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東京都
バラ咲く旧小笠原邸の建物と庭を訪ねて
スパニッシュ様式の瀟洒な洋館 スパニッシュ建築の先駆けとして1927年に竣工した建物と、正面口のクスノキ。 都心とは思えないほど静けさに満ちた建物と庭。東京都新宿区河田町にある旧小笠原邸は現在「スペインレストラン小笠原伯爵邸」として、ゲストを迎え入れている。 かつては伯爵家の客人を迎えた、趣あるエントランス。 邸の正面玄関に立つと、2羽の小鳥のトピアリーが迎えてくれる。エントランスでは、ブドウ棚の模様が描かれたキャノピー(外ひさし)が、光を浴びて、大きく翼を広げる。建物の外観や玄関のたたずまいからも、邸内への期待に胸が高鳴る。 ブドウの蔦や葉、実がデザインされたキャノピー。 エントランスの重厚な扉と照明。 扉の上部、籠の鳥を配した明かり取り。邸内の至る所に小鳥の意匠が見られ、別名「小鳥の館」という愛らしい名前で呼ばれる所以となっている。 エントランス扉の上部、ブドウと小鳥をモチーフにした鉄製の明かり取りが美しい。 館の数奇な歴史 レストランのガーデン席付近から見た庭の風景。オリーブの木とガーデンテントがよく似合う。 建物は、旧小倉藩藩主であった小笠原家の30代当主小笠原長幹伯爵の邸宅として、1927年に建てられた。敷地は江戸時代の小倉藩の下屋敷跡で、竣工当時は2万坪の広さを誇っていたという。今なお千坪の敷地を保ち、建物の周囲には、樹齢500年を超えるオリーブの木や、バラが咲く庭が広がっている。 エントランスからロビーを経て至る回廊。右手がパティオで、左手にはグランドサロン、ラウンジ、シガールームなどが並ぶ。 伯爵家の館として約20年間にわたり家族が暮らしていたが、第2次世界大戦後の1948年に米軍に接収され、GHQの管理下に置かれた。その後1952年に東京都に返還、都福祉局の児童相談所として使用されていたが、1975年以降は老朽化のため放置され、取り壊しも検討されていたという。 庭から見たシガールームの外壁の装飾。太陽と草花と鳥の構図は「生命の賛歌」がモチーフとなっている。 2000年に東京都から民間貸し出しの方針が示され、1年半にわたる全面的な修繕工事の後、レストランとして甦った。外壁のレリーフなどの修復作業は、竣工当時の資料を基に忠実に実施され、内装、家具、照明機器はヨーロッパから取り寄せて、当時の雰囲気そのままを再現している。 邸内をめぐる 現在、レストランのメインダイニングとして使用されているのは、伯爵の書斎や寝室だったところ。かつてのベランダが庭に面したテラス席となっている。 (左)唐草模様の鉄細工が施された、ロビーから回廊へと続く欄間。(右)ヨーロッパから取り寄せた家具や照明器具で、当時の客室が再現されたラウンジ。 メインダイニングに至る回廊わきに並ぶ3つの部屋は、伯爵家の食堂、客室、シガールーム(喫煙室)で、現在、客室はレストラン客のラウンジとして使用されている。 伯爵家のメインダイニングだった部屋。大テーブルのメロンレッグと呼ばれる脚部には、細かな装飾が見られる。 かつて食堂だったグランドサロンにある大テーブルは、イギリス、エリザベス様式のアンティークで、伯爵家で実際に使用されていた唯一の家具。伯爵夫妻と5男6女の家族が晩餐のテーブルを囲んでいた情景が目に浮かぶようだ。 半透明の色ガラスを使った、アメリカンスタイルの当時のステンドグラス。 客室だった部屋の窓には、日本最初期のステンドグラス作家小川三知氏による、小さな花がデザインされたオリジナルのステンドグラスが残されている。 イスラム風のシガールーム。大理石の柱や床はオリジナルのものを磨いて使用し、天井は竣工時の資料をもとに、現代画家によって彩色された。 ヨーロッパのタバコや葉巻はトルコやエジプトから入ったことから、当時の洋館の喫煙室はイスラム風の内装で作られることが多かった。ブルーの天井、漆喰彫刻に彩色を施した壁面、大理石の柱と床が、荘厳な雰囲気を醸し出している。単なる喫煙所ではなく、男性の社交場といった場所だったのだろう。庭に面した半円形の美しい部屋だ。 シガールーム入り口。花籠のレリーフが美しい。(右)イギリスのビクトリア朝で好まれた、イスラム模様の内壁。 パティオのモッコウバラ パティオに咲く黄モッコウバラと白モッコウバラ。別名スダレバラというとおり、見事に壁一面を覆っている(2024年4月16日撮影)。 スペイン建築の特徴のひとつが、パティオ。建物の中心部に位置し、光が差し込む空間だ。パティオでは、植栽されて20年が経つモッコウバラが雄大な姿を見せている。テーブル席が設けられていて、邸内のカフェを訪れた客は、ここでお茶の時間を過ごすことができる。毎年4月のモッコウバラの開花時期には、それを目当てに訪れる人もいるほどで、見事な景色が出現する。 (左)パティオの一角にあるオレンジの木と、バラに囲まれた噴水。噴水の彫刻は館の当主だった小笠原長幹氏作といわれている。(右)カフェの窓。 2階屋上のパーゴラ モッコウバラのほか、鉢植えのバラが配された屋上庭園。 パティオから大理石の階段を上ると、そこは2階の屋上庭園。当時の設計図と写真を基に復元されたパーゴラにも、黄色と白色のモッコウバラが咲き誇る。 庭から見たシガールームの外壁 当時の色タイルの発色を確認しながら、新たに焼き上げ、修復されたシガールームの外壁レリーフ。 庭に回り建物を眺めると、ひときわ目につくのが円筒状のシガールームの壁面装飾。装飾タイルは、古陶器の色使いにおいては日本の第一人者といわれた小森忍氏の作品だ。「生命の讃歌」がモチーフで、太陽、花、鳥の意匠が日差しを浴びて輝いている。1600個のパーツで構成されており、ほとんどが剥がれ落ちていたが、陶芸家夫妻の手によって約3年の歳月をかけて修復された。 庭をめぐる 白色の花で統一された庭の一角。専任のガーデナーが季節折々の花を演出している。 庭では、春を告げるアーモンドや姫リンゴの花、5月には白バラ‘スワニー’が開花し、季節の花々を楽しむことができる。バラは前庭や屋上庭園にも植えられ、17種類を数える。 (左)オリーブの木が銀色の葉を風に揺らす庭では、都会にいることを忘れるほど、ゆったりとした時が流れる。(右)すっくと立つ糸杉の木。 中央に植えられたシンボルツリーは、推定樹齢500年のオリーブ。スペインとの交流400年を記念して、2013年にアンダルシアからやってきた。夏から秋にかけて実を付け、大きな籠いっぱいの収穫があるという。 鳥の巣箱のオブジェ。 ガーデンでの催し 小鳥たちが遊ぶ庭の噴水。 レストランのガーデン席での食事(4月から)、全館を利用したウェディング・パーティー、初夏に催されるスペインナイトなど、いずれも心ゆくまで庭を楽しむことができる。 (左)庭の小道を散策すると、さまざまな草花に出合う。(右)「小鳥の館」にちなんで、邸の修復中に作られた焼き窯。地下にあったボイラーの鉄蓋や、外壁のタイル片が使われた。今は現役引退で、庭のオブジェとなっている。 5月のバラ 庭の中央付近に咲く、1978年メイアン作出の小輪白バラ‘スワニー’。 5月のバラの季節に小笠原邸を再訪した。庭の中央ではバラ‘スワニー’が満開で、白い清楚な姿を見せている。壁沿いには‘フロレンティーナ’という赤いつるバラが。 壁沿いに仕立てられた‘フロレンティーナ’というつるバラ。 屋上に上がると、ピンクと白のバラ‘安曇野’が光を浴びて輝くように咲き誇っている。カフェでくつろいだ後に、バラの庭を散策できるのは嬉しい限りだ(2024年5月21日撮影)。 屋上で満開の一重バラ‘安曇野’。 (左)屋上にはクレマチスの彩りも。(右)シックな色合いのゼラニウムのハンギングが、クラシックな照明とよく似合う。 エントランス付近では‘紅玉’という名前のバラがゲストを出迎える5月。 かつて貴族たちが集った小笠原邸の室内、パティオや庭で過ごす。それは極上のひとときに違いない。 Information スペインレストラン小笠原伯爵邸 住所:162-0054 東京都新宿区河田町10-10電話:03-3359-5830 ランチ 11:30~15:00 ディナー 18:00~22:00 予約制OGA BAR &Café 12:00~20:00 予約不要アクセス:都営大江戸線 若松河田町駅下車、河田口より徒歩1分https://www.ogasawaratei.com *館内、庭園の見学はレストラン、カフェ利用者のみ可能。カフェ利用者の見学時間は15:30~17:00(レストランの貸し切りなどで見学できない日もありますので、事前にお問い合わせください)。
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茨城県
【庭のある暮らし】ハーブを育てて使い、心と身体を整え健やかに暮らす
脳神経を活性化させるローズマリー ローズマリーは常緑の低木で、一年中香りのよい葉を提供してくれます。木立ち性や、這うように育つほふく性、半ほふく性のものがあり、この庭では木立ち性のものをフェンスに沿わせて育てています。非常に丈夫で乾燥や真夏の日差しにも強く、これといった病害虫の心配もないので、育てている人もたくさんいるのではないかと思います。 ローズマリーやセージなど、庭から摘んだハーブを束ねたハーブスワッグ。 よく皆さんに聞かれるのが、モサモサとよく生い茂るローズマリーの使い道です。生育旺盛なローズマリーは収穫を兼ねてこまめに剪定し、利用するのが株姿をきれいに保つ一番の方法です。切らずにいると2mくらいの高さになり、内側が蒸れて枯れてきたりするので、適宜切って使うのがおすすめです。さて、その使い方ですが、一番簡単なのは、枝を束ねて室内に飾るスワッグを作ることです。 ローズマリーは葉に触れると、力強く爽快感のある香りを放ち、元気がないときでも気持ちをリフレッシュさせてくれます。これは単なる私の気の持ちようではなく、近年の研究で、ローズマリーの香りは脳を活性化させ、気持ちを前向きにしたり、集中力や記憶力を高める効果に優れることが分かっています。ですから、例えば勉強部屋や仕事部屋に、ローズマリーの剪定した枝葉をぶら下げておくと、よくはかどるかもしれません。キッチンに吊しておけば、そのままドライになっても料理に使えます。 ローズマリーと相性のいいポテトフライ。Kolpakova Svetlana/Shutterstock.com 我が家では、よく子どもたちや大人のビールのおつまみに、友人から教えてもらった「トスカーナフライドポテト」を作ります。ローズマリーなどのハーブとニンニクで香り付けしたフライドポテトですが、とても簡単に作れてとってもおいしいので、ぜひお試しください。 ローズマリー香るトスカーナフライドポテトの作り方 【材料】 ローズマリー 15cmほどを2枝 タイム 2〜3枝 セージの葉 5〜6枚(ハーブ類は全部揃わなくてもあるものでOK) ニンニク 1〜2片 ジャガイモ 4〜5個 ベーコンお好みの量 小麦粉少々 塩・胡椒適量 揚げ油適量 【作り方】 ① ジャガイモもニンニクも皮付きのままでOK。ジャガイモをくし切りにして小麦粉をまぶします。ニンニクは先端をカットしておきます。切らないと高温の油の中でニンニクが弾けて危険なので、忘れないように! ② 油にハーブとニンニクを入れてから火をつけ、油が170℃に温まったらジャガイモを入れて、こんがりキツネ色になるまで5〜6分揚げます。このとき、ハーブが黒くなっても大丈夫です。 ③ ベーコンを適当な大きさに切って、別のフライパンで炒めます。揚げたジャガイモとベーコンを絡めて、塩・胡椒をふり完成。 女性ホルモンを整え幸福感をもたらすバラ バラは香水の香料に使われる代表的な植物ですが、花屋さんがブーケに使うバラは、じつは香りのあるものが少ないのです。そのわけは、香りの成分は精油に含まれており、精油分の豊富なバラの花びらは傷みやすく、流通に向かないためです。ですから、逆にいえば精油成分をたっぷり含んだ香り高いバラは、庭で育てている人だけの特権です。 さまざまなメゾンの香水に使われるバラの精油。Anuta23/Shutterstock.com バラの精油はアロマテラピーでも使われます。バラの香りには女性ホルモンの乱れを整えたり、ストレスを緩和し幸福感を得られる作用があるとされ、医療の現場で用いられることもあります。ところで、バラの精油がいくらするかご存じですか? 1mlで1万円以上。小さじ1杯が5mlですから、ほんの数滴でもとても価値があるのです。 庭で摘んだバラやハーブを水に浮かべて。 庭でバラを育てていれば、その高貴な香りに包まれて暮らすことができます。朝、つぼみが開き始める頃のバラの香りは格別です。花に顔を近づけ息を深く吸い込むと、思わずうっとりため息がこぼれます。 古くから薬用に用いられるロサ・ガリカ・オフィキナリス。 この庭ではいくつかのバラを育てていますが、その一つがロサ・ガリカ・オフィキナリス。オフィキナリスという学名は「薬用の」という意味で、古くから薬として用いられてきたバラです。オフィキナリスは一季咲きなので、春は存分に香りを堪能した後、花弁を摘んでドライにし、花の季節が過ぎた後もお茶などにして一年中楽しめるように保存しています。 バラの花びらで作るローズペタルティー ローズペタルとはバラの花びらのことです。バラの花びらを煮出してお茶にしますが、飲用する場合には無農薬で育てていることが条件です。香りが揮発しない朝のうちに花を摘み、ガクを外して花びらだけにします。ザルで洗ってから鍋に入れ、沸騰させたら火を止め、色が出てきたら完成です。 ドライのものはティーカップ1杯(約180ml)に対し、ティースプーン1〜1.5杯のローズペタルを用います。フレッシュの場合は、その2〜3倍の量を。レモン汁やはちみつを加えるのもおすすめです。 使い道豊富な日本在来の実力派和ハーブ、ドクダミ 日陰で湿り気の多い場所に群生し、独特の臭気がすることで知られるドクダミ。生育旺盛で庭中にはびこってしまい、除草しようとすると臭いが手につくので嫌われ者になりがちですが、非常に薬効が多く、強い抗菌作用のある和のハーブです。開花期に採取したものを乾燥させ、煎じて服用したり、生葉を揉んで汗疹や水虫などの湿布治療に用いたりと、古くから薬として利用されてきました。 虫刺されなどに重宝するドクダミチンキ 私はこの季節、5月下旬〜7月の開花期に、庭に生えているドクダミを収穫し、チンキを作ります。ドクダミの花や葉っぱで作るドクダミチンキは、虫刺されや汗疹、かぶれなどに重宝します。収穫した花と葉を一度水洗いして乾かした後、広口瓶の1/3ほどドクダミを入れ、ホワイトリカーや焼酎などのアルコールを瓶いっぱいに注いで3週間放置します。その後、フキンなどを使ってこし、スプレー容器に移し替えれば、ドクダミチンキとして利用できます。 500種以上のハーブや草花が育つ鈴木ハーブ研究所の庭 ご紹介したハーブに加え、鈴木ハーブ研究所の庭では、樹木や草花類を含め500種類以上のハーブを育てています。私は小さい頃から畑仕事をする祖母と一緒に暮らしてきたので、植物を育てて、収穫して、食べたり飲んだり、お風呂に入れたり、飾ったり、香りを利用したり、暮らしの中にはいつも植物があり、その移り変わりがカレンダーのように身に染み込んでいました。そのカレンダーの中に、大人になってからハーブが加わり、さらに私の植物の世界は広がりました。 ハーブは植物の中でも丈夫で育てやすい種類が多いので、地植えや鉢で育てておけば、いつでもすぐ手に取ることができます。そういう身近なものを利用して自分で自分をケアする術(すべ)を知っていれば、むやみに不安になったり、不安から体調を崩すのは防ぐことができます。予想外の事態というのは、どんな時代にも誰の人生にも起きると思いますが、そういうときに動揺するだけでなく、じゃあどうしたらいいのか、と次の一歩を考えることが大切。そのヒントを、母親として娘たちにきちんと残しておきたいなと思ったことをきっかけに、私のハーブのある暮らしを、4冊のミニブックにまとめました。 よく使うハーブの育て方、使い方をまとめた「私のハーバル手帳」 例えば、本の中でご紹介したカモミールは、娘たちが小さい頃から眠る前にミルクティーにして飲んでいます。カモミールの安眠作用はよく知られていますが、それだけではなく、喉がちょっと痛いなという、いわゆる風邪の初期症状のときにも有効です。その段階でカモミールティーを飲んでおくと、たいがい本格的な風邪に発展せずに済んでいます。こういうふうに、はっきりと「病気」とまではいかないけれど、ちょっとあれ? っていう違和感を覚えることって、日常的にありますよね。身体の不調もそうですし、なんとなく不安感が強くなったり、眠れなくなったりすることは、誰にでもあるものです。そういうときに、身近な庭や鉢植えの植物を使って対処できる知恵を持っているのは、心強いですよね。 ちょっと話はそれますが、私の地元でもあり、今も暮らす茨城県は水戸黄門で有名ですが、黄門様の命によって水戸藩医がまとめた『救民妙薬集』という書物があります。これは医者に診てもらうことができない貧しい民のために、身近な植物を用いて病を癒やせるようにと書かれたものです。お腹の痛いときはこの草を使ってこうするよ、とか、ケガをして出血したときはこうだよ、というように、自分自身で不調に対処する術が書かれているんです。私はこれを読んで、この知識がどんなにか人々を救ったことだろうし、心強かったことだろうなと思って感動しました。私は西洋からもたらされたハーブを庭で育てて、暮らしに役立ててきましたが、私自身も何度もハーブに救われてきました。自社のスキンケア商品にもそういう経験が生かされています。そして、もっと多くの人に自分がこれまで培ってきたハーブの知識を伝えたいと思い、「本」という形を選択しました。そのヒントを与えてくれたのが、『救民妙薬集』です。 「私のハーバル手帳」も、現代を忙しく生きる人々に、健やかで幸せな暮らしを送るために役立ててもらえたらという気持ちで作りました。育てやすく使いやすいハーブや、道端に生えているような身近な草花をピックアップしました。ハンドバッグに入れて移動中などに眺めてもらえるように、A5版であえて薄い作りにしました。忙しい日常の合間で、ふと本を開いたときに癒やされ、いつも健やかでいられるためのお守りになれたらうれしいです。 【私のハーバル手帳】 Vol1. カモミール、ミント、ラベンダー、セージ Vol2. ローズマリー、タイム、オレガノ、バジル Vol3. バラ、バタフライピー、ラバンジン、オータムベリーズ、コキア、クロモジ Vol4. フキ、ヨモギ、スギナ、カラスノエンドウ、セイヨウタンポポ、ドクダミ、サンショウ、シソ、クスノキ、ビワ 【Information】 鈴木ハーブ研究所 オープンガーデン開催中5月24日(金)〜26日(日)10時〜16時(最終日15時まで)入園無料 ■場所鈴木ハーブ研究所/〒319-1112茨城県那珂郡東海村村松2461 ■内容500種以上を育てるガーデンの無料開放/ワークショップ/出店販売他 https://feelherb.s-herb.com
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神奈川県
アジサイ(紫陽花)のコレクション300種!プロが育てるから花数が違う「横浜イングリッシュ…PR
首都圏屈指の300品種のアジサイが主役になる季節 遅咲きのバラと早咲きのアジサイが一緒に楽しめる2024年5月下旬の横浜イングリッシュガーデン。 2,200品種、2,800株ものバラが4月下旬から咲き継ぎ、2024年も多くの人を魅了してきた横浜イングリッシュガーデン。5月下旬からは、主役が遅咲きのバラから早咲きのアジサイへとバトンタッチして、景色が日々変わっています。 左/ピンクのバラ‘ローゼンホルム’とホタルブクロがコラボ。右/8mのオウシュウナラに赤バラ’ゾマーアーベント’ が咲くダイナミックな風景。5月下旬。 ‘ローゼンホルム’や‘ゾマーアーベント’など最晩生のバラが咲く頃になると、庭のあちこちで存在感が出てくるのがアジサイです。空のように爽やかなブルーや燃えるような真紅、チャーミングなピンク花など、個性溢れる300もの品種が日毎に色づいています。 遅咲きのバラと早咲きのアジサイが一緒に楽しめる2024年5月下旬の横浜イングリッシュガーデン。 一度訪れたことがある方は、「あんなにバラが咲いていた、同じガーデンとは思えない!」と驚くほど。日ごとに存在感を増すアジサイは、6 月中旬に最盛期を迎えます。 オレンジ色の‘ラ・ドルチェ・ヴィータ’の2番花とクレマチス‘アフロディーテ’がアジサイとコラボする景色(左)や、ライラック・ピンクの‘シスター・エリザベス’の2番花とアジサイがコラボする景色(右)が美しい6月下旬。。 その頃になると、再び花を咲かせるのはバラの二番花です。ひたすらゴージャスだった一番花に比べると少し控えめながら、ガーデンに彩りを添えています。バラからアジサイに主役が移り変わる5月下旬〜6月上旬と、バラの二番花が咲き始める6月中~下旬は、バラとアジサイが一緒に楽しめる贅沢なとき。多くの植物が生き生きと育つ横浜イングリッシュガーデンならではの景色に出会えます。 花の名にも注目したい個性あふれるアジサイの競演 ローズ・トンネルの下に植るアジサイの一つ、‘恋物語’は、白に赤の覆輪が美しい八重手鞠咲き。早咲きで、花付きがよく、育てやすい。完成度の高い品種。 花弁の縁をくっきりと紅に染めるのは‘恋物語’。 花の中に青い十字が浮かび上がる‘水凪鳥(ミズナギドリ)’、そして名前の通り! と言いたくなる花姿の‘ポップコーン’など、どのアジサイも美しく、花名も魅力的。歩を進めるたびに出会う個性あるアジサイの数々をじっくり楽しんでください。 左/花弁(萼片)の縁が丸くカールする‘ポップコーン’。右/花(萼)の中心に青い十字が浮かび上がる‘水凪鳥(みずなぎどり)’。 横浜イングリッシュガーデンに咲くアジサイたち。左上から時計回りに/モナリザ、泉鳥、ギャラクシー、てまりてまり、小町、星花火、レッド・エース、メルティ・ラブ。 夏のガーデンフラワーと咲き競う最高品質のアジサイ 全国各地のアジサイの名所とはひと味違う花景色が評判の横浜イングリッシュガーデン。その理由は、「庭園」という空間でアジサイが咲いているからです。アジサイだけが咲く名所も圧巻ですが、ここでは例えば、6月中旬からデイ・リリー(ヘメロカリス)、ユリ、アカンサスなど、さまざまな花とアジサイの奏でるカラーハーモニーを楽しむことができます。 庭園の権威ある世界大会で優秀庭園賞を受賞している横浜イングリッシュガーデンのガーデナーたちは、アジサイの栽培技術に長け、独自の技術で花を咲かせています。 そのため、ほかでは見られないようなビッグサイズのアジサイが、園内を進むごとに出現。その大きさとともに、圧倒的な花の数にも驚かされます。 映えスポットが出現! 期間限定のアジサイ・ディスプレイ 2024年のアジサイ・フェスティバルの様子。5月下旬は、バラが咲き残るローズトンネルの下で、一緒にアンプレラとアジサイの装飾が楽しめる貴重な光景に。 「アジサイ・フェスティバル」期間中は、毎年“映えフォトスポット”として人気の高いディスプレイがローズトンネルに出現。今年は、雨粒のようなサンキャッチャーが縁取るフラワー形のアンブレラが頭上を彩り、色とりどりのアジサイが園路を飾ります。雨にも色が冴えるアジサイの花風景を、ぜひ園内でご覧ください。 庭散策の後は、冷たい花モチーフのスイーツでクールダウン! 花々の美しさで癒やされたら、併設するカフェ「YEG Original CAFE」でクールダウンがおすすめ。アイスコーヒーやサンドイッチなどのカフェメニューのほか、特に人気なのが、見た目も可愛い「フラワーソフト」。バラとバニラのミックスソフトに、エディブルフラワーをカラフルにトッピングした、ここでしか味わえない美味しさです。また、アジサイ・フェスティバル期間中は、アジサイ色の爽やかな飲み物が登場! 青リンゴをベースにピーチとブルーハワイのゼリーをトッピングした見た目にも爽やかな「あじさいソーダ」は、リフレッシュできる飲み物です。パラソルの陰で花々の香りに包まれながら、ガーデン散策の余韻に浸るティータイムを過ごせます。 日が傾く夕方も庭散策におすすめの時間帯です。日陰のベンチに腰掛けて花々に囲まれる贅沢な時間をお過ごしください。左上に雲のようにふわふわの花穂をつけるのは、花木のスモークツリー。 本格的な夏に向けて、アジサイに混じってスモークツリーやヘメロカリス、ユリ、アカンサスが咲き継ぎ、訪れるたびに発見のある名園「横浜イングリッシュガーデン」。庭づくりの参考に、花知識を深めるために、また、大切な人と過ごす癒やしのデートスポットとして、ぜひお出かけください。
