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花の庭巡りならここ! 数多のばらコレクション数を誇る「敷島公園門倉テクノばら園」
懐かしくもあり、目新しくもある華やかな昭和レトロのばら園 利根川と広瀬川に挟まれたエリアにつくられた、群馬県のシンボリックな存在の「敷島公園」。その一角に、「敷島公園門倉テクノばら園」があります。1971年に開園した歴史あるばら園で、2008年春に開催された「第25回全国都市緑化ぐんまフェア」の主会場の一つとして、全面的に再整備されてリニューアルオープンしました。その広さは約4.5ヘクタールで、大人がゆっくり歩いて1時間ほどかかる規模です。 このばら園のコンセプトは、「昭和レトロのばら園」。周囲より低く掘り下げて造成されたサンクンガーデンスタイル(沈床式庭園)で、周囲から見下ろしたり、中から見上げたりでき、高低差を利用したダイナミックな景観を楽しめます。また、植栽は左右対称の整形式花壇を採用しており、こちらも昭和に流行したスタイルで、懐かしさを感じる方もいれば、目新しく感じる方もいるようです。 「敷島公園門倉テクノばら園」では、約600種、約7,000株のばらが植栽されています。それぞれにテーマを設けた植栽コーナーがあり、「オールドローズ」「フランス・その他欧米のばら」「日本・ドイツのばら」「イギリス・ニュージーランドのばら」「アメリカのばら」「モダンローズ」「イングリッシュローズ」「香りのガーデン」のエリアに分けられています。また、世界バラ会議で選出された「殿堂入りのバラ」の全種(モダンローズ18種、オールドローズ13種)を植栽しているのも見どころ。これまで3〜10万以上もの品種が作出されているというばらの中から、ハイエンドに輝いたばらの美しさを堪能しましょう。 「敷島公園門倉テクノばら園」のばらの見頃は、春が5月中旬〜6月上旬、秋が10月中旬〜11月上旬です。それぞれ「春のばら園まつり」、「秋のバラフェスタ」が開催され、ばら苗やグッズの販売、園内のガイドツアー、夜のライトアップほか、さまざまなイベントが催され、楽しく賑わいます。ぜひ足を運んではいかがでしょうか。 全方位から見て美しいシーンの連続約600本のスタンダード仕立ては圧巻 モダンローズコーナーで咲く深紅のばらは、フランス生まれの‘ラ・マルセイエーズ’。半剣弁高芯の端正な佇まいが目を引きます。奥に見えるガゼボは休憩スポットで、園内に3カ所設置されています。外観デザインが美しく、背景に入れると素敵な写真が撮れそうです。 園内には、スタンダード仕立てのばらが約600本列植され、立体感のある演出が楽しめます。要所ごとに、ばらのトンネルやアーチ、ポール仕立て、フェンス仕立てがしつらえてあり、メリハリの効いた景観を楽しめます。手前で咲いている白いばらは、第6回の世界バラ会議で殿堂入りした‘アイスバーグ’です。 ぜひ立ち寄って記念撮影を!写真映えするスポットが盛りだくさん 正面広場の芝生前に設置している、ハート型のオブジェには、ピンクのつるばら‘マダム・ピエール・オジェ’を仕立てています。ベビーピンクでコロンとした丸みのある咲き姿が愛らしいばらで、芳醇な香りも魅力です。SNS映えするスポットとして、来園者の多くが記念撮影を楽しみます。 モダンローズコーナーの一角に置かれている彫像は、分部順治氏制作の「ばらの精」。周囲には、アメリカで作出された品種が多数植栽されており、カラフルな色彩のばらが見られます。 前橋市のオリジナルローズに注目!春と秋のイベント期間はライトアップも 「敷島公園門倉テクノばら園」では、前橋市のオリジナル品種のばら‘あかぎの輝き’を見ることができます。平成20年開催の「全国都市緑化ぐんまフェア」を記念して作出され、名称公募により名づけられました。開花が進むにつれて、黄色→オレンジ→赤へと花色が移ろうのが特徴です。 例年、「春のばら園まつり」と「秋のバラフェスタ」のイベント期間には、日没から20:30までライトアップをしています。黄昏時から夕闇に包まれるまで、刻々と光が変化していくなかでのばらの表情も、また美しいもの。ライトアップ時の散策も、感動のひとときとなることでしょう。
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「中之条ガーデンズ」のバラが特別に美しい理由とは? 7つのローズガーデンで過ごす至福のとき
7つの表情を持つローズガーデン 仕掛けも楽しく、新鮮な驚きが 四季折々に多くの花で彩られる「中之条ガーデンズ」。初夏と秋に絶対に見逃せないのが、ローズガーデンです。約400種、1,000株を超えるバラたちが、一斉に咲き揃う6月、息を呑むような美しい景色で迎えてくれます。 植栽を担当したのは「横浜イングリッシュガーデン」のスーパーバイザーも務めるバラの専門家、河合伸志さん。ローズガーデンは、7つのセクションに分かれ、エリアによって花色も趣向もガラリと変化、歩を進めるごとに新鮮な驚きがあります。 来園者がローズガーデンで最初に目にするのは、ピンクのバラと淡い色彩の小花で彩られたロマンチックな小道。カーブする園路を進むと、白、黄色、赤と花色が変わり、スタンダード仕立てのバラが滝のように枝垂れる流麗な姿は、圧倒される美しさです。 園路が石畳へと変わり、続いて現れるのは、バラのイメージを覆す“和”のガーデンです。壁面には深紅のバラと紫のクレマチス、足元は空間を生かしつつ黒い玉砂利を配置。大胆でシンプルな構成は“禅”の精神を表現。正面には、黒御影石の水鏡に、中央が四角く切り取られた真っ白な壁が。この壁を額縁に見立て、遠景に広がる庭園を一幅の絵として観賞する仕掛けで、思わず写真を撮りたくなるスポットです。 和の庭を抜けると、再びパステルカラーのバラで埋め尽くされたガーランドのコーナーです。奥の八角形のエリアは、監修の河合さんが「一番の見どころ」と言う絶景ポイント。サークルベンチに座ると、四方から芳しいバラの香りに包まれ、至福のひとときが味わえます。 次は、一転して鮮やかな青い壁面に黄色のバラが調和する、ポップな空間が登場。7つのローズガーデンの中でも色彩のインパクトが強い、キュートな庭です。ベンチのコーナーやパーゴラ、ドームにバラが咲き競う、カラフルな世界を楽しんだ後は、白バラが輝くホワイトガーデンへ。その先は、シックな花色のバラを集めた、アンティークカラーの庭が。周囲を赤紫色の常緑樹トキワマンサクと黒葉のコクリュウが縁取り、スタイリッシュな色彩の調和を楽しめます。 最後のエリアは、豊かな香りを持つバラを集めたローズガーデン。赤いバラを中心に、紫、濃いピンクから淡い色へと花色がグラデーションを描くように植栽され、さまざまな色と香りで満たされた、夢のような空間が待っています。カフェスタンドとガーデンチェアもあり、飲み物を片手にバラに囲まれて優雅に過ごしていると、時間が経つのを忘れてしまいます。 標高480mという冷涼な気候が 色濃く、香り高いバラを育てる このように、次々と変化する庭の組み合わせは、中之条ガーデンズ全体のランドスケープを担当した空間デザイナーの吉谷博光さんと河合さんが考案。あえて入り口から全体を見渡せないようにしたことで「次はどんな景色が待ってるかな?」と、ワクワクしながら園路を進むことができます。まるで、美しい絵本を1ページずつめくるような期待感とともに、散策が楽しめるのです。また、アーチやフェンスなどバラと合わせる構造物は、すべて吉谷さんのオリジナルデザインというこだわりも。こうして、「美味しい料理(バラ)は美しい器に美しく盛りつける」という河合さんの信条通り、「中之条ガーデンズ」は、唯一無二の“バラの楽園”となっています。 実は、「中之条ガーデンズ」のバラの美しさには、もう一つ秘密があります。それは、標高480mという立地。平地よりも冷涼な気候のため、花色が濃く鮮やかで、香りも豊かになるのです。また、春バラの開花時期もやや遅め。平地での最盛期が終わった6月あたりから見頃を迎えるため、「一番美しいバラを見逃してしまった」という場合でも、まだ間に合うのも嬉しいポイント。 今話題の「食べられるバラ」を栽培 甘い香りの中で、花摘み体験ツアーも ファームエリアでは、今話題の「食べられるバラ(食香バラ)」も栽培がスタート。