生林に見事に溶け込ませています。 急な傾斜になっている場所に設けられた蛇行する階段は、グラスハウスと合わせてブラックにペイント。北欧らしいしつらい。 園路の分岐点にもゲッケイジュのトピアリーやツゲのコンテナが。箱根の自然に不思議とマッチしている。 大きなコンテナがシンメトリーに置かれた、新たな空間への入り口。自然と相反するスタイルも、コンテナの色形・質感をうまく選べば、こんなにも素敵によくなじむ。 園内には、『SKAGERAK』などのファニチャーがポイントで設置されています。手触りのよいチェアでくつろぎながら、自然の息づかいを感じてみましょう。 北欧インテリアが用いられたカフェで、こだわりのメニューを味わって 散策のあとは、エントランス奥にある『ノム ハコネ(NOMU hakone)』で、オーガニックコーヒーとこだわりのスイーツでひと休みを。心地よい陽光が差し込む空間には、デンマークの老舗家具ブランド『フリッツ・ハンセン(FRITZ HANSEN)』や、照明ブランド『ルイス・ポールセン(LOUIS POULSEN)』など、スカンジナヴィアスタイルを取り入れており、北欧のくつろぎ時間を楽しむことができます。 北欧らしいブラックの建物の中は、あたたかみにあふれる素敵なしつらい。 カフェでは、ガーデン内の倒木を切り出してバーグマンさん自らデザインした、無垢のテーブルを使っています。すべての人や物に感謝するバーグマンさんの精神が、あちこちで見られます。 「箱根の素材をふんだんに使用したデンマークらしい料理」をテーマに、箱根周辺で育った野菜や果物などを取り入れたサラダやスイーツを提供。国産小麦にこだわったパンは自家製発酵をさせて、毎日キッチンで焼き上げています。ここでしか味わうことができない季節のメニューをぜひ味わってみて。 またすべてのメニューは、ガーデン内のベンチや広々としたカフェパビリオンでいただけます。バスケットに入れてもらえるので、森の中でピクニック気分を味わってみても。 カフェ内には、『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』でしか購入できないさまざまなオリジナルグッズが揃う。またプリザーブドフラワーのボックスも販売。 カフェ横の段差にも、たくさんのツゲのトピアリーが。濃紺の背景に美しく映えているが、きれいに並べすぎないところがポイント。 アジサイが咲き誇る入り口からの坂道。アジサイは、ニコライ・バーグマンの南青山のフラワースクールで花部分を花材として使った株を植えたもの。無駄をせず、循環させることを徹底している。* フラワーアーティスト ニコライ・バーグマンの感性と箱根の自然が共鳴した『ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ』。ここにつながるすべてのものを大切にする思いと、自然を守ることを核とした姿勢で育まれています。雨の日も楽しめるガーデン。ぜひ、四季折々に彩られる美しい風景を見に訪れてみてください。 ニコライ・バーグマン(Nicolai Bergmann)デンマーク出身のフラワーアーティスト。20年以上日本を拠点として活躍し、現在、国内外に多数のフラワーブティックを展開している。日本の伝統、文化、風土から得られる和のインスピレーションとデンマーク(洋)スタイルと融合させたデザインに定評がある。 【Garden Data】 ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ神奈川県 足柄下郡 箱根町 強羅 1323-119TEL: 0460-83-9087https://hakonegardens.jp/開園時間:10:00~17:00休園日:水曜日 (水曜日が祝日の場合は開園し翌木曜日を休園)アクセス:箱根登山電車・「強羅駅」下車→箱根登山バス・観光施設めぐりバス「ニコライ バーグマン 箱根 ガーデンズ」バス停下車すぐ。「強羅駅」からタクシーの場合約5分。車の場合は、御殿場ICから国道138号→国道733号経由(22km)で約40分。箱根湯本から国道1号→強羅駅→国道733号経由(10km)で約25分
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神奈川県
アジサイ(紫陽花)が300種咲く!プロが育てるから花数が違う「横浜イングリッシュガーデン…PR
首都圏屈指の300品種のアジサイが主役になる季節 左/オレンジのバラ‘イージー・ダズ・イット’とアジサイ‘霧島の恵み’。右/木に絡む2種のバラ‘ スーパー・エルフィン ’と’万灯火’と、株元ではアジサイ‘紅てまり’や’アジアン・ビューティー’などが次々開花。5月中旬の様子。 2,200品種、2,800株ものバラが4月下旬から咲き継ぎ、2023年も多くの人を魅了してきた横浜イングリッシュガーデン。5月中旬からは、主役が遅咲きのバラからアジサイへとバトンタッチして、景色が日々変わっています。 左/ピンクのバラ‘ローゼンホルム’とクレマチス’ブルー・エンジェル’、ホタルブクロがコラボ。右/8mのオウシュウナラに赤バラ’ゾマーアーベント’ が咲くダイナミックな風景。5月中旬。 ‘ローゼンホルム’や‘ゾマーアーベント’など最晩生のバラが咲く頃になると、庭のあちこちで存在感が出てくるのがアジサイです。空のように爽やかなブルーや燃えるような真紅、チャーミングなピンク花など、個性溢れる300もの品種が日毎に色づいています。 一度訪れたことがある方は、「あんなにバラが咲いていた、同じガーデンとは思えない!」と驚くほど。日ごとに存在感を増すアジサイは、6 月中旬に最盛期を迎えます。 その頃になると、再び花を咲かせるのはバラの二番花です。ひたすらゴージャスだった一番花に比べると少し控えめながら、ガーデンに彩りを添えています。バラからアジサイに主役が移り変わる5月下旬〜6月上旬と、バラの二番花が咲き始める6月中~下旬は、バラとアジサイが一緒に楽しめる贅沢なとき。多くの植物が生き生きと育つ横浜イングリッシュガーデンならではの景色に出会えます。 花の名にも注目したい個性あふれるアジサイの競演 ‘恋物語’ 白に赤の覆輪が美しい八重手鞠咲き。早咲きで、花付きがよく、育てやすい。完成度の高い品種。 花弁の縁をくっきりと紅に染めるのは‘恋物語’。 花の中に青い十字が浮かび上がる‘水凪鳥(ミズナギドリ)’、そして名前の通り! と言いたくなる花姿の‘ポップコーン’など、どのアジサイも美しく、花名も魅力的。歩を進めるたびに出会う個性あるアジサイの数々をじっくり楽しんでください。 左/花弁(萼片)の縁が丸くカールする‘ポップコーン’。右/花(萼)の中心に青い十字が浮かび上がる‘水凪鳥(みずなぎどり)’。 横浜イングリッシュガーデンに咲くアジサイたち。左から時計回りに/手鞠歌、マジカル・ルビー・レッド、ヒメアジサイ、メイアンジュ、小町、ラブ・ユー・キッス、サブリナ、ゼブラ・フラミンゴ。 夏のガーデンフラワーと咲き競う最高品質のアジサイ 全国各地のアジサイの名所とはひと味違う花景色が評判の横浜イングリッシュガーデン。その理由は、「庭園」という空間でアジサイが咲いているからです。アジサイだけが咲く名所も圧巻ですが、ここでは例えば、6月中旬からデイ・リリー(ヘメロカリス)、ユリ、アカンサスなど、さまざまな花とアジサイの奏でるカラーハーモニーを楽しむことができます。 庭園の権威ある世界大会で優秀庭園賞を受賞している横浜イングリッシュガーデンのガーデナーたちは、アジサイの栽培技術に長け、独自の技術で花を咲かせています。 そのため、ほかでは見られないようなビッグサイズのアジサイが、園内を進むごとに出現。その大きさとともに、圧倒的な花の数にも驚かされます。 映えスポットが出現! 期間限定のアジサイ・ディスプレイ 2023年のアジサイ・フェスティバルの様子。 「アジサイ・フェスティバル」期間中は、毎年“映えフォトスポット”として人気の高いディスプレイがローズトンネルに出現。今年は、桃・紫・青などのアジサイカラーの傘が頭上を彩り、最新品種のアジサイが数々並びます。日本原産の植物であるアジサイは、プラントハンターたちによって欧州に渡り、美しく改良されて日本に里帰りしました。やがて日本でも改良が進み、今現在は国産育種の全盛期を迎えています。そんな「アジサイの進化」をガーデナーたちが花鉢で表現。どんな花風景が演出されるのか、ぜひ園内でご覧ください。 庭散策の後は、冷たい花モチーフのスイーツでクールダウン! 花々の美しさで癒やされたら、併設するカフェ「YEG Original CAFE」でクールダウンがおすすめ。アイスコーヒーやサンドイッチなどのカフェメニューのほか、特に人気なのが、見た目も可愛い「フラワーソフト」。バラとバニラのミックスソフトに、エディブルフラワーをカラフルにトッピングした、ここでしか味わえない美味しさです。また、アジサイ・フェスティバル期間中は、アジサイ色の爽やかな飲み物が2種登場! 「ブルーアジサイ」はラムネ、「レッドアジサイ」は巨峰のクリームソーダで、どちらもリフレッシュできる飲み物です。パラソルの陰で花々の香りに包まれながら、ガーデン散策の余韻に浸るティータイムを過ごせます。 日が傾く夕方も庭散策におすすめの時間帯です。日陰のベンチに腰掛けて花々に囲まれる贅沢な時間をお過ごしください。左上に雲のようにふわふわの花穂をつけるのは、花木のスモークツリー。 本格的な夏に向けて、アジサイに混じってスモークツリーやヘメロカリス、ユリ、アカンサスが咲き継ぎ、訪れるたびに発見のある名園「横浜イングリッシュガーデン」。庭づくりの参考に、花知識を深めるために、また、大切な人と過ごす癒やしのデートスポットとして、ぜひお出かけください。
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栃木県
美しすぎる!バラと草花が織りなす美しい初夏のあしかがフラワーパーク
バラと草花が共演するあしかがフラワーパークのローズガーデン あしかがフラワーパークといえば、米国CNNで「世界の夢の旅行先10箇所」に選ばれた藤の名所として有名。長い花房を連ねた大藤の幻想的な風景は圧巻ですが、じつは藤の花後も素晴らしい風景が展開しているのです。その一つがバラ。500種2,500株のバラが咲き誇りますが、特筆すべきはその数ではなく草花と織りなす花景色。美しく咲き誇るバラを背景に、さまざまな草花がバラに合わせてコーディネートされています。 例えばピンク&赤系でまとめたこのコーナー。鮮やかなつるバラ‘アップルシード’を背景に、同系色のジギタリスが長い花穂を連ね、ブロンズカラーの葉のペンステモンがシックな雰囲気をプラスしています。その株元でワインレッドの丸い花をふわふわと咲かせているのはスカビオサ。銀色にフワッと輝くように咲くのはボリジです。花色だけでなく、草丈や草姿の個性を生かした植栽が随所で見どころを作っています。 このエリアではつるバラと草花の豊富な組み合わせがいくつも展開しており、その巧みな配色は庭を作る人の参考にもなります。左は赤紫色で半八重咲きの‘ナイト・オウル’と白いクレマチス‘フルディーン’のドラマチックな組み合わせ。右はピンクのコロンとした花がかわいい‘ジャスミーナ’とペンステモン、ホルデューム・ジュバタムの組み合わせ。もう少し季節が進むと、細長い茎に丸いつぼみをつけているアリウムが咲き出し景色が変化します。 日の光に穂を輝かせるホルデューム・ジュバタムが、幻想的な風景を展開するローズガーデンのロングボーダー。ホルデューム・ジュバタムのようなグラスは脇役として活躍することの多い素材ですが、日が傾き始めるこの時間は圧倒的な美しさで主役に躍り出ます。濃いピンク色の小花が群れ咲くシレネ‘ファイアーフライ’と組み合わせることで明暗のコントラストが強調され、より美しさが極まります。グラスは光を受けることでその美しさを最も発揮する素材。ここではそのホルデューム・ジュバタムが最も美しく見える午後の光に合わせて花が選ばれているのか、アプリコットカラーのジギタリスやバラが多く植栽され、日が傾き始めた途端、庭は魔法がかけられたような美しさを放ちます。 白いオルレア・ホワイトレースを背景にアプリコットカラーのジギタリスが咲くやさしいワンシーン。 歩むごとにバラと草花の色が美しく展開するロングボーダー。サルビア・ネモローサ‘カラドンナ’の紫色は差し色効果抜群。 フォトスポットとして人気のローズトンネル。トンネルの向こうにもつるバラが彩る高いフェンスが背景となり、自撮りおすすめの映えスポットです。ところどころに置かれたベンチのそばには、こんもり仕立てられた鉢植えのクレマチスも彩りを添えます。 花色を堪能する「四季彩のステージ」 大きな木々に囲まれ、木漏れ日の下で花々が咲く「四季彩のステージ」。白・青・黄色・ピンクというように花色でエリアが分けられ、カーブする小道と連なり植栽帯が設けられています。色を揃える一方で、花形や草姿の違いで景色が単調にならないように草花が選ばれており、立体的な花壇は遠くから眺めても、小道を歩いてみても楽しいエリア。木々の緑をキャンバスに花色がよく映えます。 小型のデルフィニウムの群生。 洗練されたロマンチックな組み合わせのピンクの花のエリア。 水辺のバラが美しい「バラの咲く島」 春は美しい藤で彩られた「うす紅橋」を渡ると、水に囲まれて浮かぶ「バラの咲く島」へ辿りつきます。水辺に赤いバラがせり出すように植えられ、水面にうつる花景色も綺麗。水鳥の姿も見られ、優雅な非日常空間を体験できます。 水路の上を鮮やかに彩るローズトンネル。水音も心地よいリラックスエリア。 バラの見頃はまだまだ続き、バラに続いて次第にハナショウブやアジサイも加わり始めます。季節ごとに移り変わる圧巻の花景色を堪能しに、あしかがフラワーパークへお出かけしてみませんか。