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栃木県
花の庭巡りならここ! 面で魅せる圧巻の花畑「那須フラワーワールド」
雄大な那須連山を背景にダイナミックな花畑が広がる 栃木県北部、那須岳の南側山麓に広がる那須高原は、温泉郷で知られるほか、牧場やキャンプ場、動物園などのレジャー施設、ゴルフ場やスキー場などのスポーツ施設なども充実し、日本有数のレジャースポットとなっています。「那須フラワーワールド」は、この那須高原に2007年にオープンした観光ガーデン。広さは約5ヘクタール、大人がゆっくり歩いて1時間ほど散策を楽しめます。 「那須フラワーワールド」は標高の高い高原地帯のため、夏は避暑地として利用されるエリアにあります。代表の和知 徹さんは、「夏に少しでも涼しく、また風を感じられるように、観光ガーデンとしてこの地を選んだ」といい、コンセプトは、「シンプルでありながら、力強く美しい庭」としました。広い敷地を生かして、季節ごとに花の種類を絞って群植し、カーペットのように魅せる演出です。雄大な那須連山を背景に広がる花畑は、圧巻のシーンを楽しめるとして、年間に6万5,000人以上の観光客が訪れます。 このダイナミックな花畑は、ストライプ状にシンプルにゾーニングした植栽で、季節によって異なるカラフルな景色が広がります。これは植栽や施肥などの管理のしやすさも考慮し、いつ訪れても手入れの行き届いた花のカーペットが楽しめるようにデザインされたものです。 「那須フラワーワールド」では開花リレーも見事で、庭の景色は少しずつ変化していきます。春はチューリップからスタートし、ネモフィラ→アイスランドポピー→ルピナス→ヘメロカリス→ケイトウ、サルビアへとバトンタッチ。いずれの季節も、昼と夜の温度差が大きい高原地ならではの冴えた花色に目を奪われます。一年を通してリピーターも多い「那須フラワーワールド」に、ぜひ訪れてみてください。 春はチューリップから始まり、ネモフィラ、アイスランドポピーにつながる 那須高原の青い空によく映えるネモフィラの見頃は、5月中旬〜6月中旬。1万5,000㎡に約15万株を植栽しています。園内への飲食の持ち込みは可能なので、この景色を見ながらお弁当やデザートをほおばるのもいいですね。 アイスランドポピーの見頃も同時期の5月中旬〜6月中旬。1万5,000㎡に黄、オレンジ、白のポピーを5万株植栽しています。背景には左から黒尾谷、南月山、茶臼岳、剣が峰、朝日岳の美しい稜線が。 初夏はルピナス、夏はユリそして夏から秋のケイトウへ ルピナスの見頃は5月中旬〜6月中旬。1万㎡に約3万株が植栽されています。長い花穂を立ち上げて、色とりどりのルピナスがダイナミックに咲く光景は必見です。園内ではリードをつけていれば、ペット同伴もOK。花見をしながらの散歩を楽しんではいかがでしょうか。 7月になると、ユリが見頃に。1万㎡に2万株のユリが植栽されています。避暑地ならではの涼やかにわたる風を感じながら、ストライプ状のユリの群植を堪能できます。 ケイトウの見頃は、9〜10月で、3万㎡に約25万株が植栽されています。発色の美しい赤やオレンジの花に整然と埋め尽くされる雄大な景色には、感動のため息がこぼれます。 飲食の持ち込みOK売店のある休憩所でひと休みはいかが 天井の高い休憩所からは、ガーデンの遠景を楽しめます。売店が隣接しており、飲み物やソフトクリーム、ピザなどを販売。飲食の持ち込みも可能です。散策を楽しんで歩き疲れたら、ここでゆっくり軽食やお茶を。 Information 那須フラワーワールド 所在地:栃木県那須郡那須町大字豊原丙5341-1TEL:0287-77-0400ホームページ:http://www.flower-world.netアクセス:公共交通機関/JR那須塩原西口から車で約60分、またはJR黒磯駅西口から車で約50分車/東北自動車道那須I.C.から県道17号線北進、広谷地交差点右折、県道68号線経由約40分、または那須高原S.A.から国道4号線、県道305号線経由約24分オープン期間:4月下旬〜10月下旬(降霜まで)休園日:無休営業時間:9:00〜17:00料金:大人 500〜1,000円(シーズンによって異なる)、中高生300円、小学生200円駐車場/300台、無料
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本格的な春到来! 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」の『ショーアップ審査』を迎えた5人…
年3回審査を行うガーデンコンテスト「東京パークガーデンアワード」 神代植物園の正門へ続くコンテストガーデンが、エントランスの景観と一体感をなす4月中旬。 5人のガーデナーが手掛ける日向と日陰の2つのガーデン。最終結果が決まるまでに4・7・11月の3回に渡って審査が行われますが、ガーデンの施工から約5カ月経過した今回、第1回目となる『ショーアップ審査』が行われました(春の見ごろを迎えたガーデンの観賞性を審査します)。審査期間:2024年4月11日~17日。 審査員は以下の6名。福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 教授)、正木覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師)、吉谷桂子(ガーデンデザイナー)、佐々木珠(東京都建設局公園緑地部長)、植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事)、松井映樹(神代植物公園園長) 事前に公表されているコンテスト審査基準 公園の景観と調和していること/公園利用者が美しいと感じられること/植物が会場の環境に適応していること/造園技術が高いこと/四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること/「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) /メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス)/デザイナー独自の提案ができていること/総合評価 ※各審査は別途定める規定に従い、審査委員による採点と協議により行われます。 今回の評価のポイントは主にガーデンの観賞性で、「植物の春の美しさがしっかりと表現されているか」。しかし、単に華やかであることだけが重要ではなく、「植物個々の特性・魅力がしっかり見せられているか」、「葉や花の組み合わせがデザイン的に美しいか」、そして「今回のテーマ=武蔵野の“くさはら”、が表現されているか」などの項目も含めて評価されています。※年によって気象条件が変わるため、開花の時期がずれていても評価に影響しません。※今回行われた審査結果の公表はありません。 4月の審査時期を迎えた5名のガーデンをご紹介 コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 【作品のテーマ・制作意図】 武蔵野のくさはらを表現するにあたり、オーナメンタルグラスとカラーリーフ、特徴的な葉を持つ植物をメインにしたガーデンをつくってみたいと思いました。「グラスガーデン」は馴染みが薄かったり、地味にとらえられたりすることもあるかと思いますが、宿根草に加え、球根植物も多用し華やかさをプラスすることで、多くの方に楽しんでいただけるガーデンを目指しています。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 カマッシア‘ライヒトリニー’ 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 スイセン‘タリア’、プルモナリア‘トレビファウンテン’、イカリソウ’スルフレウム’、アネモネ・シルベストリスなど コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら 【作品のテーマ・制作意図】 ガーデンの美しさは緑量や花の色目や形状だけで測れるものでなく、空や光や風や生きもの全ての関わり合い、生命の尊さを感じることでガーデンがより輝いて見えます。ガーデンに長く根付いて、地域に馴染む風景、生態系の一部になることを想定し、植えっ放しに耐えられる丈夫な品種を中心に、蜜源植物や、風や光の動きを反映しやすい植物を多く取り入れ、地味な在来種でも組合せや配置で奥行ある豊かな草はらの表現を目指します。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 カッコンセンノウ、シラー・ベルビアーナ カッコンセンノウ、シラー ベルビアーナ、カマッシア レイヒトリニー、スイセン ピピット 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 ミニチューリップ ホンキートンク、ムスカリ アルメニアカムブルー、オルレア ホワイトレース、ビオラ ラブラドリカ、ムラサキサキゴケ、イフェイオン ジェシー、イフェイオン ウィズレーブルー、イフェイオン ホワイトスター コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 【作品のテーマ・制作意図】 森では、様々な木々が壮絶な生存競争を繰り広げています。しかしそれは草原もまた同じ。草原は生命力に溢れる草花たちの戦いの場です。そしてやがて、草原の中から樹木が芽生え、最終的には森へと遷移していきます。私は、草原から森へと還るこのはじまりの瞬間を、美しくもドラマティックに演出したいと思いました。ここは、森が好きなガーデンデザイナーが解釈し表現したペレニアルガーデンです。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 ゲラニウム'サンギネウム・ストラータム'、サポナリア・オキモイデス(ロックソープワート)、シレネ・ユニフローラ‘シェルピンク’、アリウム・ニグラム、アリウム‘カメレオン’、オルラヤ、ベロニカ‘ウォーターペリーブルー’、クランベ・マリティマ、リクニス・フロスククリ(カッコウセンノウ)など 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 イカリソウ、ゲラニウム‘タイニーモンスター’、フリチラリア・ペルシカ、アジュガ‘チョコレートチップ’ コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ 【作品のテーマ・制作意図】 人々の心に残る武蔵野の情景を骨格に、新たな要素を組み足して、これからの愛される武蔵野の風景を植物の魅力や武蔵野の風景を「伝え」「感じる」ことを軸に提案しました。武蔵野の草原を連想させるグラスをベースに、季節の流れの中で、さまざまな色や形の草花がガーデンを彩っていくような配置を心がけました。自然との距離が遠くなった現代で、このガーデンが少しでも自然と人とが寄り添うきっかけになればと思っています。 【日向のエリア】 開花期を迎えていた植物 チューリップ‘クイーンオブナイト’、チューリップ‘コンチネンタル’、チューリップ‘ドールズメヌエット’、チューリップ‘ホワイトバレー’、チューリップ‘スワラ’、ラナンキュラス ラックスシリーズ 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 チューリップ‘クイーンオブナイト’、チューリップ‘コンチネンタル’、チューリップ‘ドールズメヌエット’、チューリップ‘ホワイトバレー’、チューリップ‘スワラ’、チューリップ‘ヒルデ’、ラナンキュラス ラックスシリーズ、ムスカリ、アジュガ コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 【作品のテーマ・制作意図】 世界的に”Climate Change(気候変動)”が叫ばれ、日本でも夏の猛暑、雨不足による水ストレスが植物を苦しめました。農業技術である完熟した堆肥をはじめ有機資材を使い、微生物に富み団粒構造を持つ土壌を作ることからはじめ、これまで武蔵野の草原風景を担ってきた在来植物を中心にガーデンを構成します。都市の暮らしの中でこぼれ落ちてきた技術、植物でこれからの武蔵野の風景を模索していきます。 【日向エリア】 開花期を迎えていた植物 ― 【日陰エリア】 開花期を迎えていた植物 スイセン‘トレサンブル’、シラー・シベリカ、スノーフレーク 次回の審査は7月、梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査する『サステナブル審査』です。庭作りスタートから月々見頃の植物と5名のガーデンを紹介する記事もご覧ください。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。
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「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園」ガーデナー5名の2月の“庭づくり”をレポート!
「第2回 東京パークガーデンアワード」【2月末】第2回作庭 コンテストガーデンの入り口付近には案内板が設置されています。 12月上旬に第1回目の作庭がされたあと、コンテストガーデンのある東京では一度雪が数センチ積もる日があったものの、2月にはこの時期には珍しく25℃に達する暖かな日もありました。年を越し、本格的な春がやってくる前に行われた2月下旬2度目の作庭の様子をご紹介します。 コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 ◆今回の作業①除草 抜いた雑草類は花壇後方に設置したバイオネストに。比較的コンパクトなサイズで、鳥の巣のような形が愛らしい。 ②上部残った枯れた部分を切除 主にグラス類の地上部をカット。これもバイオネストにイン。 ③一部球根類の植え込み 1月に届き、家で保管していたユリの球根を植え込み。「芽が伸びてしまっていて、植え付けが遅すぎではないか心配」と古橋さん。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) マルチング材の杉皮バーク堆肥(ガーデンモス)をたっぷり使い表土が覆われていることで、ガーデン全体が明るくやわらかい印象です。リナリア・プルプレアがこんもりと葉を茂らせ、小球根のピンク色のクロッカス‘ホワイトウェルパープル’やスイセン‘ベビームーン’が彩りを添えるなど、一足早い春を迎えています。 ◆日陰(南側) 日向と同じグランドデザインですが、日陰の花壇の方がレベルの起伏がはっきりと浮かび上がっています。ベースの構造が確認できるのは冬の間だからこそ。まだ寒々しさが残っていますが、明るい黄緑葉のカレックス‘エバリロ’や銅葉のティアレラなどのリーフ類が色彩を添えつつ、シラー・ミスクトスケンコアナや、楚々としたバイモユリの花が愛らしさを放っています。 ◆こだわりのプランツタグ プランツタグといえば、イギリスなど海外の植物園で見かける「黒地に白文字」のイメージがあり、日本語による表記とともに学名も記載しています。神代で開催なので植物園らしさを出しつつ、外国の方にも楽しんでいただけるように設置しました。 コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら ◆今回の作業①不要な分の雑草取り 宿根草の根元で邪魔になる雑草のみを除去。現時点で愛らしいものや彩りが寂しい場所は残し、草原っぽさを演出している。 ②宿根草苗を追加植栽 アガパンサスやホトトギス、カレックスなど寒さに弱い植物を植栽。 ③カットバック グラス類の切り戻しやノリウツギの花がら取り。刈ったグラスの葉は細かく切ってマルチングとして活用。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) グラス類の枯れ葉の合間で、黄花のスイセン ‘イエローセイルボート’と白い房咲きのスイセン‘ペーパーホワイト’が明るい顔をのぞかせて、早春らしい風景が広がっています。また、宿根アイリスやスイセン類、カレックスの葉が描くアールのフォルムで、春の訪れに浮足立つようなリズミカルさが生まれて、素朴でナチュラルな雰囲気が漂っています。 ◆日陰(南側) 常緑のヤブランやツワブキが瑞々しく育ち、日向のガーデンとは全く異なるシーンが広がっています。中央を横断する作業用の通路には剪定枝やカットした枯れ葉が敷かれ、思わず歩きたくなる小道があるような風景に。青々とした風景の中でカレックス‘エヴァリロ’ (左)が、効果的な明るいアクセントになっています。通常鉢植えで楽しまれるオモトも今回植え付けられましたが、今後どのような効果をもたらすのか楽しみ。 ◆こだわりのプランツタグ 自然な草はらの空気感を壊さないように目立たない細長いプレートを選びました。鉄製で重みがあって何度も使用できます。裏には、学名も記載してあります。 コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 ◆今回の作業①雑草取り/溝に資材を投入 抜いた雑草は、小川のように蛇行して設けられた溝に入れる。溝内の腐植にタイムラグをつくるために枯れ枝・炭を溝に足す。 ②苗の追加/微調整 1回目に植えた植物の育ち具合を見ながら、位置を微調整する。 ③カットバック グラス類をメインに枯れた葉を切り戻し。カットした葉は溝に入れる。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) 起伏が大きく、溝となる部分には太い木片が投入され、ワイルドな雰囲気が漂っています。それに対し、溝の傾斜部分に春を告げるクロッカス‘ホワイトウェルパープル’が群れ咲いて、小球根の愛らしさが際立っています。花壇の手前側に植えたチューリップの原種‘アルバコエルレアオクラータ’が。あまり目立つ花ではありませんが、花が少ないこの持期に花を発見する楽しみを提供してくれています。 ◆日陰(南側) 低木はまだ葉を出していませんが、株元では常緑の植物たちが瑞々しく葉を展開。まだ深みのある緑葉が多い中で、ワイルドチャービル(下左)のライムグリーンの葉がひと際明るく存在感を発揮しています。可憐な花を下げるクリスマスローズ(下右)とともに、道行く人の目を引き、ところどころに差す光が林床を思わせています。 ◆こだわりのプランツタグ シンプルで見やすくて主張しすぎない、そして朽ちにくい素材のものとして、黒い金属板のタイプを採用。 コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ ◆今回の作業①雑草取り 除草したものは後方に設置したコンポストの片方に入れる。ある程度積み上がったら、開いている側に切り返し(かき混ぜて空気を取り込む作業)を行い、腐食を促す予定。 ②植物苗追加植栽 年内に入手できなかった植物を追加で植栽(ラナンキュラス・ラックスシリーズ、ユーパトリウム‘ベイビージョー’、ニホンムラサキなど)。福岡のちびっ子も上京して参加(下)。 ③切り戻し(グラス、低木など) アナベルなどの低木類は、生産者のレクチャーの元、花が咲く時期の樹高や花のつき方をイメージして切り戻しの高さを調整しながら剪定。グラス類の中でも、スティパとカレックスは、切り戻さず透かし剪定を行い、ボリュームを調整。剪定くずは雑草同様にコンポストに入れる。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) 細い溝で分けられたいくつかのゾーンに植え込みには、今か今かと待ちわびているさまざまな宿根草が確認できます。ガーデンの手前では、よく道端で見かけるオオイヌノフグリをイメージして、丈が低く華奢なベロニカ‘オックスフォードブルー’を植栽。のどかな風景を連想させています。チューリップがあちこちで芽を出しており、春本番にはぐっとにぎやかになることでしょう。 ◆日陰(南側) まだ枯れ木状態の落葉低木を背景に、一足早く宿根草や球根類が芽を出して成長を始めていいます。その陰陽の対比が、これからの競演を期待させています。また、大きく葉を広げるツワブキやリョウメンシダが、日向のガーデンとはひと味もふた味も異なるダイナミックな野趣を演出しています。 ◆こだわりのプランツタグ 間伐材を加工して作成し、日向・日陰、それぞれの雰囲気に合うように2タイプ用意。日向には木の無垢地に黒文字で、日陰には黒く塗った地に白文字で植物名を表記しています。又どちらもハンギングタイプで高さを出し、植物名が調べられるようQRコードをつけています。 コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 ◆今回の作業①雑草取り/カットバック ススキやフジバカマなど地上に枯れた姿を残していた植物を切り戻し、春の芽吹きを促す。冬季には地上から姿を消す宿根草が大部分を占めており、それぞれの芽吹きを観察できるよう今回は雑草を抜く。 ②苗の補植 12月になかなか思い通りの株が手に入らなかった、クサソテツやフウチソウを植え付け。 ③バイオネスト設置 神代植物公園内で発生した剪定枝を材料にして、日向・日陰それぞれ異なる樹種の枝でガーデン後方に設置。枝のしなり方が違うので、作り方や仕上がりの見え方もやや異なっています。バイオネストの底には、植物ごみの減容、減量を促す自作の基材(モミガラ、落ち葉、コメヌカを発酵管理したもの)を敷き込んでおく。 ④マルチング 昨年末に、完熟バーク堆肥を3cmほどかぶせていましたたが、細かすぎて風で飛んでしまうこと、今後保湿効果が薄いことを懸念して、重みのある腐葉土を追加で2cmほど、全体にかぶせました。 ◆2月下旬のガーデンの様子 ■日向(北側) 選んだ野草類は成長速度が穏やかなものが多く、まだガーデンに大きな動きは見られないですが、土中の見えないところでは、確実に小さな芽は成長しています。部分的に成長が早い植物もあるので、それを見つける楽しい時間です。ガーデンの手前側では、ノアザミ(寺岡アザミ)と原種のチューリップ・トルケスタニカがほかより一足先に成長を進めていました。 ◆日陰(南側) 日陰側も主だった成長はまだまだのようですが、ガーデンの中央高台ではディアネラ‘ブルーストリーム’がオーナメンタルな存在感を放ち、背後ではタマシダがつややかな葉を広げています。また、多くの野草が眠るなか小さなフクジュソウが見頃を迎え、春の到来を告げていました。 ◆こだわりのプランツタグ 木材に植物名と学名をレーザー加工で記したオリジナルのプランツタグです。地域内での資源巡回を目指し、使用した木材は近所のオーダーメイド材木屋『ティンバークルー』で長く使っていなかったサクラ材を用いて製作しました。表記はシンプルに和名と学名のみにして、データを作成し、レーザープリンターで印刷しました。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 東京都・神代植物公園を舞台に行われている「第2回 東京パークガーデンアワード」。5人のガーデンデザイナーが日向と日陰のガーデンづくりにチャレンジし、趣の異なる10のガーデンを観賞することができます。いつでも自由に見学可能。日々表情を変えていくプロによる植栽を見に、ぜひ訪れてください。 都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。
