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素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪40 埼玉「ガーデンセンターさにべる」
お気に入りが見つかるはず!充実した苗売り場づくり 北西に連なる山々の稜線を背景に広がる田畑…その中に「ガーデンセンターさにべる(以下さにべる)」はあります。70台も収容できる駐車場には、毎日オープンからひっきりなしにお気に入りを入手するべく花好きな人々が出入りしています。 駐車場側の木戸口から入ると、ひな壇状に並べられた無数の花苗パレットがお出迎え。足を踏み入れた途端、一気にテンションが上がります。 フラワーパレットは白で統一、花の可憐さや透明感をアピールしています。なにげないこだわりがそこここに。 かつては生産農家や苗の仲卸を行っていた「さにべる」。ポットマム生産時代を合わせると50年以上の歴史があり、30年ほど前に社長の間室照雄さんが園芸店をスタートさせました。現在も野菜苗と花植えを生産直売していますが、ショップは娘で店長の間室みどりさんが柱となり、長年培った園芸のノウハウと、生産者・市場との横のつながりを大切にしつつ、時代に沿うよう進化させています。 みどりさんが仕入れる苗は、どれも新鮮。市場からの仕入れだけでなく信頼のできる生産者に依頼したものも多く、多種多様な植物を最高の状態で提供できるように力を注いでいます。「苗も雑貨も、お気に入りを見つけてもらいたいという思いで揃えています」とみどりさん。 寄せ植えやハンギングに力を入れている「さにべる」。特にパンジー・ビオラは、たくさんの生産者から取り寄せ、充実させている。 ぜひ参考にしたい!プロの寄せ植え・花合わせ 店内には寄せ植えの見本鉢が点在。植物それぞれの魅力を引き出し、お客様の花合わせの参考になるように、サンプルとして飾っています。 売り場にあった寄せ植えご紹介!手軽に楽しめる愛らしい寄せ植えを集めました 「寄せ植えを美しくまとめるのに大切なのは、色づかい」とみどりさん。じつは、みどりさんは「趣味の園芸」など、テレビや雑誌に登場する人気園芸家。カラリストの資格も持っており、常に美しく見せることを意識しながら、植物に向き合っているのだそう。「さにべる」での講習会だけでなく、出張講習会やトークショーなどでも活躍しています。 東京農業大学農学部を卒業後、デンマークで4年間切り花を学んだというみどりさん。デンマークでは「最近ヒュッゲという言葉がよく使われていますが、それは花を愛するデンマークの人々が大切にしている‘居心地のよい空間・時間’のこと。ここで、ヒュッゲな暮らしを提案できたらと思っています」。 ショップでは、寄せ植えの楽しみを提案しているみどりさんが考案した培養土が販売されています。大きな特徴は、水はけと保水性を兼ね備え、腐食酸を多く含んでいること。腐食酸(フルボ酸)は、根の働きを助けて根張りをよくし、成長につなげてくれる今注目の成分です。近いうちに、寄せ植え用の肥料も発売予定です。「季節で寄せ植えが終わったときに再利用しやすいよう、短期間効くものにしています」とみどりさん。 屋外の用土コーナーには、土壌改良材などあらゆるアイテムが揃っている。 花苗以外も見どころたくさん外売り場&店まわり 花苗売り場の奥には、樹木コーナーが展開されています。取材時の秋に最も充実していたのはオリーブ。そのほか、美しい葉や花が楽しめるものが揃っています。 ハーブなどの花壇が設けられているオリーブコーナー。 店まわりも魅力的なコーナーがたくさん。ウッドフェンスで囲まれた売り場はつる植物や多年草で覆われ、牧歌的な雰囲気が漂っています。こののどかな雰囲気が好きなファンも多いそう。 エントランスにはニセアカシアが心地よい緑陰を作っている。 フィカス・プミラが古いポストやフェンスに活着し、瑞々しいシーンに。 古い車輪のオーナメントのまわりをユーパトリウム‘チョコレート’が覆う、ノスタルジックな風景。 店内のミニガーデンは、季節の寄せ植えを飾ったり、撮影場所や子どもが遊ぶ場になったり……。自由な発想で使える空間。 屋内売り場もあらゆるアイテムが盛りだくさん! 大きなハウスを活用した屋内売り場では、季節の鉢花や観葉植物、多肉植物、園芸資材などがそれぞれ島を作っています。どれも選ぶのに困ってしまいそうな広さと品揃えです。 ドライな雰囲気たっぷりの多肉・サボテンコーナー。 秋は、あらゆる春咲きの球根植物が揃う。 照雄さんは生産農家でもあり、奥にあるハウスでは、照雄さんの作った野菜苗が大人気。最近は、農家さんも買いに来るほどの充実ぶりです。 ブロッコリーの苗(左)と隣のハウスのハーブコーナー(右)。 姉妹で作り上げる見やすく楽しい売り場 みどりさんとともに店を回しているのは、妹の2人・小枝子さんと夏実さん。それぞれに得意分野が異なる最強の仲間です。仲のよい3姉妹が一緒に考え、最近形にしたのが観葉植物コーナー。冬は加温してあたたかい空間となりますが、夏は冷房し、冷涼な気候を好む植物を管理するという特別なコーナーです。「人にとっても心地よい場所です」とみどりさん。無骨なビニールハウスの印象を払拭する、ウッディでクールなデザインが売り場の雰囲気をぐっと高めています。 コーナーの内部は、観葉植物や進物用のラン、サンセベリアなどがひしめき合い、植物園の温室さながらの雰囲気です。 