おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
面谷ひとみ -ガーデニスト-
おもだに・ひとみ/鳥取県米子市で夫が院長を務める面谷内科・循環器内科クリニックの庭づくりを行う。一年中美しい風景を楽しんでもらうために、日々庭を丹精する。花を咲き継がせるテクニックが満載の『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(KADOKAWA)が好評発売中!
面谷ひとみ -ガーデニスト-の記事
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一年草

【今が買い時】晩秋から初夏まで咲きつなぐ! キンギョソウが主役の庭計画
キンギョソウはなぜ晩秋〜冬の主役になれるのか? ピンクのキンギョソウを主役にした秋の寄せ植え。彩りの少なくなってきた晩秋の庭に華やかさをもたらす。 晩秋から冬は、草丈のある庭の素材が少なくなります。そのため、花壇も寄せ植えも何かと「平たく」見えがち。その平坦な風景に立体感を出すのに最適なのがキンギョソウです。直立する花穂で縦のラインをつくり、パンジーやビオラ、アリッサムなど地際で低く咲く花々に対し、高さやボリュームを補ってくれます。厳冬期には花が一旦止まっても、葉が花壇や鉢植えで立体感の核に。特に葉色がダークパープルの品種はカラーリーフとしても活躍します。 【キンギョソウの基本情報】 晩秋から翌年初夏までレンガの壁際を彩るキンギョソウ。 キンギョソウ:ゴマノハグサ科・一年草扱い(本来は多年性ですが日本では夏越しが困難) 草丈:矮性20〜30cm、中性40〜60cm、高性70〜100cm 花期:晩秋〜初夏(厳冬期は小休止)。切り戻しで再開花しやすい。 色・形:白・黄色・ピンク・紫・赤・複色、一重から八重など花形も豊富。ほんのり香る品種もあり。 使い方:庭植え、鉢植え、寄せ植え、切り花。 キンギョソウは管理がシンプルで初心者も育てやすい花 光:4時間以上の日照があれば、徒長することなくきれいな株姿に。 剪定:咲き切った花穂を半分ほどでカットすると(切り戻し)、脇芽が出て春に開花の再ラッシュ到来。切り戻した後には肥料をやると元気になります。 肥料:厳冬期は控えめに。春から液肥を定期的に与えると花もちアップ。 トラブル:密植すると病気が発生するので、透かし剪定をして風通しよく維持。草丈が高くなり、温度が上がってくると倒れやすくなるので、必要に応じて竹ひご支柱で目立たないように支えてあげましょう。 キンギョソウを使った季節横断寄せ植えレシピ 晩秋から冬を越え、翌年のバラが咲く頃まで、主役と脇役を演じながら季節をつなぐキンギョソウの寄せ植えを紹介します。鉢の中の植物を総入れ替えするのではなく、使えるものは残して少しずつ植物を入れ替えていくのがポイント。 晩秋はコスモスと、冬はカラーリーフとして、初夏は主役に 直径70×高さ50cmの大鉢。玄関脇の目立つところに置いて季節感を演出。 秋は高性のコスモスを鉢の中心に。赤い花のキンギョソウ‘ブラックプリンス’はコスモスの周囲に、サブメインとして彩りを添える存在です。他に秋らしい素材としてダリア、ソラナム・パンプキン、観賞用トウガラシとともに。鉢縁の周りを紫の小花のブラキカムでぐるりと囲んで整えます。 真冬の厳冬期にはキンギョソウは小休止。一旦、茎を切り戻して黒い葉をカラーリーフとして活かします。中央にはピンクの花が咲く低木のピメレア‘フォーシーズンズ’や紫の花のベロニカ‘グレース’で高さを補って。新たにパンジーやビオラ、スキミア、チェッカーベリーで彩りをプラス。花は少ないものの、鉢縁のブラキカムは残しておきます。冬の間はどの植物もあまり生育しないため、やや多めに詰め込んでおいたほうが見栄えはGood。この季節は寒いので、蒸れや害虫の心配はありません。 翌年の春、鉢の中央部からはキンギョソウが丈高く伸びてきました。周囲のパンジー、ビオラ、ブラキカムもふんわり咲いて鉢から溢れんばかり。春になり暖かくなると、一年草は一気にボリュームを増してきます。こうなってきたらいくつかの植物を抜いて、別の場所で再利用します。 初夏のバラの咲く頃、赤い花穂のキンギョソウが大鉢を華やかに彩ります。この頃の花は草丈が高く、茎先にボリュームたっぷりに咲くため倒れやすくなります。この鉢では円形のプランツサポートを用い、株の周囲を囲って株全体を支えています。パンジー、ビオラの代わりにペチュニアとヒューケラでパープルを。ブラキカムも再び鉢からこぼれ咲いて個性あふれる姿に。 パンジー&ビオラと主役をバトンタッチ 直径60×高さ48cmの大鉢。左は冬、右は翌年の春。 白いキンギョソウを鉢の中央に。茎が直立するネメシアやギョリュウバイで中景を作り、草丈の低いパンジーやアリッサムでこんもりさせ、斑入りアイビーやハツユキカズラを垂れさせてバランスを整えました。冬は草丈の高いキンギョソウが主役。春先は2倍ほどのボリュームに育ったパンジー、ビオラへ主役を交代。キンギョソウは花が終わったら一旦切り戻しておきます。 バラの頃には再びキンギョソウが満開に。中景をフロックス、デージーでつなぎ、パンジーの代わりに初夏はペチュニアでこんもりさせます。アリッサムはどんどん垂れてくるので、間引くように剪定すると形を保つことができます。 冬は“赤の面”で暖かく、初夏は“縦ライン”でバラの伴奏者に 左は冬の花壇、右は同じ場所の初夏の風景。 日照が低く色が沈みがちな冬は、赤色の花で面を作ると一気に華やぎます。クリスマスから正月にもぴったりの色です。つるバラ ‘スノーグース’の赤い実が絡む柱の足元を、パンジーやチェッカーベリー、キンギョソウ、ストックで赤色の花壇に。 初夏は草丈高く育ったキンギョソウの赤い花が‘スノーグース’の真っ白な花と共演します。足元はサルビアやデルフィニウム、ロベリアなどの寒色でコントラストを。同じキンギョソウでも季節と組み合わせが変わるだけで、役割がスムーズにバトンタッチ。 キンギョソウのお手入れカレンダー(関東平野部目安) キンギョソウで季節をつなぐには、適期に最適の作業をすることがポイントです。季節ごとのお手入れをご紹介します。 晩秋(10月下旬〜11月下旬) 開花している苗の販売時期です。苗を入手しましょう。 場所は霜の当たりにくい日なた。昼間の日照を受けて温度が保たれやすい壁際などもおすすめ。 厳冬(12〜2月) 伸びた花穂は低めにカットし、株元に光を入れましょう。 乾きにくいので水やりは午前中に、表土が完全に乾いてから。 春(3〜4月) 施肥をします。緩効性肥料をひとつまみ。また、液肥を1週間〜10日に1回定期的に。 一番花が咲き終わったら花穂を1/2で切り戻し、脇芽のつぼみを育てます。 初夏(5〜6月) キンギョソウは二番花、三番花を楽しみ、梅雨入りで抜き取るのが無理なくきれいに楽しめます。 管理のコツは3つの「S(Shear・Sun・Supply)」 1. 切る/Shear 花穂の下から花が茶色く枯れてきて、花がついていない隙間が増えたり、花穂全体が前かがみに傾いてきたら、花穂をカット。カットするときは草丈1/2を目安に。 2. 光/Sun 日照不足は徒長や病気の原因になるので、冬でも4時間以上の直射が確保できる場所に植えましょう。 3. 養分・水/Supply 冬は肥料をあまり吸い上げないので、控えめに。春から肥料を再開します。水やりは朝、鉢底から流れ出るまで。厳冬の場合は回数を落としましょう。 Q&Aよくある失敗と対処 Q1. 穂がだらっと倒れます。 A. 徒長や風当たりが原因です。1/2で切り戻し+斜め支柱で補強。日照4時間以上を確保します。 Q2. 花数が少ない/花が小さいです。 A. 肥料不足か根詰まりが原因です。緩効性肥料を追肥し、春は液肥を定期的に。根が回っていたら1回り大きい鉢に植え替えを。 Q3. すぐ見映えが悪くなります。 A. 花がらを放置するとタネを作り、株が衰えます。花穂の下から枯れ上がってきたらカットして花がら摘みをしましょう。 Q4. ヒョロ長く徒長します。 A. 光不足か窒素過多が原因です。より明るい場所に置き、液肥は回数を控えめに。風通しを確保。 Q5. 雨のあと花がネチャッとします。 A. 低温多湿が原因です。汚れた花穂を深めに切り取ります。雨の当たり具合を減らし、花がらをためないように。 Q6. つぼみが歪む/葉が食われます。 A. 春になるとアブラムシ・ヨトウムシの被害が出ることがあります。初期は手で除去、多発時は薬剤。ヨトウムシは昼間は活動していないので、表土を浅く掘ってチェック。 Q7. 下葉が黄ばみ、株元がグラつきます。 A. 過湿・排水不良が原因の根腐れです。傷んだ根を整理し、水はけのよい土へ。軽石小粒1〜2割混ぜ、受け皿の水を残さないように。 Q8. 二番花がなかなか来ません。 切り戻しが浅いか、肥料切れです。思い切って1/2まで切り戻し、液肥を週1+しっかり日光を浴びせましょう。 キンギョソウは“切って、光を当て、少し足す”だけで季節をまたぐ 晩秋に仕込んだ1鉢を基点に、冬は色を絞って凛と、春はわき芽のラッシュで華やかに、初夏は再び華やかに。無理なく少しずつ差し替えるだけで、庭の入り口やテラス前が半年以上続く見どころになります。次の週末は、主役の苗を手に入れて“季節をリレーする寄せ植え”を始めましょう。
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ガーデンデザイン

晩秋の庭に色の灯りを|夏植えて、秋にいちばんきれいになるカラーリーフの使い方