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吉谷桂子さんのガーデン「the cloud」から学ぶサステナブルな庭づくり⑤ ~ガーデンデザインの指標~
吉谷さんのデザインの原点とは? 代々木公園に向かってユニークに広がる雲形の花壇。‘クラウド(雲)’は、吉谷さんが公園の上に広がる空から発想を得たものだが、この配置は、環境条件やメンテナンスのしやすさを踏まえながら、美しい修景デザインとして成り立たせている。 「私がデザインにこだわるのは、父がバウハウス(*注)の影響を色濃く受けた近代デザインの建築家であったことが大きかったと思います。両親の仲人をつとめてくださったのは、日本大学芸術学部長だった山脇巖教授ですが、彼はドイツのバウハウスに留学し、ミース・ファン・デル・ローエ氏、ワシリー・カンディンスキー氏らに学んだ日本人で唯一の卒業生。バウハウスの造形理論を教育に導入し、日本のデザイン教育の方向に重要な役割を果たした方です。父が教授に影響を受けたことから、今思うと、食卓で交わされるデザインの良し悪しについての会話も、基本となるものはバウハウス的なスタイルで、我が家の家風になっていたように思います」 創設者で建築家のヴァルター・グロピウスによって設計されたバウハウスの校舎。シンプルで直線的な建築と丸みを帯びた「BAUHAUS」のロゴが、その理念を象徴している。Claudio Divizia/Shutterstock.com *注「バウハウス」とは第一次世界大戦後の1919年、ドイツ・ワイマールに設立され、「デザインは、シンプルで合理的・機能的であること」という理念のもと、建築・美術・工芸・写真など、デザインの総合的な教育を行った機関のこと。ナチス侵攻による経済情勢、政治的混乱で、1933年に閉鎖を余儀なくされる。短い期間だったにもかかわらず、バウハウスの美学は現在も色あせることなく、建築家やデザイナーをはじめ、芸術家に大きな影響を与え続けている。 左/実家の台所(1950年代)。右/父が設計した庭の図面(1946年)。 「そんな経緯もあって、子どもの頃からバウハウス関連の本のほか近代デザインに関する資料に囲まれて育ち、高校・大学の美術教育もバウハウスの教義が基本になっていたように思います。ヴァルター・グロピウス(ドイツの建築家でバウハウスの創設者)やヨハネス・イッテン(スイスの芸術家、理論家、教育者)、モホリ・ナギ(ハンガリー出身の画家、写真家、造形作家、デザイン教育者)らが書いた造形教育の基礎本は、50年以上経った今も時々読み返すと、さらに理解を深めることができたりするのに驚きます」 「ティーンエイジャーの頃から学んでいた20世紀のデザイン概論。今見ても役立っています」と吉谷さん。 左/吉谷さんが幼少期に愛用していた三輪車は、お父様からもらった飾りのないミニマルなT型デザインだった。これ以上も、これ以下もないデザインを愛するベースとなっていた。 右/吉谷さんがプロダクトデザイナーとして活動していた頃にデザインした‘無印良品’の三輪車。子ども用でも「シンプルでいながら美しく機能的である」ことを貫いている。 「今の私の作風は多要素なので、意外に思われるかもしれませんが、80年代の初めヨーロッパに3カ月間の美術修行に行くまでは、『Less is more(レス イズ モア)』が若い頃の私のキーワードでした。父のもっとも尊敬する20世紀に活躍したドイツ出身の建築家、ミース・ファン・デル・ローエが残した言葉で、『少ないほうが豊かである』ということを意味しています。建築家としての信念『シンプルなデザインを追求することにより、より美しく豊かな空間が生まれる』が表れています。おそらく、ティーンエイジャーの頃から耳にこびりついているのでしょう」 バウハウスのデザインによるポスターやファニチャー。色が限定されているのが分かる。Martine314/shutterstock.com 「近年、バウハウスの考えるデザイン“余計な装飾を排除した、シンプルで機能的な美しさ”や、モダンデザインベースの美術からインスピレーションをもらうことがさらに増えています。若い時になんとなく分かっていたことが、今になってしっくりときたり…」 ガーデニングへの生かし方 「バウハウスにおける造形教育の基礎理論のひとつである『‘点・線・面’をいかに美しくコンポジションするか』は、建築や絵画に限らず、ガーデンデザインのビジュアル表現にもいえること。この理論は私の中にずっとあったのですが、ガーデンの構造だけでなく、植物の配置、植栽デザインにもいえることだと思います」 ※コンポジションは、もちろん、‘点・線・面’だけではありませんが、平面構成の基礎として、簡潔で分かりやすいので、例にしています。 さまざまな‘点・線・面’のフォルムで構成されている植栽はドラマチックで、見る人を飽きさせない。 「20年近く前、オランダのガーデンデザイナーであるピート・アウドルフ氏の本が出版され、彼も同じような考えでガーデンを構成しているのだと思ったとき、おかしな言い方ですが『それなら知ってる!』と、非常に感銘というか同調したのを覚えています。大いに影響を受けた、彼の植物の組み合わせの基本パターンは、私なりの解釈で今も応用しています」 カラフルで美しいピート・アウドルフ氏の図面。ピート・アウドルフ氏のアトリエ訪問にて。 「20世紀のイングリッシュガーデンでは、イギリスの園芸家、ガートルード・ジーキル氏の影響も大きく、特にカラースキームが注目されていました。ジーキル氏の場合は、造形よりも色彩や光を重んじて植栽を絵画的に表現するため、それまで以上に印象派の絵画的な色づかいを庭づくりに取り入れています。ジーキル氏の仕事は、彼女が尊敬したターナーの絵画もそうですが、『造形よりも色彩や光の表現の美しさ』を重視しています。 私はガーデニングをやり始めた当初、それに大きく影響を受けましたが、正解は1つではありません。デザインをする際に、何を重要視するかによって、生まれる作品は異なってくると思いますが、完成度の高い絵画的な感性や、それを理解しようとする美意識が必要だということです」 イギリスの自宅で庭づくりをしていた1993年頃。植物の形について考えていなかった。 「実は30年ほど前、イギリスで自宅の庭を作っていた頃の私は、衝動買いした植物を先着順に庭に植えたりして、たくさんの失敗をしてきました。日当たりや水はけ、地面の乾湿問題は重要ですが、それだけを優先した植物の配置や、ただ、手に入った植物を先着順に植えても庭は絵になりませんね」 ガートルード・ジーキル氏が手がけ復元された庭の1つ、「ヘスタークーム(Hester Combe Gardens)」(イギリス、サマセット州)。 Tom Meaker/Shutterstock.com 「21世紀の宿根草ガーデンでは、“植物への視点の多様化”が加わったように思います。以前は季節限りの花の色・形自体を愛でていましたが、現在は植物のあらゆる表情や質感も注目するようになりました。例えば、花後のシードヘッド。その造形美や力強さはとても魅力的です。芽出しから枯れるまで季節ごとに異なる植物の魅力が発見できれば、植物の奥深さに触れることもできるはず。常にピークの状態を維持する必要はないので、持続可能ともいえるでしょう。 デザイナーはエコロジストでもあるべき今の時代、花の満開の時だけでなく、植物のあらゆる魅力をガーデナー各自の視点で発見し、それを個性として多様に表現できればいいと思います」 吉谷さんがデザイン時に意識する、植物のフォルム 植物のハーモニーを考えるとき、それぞれが持っている造形と、組み合わせの基本が分かっていないと、似て非なる植物がぶつかりあって景色がゴチャゴチャしたり、散漫に見えてしまいます。それぞれの植物が持つ美しさで互いを引き立て合うために、下記のことを知っておきましょう。必ずしもすべての植物が当てはまるわけではありませんが、ある程度の座標にしてみると分かりやすいでしょう。 植物のフォルムのハーモニーを楽しむためのフォルムパターン ❶ ボウル:球形もっともシンボリックな花の形、その大きさでアクセントになり、花の最盛期は庭の眺めの核になる。 ❷ アンブレラ:傘形花の形としては、もっとも彫刻的な造形。眺めに変化を与える。 ❸ スパイク:尖塔形ボウル型の花に対し、もっとも対照的な引き立て役。庭の景色をシュッとした感じに引き締める。直立し、庭が片付いて見える効果をもたらす。 ❹ ドット:点小さな点の集合は多くの場合脇役となる。大きなボウル型やアンブレラ型の花がアクセントプランツとすれば、ドット型の花はフィリング・間を埋める役目に。切り花でも凡庸だがカスミソウがバラの脇役に使われるようなイメージ。 ❺ デイジー:菊形(花びらが独立して見える)大きなボウル型に準ずるが、大型のエキナセアの花のような存在感を持つ。ガーデンのアクセントプランツになるので、眺めの前方に植える場合が多い。 ❻ プリュム:羽根のようなフワフワした形ドット型とも役割が似て、フィリングプランツになる場合が多い。例えば、フィリペンデュラ・ベヌスタのように背が高くふわふわしているものは、写真でボケの効果があるので後方に植える場合が多い。 この6つだけではありませんが、代表的な形で分けています。これらをバランスよく組み合わせて配置していくことは、『‘点・線・面’のコンポジション』の考え方と同じこと。ボリューム・大きさなど効果的な配分で美しく構成していきます。 計画・イメージ(上)と実際(下)のアートフォルム。実際にまったくその通りにならなくても、設計段階でフォルムのコンポジションを考えて植栽設計をするとよい。 オーナメンタルグラスは、育ち方のフォルム全体のデザインをベースにする(地中の根も同じように広がる想定を)。※バウハウス的平面構成を意識して吉谷さんが描いたオリジナルのイメージ図です。 フォルムの違いを生かした植栽シーンバリエ 背景にスパイク型の高く伸びるカラマグロスティス‘カールフォースター’❸、手前にアンブレラ型のオミナエシ❷を配した、華はないものの野趣あふれるワンシーン。 幻想的に広がるプリュム型のヒヨドリバナ❻とやや形の崩れたアンブレラ型のオミナエシ❷の中に、ルドベキア・マキシマのデイジー型の黒いシードヘッド❺が、ピリリとしたアクセントになっている。 ボウル型のアリウム‘パープルレイン’❶がこの時季の主役。その周りのセントランサス・コキネウス・アルバが、点々と繰り返すドット型❹から、やがて花が咲いてタネができるとふわふわとしたプリュム型❻となり、主役の引き立て役に。 ボリュームたっぷりのヒオウギ❹のドットが、エアリーなプリュム型のディスカンプシア‘ゴールドタウ’❻を手前でどっしり支えつつ、線形の葉が植栽をシャープに引き締めている。 花が咲く位置より下方の枝葉に個性のないエキナセア❺を補うように、手前には、がっちりしたフォルムのハイロテレフィウム(オランダセダム)❹を配置。その背後に奥の景色を透かすようにエアリーなディスカンプシア❻が茂っています。手前にがっつりアクセントを据え、途中に丸い花の彩り、背後にシードヘッドが美しいグラスが風にそよぐという典型的な三段構えの組み合わせ例。 日本のガーデニングは次の時代へ 5回にわたる連載でご紹介してきたモデルガーデン「the cloud」(2023年7月中旬)。 バウハウスの「造形で造るシンプルな美しさ」を幼いころから肌で感じ、10代で理論を学んだ吉谷さん。世界に共通するデザイン理念を日本のガーデニングに取り入れて実践する第一人者といえるでしょう。デザインにおける指標を先人から受け継ぎ、自身のエッセンスを加えながら新たな世代に指標をつなぐという次のステップへ。 第2回でご紹介したメンテナンスフレンドリーのためのガーデンデザイン法と併せて、ぜひ皆さんも実践してみてください。チャレンジすることから、吉谷さんが行うガーデンデザインの意図を知る一歩になるのではないでしょうか。 今年春から「浜名湖花博2024」が開催される「はままつフラワーパーク」では、“足元から頭上まですっぽりと自然の美に包まれる新感覚・没入体験型”の吉谷さんデザインによるガーデンが披露されます。また、4月6日(土)&7日(日)には、吉谷桂子さんのトーク&ガーデン巡りや、SDG’sな寄せ植え教室も開催されます(ご案内サイトはこちら。お申し込み開始は3月15日から定員になり次第終了)。ぜひ、最新のガーデンを見にお出かけください。 詳しくは、「浜名湖花博2024」ホームページをご覧ください。
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吉谷桂子さんのガーデン「the cloud」から学ぶ“ナチュラリスティックな庭づくり”④ ~ガーデン環境整備につ…
ガーデンづくりは、環境にも自分にも優しいメンテナンスフレンドリーで 園路が入り組んでいる雲形の花壇は、お手入れしやすいことに配慮されたデザイン。 気象変動と自身の体力と向き合いながらガーデンをつくるには、下記の3つを意識して自然といかに仲よくしながら楽しめるかがカギ。 1. メンテンスが楽・容易 2. 生物多様性/脱化成肥料・無農薬 3. 耐久性・永続性・丈夫で長もち・長生の宿根草に注目 西日に輝くミューレンベルギア・カピラリスが存在感を放つガーデン/11月 実際に「the cloud」で行われた最小限のメンテナンス 植え付け後の様子を確認する吉谷さん/12月 植物の生命力を信じて、ここぞというタイミングで最小限で行いました。「目指す所は、彼らのコロニーを作り、植えっぱなしで手を加えずに育っていく環境を作っていくこと。『トライ&エラー』。今までにない気候変動によって起こる予測不能な問題にも、都度あきらめず、自然に寄り添う気持ちでいきましょう」と吉谷さん。 ① 灌水 特に雨が少なく乾燥しやすい冬~春はしっかり行います。植え付け1年目の宿根草は、未成年者のような存在。保護者として、最初のうちは植物から目を離さないことが必要。のちのち、放ったらかしにできるのを目標にしています。 初年度ということもあり、雨量を測るカップを設置。今後の目安データとして役立てる。 丘の頂上には水やりチェッカー「サスティー」を挿して水分量を目視。 ② 剪定・切り戻し(カットバック) 近年は春の急激な気温の上昇で植物の成長が早く、5月を過ぎるとあっという間に株が茂りすぎてしまいます。そのままでは夏に蒸れてしまいそうな植物は、思い切って夏前に伸びた株の枝葉を切り戻す、オーバー・グロウ・カットバックを行います。イギリスでは5月下旬にチェルシー・フラワーショウが始まりますが、そのタイミングで切り戻す作業のことを“チェルシー・カットバック”と呼んでいました。関東地方以西の温暖な地域では、ヨーロッパより気温が高いので、品種にもよりますが、ゴールデンウィーク後にカットバックしてもよいでしょう。 また、前年から冬越しした宿根草の立ち枯れた枝やシードヘッドは、2月中旬までに切り戻します。この作業を、“アーリースプリング・カットバック”といいます。また、3月から出てくる新芽が成長して、生命の再スタートです。 オーバー・グロウ・カットバックが必要だった植物:バーベナ・ボナリエンシス、エキナセア、モナルダ、デスカンプシア‘ゴールドタウ’ アスチルベは1度しか花が咲かないので、花穂は切り取らず、そのまま秋までシードヘッドを楽しむ。 ③ 施肥 基本的に施肥は行いません。その代わり、冬に完熟堆肥で花壇全体を覆うことで、微生物の働きを促します。堆肥は肥料分となりながら表土の温度や湿度をコントロールしてくれるほか、乾燥から防ぐ役割も担ってくれます。 しかし、生育が旺盛なアガパンサスのように、花を咲かせるのにエネルギーと肥料が必要なものには、春先に固形の有機堆肥を施しています(アガパンサスのみ)。 植え付け直後、12月のアガパンサスの様子。黒い完熟堆肥と緑の葉とのコントラストが美しい。 ④ 病害虫対策 化学的な薬品は使用しません。 害虫/どうしてもイモムシ・毛虫はついてしまうもの。吉谷さんはこれも生物多様性だとして許容。「蝶もいれば益虫・害虫もいます。被害の可能性の高いコガネムシなどは捕殺しますが、アゲハの幼虫などは見守り、テントウムシやカマキリの安住の地となるような場所を目指しています」と吉谷さん。 病気/まず病気が出ないように環境を整えることが大切。なんといっても風通しが大切なので、蒸れる恐れがある梅雨や夏前に株間を透かすなどの剪定を行う。 【蜜源植物 ベスト3】 花の蜜で虫たちを呼ぶ蜜源植物を集めました。セリ科の植物はアゲハの幼虫の被害にあいやすいのですが、この眺めを楽しむ気持ちで見守っていました。 左/アンジェリカ‘ビカースミード’(セリ科) 中/ミソハギ(ミソハギ科) 右/バーベナ・ボナリエンシス(クマツヅラ科) エキナセアのシードヘッドの先で休む赤トンボ。「トンボは食害しないうえ、ヤブ蚊を食べてくれているんだと思うと、ちょっと嬉しいかな」と吉谷さん。 ⑤ 雑草対策 花後に早々と地上部が枯れるイフェイオンは、丈夫な上に愛らしい花を咲かせる優秀なグラウンドカバー。ニゲラもこぼれ種で増えているが、増えすぎないのが◎。オルラヤは侵略的すぎるので、避けているのだとか。 実生の雑草は放ったらかしにすると抜けにくくなりますが、双葉が出た頃なら割りばしなどでかき出せば簡単に抜けます。それまでが勝負。宿根草が小さい初年度は、雑草に負けないようにこまめにチェックします。 初年度。11月に植え付けたニゲラが、その他の宿根草などの間を埋めていたが、これでも株間が狭く、翌春は大きくなって間引きが大変だった。 除草になるべく手間をかけないための予防策としては、雑草が生える余地がないように、宿根草の間にニゲラや5,000球のイフェイオンを植えてカバーしています。マルチングしている堆肥は雑草予防にもなっています。 メンテナンスフレンドリーにするにはまずは土壌環境を整えること! 植物が気候変動のストレスを受けにくく、エコフレンドリーで美しく健やかなガーデンに育てるためには、日当たりや風通しなどの『生育環境』を整えることは大前提ですが、それと同様に重要なのは『土壌の状態を整えること』。「育て方が最重要と思われがちですが、考えるべきは『土壌環境、庭の構造(高低差や水はけ・日当たり)、植物選び、その植え方、育て方』の順番です」と吉谷さん。 しかし、最初から思いどおりにはならないので、気分はいつでも『トライ&エラー』。今までにない気候変動により起こる問題に、都度あきらめずに立ち向かうことが必要。 完熟堆肥のふかふかな布団がかけられた花壇。葉の瑞々しいグリーンとのコントラストも楽しめる。 【土壌の状態を整える】 「the cloud」では、水はけなどを改良しつつ、「いかに微生物を育てて土壌環境を豊かにするか」を意識して花壇が作られています。 ◆植え込み前30cmの深さまで掘り起こし、ワラ、炭、剪定枝ほか有機物を基本の土全体に混ぜ込んで酸素の豊富な構造に。 深さ約30cmほど耕し、ワラや剪定枝、炭などを投入。 花壇内に20~30cm間隔で直径約10cm、深さ30cmほどの穴をあけて直径6cmの有孔管を挿し込み、筒の中にはくん炭を入れて、通気・浸透・排水を確保。ゲリラ豪雨や長雨に備える(環境デザイナー・正木覚さんのアドバイスによる)。 棒が立ってるのは空気孔をあけた場所(棒は後で抜いています)、植え升の裏側(日陰側)でジメジメしやすく、正面から見ても、目立たないところに有穴パイプを埋めてあります。土中に酸素が届き、嫌気が溜まらないように。 ベッドに高低差をつけ水捌けや風通しは、植物の乾湿の好みに合わせて植栽デザインをした。 ◆植え込み後完熟堆肥を全体に厚み3cmほどかけてマルチングをする。 ◆様子を見て適宜完熟堆肥を株間にマルチング(11月頃)。こうすることで土壌の乾燥を防ぎながら、土中の団粒構造を保ち、保水性・排水性・保肥性が高まります。また、微生物の多様性が豊かになることで、病気の発生を予防することにもつながります。 「土中の微生物の多様性が保たれている = 病気の発生しにくい健全な土壌」 8月下旬の「the cloud」。酷暑を元気に乗り切った植物たち。 日本の園芸界も次なるステージへ 審査員をしながら「the cloud」を手掛け、自身も思わぬ問題に直面しながらも新たなガーデンの在り方を示してくれた吉谷さん。エコロジカルな植栽システムの構築を目指しつつ、日本の園芸界を次なるステージに牽引する、ガーデンエコロジストでもあります。 「厳しい気候変動の影響もあり、2023年の夏は、その前年に予想していたよりもさらに厳しく、これまでの観測史上最も暑い夏と言われました。地球沸騰の時代が到来。地獄の門を開けたと言う科学者もいます。そんな深刻化する気候下で、ガーデニングは私たちが、自然との共存について考える大切な機会となるはずです。 諦めるのではなく、発見とアイデアで乗り越えていく道は多様性に富んでいるはずです。庭をデザインするうえでは、まず構造デザインが先ですが、次に大切なのが植物選び。今後はそうしたことを共に体験しながら、共に学ぶ「メンテナンスフレンド=メンテナンスフレンドリーに、ガーデン管理に誇りをもって携わる若いガーデナーや、植物に関わることを生きがいに感じられる人を増やしていきたい」と、人材育成プログラムにも意欲を燃やしています。 次回は、ガーデンデザイナーとして吉谷桂子さんが庭づくりをする際に指標としていることをお伝えする最終回です。
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「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物公園 」ガーデナー5名の“庭づくり”をレポート!