‘豊華(ホウカ)’と‘紫枝(ズズ)’の2品種が678株ほど植えられ、生産用の圃場としては国内唯一です。バラの香る中での花摘み体験ツアーもあり、バラ愛好家の間で「行ってみたい」「やってみたい」と話題です。朝摘み体験や食香バラを使ったワークショップなども開催予定。参加には事前申し込みが必要ですので、こちらからご予約を。 【特別企画】開園前の朝摘み体験 2021年5/30、6/4、6、11【開催終了】 開催時間/AM6:00〜7:30 参加費/5,000円 【食香バラを使ったワークショップ レクチャー浦辺苳子先生】 全9日間開催 2021年5/30、31、6/4、6、7、11、13、14、18【開催終了】 ●バラ摘み&摘んだバラでジャン(醤)づくり AM9:00〜11:30 ●ローズウォーター・ローションづくり PM2:00〜3:30 「中之条ガーデンズ」の見どころは、バラだけではありません。英国園芸研究家でガーデンデザイナーの吉谷桂子さんが植栽を担当した「スパイラルガーデン」と「ナチュラルガーデン」、樹木医の塚本こなみさんが手がけた大藤棚のほか、陶芸や草木染めの体験施設、地域の特産品がそろうショップも充実。植物を見るだけでなく、実際に触れたり体を動かしたりと、五感をフルに活かしてアクティブに楽しむことができます。 園のある中之条町には、四万温泉や沢渡温泉があり、同じ群馬県内の伊香保温泉までは車で30分程度。日中は広い庭園をゆったり散策して、夜は温泉でのんびり…なんていう計画もおすすめ。そんな贅沢な時間の過ごし方が似合うのが「中之条ガーデンズ」です。楽園気分を味わえる新名所「中之条ガーデンズ」へ、足を運んでみませんか? こちらも併せてお読みください。 ●『「中之条ガーデンズ」の魅力、苦労話、メンテまでバラの専門家・河合伸志さんにインタビュー!』 ●『7つの景色が楽しめる新ローズガーデン誕生!「中之条ガーデンズ」に行ってみよう!』 Information 中之条ガーデンズ(旧花の駅美野原) 所在地:群馬県吾妻郡中之条町大字折田2411 TEL:0279-75-7111 https://nakanojo-g.jp/ アクセス:関越自動車道渋川・伊香保I.C.下車、約50分。国道17・353号線経由で「中之条ガーデンズ」または、上野駅から「特急 草津号」で約2時間、中之条駅下車。タクシーで約20分。 見頃の開園時間:9:00〜17:00(入園は16:30まで) 休園日:年末年始(園内メンテナンスのため不定期休園はこちらでご確認ください) 料金:■一般/大人(高校生以上)300〜1,000円、小・中学生200〜500円、小・中学生未満 無料 *入園料は「花の見ごろ」に合わせた変動制です。団体の方、障害者手帳をお持ちの方は割引があります。詳しくはこちら 駐車場:乗用車300台、大型バス10台(無料) 取材協力/中之条ガーデンズ 写真(*)/今井秀治
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「中之条ガーデンズ」の魅力、苦労話、メンテまでバラの専門家・河合伸志さんにインタビュー!
河合伸志さんにズバリ質問! 感動分岐点を超える「中之条ガーデンズ」の魅力 群馬県中之条町にある「中之条ガーデンズ」には、冷涼な気候を生かした、バラや植物の生き生きとした色彩に目を奪われる美しいバラ園があります。このバラ園の植栽デザイン・管理指導は、「横浜イングリッシュガーデン」のスーパーバイザーも務めるバラの専門家、河合伸志さん。そんな河合さんに、バラ好きさんなら一度は訪れたい、「中之条ガーデンズ」の魅力を伺います。 Q. 全国の美しいガーデンの中でも、「中之条ガーデンズ」ならではの魅力は? 「中之条ガーデンズ」の魅力は、なんといっても一つのバラ園の中で、違った景色を散策しながらいくつも楽しめることですね。各地にあるバラ園の多くは、入り口で全体を見通せることがしばしばです。これはこれでスケールを体感できてよいのですが、全てが一度に見えてしまうため、奥まで行く楽しみが半減します。ですが、この「中之条ガーデンズ」は、あえて小さな庭に分け、入り口からは全てが見渡せないようにしたことで、園路を進む楽しみがあります。これは中之条ガーデンズ全体のランドスケープを担当した吉谷博光さんと私の考えによるものです。 また、バラと合わせるアーチなどの構造物は、すべて吉谷博光さんデザインのオリジナルで準備しました。「美味しい料理は美しい器に美しく盛り付ける」というのが私の考えですが、「中之条ガーデンズ」では、最高の器を準備できたと思っています。ぜひ、バラと構造物とのハーモニーも楽しんでいただきたいです。 Q.「中之条ガーデンズ」のコンセプトを教えてください! じつは、このガーデンには明確なコンセプトがありません。「中之条ガーデンズ」の「ガーデンズ」とは、いくつかの庭が集まっているという意味合いで、ガーデンズ全体のプロデュースは、「あしかがフラワーパーク」の大藤の移植でも知られる樹木医の塚本こなみさんが行っています。私がどのようなコンセプトでバラ園をつくればよいかと塚本さんに尋ねたところ、「感動分岐点を超えるものにしてください」と言われました。ですので、強いて答えるならば、「感動分岐点を超えるバラ園」でしょうか。 Q.「中之条ガーデンズ」で見逃さないでほしい見どころスポット&個人的なお気に入りスポットはどこでしょうか? 「中之条ガーデンズ」の一番の見どころは、やはり満開に咲くバラのガーランドでしょう。開花のピークは、一年にほんの数日間ですが、この最高に美しい瞬間を見ていただきたいです。特に奥の八角形のガーランドのエリアは、サークル・ベンチに座ると、まさに四方をバラに囲まれ、より芳しいバラの香りが漂います。「中之条ガーデンズ」を訪れたら、ぜひこのベンチに腰掛けて、瞼を閉じて思いっきり香りを吸い込んでみてください。至福のひとときが味わえることと思います。 ガーランドのあるエリアでは、ガーランドの柱の縦ラインを生かすため、あえて樹木はファスティギアータ(箒性)のものを選んでいます。バラの美しさはもちろんですが、背景の樹木にも目を向けていただけると、よりこのガーデンを楽しめますよ。 河合伸志さんが語る 「中之条ガーデンズ」の制作&管理秘話 「中之条ガーデンズ」に、河合さんが主なバラや樹木などを植え付けたのは、2018年7月のこと。それから、2020年6月現在の美しい姿になるまで、約2年弱。この間、ガーデンをより美しく管理・維持するために、ガーデナーや町の職員さんたちは日夜さまざまな作業を続けてきました。また、「中之条ガーデンズ」のある群馬県中之条町は標高が高く、冷涼な気候が特徴で、平地のガーデンとは異なる品種選びや管理が必要です。そんなガーデン制作や管理の裏側のエピソードを、少しだけご紹介します。 Q. 河合さんがスーパーバイザーを務める「横浜イングリッシュガーデン」と比べて、異なる点はありますか? 大きく異なるのは、バラの品種選びの基準です。「中之条ガーデンズ」ではバラの品種を決めるに当たり、それぞれのエリアの景観イメージにマッチすることを第一に優先して選びました。次に基本的に四季咲き性の品種で、しかも可能な限り秋の開花数が多いことを考慮しました。従ってオールド・ローズは一部を除き植栽していません。一方の「横浜イングリッシュガーデン」では、バラはコレクションの意味合いも持たせているため、性質が弱いものや、秋には咲かない品種、花数が多くない種類なども含み、歴史上意味のある品種や、コレクションとして価値があるものであれば植栽しています。それぞれのガーデンのコンセプトに合わせたバラを楽しんでいただきたいと思います。 また、当たり前ですが気候の差を考慮し、寒さに弱い植物は中之条では使用していません。逆に多少耐暑性に欠けているものでも、このガーデンでは見ることができます。 Q. 美しい景観を守るための、病害虫対策はどのようにしていますか? この景観を薬剤散布なしでつくり出すことは難しいため、多いシーズンでは1週間に1回のペースで薬剤を散布しています。地域的に、春と秋はベト病の問題がありますし、バラは景観のイメージに合うことを重視して選んでいますので、黒星病やうどんこ病に弱い品種も植栽されています。