秋は“色で灯す”庭づくり 夕暮れに映える暖色の理由 燃えるような赤いコリウスの色が秋の庭のメリハリに。 私の好みの色は、淡いピンクや、やさしいペールトーンの花。ですから、春の庭はバラやポピー、バーバスカムなどでふんわりと彩られていますが、秋は一旦自分の好みを脇に置いて植物のセレクトをします。日が傾き、影が長くなる秋は、淡い色の植物は輪郭がぼやけやすく目立ちにくくなるため、赤やオレンジ、深い紫のような強めのカラーで組み合わせをします。遠目や室内からでも目に入る色を少し増やすだけで、庭全体にメリハリが生まれ、夕暮れの光に呼応するようにやわらかく輝きます。 花が少ない季節はカラーリーフで面をつくる 赤いコリウスとピンクの穂のミューレンベルギアの共演。夕方の光に色が冴え渡る。 春のように花の数が多くない秋は、葉の美しい植物が活躍します。葉色の面(コリウスやアルテルナンテラ)+穂の揺れ(グラス類)で、色のボリューム感が増します。そこに花を点で少し加えるだけで、見応えは十分。 夏に仕込み、秋に輝く主役たち 秋に美しく庭を彩る植物は、梅雨前後に植えます。ですから、夏越しできる植物がセレクトの条件。鳥取県米子市の夏は非常に暑く、7〜8月の約半分は35℃以上になるため、耐暑性に優れている植物を選ぶ必要があります。過酷な夏を乗り越え、私の庭で活躍する秋の庭の主役たちをご紹介します。 「色の面」を作ってくれるコリウスとアルテルナンテラ コリウスとは:シソ科の非耐寒性多年草。和名ではキンランジソ、ニシキジソと呼ばれるとおり、初夏から晩秋まで鮮やかな葉色で庭を彩ってくれます。葉色、葉模様のバリエーションだけでなく、葉の大きさも大小さまざまなものがあります。 使い方:30〜40cm間隔で、複数苗を塊で植えておくと、秋に「色の面」になってくれます。植栽の縁には小葉の品種を、後ろには大葉の品種を植えておくと立体感が生まれます。 夏の雑草対策にも:夏はそれほど大きく生育しませんが、コリウスを植えておくと土の露出が減るので雑草対策にもなり助かります。 管理:秋になるまで花は咲かないため、花がら摘みの必要がなく、夏の庭をローメンテナンスで維持するのにもおすすめ。秋になり気温が下がってくると、急にグッと株が大きくなって存在感が増し、庭の主役として活躍してくれます。11月は花が咲いてきます。花もきれいなので開花を楽しみたいですが、咲かせすぎると株の見頃が終わりに近づくので、少し切ってもいいでしょう。多年草ですが寒さには弱いので、葉が傷んできたら抜き取ります。 左/アルテルナンテラ‘赤穂’。右/アルテルナンテラ‘ファニードレス’。 アルテルナンテラとは:アルテルナンテラはヒユ科の非耐寒性多年草。鮮やかなワインレッドやマーブルカラー、まるで花のように見えるフォルムのものなど、葉色も葉姿も草丈も、豊かな個性を持つカラーリーフです。高温多湿に強く、ほとんどの場所で問題なく育ちます。 使い方:コンテナや花壇の縁取りなどに活躍します。夏の間、寄せ植えに使ったものを秋に地植えして、2度楽しむこともあります。庭植えする場合は株間20〜30cmで。 管理:庭植えでは基本的に水やりも肥料も必要としませんが、極端に乾く場合は朝に水やりします。気温の低下とともに生育が緩慢になり、霜や凍結に合うと枯れるので抜き取ります。 アルテルナンテラ‘ピンクシェード’。季節によって葉色が変化し、夏は緑にピンクの斑入り(左)、秋は鮮やかなワインレッド(右)になる。 切り戻しで見頃を長くするサルビア サルビア‘インディゴ・スパイア’やサルビア・ガラニチカなど、青や紫の花色が秋の空気によく冴える。 サルビアとは:サルビアはシソ科の耐寒性多年草と一年草があります。ここでは多年草のほうを紹介します。暑さにも寒さにもとても強く、年々株が大きくなります。草丈・株張りが80〜100cmになるものも多く、庭の骨格となる植物です。開花期は品種によってさまざまですが、秋は多くの品種が美しく咲き揃います。 使い方:サルビアの紫やブルーは、赤やオレンジの強い色を受け止め、色調をクールダウンさせるのに活躍してくれます。草丈や花穂の長さの異なる品種を混ぜると、同色でも庭の表情が豊かになります。 管理:開花期の長いタイプのものは高温期を避けて置き肥を定期的に施すと花がよく咲きます。酷暑の後に株のボリューム調整として、透くように切り戻し剪定をすると、秋に美しい株姿で咲きます。11月は花穂の色が褪せてきたら、花穂の基部でカットすると脇芽が出て鮮やかな色に更新します。 左/サルビア‘ロックン ディープパープル’。ガクや軸が黒くシックな雰囲気。晩春から初冬まで花期が長い。右/サルビア‘アズレア’は秋の開花期までに切り戻しを2〜3回繰り返すと、花枝が増えて花がたくさん咲く。 ポンポンかわいいセンニチコウ センニチコウとプレクトランサス、マム、セロシア、ジュズサンゴ‘絣’を組み合わせた花壇。 センニチコウとは:センニチコウはヒユ科の一年草。丸いカラフルなポンポンは花そのものではなく苞(葉の一種)なので、観賞期間が初夏から晩秋までと長いのが魅力。 使い方:複数株をまとめて植えると愛らしさが際立ちます。株間は20〜25cm。花壇の手前や鉢植え、寄せ植えなどで活躍します。切っても苞は鮮やかな色を保ちやすく、鮮やかなうちにカットするとドライフラワーとしても楽しめます。 管理:茶色く変色してきたものが目立つようになってきたり、伸びすぎて株姿が乱れてきたら、切り戻して形を整えます。バッサリ短く切るのではなく、透くように枝を切ると脇芽が出て晩秋まできれいな株姿で咲きます。11月は咲き進む前の花をカットして、束ねて逆さ吊りにすればきれいなドライに。 配置の魔法で奥行きを 家の中からも庭を眺める時間が長い季節なので、室内からの視点を意識して奥に強い色を配置。目が留まるポイントがS字になるようにするとより奥行きが感じられ、庭を歩いても、窓からの眺めも楽しくなります。鮮やかな植物の他にも、オブジェや寄せ植えした鉢を庭の中に置いても、フォーカルポイントになります。 左/バードバスは庭に馴染むオブジェ。右/トウガラシのラウンドブーケを庭の奥のガーデンシェッドに飾って。赤色が遠目に見てもポイントに。 庭の中ほどには大鉢を置き、季節に合わせて寄せ植えを作ります。秋はキクを主役にした暖かな色合いの寄せ植えに。地植えにすると草丈が低く目立たない植物も、高さのある鉢に植えると庭の色彩構成の一つとして活躍します。 花材:クリサンセマム‘ア・ラ・モード アプリコット’、アルテルナンテラ‘須磨’・‘赤穂’、ジュズサンゴ‘絣’ 来年のための仕込みメモ 植え付けは梅雨前後、盛夏はマルチ、初秋にボリューム仕上げ 4〜6月:苗の確保と定植。色の面を意識して、株間をとりつつ複数苗をまとめて植える。 7〜8月:地植えでは、根付いた後は基本的に自然の降雨でOK。猛暑で渇水するときは株元を刈り草やバークでマルチング。水やりする際は朝に。センニチコウを花がら摘みを兼ねて透かし剪定。 9月:風通しを確保するためにサルビアは透かし剪定を。 10〜11月:マムやプレクトランサス、コスモスなどを差し色で投入。 秋になってからコスモスやプレクトランサスを加えるとより季節感がアップ。 夏に植えて秋に本領発揮の植物の共通点は、シソ科とヒユ科の植物。耐暑性に優れ、植えておけば地面を覆って夏の間の雑草対策としても活躍します。コリウスやアルテルナンテラなどのカラーリーフ類を主役にすることで、花がら摘みの手間も必要なし。花が少ない季節こそ、カラーリーフを上手に使えば、晩秋の庭はもっと輝きます。
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置くだけで“一気に秋映え”。カボチャと小花でつくる大人のハロウィン庭
クリニックのハロウィンガーデン ここは鳥取県米子市のとあるクリニックの庭。待合室から眺められるこの庭は、長い待ち時間を少しでも楽しく過ごしてもらえるように——という思いで、院長夫人の面谷ひとみさんとガーデナーの安酸友昭さんが丹精込めて手入れしています。季節のイベントに合わせた演出は、患者さんはもちろん、道行く人からも大人気。この記事では、その実例から学ぶ配置・色合わせ・小ワザを紹介します。 庭を丹精する面谷ひとみさんと安酸友昭さん。巨大カボチャを持ち上げて「重いんです〜」と面谷さん。 “主役スポット”はカボチャ山×黒 ここは待合室から最もよく眺められる場所で、屋外の通路からも庭の様子が見える場所。このような視線が集まる場所に「収穫の山」を作ると一気に季節感が立ち上がります。 【手順】 下ごしらえ:落ち葉を掃き、藁や麻マットを敷いて“収穫感”のあるベースを作る。濡れや泥の付着も防ぎ、実の持ちがよくなります。 サイズ順で三角構図:大→中→小の順に、手前に行くほど小さく。高さのある山が1つできると写真映え。 色と質感の足し算:オレンジのカボチャに対して、黒い鉢や黒葉(トウガラシなど)を植えた鉢を添え、コントラストで引き締め。 “隣役”の寄せ植え:軽やかな小花の寄せ植えで、重さを中和します。鉢内にミニカボチャを飾っても◎。 黒い大きな鉢は、じつは元はテラコッタの鉢。黒と金で塗装し表情一新。 【置き方のコツ】 大玉は地面にベタ置きせず、藁などを敷いて腐敗予防。 形や表情の違う実を7:3の量感でミックス(定番オレンジ7、斑入り・白・グリーン3)。 植木鉢で“高・中・低”のハロウィン舞台 庭の入り口など人が通るスペースは、縦空間を使ってカボチャを飾るのがおすすめ。植木鉢やレンガで簡単に立体舞台が作れます。 【手順】 下ごしらえ:大中小の植木鉢を並べ、大には藁を敷いてカボチャをたっぷり詰め込みます。残り2鉢には黒葉のトウガラシを植栽。もう1鉢にはカボチャを飾って。 素材のレイヤー:テラコッタ(マットな質感)×藁(ラフな質感)×カボチャ(すべっとした質感)で質感のレイヤーを。風景にリッチ感が生まれます。 小道具使い:魔女を連想させる、ほうきを立てかけて。縦のラインを作って、遠目でもサインに。 玄関はハロウィンカラーの寄せ植え×カボチャ 一日に何度も行き来する玄関前にもハロウィンの楽しい演出を。寄せ植えの花色とカボチャを色で呼応させると印象的なコーナーに。ハロウィンカラーといえば、オレンジ×ブラック。ワインレッドもマジカルな雰囲気アップ。 寄せ植えに使った花材 ◾️横長鉢の寄せ植え/八重咲きジニア‘プロフュージョン ダブルファイヤー’、ペンタス‘バイオレット’、セロシア・インテンツ‘ディープパープル’、アカバナセンニチコウ‘パープルナイト’ ◾️六角形の鉢の寄せ植え/ソラナム・パンプキン、トウガラシ‘オニキス マジックオレンジ’、コプロスマ 通路は“点置き”で回遊演出:庭全体がフォトスポットに 庭の植栽帯の中や小径などにはカボチャを「点置き」。1.5〜2mおきのテンポで置くと、歩くたびに発見が生まれ、庭全体も楽しい雰囲気に。 花壇の隙間にそっと差し込むように置くと、植栽が一段とにぎわいます。S字を意識して視線導線を作るのがコツ。置きすぎて“面”になると、風景を遮るので注意。 カボチャ×「ちょい個性」が相性抜群! カボチャは「形も色も主役級」のオーナメント。だからこそ、その存在感に釣り合う“ちょい個性”を合わせると、庭全体が締まり、写真に撮っても負けません。 Ⅰ|ワインレッド&オレンジの“ヴィヴィッド同盟”で熱量を足す ねらい:カボチャのオレンジを“同系で受ける→濃色で締める”。 左/ケイトウとジニアの寄せ植え。右/ワインレッドの穂が美しいアマランサス。 左/ジニアとコスモスの花壇にカボチャを忍ばせて。右/ソラナム・パンプキンとジニア、セロシアの寄せ植え。 おすすめ: ワインレッド…ケイトウ(セロシア)、アマランサス、ジニア、コスモス、銅葉ベゴニア オレンジ…ジニア、マリーゴールド、ソラナム・パンプキン Ⅱ|補色の“紫小花”でクールダウン&奥行きづくり ねらい:オレンジの補色=紫で色温度を下げて大人顔に。小花のほうがカボチャを引き立たせて上手に脇役をつとめます。 左/プレクトランサスとコスモス、カボチャの共演。右/ベロニカ・グレースでカボチャを囲んで。 おすすめ:サルビア、プレクトランサス、ベロニカ・グレース、ペンタス、アゲラタムなど。 ワンポイント:縦細ラインの紫小花は丸いカボチャと引き立て合い、視線の上部誘導にもお役立ち。 Ⅲ|大判リーフ「ガーデンカラジウム」でメリハリ ねらい:カボチャの丸みに対して、大きなハート形の面と血管のような葉脈を合わせ、造形美を対比で強調。ガーデンカラジウムは夏から活躍するカラーリーフ。夏から秋まで庭を彩る“季節ブリッジ”として活躍。 色合わせ:白地、ピンク脈 → コスモスやケイトウのピンクとつなぎ、甘辛ミックスに。 管理:夜温15℃以下で生育失速。乾き気味に管理し、霜前に塊茎を掘り上げて鉢植えで室内管理すれば来季も活躍。 