彩り豊かな庭をつくるためにガーデナーが踏まえておく条件とは 2023年、画期的な試みとして大注目を浴びた「第1回 東京パークガーデンアワード」。2回目となる今回は、神代植物公園のプロムナード両脇の植栽エリアを活用して、コンテストガーデンが設けられました。以前ここはツツジや笹が列植する緑一色だったという場所だけに、花でどんな彩りがプラスされるのか期待が高まります。 北側に並ぶ日向の花壇(写真左)と、南側に並ぶ日陰の花壇。どちらの背後にもシラカシが列植されている。 コンテストガーデン区画(花壇)は、事務局にて既存地盤の上に盛土(厚さ40cm)を行い、土留め用の木材で囲った状態で引き渡しされました。基礎土壌は(上層20㎝が多孔質人工軽量土壌/下層10cmが黒土)が用いられていますが、ガーデナーは自身が表現したい植栽が健全に育つために、ガーデン制作時に土壌改良・施肥などをすることは可能です。 【ガーデン制作にあたり、デザイナーが踏まえておくこと】 ◼️ガーデンのテーマは「武蔵野の“くさはら”」とし、多年生植物をメインとしたガーデンを制作すること。◼️国内市場で流通している植物のみ使用可能(採取した植物は使用できません)。◼️主たる植物は多年生植物を使用。容易に制御が可能な、草本類に近い木本類は使用可能(全ての植物は高さ2m以内に限る)。◼️構造物やガーデンオーナメント等の設置は不可。植物のみで構成すること。 「第2回 東京パークガーデンアワード」【12月】第1回作庭 各ガーデナーの植え込みの様子をチェック。ガーデナーの経験値が頼りになる5者5様の土壌づくりにも注目を! コンテストガーデンAGrasses and Leaves, sometimes Flowers ~草と葉のガーデン〜 古橋 麻美さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:完熟堆肥(ガーデンプレミアムコンポ)、バーク堆肥排水確保:燻炭(ピノス)マルチング:杉皮バーク堆肥(ガーデンモス)元肥:有機肥料バットグアノ ◆土壌を整える◆ 土壌中の有機物を増やし微生物を活性化するために、バーク堆肥と完熟堆肥(ガーデンプレミアムコンポ)の2種類を混ぜながら耕す。 日向・日陰それぞれの花壇に水抜き穴を15カ所あけ、燻炭を入れる。 デザインに基づいて、溝や起伏を作る。 ◆植え付け◆ 苗を配置確認してから植える。 カマッシアやダッチアイリス、シラー、クロッカス、スイセンなどの球根を植え、グラス類以外の宿根草を植える場所に、有機元肥としてバットグアノを軽く混ぜ込む。 ◆マルチング&その他仕上げ◆ 左/杉皮バーク堆肥で全体にマルチングをする。右/植えつけた場所にそれぞれの植物名を書いたネームプレートを挿す。 【植え付け完了】 ■日向(北側) ■日陰(南側) 【メンテナンス時の発生材について】 左/日向・日陰とも花壇の後方に剪定枝で形作ったバイオネストを設置。右/雑草や切り戻した植物は、溝部分にも混ぜ込んでいく予定。 切戻しなどで出た病気にかかっていない枝葉は、なるべく細かくしてマルチングとして利用します。もしくは後方にバイオネストを作り、夏の間堆積し発酵を促した後、土壌に漉き込みを行う予定です。雑草も同様で、一年草は後方へ堆積。宿根性の雑草(ヤブガラシ、ドクダミ、ササなど)が出てきた場合、根は処分したいと考えています。 コンテストガーデンB花鳥風月 命巡る草はら メイガーデンズ、柵山 直之さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:腐葉土、もみ殻燻炭、バーミキュライト、ピートモスマルチング材:腐葉土、一部に剪定生チップ溝に入れ込むもの:鉢底石元肥:発酵腐葉土ぼかし、一部に有機肥料バイオゴールド ◆土壌を整える◆ 左/トラックから荷物を降ろして、自身の区画に運ぶ。右/デザインに基づいてラインを引き、位置確認をする。 左/保水性・通気性を高めるための資材(腐葉土:微生物の餌でありミネラルの元となる、もみ殻燻炭:アルカリ性ミネラルで微生物の住処になる、ピートモス:酸性ミネラルを補う、バーミキュライト:保肥力を高める)を投入する。右/水を注いで排水状態を確認。 左/1㎡単位水糸を張り、デザインに基づいて溝や起伏をつける。右/土壌全体に発酵腐葉土ぼかしを混ぜる。 ◆植え付け◆ 左/苗を置いて全体のバランスを確認してから苗を植える。右/水はけのために、溝の端部を深く掘り、鉢底石を敷きこんだ。 植えた苗の間に、スイセン、原種チューリップ、ダッチアイリス、カマッシアなどの球根を植える。 ◆マルチング◆ 花壇全体の表面を腐葉土で覆う。 【植え付け完了】 ■日向(北側) ■日陰(南側) 【メンテナンス時の発生材について】 ・雑草や剪定残渣は粉砕し、マルチング材として花壇に使用する。 ・簡易なインセクトホテルを制作し、今後刈り取ったイネ科の茎を詰め込んだテントウムシの冬越し場所を設けたい。 コンテストガーデンC草原は、やがて森へ還る。 吉野 ひろきさん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:真砂土、バーク堆肥(炭入りコンパ)、竹炭、燻炭、もみがら、パーライト(ネニサンソ、ホワイトローム)マルチング材: バーク堆肥、落ち葉、杉皮樹皮バーク(しらさぎ難燃マルチバーク)溝に入れ込むもの:剪定枝葉竹、落ち葉、竹、稲藁、元肥:牛ふん、汚泥発酵肥料(タテヤマユーキ1号)、バークその他:プランツタグ、草花固定誘引ワイヤー ◆土壌を整える◆ 左/デザイン図に基づいて線を引いてから、起伏をつける。右/パサパサしている土壌の質を変えるため、関西で使われることが多くてやや重みのある真砂土、排水効果を高めるパーライト、団粒構造を作りながら維持するバーク堆肥、保水性や通気性を高めるもみ殻や燻炭を混ぜ込む。 左/溝に、空壁があって微生物が住み着きやすい竹炭を敷いてから樹木の枝を入れ込む。枝はモミジやカナメモチ、マキ、ウメなどで、これらを敷きつめることで空気や水が通りやすくなる。太さ・長さ・落葉性・常緑性にさまざまなタイプを投入することで腐食時間がまちまちになり、さまざまなバクテリアが発生しやすくなる。また、こうすることでこの溝に向かってまわりの植物の根が動き、土中環境を活性化させる。右/植え付ける場所に、肥料分として汚泥発酵肥料(タテヤマユーキ)、牛糞、バーク堆肥を混ぜる。 ◆植え付け◆ 配置図を確認しながら苗を配置し、1ポットずつ順に植え付ける。 原種チューリップやクロッカス、スイセンなどの小球根や大きめのアリウムの球根を、苗の合間に植える。 ◆マルチング◆ バークを敷きならしたのち、落ち葉、杉皮樹皮バーク(しらさぎ難燃マルチバーク)でカバーする。 【植え付け完了】 ■日向(北側) ■日陰(南側) 【メンテナンス時の発生材について】 ・ガーデン内の草花の各群落の間、地形の緩やかな起伏に合わせて、その間を縫うように深さ10~20cm、幅は10cm程度の溝を張り巡らせ、水や空気が通る道を作った。溝や穴には、主に有機物植物の枝葉が絡みつくように寝かせ、そこに落ち葉や竹炭、燻炭、微生物活性汚泥、バーク堆肥などを混ぜておく。こうすることで、ガーデン内の土壌の保水性・通気性・透水性を高め、土壌微生物の増殖をも促すので、植物の根系の成長が活性化されるものと考えている(作庭当初はこの溝が多少目立つが、やがて草花が覆い隠すので、気にならなくなる)。 ・メンテナンス時に発生した花がらや枯草、剪定枝、除草した草などは溝に漉き込むほか、落ち葉などとともにマルチング材としても再利用する。森の地面が落ち葉で深く覆われているように、表層を自然の野山と同じ状態にする。 ・発生有機物をすべてガーデン内で循環利用し、やがて土へ還り植物たちの栄養へと再び還元されるゼロエミッションな計画を考えている。 コンテストガーデンDfeeling garden ~伝え感じる武蔵野の新しい風景づくり~ 藤井宏海さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:腐葉土マルチング材:腐葉土元肥: 食品リサイクル有機質堆肥(ミラクルバイオ肥料FDS)、鶏糞有機発酵堆肥(アミノ有機)その他:樹名板(間伐材を加工した花名板を設置予定) ◆土壌を整える◆ 既存の土が肥性に優れた黒土と透水、通気性に優れた改良土(エコロベースソイルCAプラス)だったため、腐葉土を混ぜ込んで耕運機で耕うんして微生物の働きで団粒構造のあるフカフカな土にする。 黒土はリン酸が欠乏しやすそうなので、鶏糞を発酵させた有機発酵堆肥(アミノ有機)を耕運機でまんべんなく混ぜ込む。 水糸を張ってグリッドを作り、デザインに基づいて溝や盛り上がりを作る。グラス系の植物を植えこむ場所を盛り上げ通気性、排水性をよくする。花を植える部分には食品リサイクル有機質堆肥(ミラクルバイオ肥料FDS)を混ぜ込む。 ◆植え付け◆ 左/グリッドを生かして苗を配置し、植えていく。右/アリウム、チューリップ、オーニソガラムなどの球根を植え込む。 ◆マルチング◆ 武蔵野の黒土の色をイメージして、溝も含めて全体的に腐葉土で覆う。 【植え付け完了】 ■日向(北側) ■日陰(南側) 【メンテナンス時の発生材について】 ガーデン管理で出た剪定くずは、堆肥ヤードで堆肥化しマルチング材として活用し、ガーデン内で資源の循環を図る。微生物がより活発に活動がしやすい環境を作るために、枝や葉をヤード内に混合させる。 コンテストガーデンE武蔵野の“これから”の原風景 清水一史さん率いる作庭メンバーの皆さん。 ◆使用資材◆ 土壌改良材:完熟落ち葉堆肥(五段農園/岐阜県)、鹿沼土(刀川平和農園/栃木県)マルチング材:バーク堆肥(上田林業/滋賀県)、腐葉土(岡部産業/東京都) ◆土壌を整える◆ 左/既存の人工土壌と黒土の層が混ざり合うように、耕運機で念入りに耕してから均す。右/人工土壌がややアルカリ性なので、在来の野草がよく育つ弱酸性に傾けるために鹿沼土を一面に投入し、粒がつぶれないように軽く耕うん。 左/完熟落ち葉堆肥を最後に投入し、軽く攪拌、築山を造成していく。右/完熟した落ち葉堆肥(五段農園)。パッケージは培養土化した商品のもので中身は異なる。 ◆植え付け◆ 水糸を張ってグリットを作り、デザインに基づいて苗を植える。植物1種あたり0.5〜1.5㎡ほどをまとめて植えるブロックプランティングを採用。レイアウトを決めるマーキングにはスプレーなどを使わず、完熟落ち葉堆肥を線上に撒いて行った。 ◆マルチング◆ 目の細かなバーク堆肥を2cm、葉の形がやや残った腐葉土を2cm敷いた。土と植物の本来の姿を見届けるべく施肥は予定していない。 【植え付け完了】 ■日向(北側) ■日陰(南側) 【メンテナンス時の発生材について】 ・植物ゴミ等の現場発生資材を集めて、堆肥とするため“バイオネスト”を設置する。剪定した植物ゴミを投入、巡回時に天地返し。マルチング材として使用する”刈草堆肥”を作成する。 ・バイオネストに資材を投入し、巡回時に天地返しするだけでは“完熟”せずに雑菌や雑草種子、病原菌などの混入が懸念されるため、土壌への鋤きこみには使用せず、マルチングとして活用することを想定している。 ・将来的には、現場発生資材と神代植物公園内で発生する落ち葉を利用し、“完熟”落ち葉堆肥にするコンポストプログラムなども妄想し、ガーデンと公園で資源循環を実現できないかと考えている。 コンテストガーデンを見に行こう! Information 東京都・神代植物公園を舞台に行われている「第2回 東京パークガーデンアワード」。5人のガーデンデザイナーが日向と日陰のガーデンづくりにチャレンジし、趣の異なる10のガーデンを鑑賞することができます。いつでも自由に見学可能。日々表情を変えていくプロによる植栽を見に、ぜひ訪れてください。 都立神代植物公園(正門手前プロムナード[無料区域])所在地:東京都調布市深大寺元町5丁目31-10https://www.tokyo-park.or.jp/jindai/電話: 042-483-2300(神代植物公園サービスセンター)開園時間:9:30~17:00(入園は16:00まで)休園日:月曜日(月曜日が祝日の場合、翌日が休園日、年末年始12/29~翌年1/1)アクセス:京王線調布駅、JR中央線三鷹駅・吉祥寺駅からバス「神代植物公園前」下車すぐ。車の場合は、中央自動車道調布ICから約10分弱。
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吉谷桂子さんのガーデン「the cloud」から学ぶ“ナチュラリスティックな庭づくり”③ 〜おすすめプランツ〜
適地適草でレイアウトを植物の性質を調べておこう 「the cloud」は西向きの庭で、背後は神宮の森がそびえて朝日がまったく当たらない。夏の太陽がもっとも厳しくなる左側のエリアは西日や乾燥に強い植物で、黄色やオレンジの花が咲くものが多い。高木の北側にあって日照時間が短い右側のエリアは、半日陰を好む日本の在来種で、ピンクや白の花が咲くものが多い。 ロングライフ・メンテナンス・フレンドリーを目標とした、今までにないガーデン制作を行っている吉谷さん。これまでの経験を活かし、高温多湿に耐えられる日本の在来種を取り入れているのもこのガーデンの特徴です。ただ、長生の植物はゆっくりと育つので、見応えと順応性が最終的に分かるのは3年後と考えて、作庭から1〜2年目は、華やかさが出る短命の宿根草や、初年度からたくさん花が咲く一年草も加えています。 上左/ややしっとりとしたエリアを彩る、ヒオウギとカラマグロスティス‘ゴールドタウ’ (7月)。上右/ベンチ+パーゴラ裏で視線が抜けるのをストップ。ルドベキア・マキシアとヒヨドリバナ(7月)。下/シードヘッドになったペンステモン‘ダコタバーガンディ’の銅葉が植栽に深みを与えつつ、引き締め役として活躍(11月)。 また、吉谷さんにとって丈夫で絶対確実な植物だけでなく、ヨーロッパなら大丈夫だけれど、ここではちょっとどうかな? というチャレンジングなものも入れています。 「全体の約2割がチャレンジプランツです。植物の魅力を知るには常にトライ&エラー。環境への順応は試してみないと分からないし、 ガーデニングは自然との共存について学べる大切なチャンスです。 失敗は決して無駄にはならないはず。いろいろと可能性を考えてトライしてみて」。 最大の合い言葉は「適地適草」まずは、植物の性質を調べておこう! 「植物のセレクトとその配置には理由があり、好きな植物をなんとなく植えてはダメ。簡単ではないかもしれないけれど、エコロジーとデザイン両面の適地適草を前提に、美を備えながら気候の変動にも耐えて長生、行儀のよい植物を見極めて」と吉谷さん。 美しい自然な風景を作るには、「植える場所の環境」と「植物の特性」を把握し、『RIGHT PLANT, RIGHT PLACE (適材適所・適地適草)』で花壇に落とし込むことが大切です。 【チェックポイント】 ・丈夫で風土環境に合っているか?(ただし侵略的でないこと)・四季を通して行儀がよいか?(暴れにくい、倒れにくい、花枯れ後の姿が汚くない・シードヘッドも魅力的であること) ① なるべく長期間生きて、その地に順応するか、花が咲くか?(翌年以降も持続して美しい草姿で、花が咲くこと)② 生物多様性、蜜源植物としても役立ち、病害虫に強いか?(命の循環、病害虫に侵されてもまあまあ復活できること。益虫もやってくるとよい) ふわっとして、エアリーなグラスや、蜜源花の代表、バーベナ・ボナリエンシス。その少し下で花後のアガパンサスやエキナセアのフォルムがアクセントに。その下方手前でアガパンサスの葉群やベンケイソウが植物の株元をしっかりガード/9月 ‘the cloud’で重宝した代表的な植物 36選 ガーデンでさまざまな役割を担った、メンバーの一部をご紹介します。ここで取り上げていない植物たちも、それぞれにいい役割を果たしています。 ■細い葉が魅力のグラス類 透け感抜群。軽やかな穂が風に揺れ、植栽の上部分(奥)で、表情豊かなナチュラル感を強めてくれます。 左/ディスカンプシア‘ゴールドタウ’ 中/ミューレンベルギア・カピラリス 右/パニカム‘ヘビーメタル’ 左/ディスカンプシア‘ゴールドタウ’イネ科草丈:約80cm特徴:穂の観賞期は初夏から。たくさん穂を上げ、細かい黄褐色となる。秋には穂が乾いて色が抜け始めるが、冬も楽しめる。ほかのグラスとは異なり多湿を好む。常緑~半常緑性。 中/ミューレンベルギア・カピラリスイネ科草丈:60~90cm特徴:夏~秋にかけて丈のあるピンクの花穂が大人気。初めはつややかだが、冬には色あせる。丈夫で大きく育つので根の張るスペースが必要。日照・風通し、根張りの場所が制限されると倒れやすく、花穂も上がりにくくなることも注意。 右/パニカム‘ヘビーメタル’イネ科草丈:約160cm特徴:葉がまっすぐに直立する姿はオーナメンタルな存在感がある。葉色は、夏まではメタリックなブルーグリーン、秋に上がる繊細な穂と葉は黄金色に変化して直立性も高い。 左/メリニス‘サバンナ’ 中/カラマグロスティス‘カールフォースター’ 右/カラマグロスティス・ブラキトリカ 左/メリニス‘サバンナ’イネ科草丈:約50cm特徴:ブルーグリーンの葉と秋に葉や穂が赤くなるのも魅力的。丈が高くならず、株もコンパクトにまとまるので狭小地でも楽しめるが、こぼれ種で増えるので、コントロールが多少必要なことも。 中/カラマグロスティス‘カールフォースター’イネ科草丈:100~150cm特徴:葉茎、穂が直立する、ナチュラリスティックガーデン代表のグラス。5月頃から上がるすっきりとしてスリムな穂が魅力。穂が出たあと徐々に黄金色に変わり、冬枯れの姿もオーナメンタルな趣がある。 左/カラマグロスティス・ブラキトリカイネ科草丈:約80cm特徴:日本名はノガリヤス。葉はグリーンで柔らかく扇状に弧を描く。羽根のように膨らむ穂は、はじめは明るいグリーンで徐々にシルバー~クリーム色へと移ろう。倒れにくく丈夫。 ■ボールドで頼りになるアガパンサス 巨大花からコンパクトものまで多種あるヒガンバナ科の球根植物。高温化の夏に負けない頼もしい植物で、‘the cloud’では8種類も植えています。美しい花を咲かせることに加え、常緑の葉が低い位置(花壇の手前)をがっしりカバーする役割も。 左/アガパンサス‘クイーンマム’ 中/アガパンサス‘サマーラブ’ 右/アガパンサス‘ポッピンパープル’ 左/アガパンサス‘クイーンマム’草丈:50~70cm花期:初夏特徴:超巨大多花性タイプで、白花を咲かせる花房は約25cmにもなる。ボリュームたっぷりに花をつけるので華やかな印象。 中/アガパンサス‘サマーラブ’ 草丈:約50cm花期:初夏~秋特徴:葉が細く花首がさほど伸びないコンパクトな品種。花色は白と青があり、春から秋まで咲く四季咲き性タイプ。 右/アガパンサス‘ポッピンパープル’草丈:30~60cm花期:初夏~初秋特徴:ほかの品種よりも株はコンパクトで半常緑性。花色は濃紫で花つきがよく、大人っぽい雰囲気が漂う。 ■日陰気味・湿り気味の場所を彩る植物 ほかの場所とは異なる、しっとりとした趣も出してくれます。 左/アネモネ‘アンドレア・アトキンソン’ 中/シュウメイギク‘パミナ’ 右/アスチルベ 左/アネモネ‘アンドレア・アトキンソン’キンポウゲ科草丈:80~120cm花期:夏~秋特徴:アネモネの仲間でシュウメイギク系のハイブリッド品種。純白の花を夏から秋と長期にわたり咲かせる。耐寒性は強く半日陰向き。土壌が肥沃すぎると徒長して倒伏する場合がある。 中/シュウメイギク‘パミナ’キンポウゲ科草丈:約80cm花期:秋特徴:華奢に見えるが花穂は高くならず、株はややコンパクトで倒れにくく丈夫。発色のよい濃いピンクの花は半八重咲き。 右/アスチルベユキノシタ科草丈:90〜120cm花期:初夏特徴:春に白やピンクの細かい花を穂状につける。夏以降に茶色く枯れた花穂をそのまま残しておくと、オーナメンタルな姿が楽しめる。 ■日本在来種、もしくは古くから親しまれてきた植物 日本の風土に合っていて、とにかく丈夫! 左/ミソハギ 中/オミナエシ 右/ヒヨドリバナ 左/ミソハギミソハギ科草丈:50~100cm花期:7~9月特徴:日本各地の湿原や田の畔などに生えている植物で、湿り気のある土地を好む。やや木質化する茎に、鮮やかなマゼンタピンクの花を穂状にたくさんつける。 中/オミナエシオミナエシ科草丈:60~100cm花期:8~9月特徴:秋の七草の一つで、黄色い小花を平らな散房状にたくさん咲かせる。低い場所で葉を広げるので、雑草が広がりにくい。 右/ヒヨドリバナキク科草丈:40~120cm花期:8~10月特徴:茎の上部の散房状花序に、白色または淡紅紫色の頭花を密につける。山地の林縁に多く自生。野趣にあふれる。 ■銅葉が美しいもの ダークな葉色がナチュラルな植栽をぐっと引き締めてくれます。 左/ベルゲニア‘ダークマージン’ 中/ペンステモン‘ハスカーレッド’ 右/ペンステモン‘ダコタバーガンディ’ 左/ベルゲニア‘ダークマージン’ユキノシタ科草丈:約40cm花期:春特徴:革のような質感で光沢のある厚い常緑葉。春~秋は葉縁に赤い縁取りが入り、晩秋以降は葉全体に赤みが濃くなる。花色はピンク。 中/ペンステモン‘ハスカーレッド’オオバコ科草丈:80~100cm花期:初夏特徴:ブロンズ色の葉がカラーリーフとして楽しめ、白花とのコントラストが魅力。春の芽吹きはより濃色で、花後は暗い緑色になる。