この春もベト病が発生してしまい、一時的に危機的な状況に陥りました。幸い、病葉の摘み取りと薬剤散布によって、かろうじて首の皮一枚で何とか持ち直しましたが…。 Q. ガーデンの制作・管理にあたって、想定外だったことや困ったことはありましたか? 標高の高い山間部にある「中之条ガーデンズ」は、そもそも平地よりも生育期間が短く、さらには冬の寒さが厳しいため、バラは品種によってはおおむね8月までに生育した枝しか越冬できないことが分かってきました。9月以降の枝は未熟(十分に光合成できていない)なうちに冬を迎えるので、厳しい寒さに耐えられないのです。そのため、平地ではつるバラとして扱える品種でも木立ち性として扱えることもある反面、つるバラとしては伸長力不足の場合もあります。また、山沿いの地域のため夜露が発生しやすく、平地ではめったに発生しないベト病に悩まされています。 また、寒さが厳しいため、常緑広葉樹は種類を選ばないと越冬できないようです。トキワマンサクやセイヨウヒイラギ‘サニー・フォスター’はギリギリ越冬できていますが、ヒメユズリハは寒さで枯死してしまいました。ツバキやヒラドツツジなども、防寒をしても多少の傷みが発生します。今後周囲の樹木がもう少し大きく生育し、完全に樹下に入ればそこまで傷まないのかもしれませんが…。一方、ヤマボウシ‘ヴィーナス’などは、平地では見ることができない本来の特性が存分に発揮され、人目を惹き付ける巨大な花を咲かせています。これは「中之条ガーデンズ」の気候ならではですね。横浜での姿しか見ていなかった「横浜イングリッシュガーデン」のガーデナーなどは、その姿を見て平地での限界を嘆いていました。 下草類では、ヘデラは場所と品種を選ばないと越冬できません。また耐寒性がある宿根草でも、秋植えでは枯死してしまうことがあり、品種によっては早春植えにする必要があります。半面、夏がやや涼しく短いため、平地では夏越しできない植物も生き残っているようです。中にはリグラリアや黒葉のクローバーのように平地で管理するよりも大きく育ちすぎ、株数を減らさなくてはならないほど旺盛に生育するものもあります。 河合伸志さんからアドバイス! 自宅のガーデニングに生かせるアイデア&テクニック集 美しいガーデンを堪能したら、自宅の庭にも生かせるガーデンづくりのコツを知りたくなるのがガーデナーの性。「中之条ガーデンズ」をお手本に、美しいガーデンをつくるためのポイントやテクニック、おすすめの植物の組み合わせについて、河合さんにアドバイスをいただきました。さっそくチェックして、自宅のガーデンで実践してみましょう! Q.「中之条ガーデンズ」に使われているテクニックの中で、個人の庭で実践できることを教えてください! 「中之条ガーデンズ」では、バラの組み合わせで、枝変わりの品種を上手に用いているシーンがあります。枝変わりの品種のうち、色違いのパターンは、花色以外の特性が同じなので、株姿や咲く時期などがピタッと揃い、理想的な景色になります。異品種でこの演出をしようとすると、なかなか相性のよい品種を見付けることが難しいのです。例えば自分の庭でアーチにバラを植える場合、同様に枝変わりの品種を合わせるテクニックを用いると、開花や咲き姿が揃った見事なアーチを作ることができます。 色違いの花が咲く枝変わりの品種の具体例には、‘ピエール・ドゥ・ロンサール’と‘ル・ポール・ロマンティーク’、‘サマー・スノー’と‘春霞’、‘珠玉’と‘玉鬘’、‘レオナルド・ダ・ヴィンチ’と‘アントニオ・ガウディ’などがあります。ぜひ参考にしてみてください。 Q. ガーデニングを始める人へ「イメージ通りの庭をつくるための、はじめの準備」のアドバイスは? 最初に、庭のイメージに合う植物がどのような性質(開花期や生育の早さ、好む環境など)のもので、どのように姿を変化させながら生育していくかを、ある程度知っておくことが重要です。簡単なようにも思えますが、決してそうではなく、地域によって大きく変わりますし、たとえ同じ庭の中であっても、微細な差で育つ場所もあれば、そうでない場合もあります。ネットや書籍、地域のガーデンの見学などをしながら調べましょう。もっとも、こうして厳選した植物で計画を立てても、それだけでパーフェクトなものはできません。後は状況に応じて手直しをして、よりイメージに近づけていきます。 近年のガーデニングでは即興の寄せ植えやハンギングなどが人気です。これらはイメージに合った植物をその場で選び、すぐに完成しますが、庭はそんなに短期間でできるものではなく、少なくとも1年以上かけてつくり上げていくものです。単純に見た目で選び、枯れたらまた植え替えればよいという発想からまず脱却することが、イメージした庭をつくるための近道かもしれません。 Q. 魅せるガーデンづくりで押さえるべきポイントは? ガーデンの設計図は、通常上からの方向で作成されていますが、実際の庭での人の視線は横向き。そこで、まずは現場をしっかりと自分の目で把握し、空間全体を摑むことが大切です。どこにポイントとなるものを置くべきか、そのポイントはどの程度の大きさのものがよいか、どこに園路を設けるべきかなどを考えていきます。ポイントを樹木など植物とした場合、成長に伴って変わっていくその将来像を見据える必要もあります。このようにして、ガーデンデザインの骨格を最初に決めます。 次に、具体的な植物を配置する際には、色彩計画をしっかり立てておくことがポイントです。特にバラのように派手な花は、あれこれ色を混ぜると目がチカチカするような印象になり、今一つまとまりがなくなります。一番簡単なのは、同系色でまとめる方法。慣れてくれば反対色を上手に使用したり、トリカラーなどの組み合わせにチャレンジするのも一案です。また、色と同時にポイントとなってくるのが形状です。隣同士に同じ形状のものがひたすら並ぶと、凹凸のない公園のサツキの植え込みのようになってしまいます。なるべく異なる形のものをバランスよく並べて、変化のある景観を目指しましょう。なお、植物の配置の際は、図面では気付きにくい植栽地の背景や、樹陰の裸地など、見落としがないかの確認もしましょう。 Q. バラと合わせるおすすめの組み合わせを教えてください。 ガーデニング初心者向けのおすすめは、定番ですが、オルラヤやシノグロッサム、ネペタ(キャット・ミント)‘シックス・ヒル・ジャイアント’、サルビア・ネモローサ‘カラドンナ’、ヤグルマギク、ジギタリス・プルプレアなど。このうちシノグロッサムは平地では秋植えするのが理想的ですが、中之条など寒冷地では早春植えにしたほうが無難なようです。 Q. 植物を元気に生育させる秘訣はありますか? 植物の健全な生育の秘訣は、常に植物と向き合うこと。そして向き合いながら、植物に今どのような作業が必要かを感じ、適宜実施していくことです。そして、このことこそが庭づくりの醍醐味だと思います。手入れによって、誰よりもいち早く季節の到来に気付いたり、自分の行った作業でみるみるよくなっていったり。ガーデン作業はすぐに結果が出るものばかりではありませんが、植物が見せてくれる変化は、管理者に大きな喜びを与えてくれます。庭は設計・施工も大切だと思いますが、もしかしたらそれ以上に管理が重要かもしれないと、私は考えています。 「中之条ガーデンズ」に行ってみよう! 平地での開花が終わってから咲き始める中之条のバラは、涼しい気候のもとで咲くため、平地よりもずっと色鮮やか。中には同じ品種とは思えないほどの変化を見せるものもあります。また開花の早晩の差が平地よりも少なく、一気に花を咲かせるため、ピークがやや短い反面、満開時はとても華やかです。 バラの開花時の「中之条ガーデンズ」は、バラ園はもちろんのこと、スパイラル・ガーデンやパレット・ガーデンも楽しめますので、訪れた際にはぜひ、ゆっくりと時間を取って園内を散策してみてください。 また、中之条町には泉質が高く名湯とされる四万温泉や沢渡温泉などの観光スポットもあります。時間に余裕のある方は、1泊してたっぷりと楽しむのもおすすめです。同じ群馬県内の草津や伊香保の他、長野県側の軽井沢や上田方面にも抜けられますので、週末の小旅行に訪れてみてはいかがでしょうか? ●7つの景色が楽しめる新ローズガーデン誕生!「中之条ガーデンズ」に行ってみよう!
