バジルとローストトマトの農園風パスタソース【ルーシーのおいしい暮らし】
テーブルの上が夏野菜やハーブで賑やかになってきました。特に「バジル」と「トマト」の名コンビは、肉、魚、野菜など、何でも美味しくしてくれる魔法の組み合わせです。今回は夏の主役ハーブ「バジル」と旬のトマトをたっぷり使った、素朴で滋味深い味わいのトマトソースを神奈川県葉山で植物を身近に暮らしながらアンティークバイヤーとして活動中のルーシー恩田さんに教えていただきます。
目次
太陽のハーブ「バジル」
夏はハーブのハイシーズン。輝く太陽を浴びて、ミントやセージ、オレガノたちがイキイキと自由に育つ様子を見ていると、胸がドキドキして心がダンシングしちゃう。麦茶代わりに飲むミントティー、入浴剤代わりのレモンバームやゼラニウム。汗だくでお疲れな日も、ハーブは私を穏やかに癒やしてくれるのです。
「サマーハーブ大賞」を選ぶとしたら、やっぱりバジル! どうしてもイタリアーン! な印象ですが、サラダやパスタ、サンドイッチ、ソースやスイーツまで、日本の食卓でも大活躍する万能ハーブ。タイのガパオライスなど、じつは多くのアジア料理にも使われています。イタリアではバジルの鉢を持たない主婦はいないといわれているのだとか。もちろん私のキッチンでも頼もしい相棒です。
少し甘みのあるすっきりとした香りが特徴的な「スイートバジル」は、季節を問わずスーパーで買えますが、一般に畑で栽培できるのは初夏〜晩秋まで。なんといっても、摘みたてのバジルは香りがパワフル。「香り」というものは揮発性の成分なので、時間が経つにつれ変化します。バジルは栽培も簡単なので、初心者ガーデンファーマーにもおすすめ。たくさん育てたければ種子から、数鉢でよければ苗を購入しましょう。ミントなどと同様にバジルもたくさんの種類があり、香りや見た目にそれぞれ個性があります。
我が家のバジル熱
夏の到来を感じつつ、決まってかかるのがバジル熱。「とにかくバジルを育てたい病」です。バジルたちと生活をともにできるのは、夏の約4カ月だけ。そう、淡いひと夏の恋なのです。ひと口にバジルといっても、種類もいろいろで香りはどれも魅力的。バジルは古くからさまざまな国で、薬草としても重宝されていたようです。イタリアではスイートバジルが求婚のシンボル、インドではホーリーバジルはクリシュナ神に捧げる神聖なハーブ、ペルシャやエジプトではお墓に植える植物だったり、古代ギリシャでは呪いの草だったり……惚れ薬や愛の印といわれたり……。と、伝説や迷信が大忙し。バジルの香りは、大昔から人々を魅了する「ミステリアス」な香りということでしょう。
我が家ではスイートバジル、シナモンバジル、ホーリーバジル、タイバジル、ブッシュバジルなど、いろいろなバジルを毎年種子から育てています。なかでも、私のイチ推しバジルは「ブッシュバジル」。1枚の葉が1cmほどの小さな小さなバジルです。スイートバジルよりも強い香りで、ジェノベーゼソースにもパーフェクト。料理の仕上げの飾り付けにもいいサイズ感で、とても楽しいバジルです。
細かく、こんもり、ブッシュ(茂み)のように育つので、ガーデンの縁取りにしても可愛いのです。バジルたちは食材としてはもちろん、ハーブティーや切り花、そして畑のコンパニオンプランツとしても活躍してくれます。
美味しいだけじゃない「トマト×バジル」はコンパニオンプランツ
バジルとトマトは料理の相性が抜群! しかし相性がよいのは味や香りだけではありません。トマトとバジルを側に植えることで、病気を防いだり、虫除けの役割をしたり、味や香りがよくなるなど、互いの成長によい影響を与え合います。
コンパニオンプランツは、お互いに助け合いながら成長していく植物たち。夫婦や友人同士でも、どちらか一方が「GIVE」ばっかりじゃ疲れちゃうもーん。人も植物も、助け合いの精神が大切なのです。
アロマセラピーでのバジル
「ハーブの王」、「香草の王」と呼ばれているバジルは、精油もおすすめ。スッキリした心地よい甘さと、スパイシーさを兼ね備えた香りで、洗練された大人の遊び心って感じかしら。どちらかというとハンサムなイメージで、生の葉とは少し違った雰囲気です。
不安を感じ、自分自身を表現するのが苦手なあなたにピッタリ。だって人間だもの、誰しもそういうフィーリングを持っています。自律神経を調整する作用があり、意識をクリアにして集中力や注意力を高めてくれます。頭の中で延々と「不安の寸劇」を上映し続けてしまう人におすすめの香りです。不安や心配などの精神状態から起こる身体症状、例えば消化不良、胃痛や頭痛にもよく効きます。作用が強いので、日常的に使うよりも、症状のあるときにだけ用いるとよいでしょう。
※高濃度での使用は皮膚刺激があるので、敏感肌、乳幼児への使用は注意が必要。妊娠中や授乳中は使用を控える。
農園風 バジルとローストトマトのパスタソース
今回は私の夏の定番、オーブンで作るトマトソースをご紹介します。畑で採れるハーブたちを豊かに使い、旬のトマトは皮、種子や果汁を丸ごと頂きます。イタリアンな肝っ玉母ちゃんがテキトーに作るような、素朴で滋味深い家庭的なレシピ。必要なのは新鮮な材料とお気に入りの大皿。大胆に盛りつけて召し上がれ!