シンプルなデザインの什器もおしゃれで、手書きのポップが楽しい雰囲気。 左/近年人気のビカクシダも、大きさ・種類さまざまに揃う。 右/インドアプランツ用アイテムも、一緒の場所に。 一角に設けられた雑貨コーナーも見応え十分。ここはおもに小枝子さんがディスプレイを任されている場所。かつてブライダルの世界で花を飾ることを専門にしていた能力を発揮する場となっています。 はしごでやんわりと空間を区切り、いくつものシーンを展開。あらゆるテイストのアイテムが自然になじみ、それぞれのエリアが美しく整えられています。 ボタニカルの額を背景に、花瓶などのガラス器が飾られている。 ドライフラワーのブーケやバスケットなど、温かみのあるアイテムが並ぶエリア。 テンションが上がる、おしゃれなガーデニングツールもたくさん。 「さにべる」では、照雄さんや農家が作った野菜をはじめ、地元の養蜂家の蜂蜜、コーヒーなども販売しています。新鮮な野菜は午前中に売り切れになるほどの人気。 この日販売されていたコシヒカリは、照雄さんが育てたお米。パッケージは小枝子さんがデザイン。 散策しながら見つけよう!充実の園芸資材 庭に彩りを添えるアイテムも充実した「さにべる」。広いハウス内のあちこちにアイテムごとの空間が作られ、選びやすく陳列されています。 庭の雰囲気を高めてくれる、アイアンフェンスコーナー。目隠ししたいときや、つる植物の誘引に最適。 テラコッタやグラスファイバー、ブリキなど、用途や置く場所に合わせて容器も選んで。 間室みどりさんイチオシの本格派ハンドフォーク 「こんなツールが欲しい!」というガーデナーたちのリクエストから生まれた、浅野木工所(新潟県・三条)の本格的なガーデンツール。一般的なサイズより爪の部分がやや長く、柄につながるネック部分も長さや角度など、微妙な設計が施され、使いやすいのが魅力。広い場所でもへこたれません。掘る、混ぜる、耕す、1つで何役もこなす頼れる庭仕事の相棒です。ぜひ店頭で実物をご覧ください。 上から、草取り、草取り鎌、ハンドフォーク、ハンドスコップ。ハンドフォークはSunny valeのロゴ入り。 新鮮な苗・多様なアイテムを取り揃え、地域の人々の憩いの場となっている「ガーデンセンターさにべる」。寄せ植えやハンギングバスケットなど、各種教室も充実し、気軽に花と触れあえます。「sunny:降り注ぐ光」「vale:谷」という意味を持つ「さにべる」、その名の通り、みんなの暮らしを明るく照らすスポットです。ぜひ訪れてみてください。アクセスはJR高崎線「鴻巣」駅から川越観光バス(東松山駅行き)で約10分、東武東上線 「東松山駅」から川越観光バス(鴻巣駅・免許センター行き)で約10分、どちらも「谷口」停留所下車・バス停から約300m。
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埼玉県
【お出かけ情報】新しい仲間が加わった春のムーミン谷をのんびり散策しませんか?
ゆったりリラックスした一日を過ごせる「メッツァ」 ムーミンバレーパークは埼玉県飯能市の宮沢湖畔にある「メッツァ」の一部にあります。「メッツァ」とはフィンランド語で、森。北欧をお手本にしたライフスタイル提案型の複合型施設で、北欧のライフスタイルを感じられるマーケットやアクティビティが体験できる「メッツァビレッジ」と、ムーミンの物語をテーマにした「ムーミンバレーパーク」の2つのゾーンから構成されています。どちらもペットと一緒に入場ができ、お散歩や食事(テラス席)、ショッピングを楽しむことができます(※入場可能な施設・店舗はHPをご確認ください)。 フィンランドの陶器ブランド「ARABIA」の食器で提供されるカフェレストラン「nordics」。湖を望みながら食事ができる。 入り口からほど近い「メッツァビレッジ」は入場無料のエリア。季節ごとに移り変わる森と、野鳥が訪れる湖の景色を眺めながら、ゆったりと一日を過ごすことができます。湖のほとりに広がる芝生の広場にはデッキチェアが点在し、寝そべってキラキラ輝く湖面を見ているだけで、心も身体もリフレッシュ。もっとアクティブに過ごしたい人には、カヌーやクリアカヤック、アイランドボートなどのアクティビティがおすすめ。パラソル付きのアイランドボートにはテーブルが設置されており、湖上のピクニックが楽しめます。湖の周囲にはカフェやレストランが設けられているので、ランチもおやつも持たずに手ぶらでお出かけOKです。 カヌーはレンタルのほか、カヌー作り体験もできる。 北欧のヴィンテージアイテムなどが並ぶ「森と湖のマルシェ」 2023年4月22日(土)・23日(日)、メッツァビレッジで北欧のアイテムと自然が楽しめる「森と湖のマルシェ」が開催されます。北欧のヴィンテージアイテムや植物店、伝統料理を販売するキッチンカーなどが出店します。湖のほとりでゆったりショッピングを楽しみませんか? 第19回森と湖のマルシェ 開催日時/2023年4月22日(土)・23日(日)10〜16時場所/メッツァビレッジ特設会場*雨天中止 物語の世界を堪能できるムーミンバレーパーク 湖のほとりを歩いてメッツァビレッジの奥へと進むと、「ムーミンバレーパーク」にたどり着きます。「本」の形をしたウェルカムゲートをくぐり抜ければ、ムーミンの物語の舞台、ムーミン谷が待っています。フィンランドの作家トーベ・ヤンソンによるムーミン・シリーズは、ムーミン一家と個性的な仲間たちが、美しい自然に囲まれ平和でのんびりとした日常生活を過ごしながらも、冒険を通じて成長し自立していく姿が描かれています。 