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東京都
東京・根津美術館で「燕子花図屏風」を見て、庭園のカキツバタと出合う
カキツバタの記憶 根津美術館の庭園内、茶室・弘仁亭近くの池に咲くカキツバタ。一度咲いた茎から、次のつぼみが花開き二度咲きとなる。 10年近く前に、友人に誘われて東京・青山にある根津美術館に、尾形光琳筆の「燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ)」を観に出かけたことがある。その折の屏風の佇まいもさることながら、庭園に咲くカキツバタが見事だったことが記憶に残っていた。 庭園内の石橋の上から見たカキツバタの群生。水面に写る姿が優美だ。 屏風は毎年、カキツバタが咲く4月から5月にかけての約1カ月間公開される。今年(2023年)はいつになく開花が早いという花便りが届き、改めて国宝・「燕子花図屏風」と庭園のカキツバタを見てみたいと、根津美術館を訪ねた。 展示室にて 特別展会場に展示された、尾形光琳筆「燕子花図屏風」(特別に許可を得て会場撮影をしています)。 美術館の1階の広い空間の中央に置かれた「燕子花図屏風」はひときわ輝いて見えた。屏風の公開に当たっては、毎年テーマが決められ、今年は「光琳の生きた時代1958-1716」という切り口で構成されている。宮廷や幕府主導の文化の時代から、町人が担い手となって花開いた元禄文化の時代へと、尾形光琳が生きた約60年間の江戸の美術史を切り取る試みだ。 光を放つ、燕子花図屏風 「燕子花図屏風」。6曲1双の屏風は、見る角度によって、躍動する様子が違って感じられる。 総金地に描かれた群青色の花と緑青色の葉。リズミカルで大胆な構図は、現代に生きる私たちにとってもモダンで斬新に感じられる。屏風を数える単位は隻(せき)で、1隻の中に縦長の画面を6枚つなぎ合わせたものが6曲屏風。6曲屏風が2隻で一組になっているこの屏風は6曲1双とされる。 国宝・「燕子花図屏風」 尾形光琳筆 日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵(上/右隻 下/左隻) 写真提供:根津美術館 右隻には根元からすっくと立つ花の群生が描かれ、左隻では根元をほとんど見せていない。写真家の眼からは、右隻は広角レンズでやや下から仰ぎ見た図、左隻は望遠レンズでやや上から見た図、とも思える。この対照的な構図によって、燕子花は躍動し、空間は無限に広がっている。 総金地に群青と緑青の2色の岩絵具をふんだんに使い、色彩の濃淡によって幽玄の世界を現出させている(右隻の部分)。 金泊の部分は光を反射し、見る角度によって艶めかしくも、冷淡にも見える。2色の岩絵具の濃淡だけで燕子花の生気を描き出すという色彩感覚もまた驚異的だ。 尾形光琳の生涯 茶室・弘仁亭側から見たカキツバタの群生。 江戸時代を代表する絵師のひとり、尾形光琳(1658-1716)は、伝統的な大和絵に斬新な構図を取り入れ、のちに琳派と呼ばれる画派を確立した人物として知られる。 1658年に京都でも有数の呉服商の家に生まれ、幼いころからさまざまな絵画や工芸に触れて育った。30代前半から絵師の道を志し、本格的に活動を始めたのは40代になってから。「燕子花図屏風」は40代半ばの代表作とされる。その後、「紅白梅図屏風」(国宝)、「風神雷神図屏風」(重要文化財)などを制作。1716年に没するまで、わずか10数年の制作期間であった。 尾形光琳晩年の筆「夏草図屏風」。ここにも燕子花が描かれている。日本・江戸時代 18世紀 根津美術館蔵 写真提供:根津美術館 燕子花図屏風に描かれた花の群生は一部に染物で使う型紙の技法が使われ、同じ形が反復されている。これは子どもの頃から着物の意匠に接してきた光琳ならではの発案だろう。燕子花図は、平安時代前期に書かれた「伊勢物語」第九段「八橋」に想を得ているという。光琳が好んで描いた花の背景には、彼が思いを馳せた和歌や物語があることを知ると、鑑賞の趣もまた変わってくる。 根津美術館の庭園 左/池の縁に添って配されたカキツバタは、群生とは違った雰囲気を醸し出す。右)庭園南西の、ほたらか山と名づけられた石仏や石塔を集めた丘。 根津美術館を訪ねる楽しみの一つが庭園散歩。広さ2万㎡の起伏に富んだ庭園をめぐると、都会にいることを忘れるほど、深山幽谷の気配を感じることができる。美術館は実業家初代根津嘉一郎氏の古美術コレクションを保存し、展示するために作られたが、庭園もまた彼の意向に沿ったもので、いわば自然が生み出す芸術といえるものだ。その最たるものが、水辺のカキツバタの群生だ。庭内には灯篭や仏像などの石造物が100体ほど配され、薬師堂の竹林、初夏に色づく紅葉など、印象的な景観が展開する。 庭園散歩の途中立ち寄った、茶室・披錦斎(ひきんさい)のお抹茶。 庭内には4つの茶室があり、その中の一つで抹茶を味わった。カキツバタをかたどった練り菓子が供され、眼も舌も愉しんだひととき(今回展期間中のみ)。 左/孟宗竹の林を背景とした薬師堂 右/茶室・斑鳩庵へと続く小道。 庭内を悠然と散歩するサギ。毎年どこからか飛翔してくるという。 カキツバタの群生 池の周囲を360度めぐると、カキツバタの群生のさまざまな表情が伺える。 カキツバタは、庭園の中央部に位置する池の一画に群生している。開花の最盛期に訪れることができたのは幸運だった。池をぐるりと巡り、違った角度から見ると、花の趣もまた変わってくる。私が訪ねた日にはサギが園内を悠然と散歩し、池には水鳥が遊んでいた。どこからか飛来してくるのだという。 初夏の日差しを受けて、凛として華やかなカキツバタの姿は印象的だ。 カキツバタはアヤメ科アヤメ属の植物で、アヤメと違うのは、アヤメが乾燥した場所を好むのに対して、カキツバタは湿地を好む。カキツバタのほうが葉幅が広く、また花弁の付け根に網目模様があるのがアヤメで、カキツバタには1本の白い筋が見られる。 今も水が湧き出ている「吹上げの井筒」のある池と、カキツバタ。 庭園のカキツバタが池の水に移る様は、たとえようもなく優美。さらに尾形光琳の屏風絵を見た後の散策には格別なものがある。この時期ならではの贅沢な時間を味わうことができるのだ。 Information (時計回りに)美術館外観、エントランスへの道、NEZUCAFE、美術館ホール。 根津美術館 特別展「国宝・燕子花図屏風 光琳の生きた時代1658-1716」2023年4月15日(土)~ 5月14日(日) 住所:107-0062 東京都港区南青山6-5-1電話:03-3400-2536開館:10:00~17:00(入館は16:30まで)、 5月9日~5月14日は19:00まで開館(入館は18:30まで)休館:月曜日(祝日の場合は開館し、翌日休)、展示替期間、年末年始入館料:[特別展] 一般1,500円、学生1,200円(オンライン日時指定予約) 当日券 一般1,600円、学生1,300、小・中学生以下は無料 (*混雑状況によっては当日券を販売しない場合もあります)アクセス:地下鉄銀座線・半蔵門線・千代田線、表参道下車、徒歩約10分HP:https://www.nezu-muse.or.jp
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至高のバラ「ブルガリアン・ローズ」が横浜イングリッシュガーデンに登場
世界一のバラの香料を生産するブルガリア「バラの谷」 朝日を浴びて輝きだすバラの谷。nikolay100/Shutterstock.com ブルガリアの中部バルカン山脈の南に位置し、スレドナ・ゴラ山脈との間に挟まれた東西約140kmの細長い渓谷、通称「バラの谷」。5月、吸う息も吐く息さえもバラ色に染まりそうなほど、谷はブルガリアン・ローズのピンク色で埋め尽くされます。ブルガリアン・ローズはロサ・ダマスケナ、カザンラクの名前でも知られるオールドローズの一つで、樹高は人の背丈程度。春に咲くピンク色のクシュクシュとした花は愛らしい姿ですが、何よりも人を引きつけるのはその香りです。ブルガリアン・ローズの香りは「ダマスク香」というバラを代表する芳香で、甘く芳しい香りはさまざまな現代の園芸品種にもその性質が受け継がれています。 花は一つひとつ丁寧に手摘みされる。macondo/Shutterstock.com バラの谷では何世紀にも渡りバラの栽培が行われ、国家事業の一つとしてローズオイルが生産されてきました。北海道とほぼ緯度を同じくし、湿気が少なく冷涼なこの地で生産されるローズオイルは、その品質の高さから「黄金の液体」と称され、シャネルなど多くのメゾンが自社の香水にブルガリア・ローズオイルを用いています。高い品質を維持するために、ブルガリアにはバラの花やローズオイルの栽培者・扱い業者の権利と義務を法制化したバラ製造に関する法律があり、世界に誇る品質が守られてきました。 摘み取られたブルガリアン・ローズは袋詰めされ、すぐに抽出所へ。RaDoll/Shutterstock.com ブルガリア国立バラ研究所は品質維持のための中枢機関で、ローズオイルやローズウォーターの分析・評価・認定を行うとともに、その効果効能についての化学的・薬理学的な研究が進められてきました。ダマスクローズは他国でも栽培されローズオイルの生産が行われていますが、生産地や抽出の技術などによってローズオイルに含まれる成分には大きな差が生まれます。 Anita Ben/Shutterstock.com バラの谷のローズオイルは275 種類以上ものマクロ、ミクロ成分を含有し、複合的かつ絶妙な構成配分であることが分かっています。ゆえに調香師の世界では、単にダマスクローズオイルではなく、「ブルガリアのダマスクローズオイル」を用いることが、調香において重要なポイントであることは常識です。「至高の香り」と呼ばれるバラの谷のローズオイルは香水として用いられるだけでなく、その多彩な微量要素の働きにより疾病治療や美容、女性特有の不調などに古くから利用されてきました。 ブルガリア国立バラ研究所からYEGに寄贈された特別な1株 そんなバラの国、ブルガリアから神奈川県横浜市のローズガーデン「横浜イングリッシュガーデン」にブルガリアン・ローズがやってきました。バラの谷の東端に位置する街、カザンラクの名前でも呼ばれるこのバラは、日本でも苗が市販されていますが、今回やってきたのは駐日ブルガリア共和国大使館マリエタ・アラバジエヴァ大使を通し、ブルガリア国立バラ研究所から寄贈された貴重な1株。