すぐ真似できる小さく作るハロウィン演出 寄せ植え+ミニカボチャ ◾️材料/ビオラや秋色ペチュニア、センニチコウなど秋の花苗2〜3種、ミニカボチャ2〜3個。 ◾️ひと工夫/彩度の高い色は一色だけ濃くすると寄せ植えが締まります。カボチャは鉢の縁へ配置し、脇にも1個置くと内外で呼応し印象的に。あれば石のオーナメントも一緒に飾ると雰囲気アップ! ミニカボチャ+赤い木の実 ◾️材料/ミニカボチャ10〜15個、藁(麻ひもでも代用可)、ピラカンサやナナカマド、バラなどの赤い実もの少量。 ◾️ひと工夫/鉢やバードバスに藁を敷き、カボチャを置きます。鉢縁に赤い実を少量。夜はミニライトを当ててもかわいいです。 花壇に足元トリオで可愛げプラス ◾️材料/ミニカボチャ3個 ◾️ひと工夫/花壇の主役株の足元に並べます。周囲にカボチャの補色カラー(紫系)のビオラなどを少量加えると、鮮やかさアップ。 ミニカボチャの段違い置き ◾️材料/ミニカボチャ4〜8個 ◾️ひと工夫/ガーデンテーブルや壁の上にカボチャを並べます。小さい植木鉢やオーナメントを使って、ミニカボチャを並べる際に高低差をつけると写真映えもアップ。ゲルテープで軽く固定すると、風の強い日も落ちません。 長持ちのコツ&後片づけ 持たせる基本 カボチャの下に藁や麻ひも、麻袋などを敷くと、底の接着面の傷みが防げます。 高温多湿を避け、風通しを確保。 傷みの早い個体は差し替え前提で数個ストック。 傷みのサイン 表面の柔らかさ・黒ずみ・カビのにおい。ひとつ傷むと周りももらい腐れするので即撤去。 ハロウィン後の循環 食用種はスープやローストに。 観賞用はコンポストへ。 種取りして来年の育てる楽しみに。 まとめ 置くだけ、少し植える、そして回遊させる。たったこれだけで、庭は季節のステージに変わります。面谷さんのクリニックのガーデンは、「待つ時間を、眺める楽しみに変える」お手本。あなたの玄関先や小さな花壇でも、同じ仕掛けは十分可能です。今年のハロウィンは、パンプキンの“群れ”と小花の“ささやき”で、やさしく心がほどける秋を演出してみませんか。
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【花壇実例5】この秋そろえて春に満開! チューリップ×一年草の色合わせレシピ
30秒で分かる! 春のチューリップガーデンの基本の考え方 ◾️主役はチューリップ。チューリップは、この季節の草花の中では草丈が高いので、花壇の中〜後景を担います。花壇の縁取りやチューリップの足元を隠す前景として、草丈の低い一年草と合わせるのがベスト。 ◾️色合わせのコツはブルー。チューリップに合わせる一年草は同系色、補色、白は間違いなく調和します。さらに、ブルーがポイント。ブルーはチューリップにはない色で、後退色(視覚的に奥に引っ込む)なので、主役を引き立てつつ全体を整える最強の助演。また暖色系の花色が多い春の庭で、ひと息冷まして品よくまとめる効果があります。 ◾️チューリップの球根は今買う。チューリップの球根は9〜10月が最も店頭在庫が豊富。ただし、植えどきは15℃が下回る日が続く11月〜12月以降です。植えどきにはチューリップの在庫が少なくなっているので、球根は今、買って植えどきまで保管しておきます。組み合わせるパンジー、ビオラなどの一年草も11〜12月に魅力的な品種が出揃ってきます。 【実例解説1】間違いなしの同系色パンジーとの組み合わせ 白とワインカラーのチューリップ‘リミニ’の株元に同色のパンジーを配植。主役のチューリップを10〜15球、株元にパンジーを2〜3株。同色でまとめると、一画でも印象的なコーナーが作れます。10号ほどの鉢植えでも再現可能。パンジー、ビオラは11〜12月に魅力的な品種が出揃ってきます。パレットのごとく色合いが豊富なので、先にチューリップの色を決めておけば、必ずぴったりの色合いが見つけられます。チューリップとパンジーの素材が手元に揃ったら、紅葉の頃を目安に植え込みます。先にパンジーを植えてから球根を植えると、球根を傷つける心配がありません。 4月中旬以降に咲いてくる遅咲きのチューリップ‘レモンシフォン’とイエロー&ブラウンのパンジーの組み合わせ。 【実例解説2】赤チューリップを主役、白を「肩」に、少量のブルーで締める小道 ◾️主役/チューリップ‘ラスティングラブ’。小道に沿って、左右にチューリップを配置。整然と一列に並んで咲くと不自然なので、球根を前後左右半歩ずらしつつ、ところどころ2球一緒に植えるなどしてナチュラルを目指します。 ◾️脇役の白花/アリッサム、パンジー、アリウム・コワニー、フランネルフラワー。アリッサムやパンジーは小道の縁取りに。アリウム・コワニーとフランネルフラワーはチューリップの「肩」に配置することで、主役をくっきり際立たせます。 ◾️アクセントのブルー/ネモフィラ、パンジー、ルピナス‘ピクシーデライト’。少量点在させることで赤の熱量がクールダウンされ、奥行き感もプラスに。 ◾️低・中・高の三層構造/主役のチューリップを真ん中に、地際レベル(低)ではブルーや白の花が彩り、高レベルは次シーズンの宿根草の緑の葉が展開し、主役の背景を務めるという三層構造がスッキリ見えるポイント。 【実例解説3】ワイン×白のチューリップ+空色小花の帯状植栽 ◾️主役/チューリップ‘リミニ’。ワイン×白のチューリップを前後左右半歩ずらしつつ、ところどころ2球一緒に植えるなどしてリズム感を出しながら帯状に植栽。 ◾️中景ブルー/デルフィニウム ‘チアライトブルー’。ワインカラーをクールダウンしながら、奥行き感をプラス。デルフィニウムは春先に店頭に並ぶポット苗をチューリップの隙間に植栽していきます。春先の苗はまだ線が細く、その他の宿根草もまだ小さいので間に入れ込むことができます。 ◾️低・中・高の三層構造/高さレベルはここでも基本3層構造。主役のチューリップを真ん中に、地際レベル(低)ではパンジーが彩り、高レベルは次シーズンの主役となるバラの葉が主役の背景を務めます。 帯状のチューリップ植栽が奥のガーデンルームへ向かって視線を一直線に導きます。左はブルーの花が、右は白の花がチューリップの脇役に。 【実例解説4】コーラルのチューリップ+濃淡ブルーの春色レーン ◾️主役/チューリップ‘アプリコットインプレッション’。コーラルのチューリップを前後左右半歩ずらしながら帯状に植栽。 ◾️前景に淡ブルー/ネモフィラ。前景にネモフィラの淡いブルーを面で置き、主役色をふんわりやさしく冷まします。 ◾️中景に濃ブルー/デルフィニウム‘チアブルー’、ルピナス‘ピクシーデライト’。チューリップの間に濃いブルーの花を点で少量配置。画をキリッと引き締める効果が。 ◾️ブルーの2層使い/手前に淡いブルーを「面」で、ところどころに濃いブルーを「点」で植栽。役割を分けて用いることで、青が多くても寒々しくなりません。 【植栽実例5】白チューリップの鉢植えで庭のフォーカルポイントづくり ◾️主役/白色のチューリップ。明度の高い白色のチューリップは遠目から見ても視線が止まりますが、鉢植えにして高さを上げることでより止め色としての効果をアップし、庭の入り口のフォーカルポイントに。7〜9球を鉢の中心部にまとめて植栽しています。 ◾️株元の彩り/アンティークトーンのパンジー。白色のチューリップだけだと鉢と上部がくっきり分かれてしまいますが、鉢縁にパンジーを入れることで一体感が生まれます。テラコッタの鉢に合わせて、アンティークカラーのパンジーをチョイスし色温度を整えて。 ◾️季節の持ちアップ/4月の2〜3週間を彩るチューリップにパンジーを加えることで、鉢植えの見頃を2〜5月初旬まで長持ちさせます。 チューリップとの組み合わせにおすすめの一年草 【パンジー・ビオラ】 小輪からフリルの大輪までさまざまな花形があり、色も単色からグラデーション、覆輪など多種多様。10〜2月頃まで苗が出回ります。草丈は10〜20cm。咲き終わった花を摘むことで(花がら摘み)、開花期間を5月頃まで伸ばすことができます。春以降は定期的に液肥を与えると花色も鮮やかで、花の上がりもよいです。 【デルフィニウム‘チア’シリーズ】 春先から花を咲かせる小型のデルフィニウムで、色はブルーの濃淡や白があります。春先の草丈は50cm程度で、チューリップの花と上手に共演し、バラが咲く頃も残ってくれます。苗は早春に出回ります。 【ルピナス‘ピクシーデライト’】 草丈30cm程度のコンパクトなルピナス。下から咲き上がってくる穂状花がチューリップの株元を愛らしく彩ります。色はブルーやピンク、白などがあります。苗は早春に出回ります。タネでも入手可能。 【ネモフィラ】 やわらかなブルーの花びらが特徴で、春になると空のように澄んだ花が一面に咲き広がります。草丈は10〜30cmほどとコンパクトで、花壇の前景にぴったりです。苗は早春に出回ります。タネでも入手可能。 【ワスレナグサ】 5mmほどの小さな花を3〜5月にかけて咲かせます。草丈10〜40cmで暖かくなるにつれ草丈も株幅も大きくなります。花色はブルーが一般的ですが白やピンクもあります。苗は早春に出回ります。タネでも入手可能。 【オンファロデス・リニフォリア】 草丈10〜40cmで華奢な茎に花径1cmほどの小さな白い花を咲かせます。カスミソウに似た繊細な草姿で、レースをかけたようなエレガントな雰囲気を庭に演出してくれます。苗は早春に出回ります。タネでも入手可能。 チューリップガーデンのお手入れカレンダー 植える前(秋) 用土づくり:球根が腐らないように排水最を優先させ、庭植えの場合は既存の土に完熟堆肥1~2割+パーライト1割を混ぜておく。鉢は培養土6:赤玉小粒3:パーライト1を目安に。 元肥:控えめにして、球根に触れない位置に混ぜます。 植え付け:紅葉を目安に、最低気温15℃以下の日が1週間程度続いたら植栽してOK。深さは球根の高さの2~3倍。球根同士の最低間隔は球根1個分。 水やり:植え付け直後にたっぷり1回。以降は過湿NG。 冬~芽出し(12–2月) 水やり:庭は降雨任せ。鉢は表土が乾いて2~3日してから。受け皿には水を溜めない。 マルチング:霜柱が降りる場合はバーク・ワラを薄いて対策。 追肥①:芽が動いたら薄い液肥(500~1000倍)を2~3週間おきに与える。窒素過多は徒長の元なので気をつける。 春の見頃直前(3–4月) 支え:背の高い品種や風当たりの強い所は細い支柱で茎元を軽く留める。 病害虫:灰色かび病は水はけ×通風で予防。発症株は速やかに撤去。アブラムシは見つけ次第、除去して広げないように。 開花期(4–5月) 花がら摘み:咲き終わった花は花首のすぐ下で切り、タネを作らせないようにする。 潅水と追肥②:鉢は乾きやすいので朝1回たっぷりと。液肥は花後2週間まで継続。 花後~初夏(5–6月) 園芸品種の多くは夏越ししても翌年、同じ花が咲くとは限らないので、抜き取って次のシーズンの花に切り替えます。掘り上げて球根を翌年も再利用したい場合は次の手順です。 掘り上げ手順:葉が7~8割黄変した頃に球根を掘り、根と土を落として陰干し3~7日→ネット袋で風通しの良い冷暗所保管(20℃以下目安)。 球根選別:固く重いものだけ残す。小さすぎる分球は養成用に別管理。 春のチューリップガーデンづくりを開始しよう! チューリップの品種は6,000種以上あると言われていますので、その中からお気に入りを探すのもガーデニングの大きな楽しみの一つです。お気に入りが見つかったら、それに合わせて草花も選びましょう。迷ったら主役をチューリップにし、白で輪郭を立て、ブルーで温度を整える——この三本柱だけでも、春の景色は見違えます。小さな“点のブルー”と“肩の白”を置けば、どの庭でも上品に締まりますよ。さあ、さっそく春のチューリップガーデンづくりを始めましょう。