ムーミン一家と仲間たちが暮らすムーミン屋敷。素朴で上品なインテリアは必見。 ムーミンパパの作った水浴び小屋。 戦いやアクションといった派手な展開はない代わりに、日常の暮らしの喜びと厳しくも豊かな自然と対峙する方法や他者との調和、自立といった、どの時代にも普遍的なテーマで人々を魅了し、世界中で愛されている物語です。舞台となるムーミン谷は、海と山に囲まれ、春にはムーミンママが丹精する庭が花いっぱいになる美しい場所です。 春の花がいっぱいのムーミン屋敷の庭。 この物語が生まれた北欧フィンランドでは、人々は幼い頃から自然と共生し、自然から多くのことを学んで暮らしています。春のイベント「スプリングフェスティバル」では、植物採集が好きなヘムレンさんをムーミンバレーパークの新しい仲間として迎え入れ、フィンランドのような身近に「学び」を体験できる「Hemulen‘s academy(ヘムレンズアカデミー)」を行っています。アカデミーでは湖畔の周りを彩る季節の植物や水辺を訪れる野鳥の観察など、ムーミンバレーパークの自然や生き物を学ぶことができるフィールドワークに参加できます。 植物学者のヘムレンさん。デスクの上に並ぶのはヘムレンさんの収集物?©︎Moomin CharactersTM 夢いっぱいのアトラクションとかわいいムーミングッズ ©︎Moomin CharactersTM 園内では、若き日のムーミンパパたちの冒険を一緒に体験できる「海のオーケストラ号」や、ムーミンやムーミン谷の仲間たちによる歌とダンスのエンターテイメントショーなど、夢いっぱいのアトラクションが待っています。ほかにも、ここでしか買えないリトルミイのグッズが集合した「リトルミイの店」や、約400冊のムーミン関連書籍がずらりと並ぶ「ライブラリー カフェ」、売り場面積・商品数が世界最大級のショップ「ムーミン谷の売店」など、ショッピングの楽しみも満載。 おしゃれな「ライブラリー カフェ」。ムーミンのマシュマロを浮かべたキュートなラテ。 豊かな自然の中で、のんびりそれぞれのペースで過ごせて、かわいいムーミンたちにも出会えるメッツァへ、春のお散歩に出かけてみませんか。 メッツァ ■住所/埼玉県飯能市宮沢327-6■HP https://metsa-hanno.com■アクセス/西武線飯能駅から「メッツァ」行き直行バス、または「メッツァ経由武蔵高萩駅」行き路線バスで13分 メッツァビレッジ ■営業時間/平日10:00〜18:00 土日祝10:00〜19:00■入場料/無料 ムーミンバレーパーク ■営業時間/平日10:00〜17:00 土日祝10:00〜18:00※お正月、お盆休み、GWなど、施設が指定する日において営業時間が異なる場合があります。HPでご確認ください。■入場料/1デーパス 【2023年4月30日までの料金】大人(中学生以上):前売り販売3,000円 通常販売3,200円子ども(4歳以上小学生以下):前売り販売1,800円 通常販売2,000円【2023年5月1日からの料金】大人(中学生以上):前売り販売3,400円 通常販売3,600円子ども(4歳以上小学生以下):前売り販売2,000円 通常販売2,200円
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埼玉県
素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪39 埼玉「沼ノ上農園」
効果的に配された植物苗に高揚感がアップ! 格好いい建物にとりどりのカラーリーフが映える、園芸ベテランも心浮き立つ店構え。多くのガーデナーに支持されるここ沼ノ上農園は、創業100年を超える園芸店です。敷地内には37台を収容する駐車場があり、毎朝オープン時から車がひっきりなしに出入りしています。 ショップのフロントには、ボリュームのあるカラーリーフの苗がウェルカムグリーンに。建物側面には寄せ植えに使いやすい小さめのポット苗が3段シェルフにずらりと並びます。ショップを美しく彩る陳列と、多品種を見比べやすい陳列をはっきり使い分け、お客さまに気持ちよくショッピングしていただけるよう工夫を凝らしています。 ゴールド葉のプリペットやノルウェーカエデ、さまざまな葉形のアカシアなど、人気のリーフ類が多彩に揃っている。 奥に広がる2つのハウスは花やオージープランツでいっぱい! 敷地奥のエリアには、季節の花苗を陳列する大きなハウスが2基。2つのハウス共通のエントランス周辺は、植物や雑貨類を巧みに組み合わせたディスプレイコーナーで、ワクワク感が高まります。 種類の豊富さに加え、求めやすい価格で提供することを第一に心がけている「沼ノ上農園」。オーナーの日暮浩司さんが良質な苗をタイミングよく仕入れ、お客様に喜んでいただける価格で販売しています。この努力が評判を呼び、初心者からベテランまで幅広い層のお客様に支持されています。 大人ほどの高さのあるハロウィン用の人形と、ジーンズをリメイクしたパラソルが目を引く。 大人っぽい空間づくりに活躍する樹脂製のコンテナも充実。 植物が映える空間づくりが徹底されている。 「苗の回転がとても速いので、週5回も仕入れに出ているんですよ」と息子の準さん。「父と一緒に仕入れに行くんですけれど、よいものを見つけ出す目、どんどん買い付けていく手際のよさなどに、いつも本当に感心させられます」。 