2023年、4月28日(金)、マリエタ・アラバジエヴァ大使とテレビ神奈川熊谷典和社長によって植樹式が執り行われ、ブルガリアン・ローズが横浜イングリッシュガーデンの芝地エリアに根をおろしました。 左から「横浜イングリッシュガーデン」スーパーバイザーの河合伸志さん、ブルガリア大使、テレビ神奈川熊谷典和社長。 ブルガリア大使のバラの楽しみ方 バラはブルガリアの国花で、女の子の名前にバラが使われていたり、ブルガリアでは人々の暮らしにとても身近な存在だといいます。大使ご自身もバラが大好きで、大使公邸にもカザンラクが植えられています。 「この季節は朝、カザンラクの香りをかぎに庭に出るのがとても楽しみなんです。バラは観賞するだけでなく、ブルガリアではバラジャムやバラの蜂蜜など、食卓にもしばしば登場します。これらは胃によいことでも知られ、私はパンケーキやヨーグルトに入れて食べるのが好きです。ローズオイル生産の副産物として抽出されるローズウォーターは最も身近な化粧水で、肌の水分を保持するのにとてもいいんですよ」(マリエタ・アラバジエヴァ大使)。 植樹式当日は、駐日ブルガリア共和国一等書記官のペトラ・ニコラエフ氏によって、ブルガリアの観光と歴史を紹介する講演が開催。1Kgのローズオイルを得るために3,000kgものバラの花びらが必要であることや、毎年開催されるバラ祭りについて、またバラと並んでブルガリアの特産品であるヨーグルトを使った夏のスープなどが紹介され、ブルガリアの奥深い魅力に触れる機会となりました。 この投稿をInstagramで見る 横浜イングリッシュガーデン-公式アカウント(@yokohama_eg_official)がシェアした投稿 また、園内の芝地エリアでは軽快な音楽とともにブルガリアの伝統舞踊が披露されました。その様子を上記の公式インスタグラムで紹介しています。 バラがより香る時間帯の「早朝プレミアム開園」実施中! 4/22(土)~5/21(日)の期間中には、毎年好評の「早朝プレミアム開園」も実施しています。期間中は、通常の開園時間より2時間早く、8時より開園。清々しい早朝の園内で、ブルガリアからきた貴重なブルガリアン・ローズの香りを堪能してみませんか。植樹した木は芝生エリアにあり、まだまだこれからつぼみが開きます。ただし、春の一季咲きなのでこの季節の開花をお見逃しなく。売店にもブルガリアン・ローズ製品の特設コーナーを設置し、ブルガリアン・ローズの化粧水やジャム、蜂蜜を販売しています。 ブルガリア大使も好んでいただくバラの蜂蜜は、売店で購入できます。 今年のバラの開花は、これまでの温暖な気候の影響で、例年になく全体的に早いペースとなりそうです。ブルガリアからやってきた貴重なブルガリアン・ローズとともに、横浜イングリッシュガーデンにはさまざまな香りのバラが咲いています。バラの香りにどっぷり浸かるひと時は、この季節だけの贅沢。バラの香りを堪能しに、ぜひ横浜イングリッシュガーデンへお出かけください。 ●『見渡す限りバラが咲く! 特別な時間を過ごせるバラ園「横浜イングリッシュガーデン」』では、「ローズ・フェスティバル2023」の見所をご紹介しています。
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神奈川県
見渡す限りバラが咲く! 特別な時間を過ごせるバラ園「横浜イングリッシュガーデン」PR
横浜イングリッシュガーデンが「一年で最も美しい季節」到来 入口からおよそ50mにわたりバラを這わせた大型アーチが連なる「ローズ・トンネル」。淡いピンクの‘マニントン・マウブ・ランブラー’やサーモンピンクの‘フランソワ・ジュランヴィル’、紫の‘アイヴァンホー’などが頭上を埋め尽くします。写真は、昨年5月中旬の様子。現在の庭の様子やバラの開花状況は、InstagramやHPでご確認ください。 例年より一段と早くバラが次々と咲き始め、一年で最も美しい季節が「横浜イングリッシュガーデン」にもやってきました。園内に一歩足を踏み入れれば、目の前には無数のバラが大アーチを縁取る、夢のようなローズトンネルが皆さまをお出迎えする時期ももうすぐです。そして右に進めば、ワインレッドやパープル、ダークレッドのバラとクレマチスが混ざり咲き、足元にはブロンズリーフの植物がコラボするシックな印象の「ローズ&クレマチスガーデン」です。 「ローズ&クレマチスガーデン」に植栽されている多くのバラは、素晴らしいダマスク香を放ちます。 ‘ラプソディー・イン・ブルー’や‘ベルベティ・トワイライト’、‘真夜’……。ぜひ香りを確かめて。 圧倒的な花に包まれて時間を忘れる癒やしの庭 ‘パーパ・ジョン・ポールⅡ’や‘プリンセス・オブ・ウェールズ’などの白バラを主役に、白色の宿根草、白斑入りの植物を組み合わせた「ローズ&ペレニアルガーデン」。白花に囲まれるホワイトガーデンが時を忘れさせてくれます。 さらに先へ進み、アーチを抜けると、白バラが眩しく輝く別世界に迷い込んだり……。どこも見渡す限りバラが咲き、贅沢な時間が過ごせるガーデンです。 この季節は、バラだけでなく株元に茂る宿根草などの草花も美しい花々を咲かせています。バラに寄り添うように咲くオルレア、思わず触りたくなるふわふわなラグラスの穂、風に揺れるたおやかなアグロステンマ、お互いを引き立て合うクレマチスの花々……。バラの開花とぴったり合う草花が選ばれており、庭づくりのヒントもいっぱい見つかります。 世界最高水準の管理下で育つバラたち 「横浜イングリッシュガーデン」に咲くバラは、約2,200品種 2,800株に上り、国内外でも屈指のコレクション数を誇ります。今では希少な古い品種をはじめ、よそでは見ることができない国産品種、さらには最新の品種まで多彩なセレクション。これら多くのバラたちを最高のパフォーマンスで咲かせるには、管理のテクニックが必要です。 スーパーバイザーの河合伸志さん率いる「横浜イングリッシュガーデン」のガーデナーたちによるバラの管理水準の高さは、世界的にもトップクラスと評され、海外の専門家が見ても驚くようなレベル。最高品質のバラが、それぞれの品種本来の特性を発揮し、景色として楽しめるだけでなく、一つひとつの品種をじっくり観賞できるのも、この庭の大きな特徴です。 何度も訪れたくなるバラの開花リレー 淡いピンクやモーヴカラーのバラを主役に、ピンク、青、紫などのハーブ類、ライムリーフの植物などを組み合わせた明るい色相の「ローズ&ハーブガーデン」。 2023年の横浜イングリッシュガーデンでは、4月上旬から極早生のバラが咲き始めました。今年は例年に比べ一段と開花が早く、ゴールデンウィーク前半には多くのバラが開花、連休明けには開花のピークを迎えます。ゴールデンウィーク前後は気温がまださほど高くないため、花色がしっかりと発色し、また最も力のある房の中央のつぼみが開く時期。一輪の花をじっくり眺めたり、クローズアップして写真を撮るのに最適なタイミングです。 毎年、新しいバラが追加植栽され、進化した景色が楽しめます。左は、庭の奥へと誘う遅咲きのつるバラ‘ホワイト・イメンジー’が絡むアーチ。右は、8mの樹木に絡めた赤バラ迫力の風景を作ります(写真は、2022年6月上旬)。 5月下旬になると最晩生のバラが咲き始めます。この頃にはローズトンネルの突き当たりにピンクのバラの壁が現れ、池の脇には赤いバラの柱が出現。8mの高木に絡むバラや白花がふわりと咲くアーチなど、訪れる度に景色が変化し、見どころが絶えません。そして同時期に、庭の主役の座はそっとアジサイたちに引き継がれ、季節は巡ります。バラとアジサイが一緒に楽しめる貴重な時期もお見逃しなく。 バラの時期限定「早朝プレミアム開園」のお楽しみも! 情熱的な赤いバラが主役のエリア「ときめきガーデン」。 通常閉じられている「ときめきガーデン」がバラの時期限定でオープン。ときめく縁結びのガーデンになればと願いを込めて作られた、情熱的な赤いバラが主役のエリアです。‘恋心’や‘ラスティング・ラブ’など、恋愛にまつわるバラが多数植えられています。思い出に残るデートスポットとしておすすめです。 また、例年好評の「早朝プレミアム開園」も開催。時に露をまとい、シャキッとした新鮮な朝のバラは、ひと際美しい表情を見せます。また品種によっては、朝と日中では異なる印象の香りを放つ花があります。じっくりとバラの聞香をするのも通の楽しみ方。 朝の光は日中の光に比べると写真撮影に適していて、混み合わない早朝プレミアム開園タイムのみ三脚の使用も可能です。美しい写真をカメラに収めたい方には見逃せない期間、ぜひ早起きをして出かけましょう。 「早朝プレミアム開園」の開催は、4月22日(土)~5月21日(日)の期間限定です。朝8:00開園~9:30受付終了(10:00より通常開園)。料金は、当日の入園料 +「早朝プレミアム開園」イベント料金大人800円/小中学生400円/未就学児無料(年間会員はイベント料金800円のみ)。 ●窓口に並ばず入園できる「早朝プレミアム開園」の電子チケット(前売券)はコチラから購入いただけます。 <特別展示>Imperial Roses 〜皇室ゆかりのバラ展示〜 2022年の展示の様子。 例年人気の企画、皇室に由来するバラ「エンペラーズ・ローズ」が、本年も期間限定で展示します。美智子上皇后のバラ‘プリンセス・ミチコ’と‘エンプレス・ミチコ’、‘プリンセス・アイコ’など、全12品種の展示を予定。豪華な花々を一堂に観賞できる貴重なこの機会をお見逃しなく。 上段左から/‘ハイネス・雅’、‘ハイネス・愛’、‘プリンセス・アイコ’、‘プリンセス・ヒサコ’ 中段左から/‘プリンセス・サヤコ’、‘プリンセス・チチブ、‘プリンセス・ミチコ’、’プリンセス・ミカサ’ 下段左から/’プリンセス・ナガコ’、‘エンプレス・ミチコ’、‘プリンセス・ハナコ’、‘プリンセス・タカマツ’。ガーデン出口を出て右手奥「ヨコハマくらし館」入り口付近に開花期間中展示されます。 至高の香りのバラ「ブルガリアン・ローズ」を愛でる2日間! 昨年5月に駐日ブルガリア共和国大使館マリエタ・アラバジエヴァ大使と大使館職員の皆さまが来園したご縁で、駐日ブルガリア大使館よりバラ苗が寄贈されます。寄贈されるバラは、香料を取るために同国で古くより栽培されている「ブルガリアン・ローズ(ロサ・ダマスケナ、トリギンティペタラ、カザンラク)」で、本家本元より大使によって導入された貴重な株です。 ブルガリアン・ローズ(カザンラク) この「ブルガリアン・ローズ」の寄贈に合わせて、「ブルガリア・フェア in 横浜イングリッシュガーデン」を4月28日(金)・29日(土)の2日間限定に開催されました。 ブルガリアの魅力が詰まった貴重な2日間をお楽しみいただきました。 駐日ブルガリア共和国大使館より譲り受けた「ブルガリアンローズ」の記念植樹式を園内「ローズ&シュラブガーデン」芝生エリアにて行いました。 イベント報告記事はこちら『至高のバラ「ブルガリアン・ローズ」が横浜イングリッシュガーデンに登場』 民族衣装をまとったダンサーが「ブルガリア・フォークダンス」を披露 園内「ローズ&シュラブガーデン」芝生エリアにて、色鮮やかな民族衣装をまとったダンサーが「ブルガリアン・フォークダンス」を披露します。開催日時:4/28(金) 植樹式前後、14:00、15:00頃予定 4/29(土) 11:00、13:00、14:00、15:00頃予定 ※雨天時は変更。 セミナー「バラの国ブルガリア〜観光と歴史をめぐる〜」4月28日(金)14:00〜14:40 駐日ブルガリア大使館一等書記官であるペタル・ニコラエフ氏を講師に招き、ブルガリアの観光や歴史についてご紹介いただきます。参加費無料。ヨコハマくらし館イベントスペースにて座席数20席程で行います。また、4/28(金)・29(土)は、同場所でブルガリアを紹介する写真やパネル、民族衣装を展示。 ブルガリア刺繍のワークショップ 美しい色と伝統的な模様のブルガリア刺繍を作ります。参加費無料。