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花の庭巡りならここ! 息を呑むほどに美しい英国式庭園「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」【…
カントリーサイドに佇む豪奢な邸宅の庭園がコンセプト 2002年4月にオープンした「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」。約2万㎡の敷地を持ち、ゆっくり歩いて散策すると、1時間ほどかかる規模です。大型ホームセンターの「ジョイフル本田」が、群馬県・新田への新規出店を機に、本格的なイングリッシュガーデンを、と構想。1999年より着工し、3年がかりで完成させた英国式庭園です。 基本的なコンセプト立案からデザイン、施工計画などのほとんどは、イギリス人のアンディ・マクルーラさん、ウィリアム・ウルフさんの手によるものです。また、ウィリアムさんの奥さまのフレッドさんも、一部のガーデンやエンブレム、園内マップのデザインを手がけています。彼らの仕事仲間のガーデナー、左官職人たちも一緒に来日し、園内の構造物や植栽などは、イギリスでのやり方そのままで施工されました。 英国式庭園を手がけたアンディ・マクルーラさん(右)、ウィリアム・ウルフさん(左)。 「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」は豪奢な田舎の邸宅にある庭をモチーフとした、本格的なイングリッシュガーデンです。「日本人がイメージするイングリッシュガーデンのスタイルにはこだわらず、イギリス人が肌で感じている、長い歴史の中で培われた伝統的なスタイルのガーデンを楽しんでほしい」と、英国様式のさまざまなスタイルの庭がつくられました。 中に入ると、まず「整形式庭園」のゾーンが続きます。トラディショナルなスタイルと華やかなイメージのガーデンを抜けて奥に進むと、広大な「風景式庭園」。イギリスの邸宅のイメージのため、屋敷の近くに「整形式庭園」、奥に「風景式庭園」があり、その奥に森が続くというコンセプトです。 園内は「ガーデンルーム」と呼ばれる小さなガーデンが20以上ありますが、生け垣や塀などで仕切られ、雰囲気の異なる庭同士があまり見えないようになっています。これもイギリスの邸宅でよく見られる手法です。 「ルイスガーデン」のエリアだけで、チューリップは15種類、約3,000球を植栽。 「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」では、2,000種類以上の植物が息づいています。イギリスの伝統的なガーデンスタイル(ノットやパーテア、キッチンガーデン)や、イギリス人ならではの植物チョイス、構造物の演出、施工方法などが見られ、日本にいながらイギリスの庭園を巡っている感覚を味わえます。 早春はクリスマスローズやスイセン。春本番にはチューリップ、アヤメ類、バラと続き、初夏から夏は宿根草、アジサイ、ユリ。初秋はコスモス、ダリア、秋バラ。晩秋は各ガーデンの紅葉が楽しめ、四季の移ろいを強く感じられます。 初夏には園内はユリの甘い香りで満ちあふれます。 また、園内には膨大な種類の植物や多種の資材が使われていますが、「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」の向かいにはジョイフル本田ガーデンセンターがあり、これらの資材や植物の多くを購入することができるのも魅力です。「自宅の庭づくりの参考になった」という声もたくさん寄せられています。 「現実の世界から離れるためにイングリッシュガーデンを見に来る」「自分で庭をつくるためにイングリッシュガーデンを見に来る」という、相反するような目的のどちらにも適うのが「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」の特徴です。大型ホームセンターが運営するイングリッシュガーデンに、ぜひお出かけください! 多様な英国式庭園のスタイルを日本にいながらにして堪能できる贅沢 写真は、「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」のエントランスで、ヴィクトリア王朝時代に流行したカーペットベディングを基本にしています。花壇部分は背の低い一年草を絨毯状に隙間なく植え付け、左右対称の幾何学模様を花で描いています。常緑の芝とも相まって、豊かな時代のヴィクトリア朝ならではのコントラストが効いた華やかな色使いが特徴です。トピアリーに使われているのは金芽ツゲで、「WELCOME」と刈り込まれています。 この「アナガーデン」は、ウィリアムさんの娘の名前がつけられています。女の子らしい背が小さく可愛い植物で構成。手前からグレーの石の壁、黄色のツルマサキ、青の藤、緋色のキクモモと色とりどりですが、新緑の緑がベースになっているので、うるさい印象になりません。また、小道が蛇行しているので、足元のチューリップが効果的に見えます。 「シールズパレード」のエリアでは、タイルをずらしながら積み重ねた柱が特徴的なバラのパーゴラが見どころ。この柱はバラのつるが絡みやすい形状になっています。また、オブジェとしても楽しむことができ、夕刻になると柱の縁に影ができてシルエットが浮き出るようになっています。 パーゴラのトンネルは幅3m、高さ2.5m、長さ40mに及び、18種類のバラが植栽されています。左手前から‘ヴェスターランド’、‘マリー・キュリー’、‘珠玉’、右手前から‘バロン・ジロー・ド・ラン’、‘パレード’、‘つるクリムゾン・グローリー’、‘つるうらら’、天井に‘ロング・ジョン・シルバー’、‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク’が見えて、大変華やかです。 天井にかかっているバラは数本で、残りは上の柱にはほとんどかかっていません。つるが長く伸びる品種はあまりたくさん下のほうに花をつけないように調整して上に誘引。逆に短めのつるバラは縦の柱に花が咲くように、メリハリをつけて役割分担をしています。 「Newローズガーデン」のエリアでは、芝の中に小さい丘になるようにバラを植栽。外から見るとバラが盛り上がって見えるよう配慮されています。主に2000年以降に作出された新しいバラ、60種類、約120株が植えられているので、現代の品種トレンドが見えてきそうです。春と秋には、バラの専門家を招いて園内を散策しながらの講習会なども行っているので、ぜひご参加を。写真のアーチに仕立てられて、たわわに咲くバラは‘アンジェラ’です。 「ダヴコートガーデン」には、ウィーピングローズが3種類、20本ほどあります。品種は‘フューシャ・メイディーランド’、‘ファイヤー・メイディーランド’、‘ニュー・ドーン’など。いずれも遅咲き種で、5月の下旬から咲き始め、6月上旬まで咲き続けます。 イギリスで自生する植物に限らず世界の植物を集めているのも英国様式の特徴 「シークレットガーデン」のエリアは「プラントハンターのプライベートガーデン」というコンセプトでつくられており、そのほとんどがイギリスに自生していない植物で構成されています。 イギリス(ブリテン島)はもともと大西洋からの暖流が流れ込み、高い山もほとんどないことも相まって、北部と南部の気候の差が日本ほど大きくないそうです。そのような場所では生えている植物の変化が乏しく、庭づくりには外国の植物が必須とのこと。そんな事情からたくさん輸入された植物も、今ではすっかりイングリッシュガーデンになくてはならないものになっています。 植栽されているのは、奥の白い花からフロックス(北アメリカ原産)、ギボウシ(東アジア原産)、ベゴニアセンパフローレンス(南アメリカ原産)、ルドベキア(北アメリカ原産)、シュウメイギク(東アジア原産)。世界中から集められた植物が共存する、豊かな景色をつくり出しています。 「ウッドランド」のエリアは、欧州圏で19世紀に流行した日本庭園の影響を受けていた頃の風景式庭園がモチーフになっています。しだれ柳、睡蓮、アヤメ類、アジサイなど、当時流行していた植物がふんだんに使われています。池の周りには木々が茂り、早春の花木類、春の新緑、夏は涼しげな木陰、秋は紅葉と四季の変化を体感できるのも、この広いガーデンならではの楽しみです。 写真は「ペレニアルボーダー」のエリア。ボーダーガーデンはイギリス人が最も愛する庭のスタイルの一つですが、残念ながらこの場所でイギリスのボーダーガーデンを再現するのは難しいもの。夏の暑さに耐えられるいろいろな植物を模索し、関東で育てやすい植物を厳選したこのボーダーガーデンは、「クールボーダー」といい、パステル調の花で構成されています。 紅葉が楽しめる高木を選んで植栽黄昏ていく秋の景色も素晴らしい 「ジョイフルガーデン」の花壇の縁にはスパイラルに刈り込まれているツゲのトピアリーが等間隔に植えてあります。これは長細いガーデンのため視線が池の向こうに誘われるので、特徴的な形のトピアリーで視線を植栽側に誘導しようというもの。また植栽のカラーは青、黄色、シルバーリーフを基調にコーディネート。季節に応じて、さまざまな植物でその3色が表現されていきます。 イギリス人ガーデナー2人は、高木を選ぶ時に、紅葉する色、形、時期を考えて配置したとのこと。園内の広さの割には、奥深い紅葉の風景をつくり出しているのは、木々のコントラストを効果的に利用しているためです。 「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」の紅葉は、10月中旬から始まり、12月中旬までが見頃に。ニセアカシアからスタートし、アメリカフウの木、ミズナラ、ベニカエデ、アカガシワ、マメナシへと続く紅葉リレーは、最後にメタセコイヤがオレンジ色に輝き、やがて冬へと移ろいます。 Information アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン(Andy&Williams Botanic Garden)【閉園】 所在地:群馬県太田市新田市野井町456-1TEL:0276-60-9021 http://www.joyfulhonda.com/aw/
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7つの景色が楽しめる新ローズガーデン誕生!「中之条ガーデンズ」に行ってみよう!