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秋は“仕込み”が9割。今買って、10月以降に植える春の球根7選
春球根をいま買うべき理由(9月〜) 流通量が少なめのフリチラリア・ウバブルピス。黄色い縁取りと茶紫の壺形が特徴。探せば買えるが、早い者勝ち。 春咲き球根は、ネット販売も店頭も9月〜10月初旬が品種のバリエーションと在庫が充実しています。特に人気色(ワインカラーやブルー系)や人気形状(フリル咲きなど)、流通量が限られる原種などの珍しい品種は早い者勝ちです。 同一品種で揃えて列植したい場合などは、早めのまとめ買いが必須。この小道で50〜60球植えています。 また、群植で春にダイナミックな景色を演出したい場合も、球根数=景色になるので、早めにお目当ての球根をまとめ買いしておきましょう。お得なまとめ買い割り引きなどのサービスを受けられる場合もあります。 密閉厳禁! 球根は呼吸しています 通気性のよい状態で植え時まで保管を。 球根の「買い時」と「植え時」には、ズレがあることが多いです。植栽適期(後述)まで劣化させないよう、購入後の球根は通気性のよい紙やネット、麻などの袋に入れて、風通しのよい冷暗所で保管しましょう。球根は生きて呼吸しています。ビニール袋などに入れておくと、結露してカビが生えたり腐敗してしまうので、密閉や高温、湿気は厳禁です。 早植えNG!「冷えた土+湿度」で発根スイッチON! 球根の生育サイクルは「休眠→発根→冬越し→開花」という流れです。店頭の球根は「休眠」状態で、地温10〜15℃の土に入れ、水分がプラスされると「発根スイッチ」が入ります。地温が高すぎると病原菌が活発化して球根が腐敗したり、徒長の原因となります。逆に遅すぎると根張り不足になることが。 面谷さんの庭がある鳥取県米子市では12月初旬、球根の植え時を迎える。 植え時適期は「最低気温が15℃が1週間以上続いたら」。その条件下では地温も安定して10〜15℃になると考えてよいでしょう。チューリップ栽培のプロ「富山県花卉球根農業共同組合」は、紅葉に見頃を植え時の目安にすることを推奨しています。気温で考えるより、周囲の紅葉を合図にすると、分かりやすいですね。高冷地は季節が前倒し、沿岸の暖地はさらに遅らせてOKです。 【球根成功ポイント】今は買う→すぐ植えない→紅葉の見頃に植える 失敗しない植え付け5カ条 1. 排水最優先:球根は呼吸していると前述したとおり、球根は空気を必要とする器官です。水に浸かった状態では、呼吸ができずに一気に弱るので、排水性のよい環境に植えましょう。軽く盛り土をしたり、砂利やパーライトを混ぜることでも排水性をよくすることができます。鉢の場合は、底に軽石+水はけのよい培養土で植えましょう。 2. 深さ=球根高さの2〜3倍(アネモネは塊茎なので浅めでもOK)。 球根用の穴掘りを使うと、ピンポイントで穴があけられて便利。 3. 向き:尖ったほうを上(アネモネは平らな部分を下に)。 4. 肥料:球根は自前の栄養タンクを持っており、発根から芽出しまでは球根内部のデンプン&栄養でまかなえます。むしろ、発根時に肥料が多いと根が肥料焼けしたり、腐敗や葉だけ茂って花芽がつかないなどのデメリットが出やすくなります。元肥は控えめ、芽出し後に緩効性肥料少量 or 薄め液肥をあげるのがポイントです。 5. 植えっぱなし可否:ムスカリ/原種系チューリップ/スイセンは◎、大輪チューリップは翌年咲きづらい。 球根植え付けの早見表(目安) 種類深さ日照植えっぱなしチューリップ6–10cm(球根の高さの2〜3倍)日向△(掘り上げ推奨)原種系チューリップ6–8cm日向〜半日陰、やや乾き気味◎アネモネ(塊茎)3–5cm(浅め)明るい日陰〜日向△フリチラリア(小型種)8–10cm日向、水はけ命△ムスカリ5–7cm日向〜半日陰◎スイセン8–12cm日向〜半日陰◎チオノドクサ3–5cm日向〜半日陰○ 7種ミニガイド(買い方・植え方・合わせ方) 1. チューリップ(定番の主役) 買い方:遅咲き、早咲きがあるので、一斉開花で豪華演出するか、リレー咲きで長く咲かせるか、開花時期を意識して。群植設計なら同品種で数を確保しましょう。 植え方:深さ6〜10cm。球根の向きに注意。 合わせ方:株元に同系色のパンジー・ビオラを合わせると上品。 2. 原種系チューリップ(自然風の名脇役) 買い方:‘リトルビューティー(赤)’や‘タルダ(黄色)’などいくつかを組み合わせて群植すると愛らしい。 植え方:深さ6〜8cm。水はけを好むので自然石などで囲んで盛り土するとよい。 合わせ方:草丈の揃う極小輪ビオラと相性よし。 3. アネモネ・フルゲンス(鮮やかな前景に) 買い方:山野草店などで苗が入手可能。 植え方:深さ3〜5cmの浅植え、平らな面を下に。塊茎は一晩吸水で発芽安定。 合わせ方:シレネ‘スターリードリーム’などの小花と好相性。 4. フリチラリア(繊細模様で上級感) 買い方:小型種(ウバブルピス、メレアグリスなど)からが挑戦しやすい。 植え方:深さ8〜10cm。砂利や軽石を混ぜ、水はけを徹底する。 合わせ方:白花系+ブルー系で“静かに映える”小景づくり。 5. ムスカリ(超丈夫! 群植で映え) 買い方:白や淡青を混ぜると上品。大量まとめ買いがおすすめ。 植え方:深さ5〜7cm。1穴に10〜15球まとめて植栽。帯状植えや点々群植で。 合わせ方:どんな花とも似合う。 6. スイセン(先陣の光を呼ぶ) 草丈約30cmの八重咲きの房咲きスイセン。 買い方:大輪〜小輪、香りの有無で決める。 植え方:深さ8〜12cm。植えっぱなしOK。 合わせ方:ムスカリや原種系チューリップなどで段差を。 草丈15cm程度の小型原種スイセン・バルボコディウム。 7. チオノドクサ(極早春を知らせる星形花) 買い方:他の原種系小球根とともに購入するのがおすすめ。 植え方:深さ3〜5cmの浅植え。小道の縁・樹木下で小群植に。 合わせ方:クリスマスローズやムスカリ、クロッカスなどと開花タイミングが重なりやすい。 写真で学ぶ「配色と配置」実例 鳥取県米子市でクリニックの庭を丹生する面谷ひとみさんとガーデナーの安酸友昭さんの植栽例から、配色と配置をひもといていきましょう。 庭に青いビートを刻むムスカリの点状群植 【配置の役割】青いムスカリを“点々の小さな塊”で複数配置。視線を「手前→奥」へ誘導し、庭に奥行きと動きが生まれています。 【小さな塊の大きさ】1塊あたり7〜15球程度(直径25〜35cm目安)。“点”に見える最小限のまとまりなので、密度がスカスカにならず青が際立つ。 【間隔】塊と塊は60〜120cmほど離して、等間隔すぎないランダム配置で自然なリズム感を。 【色の効かせ方】青は春庭の焦点色。黄のスイセンやピンクのチューリップ、白小花(デージーなど)の中でコントラストの芯になり、全体の色を引き締めます。 【高さバランス】ムスカリ(低〜中景)の“点”を、中〜高のチューリップや宿根草が囲う三層構成。低い青点→中高の花へ段差がつき、雑然としない。 【維持管理】花後は葉が黄変するまで切らない。毎年増やしたい場合は、塊の外周に+3〜5球ずつ足して“広がる点”に。 2色咲きチューリップの2段レイヤー花壇 【配置の役割】濃いワインカラー×白のチューリップ25〜30球を、花壇縁に沿って帯状に配置しつつ、前後にずらしながらゆるくランダムに植栽し、リズム感を演出。 【前後2段のレイヤー】花壇は高さ30cmほどの高低段差の前後2段のレイヤー構成で立体感を。 【間を埋める一年草】ランダムに配置されたチューリップの間をパンジー・ビオラで埋めて、花姿のコントラストを強調しながら、土が見えないよう緑の密度感をアップ。 【色のまとめ方】ワイン×白+渋めアプリコット。強い色のチューリップの間を、淡色ビオラで埋め、色数を抑えて雑然とさせない工夫。 【次シーズンのバラとの共存】次シーズンを彩るバラの株元の空きに球根を差し込み、春だけ立ち上がる主役に。初夏以降はバラが場所を引き継ぎ、庭の見どころをバトンダッチ&ロングシーズン化に成功。 真似しやすい実践レシピ(m²あたりの目安) m²あたりの目安/チューリップ25〜35球、ムスカリ40〜60球。寄せ植えや帯植えは“塊で置く”と絵になります。 株元は一年草:ビオラ(同系色or白~渋色・淡色)、アリッサムなど。 アクセント色:ブルー系(早咲きのデルフィニウム‘チアブルー’、ネモフィラなど)を株間に配植。 背景:宿根草や低木の株元を緑の壁として活用。 球根ガーデニングスケジュール 9〜10月:買い時…今が最も選べるタイミング。色・テーマを決め、必要数を確保。 10〜11月:植え時…地温が下がってから、周囲の紅葉を目安に。植え付け直後のみたっぷり灌水。 2〜3月:仕上げ…徒長防止に日当たりを確保、薄め液肥を施肥。 球根ガーデニングQ&A Q. 掘り上げは必要? A. 大輪チューリップは葉が黄色になるまでたっぷり栄養を補給させてから、掘り上げて冷暗所で保管すると、来年も咲かせられます。植えっぱなしでも咲くことはありますが、前年より花が小さくなったり、同じ色で咲かないことがあります。ムスカリや原種系チューリップ、またスイセンは植えっぱなしでOKです。 Q. 半日陰でも咲く? A. 咲きはしますが、花数は日向より減る可能性があります。落葉樹の下は早春は日が差すため相性◎。 Q. 肥料は? A. 元肥は控えめ、芽が上がってから薄めの追肥が安全。 今日からすべき球根ガーデニングのアクション 色テーマを決める(主役色+つなぎ色)。 必要数を逆算(m²:チューリップ25〜35球、ムスカリ40〜60球)。 今、球根を確保。紅葉を目安に植える。ビオラ等の同色苗を予約すると準備万端。 まとめ|この秋の球根ガーデニングの“正解手順” 今は買い時。人気色・サイズは早い者勝ち。保管は紙袋+風通しのよい冷暗所で。 植え時は焦らない:最低気温が15℃未満の日が5〜7日続いたら本格GO(鉢は3日でも可)。 排水最優先:盛り土・軽石・粗砂で“湿るけど溜まらない土”に。 元肥は控えめ(もしくは無し)。芽が動いてから薄めに追肥。 深さの基本:球根高さの2〜3倍/球根1個分。 一括作業でOK:スイセンやムスカリも、チューリップなどと同タイミングでまとめて植えて問題なし。 配置のコツ:○ チューリップ=帯×ランダムで流れを作る。○ 小球根=点状群植で庭の“リズム”を刻む。 合言葉は——「今は買い、植えるのは“冷えてから”」。 木々の葉が色づき、夜がひんやりしてきたら、いよいよ仕込みの本番です。来春の景色は、この秋の数時間で決まります。さあ、あなたの“春の色”を仕込もう!
