今回ご紹介する外構デザインは、2025年の1月、神奈川県藤沢市にオープンしたカフェ「GAKU NO TOBOE(がくの遠吠え)」から。アルゼンチンで最も有名な「エンパナーダ」という半円形のパイが自慢の、愛犬同伴で楽しめるお店です。ここでは、ファサード回りのエクステリアや、ドッグエリアである室内風のテラス席、店内の内装のポイントをご紹介。アンティーク風のおしゃれなデザインの参考に、そして愛犬家やアルゼンチンメニューに興味のある皆さまは、ぜひご覧ください!
目次
レトロな外観デザインが目を引くカフェ

これまでいろいろなエクステリア現場を取材してきましたが、カフェ「GAKU NO TOBOE」は極めて珍しい外観デザインです。建物全体の大部分を占めるベースカラー(基調色)はこげ茶色で、アクセントカラー(強調色)としてベージュの石壁を中央付近に配置。全体がこげ茶色の中に、明るい石壁のコントラストが効いています。この石壁、目地がないことを不思議に思って施工担当者である「ヘブンズガーデン」の宮元健太さんに尋ねてみると、「じつは、90×240cmの1枚の紙のように薄い石材を張り付けているので、目地が入っていません」とのこと。石の質感があり、ベージュの中にもいろいろな色が微妙に混ざり合っているので単調になりません。

石壁の左右両側にある鎧戸のような壁、さらにその隣の白目地の黒いタイルが印象的な腰壁に、ガラスのようなポリカーボネート素材の窓にかかる桟のレイアウトなど、全体的にどこか懐かしいレトロ感満載なデザイン。
ポリカーボネートは、ガラスの約200倍以上、アクリル樹脂の約50倍以上もの割れにくい「耐衝撃性」、マイナス40℃~120℃という幅広い温度範囲で使用可能な「耐熱性」、燃えにくい「自己消火性」、紫外線に強い「耐候性」を備えたエンジニアリングプラスチックです。ガラスのように透明性のあるもののほか、半透明の素材もあり、カーポートの屋根などにもよく使われます。

また、縦板張りの部分には黒いスチールのフラットバーを設置し、レトロ感を強調しています。
花壇やステンドグラスでアクセントをプラス

店舗の横はご自宅のエントランス前になっていて、ここには黒タイル×白目地の花壇が設えられています。花壇は、店舗正面の黒タイルで仕上げた腰壁と同様な仕上げで、統一感をアップ。花壇の背景となる壁面は、こちらも店舗正面と合わせた縦板張りで、上部にはステンドグラスも取り付けられています。全体の構成として、日本住宅のように、濃いこげ茶色の梁や柱をデザインの中心に据えていることがイメージを引き締め、まとまりを生むポイント。この構成も、レトロ感を演出している源のようですね。


花壇の背景にあるこげ茶色の柱の足元を見ると、丸い何かが貼ってありました。近づいてよく見ると、施工会社のエンブレム! 施工会社名を表示するのは設計施工に責任を持つという意味もありますが、この社名エンブレムはそれだけではない素敵さ。こうしたエンブレム1つとっても、会社としてのセンスのよさを示す大切な要素です。
落ち着けるテラス席は愛犬と一緒に


続いて、店内のデザインを拝見。入り口の扉を開けると目の前にあるのは、ドッグエリアでもあるテラス席です。壁があり、座席によっては仕切りもあるので、テラスでありながらも室内のように落ち着いた雰囲気。愛犬も一緒に入れるので、お散歩途中に寄るには最高のスペースですね。天井部分は屋根ではなくシェードを設置しているため、柔らかい光が入ってきます。外観同様に、縦板張りや鎧戸風のデザインがされた壁は、ポイントとなる柱で切り替えられています。



この空間を彩るのは、赤、紫、青色に輝くステンドグラスや、レトロデザインの壁に取り付けるブラケットライトなど。額装された素敵な絵も飾られています。どこを見てもとってもおしゃれで、つい長居したくなりますね。

店内はアンティークな素敵デザインが目白押し!

テラス席の奥は室内エリア。明るいベージュベースの壁紙にこげ茶色の腰壁の組み合わせがシックで、天井に目を向ければこげ茶色の化粧梁や垂木が印象的な、落ち着いたデザインです。窓にはめ込まれた繊細なステンドグラスが美しく、立派な船の置物と相まって、瀟洒な雰囲気を作り上げています。

店内の全てのインテリアは、色とデザインの方向性が統一され、選び抜かれた空間演出がされています。



ここで、壁の一部にこげ茶色の小さな扉を発見。取っ手がついているので開けてみると、なんと照明のスイッチがありました。このケースはオーナーのDIYとのことですが、スイッチを隠すことで空間の完成度がより高まりますね。また、テイクアウトメニュー板も、ワインのコルクを並べたベースにメニュー板をつけたオリジナルなデザイン。小物一つひとつにオーナーのこだわりを感じました。

まとめ

ペット同伴可の飲食店は以前に比べれば増えましたが、それでもペット家族数から比較するとまだまだ少ないのが現状です。
今回ご紹介したカフェ「GAKU NO TOBOE」は、そんな貴重な飲食店。店内は明るいベージュをベースに、こげ茶色をアソートカラー(配合色)として腰壁や化粧梁、垂木に採用し、ブラケットライトやステンドグラス、素敵な絵を飾って、一貫してアンティークなインテリアの雰囲気を作り上げています。
そして外観であるファサード全体とインテリアのようなテラス席には、店内のイメージをそのまま反映し、統一感のあるデザインに。壁面の仕上げは縦板張り、鎧戸風、白目地の黒タイルなど、いくつかのパターンが使われていますが、カラーの明るさを統一しておくことでまとまりのあるデザインになります。アンティークなデザインに興味のある方は、ぜひ参考にしてみてください
「GAKU NO TOBOE」は、アルゼンチンの国民的な料理「エンパナーダ」が美味しいお店です。「エンパナーダ」はスペイン・ポルトガル発祥で、中南米や北米などで広く食べられる料理。アルゼンチンでは主食として親しまれています。小麦粉の生地に鶏肉や牛肉、野菜などを包み、焼いたり揚げたりしたもので、大きめの餃子のようなイメージです。アルゼンチン料理を食べたい方は、住宅街の一角にあるお店に、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか?
※営業日と時間はHPで要確認。
GAKU NO TOBOE -がくの遠吠え-
gaku-no-toboe
設計施工:ヘブンズガーデン 宮元健太

Credit
写真&文 / 松下高弘 - エムデザインファクトリー主宰 -

まつした・たかひろ/長野県飯田市生まれ。元東京デザイン専門学校講師。株式会社タカショー発行の『エクステリア&ガーデンテキストブック』監修。ガーデンセラピーコーディネーター1級所持。建築・エクステリアの企画事務所「エムデザインファクトリー」を主宰し、大手ハウスメーカーやエクステリア業のセミナー企画、講師を行う。
2007年出版の『エクステリアの色とデザイン(グリーン情報)』の改訂版として、新刊『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』が大好評販売中! 色の知識、住宅デザイン様式に合わせたエクステリア&ガーデンデザインとカラーコーディネート、プレゼンシートのレイアウト案など、多岐に渡る充実の内容! 書籍詳細はグリーン情報ホームページから。
著書
『住宅エクステリアのパース・スケッチ・イラストが上達する本』彰国社
『気持ちをつかむ住宅インテリアパース・スケッチ力でプレゼンに差をつける』彰国社
『住宅+エクステリア&ガーデンの色とデザイン』グリーン情報 など他多数
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