新たにオープンした美しい庭 「中之条ガーデンズ」をご案内 群馬県中之条町にある「中之条ガーデンズ」は、中之条町が進める花のまちづくりの拠点となっているスポットです。東京ドームおよそ6個分の敷地には、一つの大きなガーデンではなく、テーマ別にいくつものガーデンがつくられ、それぞれに異なる庭の表情を堪能することができます。各ガーデンの設計や植栽に当たっては、一流ガーデンデザイナーが結集。今回取り上げる「ローズガーデン」の植栽デザインは、バラの育種家で、「横浜イングリッシュガーデン」のスーパー・バイザーなども務めるバラの専門家、河合伸志さんが担当しています。 この地ならではの生き生きとした植物の色彩が楽しめる ローズガーデン 「中之条ガーデンズ」の大きな魅力は、なんといってもバラの美しい花色。中之条町は昼夜の寒暖差が大きく、非常に発色のよいきれいな花色を楽しめるのです。この地ならではの鮮やかな植物の色合いを生かし、カラースキーム(花色による色彩計画)を基本にエリア分けされた「ローズガーデン」では、エリアごとにカラーが際立ち、デザイン意図にピタリとはまる色調に。ガーデンを移動するたびに大きく変化する光景に、何度も新鮮な驚きが味わえます。 フェンスやオベリスクなどの構造物も、各エリアに合わせ、特別に色や形がデザインされたものばかり。これらの設計は、総合プラン・ガーデンデザインを担当した空間デザイナーの吉谷博光さんによるものです。ガーデンを最大限に美しく見せるためのこだわりが随所に見られ、植栽された植物と引き立て合って、ここにしかないガーデン風景をつくり上げています。 それでは、「中之条ガーデンズ」の個性豊かな7つの「ローズガーデン」をご案内しましょう。 洋の庭から和モダンまで 庭を進むたびに風景が一変 まず初めに現れるのは、ピンクのバラの小道。オルラヤやリナリア・プルプレアなどの小花がピンクのバラの周りにレースのように咲き群れて、思いっきりロマンチックな雰囲気からスタートします。 大きくカーブする園路を進むと、白、黄色、赤へと色彩は変化し、滴り落ちる滝のように仕立てられたスタンダード仕立てのバラも効果を発揮、景色はドラマチックに展開していきます。この庭は、既存の大きな斑入りのケヤキなどの樹木を背景に、バラの花色がいっそう美しく映え、ホッと安らぐ雰囲気の中で花々を堪能できます。 ロマンチックなガーデンを存分に味わったら、次の庭へと歩を進めてみましょう。 園路が石畳へと変わり、続いて現れるのがモダンジャパニーズ風のガーデン。他の洋のガーデンとは雰囲気を異にする、唯一の和のガーデンです。左右のフェンスには色鮮やかなバラとクレマチスが誘引される一方、足元は黒い玉砂利と数を絞った植物でシンプルに構成された “引き算の庭”です。 正面には、まるで黒御影石のテーブルのような水鏡。その奥にはガーデンデザイナーの吉谷桂子さんがデザインする円形花壇「スパイラルガーデン」が遠くに見えます。白い壁が額縁のようにその景色を切り取って、一幅の絵のように庭景色を観賞するというユニークな趣向です。このテーブルはじつは水槽になっていて、上からのぞき込むと、かわいい赤い金魚たちが泳いでいるのが見えますよ。 和のコンセプトを表現したバラ植栽 このガーデンでは、フェンスに誘引されたバラとクレマチスは華やかな屏風絵を、水槽の両脇に植えられたバラは、着物が掛けられた衣紋掛けをと、植物を用いて和のイメージが表現されています。そのため、誘引には目に付きにくいピアノ線を使うというこだわりも。ぜひ想像を膨らませながらガーデン空間を味わってみてください。 清廉な雰囲気をまとった和の庭を出ると、‘ラベンダー・メイディランド’ などパステルカラーのバラが彩るロマンチックなガーランドのあるガーデンが視界に広がります。足元に生き生きと茂る銅葉のクローバーは、甘やかな色彩の引き締め役。バラがこぼれ咲くガーランドが園路脇を飾り、歩を進めると立ち込めるバラのかぐわしい香りに包まれます。 バラの色彩が際立つ 印象的なカラーガーデン 足を踏み入れた途端、青と黄色の色彩の中へと飛び込むブルー&イエローのガーデン。黄色のバラを基調としたガーデンが鮮やかなブルーのフェンスに囲まれ、7つのローズガーデンの中でも色彩のインパクトが鮮烈な華やかな庭です。フェンス上部には小さく模様が切り抜かれ、空間に抜け感をもたらすとともに、続くエリアの色彩をちらりと感じさせてくれます。 ガーデン中央のガゼボには、柔らかなイエローとアプリコット色のバラが絡み、青い支柱と美しいコントラストを奏でます。この2種のバラは、一方のバラから突然変異などにより生まれた枝変わりを組み合わせています。このように、花色以外の性質が共通している枝変わりを組み合わせることで、開花期や株姿、花の大きさが揃い、調和のとれた景色をつくり出すことができます。 カラフルなブルー&イエローの庭から一転、続くホワイトガーデンに足を踏み入れると、美しく輝く白とあふれる緑が視界を満たし、清純な景色が広がります。周囲のフェンスも白く変化した庭で、中央にある噴水の縁を飾るのは、大きく育ったミニバラの‘グリーンアイス’。周囲には、‘アイスバーグ’や‘ウィンダミア’、‘アンナプルナ’など、さまざまな白バラが咲き乱れます。 赤紫色の常緑樹、トキワマンサクで幾何学的なマス目をつくり、周囲をコクリュウで縁取ったアンティークカラーのガーデン。それぞれのマスと周囲に植栽されているバラは、‘チャーリー・ブラウン’や‘チャーリー・アンバー’、‘バーガンディー・アイスバーグ’、‘しのぶれど’など、シックな花色のバラばかりを集めた、他にはない珍しい色彩の調和が楽しめます。 周囲を囲むのは、クロスデザインでつくられたガーデン。庭の中心を通る対角線上に同じ種類の樹木やバラが植栽されているので、ガーデン風景を楽しみながら、植物の位置を確認するのも面白いかもしれませんね。 カフェのあるガーデンで バラに包まれたひとときを 6つのローズガーデンを抜けた終点にあるのが、豊かな香りを持つバラを集めたローズガーデン。赤いバラを中心に、バラの色彩がグラデーションを描くように植栽されています。庭の一角にはカフェスタンドがあり、ガーデンチェアに腰を掛け、飲み物を片手にゆったりとした時間を過ごすことができます。 バラと宿根草が混ざり咲き、互いに引き立て合うテラスガーデンからは、吉谷桂子さんがデザイン・植栽したスパイラルガーデンを一望できます。 「中之条ガーデンズ」は入園無料。この「ローズガーデン」のほかにも、「スパイラルガーデン」、「パレットガーデン」など多様なガーデンがあり、春には1,000本のハナモモがピンクのトンネルをつくるなど、数百種類の季節の花々が咲き乱れます。園内には陶芸や草木染めの体験施設もあり、植物を見るだけでなく、触れたり体験したりしながら楽しむことができます。 また、「中之条ガーデンズ」を訪れた際には、ぜひ足をのばしてほしいのが、ここからおよそ20km離れた高地にある「中之条山の上庭園」。標高およそ1,000mのガーデンには、ハーブや宿根草、コマクサなどの高山植物が咲き、また違った美しいナチュラルガーデンが広がります。 時間の経過につれ、木々や草花もさらに美しい姿へと成熟していく「中之条ガーデンズ」。ここに選ばれているバラは、四季咲き性種ばかり。春以降も秋まで繰り返し咲くバラの姿を見に、何度も足を運んでみませんか?