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宿根草・多年草

今が買い時! 初夏の庭を彩る“魔法の花”アリウム|プロが教える植え付け方と品種選び
初夏の庭を彩る、魔法のような花アリウムの魅力 白色のバラやポピーと共に、白花のアリウム‘ホワイトジャイアント’を。 初夏の庭に突如現れる、大きな球状の花。紫や白の花玉がすっと立ち上がる姿は、まるで舞台にスポットライトを当てたかのように庭全体をドラマチックに変えてくれます。その花の名は「アリウム」。ネギやニンニクの仲間でありながら、華やかな観賞用植物として世界の名園では必ずといってよいほど取り入れられています。 庭を立体的に演出するアリウム アリウム‘パープルレイン’の紫色が目を引く初夏の庭。 「アリウムの魅力はなんといってもオーナメントのような丸いフォルムと高さです。すっと伸びた細い茎の上に、ちょうど目線の高さで花が咲くので、狭い場所にたくさん植えても圧迫感がなく、スッキリとした印象を与えてくれます」と話すのは、庭のオーナーの面谷ひとみさん。 ここはクリニックの患者さんや職員の癒やしのための庭で、待合室からもよく花姿が眺められるアリウムは、庭に欠かせない存在と話します。 アリウム‘クリストフィー’や宿根草で小径を彩って。 「開花時期が少しずつ異なる早咲き種から遅咲き種までを揃えることで、5〜6月の庭をリレーのように彩ることができるのも魅力。ギガンチウムのように120cmくらいになるものもあれば、40〜50cmで咲くクリストフィーなどバリエーションがあるので、さまざまな演出が楽しめます」 花色は紫が代表的ですが、白や淡いピンクもあり、組み合わせる植物によっても庭の雰囲気をぐっと変えてくれます。 つぼみが開き始めの淡い紫色のグラデーションも魅惑的。 アリウムの植え付け方|プロに聞くコツ ところどころ2球1組にしてリズムを 自然な群生に見せて庭に溶け込ませるようにアリウムを植栽。 この庭では、アリウムの球根を、自然な景観をイメージして不規則に配置。アリウムの球根の植栽は、面谷さんと一緒に庭づくりをするガーデンデザイナーの安酸友昭さんが担当します。 「球根を植え付ける際は、開花姿を想像しながら自然に見えるよう不規則に植え付けます。ところどころ、2球を1組にして植え付けると、心地よい変化がつきますよ」(安酸さん) 直線的に並ばないように、前後左右で少しずつ配置をずらしながら、1球または2球を植え付けることでリズムが生まれ、庭の手前から奥まで視線を誘導します。 球根の大きさの3倍の深さで植え付ける アリウム‘ホワイトジャイアント’、‘マウントエベレスト’、ニグラムなどの球根。花の大きさによって球根の大きさも異なる。Sarycheva Olesia/Shutterstock.com 球根の植え方にも工夫があります。普段は球根を傷つけないように、宿根草を植えた後に球根を加えることが多いそうですが、アリウムの場合は逆。というのも、アリウムは球根が大きく、深植えするからです。例えば、アリウム・ギガンチウムや‘ホワイトジャイアント’などの球根の直径は7〜10cm。植え付けの深さはその約3倍が基本ルールなので、深さ20〜30cmが理想です。 「ですから、アリウムの球根を先に植えつけてから、その後に宿根草を植え付けます。4寸ポット(直径約12cm)程度の宿根草苗なら、アリウムの真上に苗を植え付けても、根鉢が届くのは10〜15cm程度なので、球根を傷つける心配はありません」 植え穴は球根の3倍の深さ。Mariia Boiko/Shutterstock.com 30cmの植え穴というと、バラ苗を植え付けるときと同等の深さになり、掘るのはそれなりに骨が折れる庭仕事です。 「でも、周りにはふかふかの土がたくさん出るので、その土を使えば後から植え付ける宿根草はとても植えやすく、結局は効率的なんですよ」と安酸さん。一見、大変そうに見える作業も、次の植栽を助ける準備になっているというわけです。 球根の買い時と植え時には時差あり! アリウムの球根は店頭に並ぶのが9月頃ですが、植え付け適期は11月以降。いざ植えようと思ったときには売り切れてしまうことも多いので、気に入った品種は早めに確保しておきましょう。 ただし、保管には注意が必要です。庭主の面谷さんは「一度、買った球根を密閉容器に入れてしまい、全部腐らせてしまうという大失敗をしました」と振り返ります。球根は休眠中でも呼吸しているため、密閉すると湿気と熱がこもり、カビが発生しやすいのです。特にアリウムは大球根なので、蒸れやすく腐敗リスクが高め。 早めに手に入れた球根は、紙袋やネット袋に入れて、涼しく風通しのよい場所で保管するのが安全です。 アリウムの球根の正しい保管方法 球根はネットに入れて通気がよく涼しいところで保存を。Reniar Ka/Shutterstock.com 風通しのよい涼しい場所に置く(北向きの玄関や納戸など)。 紙袋やネット袋に入れて通気性を確保。 直射日光や湿気を避け、20℃以下を目安に。 絶対に「密閉容器」や「ビニール袋の口を閉じたまま」にしないこと。 暖冬を考慮して適切な時期に植え付けを 1月に植栽してもバラと美しい共演を果たすアリウム。 一般的にアリウムの球根は11月に植え付けるとされていますが、近年の暖冬傾向では11月も最高気温が20℃を超える日が月の1/3以上占めることも珍しくありません。気温が高い時期に植えると土中で蒸れやすく、球根が腐るリスクがあるため、地温が10℃を下回ってから植えるのが安心です。 そこで、面谷さんは「しっかり寒さが定着してから植えた方が安全」と考え、1〜2月に植え付けることも多いそうです。アリウムの強健さゆえ、遅植えでも十分に開花してくれると言います。 早咲きから遅咲きまで品種の選び方 アリウムには品種によって5月下旬から咲き始めるものから、7月まで彩るものなど、開花期に1カ月半近くの差があります。この開花期の差を意識して入れることで、長期間に渡り庭にオーナメンタルなアリウムの彩りをもたらすことができます。 5月下旬、草丈の高いアリウムとバラの共演する庭が待合室からよく眺められる面谷内科循環器内科クリニック。 「この庭では、紫花の‘クリストフィー’や‘パープルレイン’から始まり、ギガンチウム、白花の‘マウントエベレスト’、さらに‘ホワイトジャイアント’と続き、最後は2m近くに育つ‘サマードラマー’が6月下旬から咲き誇ります」(面谷さん) また、球根が植えっぱなしでよいものと、植えっぱなしだと土中で腐ってしまうものなど、品種による特性に違いもあるといいます。 「山陰は一年を通して雨が多く夏も暑いせいか、多くは植えっぱなしにしておくと、土中で球根が腐ってしまい翌年咲くことはありません。しかし、‘レッドモヒカン’と‘サマードラマー’はこの庭では植えっぱなしのまま数年間は花を楽しませてくれていますね」(面谷さん)。 【主な開花順(早咲き → 遅咲き)】 アリウム・クリストフィー(Allium christophii) 5月下旬〜6月初旬草丈約50cm花径20〜30cmの星型の花が球状に集まる。比較的早め。植えっぱなし不可 アリウム‘パープルレイン’(Allium ‘Purple Rain’) 5月下旬〜6月初旬草丈80〜100cm‘クリストフィー’と同じ頃〜やや後。濃紫色で花数が多く、切り花にも向く。植えっぱなし不可 アリウム・ギガンチウム(Allium giganteum) 6月初旬草丈約120cm典型的な大玉アリウム。植えっぱなし不可 アリウム‘マウントエベレスト’(Allium ‘Mount Everest’) 6月初旬〜中旬草丈約120cm白花品種。ギガンチウムよりわずかに遅れることが多い。植えっぱなし不可 アリウム‘ホワイトジャイアント’(Allium ‘White Giant’) 6月中旬草丈約150cm大型の白花種。マウントエベレストより草丈が高く、開花も少し後。植えっぱなし不可 アリウム‘レッドモヒカン’(Allium ‘Red Mohican’) 6月中旬草丈80〜100cm濃い赤紫で丸い花球の上部に、白い突起が房のように伸びる独特の花姿。植えっぱなしで数年OK アリウム‘サマードラマー’(Allium ‘Summer Drummer’) 6月下旬〜7月草丈180〜200cm最後に咲く超大型品種。植えっぱなしで数年OK アリウムの手入れのポイント アリウムは球根に栄養をたっぷり蓄えているため、基本的に丈夫で適期に植え込めばすくすく育ちます。ただし、芽吹いてから草丈10〜20cmの春の頃には、ナメクジなどが先端をかじって食害をもたらすことがあります。そのため、面谷さんはベニカXガードやオルトランなどで対処していると言います。「また、見つけたときはビニール手袋をして手で取り除いていますね。20cmより高くなってしまえば、病害虫の被害に合うこともなく、丈夫に育ちます。草丈が高くなっても風に倒れることなく支柱を立てる必要がないのも楽ですよ」(面谷さん)。 アリウム‘クリストフィー’のタネ姿。 花の色が褪せてきてもフォルムが彫刻的で面白いので、そのまま庭に残して楽しめるのもアリウムの魅力。特に‘クリストフィー’は星形のシルエットがユニークで、庭のよいアクセントに。「その後、植えっぱなしでOKの‘レッドモヒカン’と‘サマードラマー’以外は、下葉が枯れてきたら抜き取ります。茎を持って引っ張るとスルッと抜けるので、植える時より断然楽ですよ」(面谷さん)。 アリウムの球根は夏に葉が完全に枯れてから掘り上げ、涼しく風通しのよい場所で保管すれば翌年も植えることができます。ただし、ギガンチウムなどの大型品種は年々花が小さくなったり咲かなかったりすることも多いため、確実に楽しみたい場合は新しい球根を補充するのがおすすめです。小型のアリウムは比較的自然分球しやすく、毎年花を見せてくれます。 花合わせで広がる楽しみ アリウムは球根がやや高価なので効果的に使いたいもの。植える場所を絞って集中的に植栽し、見せ場をつくるとコストを抑えながら印象的に。大玉品種を主役に据え、小型種や下草を添えることで、高低差のある景観になります。また、バラや宿根草と組み合わせることで、ロマンチックにもシックにも表現できるのが魅力です。 「アリウムって他のどんな花にも似ていない個性があるので、どんな花と合わせても似合うところも好きなんです。組み合わせる花を変えることで、毎年違う表情を楽しんでいます」と面谷さん。面谷クリニックでのアリウムの花合わせを見てみましょう。 アリウム‘クリストフィー’×バラ‘スーブニール・ドゥ・ドクトル・ジャメイン’ ×シノグロッサム アリウム‘クリストフィー’ ×ダイアンサス‘グランズフェイバリット’ アリウム‘マウントエベレスト’ ×デルフィニウム‘チアブルー’ アリウム‘パープルレイン’ ×バラ‘プリュム’ アリウム‘ホワイトジャイアント’ ×バラ‘ウインチェスターキャシードラル’ ×バラ‘ヴァネッサ・ベル’ 憧れのアリウムの庭、あなたも挑戦してみませんか アリウムは庭に高さと動きを与える“魔法の花”。植え付けの工夫や品種の組み合わせ次第で、初夏の庭をオーナメントのように彩ります。丈夫で手間もかからず、それでいて印象的な景観を生み出してくれるのが魅力です。今の時期に球根を確保して、秋に植え付ければ、来春には憧れのアリウムの庭が広がります。ぜひ挑戦してみてください。
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寄せ植え・花壇

【1日で完成!】初心者でも失敗しない“大人パステル”のロマンチック寄せ植えアイデア5選
