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晩秋の庭に色の灯りを|夏植えて、秋にいちばんきれいになるカラーリーフの使い方

晩秋の庭に色の灯りを|夏植えて、秋にいちばんきれいになるカラーリーフの使い方

花が少なくなる晩秋、庭に彩りを灯すのは赤やオレンジ、深い紫。夏のあいだ酷暑に耐えて育ったカラーリーフやサルビア、ふわりと光をとらえるグラス類が、季節の終盤をもっと美しくします。室内から眺めても輪郭が際立ち、心まであたたかくなる配色と植栽のコツを、鳥取県米子市のガーデニスト面谷ひとみさんに教わります。今日できる手入れから、来年に向けた仕込みまで、丁寧にご案内。

秋は“色で灯す”庭づくり

夕暮れに映える暖色の理由

秋の庭とコリウス
燃えるような赤いコリウスの色が秋の庭のメリハリに。

私の好みの色は、淡いピンクや、やさしいペールトーンの花。ですから、春の庭はバラやポピー、バーバスカムなどでふんわりと彩られていますが、秋は一旦自分の好みを脇に置いて植物のセレクトをします。日が傾き、影が長くなる秋は、淡い色の植物は輪郭がぼやけやすく目立ちにくくなるため、赤やオレンジ、深い紫のような強めのカラーで組み合わせをします。遠目や室内からでも目に入る色を少し増やすだけで、庭全体にメリハリが生まれ、夕暮れの光に呼応するようにやわらかく輝きます。

花が少ない季節はカラーリーフで面をつくる

コリウスとミューレンベルギア
赤いコリウスとピンクの穂のミューレンベルギアの共演。夕方の光に色が冴え渡る。

春のように花の数が多くない秋は、葉の美しい植物が活躍します。葉色の面(コリウスやアルテルナンテラ)+穂の揺れ(グラス類)で、色のボリューム感が増します。そこに花を点で少し加えるだけで、見応えは十分。

夏に仕込み、秋に輝く主役たち

秋の庭づくり

秋に美しく庭を彩る植物は、梅雨前後に植えます。ですから、夏越しできる植物がセレクトの条件。鳥取県米子市の夏は非常に暑く、7〜8月の約半分は35℃以上になるため、耐暑性に優れている植物を選ぶ必要があります。過酷な夏を乗り越え、私の庭で活躍する秋の庭の主役たちをご紹介します。

「色の面」を作ってくれるコリウスとアルテルナンテラ

コリウス

コリウスとは:シソ科の非耐寒性多年草。和名ではキンランジソ、ニシキジソと呼ばれるとおり、初夏から晩秋まで鮮やかな葉色で庭を彩ってくれます。葉色、葉模様のバリエーションだけでなく、葉の大きさも大小さまざまなものがあります。

使い方:30〜40cm間隔で、複数苗を塊で植えておくと、秋に「色の面」になってくれます。植栽の縁には小葉の品種を、後ろには大葉の品種を植えておくと立体感が生まれます。

夏の雑草対策にも:夏はそれほど大きく生育しませんが、コリウスを植えておくと土の露出が減るので雑草対策にもなり助かります。

コリウス

管理:秋になるまで花は咲かないため、花がら摘みの必要がなく、夏の庭をローメンテナンスで維持するのにもおすすめ。秋になり気温が下がってくると、急にグッと株が大きくなって存在感が増し、庭の主役として活躍してくれます。11月は花が咲いてきます。花もきれいなので開花を楽しみたいですが、咲かせすぎると株の見頃が終わりに近づくので、少し切ってもいいでしょう。多年草ですが寒さには弱いので、葉が傷んできたら抜き取ります。

アルテルナンテラ
左/アルテルナンテラ‘赤穂’。右/アルテルナンテラ‘ファニードレス’。

アルテルナンテラとは:アルテルナンテラはヒユ科の非耐寒性多年草。鮮やかなワインレッドやマーブルカラー、まるで花のように見えるフォルムのものなど、葉色も葉姿も草丈も、豊な個性を持つカラーリーフです。高温多湿に強く、ほとんどの場所で問題なく育ちます。

使い方:コンテナや花壇の縁取りなどに活躍します。夏の間、寄せ植えに使ったものを秋に地植えして、2度楽しむこともあります。庭植えする場合は株間20〜30cmほどで。

管理:庭植えでは基本的に水やりも肥料も必要としませんが、極端に乾く場合は朝に水やりします。気温の低下とともに生育が緩慢になり、霜や凍結に合うと枯れるので抜き取ります。

アルテルナンテラ‘ピンクシェード’
アルテルナンテラ‘ピンクシェード’。季節によって葉色が変化し、夏は緑にピンクの斑入り(左)、秋は鮮やかなワインレッド(右)になる。