講師:山美イレン氏(エンブロダリスタジオ羅美那)日時:4/28(金)・29(土)各日11:00〜15:00 所要時間:30分程(1回4〜5名程) 場所:ヨコハマくらし館イベントスペース 園内でお気に入りの香りを探そう! 豊潤な香りはバラの醍醐味 今回、駐日ブルガリア共和国大使館より譲り受けた「ブルガリアンローズ」は、香りのバラの代表ともいうべき存在であり、最も上質な香りのバラの一つです。その香りは、華やかでいわゆるバラらしい香り。花に顔を近づけて香りを深く吸い込めば、体全体がバラに包まれたかのよう。人々を幸福にするバラの香りに見せられて、バラの虜になる人も多くいます。横浜イングリッシュガーデンに咲くバラのなかにも、香りがよい品種が数々あり、咲き立ての香りを自由に味わえます。ぜひ、お気に入りのバラの香りを見つけてください。 スーパーバイザー河合伸志が選ぶ「横浜イングリッシュガーデン」に咲く香りのバラ5選 芳純(ほうじゅん) モダン・ローズで最もよい香りのバラの一つとされ、その名の通り豊潤なローズの香りがあり、同時に爽やかさも奥底に感じられる。化粧品会社によってこの香りをイメージした商品が誕生している。 アンブリッジ・ローズ 柔らかな色彩に豊満な印象のカップ咲きの花には、強いアニス(ハーブの一種)のような香りがある。やや薬臭い印象の個性的な香りのため、好き嫌いがはっきりと分かれる。 シルバー・シャドウズ グレーの陰影を感じる薄紫の花には、甘さと爽やかさを兼ね備えた香りがある。目を瞑りその香りを深く吸い込むと、新緑の森の中にたたずんでいるかのように思えてくる。 アンヌ=マリ・ドゥ・モランヴィル パールのような小さな花には不思議な香りがある。香りの研究者いわく「カメムシの香り」とのこと。怖い物見たさで、ぜひ嗅いでみるのも一興。まさかバラにこんな香りがあるとはと驚くかもしれない。 ドゥフトボルケ ボリュームのある大きな花には、熱帯の果実を思わすような濃厚な香りがあり、その強さに思わず頭がくらくらしそうになる。古くより香りの名花として知られる品種で、品種名は「香りの雲」の意味。 バラ満開の園内で優雅な時間を過ごそう 約2,200品種 2,800株のバラが咲く「横浜イングリッシュガーデン」に一歩入れば、そこは非日常の癒やしの空間。咲き立てのバラの香りを嗅いだり、日に照らされて輝く花々に出会った感動を写真に撮ったり、木陰のベンチで家族や友人、恋人と語らったり……。一年で最も美しいガーデンで、ぜひ今年一番の素敵な思い出を作ってください。 日が傾く夕方も庭散策におすすめの時間帯です。ベンチに腰掛け、バラ咲く風景を存分に眺める贅沢な時間をお過ごしください。
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神奈川県
春の新名所! 横浜「山下公園」の市民参加の球根ミックス花壇
見る人を一気に引き込む! 球根ミックス花壇づくりは今年で7年目 ピンクや白、オレンジ色のチューリップの間に、アネモネやヒヤシンス、スイセンが混ざり咲くこの花壇は、横浜市中区にある山下公園の北側(大さん橋側)の一角にあります。春風に揺られる花に、「わぁ、かわいいー!」と思わず駆け寄ってくる人が続出しています。 2027年開催の国際園芸博覧会「GREEN × EXPO 2027」に向けて、花と緑の取り組みを積極的に進めている神奈川県横浜市。2023年3月25日からは市内各所で花々の春の装いが楽しめる「ガーデンネックレス横浜2023」もスタートしました。その会場の一つが山下公園で、この花壇は横浜市民が参加しつくられています。 このエリアが毎年、多数のチューリップで彩られ、人々の目を楽しませるようになったのは2017年全国都市緑化フェアのメイン会場になって以来。チューリップやスイセン、ムスカリなど、開花時期の異なる春咲きの球根を数種混ぜて、ランダムに植え付けるこの手法は、オランダのガーデンデザイナー、ジャクリーン・ファン・デル・クルートさんのデザインや施工、手入れの考え方を山下公園らしくアレンジしたもので、当時、最新の花壇デザインとして話題になりました。 2017年に開催された全国都市緑化フェアの「球根ミックス花壇」。* 2017年の全国都市緑化フェアでは、ジャクリーンさんによるデザインの方法を学んだ横浜出身のガーデナー、平工詠子さんの指導のもと、市民連携花壇講座として公園愛護会の方々が花壇をつくられました。それ以降、平工さんの指導のもと毎年色合いが異なる球根ミックス花壇がつくられ2023年で7年目。この花壇づくりの手法は、横浜市にある他の公園でも実践されて、横浜市内各地が春の球根花で彩られています。 2023年2つのテーマの球根ミックス花壇見どころ ピンクが映える「春祭りおとめ」 4月5日の「春祭りおとめ」の様子。 山下公園の大さん橋側入り口から入ってすぐに目の前に広がる花壇のタイトルは「春祭りおとめ」。寒い冬から暖かな春への移り変わりを、青みがかったピンクから暖かなピンクへと変化していく花色で表現しています。 開花は2月下旬のミニアイリスと原種系のクロッカスから始まり、4月末ごろまで開花期が異なる品種がバトンタッチしながら見頃が長く続きます。 「春祭りおとめ」花壇には、クロッカス4種、ミニアイリス1種、ヒヤシンス2種、スイセン1種、アネモネ1種、チューリップ9種の合計18種が植えられ、4月上旬には上写真のように10種以上の花が同時に楽しめます。 <春祭りおとめの主な品種の特徴> ① 爽やかなラベンダーブルーのヒヤシンス‘アクア’。② 八重と一重が咲き、鮮やかなピンクのアネモネ‘セントブリッジドピンク’は、花びらにシルクのような光沢があるのも魅力。アネモネは、チューリップよりも開花期間が長く安価で、コスパもよいのでおすすめ。花後の丸いタネも観賞価値があります。また、葉の形がよく地面を隠すグラウンドカバーとしても役立ちます。「ヨコハマブルーガーデン」ではこの青花種を入れています。③ 八重の房咲きのスイセン‘チャフルネス’は、すっきりとした香りのよい品種。 ④ 受賞歴があり人気のチューリップ‘アプリコットビューティー’は、アプリコットからピンクに花色が変わるやや早咲き種。 ⑤ 花が大きく、花びらの中央が濃いピンクで炎のような色合いが特徴のチューリップ‘アフケ’。⑥ 八重の紫花のチューリップ ‘ブルーダイヤモンド’。八重咲きを入れるとボリュームが出ます。⑦ とても鮮やかで目立つ一重の赤花は、遅咲きのチューリップ‘ヨセミテ’。⑧ 先端が尖った純白花のチューリップ‘ホワイトライアンファター’は、ミックス花壇でもよく使う品種。遅咲きの中でも特に遅く、背が高く目立ち、花壇の最後のシーズンで爽やかになり、とてもよい仕事をしてくれます。 海と夕日がテーマカラー「ヨコハマブルーガーデン」 4月5日の「ヨコハマブルーガーデン」の様子。 「春祭りおとめ」花壇と隣り合い、港を背景に広がる花壇のタイトルは「ヨコハマブルーガーデン」。横浜のシンボリックカラーである爽やかなブルーと、美しい夕日のオレンジから連想したコンビネーションで、横浜の洗練されたクールな印象を表現しています。 この花壇も、開花は1月上旬のスイセンから始まり、4月末ごろまで開花期が異なる品種がバトンタッチしながら見頃が長く続きます。 このエリアには、クロッカス4種、ムスカリ1種、ヒヤシンス2種、スイセン2種、チューリップ10種の合計20種が植えられ、4月上旬には上写真のように12種以上の花が同時に楽しめます。 <ヨコハマブルーガーデンの主な品種の特徴> ① 低く咲くのはムスカリ‘バレリーフィニス’。ムスカリの中でも優しい雰囲気のブルー花で、アネモネのブルーよりも淡い色。同系色の濃淡の花を入れると、より繊細で複雑な色合いを花壇の中に表現できます。② きれいなブルー花が特徴のアネモネ‘セントブリッジドブルー’。横浜のシンボリックカラーである爽やかなブルーを表現しています。③ 大きな花が咲くチューリップ‘サーモンファンアイク’は、メインカラーとして他のチューリップより多めに入れています。④緑の「がく」がある白花のチューリップ‘ホワイトバレー’ 。白花と緑の間をつなぐ役目に。 ⑤ 花壇の中でもひときわ目立つオレンジ花のチューリップ‘オレンジエンペラー’。花びらに緑のラインが入ります。⑥ 深い紫色の一重チューリップ‘ネグリタ’は、シックな色合いは引き締め役として活躍します。⑦ 花弁の先端が尖っているピンクのチューリップ‘サンネ’は、フルーティーな香りがあります。花びらの中心が濃く、縁が薄い色合いで、咲き始めは桃色、咲き進むと淡い色になっていきます。⑧夕日を思わせるオレンジ系の花色としてセレクトした八重咲きのチューリップ ‘チャーミングビューティー’。 2つの花壇には春咲きの球根のほか、今は低く目立ちませんが、宿根草のグラスの、スティパやサンジャクバーベナ、ツワブキ、リグラリア(写真右)、ペンステモン‘ダークタワーズ’ 、キャットミント(写真左)、チョウジソウなども間に植えられていて、球根の花が終わっても花壇の景観がしばらく続くようになっています。 球根ミックス花壇を作るのは市民が活動する団体「公園愛護会」 港南区「下永谷八木第二公園」の公園愛護会が植栽した2023年春の花壇。* 2027年開催の国際園芸博覧会の開催地として注目される横浜市内には、約2,700の公園があり、そのうち9割にあたる約2,450もの公園で「公園愛護会(こうえんあいごかい)」が活動しています。各地の公園を拠点に、地域の人たちが清掃活動や花壇づくりなどを行うボランティア団体で、横浜市から花苗やタネ、清掃用具やゴミ袋などの公園維持に必須のものを支援してもらえたり、草刈機の貸し出しや技術講習、花壇づくりの講習なども受けることができます。 公園愛護会のサポートにより、地域市民で協力して公園の清掃を行い、花を植えるなどの活動をすることは安全な地域づくりにもつながり、SDGsの目標の一つ「住み続けられるまちづくり」にも貢献するとして、1961年からスタートした横浜市の事業です。 2022年10月の山下公園、植え付けの様子。大小さまざまな球根をばらまく作業の一コマ。* 山下公園の花壇づくりは、毎年秋に公園愛護会に所属する方から参加希望者をつのり、10月末ごろの植え付け、12月と2月の草取り(有志のみ)、4月の開花の観察と手入れまで行っています。山下公園での作業経験が、地域の公園の技術アップにもつながるという人気の企画です。 あなたの庭でも実践できる! 球根ミックス花壇の魅力 旭区「鶴ヶ峰公園」では、公園愛護会と近隣の保育園、土木事務所が一緒に花壇づくり。球根をばらまいてランダムに配置する作業に園児たちも楽しく参加。* 山下公園で実践されている球根ミックス花壇は、公園愛護会を通じて各地の公園でも行われ、さらには各家庭での花壇づくりの手法としても普及しています。その魅力は、・長く楽しめる・予想のつかない魅力的な景色が楽しめる(どんどん変わる) ・組合せが無限大また、ガーデニング初心者でもポイントを覚えれば毎年楽しめる花壇づくりです。 旭区「鶴ヶ峰公園」の公園愛護会が植栽した2023年春の花壇。* <球根ミックス花壇の作り方のポイント> 山下公園では例年10~11月に植え付けを行いますが、植え付け時期は、紅葉が始まった頃が目安。ここでご紹介した品種を参考に、オリジナルの花壇づくりに秋に挑戦してみましょう! ポイント① 早咲き・中咲き・遅咲きの球根を1:1:1〜2:1:2程度の配合でブレンドして植え付けます。 ポイント② チューリップだけでなく、遅咲きのスイセン、クロッカス 、ムスカリなどを入れると花の時期が長くなったり、さまざまな花の組合せの変化を楽しめます。 ポイント③ 植物を何も植えていない場所では、チューリップの球根は平米あたり40〜50球を、宿根草などほかの植物が植わっている場所では平米あたり5~15球を目安に植えますが、球根がない場所もあると自然な雰囲気になります。 カンタン!気軽にやってみよう! 春のお手入れのコツ 山下公園では、早咲きのチューリップが咲き進んだ4月上旬に、植え付けから参加してきた「公園愛護会」のメンバーが集合し、花壇の観賞会と手入れが行われました。可愛いく咲く花々を愛でながら、手分けして短時間でお手入れが完了! 