永遠の憧れ…ふんわり大人パステルの寄せ植えの秘密 ふわっと優しい色合いの花々が咲き群れて、まるで花園のようなロマンチックな雰囲気の寄せ植え。自然美の中に「プロの仕事感」が漂う組み合わせですが、あなたにもこんな寄せ植えが作れます! そのためには、まずこの寄せ植えがなぜ美しいのか、「美しさの理由」を知ることが大切です。美のありかを一緒にひも解いていきましょう。 寄せ植えの基本「色合わせ」「高さのリズム」「自然な広がり」 この寄せ植えのポイントは「色合わせ(テーマカラー)」「高さのリズム」「自然な広がり」です。そして、これらの3項目を次のようなルールで成功に導いているのが、この寄せ植えの美しさの理由です。 ★色合わせ→ピンク〜紫系を中心にパステルトーンで統一 ピンク〜パープル系の花をセレクト。左/フロックス‘チェリーキャラメル’ 右/シザンサス ★高さのリズム→「3段階(高・中・低)」の高さになる植物を用意 ★自然な広がり→あふれる花を手前に垂らす 横に広がって生育するヒナソウは、鉢からあふれ咲くように鉢縁に配置。 プロの技も、じつはコツはシンプルです。これら3つのルールに従えば、あとは好きな花を自由に選ぶだけ。鉢内での配置も難しく考えなくてOK。鉢縁に向かって草丈が低くなるように植えれば大丈夫です。むしろ、少し不揃いくらいがナチュラル。はみ出したり、揺らいだりするのが魅力です。完璧に整えようとしなくても、花たちが自分の居場所を見つけてきれいになっていくのが寄せ植えの面白さ。あなたも、まずは1つのテーマカラーを決めて、自由に植えてみて! 左は植栽直後。右は20日後。 ◾️鉢サイズ/φ68×H55cm ◾️花材/ペチュニア‘あずき’、スカビオサ、フロックス‘チェリーキャラメル’、シザンサス、デルフィニウム、ヒューケラ、ヒナソウ、ブラキカム 【寄せ植え初心者つまずきポイント】どの花を選べばいいの問題を解決! 初心者は「並んでいるもの全部がかわいい」で迷子になりがち。何を基準に選んでいいか分からないときには、「好き」を最優先に! 園芸店に並んでいるたいていの花苗は、日なたでよく育ちます。もちろん、植物ごとの細かい好み(日陰好き・水好き・乾燥好きなど)は存在しますが、寄せ植えでは隣り合わせたら育たないというものは「ない」と思って大丈夫です。心配な場合は園芸店のスタッフさんに“これは日なた向きですか?”と聞けばOK。あとは“好き”という気持ちを信じて、楽しんで植えてみましょう。 庭の主役になる大人上品ブルーの大鉢寄せ植え この寄せ植えも前述の3つの項目と同様、テーマカラーを青紫&白色に絞っています。縦に「スラッ」と伸びるサルビアを中央に、サイドに「フワッ」と自由な草姿で伸びるフロックスを、鉢縁にロベリアやブラキカム、バーベナを植栽して「こんもり」あふれ咲く自然な雰囲気にしました。寄せ植えでは「スラッ」「フワッ」「こんもり」といった擬態語を意識して植物を選んでみましょう。 【成功ポイントをおさらい】 ●青紫×白色で花色を統一! ●高・中・低の草花を鉢縁に向かって低くなるよう植栽! ●枝垂れる植物(ロベリアやブラキカム)を鉢の縁に植えて、自然に垂れさせる! パープルと白色がかすり状に入り混じる花色が個性的なフロックス‘シュガースター’。白花との相性も抜群。 ◾️鉢サイズ/φ70×H50cm ◾️花材/サルビア‘サリーファン’、フロックス‘シュガースター’、ブラキカム、ロベリア、バーベナ 花材はたった3種! ふわふわ✖️ピンク✖️グレーで大人ロマンティック 八重咲きのペチュニアとポリゴナム(ヒメツルソバ)、ピンクの斑入り葉のセリ‘フラミンゴ’の3種を組み合わせた、ピンクのワントーンコーデ寄せ植えです。グレーのローラ・アシュレイのスクエア鉢がシックで上品な雰囲気をプラスして、トータルで大人ロマンチックな雰囲気に。花材はピンクで揃えつつ、植物のフォルムの違いがお互いを引き立て合います。ワントーンコーデは花材選びが簡単で、初心者にもおすすめ。ふわふわ×ピンク×グレーは、大人ロマンチックの鉄板3条件。 ◾️鉢サイズ/W55×D18×H20cm ◾️花材/ペチュニア‘ホイップマカロン’、ポリゴナム、セリ‘フラミンゴ’ 【寄せ植え初心者つまずきポイント】色合わせが難しそう問題を解決! 色とりどりの花々が並ぶ売り場では、花色合わせに迷いがち。「センスがないと無理」「プロの見本のように見栄えよくできないのでは」と心配になるかもしれませんが、「ワントーンコーデ」は初心者でも必ず成功する鉄板ルール。「ワントーンコーデ」はテーマカラーを1色に絞り、フォルムの異なるものを選ぶのがポイントです。この寄せ植えの場合、テーマカラーはピンク。フォルムには以下のような違いがあります。 八重咲きのペチュニア→ふわふわ・丸くこんもり茂る ポリゴナム→ポンポン・這って枝垂れるように伸びる セリ‘フラミンゴ’→ツンツン・横に広がるように伸びる というようなフォルムの違いを意識すると、たった3種でも、まとまり感が出つつ、一つひとつの個性も生きて見応えたっぷり。売り場では華やかな花のほうにばかり目がいきがちですが、葉ものにもセリ‘フラミンゴ’のようなピンクの斑入りなど、おしゃれな植物があるので要チェック。 あふれる花がロマンチックな花カゴ寄せ植え 淡い紫色の八重咲きペチュニアと小花のクフェア‘ピンクシマー’、リーフ類を組み合わせた寄せ植えです。シンプルながら、花カゴから溢れ咲く姿がロマンチック。八重咲きのペチュニアが小花やリーフによって引き立てられ、主役と脇役の見どころがはっきりしているのが植物選びのポイント。 また、バスケットの容器も溢れ咲く花を引き立てる名脇役。バスケットは軽量で小ぶりなものが多く、ガーデンテーブルなどの上に飾るのにピッタリです。 ◾️鉢サイズ/W25×D17×H15cm ◾️花材/ペチュニア‘パニエ ラベンダー’、クフェア‘ピンクシマー’、アイビー、ハゴロモジャスミン‘ミルキーウェイ’、アイビーゼラニウム 【寄せ植え初心者つまずきポイント】どれくらい苗を植えればいいの問題を解決! 「苗はどれくらい詰めるの?」「あとから大きくなるんじゃない?」など、ガーデニング初心者には寄せ植えする際の苗同士の“適切な距離感”が未知数ですよね。もちろん、植物は生育するのでだんだん大きくなりますが、寄せ植えの場合はギュッと詰めて植えて大丈夫です。ポットから出した苗は、たいていの場合、土を1/4〜1/3ほど落として使ったり、場合によって株分けできるものは苗を細かく分割して配置したりします。写真のバスケットの容器では12株を植栽。 【寄せ植え初心者つまずきポイント】枯れたり乱れたりしそう問題を解決! 「最初はきれいでも維持できるか不安」「剪定とか必要なの?」と、初心者は何かと不安になりがち。でも大丈夫! 植物の栽培は、それほど難しいことではありませんよ。植物は基本的に土と水と太陽、そして風があれば育ちます。ですから、風通しのよい日なたに置いて、適切に水やりをしていればOK。基本的な寄せ植えの管理方法をご紹介します。 ◾️水やり/表土が乾いたら鉢底から流れ出るまで水をたっぷりやります。植えてある植物の数や種類、鉢の大きさで水の乾き具合は変わるので、観察することが大事。 ◾️花がら摘み/枯れた花を摘み取ることを「花がら摘み」といいます。枯れた花をそのままにしているとカビなどの原因になるので、見つけたら摘み取りましょう。 ◾️肥料/植えるときの土に元肥を施すか、元肥入りの培養土に植えます。その後は水やりの際に液肥を与えると元気に育ちます。頻度は製品によって異なるので、説明書をよく読み従います。 ◾️剪定/植物が生育して窮屈そうになってきたら、透かすように剪定したり、切り戻したりして形を保ちます。 ◾️病害虫対策/病害虫の多くの原因は風通しが悪いことによって発生するので、置き場所や剪定などによって風通しをよくし、植物を健康に育てるのが基本的な対策になります。発生してしまった場合は適用のある薬剤を用いて解決できる場合もあります。 ◾️植え替え/寄せ植えに用いる草花の多くは一年草なので、見頃はたいてい3〜4カ月です。上記の適切な手入れをしていても花が咲かなくなったら見頃の終わりです。次のシーズンの花苗で新たな寄せ植えを楽しみましょう。 彫像風の壁掛け鉢が主役のアートな寄せ植えシーン 植木鉢にはさまざまな種類がありますが、こんな彫像風のアーティスティックな鉢も。壁かけタイプなので、室内からも眺めやすく、庭のフォーカルポイントとしても効果的です。この場合は植物はごくシンプルに、1種か2種にとどめて鉢に目がいくようにするのが最適。 ◾️鉢サイズ/W33×D14×H38cm ◾️花材/インパチェンス、スイートアリッサム 【寄せ植え初心者つまずきポイント】どんな鉢を選べばいいの問題を解決! 「深さ・大きさはどれくらい必要?」「素材で育ちやすさが違うの?」と、初心者は鉢選びにもルールがあるのか悩みがちです。次の順番で考えると、どんな鉢がよいか、ぴったりのものが自ずと見えてきます。 石の壁に合わせて、グレーの鉢をセレクト。みずみずしい植物の色が引き立つワンシーン。 ① どこに置く?→置き場所に合わせたサイズを選び、背景や周りの色調に映える鉢色を選ぶと、寄せ植えのみならず、置いた場所全体が素敵な雰囲気のワンシーンになります。 テラコッタ製でデザインやサイズが豊富な英国のウィッチフォードの鉢の寄せ植え。 ② 大きさ・深さは?→一般に5号鉢(直径15cm)には3株程度の寄せ植えが可能。よく販売されているサイズは7〜15号鉢(直径21〜45cm)です。深さは最低15cm以上のものを選びましょう。鉢サイズは、まず置き場所に適していることを前提とし、以下のポイントを押さえて選びましょう。 *小さいものは水切れに注意。頻繁に水やりが必要になります。大きいものは水切れには強いですが、移動しにくいので定位置での使用を前提とします。 グラスファイバーと樹脂からなるFRP素材の鉢。 ③ 素材による違いは?→管理や扱いやすさに以下のような違いがあることを考慮して、好きなものを選びましょう。 ●テラコッタ・素焼き鉢/通気性、保水性のバランスはよいが、大きいものは重く移動が困難。色は茶系が多い。耐久性に優れる。 ●バスケット/内側にビニールを張って土がこぼれないようになっているので、水抜けのために内張りビニールを一部カットしたり、穴を開けてから使用。軽くて扱いやすく、比較的安価だが、耐久性は低めで寿命は1〜2シーズン。 ●FRPの鉢/テラコッタや素焼き鉢より軽く、耐久性に優れる。色のバリエーションがあり、デザイン性の高いものが多い。例/上記写真のようなローラ・アシュレイの鉢 ●釉薬のかかった鉢/基本的に雨のかからない場所か、室内向け。 まずはやってみよう! 明日の楽しみを自分の手で 寄せ植えに“絶対の正解”はありません。好きな花を好きなように組み合わせて、自分だけの1鉢を作ること——それこそがガーデニングの醍醐味です。日々変化していく寄せ植えは、明日が楽しみになる魔法です。最初の1歩は、小さな挑戦。でも、その1鉢が庭やベランダを彩り、日々の暮らしに喜びを運んでくれるはず。ぜひ、今日“好き”から始める寄せ植えにチャレンジしてみてくださいね。
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おすすめ植物(その他)

バラの美しさを引き立てる! 春〜初夏に植えたい草花リスト【初心者向け黄金コンビ10選】
ゴールデンウィークは庭づくりのベストシーズン みずみずしい緑を背景に次々に花が咲き、甘い香りにあふれる5月の庭。 ゴールデンウィークは庭づくりを始めるのにおすすめのタイミング。園芸店やホームセンターには、一年で最も多くの草花が店頭に並びます。なかでもこの時期は庭の主役となるバラが咲き始めて開花株が並ぶため、花の色や香りを実際に確かめながらお気に入りを選べます。 バラは上級者向けと思っている方が多いかもしれませんが、じつは近年の品種は育てるのに苦労しないものがほとんど。というのも、新品種の開発において「病気への耐性」は必須条件で、新しい品種は「丈夫で育てやすい」というのが今のバラのスタンダードなのです。もちろん、品種によりオールドローズにも丈夫で魅力的なものがたくさんあります。 庭づくりにバラがおすすめの理由 ピンクのバラはオールドローズの‘ジャック・カルティエ’。 バラは1株あるだけで、庭の雰囲気を一気に格上げしてくれる存在です。春から初夏にかけて咲く花は、香りも姿も華やかで、まるで庭に物語が生まれたような特別な空間をつくってくれます。また、バラは春だけでなく繰り返し花を咲かせるものや、秋にはシックな表情で魅せてくれるものもあります。初めてのバラ選びで迷ったら、次の3つを意識してみてください。 初心者さん向け|バラ選びのコツ 半つる性でコンパクトにまとまる‘プリュム’(ピンク)と‘フレーズ’(赤)の華やかな共演。 初めてのバラ選びといっても、難しく考えなくて大丈夫です。大切なのは、次の3つ。あなたにぴったりのバラがきっと見つかりますよ。 育てやすさ/病気に強いとお世話のハードルがグッと下がり、庭づくりが楽しめます。また四季咲きか、春だけ咲く一季咲きかも確認しましょう。四季咲きは繰り返し何度も花が見られる一方で、咲くたびに花がら切りなどのお手入れが必要です。一季咲きのほうがお手入れの回数が少なくてラク。 花の好み/色や花形、香りなど、バラの個性は多彩です。ときめいたものこそ、あなたにピッタリ! 育てる場所に合うか/環境に合っていることが、育てやすさやバラ本来の魅力につながります。 【初心者でも安心】バラと合わせたい春〜初夏の草花10選 つるバラの株元をさまざまな草花が彩る庭のワンシーン。 単体でも美しいバラですが、草花と組み合わせることで「風景」が生まれます。バラだけでは単調になりがちなシーンも、花形や草丈の異なる草花が入ることで、奥行きやリズムが生まれ「庭景色」となるのです。また、草花の緑はバラの背景として、小花はバラの愛らしさをいっそう引き立てる脇役として活躍してくれます。さらに、草花が地表を覆うことで土の乾燥や温度上昇を防ぐ効果もあります。 バラと草花を組み合わせて、あなただけのローズガーデンを作ってみてください。効果別に組み合わせに最適な草花を、バラの庭づくり10年以上という面谷ひとみさんの庭から10種ご紹介します。 【縦ラインで庭にリズムをつくる花】 1. アリウム/球根植物・花色(白、紫)・草丈(品種による)10〜120cm アリウムの白花品種。ボールのように浮かんで光に輝き庭で目を引きます。 春から初夏にかけて咲き、丸く浮かぶ球体の花は庭をとても装飾的に彩ってくれます。バラのふわっとした株姿に対し、すっと伸びたアリウムの組み合わせは、庭の印象を引き締める効果もあります。乾燥気味の環境を好み、植えっぱなしでも数年は楽しめる丈夫な球根植物です。 