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花の庭巡りならここ! 四季折々の花が紡ぐように咲く美しい森「赤城自然園」
「赤城自然園」は、「豊かな森を次世代に引き継ぐ」を理念に、約40年前から植生に手を入れて整備されてきた森です。60haもの広大な敷地は、「自然生態園」「四季の森」「セゾンガーデン」の3つにゾーニングされており、すべてを巡るには、大人の足でゆっくり歩いて2時間くらいかかります。 園内の森には、花木や山野草、宿根草、球根植物が絶妙なバランスで植栽されており、四季折々の開花リレーでつながれて、いつ訪れても見頃の花に出合えます。多くの植物の中でも改良された園芸品種は取り入れず、森の中でこそ映える在来種の楚々とした魅力を味わえるのも特徴。植物園や観光ガーデンとは趣が異なり、人工的な添景物を排した自然そのものの景観が、この「赤城自然園」の魅力です。ハイキングに出かけるつもりで、野鳥の声にも耳を傾けつつ、四季折々の花の景色を楽しみましょう。 12万球を超えるカタクリが群れ咲く姿を堪能! 5月はツツジやシャクナゲで華やぐ景色に 5月になるとツツジやシャクナゲをはじめ、たくさんの花が咲き競い、特に華やぐ季節です。「赤城自然園」は標高600〜700mで、低地と高地の中間くらいの環境。そのため、高地で見られるシラネアオイやオオヤマレンゲ、低地で見られる12万球を超えるカタクリなどが共生する景色を楽しめます。 「赤城自然園」の植物は、大本類152種、草本類510種が確認されています。ほかに鳥類77種、哺乳類15種、昆虫類が1,810種など。 新緑の季節は雑木林の緑陰の下を歩くのはすがすがしく、植物の息吹からヒーリング効果を得られることでしょう。整備された遊歩道は約10㎞に及んでいますが、それほど疲れを感じません。なぜなら、アスファルトではなくバークチップ(木の皮)が敷き詰められているため、ふかふかの感触で足あたりがよいからです。ぜひ歩きやすい服装&靴を着用し、時間を忘れて散策を楽しみましょう。 一日2回開催されるガイドツアーは内容充実! 子どもと一緒に生態系のサイクルを学ぼう 「赤城自然園」では、毎日ガイドツアーが行われています。一日2回の開催で、スタート時間は10:00と13:00、無料です。15名定員で、当日の台帳に申し込んだ順の早い者勝ちなので、参加希望の方はお早めに。約1時間かけて園内を散策し、見頃の花をはじめ鳥や昆虫などについても詳しく解説してもらえます。季節やガイドをするスタッフによって解説内容も変わるので、何度参加しても楽しめますよ。 7月中旬〜8月上旬になると、アジサイ類が見頃を迎えます。アジサイは、さんさんと日差しが照りつける日向よりも、雑木の足元など半日陰のしっとりとした場所でこそ魅力が増すもの。適した環境でのびのびと生育するアジサイの姿を見に出かけましょう。夏は希少で人気が高く、「森の妖精」と呼ばれるレンゲショウマが園内全域で観られるのをはじめ、ヤマユリやキツネのカミソリ、カワラナデシコ、キキョウなどが次々と開花し、その清楚な花姿を楽しめます。 お子さんのいる家族なら、夏休みを利用して園内の「自然生態園」ゾーンをじっくり回ってはいかがでしょうか。「昆虫広場」や「昆虫館」「カブトムシの森」「チョウのはらっぱ」「トンボ池」「ミズスマシの池」などがあり、生態系のサイクルを学ぶことができます。「赤城自然園」には年間約8万人の来園者があり、毎週のように訪れるリピーターもいるとか。自然に触れる機会が少なくなっている現代、手入れの行き届いた豊かな森で、子ども時代の思い出を重ねていくのに理想の場所ではないでしょうか。 秋の山野草に、紅葉が織りなす色鮮やかな絶景 深まっていく秋の景色を満喫しよう 秋はオミナエシ、ワレモコウ、ツリフネソウ、キバナアキギリ、フジバカマ、ホトトギスなどが次々と開花をつなぎ、オータムカラーのしっとりとした風情を楽しめます。初秋には、1,000㎞以上も移動するといわれるチョウ「アサギマダラ」が数千羽もやってきます。その生態はいまだよく分かっておらず、「赤城自然園」では毎日マーキング調査を実施。そのマーキング体験も、期間中は毎日無料で参加できます。美しいチョウの姿を子どもと一緒に観察するのもいいですね。 そして森の景色が黄色や赤に染まる紅葉の見頃は10月下旬〜11月中旬。少し標高の高い場所ならではの、発色の素晴らしい紅葉シーンをぜひ写真に収めてください。 備え付けられたベンチに座って、鮮やかな紅葉を心ゆくまで眺めていたいところですが、「赤城自然園」内には、レストランやカフェなどの飲食店は入っていません。飲食物の持ち込みはOKなので、ハイキングに出かけるつもりで、各自飲み物やお弁当、おやつを持参しましょう。飲食できるのは、6カ所の休憩広場、9カ所の東屋です。ゴミは各自持ち帰ることも忘れずに。園内へのペット同伴は不可、禁煙です。 「赤城自然園」では、12月〜翌年3月の冬季期間中も、土・日曜のみオープン。雪景色の森のなか、野鳥や動物たちがたくましく生き抜く姿を見ることができます。年間パスポートが3,000円で発行されているので、四季を通して出かけるのもオススメです。 Information 赤城自然園 所在地:群馬県渋川市赤城町南赤城山892 TEL:0279-56-5211 http://akagishizenen.jp アクセス:公共交通機関/JR渋川駅よりシャトルバス、またはタクシーで約20分 車/関越自動車道赤城I.Cより約10分 オープン期間:通年 休園日:火曜(5月は無休)、12月〜翌年3月平日、年末年始 営業時間:9:00〜16:30(最終入園15:30) 料金:大人(高校生以上)1,000円、子ども(中学生以下)無料 駐車場:400台(無料) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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花の庭巡りならここ! 一日過ごしても飽きない「ぐんまフラワーパーク」
1992年に開園した「ぐんまフラワーパーク」は、18万4,000㎡の敷地に約3,000種以上、約50万株の植物が息づいています。四季折々の草花が植栽された庭園はいつ訪れても花々が咲き競い、年間の来場者は約23万人(2017年度)。車椅子のままでも触れて楽しめるハーブ園や、子ども向けアスレチックなどの遊具もあり、幅広い年齢層に愛されています。 庭園内は、メインガーデンとなるフラトピア花壇を中央に、東エリアにイングリッシュガーデン、ハーブ園、バラ園、ロックガーデン、山野草コーナー、西エリアに観賞温室、日本庭園、つつじヶ丘など、大きく3つのエリアに区分けされています。大人の足でゆっくり歩いて90分くらいで、ペット同伴もOK(入場料200円)。レストランが充実しているほか、寄せ植え教室やバラの講演会などのイベント、押し花やアロマ石けんづくりなどのクラフト教室も開催されているので、一日遊び尽くすつもりで出かけるのにちょうどいい総合公園です。 四季の開花リレーで見どころが移ろう 何度でも訪れたい観光ガーデン 写真は、2017年の改修工事によって完成したフラトピア大花壇。球根類、一年草、バラなど四季を通して楽しめるように多数の草花で彩っています。フランス庭園に見られる左右対称、幾何学模様や唐草模様などを表現した植栽も見どころ。中央の整形花壇は、季節が進むたびに年4回の植え替えが行われています。 写真は園内中央、高さ18mの展望台「パークタワー」から見下ろした4月のチューリップ花壇。毎年配色デザインを変え、約70種20万球が開花します。 「ぐんまフラワーパーク」では、毎年5月下旬〜6月には、バラフェスタを開催。園内には香り高いバラを中心に、約400品種1,600株が植栽されています。バラ園では作出された国別に分類し、このエリアの木立バラやオベリスク仕立てのバラなどからは、美に対するお国柄を垣間見ることができそう。園路を進むと、スタンダードローズ、つるバラのアーチやオベリスク仕立て、ウィーピングスタンダード仕立てなどが次々と現れ、立体感のある演出を楽しめます。写真、手前のピンクのバラは‘マチルダ’。 6月中旬〜下旬はアジサイの季節。アメリカアジサイの‘アナベル’は、普通のアジサイよりも華奢な草姿に、グリーンがかった白い花色がたわわに咲く、近年の人気品種です。 夏の花壇はブルーやイエローをテーマカラーに、季節感を演出するよう植栽のカラーコーディネートをしています。 7月中旬と9月下旬〜10月上旬には、ダリアが見頃を迎えます。約200品種1,500株が植栽され、紫や赤をベースに秋らしいシックな花色でまとめています。 このほか、10月になるとフロトピア大花壇に群植されたサルビア・レウカンサが満開になり、紫色の絨毯を敷いたようなナイスビューが広がります。 「ぐんまフラワーパーク」の園内には5棟の温室があります。「予定していた日が雨で残念だったけれど、温室の景色だけでも十分楽しめました」との声が寄せられるほどの充実ぶり。特にイベント温室では、年間7回の入れ替えを行うディスプレイガーデンがあり、毎回30種300株がテーマに沿って植栽されています。写真は1月1日〜2月12日開催のアザレア展で、150種350株が華やかに彩りました。 写真はイングリッシュガーデンの一角。英国王立園芸協会会員、ガーデンデザイナーのサラ・フェイスフル氏が設計した、フォーマルガーデンとコートヤード(箱庭)の伝統的な整形庭園です。フォーマルなテラスから左右対称のボーダー花壇へと歩みを導き、ホットカラーからクールカラーへと花色が変化していく景色は、ため息がこぼれるばかり。トレリスなどによって仕切られた典型的な英国式庭園は、群馬県特有の「上州からっ風」と呼ばれる強風から植物を守ってくれる役割もあるとか。