初心者からベテランまで一緒にできる手入れのポイントをご紹介します。 <球根ミックス花壇のお手入れのポイント> ●種類ごとのポイント チューリップ/終わった花も、終わりかけと思った花も花首の下をポキッと折り取る。少しでも光合成の役に立つように花茎を残す(少しでも来年開花しやすくなるように)。落ちた花びらは病気の原因につながることもあるので取りのぞきます。花弁が反って広がりっぱなしの花は、もう終わりのサイン。 アネモネ/花が終わり、自然に花弁が落ちている茎は、切り取らなくてもOK。このあと、花心が膨らみタネがつきますが、アネモネはタネをつけたままでも株が弱ることがありません。タネになる過程も観賞価値があります。種の後に出てくるわた毛がうっとうしく感じれば切りましょう。 ヒヤシンス/花が傷んでいたら花茎の根元で切り取る。花が重く倒れていたら、二股や三股に別れたきゃしゃな小枝を支柱にして花を地面から起こして自然な角度で支えてあげましょう。自然の枝を使えば花壇に馴染み目立ちにくくなります。 スイセン/頭の節を手でポキッと折り取る。 アネモネの葉と咲き終わったクロッカスの葉もグラウンドカバーの役割となっています。* ●雑草は抜く?抜かない? 山下公園の球根ミックス花壇では、春の雑草は景色の邪魔になったり、球根の花や葉などの成長の妨げにならないものは生かしています。その理由は、地表の土が見えにくくなり緑の草のカーペットの中からチューリップが咲くという見た目の効果と、表土の水分の蒸発が抑えられ、水やりの頻度が減り、手入れの時間も短縮できるからです。早春に芽生えた小球根の葉が草に覆われないように、12月と2月に草取り作業を行っています。 公園愛護会をサポートする横浜市の職員が手入れの説明を行った後、用意された道具で手分けして作業開始。20分もかからずにゴミ袋2つ分の花がら摘みなどのお手入れが完了。 公園愛護会により毎年、来園者を笑顔にするフォトジェニックな山下公園の球根ミックス花壇。山下公園で始まった花壇づくりの方法が市民に引き継がれ、横浜市のあちこちの公園で春の球根花が住民たちに春到来の喜びを伝えています。2027年開催の国際園芸博覧会「GREEN × EXPO 2027」に向けて、花と緑の取り組みが加速する神奈川県横浜市に、こうして年々花咲く風景が増えています。 2022年オランダで開催された国際園芸博覧会『フロリアード EXPO 2022』では、2027年の国際園芸博覧会のPRとして、山下公園で横浜らしく成長した球根ミックス花壇が『里帰り花壇』となってつくられ、多くの人々を魅了しました。 ●山下公園の花壇の開花状況や、各地の花壇、花壇づくりの動画などを横浜市のHPでご覧いただけます。●「公園愛護会」については、こちら
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東京都
牧野富太郎博士ゆかりの植物に出合える「練馬区立牧野記念庭園」
練馬区立牧野記念庭園を訪ねて 牧野富太郎博士が描いた植物画集とポストカード(高知県立牧野植物園刊)。特注の細筆で描写したという植物画の緻密さは驚嘆に値する。 子どもの頃、父の本棚にあった植物図鑑を飽かず眺めていた。その図鑑の著者が、日本の植物分類学の基礎を築いた牧野富太郎博士と知ったのは、ずっと後のことだ。植物との付き合いが今も続いているのは、図鑑の植物画が記憶のどこかに残っているからかも知れない。 ‘染井吉野’とほぼ同時期に開花する、庭園内の桜‘仙台屋’。牧野博士が名付けたとされる。 『東京 桜100花』(2015年、淡交社刊)という本を出版するにあたり、2年ほど桜三昧の日々を過ごしたことがある。桜に関するあらゆる書物を読み、都内の桜を撮影し、さらに原木のある北海道など各地にも足をのばした。その折に牧野博士が名付けたとされる‘仙台屋’という桜があることを知ったが、開花のタイミングに合わず、撮影できなかったことが心残りだった。 左/‘仙台屋’と並んで咲く‘染井吉野’。右/‘仙台屋’から数日遅れて開花するヤマザクラ。いずれも大木だ。管理室・講習室棟の前では、等身大の博士のパネルが迎えてくれた。 今年も桜の季節が到来し、わが家のバルコニーでも‘河津桜’、‘陽光’に続き、‘染井吉野’が咲き始めた。仙台屋も染井吉野と同じ頃の開花のはずと、西武池袋線大泉学園駅に近い、練馬区立牧野記念庭園を訪ねた。そこには牧野富太郎博士が晩年の30年あまりを過ごした私邸跡地に設けられた庭園と記念館がある。折しも牧野博士が主人公のモデルとなる、NHKの朝ドラ「らんまん」が始まるというタイミングで、園内は思いのほか賑わいを見せていた。 武蔵野の面影を残す庭園 庭園内には、アカマツ、エゴノキなど武蔵野の雑木林に以前からあった大樹と、博士収集の植物が今も残されている。 牧野富太郎博士は、その生涯で1,500種類以上の植物を発見・命名している。出身地の高知県には雄大なスケールの県立牧野植物園があるが、練馬の庭園も博士が「我が植物園」と呼んでいたように、各地から集めた植物など、300種類以上の多彩な草木を見ることができる場所だ。 庭園入口に咲く早咲きの桜、‘大寒桜’。薄紅色の花は終わりに近づくにつれ濃い紅色に変化していく。 今では周辺は住宅地だが、かつては武蔵野の雑木林だった地で、その面影を残す大木も見られ、草木も野にあるような自然な佇まいを見せている。博士は桜を好み、園内では仙台屋以外にもカンヒザクラ、ヤマザクラなどの野生の桜、さらに大寒桜、‘染井吉野’、‘福禄寿’などの栽培の桜が開花する。 桜‘仙台屋’の由来を辿る 咲き始めの可憐な花姿を見せる桜‘仙台屋’。 ‘仙台屋’は淡い紅紫色で5弁の楚々とした花姿を見せていた。原木はかつて高知市の仙台屋という店の庭にあったもので、その屋号にちなみ牧野博士が名付けたとされている。桜の由来については、高知の園芸家、武井近三郎氏の著書『牧野富太郎博士からの手紙』(高知新聞社刊)に以下のような記述がある。「佐伯さんという人が仙台から移動してきて、中須賀で仙台屋という屋号で商売を始めたのですが、その屋敷の庭へ移植した桜です」。 満開時の‘仙台屋’と‘染井吉野’(左)。‘仙台屋’の横には地下根が伸びて育った若木が寄り添うように立っている。 桜の種類は、東北から北海道にかけて分布する野生種のオオヤマザクラ(ベニザクラ)の栽培品種ではないかとされているが、定かではない。牧野博士はこの桜を気に入り、武井氏に「高知の名物の桜にするべし」と書き送り、また苗木ができたら自分へも送ってほしいと再三手紙を出している。 庭園内の‘仙台屋’は博士自ら植栽した桜で、樹齢70年と推定される。 武井氏は博士の熱意に答え、桜の小枝1,000本を挿し木して苗木を育てた。その苗木が博士に送られたという高知新聞の記事が残っている。1953年12月4日の記事で、それによると庭園の‘仙台屋’は樹齢70年ということになる。 これは推測だが、仙台屋のあるじは望郷の念に駆られ、宮城から桜の苗木を移植したのではないだろうか。桜は高知に根付き、やがて博士が故郷を偲ぶ桜となった。そんな風に花に寄せる思いをたどることができるのも、桜ならではと思えるのだ。 牧野富太郎博士の生涯 記念館の常設展示室に飾られた牧野博士の肖像。笑顔が印象的だ。 牧野富太郎(1862-1957)は、文久2年に高知県高岡市佐川村(現佐川町)の酒造業を営む裕福な家に生まれた。子どもの頃から植物に興味を示し、小学校を中退、植物採集に励んだという。22歳で上京し、本格的に植物研究の道に進んだが、ほとんどが独学といえるものだった 記念館、常設展示室の展示資料。植物標本と博士愛用の採集道具が並ぶ。 1889年(明治22)、土佐で発見した新種「ヤマトグサ」に学名をつけ、友人と創刊した雑誌に発表するなど、創生期であった日本の植物学に大きな足跡を残している。それまで日本では、植物の学名を付けることを海外の学者に依頼していたのだ。1888年(明治21)に『日本植物志図篇』、1900年(明治33)に『大日本植物志』の刊行を始めた。さらに集大成となる『牧野日本植物図鑑』を1940年(昭和15)に刊行。この図鑑は植物研究のバイブルとして、今も多くの人々に愛用されている。 妻に捧げるスエコザサ 牧野博士胸像を囲むスエコザサ。妻への感謝と愛をこめて博士が名付けた笹だ。 博士は妻、寿衛との間に13人の子どもをもうけている。研究のために必要な経費と家族を養うために大変な苦労をしたことが、『牧野富太郎自叙伝』(日本図書センター刊)に残されている。研究に没頭する博士を支え続けた妻亡きあと、博士は仙台で見つけた笹を新種としてSasa suwekoanaと命名し、和名をスエコザサとした。スエコザサは庭園の博士の胸像を囲むように植えられている。 博士の植物画 記念館の常設展示室に置かれた、牧野博士のさまざまな著書。 牧野博士は植物画を自ら描いている。『牧野富太郎植物画集』(高知県立牧野植物園刊)によると、その数は約1,700 点という。特注の細筆や面相筆で描かれた絵は、草木の息吹まで伝わってくるような、細密で生気に満ちたものだ。『日本植物志図篇』を自費出版するに当たっては、石版印刷の技法を学び、自ら印刷を手掛けたという。日本各地で植物を採取し、描き、出版する、それは驚嘆に値する仕事量だ。 庭園の植物 300種類以上の植物が生育する庭園は、周囲を住宅に囲まれながら、そこだけは別天地の様相を見せている。 庭園では季節ごとにさまざまな植物が開花し、それを楽しみに通う人も多い。私が訪ねた3月下旬には、ヤブツバキ、ボケ、カタクリ、コブシ、ヒロハノアマナ、シュンラン、バイモなどの花を見ることができた。 左上から時計回りに/クサイチゴ、バイモ、ヤマブキソウ、カタクリ、ヒロハノアマナ、ボケ。 牧野博士が植栽した樹木には、樹名版に独特のマークが添えられている。そのマークは博士の印鑑と同じく、巻いた「の」(マキノを意味する)が描かれていて、博士のユーモアあふれる人柄が感じられる。 庭園内の施設 庭園内には、企画展示室と常設展示室のある記念館、書屋展示室、講習室などが備わっている。常設展示室には博士の遺品や資料が展示され、その生涯と業績をたどることができる。博士愛用の植物採集道具を見ていると、野山を駆け巡っている姿が目に浮かぶようだ。 書物が積み上げられた書斎は、博士が執筆し、植物画を描いた当時を再現している。 木造の家の一部がそのまま建物に覆われた書屋展示室は、今年(2023年)4月3日にリニューアルオープンし、書斎と書庫内部が当時の様子に近い状態に再現されている。 植物に寄せる思い 採集道具の中でも印象的な牧野式胴乱。 牧野博士は学問の世界に留まらず、各地の植物採集会の講師を務め、全国に植物愛好家が増えるようにと願っていた。植物への愛は尽きることなく、著書で繰り返し語った。「私は植物の愛人としてこの世に生まれ来たように感じます。或いは草木の精かも知れんと自分で自分を疑います。ハハ、、」というユーモアたっぷりの一文も残されている。 著書の表紙写真。左/『牧野富太郎自叙伝』(1997年、日本図書センター刊)、右/『好きを生きる 天真らんまんに壁を乗り越えて』(2023年、興陽館刊) 初期の自叙伝の最後を締めくくる句は「草を褥に木の根を枕、花を恋して50年」。後に「今では私と花との恋は、50年以上になったが、それでもまだ醒めそうもない」と綴っている。 植物を愛し、愛された牧野富太郎の94年の生涯。そのゆかりの庭園を散策し、あらためて植物と在ることの幸せを感じた。 庭園内の顕彰碑。「花在れバこそ、吾れも在り」という博士の言葉が刻まれている。 Information 練馬区立牧野記念庭園面積:2,576.22㎡開園:1958年(昭和33)12月1日場所:東京都練馬区東大泉6-34-4電話:03-6904-6403開園時間:9時~17時 休園:毎週火曜日、年末年始入園料:無料アクセス:西武池袋線大泉学園駅(南口)歩5分HP: https://www.makinoteien.jp
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埼玉県
【お出かけ情報】新しい仲間が加わった春のムーミン谷をのんびり散策しませんか?