切り戻しで見頃を長くするサルビア

サルビア
サルビア‘インディゴ・スパイア’やサルビア・ガラニチカなど、青や紫の花色が秋の空気によく冴える。

サルビアとは:サルビアはシソ科の耐寒性多年草と一年草があります。ここでは多年草のほうを紹介します。暑さにも寒さにもとても強く、年々株が大きくなります。草丈・株張りが80〜100cmになるものも多く、庭の骨格となる植物です。開花期は品種によってさまざまですが、秋は多くの品種が美しく咲き揃います。

使い方:サルビアの紫やブルーは、赤やオレンジの強い色を受け止め、色調をクールダウンさせるのに活躍してくれます。草丈や花穂の長さの異なる品種を混ぜると、同色でも庭の表情が豊かになります。

管理:開花期の長いタイプのものは高温期を避けて置き肥を定期的に施すと花がよく咲きます。酷暑の後に株のボリューム調整として、透くように切り戻し剪定をすると、秋に美しい株姿で咲きます。11月は花穂の色が褪せてきたら、花穂の基部でカットすると脇芽が出て鮮やかな色に更新します。

サルビア‘ロックン ディープパープル’と‘アズレア’
左/サルビア‘ロックン ディープパープル’。ガクや軸が黒くシックな雰囲気。晩春から初冬まで花期が長い。右/サルビア‘アズレア’は秋の開花期までに切り戻しを2〜3回繰り返すと、花枝が増えて花がたくさん咲く。

ポンポンかわいいセンニチコウ

センニチコウと秋の庭
センニチコウとプレクトランサス、マム、セロシア、ジュズサンゴ‘絣’を組み合わせた花壇。

センニチコウとは:センニチコウはヒユ科の一年草。丸いカラフルなポンポンは花そのものではなく苞(葉の一種)なので、観賞期間が初夏から晩秋までと長いのが魅力。

使い方:複数株をまとめて植えると愛らしさが際立ちます。株間は20〜25cm。花壇の手前や鉢植え、寄せ植えなどで活躍します。切っても苞は鮮やかな色を保ちやすく、鮮やかなうちにカットするとドライフラワーとしても楽しめます。

管理:茶色く変色してきたものが目立つようになってきたり、伸びすぎて株姿が乱れてきたら、切り戻して形を整えます。バッサリ短く切るのではなく、透くように枝を切ると脇芽が出て晩秋まできれいな株姿で咲きます。11月は咲き進む前の花をカットして、束ねて逆さ吊りにすればきれいなドライに。

配置の魔法で奥行きを

秋の庭づくり

家の中からも庭を眺める時間が長い季節なので、室内からの視点を意識して奥に強い色を配置。目が留まるポイントがS字になるようにするとより奥行きが感じられ、庭を歩いても、窓からの眺めも楽しくなります。鮮やかな植物の他にも、オブジェや寄せ植えした鉢を庭の中に置いても、フォーカルポイントになります。

秋の庭オブジェ
左/バードバスは庭に馴染むオブジェ。右/トウガラシのラウンドブーケを庭の奥のガーデンシェッドに飾って。赤色が遠目に見てもポイントに。
キクの寄せ植え

庭の中ほどには大鉢を置き、季節に合わせて寄せ植えを作ります。秋はキクを主役にした暖かな色合いの寄せ植えに。地植えにすると草丈が低く目立たない植物も、高さのある鉢に植えると庭の色彩構成の一つとして活躍します。

花材:クリサンセマム‘ア・ラ・モード アプリコット’、アルテルナンテラ‘須磨’・‘赤穂’、ジュズサンゴ‘絣’

来年のための仕込みメモ

植え付けは梅雨前後、盛夏はマルチ、初秋にボリューム仕上げ

秋の庭づくり
  • 4〜6月:苗の確保と定植。色の面を意識して、株間をとりつつ複数苗をまとめて植える。
  • 7〜8月:地植えでは、根付いた後は基本的に自然の降雨でOK。猛暑で渇水するときは株元を刈り草やバークでマルチング。水やりする際は朝に。センニチコウを花がら摘みを兼ねて透かし剪定。
  • 9月:風通しを確保するためにサルビアは透かし剪定を。
  • 10〜11月:マムやプレクトランサス、コスモスなどを差し色で投入。
コスモスやプレクトランサス
秋になってからコスモスやプレクトランサスを加えるとより季節感がアップ。

夏に植えて秋に本領発揮の植物の共通点は、シソ科とヒユ科の植物。耐暑性に優れ、植えておけば地面を覆って夏の間の雑草対策としても活躍します。コリウスやアルテルナンテラなどのカラーリーフ類を主役にすることで、花がら摘みの手間も必要なし。花が少ない季節こそ、カラーリーフを上手に使えば、晩秋の庭はもっと輝きます。

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