素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪6 埼玉「フローラ黒田園芸」
一口に園芸店といっても、今やさまざまなスタイルのショップがあります。それぞれのショップの個性が色濃く反映されたこだわりの空間は、私たちのイマジネーションを刺激し、ガーデニングのセンスを磨ける最高の場所。今回は、美しい寄せ植えとシーンづくりで、多くのガーデナーから絶大な人気を誇るショップ「フローラ黒田園芸」を訪ねました。
目次
ショップの目玉の一つ
来客の目を引く美しいサンプルガーデン
シックでナチュラルな寄せ植えづくりで常に注目を浴びているスタッフの黒田健太郎さん。彼が花や雑貨で生み出す世界は透明感にあふれており、美しいものに敏感なガーデナーから絶大な支持を集めています。
そんな健太郎さんがつくるショップの見どころの一つが、“サンプルガーデン”。販売などの合間をぬって手入れしている、奥行きのある美しい庭です。季節を通して見どころが満載で、早春は瑞々しい葉が美しい宿根草や春咲きの球根植物、夏はインパクトの強いサルビアやダリア、カンナなどの宿根草、そして秋は落ち着いた大人色のキク科の花とグラス類など、季節の草花が競うように花壇を彩ります。
色鮮やかなのに自然に見えるのは、健太郎さんの計算によるもの。「植物は整然と揃えて並べて植えるのではなく、異なる草丈で高低差を出しながら植栽に凹凸をつけ、立体感のあるナチュラルな風景に見えるように工夫しています。植えたばかりの植物でも、植え込んでしばらく経過したように見えるよう、成長して枝が暴れたような苗を使うことが多いんですよ」と健太郎さん。草花のほか、コバノズイナやメギ、フィソカルパスなどの灌木を用いて、植栽にメリハリをつけています。
庭を盛り上げる数々のDIYも必見!
サンプルガーデンや売り場を盛り立てているのが、小屋やあずまやなどのDIY。ツタが絡み、あしらわれた雑貨が見え隠れするさまは、こなれ感たっぷりでショップの見せ場の一つとなっています。これらは健太郎さんがデザインを考え、DIYが得意な社長さんがつくったもの。もともとは、高齢のお客様のために、休憩しながら花が選べるようにしつらえたものでしたが、今では絵になる点景物として、訪れた人の目を楽しませています。
かつては生産者だったからこそ
今にたどり着いた努力
「フローラ黒田園芸」は、かつてペチュニアやベゴニアなどをつくる生産農家でした。今から40年ほど前、生産した苗を社長さん(健太郎さんの父)が売り始めたのがショップの始まりです。そして数年後、健太郎さん兄弟が加わり、店はどんどんパワーアップしていきました。
もともとインテリアに興味があり、子どもの頃からおしゃれなインテリア雑誌などを眺めることが好きだった健太郎さん。そのせいもあって、学校卒業後は都内の観葉植物や花卉装飾を請け負う会社で老舗の料亭や高級紳士服店などの装飾に従事していました。当時会社には、スピーディーにきれいに装飾を行うタイプと、話術に長けたタイプの先輩2人がいて、彼らの動きがとても勉強になったといいます。
数年の修行から戻ってフローラ黒田園芸に入社。まず最初に取り組んだのは、「つくりすぎた苗や人気のない色の花苗をどうするか」ということでした。そこで修行で学んだディスプレイ感覚を生かし、人気のない花をディスプレイで魅力的に見せて、販売につなげることに注力。そうすることで、ただ店頭に並べるだけでは伝わらなかった花の魅力がお客様に届き、次々と手に取ってもらえるようになりました。そのとき健太郎さんは、ディスプレイ力が販売力に直結することを確信。これが今のショップの魅力につながる原点となります。
ショップが軌道に乗ると、苗の生産時に使っていたガラスハウスを店舗らしく改造。前面のガラスをレンガ積みのウォールに変えて、おしゃれな店構えにしつらえました。手を加えたのはほんの一部分ですが、イギリスのような雰囲気がほんのりと漂う空間に生まれ変わりました。
健太郎さん、社長であるお父様、弟の和義さんが数人のスタッフの協力を得て運営する「フローラ黒田園芸」。3人とも、何でも一通りできますが、得意分野を生かすために役割分担しています。健太郎さんは寄せ植えづくりや広報を、社長さんはDIY、和義さんは植物の仕入れを主に担当。それぞれの個性を尊重しながら、一丸となってショップを魅力的に見せる努力を重ねています。
売り場に点在する寄せ植えもチェック!