季節の草花が並ぶ手前側のハウス内。ひと苗ずつ間隔をあけ、日当たりや風通しを確保して管理している。 あちこちに展示されている多彩な寄せ植え。繊細で愛らしい花合わせ。 もう一つのハウスは、近年注目されているオージープランツの売り場です。今人気のバンクシアやプロテア、グレヴィレアなどが揃っています。 オージーコーナーにも古いドラム缶やトランクなどを使い、メンズライクな楽しいディスプレイが施されています。 今、準さんが一番力を注いでいるのがオージープランツ。「日本の環境に合うものと難しいものがあり、同じ属でも地域が異なれば、好む環境が変わってきます。例えば一番人気のプロテアの場合、銀葉のクイーン系よりも緑葉のキング系のほうが断然育てやすい。個人的にはプロテアよりも育てやすいバンクシアがおすすめですが、バンクシアでもオーストラリアの西部・東部で性質や形が異なってきます。西部原産のもののほうが育てやすいものが多いですね」。 東京農業短期大学在学時代から芸人を目指し、5年の芸人生活を経て沼ノ上農園に入社した準さん。父・浩司さんに追いつくべく、ベテランの両親に厳しく鍛えられながら、日々あらゆる勉強を続けているそう。 【準さんおすすめのオージープランツ選】 ■プロテア 左/プロテア‘ポッサムマジック’(クイーン系)右/キングプロテア‘リトルプリンス’(キング系) ■バンクシア・グレヴィレア 左/バンクシア・アエムラ(光沢のある葉で、花穂の色はライムグリーン)右/バンクシア‘バースデーキャンドル’(細葉が特徴で、花穂の色は黄~オレンジ) 左/バンクシア‘ピグミーボッサム’(東部原産。枝を横に広げて育ち、とても丈夫)右/バンクシア・ブレクニフォリア(西部原産。ほふく性で比較的育てやすい) 左/バンクシア・スピヌロサ ‘ヘアピン’ (東部原産。花穂の色はオレンジ。細葉で丈夫)右/グレヴィレア‘ピーチアンドクリーム’(花色がきれいで、花付きがよく丈夫) メインの建物の中は見応えある品揃えとディスプレイ ショップの顔でもある建物は、屋内のほうが管理しやすい植物と資材類の売り場です。風雨をしのぐためのクリアパネルの天井が備え付けられた場所は、まるで植物園を思わせる温室仕様。観葉植物やサボテン、多肉植物がイキイキと葉を広げています。 こちらでは、あらゆるスタイルに対応できるよう、陶器や樹脂、プラスチックなどさまざまな素材の鉢が大小いろいろ揃っています。きっとお好みの鉢が見つかるはず。 カジュアル度の高いブリキのバケツ型コンテナ。鉢カバーとして使っても。 メンズライクにしつらえられたコーナーにはどんな空間にも合う雑貨がいっぱい ショップ内はまるでワンダーランド。ひしめくように雑貨とグリーンが飾られています。印象的なのは、フェイクグリーン。植物が育てにくい暗い場所や屋内はフェイクがおすすめ、効果絶大です。 長いタイプのさまざまなフェイクグリーンをいくつかまとめて吊すと、青々とした独特な空間を演出できる。 花瓶に挿すようなタイプも充実。いま流行のビカクシダやアガベなども並んでいる。 大小の観葉植物でいっぱいのエリア。ハンギングタイプやチランジアなどが青々と頭上を覆っているさまは、まるで熱帯温室のワンシーンのよう。冬の寒い日はここに来れば、植物たちから元気がもらえるはず。 大型の観葉植物コーナーの脇には、大小の鉢カバーが陳列。植物をおしゃれに彩るアイテムが揃っています。 雑貨感覚で植物に親しめる、楽しいガラス類のアイテムも充実。 多種多様なエアプランツがワイヤーラックにカッコよく収められている。 どこもかしこも、センスよく感心させられるディスプレイ。これは主に浩司さんと奥様の美智代さんの好みで統一されています。浩司さんは、かつて結婚式場のディスプレイ業の経験もあり、人目を引くメリハリの効いた飾り方が得意です。メンズライクテイストを好む美智代さんの助けも得て、「沼ノ上農園」の洒脱な空間づくりが徹底されています。 「沼ノ上農園」のディスプレイにひと役買っているのが、カジュアルな絵の額縁。こまごましたものが多く、雑然としがちな空間の‘間’や‘背景’になるだけでなく、見せたくないものを隠してくれる優れものアイテムです。いろいろ便利に使っています。 英国のHAWSのジョーロなど、ガーデンツールも揃っています。使わないときはかけておくだけでも絵になる、おしゃれなアイテムが目白押しです。 沼ノ上農園・日暮準さんのおすすめYouTubeチャンネル 「沼ノ上農園」では、YouTubeチャンネルの充実に力を注いでいます。寄せ植え、花壇の植え込み、観葉植物の管理方法などの動画をメインに随時アップ。案内役は ‘花屋のせがれのジュン’こと準さん。元芸人ならではのユニークなトークで、初心者にも分かりやすく教えてくれます。 「分からないことがありましたら、動画のコメントやインスタなどにお気軽にご質問ください。オージープランツは『どこよりも分かりやすい』を意識してご案内しています」 寄せ植えの動画も人気。 「新鮮」「お求めやすく」「分かりやすく」「おしゃれに」が、多くのガーデナーの支持を受けている「沼ノ上農園」。野菜などはホームセンターに任せ、専門家にしかできない方法を追求し、ガーデニングの今を提供しています。ぜひ訪れてみてください。 アクセスはJR「南浦和」駅から国際興業バス(南浦55・柳崎循環・南浦和東口行、柳崎先回り)で約6分、「二十三夜」停留所下車徒歩約2分