ゆったりリラックスした一日を過ごせる「メッツァ」 ムーミンバレーパークは埼玉県飯能市の宮沢湖畔にある「メッツァ」の一部にあります。「メッツァ」とはフィンランド語で森。北欧をお手本にしたライフスタイル提案型の複合型施設で、北欧のライフスタイルを感じられるマーケットやアクティビティが体験できる「メッツァビレッジ」と、ムーミンの物語をテーマにした「ムーミンバレーパーク」の2つのゾーンから構成されています。どちらもペットと一緒に入場ができ、お散歩や食事(テラス席)、ショッピングを楽しむことできます(※入場可能な施設・店舗はHPをご確認ください)。 フィンランドの陶器ブランド「ARABIA」の食器で提供されるカフェレストラン「nordics」。湖を望みながら食事ができる。 入り口から程近くの「メッツァビレッジ」は入場無料のエリア。季節ごとに移り変わる森の景色と、野鳥が訪れる湖の景色を眺めながら、ゆったりとした一日を過ごすことができます。湖のほとりに広がる芝生の広場にはデッキチェアが点在し、寝そべってキラキラ輝く湖を見るだけで、心も身体もリフレッシュ。もっとアクティブに過ごしたい人には、カヌーやクリアカヤック、アイランドボートなどのアクティビティがおすすめ。パラソル付きのアイランドボートにはテーブルが設置されており、湖上のピクニックが楽しめます。湖の周囲にはカフェやレストランが設けられているので、ランチもおやつも持たずに手ぶらでお出かけOKです。 カヌーはレンタルの他にカヌーづくり体験もできる。 北欧のヴィンテージアイテムなどが並ぶ「森と湖のマルシェ」 4月22日(土)、23日(日)、メッツァビレッジで北欧のアイテムと自然が楽しめる「森と湖のマルシェ」が開催されます。北欧のヴィンテージアイテムや植物店、伝統料理を販売するキッチンカーなどが出店します。湖のほとりでゆったりショッピングを楽しみませんか? 第19回森と湖のマルシェ 開催日時/4月22日(土)、23日(日)10〜16時場所/メッツァビレッジ特設会場*雨天中止 物語の世界を堪能できるムーミンバレーパーク 湖のほとりを歩いてメッツァビレッジの奥へと進むと、「ムーミンバレーパーク」にたどり着きます。「本」のウェルカムゲートをくぐりぬければ、ムーミンの物語の舞台、ムーミン谷が待っています。フィンランドの作家トーベ・ヤンソンによるムーミン・シリーズは、ムーミン一家と個性的な仲間たちが、美しい自然に囲まれ平和でのんびりとした日常生活を過ごしながらも、冒険を通じて成長し自立していく姿が描かれています。 ムーミン一家と仲間たちが暮らすムーミン屋敷。素朴で上品なインテリアは必見。 ムーミンパパの作った水浴び小屋。 戦いやアクションといった派手な展開がない代わりに、日常の暮らしの喜びと厳しくも豊かな自然との対峙の方法や他者との調和、自立といったどの時代にも普遍的なテーマで人々を魅了し、世界中で愛される物語です。舞台となるムーミン谷は、海と山に囲まれ、春にはムーミンママが丹精する庭が花いっぱいになる美しい場所です。 春の花がいっぱいのムーミン屋敷の庭。 この物語が生まれた北欧フィンランドでも、人々は幼い頃から自然と共生し、自然から多くのことを学んで暮らしています。春のイベント「スプリングフェスティバル」では、植物採集が好きなヘムレンさんをムーミンバレーパークの新しい仲間として迎え入れ、フィンランドのような身近に「学び」を体験できる「Hemulen‘s academy(ヘムレンズアカデミー)」を行っています。アカデミーでは湖畔の周りを彩る季節の植物や水辺を訪れる野鳥の観察など、ムーミンバレーパークの自然や生き物を学ぶことができるフィールドワークに参加できます。 植物学者のヘムレンさん。デスクの上に並ぶのはヘムレンさんの収集物?©︎Moomin CharactersTM 夢いっぱいのアトラクションとかわいいムーミングッズ ©︎Moomin CharactersTM 園内では若き日のムーミンパパ達の冒険を一緒に体験できる「海のオーケストラ号」やムーミンやムーミン谷の仲間たちによる歌とダンスのエンターテイメントショーなど、夢いっぱいのアトラクションが待っています。他にもここでしか買えないリトルミイのグッズが集合した「リトリミイの店」や約400冊のムーミン関連書籍がずらりと並ぶ「ライブラリー カフェ」、売り場面積・商品数が世界最大級のショップ「ムーミン谷の売店」など、ショッピングの楽しみも満載。 おしゃれな「ライブラリー カフェ」。ムーミンのマシュマロを浮かべたキュートなラテ。 豊かな自然の中で、のんびりそれぞれのペースで過ごせて、かわいいムーミンたちにも出会えるメッツァへ、春のお散歩に出かけてみませんか。 メッツァ ■住所/埼玉県飯能市宮沢327-6■HP https://metsa-hanno.com■アクセス/西武線飯能駅から「メッツァ」行き直行バス、または「メッツァ経由武蔵高萩駅」行き路線バスで13分 メッツァビレッジ ■営業時間/平日10:00〜18:00 土日祝10:00〜19:00■入場料/無料 ムーミンバレーパーク ■営業時間/平日10:00〜17:00 土日祝10:00〜18:00※お正月、お盆休み、GWなど、施設が指定する日において営業時間が異なる場合があります。HPでご確認ください。■入場料/1デーパス 【2023年4月30日までの料金】大人(中学生以上):前売り販売3,000円 通常販売3,200円子ども(4歳以上小学生以下):前売り販売1,800円 通常販売2,000円【2023年5月1日からの料金】大人(中学生以上):前売り販売3,400円 通常販売3,600円子ども(4歳以上小学生以下):前売り販売2,000円 通常販売2,200円
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東京都
カメラマンが訪ねた感動の花の庭。「東京競馬場」のナチュラリスティックガーデン
今、最も関心のあるガーデンデザイン 2019年1月に横浜でPiet Oudolf氏の映画「Five Seasons」を鑑賞して以来、僕にとってナチュラリスティックガーデンが1番興味のあるガーデンの形になりました。映画を見る前にも、長野県須坂市の園芸店「ガーデン・ソイル」の田口勇さんにPiet Oudolfの本を見せてもらい、それまで全然知らなかった美しい世界があることを知りました。それからは、北海道で大森ガーデンや上野ファーム、十勝千年の森などでグラス類と宿根草のガーデンを撮りまくり、秋には山梨・清里のポール・スミザーさんが手がけた「萌木の村」で紅葉したグラスと宿根草のシードヘッドを夢中で撮ったりしていました。ただ、その時はまだはっきりした「ナチュラリスティック」と言う認識はなく、ただ今までの花中心の花壇から新しい形の花壇が生まれてきたんだろうとくらいにしか思っていませんでした 皆が関心を寄せる「ナチュラリスティック」 「Five Seasons」を観て以降、「ナチュラリスティック」という概念を意識しだすと、SNSのあちこちで自然思考、消毒をしないバラ、化学肥料を使わない庭の話などが目につくようになりました。Facebookでは平工詠子さんのグラスを多用した美しい庭の写真を見せていただき、知り合いのガーデナー、さつきさんのFacebookで服部牧場を見た時には、今最も撮影したいテーマはこれだ! と確信しました。 綺麗な光に浮かび上がる庭をベストなタイミングで撮りたい いつも言っていることですが、僕が撮影の時に一番に思うのは「綺麗な光で撮る」ことで、その意味でも「ナチュラリスティックガーデン」の撮影は、正に僕にぴったりのテーマ。朝日や夕日に浮かび上がるグラスや宿根草の花壇を撮影している時は、まさに至福の時間です そして2022年10月上旬に、以前僕に服部牧場を教えてくれたガーデナーのさつきさんのFacebookに登場していたのが、今回ご紹介の「東京競馬場」でした。この東京競馬場の庭の手入れに、服部牧場の平栗智子さんが行っていることは知っていましたが、頭の中で競馬場とグラスの庭がうまく結び付かなかったことから、さつきさんにそうコメントすると「今井さん、本当に綺麗ですからぜひ行ってください」と返信がありました。 その1週間後に秋の服部牧場へ撮影に行くと、今度は平栗さんが「東京競馬場今が一番綺麗だから、今井さんに撮ってほしいと思っていたんですよ」と。平栗さんが競馬場の手入れに行く日程まで教えてくれたので、2人のガーデナーさんがそこまですすめてくれるならばと、天気のよい日の午後に伺う約束をしました。 美しく捉えるにはどうするか、しばし悩む 撮影日となった2022年11月18日は、夕方までずっと晴れの予報。グラスの撮影には最適の天候でした。競馬場の入り口に迎えにきてくれた平栗さんが運転するモスグリーンのしゃれた車に先導してもらい、場内を走ってトンネルを抜け、内馬場(コースの内側)に到着。するとそこは広い芝生のエリアで、子供達のためのいろいろな遊具が並んでいました。その外側には、子供用のミニ新幹線のレールが敷いてあり、競走馬が走るコースとの間が、グラスと宿根草の花壇になっていました。 まだ少し日差しが強いので、花壇の周りを下見しながら「これは大変だ」というのが第一印象でした。なぜなら、写真を撮影する時に、プロカメラマンとアマチュアカメラマンとの一番の違いは、写真の中に無駄なものが映り込んでいるか、いないかということ。プロのカメラマンは、シャッターを切る前にファインダーの隅々まで見て余計なものが入っていない事を確認し、初めてシャッターを切るものです。 日が沈むまでたった15分の撮影に挑む ところが、目の前には緑の芝生にピンクに染まったミューレンベルギアと真っ赤なアマランサス。これだけなら言うことのない景観ですが、その後ろには馬場のコースを縁取る白い柵があり、手前にはコンクリートに舗装された帯の上を線路が通っています。これらの構造物を全部入れずに構図を決めるのは不可能だし、2人が口を揃えて言うように、グラス類は本当に綺麗です。 太陽がだんだん低くなってくるなか、「どこをどう撮ればいいのだろう」「気になる構造物が少しでも入らないアングルは?」と気持ちは焦るばかりで、一向に撮影が始められませんでした。あっちへ行ったり、線路に降りたりしながらアングルを探している時に気がついたのです。「線路をガーデンの園路に見立てればいい」のだと。夕日に輝くグラスの花壇と線路をファインダーの中に収めてみると、金色に輝くグラス類が圧倒的に綺麗で、線路すら気にならないと思いました。 「夕陽に輝くグラス類を綺麗に撮る」「線路などの構造物は、なるべくグラス類の邪魔にならないように入れる」と決めて、そこから日が暮れるまでの15分くらいの短時間で、長い花壇の周りを沈みそうな夕日の位置を確認しながら、あちらに行ったりこちらに来たり。夢中でシャッターを切って、気が付けば夕日は西側の高い木々の向こうに消えていました。
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東京都
【舞台裏レポ】「第1回 東京パークガーデンアワード」5つの庭づくり大公開