タネもシックな印象。 右/ペンステモン‘ダコタバーガンディ’オオバコ科草丈:約60cm花期:初夏~秋特徴:光沢のある赤みがかったダークな葉に、濃ピンクがにじむ花をつける。ペンステモン‘ハスカーレッド’よりも葉が赤黒く、コンパクトな品種。 ■彩りが寂しい春先に毎年咲き続ける小球根 一度植えれば、毎年グラウンドカバーとしても活躍しながら、愛らしい花色で春の到来を告げてくれます。 左/イフェイオン‘アルバートキャスティロ’ 左/シラー・シビリカ 右/スイセン‘テタテート’ 左/イフェイオン‘アルバートキャスティロ’ユリ科草丈:10~20cm花期:早春特徴:可憐な白い星形の花をいっぱいに咲かせる。植えっぱなし可能でグラウンドカバーにも最適。細い青々とした葉は初冬から展開して花後に休眠し、地上部は枯れる。 左/シラー・シビリカユリ科草丈:10~15cm花期:早春特徴:ベルのように下垂した花は非常に可憐で房状に咲く。花色は白と青紫。緑の細い葉は開花前に展開する。 右/スイセン‘テタテート’ユリ科草丈:20cm花期:早春特徴:鮮やかな黄色の愛らしい花を咲かせるコンパクトなスイセン。早春の植栽ににぎやかさを与えてくれる。 ■シードヘッドが楽しめるもの ユニークな造形が、秋の風情を深めてくれます。 左/エキナセア‘マグナススーペリア’ 中/ヒオウギ 右/ルドベキア‘リトルヘンリー’ 左/エキナセア‘マグナススーペリア’キク科草丈:60~150cm花期:初夏~初秋特徴:ライラックピンクの花弁×赤い花心の組み合わせが鮮やか。花径が大きく、夏の植栽に元気な存在感を与えてくれる。花心が乾いて残る。 中/ヒオウギアヤメ科草丈:40~100cm特徴: 夏特長:夏の花も扇形に立ち上がる葉姿も、どちらも美しい。また、秋に風船のような種袋ができ、それが割れると中から真っ黒なタネが現れるところも非常に魅力的。万葉の昔はそれを‘ぬばたま’と呼んだ。 右/ルドベキア‘リトルヘンリー’キク科草丈:60~90cm花期:初夏~夏特徴:筒状の細長い花弁がユニークで、茶色い花心とのコントラストが愛らしい。半日陰でも咲く丈夫な小型種。蝶を呼ぶ。 ■オーナメンタルに花が楽しめる球根 細い柄に花房がつき、風に揺れる浮遊感も楽しめます。 左/アリウム‘パープルレイン’ 中/アリウム・シューベルティー 右/トリテレイア‘シルバークイーン’ 左/アリウム‘パープルレイン’ネギ科草丈:約60cm花期:春特徴:鮮やかな赤紫の星形の花を放射状につける、植えっぱなし可能な丈夫なアリウム。早咲き種。 中/アリウム・シューベルティーネギ科草丈:30~50cm花期: 初夏特徴:ネギ坊主が花火のようにパッと広がる巨大輪のピンクのアリウム。放射状に広がる花柄はそのままの形で乾いて残る。 右/トリテレイア‘シルバークイーン’ ユリ科草丈:30~40cm花期:初夏特徴:針金のように細い茎に、ラッパ形の白い花をたくさん咲かせる。掘り上げなくても毎年植えっぱなしでよく開花する。 ■暑さと干ばつにも強いストレスフリーな宿根草 昨今の酷暑を乗り越える性質を備えながら見応えがある頼もしい種類です。 左/アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’ 中/アリウム‘サマービューティー’ 右/セダム(ハイロテレフィニューム)‘オータムジョイ’ 左/アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’シソ科草丈:約80cm花期: 夏~秋特徴:シソの穂を細かくしたような花穂をたくさん上げ、淡いブルーの花を長期にわたり咲かせる。花後は花穂がシードヘッドになり、秋から冬の間も見応えたっぷり。 中/アリウム‘サマービューティー’ネギ科草丈:20~40cm花期:夏特徴:小型のアリウムで、球形・ピンク色の花をつける姿はチャイブに似ている。厚めの葉をたくさん展開し、グラスのよう。暑さに強い。 右/セダム(ハイロテレフィニューム)‘オータムジョイ’ ベンケイソウ科草丈:30~60cm花期:晩夏~秋特徴:丈夫な茎が立ち上がり、多肉質な葉を広げながらこんもりと育つ。花はピンクからローズピンクに移ろい美しい。ほぼ水やりは要らず、肥えていない土=貧しい栄養環境だとうまく育つ。また、西日の厳しい場所に植えるのに向いているが、少し湿り気があるところだと巣蛾(すが)でダメージを受ける場合がある。 ■グラウンドカバーで活躍する宿根草 表土を隠し、雑草防止や乾燥予防に役立ちます。 左/セラトスティグマ 中/エリゲロン・カルビンスキアヌス 右/リッピア・カネスケンス 左/セラトスティグマ(ルリマツリモドキ)イソマツ科草丈:30~60cm花期:夏~秋特徴:1~2cmのコバルトブルーの花が次々と長い間咲き続け、茎葉をこんもりと密生させながら、株は横に広がるように成長する。秋には紅葉も楽しめる。 中/エリゲロン・カルビンスキアヌスキク科草丈:10~30cm花期:春~秋特徴:小輪多花性で、長期間咲き続ける。咲き始めは花弁が白く徐々に赤みを帯びていくので、2色咲いているように見える。性質も強い。 右/リッピア・カネスケンスクマツヅラ科草丈:10~30cm花期:春~秋特徴:地面を這うように成長して広がり、各節から根を根付かせながら密に地面を覆う。また、白やピンク色の花を次々に咲かせる。 ■ふわりと間をつないでくれる一年草(一年草扱いの宿根草) 一年草や短命な宿根草は、春の庭に早くから花を咲かせます、成長が早く、しかもこぼれ種で増えるので、侵略的ではないタイプを選んで(オルラヤなどは増えすぎた場合のコントロールが大変なので場所を選ぶとよい)。 左/ニゲラ・ダマスケナ 中/セントランサス・コキネウス アルバ 右/バーベナ・ボナリエンシス 左/ニゲラ・ダマスケナキンポウゲ科(一年草)草丈:40~90cm花期:春特徴:白や青、ピンクなどの花弁のような萼片も、ふわふわとした糸状の葉も花後の風船形のシードヘッドも魅力的。一年草ながら開花前から開花後まで見頃が長い。こぼれ種から出る糸葉の新芽は雑草との見分けがつきやすいので、コントロールがしやすい。 中/セントランサス・コキネウス アルバオミナエシ科(一年草扱いの宿根草)草丈:約60cm花期:春特徴:ベニカノコソウの白花種で小花が集まって咲く。花つきが非常によく、こんもりと茂ると見応えたっぷり。宿根草で、環境に合えば温暖地の場合は常緑で冬越しする。短命だがこぼれ種で増える。 右/バーベナ・ボナリエンシスクマツヅラ科(一年草扱いの宿根草)草丈:70~100cm花期:初夏~秋特徴:強健で自立性が高く細長い茎が分岐した先に、紫の小花を咲かせる。昆虫たちにも人気が高くタネもできやすいので、適度に軽めの剪定をして、花を長く咲かせながら株の状態を保つとよい。日当たりがよく、少し乾き気味な環境を好み、条件が合えばこぼれ種でよく増える。冬越しした株は翌年も開花する。 『ガーデン・メリット』がある植物を選ぶ意味 「“花の美しさや愛らしさ”はガーデンプランツを選ぶ上で重要な選択肢となりますが、それにプラスして、芽出しの時期から枯れるまで、ずっと庭景色に魅力を与えてくれる『ガーデン・メリット』がある植物を選ぶことも大切です。 それを見極めるには、一度やってみる。失敗しながらも発見を楽しむ。“トライ&エラー”の精神で挑んでください。年を追うごとに経験値を積んでいけば、人生はきっと充実するはず。エコロジーにあった、強く美しい植物の存在を知ることは、私たちの心を癒やし、人生を豊かにしてくれる“庭”の可能性を広げてくれますよ」と吉谷さん。 連載4回目となる次回は、「ガーデン環境整備」についてご紹介します。
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吉谷桂子さんのガーデン「the cloud」から学ぶ“ナチュラリスティックな庭づくり”②〜植栽デザイン〜
役割が決まっていれば配置しやすい! 吉谷式デザインメソッド 雲形の花壇の中に、四季を通して見応えのある『マルチプランティング』がなされている。 ■吉谷式メソッド1 自然な植栽に見せる■ ここの花壇は直線的ではありませんが、縁どりから60~90cmの幅、手前のボーダー(帯状)植栽エリア、それより花壇中央寄りの内側はマス(集合)植栽に分けられており、基本的にボーダーエリアには確実に元気に育つ植物、内側にトライアルな植物を植えています。 実際の植栽前に描いていた卓上のプランから、実際の植物の様子次第で変更も出て、描き足している。 それは、もしトライアルで植えた植物が倒れたり調子が悪くなったりしても、外側の強健な植物が確実に茂ることでカバーしてくれるから。また、花がら摘みが必要なものは手前、不要なものは奥に配してとお手入れを楽にしたのもポイントです。苗は3ポットを基本のトライアングル(三角)で連続的に植え、連鎖性(つながり)を持たせることで、自然に見えながら散らかって見えないように整然とした秩序を保っていることが植栽デザインのポイントになります。 花壇の外側は、常緑性の強健な植物がボーダー状に植えられている/2月 ■吉谷式メソッド2 安定感を生み出す■ 「ガーデンデザインは、劇場の舞台デザインがヒント」と、かつて広告美術などを手掛けていた吉谷さん。舞台では場面場面の展開があり、「床をダークで重い色に、天井は明るく軽い色にすることで軽重のバランスを取る。手前のものを大きく、奥を小さくすることで遠近感を出す」などを意識することで、景色に安定感が生まれます。これらが逆になると、景色が不自然でバランスも不安定に。ガーデンデザインも同様で、この基本を押さえて環境に合った植物を組み立てれば、景色が作りやすくなります。 植栽の下側はアガパンサスでがっしり、上側はカラマグロスティスやバーベナ・ボナリエンシスで軽くふんわりとさせて、安定感のある景色を作り出している。 【Keyword】 ■下(花壇手前):Bold・がっつり・重め 風景の下方となる花壇の手前:丈夫でしっかりとした形・質感をもつ重い印象の植物を植える。 ■上(花壇奥):Transparency・ライト・軽め風景の上方となる花壇の奥:丈のある軽やかな植物を植える。 これは軽重のバランスと遠近感を具体的に表したもので、風景の下となる花壇の手前には、しっかりとした形・質感で重い印象かつ丈夫な植物を植えます。西日や乾燥に強い『がっつり重い印象』の肉厚な葉っぱの常緑植物がおすすめ。それに対し、風景の上側となる花壇の奥には、丈があっても軽やかな植物を植えます。『ふわふわとした印象』のグラス類などがおすすめです。 こうすることで、がっつりプランツがふんわりプランツの株元を西日から守ったり、支えたりするほか、手前がはっきり・後ろがふわふわとすることで視覚的な遠近感や豊かな表情を生み出し、絵画的ともいえるランドスケープが作りやすくなります。 【がっつり・重め代表】アガパンサス、ベルゲニア、オランダセダム(オオベンケイソウ)など比較的、多肉質な葉の宿根草 【ライト・軽め代表】グラス類、シュウメイギク、バーベナ・ボナリエンシスなど比較的、背が高くて風に揺れる細長い宿根草 ■吉谷式メソッド3 植物を建築的、彫刻的に使いこなす■ 植栽は、植物の異なる色・形・質感の組み合わせの連続です。隣り合う植物は似たもの同士にならないように注意し、互いに引き立て合うものを選びます。同じようなものを並べると、ガチャガチャ散らかったように見えてしまいます。 ふわふわしたものとカチッとしたもの、また、点・線・面とさまざまなフォルムの植物を組み合わせたりすることで、「絵画的」な風景が描けます。「Using plants as an architecture(植物を建築のように扱う)」というイギリスのガーデンデザイナーの言葉が大きなヒントです。 青紫~ライトグリーンのグラデーションが幻想的なワンシーン。エリンジウム‘ブルーグリッター’などのトゲトゲとした花や、ルドベキア・マキシマの浮遊感のある細い花茎がシーンの印象を深めて/6月 まずは、フォルム・役割を考える ・アクセントプランツ……目を引いてアクセントになる植物(エキナセア、大型花のルドベキアやアリウムなど) ・フィリングプランツ……細かい花穂や葉群、間をつなぐ植物(アスター、グラスの穂など)ディスカンプシアなどのグラス類、ニゲラなど) *フィリングプランツは、アクセントプランツの間をつなぐだけでなくバックスクリーンにもなるが、背の高いグラス類は、その背景でスクリーンプランツとなる。 ・スパイクプランツ……尖った花穂などが縦の線を描き、シャープな印象を与える植物(リアトリス、アスチルベなど) ・線を描くプランツ……ラインを描き、動きや伸びやかさを与える植物(グラス類など) ・点を描くプランツ……ドットを作りリズムを生む植物(アリウムの花穂、ストケシアなど) ・面を描くプランツ……葉の面積が広く、落ち着きをもたらす植物(ベルゲニアなど) ふわふわと広がるニゲラの奥にアリウム‘パープルレイン’の丸い花穂がプカプカと浮かぶ、愛らしい風景/5月 直線的なヒオウギの葉と曲線を描くディスカンプシア ‘ゴールドタウ’の絵画的競演/9月 ■吉谷式メソッド4 レイヤーで魅せる■ 園路は風通しを確保するため、最低1.2~1.4mの幅が取られています。広すぎないほうが感覚的な親密さを感じられ、さらに目の高さに花があると五感に迫ってきます。植物が出しているエネルギーや香りなどが、見る人の感覚に訴えてくるのです。また、「the cloud」の花壇は雲形で入り組んでいるので、囲まれ感・包まれ感もたっぷり。没入感を楽しみながら落ち着きも感じられます。 ペンステモン‘ハスカーレッド’のシードヘッドの造形が、透明感のあるミューレンベルギア・カピラリスに浮かび上がっている/10月 そこで必要なのが「植栽をレイヤーで魅せる技」。手前とその後ろに来るものをどのように重ねるのか、植物が成長する前からデザインの計算をします。例えば、傘状に咲くアンジェリカや尖塔状のアスチルベの花穂を透かして見せるエアリーなグラスなど、横からの風景にも気を配っています。 植物越しに吉谷さんを撮影したスナップ。アリウム‘パープルレイン’やセントランサス・コキネウスなどの中に、吉谷さんが浮かび上がっているように撮れている。 「記念写真を撮るときに植物を背景にするのもいいけれど、植物越しに人物が写るようにアングルを選ぶと、草花と一体感のある写真が撮れます。あちこちに撮影映えスポットを設けているんですよ」と吉谷さん。 人と植物が重なる風景までも考えられています。 “美しい庭をデザインする”ために 紫がかるアンジェリカ ‘ビカースミード’のシックな花房、手前下はアスチルベ、その背景にグラスのエアリーな穂、紫の反対色となるヒオウギの黄色い花などが、重層的な風景を織り成している/7月 美しいガーデンをつくるには、植物の生態や個性を識った上で、色・形・質感の違いや醸す印象を見極め、それをどう組み合わせて活かせるかを考えることが大切です。吉谷さんは、「the cloud」で使うプランツリストに、それぞれの特徴や役割も書き込み、偏りがないかなどを確認しながらデザインをしています。 「移ろう季節と気候が景色を変えていく。『庭をデザインするということは植物を絵の具にして絵画を描くこと』と、英国の作庭家、ガートルード・ジーキル氏は言っています。100年前のジーキルの時代には想像もできなかった気候変動の中で、この考えは普遍です」。 ぜひ、吉谷さんのメソッドを庭づくりの参考にしてください。次回のテーマは、丈夫で活躍してくれる『おすすめプランツ』です。
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吉谷桂子さんのガーデン「the cloud」から学ぶ“ナチュラリスティックな庭づくり”① 〜1年の移り変わり〜
吉谷さんが牽引する「宿根草を中心に考えた植栽による21世紀のガーデンづくり」大々的にスタート! 「the cloud」が作られたのは、JR山手線「原宿」駅から徒歩3分の「都立代々木公園」の中。原宿門から入ってすぐ右手の「オリンピック記念宿舎前広場」の右側にあります。 「東京パークガーデンアワード」は、「持続可能(サステナブル)なガーデンへの配慮がなされているか」「メンテナンスしやすいか」を考慮することが条件となっている画期的なコンテスト。モデルガーデンである「the cloud」も同様に、宿根草をメインに植栽設計がされました。ハイメンテナンス、ハイインプットになりがちな“花の満開時が見どころ”の観光ガーデンとは大きく趣旨が異なります。 光や風を感じさせる軽やかな植栽/10月 持続可能で新たな宿根草の世界に触れることができる『New Prennial Plants Movement(新宿根草主義)』。植物の植生の仕組みを理解した上で、自然の風景を手本とするこのスタイルは、特にオランダのピート・アウドルフ氏による「ナチュラリスティックガーデン」により近年注目されるようになり、欧米で主流になっています。 そしてこれが今、地球沸騰ともいわれる気候変動などを抱えた私たちを癒やしてくれる新たなソリューションとして大いに期待されています。 「干ばつがひどいイギリスでもサステナブル、エコフレンドリーであることが主流となっていますが、植物は丈夫で長もちであることが核ですね」 広い公園の中でぷかぷかと浮かぶように広がる「the cloud」。 けれど、長もちの植物を集めただけではなく、アートフォルム(デザイン性)もなくてはと吉谷さん。 「ここ代々木が、アウドルフさんが手がけたニューヨークにある高架線路跡をリノベーションした公園『ハイライン』のようになればと思っています。映える場所が好きな若い人たちや洗練された大人、そして子どもたち皆が楽しめる場所を目指しています。レアな植物が植わっていなくてもいいんです。来るのが楽しみになるガーデンになれば」 花も満開だけに注力しない、芽出しから枯れるまでのプロセスが楽しめる植栽となっています。 「the cloud」と名付けられた理由とこの形になった理由 ユニークな形をしている花壇ですが、これは吉谷さんがこの場所に初めて立ったとき、夏空に浮かぶ雲や背景の明治神宮に広がるモクモクとした森を見て、直感的に‘雲’と連想したもの。ガーデンデザインは、背景と庭が調和して一体化することを目標としていることからも、ぴったりだったと言います。 くねくねと入り組んだ形は、植物をいろいろな角度からよく観賞できるほか、手入れもしやすいという利点があります。 花が少なくても、青々と柔らかい葉が美しい植栽/3月 【ナチュラリスティックガーデン「the cloud」の6つのメソッド】 1. 自然な雰囲気、季節ごとの変化を感じられる庭。エコロジカルな機能性にデザインの創造性を感じさせるデザインですが、基本的にローメンテナンスを目指した設計です。 秋に透明感のある彩りを添えるシュウメイギクは、ヨーロッパでも注目されている。吉谷さんが自宅の庭でもずっと育てている丈夫な長生きプランツ/11月 2. 生物多様性に柔軟な植物構成(農薬不使用、チョウの好む品種などを中心にして昆虫も共存)。 チヨウやハチを呼ぶ蜜源植物、バーベナ・ボナリエンシスなどが選ばれている/7月 3. ローインプット(丈夫で長生きな宿根草や球根植物を選び、季節ごとの植え替えをせず、主に植えっぱなしの宿根草で、異なる季節の花の開花があること)を目指しています。 眺めの統一感のため、初夏から秋にかけて、下方では肉厚な葉、上に行くに従って軽やかで透明感のある植物を選んでいる/11月 4. 猛暑・大雨、逆に雨が降らず極度な乾燥の冬にも耐えうる植物の選択。対処し得る花壇の構造を設計し、21世紀の日本における存続可能な草花選び(日本原産や身近な植物にも着目)をしています。同時に装飾性も感じられる庭。庭の一部には写真映えするスポットがあり注目の草花が咲くことにも配慮していますが、それは、桜の頃やゴールデンウィーク、夏休みといった集客時期に合わせた開花品種を選んでいます。冬の枯れ姿も味わいある眺めとしたい。 左:紫と白のアガパンサスが群れ咲く。アガパンサスは、暑さや乾燥にも強く、東京なら冬も常緑で病害虫の心配もない持続可能な宿根草/7月 右:花後の花茎もオーナメンタルに楽しめるように、タネを取り除き茎を残した、夏以降のアガパンサス。 5. 宿根草により完成された根張りの植物コミュニティを形成(雑草が生えにくくなる)するには、通常3年ほどかかりますが、期間が限定されるため、初年度はなるべく土の余白を残さず、雑草の入り込む余地を与えないためと、ある程度の華やかさを補足するため、まめな花がら摘みを必要としない一年草も設計に加えています。 左:雑草防止のグラウンドカバーとして植栽されたニゲラ。雑草との見分けのつきやすい葉の品種を選んでいる/1月 右:低く伸び花後のタネも景色の一部になった/5月 6. モデルガーデン「the cloud」は、地面から10〜30cm上げたレイズドベッド(盛り土花壇)であり、水はけや風通しを確保しながら、草丈の低い植物の見栄えもよい構造です。また、花壇に個性を与えるために雲海のような膨らみの強弱のあるデザインになっていますが、これは一般のボランティアスタッフにとっても、作業・維持管理がしやすいよう配慮されたもの。花壇の幅は浅く、土に踏み込まなくても手入れがしやすい形なのです。 植え付け当初。花壇の縁がくっきりと見えていた/12月 【「the cloud」の植栽プラン】 植えられた植物数 宿根草:100種類、3,615株 球根:9種類、9,350球 東側に明治神宮の森、西側に野原が広がる代々木公園の隅に位置する「the cloud」。約40×15mの敷地の中にモクモクとした雲形の花壇が7つ設けられ、吉谷さん厳選の植物たちが配植されました。アートフォーム(デザイン性)がありつつ公園や明治神宮の森に調和し、四季折々の楽しみを提供するような植栽設計となっています。 モデルガーデン「the cloud」の初年度12カ月 【冬】例年どおりの気温で、積もる降雪はなし 11月 植え付け当日。著名なガーデンデザイナーなどメンバー8人の力を借りて、4日間で施工。土壌改良(連載第4回参照)、アイアンの仕切りを設置した後、数千株の苗を植栽。球根を植えたところに棒を立てて目印をつけている。 2月 植え込みから2カ月経ったが、まだまだ大きな変化は見られない。寒さにあたってアガパンサスの葉が黄色く、ベルゲニアが赤くなっているが、どれも順調に元気に育っている。小さな黄色いスイセン‘テタテート’が咲き始めた。 【春】例年どおりの気温、降雨 3月 まだまだ色彩の寂しい植栽に、黄色いスイセン‘テタテート’とイフェイオン‘アルバートキャスティロ’が愛らしい彩りをプラス。 4月 イフェイオンは、全部でなんと5,000球。丈夫で冬の干ばつにも耐え毎年よく花をつける小球根を植えることで、花の少ない時期の花壇がにぎやかになる。 5月 まぶしい新緑の花壇の中で、アリウム‘パープルレイン’の花穂がファンタジックな風景を描いている。 【夏】梅雨がほとんどなく、かつてない酷暑・干ばつに加え、突発的なゲリラ豪雨が数回あり 6月 ストケシアやモナルダなどが咲き始め、にぎやかさが増してきた。 7月 全体的に緑が深くなってきて、あちこちに植えたアガパンサスが満開に。 8月 干ばつのような暑さのなかでも元気に育つ、生命力あふれるたくましいガーデン。背が高くなる宿根草も少なくないが、頭が重くならず向こうが透けて見えるような品種を選んでいる。 【秋】いつまでも気温が高かったが、10月末に冬日となる日が数日あり。夏からずっと台風の到来はなし 9月 さまざまなグラスの穂が、それまでとは異なる趣を見せ始めた。 10月 秋風に揺れる、暑さを乗り越えたたくましい植物たち。 11月 晩秋はミューレンベルギア・カピラリスがピンク色に。銅葉のペンステモンもアクセントに。 「the cloud」作庭から1年を経て 吉谷さんならではの緻密な計算と抜群のセンスがぎっしりと詰め込まれた「the cloud」。 「春先の気温が高かったため、1年で予想以上に大きく育ち慌てる場面もありましたが、ライトプランツ・ライトプレイス、適地適草を見極めて、来春はもっと安定的に宿根草が楽しめるようにしていきたいです」と吉谷さん。 次回は、この美しい風景づくりに用いられた、吉谷さんによる『植栽デザイン』についてご紹介します。