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埼玉県
素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪25 埼玉「玄蕃ファーム」
せわしない日常から 離れられる格好の場所 田園の中を走るまっすぐな道沿いに突如現れる、小さな雑木林を背に広がる玄蕃ファーム。うっかり通り過ぎてしまいそうな場所ですが、歩道に沿って植わる木々と花々の合間からのぞく看板が目印です。 ショップの入り口も木々に覆われ、まるでどこかの高原にでも来たような雰囲気。二股に分かれた園路のつくりを見るだけで、店主のセンスのよさが分かります。 ショップに入ってすぐの右側に広がる、宿根草や鉢物コーナー。葉色が美しい樹木やパーゴラなどの構造物で重層的な風景を描き、奥の庭への期待感を高めています。 イギリスの田園風景への憧れから 誕生したメルヘンな空間 スタジオジブリの映画のワンシーンのような風景が広がる玄蕃ファーム。この店は、オーナーである武正祐二郎さんが「ここを訪れる人たちに、豊かな田園生活を感じてほしい」という思いを込めて、約20年前にオープンさせた園芸店です。「玄蕃(げんばん)」とは、江戸時代にこの地(埼玉県加須市大越)に居を構えたご先祖様の名前からとったものだとか。代々大切に受け継がれてきたこの土地への愛情がうかがえます。 売り場ももともとは雑木林でしたが、ショップをオープンさせるために、祐二郎さんは、奥様と友人の力を借りながら約2年がかりで開墾し、庭らしく整えていきました。 ショップを始める前祐二郎さんは、なんと庭や植物とは関係のない会社勤めのサラリーマン。海外出張が多く、各国の美しい風景や人々の暮らしを積極的に見て回っていました。その中で最も強く心惹かれたのは、イギリス・湖水地方の田舎の風景と庭。おとぎ話に出てくるようなシーンが続く、イギリスの街並み。古い家に手を入れながら、大切に住み続けているイギリスの人々の暮らしは、忙しい日々を過ごしている祐二郎さんの、まさに理想とするものでした。 日本で同じような時間を過ごすには…と考えた結果、思い切って早期退職。自宅の前に広がる雑木林を利用して、ショップをオープンさせることに決めたのです。 一念発起してショップづくりに心血を注いだ祐二郎さん。子どもの頃から植物や生き物が大好きだったので、このような庭づくりは、自身にとって自然な流れでした。当時はまだ50代はじめだったので、友人の力を借り、自身も楽しみながら店・庭づくりに専念。おとぎ話が暮らしの中に溶け込んでいるイギリスのエッセンスを、日本の景色にバランスよく取り入れていきました。10年ほど前から、息子の純一さんの若い感性が加わり、多彩に進化し続けています。 【雑木のエリアでのあしらいにZoom Up】 半日楽しめる 回遊式のガーデン 玄蕃ファームは、時計のついた建物とガラスハウスを軸に、回遊できるようにデザインされています。雑木のゾーン以外は、陽がたっぷり注ぐ明るいガーデン。エリアによって、趣ががらりと異なります。 雑木のゾーンには日陰の植物の苗が並んでいますが、隣のエリアは緑陰を利用して、半日陰を好む、楚々とした季節の山野草類の売り場です。苗の横には鉢植えの見本鉢が配されています。「自分の手で見本鉢を育てることは、お客様にどのように育つのかを見ていただくだけでなく、自分にとっても勉強になるんです」と純一さん。「お客様に分かりやすい」が第一のモットーだそう。 遊び心満載の売り場には 心が喜ぶシーンがたくさん 回遊できるショップ内には、見どころが満載です。しっとりとした雰囲気の中にユニークな仕掛けが潜む雑木のエリア同様、素朴でほっこりとするシーンが随所に散りばめられています。 自然な庭づくりに欠かせない樹木類も充実しています。依頼すれば、庭木1株から配達・植え込みサービスも行っています(エリア限定あり)。 店の奥のほうでは、のどかな風景づくりにひと役かっているマスコットアニマルたちに出合えます。大人気のヤギは3頭いて、みんな女の子。以前は雄もいましたが、「どんなに高い柵を作っても飛び越えてしまうなどあまりにも暴れん坊なので、譲ってくれた人にお返しして雌3頭を飼うことにしました」と純一さん。名前は ‘ラン’、‘ラッテ’、‘ハナ’。いつもは小屋の中でのんびりしていますが、ときどき店の裏手で草を食んでいます。 多肉植物を屋根に載せた飼育小屋の中には、つがいのチャボと5羽の子どもたちが、にぎやかに暮らしています。大人も子どもも心なごむ場所です。 フロントエリアは、構造物で仕切られた変化に富んだゾーン。木製パーゴラの先に腰高の大谷石の飾り壁を設けて視線をストップし、奥への期待感を高めています。石を積んだ空間まわりにも、仕掛けがたくさん。 【フロントエリアでのあしらいをZoom Up】 廃材で建てたカフェで 手づくりのピザを味わって 時計がついた建屋は、玄蕃ファームのシンボル的な存在。これも祐二郎さんが知人の手を借りて建てたものです。まるで廃校になった小学校のように古びて見えますが、じつは建ててからまだ20年ほどしか経っていません。この雰囲気は、使う材料を廃材にこだわった、祐二郎さんの感性によるもの。イギリスで見た風景を、日本に合うようにアレンジしながら再現しています。 時計のついた建物の中はカフェ。素朴で愛らしい内装は、森の中のペンションに来たようなしつらいです。ここでは、純一さん手づくりのピザやスイーツが楽しめます。 