コンテストの舞台は都立代々木公園の花壇 都市公園を新たな花の魅力で彩るプロジェクトとしてスタートした「東京パークガーデンアワード」。第1回の舞台となるのは、都内でも屈指の利用者数がある「都立代々木公園」の中です。アクセスがとてもよく、JR山手線「原宿」駅から徒歩3分の原宿門から入ってすぐ右手の「オリンピック記念宿舎前広場」に、5つのコンテストガーデンと吉谷桂子さんによるモデルガーデン「the cloud」があります。 コンテストガーデンが作られる以前この場所は、通路に沿ってハナミズキやオリーブが植わり、地面は芝生に覆われていましたが、2022年10月には今回のコンテスト開催に先駆けて、5つのエリアが同じ土壌条件になるように花壇スペースが整地されました。 花壇の整地は、既存の表土にある雑草とその種子を駆除する意味から厚み5cm分取り去ったあと、花壇用土には人口軽量土壌を厚み20cm客土し、ベースの土壌として整えられました。 「第1回 東京パークガーデンアワード」第1回作庭【12月】 「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマに、各ガーデナーが提案するガーデンコンセプトは、各人各様。審査を通過した、それぞれが目指す庭のコンセプトに沿って2022年12月5日から9日まで行われた第1回目の庭づくりの様子をレポートします。 *コンテスト開催の概要や各庭の月々の様子は、こちらをチェック! コンテストガーデンA Changing Park Garden ~変わりゆく時・四季・時代とともに~ Aエリアは、培養土と肥料(かんとりースーパー緑水)を全体に敷き詰め、表面をならして基本の用土づくりは完了。この段階で耕さないのは植え付け時に耕すことを想定したためで、手間を最小限にしています。 平らにならした表土に、次々と苗が配置されて、あっという間に地面が隠れるほど数々の植物で埋め尽くされました。Aエリアは、大苗に仕立てられた根張りのよい丈夫な宿根草を用意。品種によって異なりますが、圃場で1~3年以上育てられた苗なので、一般で販売されているサイズの何倍も大きな株ばかりです。 育成管理に時間がかかりますが、その分株が充実した大苗になると言います。大苗を使う利点には、① 既存植物とのバランスがとりやすく、周囲の環境にすぐに馴染む。② 植えた年から植物本来の個性が発揮され、しっかり開花する。 ③ イメージがすぐにカタチになるので、庭施工の際もお客様の満足度が高い。④ 大苗なら1ポットで十分ボリュームがでる場合も、市販の小さなサイズの苗だと数多く植栽しがちで、経済的にも苗の生育環境にもよい。さらに、見頃を迎えた大苗は、ショーガーデンでも活用できることからも、この花壇に大苗が多数使われています。 配置が終わったら、端から順に次々と植え付けを開始。苗は、現地の土壌にスムーズに活着できるよう根の処理(根をほぐしたり、根きりをするなど)を事前に施していたため、現場では、ポットから抜いてすぐに植栽でき、作業時間短縮とストレス軽減になりました。 選ばれた植物は、春から秋に次々とバトンタッチして花を咲かせるものや、風に揺れるグラス類、雑草抑制が期待できるグラウンドカバープランツなど。どれも、特徴や性質を見極めることができる花卉生産者により選ばれているので、ロングライフでローメンテナンスでありながら、美しい花壇となる組み合わせ。 苗を植え付けたあと、原種チューリップやアリウム、カマシア。エレムルスなど、1,500球の球根も植え付けられました。 交互や一列、斜めに配置など、ほどよい距離感で植わる小さな植物は、小さいながらも青みがかった緑や銀がかった緑、赤や黄など彩り豊か。合計84種の植え付けが完了しました。 コンテストガーデンB Layered Beauty レイヤード・ビューティ Bエリアは、作庭前の花壇の土壌を独自に検査した結果、pH調整用として無調整ピート(ラトビア産ピート)を撒いた上に、肥料持ちを高めたい理由から培養土(ベストブレンド)を追加して耕運機で攪拌。 平坦な花壇を山状に盛り上げるためにも、40ℓ200袋という多くの用土が追加されました。結果、元の地表よりも15〜10cm高い土壌が完成。植物を配置するガイドとして、グリッド状に水糸が張られました。 季節を感じる宿根草ガーデンを作るために「さまざまなレイヤーを組み合わせて美しさを構築する」という考えから、背の高いグラス類と宿根草でつくられる4つの島(図内A)が通路から眺めた時に奥行きを感じられるような視覚効果も狙って配置されました。 3月から10月まで月ごとに見頃が移り変わるように選ばれた植物は、合計142種。 丈夫な植物、持久性のある植物、病害虫予防、密植に耐える植物、耐陰性の高い植物、観賞期間の長い植物なども考慮して選ばれています。また、こぼれ種で増えたり、宿根草の生育の邪魔にならない一年草も入っています。 球根は、拳以上の大きなアリウムから、小さなクロッカスまで、全部で約5,200球。小球根は、器に小分けしてから配置したことで、植え付け位置の手直しや微調整がしやすい効果がありました。写真左上のオレンジ色の器具は、アリウムやフリチラリアなどを深く植える際に穴を掘るホーラー。フリチラリアは、高温の影響を受けずに長生きさせるため、通常より一段深く植えられました。 3月までに咲くフリチラリアとクロッカスなどの小球根、最後に咲くアリウムやカマッシアを置いた後、最後にチューリップ、スイセン、アリウム‘パープルセンセーション’をばら播きし、配置具合を確認したあと植え付けられました。アリウム‘サマードラマー’のみ、このタイミングから植え付けると翌年(審査のある2023年)に開花しないと予想して、芽出しのポット苗を植え付けています。 球根をすべて植え付けが完了した後、表土に有機質肥料資源の「グアノ」と「モルト滓」を散布。どちらも長期的な効果を狙ったもので、グアノはリン酸とカルシウムで植物を丈夫にする目的、モルト滓はチッソ分の補給と土壌の微生物環境の改善を目的としています。最後にバーク堆肥でマルチングをして終了。所々にラベルがついた小枝が刺さっているのは、2月末に行われる2度目の作庭で植え付ける予定の植物の場所を示しています。 コンテストガーデンC Garden Sensuous ガーデン センシュアス 園路を挟んで、対になったL字型のCエリアは、黒土と小粒の軽石、バーク堆肥、木酢液入り木炭を表土に撒いたあと耕運機で耕して基本の用土づくりは完了。 基本用土が乾燥すると砂状になり、マウンドや窪みといった高低差を付けるのが難しそうだったため、造形をしやすいように黒土を追加。軽石は、黒土を加えたので通気性の向上のため、木炭と堆肥は保水性をよくし、有機物を足すことで土中微生物を増やすために加えられました。 土を攪拌してフカフカにしたあと、山越さん自ら有機石灰が入ったボトルを手に、図面を見比べながら花壇に数カ所、丸印が描かれました。 これは、多様な植生と生物の場を創出するために作られる「マウンド(築山)」と「低地(レインガーデン)」、「フラット(平地)」という、凹凸のある地盤作りのためのガイドラインとなります。 この庭の「マウンド(築山)」とは、Hugel mound(Mound culture:ドイツなどが発祥の農法)と雑木林の循環管理方法を融合させたもので、土中に剪定枝などを埋めてから土を盛り上げて山のようにします。 この築山を作ることで、① ゴミを焼却することにより発生する二酸化炭素を削減する。② 保水性を高めることによる水の使用の軽減。③ 微生物など生き物の住処になる。④ 高さを出すことで周囲の低地に水が集まり、植生の異なる豊かな植栽が可能になるという4つの効果を狙っています。 「低地」は、窪ませることで ① 降雨時の急激な下水道への排水を緩和。② 植栽や土壌によって水質を浄化。③ ヒートアイランド現象の緩和という3つの効果が期待できるレインガーデンとしてのデモンストレーションになっています。 起伏のある地盤が完成すると、全体にニームケーキ(植物性土壌改良材)と元肥を撒いて、植物を配置するガイドに沿ってポット苗を配置し、一株ずつ植え付け。 植物は、地表面の形状や湿度、日照などを考慮したA〜Eの5つのエリアに区分され、それぞれに適した植物を配置。 盛り上がった築山には、乾燥に耐えあまり背の高くならないレモンバームやオレガノなどを。窪んだ低地は、アスチルベやユーパトリウムなど、湿度や水に耐性のある種類が選ばれています。また、平地には、築山と低地との緩衝地帯としても機能する安定した植栽スペースとして、多様な表情が見られるようにと、エキナセアやイトススキ、ガウラ、バーベナなどが選ばれ、2〜3月の最終植え付けまでに合計65種が植えられます。 コンテストガーデンD TOKYO NEO TROPIC トウキョウ ネオ トロピック Dエリアは、植物性完熟堆肥(黒い堆肥)と赤玉土、ピートモスを表土に撒き、しっかりスコップで耕して基本の用土づくりが行われました。有機質を混ぜ込む土壌改良を行って保水力や保肥力を高め、根を生育させることで、翌年からの灌水を抑える効果を狙っています。 また、土づくりと同時進行に自然素材を使った「ウィービングレイズドベッド」作りもスタートしました。レイズドベッドとは、枠を設けて地面より高い位置に植える場所をつくる手法で、ここでは地温を確保し、冬の寒さによるダメージを軽減する目的や、花壇をリズミカルに表現する目的で設置されました。 今回、この「ウィービングレイズドベッド」のイメージに近づけるためには、曲がりが少ない枝を見つける必要がありました。現場での枝選びの後、さらに事前にモックアップ制作。施工の手順やイメージ通りの仕上がりになるような太さの確認をしてから、実作業に臨んだと言います。 レイズドベッドやコンポストの位置を決める角棒が枠の四隅に立てられたあと、黒竹を等間隔で挿し、その間を縫うようにヤマハギの細い枝を下から順に編み上げながら縁取りを作ります。手作業でレイズドベッドが一つ、また一つと組み上がっていきます。 レイズドベッドの枠を自然素材にしたことで、周囲の植物とも馴染み、通気性や排水性を確保。枠の内側に防草シートを貼り、底には約10〜20cmほど軽石を敷き詰めてから用土を入れていきます。 高さや形状が異なるレイズドベッドが9個完成。金網の枠(写真上右)はコンポスト用で、この花壇で出る枯れ葉や枯れ枝、花がらなどを堆肥化するために設けられます。レイズドベッドの上とその外側などに苗と球根を配置。高低差がある花壇の中に次々と植え付けられました。 選ばれた植物は、ローメンテナンス・ロングライフであるコンセプトに合わせた宿根草を中心に、サブトロピカルな植物をポイントにしています。個性豊かな植物が東京の地で力強い姿を見せてくれるのを予想し、アロカシア、パンパスグラス、カンナ、アスパラガス、アガベなど合計40種超の植物が選ばれました。昆虫の住処にもなるバイオネストの設置や一部のサブトロピカルの植物、芝生などは2月の作業で追加されます。 通常、亜熱帯系の植物は、暖かい時期に植栽すれば問題なく越冬するものですが、今回指定された施工時期(12月、2月)は亜熱帯系植物の植栽時期としてはベストなタイミングではありませんでした。そこで、屋外での植え付け時に植物がなるべくダメージを受けないようにと、養生も温室から無加温の温室に移動するなどの配慮がされました。 仕上げに、針葉樹の樹皮(バーク)を粉砕加工したリサイクルマルチング材(ランドアルファ)を表土全体に敷き、金網の内側に不織布が設置されたあと、レイズドベッドを作る際に出た不要な枝などをコンポストに投入して、作業は完了しました。 コンテストガーデンE HARAJUKU 球ガーデン コンテストガーデンのエリアで一番奥に位置し、「オリンピック記念宿舎」の前であるエリアE。初日は雑草を丁寧に取り去ったあと、根が伸びやすくなるように、また、排水性を高めるためにシャベルで全体を掘り起こしたあと、日頃の庭づくりで使い慣れていると言う赤玉土と腐葉土を各40ℓ各12袋を投入。少量のくん炭と元肥もプラスして基本の用土づくりは完了。 ずらりと揃った植物を前に、どの場所に何を配置するか、段取りを整理しながら、傷んだ部位を切除するなどの苗の手入れも同時進行しました。 多数の植物の中から、まず骨格となる植物の配置からスタートします。このガーデンの作品タイトルは「HARAJUKU 球ガーデン」。某超有名ガーデンを原宿ならではの遊び心でもじったタイトルで、初夏には真丸の花が咲くアリウム、そして秋にポンポン状の花がダイナミックに咲くダリアまで、球状の花を多数組み合わせ、ポップに楽しく見せる植物が選ばれています。 配置図を頼りに、まず苗を配置。離れてみたり角度を変えて眺めたりしながら、育った姿を想像して位置を微調整。 植え付けて半年で見応えが出るように、骨格となるニューサイランやディエテスなどは、一般的なサイズよりも大きな株が用意されました。また、これらの草丈が高く大きな縦のラインとなるニューサイランやディエテス、グラスなどを多めに入れることで、メインとなる丸い花々を引き立てる効果を狙っています。 霧のような穂を立ち上げているのは、ミューレンベルギア・カピラリス。他にもディスカンプシア‘ゴールドタウ’など、秋にダリアが咲いたころ、幻想的に調和する効果を狙ったグラスが選ばれました。 普段は“甘やかさず育てる派”ですが、テーマ通りの庭に最短で仕上げるため、一つずつ植え穴に肥料を入れながら植え付けられました。また、植物によっては排水性を高めるために、パーライト、軽石などを植え込みました。 最終日は、全体に球根を配置して一気に植え付け。仕上げにバーク堆肥でマルチングして冬に備えます。特に多くの種類を植えたのがアリウムで、開花期間が少しでも長くなるようにと、球根で16種、苗は2種の合計18種が植えられました。 長く伸びていたデスカンプシアなどは短く切り戻し、常緑のニューサイランやカレックス‘エヴェレスト’などは、そのまま越冬させます。 日々成長するコンテストガーデンに注目を ご紹介の「第1回 東京パークガーデンアワード」は、5つの庭の魅力を競うコンテストですが、参加するガーデナー達は、仕上がっていく互いの庭を見て刺激を受けたり、人手が足りないチームの植え付けを助ける場面もありながら、期間内に無事1回目の作庭が完了しました。 代々木公園を舞台に行われている「第1回 東京パークガーデンアワード」。5つの庭を一度に見学できるこの場所は、公共ガーデンに新しい息吹を吹き込むことが期待された東京の最新のガーデンです。いつでも自由に見学可能。ぜひ毎日成長する庭の今を見に訪れてください。 *コンテストの概要や各庭の月々の様子は、こちらをチェック!
