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【実例】縁側のある庭|飛び石・垣根・苔で魅せる追憶の和風庭園

【実例】縁側のある庭|飛び石・垣根・苔で魅せる追憶の和風庭園

奥様と幾度も訪れた京都の記憶を、日常にそっと映す和の庭。飛び石と苔の築山が導くアプローチを進むと、建仁寺垣を背景にした美しい主庭へ。縁側でくつろぎ、居間から眺めて思い出に触れることができる静かな和風庭園の実例を、新潟県三条市からご紹介します。伝統と新技術が融合した、メンテナンスフリーの四ツ目垣や建仁寺垣にも注目です。

庭の背景―“京都の風景を、毎日の視界に”

施主様の依頼は和の趣の庭。奥様と京都を何度も旅されたというお話を伺い、その記憶がふとよみがえる風景を目指し、最も長く過ごす居間に主庭の風景を据えました。縁側に出て季節の空気を感じられる場所を確保。動線は短くしつつも、視線は豊かに深く導く、設計が見どころです。

“見せて隠す”入り口の四ツ目垣

“見せて隠す”入り口の四ツ目垣

公道から240cm程度奥に下がったところに、境界として、四ツ目垣を設置。垂直に立てる「立て子」と、水平に渡す「胴縁」で方形の透かしをつくる伝統意匠は、庭の飛び石や景石をほのかに見せ、和の情緒を高めます。

四ツ目垣の透けた向こうに飛び石や景石が見える
四ツ目垣の透けた向こうに飛び石や景石が見える。
駐車場のこげ茶色の立て格子で手前の四ツ目垣根が引き立つ
駐車場のこげ茶色の立て格子で手前の四ツ目垣根が引き立つ。

四ツ目垣の名称の由来は、透かし模様が四角形に見えることから。茶の路地庭園には欠かせない仕切り垣とされています。実はこの四ツ目垣の竹は、樹脂でつくられた人工の竹で、シュロ縄で結んでつくっています(合成竹垣材料 こだわり竹®・エコ竹 タカショー)。

竹のしなやかな素材感を再現しつつ、屋外耐候性と耐久性を両立します。

道路から右手に駐車場がありますが、ここにはこげ茶色の立て格子が使われており、四ツ目垣の明るい色が際立ちます。

飛び石や延べ段のアプローチ

飛び石を歩きながら左右の景石や植栽を眺める。
飛び石を歩きながら左右の景石や植栽を眺める。

四ツ目垣の間を抜けると、白砂利に飛び石、苔の築山、延べ段が連なります。ここは歩いて味わう序章の庭。

飛び石は昔、着物で歩くことから、歩幅を40cm前後でしたが、今では現代の歩幅に合わせて、40~60cm程度に設定。

飛び石と延べ段、コケの築山の共演
飛び石と延べ段、コケの築山の共演。

飛び石を踏んで歩みを進めると、右手は四ツ目垣、足元はコケ、左手はこんもりと盛り上げた苔の築山に、アオダモの株立ちが。飛び石と延べ段の組み合わせも日本の芸術を感じさせるデザインです。

主庭の構成は紅枝垂れを核に、建仁寺垣で背景を整える

建仁寺垣のある和風庭園
建仁寺垣のある和風庭園。

主庭は紅色の紅枝垂れ(ベニシダレ)を核に、左右に植栽を配置。建仁寺垣のアイボリーよりの黄色と植物の色彩構成が見事。

地面は白砂利と苔の緑、要所に影石と飛び石を置き、居間から眺める風景として過不足のない風景に。単調になりがちな奥行き方向は、樹高差と色の重ね、コントラストで抑揚をつけました。

メンテナンスなしで長持ちする建仁寺垣

経年劣化に強い人工竹垣(エバーバンブー)
経年劣化に強い人工竹垣(エバーバンブー)。

じつは、この建仁寺垣も樹脂でつくられた竹垣で、内部はASA系樹脂で耐候性、耐熱変化、耐退色性に優れ、表面はABA系樹脂で、機械的衝撃強度の高い樹脂です。著しい変色や割れについては、5年保証といわれていますが、10年でも長持ちするようです(エバー2型セット【エバー建仁寺セット】タカショー)。

建仁寺垣とは、京都の建仁寺に由来する最も一般的な竹垣の一種で、割竹を垂直に隙間なく並べ、半割の竹を押縁にして水平に並べ、シュロ縄で結んで固定しています。

奥からお庭を眺める

手前のノムラモミジの植栽で生きる遠近感
手前のノムラモミジの植栽で生きる遠近感。
灯籠、筧、手水と景石
灯籠、筧、手水と景石。

庭の一番奥まで進み、振り返ってみると、手前のノムラモミジの向こうの背景の奥行き感が見事です。ベニシダレの脇にある灯籠、筧、手水(ちょうず)の配置バランスも絶妙。正に和風庭園の象徴で、飛び石の並びで手水(ちょうず)に向かう動線をつくっているところがポイントです。

濡れ縁と飛び石
濡れ縁と飛び石。
自然で趣のある延べ段
自然で趣のある延べ段。

右手には濡れ縁に行く段差の工夫や、帰り道になる瓦をはめた延べ段など、石の並びが和風満載の趣を感じました。

出口に向かうまで退屈しないアプローチ

足元の飛び石周辺の植栽や景石
足元の飛び石周辺の植栽や景石。

帰り道の飛び石廻りの景石と、下草の配置具合やコケと細かい白砂利の境界の曲線が柔和なイメージ。

歩きながらの眺めは飛び石の配置で
歩きながらの眺めは飛び石の配置で。

出口は直線で抜けず、右手に大ぶりの景石を据え、飛び石を左から右へ、大きく曲げることで歩速を緩め、見送りの景色を演出。

苔と白砂利の柔らかな曲線境界、点在する下草が視線を拾い、最後まで退屈させません。

まとめ

まとめ

和風庭園は竹垣、砂利、飛び石、延べ段、景石や、植栽の配置具合で、趣のある雰囲気が生まれ、落ち着きや安らぎを感じる庭になります。

灯籠や筧(かけい)、手水鉢(ちょうずばち)を設置することで、和風庭園のイメージが強調されます。この現場事例では築山をコケにしていますが、タマリュウやシダ類を植えている例や、延べ段も、デザインバリエーションは豊富です。

また、植栽もマツなどの針葉樹やイロハモミジなどの紅葉がキレイなものなどさまざま。メンテナンスの労は少なく、四季ごとに穏やかに変わる風景を楽しめるのが和風庭園の魅力。ガーデン計画の選択肢の一つとしておすすめです。

設計施工:帝樹園 庭正 長橋正宇

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