ピザ窯は、2011年の東日本大震災直前に親子で作ったもので、「震度5強という揺れでも壊れなかったんですよ」と話す純一さん。以前はまったく違う世界の仕事についていて、植物にはほとんど興味がなかったとか。ほんの軽い気持ちで10年ほど前に入社し、園芸の勉強を開始、植物・庭づくりの世界の想像以上の奥深さに驚いたといいます。そして、日々の努力と、雑木林と共に育った心の中にある原風景のおかげで、今では「玄蕃ファームのような庭をつくってほしい」と、お客様から引っ張りだこの人気ガーデナーに。祐二郎さんの右腕であり、店長として活躍しています。 イギリスの田園の雰囲気を感じさせるのどかな店「玄蕃ファーム」。遠くから訪れる人も多い、心なごむ空間です。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、東北自動車道・羽生ICから車で約5分。 【GARDEN DATA】 玄蕃ファーム 埼玉県加須市大越865 TEL 0480-69-1231 営業時間:10:00~17:00 カフェは、10:30~17:00(ランチタイム 11:00~13:00) 定休日:2021年春より当面の間は、 「GARDEN:月曜のみ定休 CAFE:月~木曜 定休(祝日はどちらも営業)」 夏季・年末年始に休業あり(詳細は更新情報に掲載) http://www.genbanfarm.co.jp/ Facebook:玄番ファーム Instagram:junichitakemasa Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
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埼玉県
シェフ信頼の濃厚風味ハーブを生産する「ポタジェガーデン」
ハーブのプロのシェフたちが使う濃厚ハーブ 料理や暮らしの中で、ハーブを使う人が増えてきています。バジルやローズマリー、ミント、オレガノ、タイムなどのキッチンハーブは、スーパーの野菜売り場でも目にするようになり、使ったことがある人も多いのではないでしょうか。ヨーロッパではハーブは料理に欠かせない素材の一つで、特にフランスでは「ブーケガルニ」「フィーヌ・ゼルブ」「エルブ・ド・プロヴァンス」といった複数のハーブを組み合わせた伝統的なブレンドがあり、ハーブの繊細な味や香りが重視されます。 そんなハーブに強いこだわりを持つシェフたちがこぞって魅了されるハーブ専門の農場が、埼玉県久喜市菖蒲町にあります。「ポタジェガーデン」は、創業33年のハーブ専門農場です。年間を通して約150種類のハーブを栽培しており、苗部門と、収穫したハーブを販売するフレッシュ部門があります。この豊富な品種数と強い風味が、「ポタジェガーデン」のハーブの魅力。ミシュランの星を有する超有名シェフなど、ハーブを頻繁に使うプロの料理人たちが「ポタジェガーデン」のハーブを自身のレストランで使っています。 「以前、フランスから来日したシェフが晩餐会に使う料理の一品に、どうしてもソレルが必要ということで、ポタジェガーデンに連絡が入ったことがありました。みんなで慌ててソレルの葉を収穫してお届けしたのですが、うちに聞けば大丈夫という信頼をプロから得られているのは、嬉しいですね」と話すのは、社長で農場長の平田智康さん。ハーブ特有の風味を最大限に優先し、土耕栽培にこだわってきました。 土耕栽培のきめ細かな管理で生まれる風味豊かなハーブ ハーブには水耕栽培という選択肢もあり、棚状に栽培できる水耕栽培では省スペースで高収穫が望めます。しかし「ポタジェガーデン」では、ハーブ本来の風味を出すために土耕栽培にこだわり、長野や千葉へと圃場を広げ、さらに沖縄から青森まで広く生産を農家に委託。温暖地から寒冷地まで気候の異なる栽培地を持つことで、年間を通してあらゆるハーブを安定的に供給しています。ハーブ苗用の土はオリジナルのブレンドを2種類作り、生育過程によって変えたり、ハウスの湿度や水やりなども品種ごとに調整するなど、きめ細かな栽培管理を行っています。 長年のブリーダーとしての目が生きる親株選定 しかし、シェフ絶賛の風味の秘密はこれだけではありません。じつは、平田さんは「ポタジェガーデン」に勤める以前、種苗会社で育種に携わっており、長年のブリーダーとしての経験を生かして親株の選定を行っています。 「ハーブは種を播く方法と挿し木で増やす方法がありますが、親株にどれを選ぶかというところが重要です。植物は生き物ですから、同じ品種でも香り、味、丈夫さなどは一見、同じようで、すべて微妙に異なります。その微妙な個体差を見抜き、優秀な株を選抜して親株に選ぶことは、最初のスタート地点での大事な品質選定なんです」 親株の選定には、長年の経験に加え、味や香りに対する感性が不可欠ですが、平田さんに限らず「ポタジェガーデン」のスタッフは、自らハーブを暮らしの中で楽しみ、味や香りを熟知しているといいます。そして時には、スタッフから「こんなハーブが欲しい!」と新しい栽培品目の提案があることも。 「近年のヒットは、スタッフから提案があったイエルバブエナ・ミント。カクテルのモヒートに入れるミントです。ミントはスペアミントやペパーミントが有名ですが、モヒートの本場キューバでは、ミントといえばイエルバブエナ。ということで栽培したところ、大人気になりました。作家のヘミングウェイがモヒートを好んだことから、ラベルは『老人と海』をイメージした絵にしました」。 