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神奈川県
【ホリデーシーズン・おすすめ植物園】冬に咲く! カラフルなアイスチューリップが魅力の「花菜(かな)ガ…
園芸から収穫体験までできる植物園 神奈川県立花と緑のふれあいセンター「花菜ガーデン」は、2010年3月、園芸や農業を楽しみながら学べる施設としてオープン。園内は約9.2haと広大で、サクラやバラ、クレマチスなど約3,280品種の花々が植栽された「フラワーゾーン」、野菜の植え付け・収穫などの体験ができる「アグリゾーン」、展示室や図書室などがある「めぐみの研究棟」の3つのゾーンで構成されています。 ■花菜ガーデンのシンボル“カレル・チャペック”とは 『園芸家12か月』の著者であるチェコの作家で、園芸家としても知られるカレル・チャペック。プラハに現存するチャペックの家と庭をイメージし、「カレル・チャペックの家と庭」として園内に展示されています。 かつて“バラの切り花日本一”と言われた平塚市 花菜ガーデンのある神奈川県平塚市は、戦後いち早く温室でバラの切り花生産を開始し、昭和50年代には「日本一のバラの産地」と呼ばれていました。温室で花苗を育てている花の農家が現在でも多いのが特徴です。 関東有数の品種数を誇る花菜ガーデンバラ園のバラは、野生種から近年のバラまで合わせて約1,300品種。「風ぐるま迷図(フラワーゾーン)」にある[香りのバラ]には、モダンローズの中でも特に芳醇な香りの品種が集められ、クレマチスと一緒に展示されています。 これから春に向けて、バラの剪定と誘引作業が行われます。この時季になると、自宅でバラを育てている人から「誘引作業を見学したい」という声をいただくそう。もちろん、誘引作業の見学(入園料はかかります)は大歓迎。ご興味のある方は、自宅のバラ誘引の参考にされてみては。 カラフルで可愛いアイスチューリップに気分が上がる! 花菜ガーデンでは、毎年クリスマスシーズンに向けてアイスチューリップの植え付けをしています。2014年からスタートして9回目となる今年は、約7千球のアイスチューリップがフラワーゾーンの[花菜ガルデン]を中心に植え付けられ、来園者の目を楽しませてくれています。 花菜ガルデンに植え付けられたアイスチューリップは‘イルデフランス’(赤)、‘ピンクツイスト’(桃)、‘プリンセスイレーネ’(赤&白)、‘イエローフライト’(黄)、‘ダーウィスノー’(白)など16品種。 普通のチューリップの球根をポットの土に植え付けて根を成長させ、その後冷蔵施設に保存。一定期間低温管理した後、自然の環境下に戻すと「春が来た」と勘違いをして花を咲かせたのが“アイスチューリップ”。冬は気温が低いため花もちがよく、開花時期を長く楽しむことができます。 クリスマスの装飾で可愛いフォトスポット アイスチューリップの開花時期に合わせて園内には、クリスマスの装飾で飾られたワゴンやリース、ツリーなどの写真スポットがいっぱい。自分好みの写真スポットを見つけてくださいね。※クリスマス装飾は27日(火)まで。 新鮮な神奈川県産農水産物を使用したレストランやショップ [みのりの棟](めぐみの研究棟ゾーン)には、神奈川県産の農水産物を使用したレストラン「キッチンHana」とショップ「Dear CAPEK(ディア・チャペック)」があります。 レストラン「キッチンHana」は、シーズンやイベント限定のメニューもあり、バラエティー豊富。なかでもスペシャルメニューで、スパイスやフルーツを組み合わせた自家製の “ホットワイン(グリューワイン)”がおすすめ。アルコール入りとノンアルコールがあり、ノンアルコールはグレープ100%のウエルチジュースに、スパイスやフルーツを加えたホットワイン風。ほどよい甘さとクリスマスらしい香りでとても飲みやすく、冷えた体が温まります。 同じ[みのりの棟]には、ショップ「Dear CAPEK」があります。神奈川県の特産物や、バラに関連した雑貨がたくさん置いてあります。 Information ◆神奈川県立花と緑のふれあいセンター「花菜ガーデン」◆ ・開園時間:午前9時~午後4時(3月~11月は午後5時) ・休園日: 12月~2月は毎週水曜日(祝日の場合は翌日)および年末年始(12月28日~1月4日) ※2023年1月11日(水)は開園 ・入園料:[12月]大人550円、シニア(65歳以上)400円ほか、[1月] 大人200円、シニア(65歳以上)150円ほか ※2023年1月8日(日)は神奈川県民感謝の日のため、お得料金に ※開園時間・休園日・入園料はシーズンや年により変動するため、詳細はHP参照 ・所在地:平塚市寺田縄496-1 ・交通案内:JR平塚駅北口より神奈川中央交通バス「秦野駅(北口)行き71・74・75系統」で所要時間約20分「平塚養護学校前」下車徒歩約5分、小田急線秦野駅北口より神奈川中央交通バス「平塚駅(北口)行き 71・74系統」で所要時間約25分「平塚養護学校前」下車徒歩約5分 ・電話番号:0463-73-6170 ・HP:https://kana-garden.com Credit 取材・文・写真/ガーデンストーリー 編集部
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東京都
ピィト・アゥドルフ氏デザインが提案する ‘生命の輝きを放つガーデン’を訪ねて5
【「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」の植栽図】 アゥドルフ氏のガーデンの 真骨頂が見られる季節・秋 昨年2021年12月に植えてから初めての秋を迎える「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」。ガーデンのまわりのサクラがすっかり葉を落とし、生き生きと成長していた植物たちも落ち着きを見せ始めています。 まわりの紅葉・黄葉する木々と同様、植栽も茶色い枯れ穂などがあちこちに点在し、カラフルな花はポイントで色が添えられている程度。牧歌的でロマンティックな趣は、この時季にクライマックスを迎えます。 秋の庭の見どころは、植物の‘終わり’と‘盛り’の対比が見せる「生命の営み」の美しさ。終わりを感じさせる枯れた穂や枝と、まだまだ咲き続ける花が見事に調和し、秋の爽やかなそよ風や澄んだ陽光が混然一体化する、おおらかで自然な風景が広がっています。 常に自然からインスピレーションをもらいながら、植物それぞれに敬意を払って向き合うアゥドルフ氏。自然を眺めて感じたことを再創造してデザインしています。彼のデザインの大きな特長である‘植物の色・葉色だけでなく、フォルムや構造、テクスチャーなどの個性を見極め、斬新なレイヤーで配置した組み合わせ’は、そういった自然へのまなざしから生まれるものでしょう。 昨年植栽を手伝った上野ファームの上野砂由紀さんは、「植栽プランをひと見て、すぐに春~秋まで季節で美しく変化し続いていくことがよく分かりました。さまざまな植物をいろいろな角度から引きたてる、たくさんのオーナメンタルグラスたちにとてもわくわくしますね」。アゥドルフ氏らしい四季の変化があるのを感じたそうです。 花後はすぐに次の植物に交換するのではなく 終わりに向かう‘味わい’‘おもしろさ’をも生かすのがアゥドルフ氏の信条。開花期以外の植物がつくる‘間や余白’が何とも言えない余韻を漂わせ、観る人の感情を揺さぶります。秋はそれを最も感じられる季節かもしれません。 一度植えたら基本的に植え替えをしないアゥドルフ氏。今まで環境保護やサステナビリティについての主張を植栽に込めてきたわけではありませんが、結果として彼の提案するガーデン庭が今の時流に重なり、世界の庭園デザインのムーブメントとなっています。彼があるべき姿を早々と見抜き、それを当たり前のように自然に行っていたことが分かります。 この庭の設置の立役者である ランドスケープデザイナーの永村裕子さんが アゥドルフ氏の庭の一年を振り返る 「日本の気候は、特に梅雨以降から長期間蒸し暑く、欧米とはまったく異なります。その間ずっと心配で、スタッフの日報で気温や天気、雨後の水はけの様子、その他の気づきなどを教えてもらいながら、植物の生育を遠隔で見守りました。 これからの心配は、暖地でのだらだらとした‘衰退の美モードの移行’。「なかなか凛とした冬景色になりません。植物によって緑の葉で花をぽつぽつつけたまま越冬するものと、夏に弱ってうどんこ病など不健康な状態で休眠に入ったものなどが混ざって景色がまとまらないです。私の熊本の現場では、ドライフラワーの冬景色として残すものと、切り戻して緑のロゼット状で冬越しさせるものと選別し、秋の景色を「強制終了」させます。そのほうが庭としての体裁が保てるのですが、本場をまねてすべて枯れた藪のような姿のままシーズン1を終えさせるか、いまだに考え逡巡しています」。 「ナチュラリスティックを通すものも、勇気がいりますね。現場のみんなや日本全国のガーデナー仲間を頼って、最適解へ導けたらいいなと思います。今年は初年度にしては想像以上にアゥドルフ氏の作品らしい景色をところどころ見られるようになりました。次はもっと全体にムラなく展開できるように、みんなと考えながら取り組んでいこうと思います。日々の植物の手入れを前向きに頑張ってくれたスタッフ、各方面からのさまざまなサポートに感謝しています」。 世界各地の庭のデザインを手掛けているアゥドルフ氏。いずれもオランダからは簡単にガーデンに赴くことができません。しかし、考え抜かれて選ばれた多年草によるガーデンは、一般の花壇のように植え替える必要は基本的にありません。庭を管理するスタッフたちと思いを共有しながらガーデンの維持と進化を図っています。もちろんここ「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」も永村さんやスタッフと連携を取りながら、ここ多摩丘陵に広がるガーデンらしい世界を発信していきます。 秋の庭にさまざまな彩りを添える 個性的な多年草たち 「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」 以外の場所にも見どころがたくさん! いつも季節の草花で華やかに彩られている園路脇の花壇は見応えたっぷり。ぜひ、花合わせのご参考にしてください。こちらはHANA・BIYORIスタッフによる植栽です。 世界的に多くのガーデンを手掛けているピィト・アゥドルフ氏のアジア初のガーデンとなった「PIET OUDOLF GARDEN TOKYO」。欧米とは異なる「高温多湿」といった問題に配慮した選ばれた植物は今年の猛暑を乗り越え、1年を迎えようとしています。アゥドルフ氏によって再構築された自然が織り成す芸術性あふれる風景を、ぜひ堪能しに訪れてください。 【ガーデンデザイナー】 ピィト・アゥドルフ (Piet Oudolf) 1944年オランダ・ハーレム生まれ。1982年、オランダ東部の小さな村フメロに移り、多年草ナーセリー(植物栽培園)を始める。彼の育てた植物でデザインする、時間とともに美しさを増すガーデンは、多くの人の感情やインスピレーションを揺さぶり、園芸・造園界に大きなムーブメントを起こす。オランダ国内のみならず、ヨーロッパ、アメリカでさまざまなプロジェクトを手掛ける。植物やガーデンデザイン、ランドスケープに関する著書も多数。2017年にはドキュメンタリー映画「FIVE SEASONS」が制作・公開された。 Information 新感覚フラワーパーク HANA・BIYORI 東京都稲城市矢野口4015-1 TEL:044-966-8717 https://www.yomiuriland.com/hanabiyori/ 営業時間:10:00~17:00 ※公式サイト要確認 定休日:不定休(HPをご確認下さい) アクセス:京王「京王よみうりランド駅」より徒歩10分(無料シャトルバスあり)、小田急線「読売ランド駅」よりバスで約10分「よみうりランド」下車徒歩約8分 Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』、近著に『簡単で素敵な寄せ植えづくり』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。