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「第1回 東京パークガーデンアワード 代々木公園」1年の取り組み
毎日見学者が訪れる「代々木公園」がコンテスト会場 昨年12月に作庭され、毎日公開しているコンテストガーデンとモデルガーデンがあるのは、JR山手線「原宿」駅から徒歩3分の「都立代々木公園」の中。原宿門から入ってすぐ右手の「オリンピック記念宿舎前広場」です。敷地の奥は、緑深い明治神宮の森が背景となり、右手から日が昇る日当たりがよい開けた場所。かつては陸軍代々木練兵場だったところで、その後はワシントンハイツ、東京オリンピックの選手村と時代とともに変遷ましたが、「オリンピック記念宿舎」今も保存されています。 「オリンピック記念宿舎」までの通路沿いの左右に、5つのガーデンが作られています。右奥の広場には、吉谷桂子さんによるモデルガーデン「the cloud」も公開中。11月上旬の様子。 「第1回 東京パークガーデンアワード」の最大の特徴は、主に宿根草などを取り入れた「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマとする点。一度植え付けて根付いたあとは、最小限の手入れで維持されること、また同時にデザイン性と植物や栽培環境に対する高度な知識が求められる、新スタイルのガーデンコンテストです。 コンテストガーデンが作られている敷地の平面図。A〜Eの各面積は約72〜85㎡ 。どのエリアでガーデンを制作するかは、2022年11月に抽選により決定しました。 ここでテーマとなる「ロングライフ・ローメンテナンスな花壇」とは、季節ごとの植え替えをせずに、丈夫で長生きな宿根草や球根植物を中心に使って、植えっぱなしで、異なる季節に開花の彩りが楽しめる花壇のこと。2022年10月に5つのデザインの作庭が決定し、同年12月上旬にはそれぞれの区画で1回目の土づくりと植え付けが完了しました。 「第1回 東京パークガーデンアワード 代々木公園」11月上旬最終審査が行われました 2022年12月に行われた5つのガーデン制作に関わった皆さん。審査委員の正木覚さんと吉谷桂子さんを囲んで。 【第1回 東京パークガーデンアワード in 代々木公園 最終審査までのスケジュール】 2022年10月20日 応募締め切り10月31日 書類による本審査 5名の入賞者決定12月5〜9日 入賞者によるガーデン制作①2023年2月27日〜3月3日 入賞者によるガーデン制作②4月 ショーアップ審査(春の見ごろを迎えた観賞性を審査)7月 サステナブル審査(梅雨を経て猛暑に向けた植栽と耐久性を審査)11月上旬 ファイナル審査(秋の見ごろの観賞性と年間の管理状況を審査)全3回の審査を踏まえ、総合評価のうえ、グランプリ・準グランプリ・特別審査委員賞の決定11月 審査結果の発表・授賞式 「第1回 東京パークガーデンアワード」は、5名の参加者決定から最終審査の結果発表まで1年かけて行われる、新しい試みのコンテストです。これまで、12月に1回目のガーデン制作、2月下旬に2回目の植え付けや手入れがされ、4月に「ショーアップ審査」、7月に「サステナブル審査」、11月上旬に秋の見ごろの鑑賞性と年間の管理状況を審査する「ファイナル審査」が行われました。酷暑を乗り越え、晩秋のガーデン風景へと移り変わったコンテスト会場をぜひご覧ください。 「第1回 東京パークガーデンアワード 代々木公園」すべての審査が終了しました! 審査委員/福岡孝則(東京農業大学地域環境科学部 准教授) 正木 覚(環境デザイナー・まちなか緑化士養成講座 講師) 吉谷桂子(ガーデンデザイナー) 佐々木 珠(東京都建設局公園緑地部長) 植村敦子(公益財団法人東京都公園協会 常務理事) 4月、7月、11月の3回の審査では、5名の審査委員による採点と協議により行われました。審査基準は、以下の8つの項目です。1. 公園の景観と調和していること 2. 公園利用者のためのデザインであること 3. 公園利用者が美しいと感じられること 4. 造園技術が高いこと 5. 四季の変化に対応した植物(宿根草など)選びができていること 6. 「持続可能なガーデン」への配慮がなされていること(ロングライフ) 7. メンテナンスがしやすいこと(ローメンテナンス) 8. デザイナー独自の提案ができていること グランプリ コンテストガーデンCGarden Sensuous ガーデン センシュアス コンテストガーデンC 季節の変化 11月上旬のコンテストガーデンC 「Garden Sensuous ガーデン センシュアス」 審査員講評緩やかなアンジュレーションと植栽との基本構成がしっかりしていて、年間を通して安心して見ていられるガーデンでした。厳しい夏を超えてなお目立ったダメージも少なく、全体としては自然風のガーデンである中で植栽配置が季節ごとにきちんと秩序を保ち、公共のガーデンにおける理想の新しい庭を見ているようでした。緑の質感と色のグラデーションが印象的で、エッジの曲線を活かした公園風景との一体感・透明感の作り方にも技術の高さを感じます。コンセプトの通り、来園者の感覚に優しく、静かに訴えかけるガーデンが見事に表現されていました。 ⚫︎コンテストガーデンCの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 準グランプリ コンテストガーデンBLayered Beauty レイヤード・ビューティ コンテストガーデンB 季節の変化 11月上旬のコンテストガーデンB 「Layered Beauty レイヤード・ビューティ 」 審査員講評一年中見どころの絶えないガーデンで、スタートから全力投球でのパフォーマンスに感服させられました。特に春、夏は、植物の色や質感の重厚なレイヤーが圧巻の美しさを作り出していました。確かな技術のもと引き出された多種の植物のパフォーマンスを間近で見ることができ、プロのガーデナーにとっても、今年のような酷暑にどの植物が効果的に、美しく、サスナブルに生きていけるのかを学ばせてくれる素晴らしいチャンスとなりました。思わず写真を撮りたくなる風景が四季折々に作られ、人々を惹きつける“植物の力”を再認識できるガーデンであったと感じます。 ⚫︎準グランプリを受賞したコンテストガーデンBの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 審査員特別賞 コンテストガーデンAChanging Park Garden ~変わりゆく時・四季・時代とともに~ コンテストガーデンA 季節の変化 11月上旬のコンテストガーデンA 「Changing Park Garden ~変わりゆく時・四季・時代とともに~」 審査員講評エントランスを飾るに相応しい、華やかなガーデンでした。色・質感がバリエーションに富んでいて、園路の際いっぱいまで活用した伸びやかな造形が公園の景色に調和すると共に、他にはない個性となっていました。慣れない東京の環境、遠方からの参加という厳しい条件の中で手入れのタイミングを逃してしまった時期も見うけられましたが、ローメンテナンスのもと最終審査の頃にはしっかりと再生させた手腕も見事で、秋には大きく育った宿根草の魅力や存在感が抜きん出ていました。年間を通じて、宿根草の豊かな表情の変化を見せてくれました。 ⚫︎コンテストガーデンAの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 入賞 コンテストガーデン DTOKYO NEO TROPIC トウキョウ ネオ トロピック コンテストガーデンD 季節の変化 11月上旬のコンテストガーデンD「TOKYO NEO TROPIC トウキョウ ネオ トロピック」 審査員講評明確なコンセプトのもと、他には無い珍しい植物を存分に満喫する楽しみを来園者に提供してくれました。熱帯植物の彫刻的な美しさが、高低差のある植栽配置やレイズドベッドへの寄せ植えの手法でより引き立ち、ディテールを鑑賞する楽しさや芸術性を感じながらガーデンを見ることができます。バイオネストの活用をはじめ年間を通じてのローメンテナンス、また、熱帯植物を公園のガーデンに取り入れるという実験的な視点で挑んだ点も評価が高く、今後、気候変動への対応が益々求められる中で、植栽デザインの一つの解答になり得ると感じています。 ⚫︎コンテストガーデンDの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 入賞 コンテストガーデン EHARAJUKU 球ガーデン コンテストガーデンE 季節の変化 11月上旬のコンテストガーデンE 「HARAJUKU 球ガーデン」 審査員講評タイトル通り、それぞれの季節に浮き上がる球状の花・植物が魅力的な、非常にビジュアルなガーデンでした。色調が統一された植栽は可愛らしさとシックさを両立しており、洗練されたお洒落さと、オリンピック記念宿舎を背景にした際のフォトジェニックさが特に際立ち、HARAJUKUという場所にマッチしています。ディテールにセンスの光る植栽デザインが垣間見えると共に、一般の庭づくりでも参考になる部分が多く見られた点も来園者に喜ばれたと評価します。デザイナーの世界観が十分に表現され、その温かな想いや愛情が伝わってくるガーデンでした。 ⚫︎コンテストガーデンEの月々の変化は、こちらからご覧いただけます。 Pick up 月々の植物 11月の植物 左から/サルビア‘アメジストリップ’(Aエリア)/ノコンギク‘夕映’(Bエリア)/アネモネ(シュウメイギク)‘パミナ’(Bエリア)/リアトリス‘フロリスタンホワイト’のシードヘッド(Cエリア) 左から/リアトリス・スカリオサ ‘アルバ’のシードヘッド(Cエリア) /パイナップルサングリア(Dエリア) /コレオプシス( Dエリア) /クジャクアスター(Dエリア) 10月の植物 左から/ペルシカリア(Aエリア)/ユーパトリウム‘羽衣’(羽衣フジバカマ)(Bエリア)/カラミンサ・ネペトイデス(Cエリア)/パンパスグラス‘ゴールデン・ゴブリン’(Dエリア) 左から/アスター・ラテリフローラス 'レディ・イン・ブラック’(Dエリア)/サルビア・アズレア(Eエリア) /カカリア( Eエリア) /アネモネ‘アンドレア・アトキンソン’( モデルガーデン) 9月の植物 左から/ミューレンベルギア・カピラリス(Aエリア)/パトリニア・プンクティフローラ(Bエリア)/アスター’アンベラータス’(Bエリア)/ガイラルディア‘グレープセンセーション’(Cエリア) 左から/ペニセタム’JS ジョメニク’(Cエリア)/ハナシキブ ‘ヒントオブゴールド’(Dエリア) /アスター’ジョリージャンパー’( Eエリア) /フロックス’オールドブルー’( モデルガーデン) 8月の植物 左から/ペニセタム‘テールフェザー’(Aエリア)/ヘレニウム’レッドシェード’(Aエリア)/バーノニア・ファスキクラータ(Bエリア)/ユーパトリウム‘レッドドワーフ’(Bエリア) 左から/リアトリス・スカリオサ ‘アルバ’(Cエリア)/ルドベキア・サブトメントーサ‘ヘンリーアイラーズ’(Dエリア) /アリウム’サマービューティ’(Eエリア) /アネモネ・トメントーサ(モデルガーデン) 7月の植物 左から/フロックス‘フジヤマ’(Aエリア)/ヒオウギ‘ゴーンウィズザウィンド’(Bエリア)/アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’(Bエリア)/エキナセア‘バージン’(Cエリア) 左から/カンナ(Dエリア)/アメリカフヨウ(Dエリア)/エキノプス‘プラチナムブルー’( Eエリア) /ヘリオプシス’ブリーディングハーツ’ (Eエリア) 6月の植物 左から/サルビア・ウルギノーサ(Aエリア)/エキナセア‘ラズベリートリュフ’(Aエリア)/アキレア‘ウォルターフンク’(Bエリア)/フロックス‘ブライトアイズ’(Bエリア) 左から/リアトリス‘コボルト’(Cエリア)/ラティビタ ‘レッドミジェット’(Cエリア)/ポピーマロウ(Dエリア)/ポンポン咲きダリア( Eエリア) 5月の植物 左から/エレムルス‘ロマンス’(Aエリア)/クニフォフィア・シトリナ(Aエリア)/ダウクス・カロタ‘ダラ’(Bエリア)/クラスペディア・グロボーサ(Bエリア) 左から/エリンジウム‘ブルーグリッター’(Cエリア)/リクニス・コロナリア(Dエリア)/ホルデューム・ジュバタム(Eエリア)/カンパニュラ‘サマータイムブルース’(モデルガーデン) 4月の植物 左から/ユーフォルビア・ウルフェニー(Aエリア)/フリチラリア・エルウェシー(Bエリア)/ラナンキュラス・ラックス‘アリアドネ’(Bエリア)/アジュガ'チョコチップ’(Cエリア) 左から/フロックス・ピロサ(Dエリア)/エリゲロン・カルビンスキアヌス(Dエリア)/アリウム・シルバースプリング(Eエリア)/アリム‘パープル・レイン’(モデルガーデン) 3月の植物 左から/アネモネ・デカン(Aエリア)/スイセン 'ペーパーホワイト’(Bエリア)/フリチラリア‘ラッデアナ’(Bエリア)/イベリス(Cエリア) 左から/サルビア・ネモローサ(Dエリア)/ベロニカ‘オックスフォードブルー’(Eエリア)/イフェイオン‘アルバートキャスティロ’(モデルガーデン)/シラー・シビリカ(モデルガーデン) 2月の植物 左から/スイセン‘ティタティタ’(モデルガーデン)/アリウム 'シルバースプリング’(Aエリア)/ユーフォルビア ウルフェニー(Aエリア)/カレックス テヌイクルミス(Bエリア) 左から/アジュガ レプタンス(Cエリア)/リナリア プルプレア 'アルバ' (Cエリア)/ガウラ リンドヘイメリ ’クールブリーズ'(Dエリア)/アリウム ‘サマードラマー’(Eエリア) 1月の植物 左から/アネモネ(エントランス花壇)/パンパスグラス‘タイニーパンパ’(エントランス花壇)/スティパ・イチュー(Aエリア)/苗から植え付けたアリウム‘サマードラマー’(Bエリア) 左から/レモンバームやオレガノ'ヘレンハウゼン’、 'ノートンゴールド’など(Cエリア)/ユーフォルビア‘ブラックバード’(Dエリア)/エルサレムセージ(Dエリア)/ニューサイラン(Eエリア) 全国から選ばれた5人のガーデンコンセプト 「持続可能なロングライフ・ローメンテナンス」をテーマに、各ガーデナーが提案するガーデンコンセプトは、5人5様。それぞれが目指す庭のコンセプトや図面、植物リストの一部をご紹介します(応募時に提出された創作意図や植物リストを抜粋してご紹介)。 コンテストガーデンA【審査員特別賞】Changing Park Garden ~変わりゆく時・四季・時代とともに~ 【作品のテーマ・創作意図】時間や四季の移ろいと共にドラマチックに展開する宿根草ガーデンは見る人の心を豊かにします。たとえば秋の夕景は、光が植物たちの魅力をいっそう引き出してくれる、もっとも美しい時間でしょう。公園の緑花空間は、来園者に感動や癒やしを提供する場所であり、さらに植物を通してコミュニティが生まれ「共感」の時代へと変化しつつあります。人々に愛される場所であることが真の持続可能なガーデンとなるのではないでしょうか。さまざまな意味で変化する公園のガーデン≪Changing Park Garden≫をテーマに、◆Chillax (チラックス) ◆Community(コミュニティ) ◆Challenge(チャレンジ)3つの「C」をコンセプトにガーデンデザインを計画します。【主な植物リスト】サルビアネモローサ カラドンナ/ユーフォルビア ウルフェニー/エキナセア パープレア/アガスターシェ ゴールデンジュビリー/ネペタ シックスヒルズジャイアント/ヘリオプシス ブリーディングハーツ/サルビア ミスティックスパイヤーズ/アジュガ ディキシーチップ/ペニセタム ビロサム/カレックス フェニックスグリーン/ペニセタム テールフェザー/アリウム イエローファンタジー など 合計84種 コンテストガーデンA 月々の変化 【11月中旬】 ペニセタム‘テールフェザー’やミューレンベルギア・カピラリス、ペニセタム‘ビロサム’などのさまざまなグラスが隣り合う植物を透かすように穂を広げる間では、先月から引き続きサルビア‘ミスティック・スパイヤーズ’の青花やエキナセア‘ラズベリートリュフ’の鮮やかなピンクがアクセントになっています。園路にはみ出すほど匍匐して広がる黄金葉のオレガノ‘マルゲリータ’や銀葉のエリムス・アレナリウスなど葉色のバリエーションが楽しめるうえ、11月になって、サルビア‘アメジストリップ’やカンパニュラ・ラプンクロイデス(下中央)が咲き始めて彩りが一層増しています。 【10月下旬】 先月から穂を伸ばし始めたさまざまなグラス類が穂を広げ、花壇にリズミカルな景色を作っています。6月から休むことなく咲き続けているサルビア‘ミスティック・スパイヤーズ’がさらに花を増やし、存在感がさらにアップ。低い位置では、エキナセア‘ラズベリートリュフ’の鮮やかなピンク(下中央)や、アキレア‘ラブパレード’、ペルシカリア、シルフィウム・モーリー(右下)などがカラフルな花色のアクセントを添えています。 【9月下旬】 高温が続き、雨量も少ない過酷な夏を超え、6月から引き続き咲き続けているサルビア‘ミスティック・スパイヤーズ’が未だ健在。エキナセア‘ラズベリートリュフ’の鮮やかなピンクに加え、アキレア‘ラブパレード’(右下)やクニフォフィア・シトリナが再び開花。カラマグロスティス・ブラキトリカやペニセタム・アロペクロイデス(チカラシバ)など、さまざまなグラス類が穂をあげてガーデンのアクセントになっています。 【8月中旬】 7月から穂が伸び始めたペニセタム‘テールフェザー’(上写真右側)が大株に育ち存在感を発揮しています。6月から引き続き咲き続けているサルビア‘ミスティック・スパイヤーズ’(下左)やバーベナ‘バンプトン’に加え、8月は、ヘレニウム’レッドシェード’(下中)が花束のようにダイナミックに咲き、夏に切り戻したベロニカ‘ファーストキス’(下右)が再び咲き始めています。 【7月中旬】 各株が大きくなり、混ざり合って茂る真夏。6月から引き続き咲き続けるスカビオサ・オクロレウカやサルビア‘ミスティック・スパイヤーズ’などに加え、メリカ・シリアタ(写真下左)スティパ・イチュー(写真下中)、ペニセタム‘テールフェザー’(写真下右)など、さまざまなグラスの穂が伸びていて、花壇に動きが感じられます。 【6月中旬】 植物の成長が進み、一つずつの植物のボリュームが増して緑の量も増えました。