ハーブを愛して使い楽しむスタッフたちによる手作りタグ じつは、「ポタジェガーデン」のハーブ苗に挿し込まれているプランツラベルは、すべてスタッフたちの手描き。それぞれに、おすすめの食べ方や使い方、またイエルバブエナのようにそのハーブの背景にあるストーリーなどを色鉛筆で描き、ハーブの持つ豊かな魅力を伝えています。 「みんなそれぞれに好みも違うし、使い方もいろいろだし、背景に文学や伝説などさまざまなものがあるから話が尽きないんですよ。ちなみに、僕はルッコラが大好き。サラダにして食べるんですが、ゴマみたいな味わいがあって、これだけで美味しい。あと、安いイワシを買ってきて、腹の中にタイムを挟んで塩をして焼くだけで絶品! ハーブって使い方が難しいと思われることもあるんですが、逆ですよ。誰でも簡単に料理上手になれるのが魅力。料理が得意じゃないっていう人にこそ使ってみてほしいです」。 ポタジェガーデン人気のハーブ5選! 実際、「ポタジェガーデン」で人気のハーブも料理で頻繁に使うものばかりです。 「ポタジェガーデン」で今、最も人気があるハーブを紹介していただきました。 セルバチコ/ルッコラの原種といわれるハーブでルッコラより味が濃い。 ディル/魚のハーブと呼ばれるくらい魚と好相性。カルパッチョが最高。 パクチー/東南アジアやメキシコ料理によく使われる。独特の風味は好みが分かれる。 バジル/ハーブの王様。よく使われるスイート・バジルのほか多くの品種がある。 スペアミント/メントール成分が少なく風味が柔らか。 ハーブでより豊かな文化を作るのが目標 「ハーブはたくさんの種類があるうえに、ブレンドすると相乗効果で香りのハーモニーみたいなものが生まれるところも魅力。ちょうど香水の調香のように、ブレンド次第で香りが長もちしたり、旨みがグッと引き立ったり。美味しいものが好きだから料理の話ばかりになってしまいましたが、香りでリラックスできたり、リフレッシュできたり、ハーブの世界はとても奥深いんです。それに私たちも新しい品種に出合うことがまだまだあり、皆さんの暮らしに新鮮な空気を送れるユニークなハーブを追求し、新しいより豊かな文化を作っていくのが私たちの目標です」と平田さん。 ハーブと美味しいものへの探究心で、暮らしに新しい扉を開いてくれそうです。 Information 取材協力/ポタジェガーデン 会社HP https://www.potagegarden.co.jp/ 通販サイト https://www.rakuten.ne.jp/gold/potager/ Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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埼玉県
素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪6 埼玉「フローラ黒田園芸」
ショップの目玉の一つ 来客の目を引く美しいサンプルガーデン シックでナチュラルな寄せ植えづくりで常に注目を浴びているスタッフの黒田健太郎さん。彼が花や雑貨で生み出す世界は透明感にあふれており、美しいものに敏感なガーデナーから絶大な支持を集めています。 そんな健太郎さんがつくるショップの見どころの一つが、“サンプルガーデン”。販売などの合間をぬって手入れしている、奥行きのある美しい庭です。季節を通して見どころが満載で、早春は瑞々しい葉が美しい宿根草や春咲きの球根植物、夏はインパクトの強いサルビアやダリア、カンナなどの宿根草、そして秋は落ち着いた大人色のキク科の花とグラス類など、季節の草花が競うように花壇を彩ります。 色鮮やかなのに自然に見えるのは、健太郎さんの計算によるもの。「植物は整然と揃えて並べて植えるのではなく、異なる草丈で高低差を出しながら植栽に凹凸をつけ、立体感のあるナチュラルな風景に見えるように工夫しています。植えたばかりの植物でも、植え込んでしばらく経過したように見えるよう、成長して枝が暴れたような苗を使うことが多いんですよ」と健太郎さん。草花のほか、コバノズイナやメギ、フィソカルパスなどの灌木を用いて、植栽にメリハリをつけています。 庭を盛り上げる数々のDIYも必見! サンプルガーデンや売り場を盛り立てているのが、小屋やあずまやなどのDIY。ツタが絡み、あしらわれた雑貨が見え隠れするさまは、こなれ感たっぷりでショップの見せ場の一つとなっています。これらは健太郎さんがデザインを考え、DIYが得意な社長さんがつくったもの。もともとは、高齢のお客様のために、休憩しながら花が選べるようにしつらえたものでしたが、今では絵になる点景物として、訪れた人の目を楽しませています。 かつては生産者だったからこそ 今にたどり着いた努力 「フローラ黒田園芸」は、かつてペチュニアやベゴニアなどをつくる生産農家でした。今から40年ほど前、生産した苗を社長さん(健太郎さんの父)が売り始めたのがショップの始まりです。そして数年後、健太郎さん兄弟が加わり、店はどんどんパワーアップしていきました。 もともとインテリアに興味があり、子どもの頃からおしゃれなインテリア雑誌などを眺めることが好きだった健太郎さん。そのせいもあって、学校卒業後は都内の観葉植物や花卉装飾を請け負う会社で老舗の料亭や高級紳士服店などの装飾に従事していました。