強風対策に悩まされている土地にお住まいの方には、参考にしたいアイデアが見つかりそうです。 ガイドツアー「チュウチュウトレイン」でラクラク見学 イルミネーションの季節もオススメ! 季節の花を楽しみながら、のんびりとガイドツアー「チュウチュウトレイン」を利用するのもオススメ。写真は4月中旬頃で、桜の散歩道を人が歩くくらいの速度で進みます。園内を約20分かけて回り、料金は300円(3歳以下は無料)。52名定員で、車椅子専用が2席あります。 毎年11月上旬〜1月下旬には、「妖精たちの楽園」をテーマにしたイルミネーションが設置されます。約100万球のLEDで装飾された幻想的な風景に、プロジェクションマッピングやレーザーショーも加わり、素晴らしいライトアップが楽しめます。 地場産の旬を取り入れたメニュー満載のレストランや カジュアルな軽食コーナーなど休憩どころも充実 広い園内には、レストランや軽食コーナーなど4店舗があります。写真は地場の食材にこだわり、オリジナル料理を提供するレストラン「花みずき」のメニューの一例。ダリアフェスタの時期限定、ダリアの花を丸ごと揚げた天ぷらが添えられた「ダリア天ぷらそば」です。ランチは11:00〜15:00、ディナーは16:30〜19:00(特別な夜間開園時のみ)、ラストオーダーは15分前まで。団体利用OKで、120席あります。価格帯はランチが1,000円前後、スイーツメニューはクリームあんみつ500円、フォンダンショコラ680円、季節限定パンケーキ780円など。 ほかに土産物を扱う売店も充実しており、群馬県の特産品や、ぐんまちゃんグッズ、農産物など多数揃っているので、ショッピングを楽しむ時間もとっておきましょう! Information ぐんまフラワーパーク 所在地:群馬県前橋市柏倉町2471-7 TEL:0120-1187-38 http://www.flower-park.jp/ アクセス:上毛電鉄大胡駅から約6㎞(乗り合いタクシーで約15分) 関越自動車道より赤城IC下りて前橋・赤城方面へ約22㎞ 車で約30分 北関東自動車道より伊勢崎IC下りて前橋・渋川方面へ約15㎞ 車で約30分 オープン期間:通年、無休 営業時間:9:00~17:00(3月~10月)、9:00~16:00(1月~2月) 入園料:700円(4〜6月)、600円(7月〜3月) Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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花の庭巡りならここ! ため息がこぼれる美景を堪能! 「東武トレジャーガーデン」【閉園】
約8万㎡の敷地をもつ「東武トレジャーガーデン」は、「芝桜のガーデン」、「シーズナルガーデン」「水辺のローズガーデン」と、大きく3つのエリアに分けて構成。約4,000種100万株の植物が息づく花園は、「美しきバラと千の花々」というコンセプトのもとに、息をのむような美しいシーンが次々と登場し、自然に奥へと歩みを進めたくなるようランドスケープデザインされています。また、隣接する野鳥の森と茂林寺沼低地湿原を借景に取り込んだ自然豊かな景色が広がり、まるで別世界を訪れたような気分に。2018年は4月1日〜6月10日の期間に春季フェスタを開催。花々が咲き競うこの時期に、ぜひ足を運んでみてください。期間中はイベントも多数開催しており、4〜6月に100万人のクラシックライブのほか、オリジナルブレンドのハーブティー教室や、多肉植物や小物づかいでステップアップコンテナガーデン、ローズガーデンツアーなどを予定しています。 広大な敷地を生かし、面で魅せる「芝桜のガーデン」と「シーズナルガーデン」 「東武トレジャーガーデン」内の「芝桜のガーデン」エリアの見頃は、4月中旬〜下旬頃。ピンク系と白の芝桜5品種が約20万株植栽され、見事なピンクのグラデーションをつくり出します。背景には53本のソメイヨシノが植えられており、どちらも満開を迎えた際には、絶好のフォトスポットとして人気を呼んでいます。 「シーズナルガーデン」エリアの見頃は4〜6月頃。草花を混植したエリアで色鮮やかな約80万株の花々が、季節が進むごとに順次美しく咲き誇ります。 写真のように面で魅せるエリアの中心に立つ樹木は、輝くような黄色いカラーリーフが目を引く、ネグンドカエデ‘ケリーズゴールド’。その手前のブルー一色で大地を埋める花は、ネモフィラです。 「シーズナルガーデン」の左の写真は、紫のラークスパー、ホワイトレースフラワー、ヤグルマギクが咲き競う、ブルー系の花色でまとめた一角。背景のレンガ造りの構造物は、展望台として全景を見渡せます。館林の茂林寺に伝わる「分福茶釜」と同様のご利益(開運出世・寿命長久)があるという茶釜のオブジェも置かれているので、ぜひ立ち寄ってみましょう。 右の写真は、「シーズナルガーデン」の混植エリアで、4月下旬頃の風景です。オレンジ、黄色、ピンクなどの暖色系でカラーコーディネートし、リナリア、デージーなどを植栽。後ろに少し見えているネモフィラのエリアとのコントラストが楽しめます。 7つのシーンで構成される「水辺のローズガーデン」で、バラの魅力を存分に味わう 「水辺のローズ」の見頃は5月中旬〜下旬。このエリアは、さらに7つのシーンに分けられています。「初夏のさくらのトンネル」、「ブルーローズのラヴィリンス」、「心を癒すフラグラント・ローズ・ガーデン」、「イングリッシュローズが咲き誇るペレニアルボーダー」、「風にバラが唄うナチュラルガーデン」、「清き白バラの天蓋」、「エントランス・ボーダーガーデン」です。タイトルからもロマンティックなガーデンの様子が伝わってきます。 写真は「初夏のさくらのトンネル」のシーン。淡い桜色のバラ‘ポールズ・ヒマラヤン・ムスク・ランブラー’のアーチを連ねてトンネルに仕立て、桜が爛漫に咲く季節をイメージさせる植栽となっています。 写真は「イングリッシュローズが咲き誇るペレニアルボーダー」。バラのナーセリー、「デビッド・オースチン・ロージズ」が生み出したブランド「イングリッシュローズ」の品種群は、四季咲きで花つきがよく、優美な花姿が魅力です。それらの特性を生かし、バラの花色をより引き立たせるために、組み合わせる下草は脇役として控えめにしています。手前でたわわな房咲きになっている、オレンジイエローのイングリッシュローズは‘モリニュー’です。 写真は「清き白バラの天蓋」のシーン。園路へダイナミックに渡したパーゴラには、白バラの‘つるアイスバーグ’、‘ボルティモア・ベル’などが仕立てられ、青空によく映える清楚な景色をつくり出しています。パーゴラの下には多数のベンチが配されており、休憩可能です。ただし、園内への飲食物の持ち込みは不可となっています。喫煙も不可(所定の位置に喫煙所あり)、ペットの同伴はカート限定利用でOK(小型犬に限る。有料でカート貸し出しあり)。 写真は「心を癒すフラグラント・ローズ・ガーデン」のワンシーン。香りが強く、花姿もグラマラスなバラばかりを集めた、癒しを誘う一角です。バラは花が開いたばかりの頃に最も強く香るので、このエリアを楽しみたいなら午前中の早い時間帯を狙うのがオススメ。曲線を描いた園路のため、歩を進めるたびにシーンが変わり、奥行きを感じる演出がなされています。手前の赤いバラは‘ドゥフトボルケ’、オレンジ色のバラは‘ジャスト・ジョーイ’。 「エントランス・ボーダーガーデン」の入り口には、石づくりのアーチがしつらえられています。このアーチを優美に彩るのは、数ある品種のバラの中でも高い人気を誇る‘ピエール・ドゥ・ロンサール’。アーチをくぐると、宿根草を中心としたボーダーガーデンを両脇にもつ「ロングボーダーガーデン」の景色に場面転換されます。 レストランで舌鼓を打ったら、オリジナルグッズが揃うショップをのぞいてみよう! 「東武トレジャーガーデン」の花々で彩られた美しい景色を観覧するには、大人の足でゆっくり歩いて1時間くらいかかります。少し歩き疲れたなと感じたら、レストラン「ヴィクトリアンハウス」で休憩するのもオススメ。営業時間は、10:00〜16:00、ラストオーダー15:30、テラス席は9:30〜17:00、開園期間中(4月1日〜6月10日)のみオープンしています。コース料理やパスタのほか、フルーツパフェやパンケーキなどスイーツも揃い、充実したメニュー内容。右の写真は人気メニューの「ヴィクトリアンプレート」です(価格帯は季節によって変動)。 土産物店も2店舗あるので、ぜひのぞいてみましょう。ガーデンショップ「Mary’s Room」は、花苗のほかテキスタイル、ガーデン用雑貨、ハーブティーなどガーデニングの枠にとらわれない多様な品揃え。土産物ショップ「こるり」では、地元群馬県館林の名物品などを販売。バラ餡とシソ餡の2色の餡が入った「ちゃがまんじゅう」が人気商品です。 Information 東武トレジャーガーデン【閉園】 所在地:群馬県館林市堀工町1050 TEL:0276-55-0750 http://treasuregarden.jp Credit 取材&文/長田節子 ガーデニング、インテリア、ハウジングを中心に、ライフスタイル分野を得意とするライター、エディター。1994年より約10年の編集プロダクション勤務を経て、独立しフリーランスで活動。特にガーデニング分野が好きで、自身でも小さなベランダでバラ6姉妹と季節の草花を育てています。草花や木の名前を覚えると、道端で咲いている姿を見て、お友達にばったり会って親しく挨拶するような気分になれるのが醍醐味ですね。 https://twitter.com/passion_oranges/
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カメラマンが訪ねた感動の花の庭。長年通ったアンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン【閉園】