6月に開花が始まったエキナセアの鮮やかなピンク色の花にペニセタム・ピロサムの穂が寄り添っていたり、5月に白花を咲かせていたバレリアナ・オフィシナリスの花がらが雲のように優しい景色を作っています。サルビアの青花、ペニセタム・テールフェザーなどが丈高い植物が背景でスクリーンのようになり、アリウムが宙に浮かんでアクセントになっています。 【5月中旬】 5月になると一気に成長が進み、まったく地面が見えないほど、どの植物もボリュームアップ。4月中旬に花壇のフレームからはみ出すほど成長していたスタキス ビザンティナ(右下)は、花穂を立ち上げ、周囲の植物と色の対比を見せています。花壇の後方では、白花のバレリアナ・オフィシナリスやエレムルスが背丈ほどに伸び、景色が立体的になりました。 【4月中旬】 3月に咲き始めたアネモネ・デカンは、まだまだ花数を増やし、他の植物も2倍、3倍と草丈が高くボリュームが増してきました。スタキス・ビザンティナ(英名ラムズイヤー、右下)は、花壇のフレームからはみ出るほどに葉を伸ばし、アリウムにはつぼみがついています。葉の形状の違いや草丈の差が出て、花壇が立体的になってきました。 【3月中旬】 アネモネ・デカンの葉が増え、白・紫・赤・ピンクとカラフルに花が咲き出しています。また、原種チューリップ‘ポリクロマ’も開花中。スタキス・ビザンティナやアリウム 'シルバースプリング’、ユーフォルビア ウルフェニーも存在感を増し、緑の量が日に日に増えています。 【2月中旬】 斑入り葉のカレックス・オシメンシスや黄金葉のカレックス‘ジェネキーが日に輝くなか、サルビア・ネモローサ‘カラドンナ’やスカビオサ・オクロレウカ、スタキス・ビザンティナなどが地面に張り付くように葉を広げています。 【1月中旬】 コンテストガーデンB【準グランプリ】Layered Beauty レイヤード・ビューティ 【作品のテーマ・創作意図】季節を感じる宿根草ガーデンを作るということは、さまざまなレイヤーを組み合わせて、美しさを構築するということだと考えています。<植物のレイヤー・時間差のレイヤー・バランスのレイヤー・地下部のレイヤー>これまで、多くのデザイナーやガーデナーとの交流の中で、どの植物がガーデンの中でどんな役割を果たしているか、また、どんな植物が耐久性があるのか、今後どういった植物を提案したらよいかなどについて蓄積してきた引き出しとアイデアがあり、それらを、今回提案できればと考えました。デザインにおいては、感性だけではなく、植物生産者としてサステナブルで、かつ美しく見える植栽の構築について理詰めでデザインする(=一般化できる)手法を取り入れ、その過程をオープンにできればと思っています。 【主な植物リスト】 <グラス類>パニカム チョコラータ/カラマグロスティス ブラキトリカ/ミスカンサス モーニングライト/ルズラ ニベア/スキザクリウム スモークシグナルなど <宿根草(高)>ユーパトリウム レッドドワーフ/パトリニア プンクティフローラ/ヒオウギ ゴーンウィズザウィンド/フィリペンデュラ ベヌスタなど <宿根草(中)>エキナセア(オレンジパッション、マグナス スーペリア他)/ヘリオプシス ブリーディングハーツ/アムソニア ストームクラウドなど <宿根草(低)>ゲウム マイタイ/アリウム(サマービューティ、イザベル、メデューサ)/ベロニカウォーターペリーブルー/カラミンサ ブルークラウドなど <日本由来の植物>イカリソウ(4-5種)/ヤマトラノオ/ノコンギク夕映/ユーパトリウム羽衣/シュウメイギク パミナなど <一年草・二年草>ラークスパー/アンスリスクス/アンミ/フロックス クリームブリュレ/タゲテス ミヌタ/クラスペディアなど <球根類>フリチラリア(ラッデアナ、ペルシカ、エルウェシー)/シラー ミスクトケンコアナ/クロッカス プリンスクラウス/ミニチューリップなど 合計142種 コンテストガーデンB 月々の変化 【11月中旬】 見上げるほど丈高く、まるで雲のようにピンク色の小花をふんわりと咲かせているユーパトリウム‘羽衣’(羽衣フジバカマ)の株元では、ノコンギク‘夕映’が紫の花を多数咲かせていたり、低い位置では茶色く色づくグラスとエキナセア‘ミニベル’がコラボレーションしているなど、花壇のあちこちでシックなカラーコーディネイトが楽しめます。ルドベキア‘ブラックジャックゴールド’のシードヘッド(花がら)が黒く残って宙に浮かび、花壇のアクセントとしても役立っています。 【10月下旬】 先月から次々と穂を伸ばしているグラス類がスモークのように穂を広げている効果で、花壇全体がやさしい印象です。人の背丈を越すほど大きくなったユーパトリウム‘羽衣’(羽衣フジバカマ)には小さな花を咲かせて赤みを添えています。ピンクの花を咲かせていたガイラルディア‘グレープセンセーション’は花びらが落ちた後、丸い花芯が残って道沿いのアクセントになっています。アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’やヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’が引き続き咲くなか、アスター・ラテリフローラス 'レディ・イン・ブラック'やノコンギク‘夕映’など秋を感じさせる花が咲いています。 【9月下旬】 園路沿いに低く茂るグラスの間からガイラルディア‘グレープセンセーション’(左下)などが再び花を増やし、アガスターシェ‘ブルーフォーチュン’やヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’も引き続きガーデンの彩りに貢献。高低差のあるさまざまなグラスも存在感を増すなか、パトリニア・プンクティフローラ(上写真中央)やユーパトリウム‘羽衣’(羽衣フジバカマ)が人の背丈を越すほど大きくなり、デザインの変化となっています。 【8月中旬】 8月になると園路に沿ったの花壇の縁を隠すほどグラスの穂がふわふわと茂り、まるでスモークのよう。8月に咲き始めた多数のアリウム‘メデューサズヘア’(下左)やヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’(下右)、ガイラルディア‘グレープセンセーション’などが穂と混ざり合い、ユーモラスな景色が見られます。7月から涼しけなブルーの花が継続して咲いているアガスターシェ‘ブルーフォーチュン’は、突然の強い雨風や猛暑にも耐えて彩りに貢献しています。 【7月中旬】 5〜6月から咲き続けているダウクス・カロタ‘ダラ’やフロックス‘ブライトアイズ’、エキナセア‘ミニベル’に加え、7月は、ヘリオプシス‘ブリーディングハーツ’やアガスターシェ‘ブルーフォーチュン’が花を増やしています。花壇の中には、秋に向けてぐんぐん成長するものや、これから咲く蕾もスタンバイしています。 【6月中旬】 6月になると、エキナセア‘イブニンググロー’や‘ブルーベリーチーズケーキ’、アキレア‘アプリコットデライト’や‘ウォルターフンク’などの暖色系の花に主役がバトンタッチして、さまざまな色彩が楽しめます。間に茂る銅葉のアンスリスクス ‘レイヴンズウィング’によって花色が際立って見えたり(左下)、ゲラニウムの黄金色の葉にエキナセアが引き立って見える(右下)など、植物同士のコラボレーションが楽しめます。 【5月中旬】 4月中旬からアクセントになっていた大小さまざまなアリウムは、次の開花を迎えるアリウムとバトンタッチしながら、咲き終わってボール状の花がらのまま残っているなか、エリンジウム(右下)やクラスペディア・グロボーサなど、新しい花色が多数組み合わさって、場所ごとに異なるカラーハーモニーが楽しめます。花から種になるもの、蕾から花を咲かせるもの、いろいろな植物の姿が一緒に見られます。 【4月中旬】 12種も植えられていたチューリップは3月から順次咲き始めて、4月中旬までバトンタッチするように咲き継ぎました。4月中旬は、ラナンキュラス・ラックスやカマシア、アリウムの彩りが加わって一層華やかに。花壇の土を盛り上げた効果で、奥に咲く花の様子もよく見えます。 【3月中旬】 花壇手前には、ピンクやブルー、白のムスカリが次々と開花し、花壇中央では、スイセン‘ペーパーホワイト’が開花。黄花のミニチューリップ・シルベストリスも花束のように咲いています。アリウム・ギガンテウムは、葉をダイナミックに繁らせ、地面を隠すほどに成長。暖かい日が続いて、多くの植物が目覚めています。 【2月中旬】 苗から植え付けたアリウム‘サマードラマー’が前月よりも2倍の高さまで伸び、スイセン‘ペーパーホワイト’(左下写真中央)はつぼみが膨らんでいます。オーニソガラムやチューリップ、クロッカスなど、あちこちで芽吹きが確認できます。ふわふわと茶色の細葉を伸ばすのは、カレックス・テヌイクルミス。 【1月中旬】 コンテストガーデンC【グランプリ】Garden Sensuous ガーデン センシュアス 【作品のテーマ・創作意図】私たちの感覚に訴えかけるガーデン、Garden Sensuous。日本の古の歌人・俳人たちは、森羅万象、感情の機微や情緒、美しい風景を歌に詠んできました。その美しさへの眼差しは自然環境への知見を踏まえた、高度に知的で文化的なものであったと考えられます。そしていま、これからの環境について考える場合、サステナブルやエシカルであることは、無視できないトピックです。サステナブルなガーデンであること、エシカルなガーデンであることが、人の感覚に訴えかける条件の一つであると考えます。また私たちの感覚に訴える美しさとはそういったものであって欲しい、という願いを込めてこの庭をデザインしました。【主な植物リスト】<Spring>アスチルベ/アガパンサス/ガウラ/カラミンサ<Summer>エキナセア/ヘレニウム/ルドベキア/ガイラルディア/アガスターシェ/ヘリオプシス/バーベナ/リアトリス<Autumn>オミナエシ/オトコエシ/フジバカマ<Ground cover>オレガノ/レモンバーム/ワイルドストロベリー<Grass 他>イトススキ/ペニセタム/フェンネル など 合計65種 コンテストガーデンC 月々の変化 【11月中旬】 カラミンサやガウラの白花と、イトススキやペニセタムの穂が花壇全体に白くエアリーな雰囲気を作るなか、アガスターシェ’ゴールデンジュビリー’と地際を覆うワイルドストロベリー 'ゴールデンアレキサンドリア’の黄金葉が明るさを添えています。その中で黒くシックなアクセントになっているのは、リアトリス‘フロリスタンホワイト’やリアトリス・スカリオサ ‘アルバ’の長い花穂のシードヘッド(花がら)です。昨年12月の作庭時に設置されたバグ・ホテルは約一年の風雨を受けて味わいが出ています。 【10月下旬】 これまで大きく茂っていた株は、剪定などの手入れで風通しよく整理され、9月よりも全体にボリュームが抑えられ、すっきりとした印象です。先月まで鮮やかに咲いていたエキナセアは花びらを落としたあと花芯が残り、リアトリス‘フロリスタンホワイト’の長い花穂のシードヘッドが9月よりも枯れ色になって、花壇に馴染んでいます。7月から咲き続けているカラミンサ・ネペトイデスは、さらに花穂を伸ばしてスモークのようにふわふわと優しい雰囲気を作っています。イトススキやオミナエシ、フジバカマといった日本で親しみのある植物も混ざり咲いています。 【9月下旬】 過酷な夏を耐えた植物たちは、隣り合うもの同士が支え合っているかのようにこんもり茂り、花壇全体に咲き続けている花が多数あります。手前では、ガイラルディア‘グレープセンセーション’が低く咲き、ペニセタム’JS ジョメニク’も穂を立ち上げています。花壇の中ほどでは、7月から引き続きカラミンサ・ネペトイデスやエキナセアが咲き、奥では丈高くバーベナ・ボナリエンシスやオミナエシが彩りに。夏の間、茂みに隠れていたバグ・ホテルが再び見えるようになり、その様子から月日の経過が感じられます。 【8月中旬】 7月から咲き続けているバーベナ・ボナリエンシスやオミナエシ、カラミンサ・ネペトイデス、エキナセアが彩る中で、花が終わったリアトリス‘フロリスタンホワイト’の長い花穂やエキナセアのシードヘッドがアクセントになっています。3月にシードボール(種団子)を播いて育ったアカジソの銅葉(上写真内右)やレモンバーム‘ゴールドリーフ’のライムグリーンの葉(下右)もガーデンの彩りに一役買っています。 【7月中旬】 5月までは場所が確認できていた4つのバグホテル(虫たちの住処になる場所)が隠れるほど各植物のボリュームが一層増して、花の彩りも豊かです。カラミンサ・ネペトイデスのような細かな花に対比して、エキナセアやガイラルディアの花が引き立ち、リアトリスやアガスターシェのような穂状の花もアクセントになっています。花壇の後方では、バーベナ・ボナリエンシスやオミナエシが丈高く開花。 【6月中旬】 各植物のボリュームが一段と増して、植物の高低差がリズミカルです。花々の中で昆虫が休んでいる様子が見られたり、花穂を伸ばす植物は風に揺れ、ワイルドストロベリーには赤い果実がなっています。この庭のテーマである「生き物たちの住処になる」ことや、風による動きや花や緑の香りを感じられたり、食べられるものも育つという「五感を刺激するガーデン」を花壇の中で実際に見ることができます。 【5月中旬】 地面がほぼ隠れるほど、どの植物も葉を増やし、ガウラやエキナセア・パラドクサ、アスチルベ、リナリアなどが開花して、花の彩りも増えています。花壇の後方では、グラスの穂が風に揺れたり、背丈より高く伸びたバーベナ・ボナリエンシスが紫の花を咲かせ、植物の高低差にリズムを感じます。2月下旬に設置されたバグホテル(虫たちの住処になる場所)が隠れるほど、周囲の植物がよく成長しています。 【4月中旬】 それぞれの植物が勢いよく成長し、イベリスの白い花とオレガノ 'ノートンゴールド’などの黄色い葉が明るいアクセントになっています。カラス除けとして刺さされていた枝は、丈高く育ってきた植物の支えに転用し、花壇の中で馴染んでいます。 【3月中旬】 2月下旬に設置されたバグホテル(虫たちの住み家になる場所)の周囲に植わるリナリア・プルプレア 'アルバ' がぐんぐん成長し、窪んだ低地では、アスチルベが存在感を出してきました。築山には、イベリスの白花やシラーの青花が彩りに。黄金葉のワイルドストロベリー 'ゴールデンアレキサンドリア’ にも花が見られます。 【2月中旬】 銅葉のガウラ 'フェアリーズソング’や黄金葉のワイルドストロベリー 'ゴールデンアレキサンドリア’、緑葉のシャスターデージー ’スノードリフト’が低く、地表に彩りを添えています。植物を守るように刺さる枝は、カラス除け。 【1月中旬】 コンテストガーデンD【入賞】TOKYO NEO TROPIC トウキョウ ネオ トロピック 【作品のテーマ・創作意図】地球温暖化と共に東京で越冬するようになった亜熱帯植物を取り入れ、花壇をつくります。また「循環型再生管理」を目指し、維持管理の過程で発生する植物の発生材は現場で更新、循環するガーデンをつくります。亜熱帯植物が力強く越冬する姿から緑のうるおいとあわせ、環境への意識「地球温暖化への警鐘」のきっかけをつくります。そして、地球温暖化による気温上昇、豪雨などの異常気象が多発するなかで、改めて「植物」や「土」の環境改善の役割を見つめ直し、緑の大切さを発信します。【主な植物リスト】<PURPLE >アンドロポゴン‘ブラックホース’ /アスター‘レディーインブラック’ /リグラリア‘ミッドナイトレディ’/アルストロメリア‘インディアンサマー’/エンセテ‘マウエリー’/ユーホルビア ‘ブラックバード’/カレックス ‘プレーリーファイヤー’/リシマキア ‘ファイヤークラッカー’/パニカム ‘チョコラータ’/ニューサイラン ‘ピンクストライプ’/トラディスカンチア ‘ムラサキゴテン’/ダリア<SILVER>ルドベキア ‘マキシマ’/リクニス‘コロナリア’/アガベ ‘姫滝の白糸’/アガベ ‘ボッテリー’/ユーホルビア/スティパ/エルサレムセージ/パンパスグラス<GREEN>ユーパトリウム‘グリーンフェザー’/トリトマ ‘アイスクイーン’/アロエベラ/ナチシダ/アガパンサス/ストレリチア/ガウラ ‘クールブリーズ’/アスパラガス ‘マコワニー’/アガスターシェ ‘ブラックアダー’<YELLOW>ワイルドストロベリー ‘ゴールデン アレキサンドリア’/ジャスミン ‘フィオナサンライズ’/カンナ ‘ベンガルタイガー’<GROUND COVER>クリーピングタイム/エリゲロン/スイセン‘チタテート’/チューリップ‘タルダ’/ハナニラ/アリウム ‘サマービューティ’/ゼフィランサス/イベリス 合計40種 コンテストガーデンD 月々の変化 【11月中旬】 5月から存在感を出していた2株のエンセテは、遠くからも存在が分かるほど一段と大株に育ち、来園者を驚かせています。アロエやエルサレムセージの銀葉、ユーフォルビア‘ブラックバード’の銅葉、カンナなどの黄金葉など、さまざまなカラーリーフが楽しめるなか、11月中旬になってもダリアやアルストロメリア、ルドベキア、エキナセア、パイナップルサングリア、コレオプシスなど多くの種類が引き続き咲き続けていて、彩り豊かです。ウィービングレイズドベッドには、ワイルドストロベリーとパッションフルーツが実をつけています。 【10月下旬】 夏に存在感があったガウラやルドベキアの花が減ってきたことと比例して、ダリアが花数を増やし、パンパスグラスやパニカム’チョコラータ’などのグラスの穂が伸びて、景色が変わってきました。紫葉のトラディスカンチアが茂るレイズドベットのそばでは、アスター・ラテリフローラス 'レディ・イン・ブラック'が無数に花を咲かせ、背景ではユーパトリウム・カピリフォリウムがふわふわと茂って、さまざまな葉色のコラボレーションも見られます。また、隣のレイズドベットに植るストレリチア・レギナエ 'ゴールドクレスト'の花芽が再び上がってきました(丸囲み内)。6月から咲き続けているアルストロメリア‘インディアンサマー’は、引き続き開花が衰えていません。 【9月下旬】 5月から存在感を出していた2株のエンセテは、カンナを越すほど丈高く成長し、花壇により一層立体感を与えています。ストレリチアが植わるウィーピングレイズドベッドで茂っていたイポメアやベンガルヤハズカズラは、つるが整理されてフレームが見えるようになりました。引き続き咲き続けている白花のガウラと紫葉のトラディスカンチア、イポメアのライムグリーンの葉色のコントラストが鮮やかです。6月から夏中咲き続けてきたアルストロメリア‘インディアンサマー’に加え、各所でダリアも次々咲き始めています。 【8月中旬】 5〜6月から咲いているガウラやアガスターシェ、アルストロメリアに加え、7月に咲き始めたルドベキアが引き続き彩りになっている8月。パンパスグラスも大きな穂を立ち上げて、さらにガーデンに立体感が出てきました。ストレリチアが植わるウィーピングレイズドベッドでは、イポメアやベンガルヤハズカズラがフレームを覆い隠すほど旺盛に葉を増やして緑豊かです。 【7月中旬】 スティパの穂が風に揺れ、5〜6月から咲いているガウラやアガスターシェ、ポピーマロウ、トリトマ、アルストロメリアが引き続き咲き続けるなか、4種のルドベキアやダリアとクロコスミアの彩りも加わって鮮やかです。丸く剪定枝を積み重ね、落ち葉などを入れて堆肥を作るバイオネストの縁に、隣から伸びてきたベンガルヤハズカズラが絡んで花壇に馴染んでいます。 【6月中旬】 各植物がより一層茂ったことで、銀色がかる葉、青みがかる葉、銅色の葉など、葉色や草姿の違いが際立ってわかるようになってきました。6月は、トリトマやアルストロメリア‘インディアンサマー’のオレンジ色の花が鮮やかに引き立っています。「Look at me!」と記された札が立つウィービングレイズドベッドには、ワイルドストロベリーの茂みの中でパッションフルーツが丸い実をつけています。夏の日差しを受けて、花壇は日に日にトロピカルな雰囲気が増しています。 【5月中旬】 花壇の中に作られた9つある「ウィービングレイズドベッド」の中の植物も、枠からはみ出るほど成長し、レイズドベッドごとに異なる景色が楽しめます。植えつけ時期の3月は、とても小さかったエンセテ(左下中央)は、赤みを帯びた緑葉を大きく広げて存在感が日に日に増し、目を惹いています。尖った葉、ふわふわ茂る葉、這って広がる緑、ワイルドに育つさまざまな草姿の違いも注目のポイントです。 【4月中旬】 スイセンやチューリップは見頃を終え、桃色のフロックス・ピロサや青花のアジュガ・レプタンス、白花のイベリス・センペルビレンスが、花を増やし彩りを添えています。メシダ‘バーガンディレース’の葉の間に咲くのは、アネモネ・フルゲンス(右下)。マルバダケブキの間から丸いつぼみを伸ばしているのはアリウム・ニグラム(左下)。 【3月中旬】 これまで姿が見えていなかったスイセン‘ティタティタ’があちこちで芽吹き、ワイルドストロベリーやアガベ、エルサレムセージなど、周囲の植物たちと面白いコラボレーションを見せています。自然素材を使った「ウィービングレイズドベッド」に植えられた植物は地面よりも高い位置にあるので、植物の様子が近くに感じられます。銀色や銅色、斑入りなど、いろんな葉色が楽しめます。 【2月中旬】 12月の植え付け時から地上部が残っているパンパスグラスやエルサレムセージ、ユーフォルビアが寒さに耐えているなか、レイズドベッドに植わる植物が少しずつ芽吹き始めています。 