当時会社には、スピーディーにきれいに装飾を行うタイプと、話術に長けたタイプの先輩2人がいて、彼らの動きがとても勉強になったといいます。 数年の修行から戻ってフローラ黒田園芸に入社。まず最初に取り組んだのは、「つくりすぎた苗や人気のない色の花苗をどうするか」ということでした。そこで修行で学んだディスプレイ感覚を生かし、人気のない花をディスプレイで魅力的に見せて、販売につなげることに注力。そうすることで、ただ店頭に並べるだけでは伝わらなかった花の魅力がお客様に届き、次々と手に取ってもらえるようになりました。そのとき健太郎さんは、ディスプレイ力が販売力に直結することを確信。これが今のショップの魅力につながる原点となります。 ショップが軌道に乗ると、苗の生産時に使っていたガラスハウスを店舗らしく改造。前面のガラスをレンガ積みのウォールに変えて、おしゃれな店構えにしつらえました。手を加えたのはほんの一部分ですが、イギリスのような雰囲気がほんのりと漂う空間に生まれ変わりました。 健太郎さん、社長であるお父様、弟の和義さんが数人のスタッフの協力を得て運営する「フローラ黒田園芸」。3人とも、何でも一通りできますが、得意分野を生かすために役割分担しています。健太郎さんは寄せ植えづくりや広報を、社長さんはDIY、和義さんは植物の仕入れを主に担当。それぞれの個性を尊重しながら、一丸となってショップを魅力的に見せる努力を重ねています。 売り場に点在する寄せ植えもチェック! 飾り方まで参考に 健太郎さんがつくる寄せ植えは、外の売り場に点在しています。ただ単にアレンジを並べただけでなく、雑貨と合わせてコーディネートも提案。「植物・コンテナ・背景」の3つの要素をしっかり考えることが重要だということが分かります。 建物内も見どころたくさん! グリーンや雑貨の使い方が学べる レンガの壁が印象的なガラスのハウス内は、インテリアグリーンや雑貨、資材売り場。こちらも屋外売り場同様、参考になるシーンにあふれています。これらのディスプレイを意識しながら店内を回れば、素敵なヒントがいくつも見つかります。 素敵なコーディネートの秘密は ドライフラワー使いにあり! 健太郎さんのコーディネートは、いずれも見る側の想像をかき立てる不思議な魅力をたたえています。例えば、深い森を思わせたり、フェアリーが出て来そうだったり……。ガーデニングの世界を超え、おとぎ話の世界に誘うような雰囲気があるのです。この独特な世界づくりに欠かせないのが、花壇の枝や実などを利用したドライフラワーです。 庭で咲いた花のうちドライフラワーに向くものは、はじめは切り花としてフレッシュを飾り、その後、枯れたものをドライとして生かすという健太郎さん。瑞々しい状態とは異なる魅力を放ってくれます。 ディスプレイで使うアイテムが並ぶ バックヤードも魅力的 園芸誌などから寄せ植えの取材・撮影依頼も多い健太郎さん。撮影時にアレンジと一緒に飾るアイテムにも、古びた雑貨やドライフラワーを多く使っています。これらのアイテムは、屋内の売り場の一角に無造作な雰囲気で並べられています。ややほこりをかぶったような雰囲気も味わいがあり、また一興。 社長さんが育てたおいしい実り。 ぜひ、お土産にどうぞ 「フローラ黒田園芸」では、店舗の周りにある畑で採れた収穫物が、花苗に交じってときどき店頭に並びます。冬季はショップの隣にある畑で穫れたミカンを販売。サツマイモや柿など季節の収穫物が並ぶことも。とてもお得な価格で、お土産に最適。 「フローラ黒田園芸」イチオシのグッズはコレ! ベンチプランター 健太郎さんがオススメするのは、社長さんお手製の「ベンチ型プランター」。コンパクトサイズで玄関先やベランダにぴったりです。植える部分がやや浅いので、小型の草花や多肉植物を育てるのに最適。色は9色ほどありますが、「手づくりなので、店頭にあったりなかったりします。興味のある方は、ぜひスタッフにお声がけください」と健太郎さん。大きさはワンサイズでW71.5×D32×H71cm。 抜群のコーディネートセンスで、地域密着型の園芸店を全国から人が集まる人気園芸店に成長させた「フローラ黒田園芸」。今もなお地域の人たちに愛され続ける理由は、近所の人が立ち寄りやすい“オープンな雰囲気”を常に意識しているから。家族経営の強みを最大限に生かし、アットホームな雰囲気が店内を包んでいます。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、JR大宮駅・北与野駅・埼玉新都心駅からバスで約10~15分。「円阿弥」下車・徒歩4分。 【GARDEN DATA】 フローラ黒田園芸 〒338-0007埼玉県さいたま市中央区円阿弥1-3-9 TEL: 048-853-4547 URL: http://florakurodaengei.com/ 営業時間:9:00~18:30春夏(3~10月)、9:00~18:00秋冬(11~2月) 定休日:無休(正月を除く) 併せて読みたい ・黒田健太郎さんに学ぶLesson3 数株で素敵に! シンプル寄せ植え&コーディネート ・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア ・Junk sweet garden tef*tef*が教えるワンランク上の寄せ植えテクニック Credit 写真&文/井上園子 ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。 写真協力/黒田健太郎