飾り方まで参考に
健太郎さんがつくる寄せ植えは、外の売り場に点在しています。ただ単にアレンジを並べただけでなく、雑貨と合わせてコーディネートも提案。「植物・コンテナ・背景」の3つの要素をしっかり考えることが重要だということが分かります。
建物内も見どころたくさん!
グリーンや雑貨の使い方が学べる
レンガの壁が印象的なガラスのハウス内は、インテリアグリーンや雑貨、資材売り場。こちらも屋外売り場同様、参考になるシーンにあふれています。これらのディスプレイを意識しながら店内を回れば、素敵なヒントがいくつも見つかります。
素敵なコーディネートの秘密は
ドライフラワー使いにあり!
健太郎さんのコーディネートは、いずれも見る側の想像をかき立てる不思議な魅力をたたえています。例えば、深い森を思わせたり、フェアリーが出て来そうだったり……。ガーデニングの世界を超え、おとぎ話の世界に誘うような雰囲気があるのです。この独特な世界づくりに欠かせないのが、花壇の枝や実などを利用したドライフラワーです。
庭で咲いた花のうちドライフラワーに向くものは、はじめは切り花としてフレッシュを飾り、その後、枯れたものをドライとして生かすという健太郎さん。瑞々しい状態とは異なる魅力を放ってくれます。
ディスプレイで使うアイテムが並ぶ
バックヤードも魅力的
園芸誌などから寄せ植えの取材・撮影依頼も多い健太郎さん。撮影時にアレンジと一緒に飾るアイテムにも、古びた雑貨やドライフラワーを多く使っています。これらのアイテムは、屋内の売り場の一角に無造作な雰囲気で並べられています。ややほこりをかぶったような雰囲気も味わいがあり、また一興。
社長さんが育てたおいしい実り。
ぜひ、お土産にどうぞ
「フローラ黒田園芸」では、店舗の周りにある畑で採れた収穫物が、花苗に交じってときどき店頭に並びます。冬季はショップの隣にある畑で穫れたミカンを販売。サツマイモや柿など季節の収穫物が並ぶことも。とてもお得な価格で、お土産に最適。
「フローラ黒田園芸」イチオシのグッズはコレ!
ベンチプランター
健太郎さんがオススメするのは、社長さんお手製の「ベンチ型プランター」。コンパクトサイズで玄関先やベランダにぴったりです。植える部分がやや浅いので、小型の草花や多肉植物を育てるのに最適。色は9色ほどありますが、「手づくりなので、店頭にあったりなかったりします。興味のある方は、ぜひスタッフにお声がけください」と健太郎さん。大きさはワンサイズでW71.5×D32×H71cm。
抜群のコーディネートセンスで、地域密着型の園芸店を全国から人が集まる人気園芸店に成長させた「フローラ黒田園芸」。今もなお地域の人たちに愛され続ける理由は、近所の人が立ち寄りやすい“オープンな雰囲気”を常に意識しているから。家族経営の強みを最大限に生かし、アットホームな雰囲気が店内を包んでいます。ぜひ訪れてみてください。アクセスは、JR大宮駅・北与野駅・埼玉新都心駅からバスで約10~15分。「円阿弥」下車・徒歩4分。
【GARDEN DATA】
フローラ黒田園芸
〒338-0007埼玉県さいたま市中央区円阿弥1-3-9
TEL: 048-853-4547
URL: http://florakurodaengei.com/
営業時間:9:00~18:30春夏(3~10月)、9:00~18:00秋冬(11~2月)
定休日:無休(正月を除く)
併せて読みたい
・黒田健太郎さんに学ぶLesson3 数株で素敵に! シンプル寄せ植え&コーディネート
・一年中センスがよい小さな庭をつくろう! 英国で見つけた7つの庭のアイデア
・Junk sweet garden tef*tef*が教えるワンランク上の寄せ植えテクニック
Credit
写真&文/井上園子
ガーデニングを専門としたライター、エディター。一級造園施工管理技士。恵泉女学園短期大学園芸生活学科卒。造園会社、園芸店を経て園芸雑誌・書籍の編集者に。おもな担当書に『リーフハンドブック(監修:荻原範雄)』『刺激的ガーデンプランツブック(著:太田敦雄)』『GARDEN SOILの庭づくり&植物図鑑(著:田口勇・片岡邦子)』など。自身もガーデニングを楽しみながら、美術鑑賞や旅行を趣味にする。植物を知っていると、美術も旅も楽しみの幅が広がりますね。
写真協力/黒田健太郎
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