【1月中旬】 コンテストガーデンE【入賞】HARAJUKU 球ガーデン 【作品のテーマ・創作意図】初夏からのアリウム~秋のダリア を中心とした、球状の花の組み合わせでポップに楽しく魅せるガーデンです。アリウムはその形状が非常にユニークかつアート的で、原宿に集う人々のアンテナに触れる植物ではないでしょうか。ほかにも、エリンジウムやヘレニウム‘オータムロリポップ’、モナルダ、ニゲラの花後の球果など、観て楽しい植物で構成しました。また、秋のダリアはデスカンプシア‘ゴールドダウ’との合わせで、一見存在が浮いて見えてしまいがちなダリアを、幻想的に他の植物たちと融合させます。「球ガーデン」のネーミングは、某超有名ガーデンを原宿ならではの遊び心でもじらせていただきました。【主な植物リスト】アリウム/ダリア/エキナセア/モナルダ/ワレモコウ/ゲウム リバレ/ムスカリ/ニゲラ/カカリア/バーノニア/エリンジウム/ディアネラ/ユーパトリウム チョコレート/ヘレニウム オータムロリポップ/パニカム/ニューサイラン/カレックス/デスカンプシア ゴールドタウなど 合計88種 コンテストガーデンE 月々の変化 【11月中旬】 10月から存在感を増しているミューレンベルギア・カピラリスなどのグラス類がより一層スモークのように穂を広げ、晩秋の日差しに輝いています。10月から咲き始めていたカカリアがさらに花数を増やし、ピンクとオレンジの花が宙を浮くように咲いていたり、株を覆うように紫花が多数咲くクジャクアスターが見学者の目を惹いています。花壇の高い位置では、ユーパトリウム‘羽衣’(羽衣フジバカマ)が開花し、花が終わったバーノニア(右下)の茎先は、丸い綿毛をつけています。 【10月下旬】 ミューレンベルギア・カピラリスやディスカンプシア‘ゴールドタウ’などのグラス類が煙のように穂を広げ、周囲に咲くアスターやガウラなどが透けて見えて幻想的な雰囲気が増してきました。花壇のタイトル「HARAJUKU 球ガーデン」を表現する球形の花として多数植えられていたダリアが次々と開花し、ガイラルディア‘グレープセンセーション’の球形の花芯も花壇の景色として貢献しています。今月咲き始めたサルビア・アズレアのブルーの花色が暖色系の花々を引き立てています。 【9月下旬】 この花壇のタイトル「HARAJUKU 球ガーデン」を春から初夏に表現してきた多数のアリウムから、真夏はエキノプスやサクシサ・プラテンシスにバトンタッチしていましたが、9月からはダリアが球形を表現する花として次々開花。秋にダリアが咲いたころ幻想的に調和する効果を狙って植えられた、ミューレンベルギア・カピラリスやディスカンプシア‘ゴールドタウ’などのグラス類が穂を広げ、アンティークカラーに変わってきているものもあります。 【8月中旬】 強い日差しを受けて輝くディスカンプシア‘ゴールドタウ’の穂が煙のように花壇全体に広がり、隣り合う植物の間を繋げています。穂に浮かび上がって見える球状花のエキノプス(右下)は、花後もガーデンのアクセントとして活躍。7月から咲き続けているオレンジ花のヘリオプシス’ブリーディングハーツ’やピンク花のガイラルディア‘グレープセンセーション’などが彩りになっているなか、サクシサ・プラテンシス(左下)が球状花として仲間入りしています。 【7月中旬】 6月から咲いているポンポンダリアやヘレニウム‘オータムロリポップ’、エキノプス‘プラチナムブルー’、スカビオサ・オクロレウカがさらに花数を増やす中、オレンジ花のヘリオプシス’ブリーディングハーツ’が咲き始めてさまざまな花色が楽しめます。株間から、ディスカンプシア‘ゴールドタウ’の穂が見え始め、次の季節へと成長を進めています。 【6月中旬】 5月は、アリウム・ギガンチウムやアリウム‘グレースフルビューティー’などが、この花壇のタイトル「HARAJUKU 球ガーデン」を表現していましたが、6月は、背丈を越すほどまで伸びたアリウム ‘サマードラマー’をはじめ、ポンポンダリアやヘレニウム‘オータムロリポップ’(下左)、エキノプス‘プラチナムブルー’(下中)、アリウム‘丹頂’(下右)などが球状花として花壇を彩り、にぎやかです。 【5月中旬】 花壇のタイトル「HARAJUKU 球ガーデン」を表現する球状の花の一つであるアリウムが5月上旬に多数開花。5月中旬になると残った丸い花がらが、ホルディウム・ジュパタムやスティパ‘エンジェルヘアー’などのグラス類の上に浮いているように見え、個性的な風景を作っています。花壇の後方では、背丈よりも大きく育ったバーベナ・ボナリエンシスと競うように丈高く伸びるアリウム ‘サマードラマー’の蕾がスタンバイ。球状の花の開花リレーが続きます。 【4月中旬】 さまざまなアリウムの葉の間をつなぐようにグラスの細葉が風に揺れるほど成長してきました。アリウムの中でいち早く、白花のアリウム・シルバースプリングが開花。緑の間にオレンジや黄色のゲウム・リバレやゲウム‘テキーラサンライズ’が咲いて華やかなアクセントになっています。 【3月中旬】 この庭の特徴となる玉のような花を咲かせる多品種のアリウムも存在感を出し、ディスカンプシア‘ゴールドタウ’やホルデウム ユバツムなどグラスも葉を増やしています。花壇の縁付近では、ベロニカ’オックスフォードブルー’の紫花やムスカリも次々開花中。いろんな植物がたくましく混ざり合って育つ様子が見られます。 【2月中旬】 アリウム‘サマードラマー’やアリウム‘シルバースプリング’が勢いよく伸び出し、切り戻されていたグラスのディスカンプシア‘ゴールドタウ’は細い葉を伸ばし始めています。地面に張り付いたように葉を残す緑のニゲラや赤い葉のペンステモン‘ハスカーレッド’が彩りを添えています。 【1月中旬】 第2回参加者決定&第1回入賞者によるオンライン座談会 「第2回 東京パークガーデンアワード 神代植物園」参加者決定! 代々木公園での第1回開催に続き、第2回のコンテストの舞台は、都立神代植物公園正門手前プロムナード[無料区域](調布市深大寺)。コンテストのテーマは「武蔵野の“くさはら”」です。9月1日締切までに応募された作品から、5名の入賞者が決定しました。第2回のコンテストの様子はこちら。 第1回東京パークガーデンアワードの入賞者によるオンライン座談会 「第1回 東京パークガーデンアワード 代々木公園」の入賞者5名が登壇。応募に向けた準備や植物の調達から造園、メンテナンスまで、現場の“生”の声が聞ける座談会が2023年8月10日(木)にオンラインで開催されました。アーカイブのご視聴はこちらから。 庭づくりの舞台裏記事も公開中! 5つのコンテストガーデンは、2022年12月に第1回目の作庭が行われました。その様子をご紹介する記事『【舞台裏レポ】「第1回 東京パークガーデンアワード」5つの庭づくり大公開』もご覧ください。
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埼玉県
素敵な発見がたくさん! 園芸ショップ探訪40 埼玉「ガーデンセンターさにべる」
お気に入りが見つかるはず!充実した苗売り場づくり 北西に連なる山々の稜線を背景に広がる田畑…その中に「ガーデンセンターさにべる(以下さにべる)」はあります。70台も収容できる駐車場には、毎日オープンからひっきりなしにお気に入りを入手するべく花好きな人々が出入りしています。 駐車場側の木戸口から入ると、ひな壇状に並べられた無数の花苗パレットがお出迎え。足を踏み入れた途端、一気にテンションが上がります。 フラワーパレットは白で統一、花の可憐さや透明感をアピールしています。なにげないこだわりがそこここに。 かつては生産農家や苗の仲卸を行っていた「さにべる」。ポットマム生産時代を合わせると50年以上の歴史があり、30年ほど前に社長の間室照雄さんが園芸店をスタートさせました。現在も野菜苗と花植えを生産直売していますが、ショップは娘で店長の間室みどりさんが柱となり、長年培った園芸のノウハウと、生産者・市場との横のつながりを大切にしつつ、時代に沿うよう進化させています。 みどりさんが仕入れる苗は、どれも新鮮。市場からの仕入れだけでなく信頼のできる生産者に依頼したものも多く、多種多様な植物を最高の状態で提供できるように力を注いでいます。「苗も雑貨も、お気に入りを見つけてもらいたいという思いで揃えています」とみどりさん。 寄せ植えやハンギングに力を入れている「さにべる」。特にパンジー・ビオラは、たくさんの生産者から取り寄せ、充実させている。 ぜひ参考にしたい!プロの寄せ植え・花合わせ 店内には寄せ植えの見本鉢が点在。植物それぞれの魅力を引き出し、お客様の花合わせの参考になるように、サンプルとして飾っています。 売り場にあった寄せ植えご紹介!手軽に楽しめる愛らしい寄せ植えを集めました 「寄せ植えを美しくまとめるのに大切なのは、色づかい」とみどりさん。じつは、みどりさんは「趣味の園芸」など、テレビや雑誌に登場する人気園芸家。カラリストの資格も持っており、常に美しく見せることを意識しながら、植物に向き合っているのだそう。「さにべる」での講習会だけでなく、出張講習会やトークショーなどでも活躍しています。 東京農業大学農学部を卒業後、デンマークで4年間切り花を学んだというみどりさん。デンマークでは「最近ヒュッゲという言葉がよく使われていますが、それは花を愛するデンマークの人々が大切にしている‘居心地のよい空間・時間’のこと。ここで、ヒュッゲな暮らしを提案できたらと思っています」。 ショップでは、寄せ植えの楽しみを提案しているみどりさんが考案した培養土が販売されています。大きな特徴は、水はけと保水性を兼ね備え、腐食酸を多く含んでいること。腐食酸(フルボ酸)は、根の働きを助けて根張りをよくし、成長につなげてくれる今注目の成分です。近いうちに、寄せ植え用の肥料も発売予定です。「季節で寄せ植えが終わったときに再利用しやすいよう、短期間効くものにしています」とみどりさん。 屋外の用土コーナーには、土壌改良材などあらゆるアイテムが揃っている。 花苗以外も見どころたくさん外売り場&店まわり 花苗売り場の奥には、樹木コーナーが展開されています。取材時の秋に最も充実していたのはオリーブ。そのほか、美しい葉や花が楽しめるものが揃っています。 ハーブなどの花壇が設けられているオリーブコーナー。 店まわりも魅力的なコーナーがたくさん。ウッドフェンスで囲まれた売り場はつる植物や多年草で覆われ、牧歌的な雰囲気が漂っています。こののどかな雰囲気が好きなファンも多いそう。 エントランスにはニセアカシアが心地よい緑陰を作っている。 フィカス・プミラが古いポストやフェンスに活着し、瑞々しいシーンに。 古い車輪のオーナメントのまわりをユーパトリウム‘チョコレート’が覆う、ノスタルジックな風景。 店内のミニガーデンは、季節の寄せ植えを飾ったり、撮影場所や子どもが遊ぶ場になったり……。自由な発想で使える空間。 屋内売り場もあらゆるアイテムが盛りだくさん! 大きなハウスを活用した屋内売り場では、季節の鉢花や観葉植物、多肉植物、園芸資材などがそれぞれ島を作っています。どれも選ぶのに困ってしまいそうな広さと品揃えです。 ドライな雰囲気たっぷりの多肉・サボテンコーナー。 秋は、あらゆる春咲きの球根植物が揃う。 照雄さんは生産農家でもあり、奥にあるハウスでは、照雄さんの作った野菜苗が大人気。最近は、農家さんも買いに来るほどの充実ぶりです。 ブロッコリーの苗(左)と隣のハウスのハーブコーナー(右)。 姉妹で作り上げる見やすく楽しい売り場 みどりさんとともに店を回しているのは、妹の2人・小枝子さんと夏実さん。それぞれに得意分野が異なる最強の仲間です。仲のよい3姉妹が一緒に考え、最近形にしたのが観葉植物コーナー。冬は加温してあたたかい空間となりますが、夏は冷房し、冷涼な気候を好む植物を管理するという特別なコーナーです。「人にとっても心地よい場所です」とみどりさん。無骨なビニールハウスの印象を払拭する、ウッディでクールなデザインが売り場の雰囲気をぐっと高めています。 コーナーの内部は、観葉植物や進物用のラン、サンセベリアなどがひしめき合い、植物園の温室さながらの雰囲気です。 シンプルなデザインの什器もおしゃれで、手書きのポップが楽しい雰囲気。 左/近年人気のビカクシダも、大きさ・種類さまざまに揃う。 右/インドアプランツ用アイテムも、一緒の場所に。 一角に設けられた雑貨コーナーも見応え十分。ここはおもに小枝子さんがディスプレイを任されている場所。かつてブライダルの世界で花を飾ることを専門にしていた能力を発揮する場となっています。 はしごでやんわりと空間を区切り、いくつものシーンを展開。あらゆるテイストのアイテムが自然になじみ、それぞれのエリアが美しく整えられています。 ボタニカルの額を背景に、花瓶などのガラス器が飾られている。 ドライフラワーのブーケやバスケットなど、温かみのあるアイテムが並ぶエリア。 テンションが上がる、おしゃれなガーデニングツールもたくさん。 「さにべる」では、照雄さんや農家が作った野菜をはじめ、地元の養蜂家の蜂蜜、コーヒーなども販売しています。新鮮な野菜は午前中に売り切れになるほどの人気。 この日販売されていたコシヒカリは、照雄さんが育てたお米。パッケージは小枝子さんがデザイン。 散策しながら見つけよう!充実の園芸資材 庭に彩りを添えるアイテムも充実した「さにべる」。広いハウス内のあちこちにアイテムごとの空間が作られ、選びやすく陳列されています。 庭の雰囲気を高めてくれる、アイアンフェンスコーナー。目隠ししたいときや、つる植物の誘引に最適。 テラコッタやグラスファイバー、ブリキなど、用途や置く場所に合わせて容器も選んで。 間室みどりさんイチオシの本格派ハンドフォーク 「こんなツールが欲しい!」というガーデナーたちのリクエストから生まれた、浅野木工所(新潟県・三条)の本格的なガーデンツール。一般的なサイズより爪の部分がやや長く、柄につながるネック部分も長さや角度など、微妙な設計が施され、使いやすいのが魅力。広い場所でもへこたれません。掘る、混ぜる、耕す、1つで何役もこなす頼れる庭仕事の相棒です。ぜひ店頭で実物をご覧ください。 上から、草取り、草取り鎌、ハンドフォーク、ハンドスコップ。ハンドフォークはSunny valeのロゴ入り。 新鮮な苗・多様なアイテムを取り揃え、地域の人々の憩いの場となっている「ガーデンセンターさにべる」。寄せ植えやハンギングバスケットなど、各種教室も充実し、気軽に花と触れあえます。「sunny:降り注ぐ光」「vale:谷」という意味を持つ「さにべる」、その名の通り、みんなの暮らしを明るく照らすスポットです。ぜひ訪れてみてください。アクセスはJR高崎線「鴻巣」駅から川越観光バス(東松山駅行き)で約10分、東武東上線 「東松山駅」から川越観光バス(鴻巣駅・免許センター行き)で約10分、どちらも「谷口」停留所下車・バス停から約300m。
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神奈川県
宿根草とグラスの美しいハーモニーで話題のガーデン「服部牧場」を訪ねる
初夏の服部牧場を訪ねて 左から時計回りに、クナウティア、ルドベキア・ゴールドスターム(黄花)、アスチルベ、ヘメロカリス・クリムゾンパイレーツ(中央赤花)、銅葉のニューサイラン、クナウティア・マケドニカ(赤い小花)、スティパ・テヌイッシマ、ヤブカンゾウ(ニューサイラン手前のオレンジの花)、バーベナ・ボナリエンシス(淡紫の背の高い植物)。 ガーデンストーリーで服部牧場をご紹介した最初の記事は、2020年1月に公開しました(前回記事はこちら)。ついこの間くらいに思っていたら、もう3年半の月日が経っていました。前回は、晩秋から初冬のグラスや宿根草の枯れ姿が中心でしたが、今回は今年2023年6月後半に訪ねた、さまざまな花が生き生きと咲き乱れる彩り美しい服部牧場のご紹介です。 左から、ヘメロカリス・ベラルゴシ(赤花)、アキレア(白)、ベルケア・パープレア(淡いピンクの花)、ダリア・サックルピコ(ヘメロカリス上のオレンジ)が左ボーダーの彩りに。小道奥で黄色く輝く葉は、ニセアカシアフリーシア、その左で丈高く茂るのはバーノニア。右手前では、バーベナ・ボナリエンシスが咲き、奥の銅葉のニューサイランの手前で、赤花のポンポン咲きダリア・サックルバーミリオンがアクセントに。 グラスがいい仕事をするガーデン 左下から時計回りに、スティパ・テヌイッシマ、フクシア・マジェラニカ(赤花で吊り下がった形状)、銅葉のニューサイラン、アメリカテマリシモツケ‘サマーワイン’(銅葉の木)、ホルディウム・ジュバタム(中央の生成り色のグラス)、ルドベキア・マキシマ(右上背の高い黄花)、フロックス‘レッドライディングフット’(赤ピンク花)、ヘメロカリス(桃色花)。 思い起こせば、3年前の僕は“グラスを多用したガーデン”こそが新しいガーデンの形だと信じ、夕陽に輝くグラスやシードヘッドの写真ばかり追い求めていました。グラスが多数植栽されているこのガーデンにも、何回も足を運んだものです。 左下から時計回りに、バーベナ・ボナリエンシス、バーベナ‘バンプトン’(ボナリエンシスの株元のこんもり姿)、ダリア‘サックルブリリアントオレンジ’(ポンポンダリア)、ダリア‘サックルコーラル’(隣のポンポンダリアの赤)、スティパ・テヌイッシマ、アガスターシェ・ルゴサ・アルビフローラ(スティパの上に写る縦長の花穂)、フロックス‘ブライトアイズ’(ピンク)、ミソハギ(ピンクのフロックスの後ろに写る縦の紫色の花穂)、クロコスミア‘ルシファー’(ミソハギの後ろ)、カライトソウ(中央ピンクの垂れ下がる花穂)、アメリカテマリシモツケ‘ディアボロ’(右上端の銅葉の木)、フロックス‘ブルーパラダイス’(右側中段の横に広がる紫の花)。手前で2本の花穂が上がるアカンサス・スピノサス‘レディムーア’がこのコーナーを印象付けている。 秋から冬にかけてこのガーデンを訪れた際は、グラスの美しいシーンをカメラに収めることで満足していましたが、やがて季節が変わり、春から夏になると、グラス類に代わって宿根草たちがガーデンの主役になっていました。 左/上から、アリウム‘サマードラマー’、ダリア‘ミズノアール’、ユーパトリウム・アトロプルプレウム(右上)、ベロニカストラム‘ダイアナ’(白のとんがった花)、グラジオラス‘バックスター’、アスチルベ・プルプランツェ(右端のピンク花)、メリカ・キリアタ(手前下のグラス)。右/ベロニカストラム‘ダイアナ’、ユーパトリウム・アトロプルプレウム(左上)、奥の彩りは、ヘリオプシス‘サマーナイツ’(黄色)とダリア‘熱唱’(赤花)。 宿根草が生き生きと育つそのそばには、グラス類が存在しています。代わる代わる咲く宿根草の花々は、それを引き立てる名脇役のグラスが組み合わされているからこそ美しいのだと、改めてこの庭に気付かせてもらったように思います。 カメラマンを唸らせる美しいガーデン 左下から時計回りに、アガスターシェ・ルゴサ・アルビフローラ(縦の花穂)、バーベナ・ハスタータ‘ピンクスパイヤー’、フロックス‘ブライトアイズ’(ピンク)、ダリア‘サックル・ルビー’(赤いポンポンダリア)、ミソハギ(サイロの屋根の下に写る縦の紫の花)、クロコスミア‘ルシファー’、カライトソウ(中央ピンクの垂れ下がる花穂)、ヘリオプシス‘サマーナイツ’(カライトソウの後方右に写る黄花)、アリウム‘サマードラマー’、ダリア‘ティトキポイント’(いろんなダリアが重なって写っているが、一重のピンクで中央がオレンジっぽいダリア)、オレガノ‘ヘレンハウゼン’(カライトソウの手前右)、バーベナ‘バンプトン’(カライトソウ左下のふんわり姿)、カラミンサ(オレガノの手前)、ミューレンベルギア・カピラリス(手前右角に写るグラス)。 この多くの宿根草やグラス類をナチュラルに組み合わせて美しいシーンを作り、いくつも僕に見せてくれるのは、“寝ても覚めてもガーデンと植物のことが気になってしまう”服部牧場のガーデナー、平栗智子さん。僕のガーデンフォトの最良のパートナーだと、いつも感謝しています。 上左/ヘメロカリス‘ブラックアローヘッド’ 上中/下からダリア‘冬の星座’、ユーパトリウム‘アイボリータワー’、アリウム‘サマードラマー’、バーノニア 上右/エキナセア‘ミルクシェイク’ 下左/モナルダ・プンクタータ 下中/ベルケア・パープレア 下右/カライトソウとフロックス‘クレオパトラ’。 ここでご覧いただいている写真は6月の服部牧場で、伸び伸びと育った大型の植物をふんだんに使う“平栗智子流のガーデンデザイン”による、生命感溢れるシーンばかり。夕方の沈みかけた綺麗な光で、思う存分撮影してきた大満足の写真満載です。 左下から奥の順に、エキナセア‘ピンクパッション’、トリトマ‘アイスクイーン’、スタキス、アスター‘アンレイズ’(緑色のこんもり姿)、パニカム‘ブルーダークネス’(アンレイズ左のグラス)、チダケサシ(アンレイズの後ろの淡いピンクの花穂)。右側、斑入りのフロックス‘ノーラレイ’とエキナセア、株元の丸葉は、ヒマラヤユキノシタ。 そして、各写真に添えられた解説は、平栗さんがこの写真を見ながら丁寧に品種名を書き出してくれたものです。この景色を作る鍵となる宿根草の具体的な品種名の数々は、ガーデンラバーズさんにとって最良のテキストになると思います。この記事で服部牧場の魅力の秘密が伝わることを期待しています。