新しい年を迎えるために家の入り口に飾りたい日本の風習「門松」。飾り始めるタイミングは、12月13日からがよいとされています。ここでは、本格的な門松のスタイルと、家庭で飾るのにちょうどよい、小さなサイズで手作りする「門松」のプロセスをご紹介します。本格的に日本の職人に学んだ経験のある遠藤昭さんが作る、ワークショップでも人気の「ミニ門松」。今年は手作りで用意してみませんか?
目次
お正月飾り「門松」を飾る理由
正月になると、日本の言い伝えでは、家々に「歳神」という神様が訪れます。この歳神様が訪れる時の目印となり、身を寄せる所が門松といわれています。松は「祀る」につながる樹木であり、古くから中国でも生命力、不老長寿、繁栄の象徴とされ、日本でも松をおめでたい樹木として、正月に門松を飾る習慣ができました。
3本の竹が連なったものを飾る以前は、松の枝を門柱などにくくりつけていた質素なものでした。現在は、略式の門松として松の枝を半紙で包み、水引などをかけて左右対称に飾るのが一般的になっています。
門松を飾る期間は?
12月10日や13日は「正月事始め」また「松迎えの日」にあたり、門松や鏡餅は13〜28日の間に飾るとよいとされています。なお、29日は「二重苦・苦松(苦待つ)」につながり、さらには、31日は歳神様が降臨する正月の前日で、ぎりぎりに神様を迎えるのは「一夜飾り」と呼ばれ、失礼にあたるとされます。また、12月13日(12月10日の説もあり)は、お正月飾りに使う松を山へ取りに行く「松迎えの日」の習慣があり、正月の準備を始めるのによい日となっています。今でも卸売市場ではその頃から松市が開かれ、町の花屋に松が出回るようになります。
門松を外す日は?
さまざまな説がありますが、歳神様を祀る期間が終わる、1月7日に外すのが一般的です。地域によっては、15日の小正月に外すようです。
門松の種類
まずは、地域によって飾りつけに多少の違いがあります。上写真は、左が関東、右が関西です。関東では、3本の竹を配した周囲を若松で覆い、藁を巻いたシンプルな飾りが多いようです。関西では、3本の竹の周囲には、若松のほか、クマザサやナンテンを添えたり、紅白の葉牡丹を添えている飾りも見かけます。
また竹の形も今と昔では違いがあり、写真左のように昔は真横に切られていました。現代にも多く見られる、小口が斜めに切られるようになったのは、徳川家康が敗北した『三方ヶ原の戦い』の後。武田信玄に対して『次は斬る』という念を込めたのが始まりといわれています。
竹の切り口に節が入っていることで、笑うときの口に似ていることから、「笑う門には福来たる」を表しているそうです。
日本の伝統、門松作りを職人に学ぶ
8年前、植物素材を多く使う門松を自らも手作りしてみたいと思い、基本を学ぼうとインターネットで知り合った名門の「庭匠霧島」代表取締役社長である霧島宏海氏にお願いして、現場での「門松制作」をご教示いただきました。そうして実際に体験してみると、竹の洗い方、切り方、藁の端のまとめ方、縄の結び方(梅結び・海老結び等)等々、全てに伝統の技があり、作業というよりも、芸術作品を作るような奥深さを感じました。そして師匠からは、日本の造園の精神面を含めた厳格・崇高な世界を学び、正直、自分にはガーデニングはできても、日本の造園は無理だと悟ったのです。
その後、ご教示いただいた門松は毎年、自宅や職場で作り続けています。
ここまで本格的なものを用意するのは、もちろん難しく、備える場所もなければいけません。しかし、庭匠霧島さんで学んだ基本的な作業をもとに、本格的な材料を使いながら簡易にできる手作りのミニ門松が作れるのではと考案した「ミニ門松作り」は、講習会でも好評を得ました。以下では、家庭でもできる「ミニ門松作り」の制作プロセスをご紹介しましょう。
門松づくりの職人伝授「ミニ門松」の作り方
材料の準備からスタート
- まずは竹の表面を磨きます。正式にはお湯でしめた、もみ殻で行いますが、簡単な方法は細かい金タワシで擦るとよいでしょう。写真上は、磨く前。下は磨いた後。緑色が美しくきれいになりました。
- 青竹(真竹)を竹斜めに切ります。タケノコ(竹用のノコギリ)で切りますが、ササクレを防ぐために、ガムテープを貼ってから切るときれいに仕上がります。あらかじめガムテープの上に鉛筆などでラインを引いてガイドにすると正確に切れます。
なお、青竹(真竹)は3本一組で2セット必要なため、37cm、32cm、30cmの長さで各2本切り出します。それぞれ、サイズに余裕をもたせ、節目を避けて準備するとよいでしょう。
高さ約40cmの門松作り。材料は9つ
- 青竹(真竹)6本(37cm、32cm、30cmを各2本)
- 松の枝(黒松)
- コモ(ムシロ) 34×18cm
- 缶 直径10.4×高さ10cm
- 飾り用 ナンテン、センリョウ、クマザサなど
- シュロ縄(ナイロン製が扱いやすい)1m 4本
- 砂
- 透明のガムテープ
- 針金 適宜
作業プロセスは15工程
- 写真のように、コモの片面にガムテープを貼り、缶も用意します(缶は雑貨店や百均で近いサイズを見つけましょう。固めのプラスチック容器でもOK)。
- 缶を逆さにし、テープが貼ってある方を下にしてコモを巻きます。
- 缶の中央の位置あたりに針金を巻いて、仮止めをします。
- 続けて、缶の上端あたりにシュロ縄を巻きます。コモの継ぎ目が後ろになるように二重に巻いて、手前で縛ります。この結び目が門松の正面になります。
- 滑って緩まないように、一度下を通して(殺しを入れる)、かた結びをします(できれば男結び)。
- しっかりかた結び(できれば男結び)をします。
- 4〜6の要領でもう1カ所、シュロ縄でとめます。2本目は缶の底の位置で、後にコモを外側に折る位置になります。
- スカートのようにコモを外側へ折り曲げるため、2本目のシュロ縄の付近、表・裏両面に水を霧吹きします。コモを折り曲げやすくする作業です。
- 仮折りとして、コモを缶の底のラインに合わせて、いったん内側へ折ります。次に、外側へ折り曲げてスカート状にします。
- 缶を立て、コモが外側に広がるように折り目をつけます。
- 次に竹を使います。まずは、長さが3種ある竹の斜めの切り口が写真のように平面になるように揃えます。
- 11の形を保ったまま、3本をガムテープでとめます。このとき、竹の下端側の切り口は、多少凸凹で揃っていなくても構いません。
- 斜めの切り口を上にして、切り口がシュロ縄の結び目と同じ方向(正面)に向くように3本の竹を缶の中に入れます。缶の中に砂を入れて、竹をまっすぐに固定します。この後、缶の中に水を注ぐので、縁いっぱいまで砂を入れる必要はありません。
- 缶と竹の隙間にバランスよく松を差し込んで、ナンテンなどの飾りも加え、最後に缶の中に水を注いで1つ完成です。水を入れることで、竹や松の緑が保たれます。
- 2個目は1個目と左右対称になるように竹を束ね(長い竹と短い竹が内側になるようにする)、飾りも左右対称になるようにしましょう。
本物志向のミニ門松を作れば、お正月明けまでフレッシュな状態で飾ることができます。手作りで本格的な門松を用意して、新しい年を気持ちよくお迎えください。
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Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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