材料 2〜3人分
- トマト 800g (中玉で約8〜9個)
- 玉ねぎ 1玉
- ニンニク 2玉
- スイートバジル 一握り
- a) オリーブオイル 大さじ3
- a) バルサミコ酢 大さじ1
- a) 砂糖 大さじ1
- a) 塩・胡椒 各小さじ1
- b) ローズマリー 2本
- b) セージ 15枚程
- b) オレガノ 2本
- b) タイム 2本
作り方
- トマトを適当な大きさに、玉ねぎは厚めのくし切りにする。
- ニンニクは上部をカットしてオリーブオイル(分量外)を回しかけ、アルミホイルで包む。
- 耐熱皿に①を入れ、a) の調味料を加えよく混ぜる。
- b) のハーブ類を加えてさらによく混ぜ、②のニンニクも耐熱皿にのせ、200℃に予熱したオーブンで60分焼く (ハーブ類が焦げないように、15分ほどたったら水分を絡めるように混ぜる)。
- 焼き上がったら少し冷まして、タイムやローズマリーの固い茎を取り除く。ニンニクはホイルから取り出して、丸ごと潰して中身を絞り出す。
- バジルも加えてブレンダーやミキサーで撹拌し、塩・胡椒で味を整える。お好みのパスタとあえて、飾りのバジルを散らして完成 (ソースが濃すぎたら、パスタを茹でたお湯を加える)。
いつもは分量など気にせずに適当に作るレシピです。冷蔵庫の片隅に追いやられた小さな人参、少し傷み始めた椎茸などを一緒にグリルしてもよし、玉ねぎが足りなければネギでも大丈夫。ハーブは数種類、ちょっと多いかしら? というくらい、たっぷりと使うこと。個人的にはフレッシュなセージが欠かせません。オレガノやタイムはドライハーブを使うこともあります。バジルは必ずフレッシュを使ってください。ここだけの話ですが、乾燥バジルは別物と考えましょう。フレッシュなバジルと比べてしまうと、ドライバジルはほとんど香りがしません。
ニンニクはオリーブオイルをかけて蒸し焼きにすることで、ナッツのようなコクに。生クリームを足してトマトクリームや、ピザのベース、ハンバーグのソースにもなっちゃう、オールマイティな多用途型ソースです。自分で栽培したトマトやバジルを使えば、楽しさも美味しさも倍増。このソースは動物性素材を使わないヴィーガンレシピですが、ガッツリとコクがある大満足ソースです。たっぷりのニンニクとハーブで元気がでちゃう♡ あなたの夏の定番パスタに仲間入り。気分次第で毎日が楽しい夏休み、自由研究の連続です。今年の夏は新しいレシピに挑戦してみては?
Credit
写真&文 / ルーシー恩田
ルーシー・おんだ/アンティークバイヤー/IFA認定アロマセラピスト/ITEC認定リフレクソロジスト。20代に訪れたタイ・チャン島でのファスティング(断食)経験から、心・体・生活環境などを全体的にとらえることにより、本来の自然治癒力を高め病気に負けない体づくりを学び啓発される。会社員としてデザインの仕事をしながら英国IFAアロマセラピストの資格を取得。退職後は更なる経験と知識の向上のためイギリスへ渡り、英国ITEC認定リフレクソロジストの資格を取得。現在は家業のイギリスアンティークの買付と販売をしながら、アロマセラピスト的な視点で自家栽培の野菜とハーブを使ったお料理教室やワークショップを開催している。
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