花火を散らしたようなアリウム・クリストフィー。ともに咲く小花はシノグロッサム(暖地では一年草扱い)。赤いバラはつる性のオールドローズ‘スブニール・ドゥ・ドクトル・ジャメイン’。トゲが少なく扱いやすい。 2. ジギタリス/二年草(多年草)・花色(白、ピンク、オレンジ、黄、紫、茶、複色)・草丈(品種により)30〜100cm 壁を彩るつるバラと共演する草丈の高いジギタリス。 釣鐘形の花が縦に並んで咲くジギタリスは、英国のコテージガーデンのようなロマンチックな雰囲気を演出するのに最適。バラと組み合わせると、絵本のような物語性あふれるワンシーンが生まれます。半日陰でも育ち、草丈が高い品種はつるバラとの共演もOK。 近年作出されたハイブリッド・ジギタリスは、これまでのジギタリスと比べて開花期が長く、秋にも花が咲き大株に育つ。ピンクのバラは‘メアリー・ディレイニー’。 3. ラークスパー(チドリソウ)/一年草・花色(ピンク、紫、青、白)・草丈50〜100cm 縦に連なる花穂が特徴のラークスパー。糸のような細かい葉も繊細な雰囲気を生み出し、バラの名脇役として活躍してくれます。支柱を添えたほうがまっすぐ育ち、風で倒れにくくなり安心です。 サルビア・ネモローサ‘カラドンナ’/宿根草・花色(紫)・草丈50〜75cm バラにはブルー系の花がほぼないので、この強烈な青紫の花を組み合わせることでドラマチックなシーンを生み出します。細い花穂状にもかかわらず、茎はしっかりと立ち上がり支柱は不要。シャープな紫のラインはモダンな雰囲気の演出にもおすすめです。 【株元をふんわり彩る小花系】 5. ダイアンサス‘グランズフェイバリット’/多年草・花色(赤、白、ピンク、黄、複色)・草丈約40cm 白にラズベリーピンクの縁取りが入る八重咲きの小花はバラを思わせます。シルバーグリーンの細い葉や茎も美しく、バラの下草にぴったり。開花期も長く秋まで花が咲きます。 6. ギリア・トリコロール/一年草扱い・花色(白、ブルー)・草丈40〜60cm 水色で縁取られた白色の小花が群れ咲き、可愛らしく繊細な雰囲気をつくってくれます。英語で「バードアイズ」とも呼ばれる黒い花心がおしゃれ。 7. アスペルラ/一年草・花色(青紫)・草丈約30cm 青紫のふわふわした小花が株を覆うように咲きます。株元からよく枝分かれして横に広がり、バラの株元をブルーのベールをかけたように彩ってくれます。 8. フロックス(一年草タイプ)/一年草・花色(ピンク、白、黄、複色)・草丈15〜25cm 左はベージュに花心がラズベリー色になる‘チェリーキャラメル’、右は‘クリームブリュレ’。密に咲く小花がバラの株元を優しく彩りながら、長期間咲き続けるので、庭に花の彩りを途切れさせません。日当たりと風通しのよい場所に植えれば、初心者でも育てやすい草花です。 バラの株元を彩るフロックスの小花が愛らしい。 【バラと一緒に咲いて華やぐ主役級の花】 9. シャーレー・ポピー/一年草・花色(赤、ピンク、白、複色) 風に揺れる薄い花びらのシャーレー・ポピーは、華やかで儚い雰囲気を一瞬で完成させます。直根性で根をいじられるのを嫌うので、ポット苗は根を崩さずそっと植えます。こぼれ種でも増えます。 光を透かす薄い花びらが魅力のシャーレー・ポピー。 10. クレマチス/宿根草・花色(白、赤、ピンク、紫、青、茶、黒、複色)・つるの長さ(品種により)20〜300cm以上 つる性と木立ち性があり、花形や花色も多種多様です。つるバラとつる性クレマチスの組み合わせは壁を華やかに彩る黄金コンビ。クレマチスは直根性で根をいじられるのを嫌うため、バラと組み合わせる場合は株幅を50cmほどあけて植えると、それぞれの管理がしやすいです。 草花選びのヒント【初心者向け】 バラとシャーレー・ポピーが共演する花壇。レンガの花壇の下にはこぼれ種で増えたエリゲロンが小花を群れ咲かせる。 バラと草花を組み合わせるとき、ちょっとしたコツを押さえるだけで、庭がぐっと自然で美しく見えます。 「ライン」を取り入れると、バラとの対比が美しいバラのふわっとした花や株姿に対して、空に向かって伸びるライン状の草花を組み合わせると、庭にリズムと立体感が生まれます。 「株元カバー」で自然な一体感をバラの株元に小花が広がると、足元からふんわりとしたつながりができ、より自然な景色に。 「色合わせ」は無理にそろえず、バラに似合う1色を選ぶだけでOK完璧に色を揃えようとしなくても大丈夫。「このバラにはこの色が似合いそう」と思った1色を選ぶだけで、庭に統一感が生まれます。 難しく考えず、「好き!」と感じた草花から始めて最初は直感でOK! 育てるうちに、自然と「自分らしさ」が見えてきますよ。 まとめ|バラと草花で、春の庭に“動き”と“光”を バラと草花の組み合わせで、春の庭はぐっと生き生きと輝きます。ふわりとそよぐ小花、すっと立ち上がる花穂、バラの優雅な花姿──。さまざまな草花とバラとの共演で、春の庭に動きや陰影が生まれ、素敵な庭景色が出来上がっていきます。 この春、花たちと一緒に、あなただけの庭時間を楽しんでみませんか? 小さな1歩から始めた庭づくりが、きっと未来に、美しい景色を届けてくれるはずです。
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宿根草・多年草

【実例でよく分かる!】花が咲かない、少ない…クリスマスローズの悩みを横山直樹さんが解決!〜Dr.横山のクリスマスローズ診察室〜
【診察①】環境は理想的…でもクリスマスローズが咲かないのはなぜ? 2020年の庭の様子。樹木の下で‘プチドール’がたわわに咲いて春爛漫の風景。 面谷さん:横山さんが作出されたクリスマスローズの‘プチドール’。数年前までは何十輪と花を咲かせ、圧巻の花姿から「まるでメガドールだね」と冗談を言っていたのに、数年前から数えるほどしか花を咲かせなくなってしまいました。このエリアは庭の南東で、落葉樹のウワミズザクラの下なので、クリスマスローズが好む「冬から春は日が当たり、夏は木陰」という好条件のはず。近くにバラも植わっているので、適度に肥料も効いているはずなんですが…。植えて7〜8年くらい経ちますが、寿命なんでしょうか? Dr.横山:クリスマスローズは限りなく寿命が長くて、40年以上も花を咲かせている株もあるくらいなんです。ですから、植えて7年の株が寿命ということはないし、栽培環境としても申し分ないですね。咲かないなあって思うようになったのは、去年が初めてですか? 面谷さん:いえ、ここ2〜3年くらいかな。 赤丸が2024年の‘プチドール’。 Dr.横山:なるほど。栽培環境もよくて、今までよく咲いていたクリスマスローズが咲かないなと気づいたとき、1年は様子を見てほしいんですよ。というのは、その時たまたま気候や環境の影響によって咲かないけれど、次の年はまたいつもどおりに咲く、というケースもよくあるんですよね。だから、1年はまずは見守ってあげて、次の年もまた咲かないということであれば対処する、というのが基本的な考え方です。 【Dr.横山のワンポイントアドバイス】 クリスマスローズが咲かない、花が少ないという場合、1年はそのまま様子を見ましょう。翌年は再び以前のように咲くこともあります。2年連続で咲かない場合は、原因あり! Dr.横山:このケースの場合、こういう状態になって2〜3年ということだから、たまたま咲かないんじゃなくて、何か原因があると考えましょう。ここは見たところ、5〜6㎡のエリアにウワミズザクラと‘プチドール’のほかにもクリスマスローズが数株、そのほかに球根類や草花も植わっているので、年数を経てそれぞれが生育して、手狭になってきている可能性が高いかもしれないですね。 面谷さん:そうなんです。クリスマスローズもこぼれ種でいつの間にか増えたし、鳥が落とした種子からホタルブクロもすごい増えちゃったし、1つのところにいろんな植物が多すぎるのかな。 Dr.横山:それが必ずしも悪いわけじゃないし、僕はこうやってクリスマスローズがほかの花と仲よく咲いているのはとっても好きですよ! ただ、ホタルブクロがすごい勢いで発芽しているのが気になるかな。とにかく、ちょっと掘り上げて見てみましょうか。 地植えのクリスマスローズの掘り上げ方 【Dr.横山のワンポイントアドバイス】 クリスマスローズは10年近く植えたままにすると、連作障害を起こすことがあります。2年連続で花が少なかったり、咲かなかった場合、また細かい葉ばかりになってきたら、株を掘り起こしてみましょう。株分けをしたり、違う場所に植え替えることで刺激が与えられ、再び元気に育ち始めます。 【診察②】根詰まりと競合植物が原因だった! ウワミズザクラの太い根が‘プチドール’の株の下に入り込んでいた。 Dr.横山:面谷さん、ほら、‘プチドール’を掘り上げた穴を見てみてください。ウワミズザクラの太い根っこが‘プチドール’の株の下に入り込んでいました。花が咲かなくなったのは、きっとこれが主な原因ですね。掘り上げた‘プチドール’の根っこにもホタルブクロの根がたくさん絡んでいるし、 ‘プチドール’が十分に根を伸ばせなかったんですね。 抜いた‘プチドール’の株を見ると、ほかの植物を避けるように、新芽が下へ潜りつつ横へ横へと出てきていた痕跡がありますね。ここでは十分な養分が得られないから、逃げるように株が新天地を求めて移動しようとしていたということです。 面谷さん:あらぁ、ここは窮屈だったんだ。気がつかず申し訳ないことをしてしまったなぁ。でも動かないと思っていた植物が、逃げようとして動くなんて大発見だわ。掘ってみるといろんなことが分かるものですね! ところで、この‘プチドール’はどうなりますか? もうダメなんでしょうか? 【How to】根詰まりのクリスマスローズの再生方法 掘り上げた‘プチドール’。赤丸で囲んだ白っぽい根は、新しい根。 Dr.横山:大丈夫! 私、失敗しないので! この‘プチドール’は、少ないけれどもまだ新しい白い根を出しているので、ひとまず鉢に掘り上げて夏は半日陰で養生させ、秋に植え直してあげましょう。僕がクリスマスローズのために長年研究して作った横山園芸のオリジナル培養土に植えておくと安心ですよ。水はけもよく、肥料もちも適度で、固すぎず柔らかすぎず、植物の根に優しい土です。掘り上げた株は根っこがダメージを受けているので、鉢上げの際は肥料ではなくて、「活力剤」をあげておくといいですよ。 掘り上げた‘プチドール’の、新芽が出ていた部分を株分け(本来株分けは秋がおすすめ)。鉢に植えて養生させることに。 面谷さん:秋には同じ場所に植え直していいですか? それとも別の場所のほうがいい? Dr.横山:同じ場所でもいいんですが、このままの状態ではなくて、一度大胆にこのエリアをリフォームしたほうがいいと思うな。というのも、年数が経ってウワミズザクラの根っこが張り巡らされているうえに、球根や宿根草の根も絡み合っているので。いわばこの植栽エリアは、盆栽の鉢の中のように根っこがギュッと締め固められている状態なんです。ですから、いったん樹木以外の植物を抜いて土壌改良をしたうえで、植物の数を減らして植え直してあげたら、また以前のようにたくさん花を咲かせるようになりますよ。 面谷さん:ああ、よかった! 庭ではたくさんのクリスマスローズを育てているんですが、「これは初めてサンシャインで買った株」とか「子どもが卒業した時に買った株」とか、どれも思い出があって大事にしているんです。この‘プチドール’にも「横山先生に助けてもらった株」というありがたい経歴ができました。とりあえず、秋まで鉢上げして療養入院ですね。私、元看護師なので、しっかりお世話させていただきます! 【診察③】日陰の庭では「控えめな咲き方」を楽しむのもアリ 面谷さん:先生、こちらの北の庭でも花がポツポツとしか咲かなくなってしまったんですが、ここも掘り上げて様子を見たほうがいいでしょうか。 Dr.横山:ここは見たところ、先ほどのエリアとは原因は別にありそうですね。まず、環境が先ほどの日なたの庭と全然違って、ここは日陰で立ってるだけでも寒いなぁ。 面谷さん:そうなんです。ここは建物の陰になる北側の庭で、日が当たるのは早朝の数時間で、10時くらいにはもう日陰になっちゃうかな。日陰すぎて、ここは無理なんでしょうか? 植えた当初は何輪も咲いていたのに、みんな1本立ちの可哀想なスタンダードみたいになってしまって…。 Dr.横山:大丈夫! 私、失敗しないので! 日陰ということもあるけど、朝日は浴びているわけですから、栽培環境としては悪くはないんですよ。ただ、ここは先ほどの日なたの庭と違って、土が痩せてる感じがしますね。ここはほかの場所ほど、肥料が足りていないんじゃないかな。ビオラやパンジーもほかのエリアと比べて、株が小さいですもんね。 面谷さん:先生のおっしゃるとおり! ここはバラとか宿根草をあまり植えていなくて、他の場所より断然肥料をやっていないんです。でも、春になるとサクラソウとか原種シクラメンとかエビネとかがポツポツ咲いて、その控えめな感じがかわいいんですよ。 Dr.横山:うんうん、僕もこの控えめに咲くクリスマスローズの感じもすごくいいと思ったんですよ。必ずしも、いっぱい咲かせることだけが、正解じゃないと思うんだよね。