「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」は、今から16年前の2002年4月に日本初の本格的イングリッシュガーデンとして群馬県太田市にオープンしました。 僕の家からは車で約3時間、決して近いという距離ではないのですが,この18年間で一番多く撮影に訪れたガーデンは、間違いなくこの「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」だと思います。 アンディ・マクルーラとウィリアム・ウルフの2人のイギリス人によってデザインされたこの庭は、イギリスのガーデンのエッセンスが随所にちりばめられていて、春、夏、秋、冬、どの季節も期待を裏切らない、僕にとってかけがえのないガーデンです。そして、多くのことを勉強させていただきました。 初めてこのガーデンを訪れたのは、おそらく2002年の5月だったと記憶しています。大型ホームセンターの「ジョイフル本田」新田店に付随した施設として、なんと群馬県にイングリッシュガーデンがオープンしたという噂を聞きつけました。当時イギリスのガーデニング関連の本を2冊手がけたカメラマンとしては、どんなガーデンなのか、この目で見ない訳にはいかないぞ! と、さっそく車を走らせたのを思い出します。 東北自動車道の館林I.Cを下りてから約1時間。とにかく遠い、というのが第一印象でした。しかし、いざ着いてみると、そこはまさにイギリスのガーデンにしか見えないではないですか。アンティーク調のレンガとアイアンの大きなゲート、その奥にはきれいに刈り込まれたツゲのヘッジと噴水……。長い時間をかけて駆けつけた甲斐がありました。 三脚をかついで小走りにガーデンに入り、夢中で撮影を始めました。ガーデン内は、白を基調にしたホワイトガーデンやサンクンガーデンにデザイナーのお子さんの名がついた2本の小径など、20のテーマに沿って一つずつ部屋のようにデザインされています。一つのガーデンを撮っては次へ、また次へと撮影はとてもシンプルに進みました。それはなぜなら、正しい立ち位置を理解して、まっすぐに立てば、自然と美しいガーデンフォトになってしまうという、カメラマンにとって夢のようなガーデンだったからです。 当時はイングリッシュガーデンが流行りだして、宿根草のボーダー花壇をキーワードにした特集が園芸関連誌をにぎわせていました。しかし日本では、イギリスの雑誌のような美しいガーデンにある宿根草の写真がなかなか撮れないことが悩みで、常にいい撮影ができる庭を探していたのです。 そんな僕にとって、「アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン」は最高の庭で、今まで憧れていたボーダー花壇の中には、美しく咲く宿根草が撮り放題! それどころか、撮影した花の品種名が分からなければ、イギリス仕込みのガーデナーさんが丁寧に教えてくれるし、さらに分からない時は調べてから連絡までしてくれるという、まさに天国のようなガーデンでした。 翌年からは毎年必ず足を運び、宿根草に限らず、バラやクレマチスなど、いろいろなガーデンシーンを撮影させていただきました。今の基本的な撮影スタイルは、このガーデンから学んだような気がします。 その後、2代目ヘッドガーデナーの福森さん、3代目ヘッドガーデナーの太田さんには、さらにお世話になりました。早春には、スノードロップやクロッカスなどの小球根の可愛らしさを見せてもらったり、冬にはイギリスの雑誌でよく登場していた凍った庭の撮影をするために、寒い真冬の早朝、裏のゲートを開けてもらったりもしました。春の花木の美しさや、秋の紅葉したガーデンの美しさまで、日本にいながらイギリスの庭を撮影しているかのような、さまざまな経験を重ね、学ばせてもらいました。 Information アンディ&ウィリアムス ボタニックガーデン 2002年4月に開園して以来多くの来園者があった「アンディ&ウィリアムスボタニックガーデン」(群馬県太田市、ジョイフル本田新田店に併設)は、2020年12月20日(日)に閉園いたしました。 掲載の記事は、2018年2月5日公開のものです。 併せて読みたい イギリス流の見せ方いろいろ! みんな大好き、チューリップで春を楽しもう 花の庭巡りならここ! 22のガーデンスタイルが楽しめる「名古屋港ワイルドフラワーガーデン“ブルーボネット”」 カメラマンが訪ねた感動の花の庭。滋賀「English Gardenローザンベリー多和田」のパンジービオラフェスティバル Credit 写真&文/今井秀治 バラ写真家。開花に合わせて全国各地を飛び回り、バラが最も美しい姿に咲くときを素直にとらえて表現。庭園撮影、クレマチス、クリスマスローズ撮影など園芸雑誌を中心に活躍。主婦の友社から毎年発売する『ガーデンローズカレンダー』も好評。
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群馬県
花旅案内・ブルーベリー摘みができる果樹園の中の可愛いカフェ
緑の森と青空を背景に建つ、煙突屋根の可愛らしい一軒家カフェ「ティア・ツリー オーチャード&カフェ」。周囲をリンゴやブルーベリーの果樹園に囲まれて、なんだか赤毛のアンの世界に入り込んだよう。建物の前には丹精されたフラワーガーデンが広がり、花を眺めながら店内へ。7月からは周囲に広がるブルーベリー畑で摘み取り体験ができるので、腰を落ち着ける前に、まずは摘み取り専用ボックスを購入して、畑へGO! 熟したブルーベリーを探して、木から木へ。紫色が濃くて、白っぽい粉をまとった粒を選びます。この白い粉は‘ブルーム’といい、果実の水分が蒸発するのを防ぐために自然に分泌されているものです。熟した新鮮な果実の目安になるので、よく観察しながら摘みます。ブルーベリーはお日様をたっぷり浴びて育つため、畑には陽を遮るものがないので帽子は必携ですね。 「1粒ずつじゃなく、10粒くらい一緒に食べてみてください」と言うのは、オーナーで料理を担当している星野綾さん。言われた通りにしてみると、濃厚な甘みとともに野趣溢れる香りが口いっぱいに広がり、「ブルーベリーってこんなに美味しかったっけ?」という新鮮&感動体験。ティア・ツリーの大粒で甘いフレッシュ・ブルーベリーは贈答用としても人気です。500g×2/3,000円、500g×4/5,000円(送料込み)。受け付けは8月いっぱいまで。旬の期間の短いブルーベリーは冷凍が可能で、むしろ冷凍して料理に使ったほうが、果肉がしっかり残って美味しいのだそうです。 カフェは果樹園の高台にあり、どの席からも村の美しい田園風景が眺められます。ブルーベリー畑の向こうにはリンゴ畑、その向こうには田んぼが広がっており、オーナーの星野さん一家は、これらの田畑を作る農家でもあります。ご主人の孝之さんを中心に、それぞれのご両親とともに農業を営みつつ、2008年にカフェをオープン。料理やジャムの製造は綾さんが担当し、定期的なイベントも企画しています。入り口の素敵な庭と、テーブルに飾られた可愛らしい花のアレンジは、ガーデニングが好きな綾さんのお母さまの手によるものです。 秋のカフェからの眺めは、黄金色の田んぼとリンゴ畑に変わります。川場村は83%が山林で占められており、日本百名山の一つ、武尊山からの雪解け水と朝夕の寒暖の差が村のあらゆる作物の味を特別なものにしています。川場村のお米は、あまり一般に流通しない幻のお米として知る人ぞ知る逸品です。炊きたてはもちろん、冷めても美味しいのが特徴で、お米の食味を鑑定する国際コンクールで8年も続けて最高賞を取り続け、ミシュランガイドで3つ星を獲得したニューヨークの名店も川場村のお米を使っています。カフェでも星野さんたちが丹精込めて作った川場産コシヒカリのお米のランチメニューがいただけるほか、通販で購入することもできます。 店内の席は少しずつ雰囲気が異なり、インテリアを眺めるのも楽しい空間です。ペット連れの方は外のテラス席も利用できます。カフェを利用する際には、事前に予約をした方がスムーズに入れます。ジャムやフルーツジュースなどの他に雑貨や食器なども販売されており、可愛いお土産が見つかりますよ。 お土産のブルーベリーでマフィンを作ってみましょう。友達に送ったブルーベリーにも、レシピを添えて。 材料/ホットケーキミックス150g、卵1個、牛乳100㏄、砂糖40〜50g、バター50g、ブルーベリー適量 バターを室温に戻しておくとともに、オーブンを180度に予熱しておきます。 ボールに材料を全部入れてさっくり混ぜ、マフィン型の半分くらいまで生地を入れます。型をトントンと軽く落として空気を抜き、オーブンで20〜25分。竹串などで刺して生地が付かなければ焼き上がりです。 Information ティア・ツリー オーチャード&カフェ 〒378-0102 群馬県利根郡川場村川場湯原 2453-3 営業時間:open 金・土・日・祝のみ 営業(冬期休業あり) 11~17時(ランチは11〜14時)※フードラストオーダー16時 TEL. 0278-52-3556 FAX. 0278-25-3553 http://tiatree.com ※ホームページのカレンダーで営業日をご確認のうえ、カフェを利用される際は席の予約をオススメします。 併せて読みたい ・知っておきたいブルーベリーの肥料の施し方と注意点 ・花の庭巡りならここ! フルーツの魅力を発信する「東谷山フルーツパーク」 ・ガーデニングとは? 楽しく成功させるためのアイデアと基本情報をご紹介 Credit 写真&文/3and garden ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 Photo/top)Chamille White/8)Vladyslav Yankovsky/Shutterstock.com