2〜3輪で控えめに咲いても、クリスマスローズってかわいいし、場所の雰囲気に合ってるならそれでいいと思うんです。だから、ここはこのままでもいいけれど、もしもうちょっと花を咲かせたいと面谷さんが思うなら、腐葉土や肥料を施して土を肥えさせましょう。 そうだな、ここはあと5cmくらい腐葉土や堆肥を重ねておくといいと思います。毎年、そうやって秋に定期的に腐葉土や堆肥、肥料を与えれば、もっと花つきがよくなるはずです。それから、これまではきっときれいにお掃除されていたんでしょうけど、このエリアにも落葉樹がいくつか植わっているので、秋の落ち葉を植栽エリアに寄せておくのも効果的ですよ。 夏は緑陰が涼しい北の庭。 面谷さん:なるほど〜。落ち葉を活用すればよかったんですね。今年からそうします! ここはほかのエリアより花は少ないんですが、雑木林のような自然な雰囲気が好きなんです。夏なんかは木陰がとっても涼しくて、ガーデニングの最中の避難所にしているんですよ。 Dr.横山:面谷さん、クリスマスローズにとっても、ここは夏の間の避難所として最適ですよ。さっき掘り上げた‘プチドール’みたいに、ちょっと生育が心配だなというクリスマスローズを養生させておくのにぴったりの場所ですよ。 面谷さん:それはいい考えですね! では、ここはクリスマスローズの保養所にすることにします! それにしても同じ庭の中でも、いろいろ環境条件が違って、咲かない理由も1つではないんですね。 【Dr.横山のワンポイントアドバイス】 日照不足の場所は、しばしばお世話が忘れられて肥料不足になっていることもよくあります。その場合、腐葉土や堆肥などで土壌改良をすることでクリスマスローズの花付きがよくなります。しかし、育て方の目標は必ずしも「たくさん咲かせる」ことだけではありません。その場所の雰囲気に合っていれば、花が少なくても魅力的に見えるものですよ。 【診察④】“葉ばかり茂る”のは古葉切り不足かも! 古葉切りをしたクリスマスローズ。見事な花つきの大株。 Dr.横山:あと、よく質問されるのは、葉っぱばかり茂って花が咲かないんです、というお悩み。これは古葉切りをまったくしていないと、そうなることがあるんですね。無茎種(多くは無茎種)は晩秋から冬にかけて、古葉を切るのがクリスマスローズの管理の基本です。切られる刺激でホルモンが働き、開花が促されるという仕組みになっているんですよ。 面谷さん:先生、いつ切ってもホルモンが働き、開花が促されるんですか? Dr.横山:そうそう、だから例えば夏に傷んだ葉をバンバン切ってしまうと、暑くて休眠しているクリスマスローズが動き出して、余計な体力を使って枯れてしまうことがあるから注意しましょう。基本的に古葉切りは11〜2月の間に行います。葉を切ることで株元にも日が当たり、寒いなかでも地温が上がってつぼみが伸びてくるんです。面谷さんの庭のクリスマスローズは、ちゃんと古葉切りがされていますね。 面谷さん:はい! 米子は1月になったらたくさん雪が降って作業ができないこともあるので、いつも12月までにせっせと古葉切りをしています。じゃあ今、春から新たに葉っぱが出てきて、5月はフサフサになるじゃないですか。それは新葉だから切っちゃいけないということですね。 【楽しむヒント】咲き終わりの花でブーケを作ろう! Dr.横山:そのとおりです。それが晩秋になったら「古葉」という扱いになるわけです。晩秋から冬になると、古葉が外側に倒れてくるので、全部切らなくてもいいですけど、株元5cmを残して切るといいですよ。米子のような雪の降る地域は、冬のガーデニングは寒くて大変なことも多いでしょうけれど、雪国ならではのいい花が見られるという特典もあるんですよ。日当たりのいい場所に咲いているクリスマスローズは、茎がとても太くて充実しているでしょう。これは厳しい寒さに耐えたからこそなんですよ。面谷さんはアレンジメントも得意だから、こういうしっかりした茎の花はブーケにもいいんじゃないですか。 朝一でクリスマスローズを庭から摘んで、ブーケを束ねる面谷さん。 面谷さん:そうなんです! というわけで、診察のお礼に、先生にブーケをプレゼントします! 庭のクリスマスローズを摘んで作ったブーケです。横山先生の「よしの」も入っていますよ。 Dr.横山:わぁ、なんて贅沢なブーケ! ありがとうございます! 4月はそろそろ花が咲き終わって色あせてくるので、そうなったら早めに花茎を切るのが翌年のためにもいいんです。もったいないと思うかもしれませんが、こうやってブーケにすると花の顔もよく見られていいですよね。クリスマスローズを育てている人はぜひ、4月はクリスマスローズのブーケを作ってみてくださいね。 クリスマスローズのブーケをもらったDr.横山、満面の笑み! 【まとめ】咲かない原因は1つじゃない! クリスマスローズが咲かない原因は1つではありません。今回ご紹介した以下の原因をチェックして、それぞれ適切に対処しましょう。 【地植えのクリスマスローズが咲かない主な5つの原因】 根詰まり 他植物との競合 栄養不足 日照不足 古葉切りの不足 そして、1年目は様子を見るのも大事。2年連続で花が咲かないときは、今回の面谷さんの庭のように“掘り上げてみる”のが原因判明の近道かもしれません。 次回は鉢植えのクリスマスローズのお悩みについてご紹介します。
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【今が買い時!】まるで青い妖精の庭…ネモフィラが彩る夢のガーデンの作り方
世界中の人が夢中になるネモフィラ・ブルー 国営ひたち海浜公園の「みはらしの丘」。Spyan/Shutterstock.com ネモフィラの最大の魅力は、幻想的なブルー。多くの人が心を奪われるこの青の世界が、茨城県の国営ひたち海浜公園にあります。ネモフィラといえばこの場所を思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。4〜5月にかけて約530万株のネモフィラが咲き誇るここ「みはらしの丘」には、GW中だけで30万人を超える人々が訪れます。空と海、そしてネモフィラが一体となる絶景は、まさに「空の青に包まれる奇跡の場所」。「一生に一度は見たい風景」として毎年大きな話題を呼び、国内外の注目を集めています。 「みはらしの丘」の壮大なスケールとは異なりますが、その幻想的な美しさを、自宅のガーデンに再現できるのも、ネモフィラの魅力。光が差し込むと花びらがほんのり透け、庭全体がふんわりとした青のグラデーションに包まれます。春のやさしい青空を切り取ったかのようなネモフィラ・ブルーは、どんな庭にも清らかでロマンチックな雰囲気を添えてくれます。 ネモフィラってどんな植物? 繊細なブルーが魅力のネモフィラ。hasetetsu/Shutterstock.com ネモフィラは、別名「瑠璃唐草(るりからくさ)」とも呼ばれる一年草。やわらかなブルーの花びらが特徴で、春になると空のように澄んだ花が一面に咲き広がります。日本の平地では、例年4月中旬から5月上旬にかけてが見頃。草丈は10〜30cmとコンパクトで、グラウンドカバーや寄せ植えにもぴったりです。苗が出回るのはちょうど今頃、3月中旬〜4月上旬で、植えてすぐにキレイな風景が楽しめるのも魅力。手がかからず育てやすいので、ガーデニング初心者にもおすすめです。 ネモフィラの魅力を堪能するガーデンデザイン ネモフィラはどんな植物とも相性がいい春の名脇役 チューリップ‘アプリコットインプレッション’とネモフィラの共演。 国営ひたち海浜公園ではネモフィラが主役ですが、私の庭では脇役として活躍してくれています。ネモフィラのブルーはどんな花色とも相性がよいので、本当に便利。毎年、春にはチューリップを植えるのですが、何色のチューリップと合わせても上品になるのが、お気に入りの理由の1つです。草丈10〜30cmというサイズ感も、チューリップの株元を彩るのにぴったり。 チューリップ‘レモンシフォン’やイエロー系のパンジーとも相性抜群。 チューリップは前年の晩秋から冬にかけて植えたものが芽を出しているので、その間にネモフィラの苗を植え付けるようにします。あまり大胆に掘り返してチューリップの球根を傷めないように注意しましょう。ネモフィラの根は浅く広がるので、少し穴を掘って植え付け、上から盛り土をするような感じでもOKです。 季節をつなぐ役目を果たしてくれるネモフィラ 4月上旬の庭。ネモフィラがチューリップの脇役として活躍。この頃はネモフィラの草丈は20cm程度。 ネモフィラは庭の主役がチューリップからバラへと交代する際、間をつなぐ役目も果たしてくれます。私の庭がある鳥取県米子市ではチューリップは4月いっぱいまでで、バラはもう少し先、5月中旬以降に見頃となります。バラが見頃となるまでの1〜2週間、わずかな端境期が生まれるのですが、その間の庭の彩りをつないでくれるのがネモフィラです。 群植・連続植えでネモフィラ・ブルーを発揮 チューリップが終わった後、草丈が30cmほどになったネモフィラが庭を幻想的に演出。 3月中旬に植え付けたネモフィラは、5月初旬には草丈も株張りも30cmほどになっています。それが春風に揺れると、まるで「花の波」のよう。ネモフィラは花の一つひとつは繊細で小ぶりなため、1株だけでは“青”の印象が淡く、その魅力が最大限に発揮できません。複数株を一定の間隔で植え続けることで、視線を引く美しいラインや面が生まれ、ブルーの魅力が際立ち、あの「ネモフィラ・ブルー」が真価を発揮します。特に春先のガーデンは、宿根草のボリュームがまだ控えめなため、ネモフィラの連続植栽がとても映えます。 花壇の手前にネモフィラを連続植栽。 <植え方のコツ> ●この庭では小道の両側や花壇の縁に沿って連続的にブルーがつながるように、手前から奥までネモフィラを植栽。連続させることによって、景色の中に「青の流れ」を作るようにします。 ●ブルーのボリュームが出るように、1箇所に株間を10〜15cmとって3株程度を植えます。これを連続的に繰り返すと「青の流れ」として認識しやすくなります。 ●植栽帯や花壇の「手前」にネモフィラエリアを作るとブルーが目立ちます。これは抜く際の考慮でもあります。 1株では感じにくい“空を歩くような感覚”は、群れ咲くことで初めて生まれるもの。ネモフィラは「広がってこそ美しい」という特性を活かし、庭に青の物語を描くように植えてみましょう。 ネモフィラのお手入れ&終わったらどうする? チューリップの間に咲くネモフィラ・インシグニス(左)と黒花のネモフィラ‘ペニーブラック’(右)。 ネモフィラは開花中の手入れはほとんど必要ありません。パンジー・ビオラのように、こまめな花がら摘みをせずともOK。ネモフィラは自然に次々と花を咲かせるタイプで、咲き終わった花がタネになってもすぐに見苦しくなることは少なく、花がら摘みをしなくても長く楽しめます。基本的に水はけと日当たりがよければ、放任でもキレイに育ちます。 ネモフィラは5月中旬には花が終わるので、花後は抜く必要があります。その時期はほかの宿根草が旺盛に茂っている最中ですから、抜く際に他の植物を傷めてしまうのでは? と心配になるかもしれませんが、次のようにすれば問題なく、他の植物との組み合わせが楽しめます。 ネモフィラは草丈が低く前景向きの植物なので、宿根草の手前に、20〜30cmほど離して植えます。ネモフィラの根は浅く広がるので、このくらいの間隔があれば他の植物の根を傷める心配はありません。抜いた後は宿根草が勢いを増して茂ってくるので、隙間ができず自然にきれいな風景になります。 心配な場合はネモフィラを抜かずに、株元をハサミで切って、根は土中に残してもOK。根は分解されて宿根草の邪魔にはなりません。 寄せ植えでも活躍するネモフィラ 同じブルーのデルフィニウム‘チアブルー’の株元をネモフィラで彩った寄せ植え。枝垂れ咲くのはクレマチス・ペトリエイ。 ネモフィラは横にやさしく広がる草姿をしており、寄せ植えの中で “ふんわり感”や“抜け感”を演出してくれます。ぎっしり詰まった寄せ植えに軽やかさを加えられる、まさに名脇役。さらに、印象的でありながら派手すぎない淡い青色は“つなぎの色”としても優秀で、他の花色を引き立てながら全体を調和させる効果があります。 淡いピンクのラナンキュラス・ラックスともネモフィラのブルーは相性抜群。 寄せ植えでのネモフィラの使い方アイデア 前景・垂れ下がり役に こぼれるように咲くため、鉢の前面や縁に配置すると自然な流れが出て美しい仕上がりに。 ブルーで“抜け感”を演出 濃い色の花が多い寄せ植えにブルーを加えることで、軽やかで透明感のある仕上がりになります。 単色トーンでまとめてナチュラルに ネモフィラを中心に、ホワイト〜ブルー系の花でまとめると、シックで爽やかな寄せ植えが作れます。 ネモフィラは、ナチュラルでロマンチックな雰囲気を添えてくれる頼れる存在。他の草花とも馴染みやすく、カラーコーディネートや立体的な演出がしやすいのが魅力です。春のガーデニングに、ネモフィラのやさしいブルーを取り入れて“小さな春の物語”が始まるような庭や寄せ植えを作ってみてはいかがでしょうか?



















