トップへ戻る

玄関前を癒やしの庭に! プロが教えるアプローチガーデンの作り方&実践アイデア集

玄関前を癒やしの庭に! プロが教えるアプローチガーデンの作り方&実践アイデア集

Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

ほんの小さなスペースに緑があるだけでも、毎日の暮らしに潤いが生まれ、心がふっと落ち着きますよね。地植えの庭がなくても、玄関前の限られた場所で、自由に「アプローチガーデン」を楽しんでみませんか? 今回は、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ-ツェルナーさんが実践する、鉢植えで楽しむコンテナガーデンの作り方や植物の選び方のコツ、おすすめの植物チョイスをご紹介。「土がない」「スペースがない」と悩む方でも、1鉢から始められる玄関前ガーデンのヒントが見つかります。

庭仕事が楽しい季節の始まり

長く蒸し暑かった夏がようやく終わり、少し涼しくなってきましたね。この長い夏の間、プロのガーデナーである私でさえ、屋外作業に対する限界を強く感じました。庭に出て作業できそうかなと考えた日でさえ、あっという間に体力がなくなり、熱中症になる前に早めにガーデンから帰宅するときもありました。

そこで最近は、夫の協力も得て、午後遅くから日が沈むまで庭に出るようにしています。時間をかけられない日もありますが、少なくとも1時間は庭作業にあてています。協力のおかげもあって、今年はナチュラルガーデンのエリアに雑草が生い茂ることなく、一方でトカゲやカエル、バッタ、カマキリなど、小さな生き物や大きな生き物たちが隠れたり、餌を食べたりするスペースを十分に残した環境を維持できました。

挑戦を楽しむ大きな庭と日々を彩るアプローチガーデン

アプローチガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

いくつかのガーデンの管理を楽しんでいる私にとって、最大の挑戦は、さまざまな植物やその組み合わせを試すことができる大きめのパーマカルチャーガーデンです。地植えの庭なので、同じ植物を鉢やコンテナで育てたときとは、結果は全く異なることがよくあります。このように、異なる場所や条件下で育つ様子を比較するのはとても興味深いことです。

このようにパーマカルチャーガーデンは、日々の暮らしを彩るたくさんの花や野菜を与えてくれる場なのですが、家から少し離れた場所にあるため、毎日手入れをすることはできません。その点、家の前のスペースなら、家にいるときはいつでも見ることができます。

玄関前を彩るアプローチガーデンは、近所や街並み、そして都市を緑豊かで快適な場所に変えていくのに大いに役立ちます。しかし、残念ながら玄関前のスペースは便利かつ限られているため、多くの住宅では庭は存在しないか、完全に舗装されて車や自転車の駐車場として利用されています。地域によっては住宅前でゴミ収集がされるため、ゴミ箱を設置するケースもありますが、その場合もスペースが必要です。

けれど、たとえ舗装されて地面がないとしても、小さなコンテナを置くスペースならきっとあるはず。玄関前を彩るアプローチガーデンは、1鉢からでもチャレンジできます。

ちなみにドイツでは、どこでも同じタイプの濃い灰色のゴミ箱があり、住宅近くの道路沿いに指定の設置場所が設けられています。緑色のゴミ箱は有機質ゴミ用で、生ゴミや庭の剪定くず、木や低木の葉や枝などの自然分解する植物由来のものは、すべてこのゴミ箱に捨てられます。住宅やアパートの前は舗装されていることが多く、排水や土壌のための地植えスペースはほとんどありません。

アプローチガーデンデザインのポイント8つ

アプローチガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

アイキャッチャーとなる鉢植え1つあれば、アプローチガーデンをつくることができます。ここでは、地植えの庭がなくても毎日楽しめる、寄せ植え1つの魅力的なアプローチガーデンづくりの時に押さえておきたいポイントを8つご紹介します。

1. 設置場所選びは慎重に

コンテナや植木鉢を置く場合、重要なのが設置場所選び。駐車・駐輪の際や、玄関やガーデンの扉を開閉する際に、邪魔にならない位置でなければなりません。またあまり強い風が当たらない場所がベター。風雨にさらされる場所では、それに耐える植物選びがずっとシビアになります。

2. 鉢のサイズに注意

鉢が大きいほど多くの植物を植えることができ、またより多くの土を入れることができます。十分な量の土があれば、特に水やりや施肥などのメンテナンスを頻繁に行わなくてもよくなるため、管理の手間は軽減します。また鉢選びの際は、底にしっかりと排水用の穴があることも重要。最近、ゲリラ豪雨が一部地域で頻繁に発生していますが、水が多すぎると植物はすぐに枯れてしまいます。屋根のある場所に設置するのも雨対策になります。

3. 鉢の素材は?

プラスチック、素焼き、テラコッタ、金属、木、フェルトなど、鉢の素材はさまざま。それぞれの性質を考え、自分に合ったものを選びましょう。我が家の玄関前には、テラコッタ風デザインの大きなプラスチック鉢を置いています。プラスチック鉢を選んだ決め手は、鉢の重さ。素焼き鉢はずっしり重く、一度土を入れるとほとんど動かすことができません。もちろん、多少なら動かせるので、鉢の周囲の掃除は可能ですが、軽いプラスチックのほうが扱いは簡単です。植木鉢の周囲はどうしても落ち葉や土が落ちてしまうため、クリーンな見た目を保つためには掃除は不可欠です。

4. 鉢の形もいろいろ

丸、楕円、四角、壺形など、鉢の形もさまざまあります。我が家では、タイル張りの玄関に一番よく似合うと思った四角形の鉢を選びました。大きめなので植栽スペースもたっぷりあります。夏の間はよくこの植木鉢で夏野菜を育てて、帰宅ついでに収穫しています。

アプローチガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

5. 色とデザインは住宅に合わせて

鉢植えの色選びもとても大切です。住宅や玄関ドアの色と合わせると、より美しく見えます。色を合わせるといっても、必ずしも同じ色である必要はありません。魅力的なコントラストを楽しむのもいいですね。個性やスタイルを表現するために、玄関扉の色を塗り替えて気分を一新するのも一案です。

6. 軽石を使って排水性のよい土壌に

多くの植物にとって、水はけのよい環境は元気に育つ条件の1つです。排水性をアップさせるために、軽石などを利用するのもおすすめです。

7. 良質な培養土が良好な生育の秘訣

植物の健全な生育には、よい土が欠かせません。鉢植えの場合は、手軽に市販の培養土を利用するか、オリジナルの用土を配合することもできます。

8. 基本的な植物の選び方

寄せ植え
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

私が意識しているのは、「スリラー」「フィラー」「スピラー」という3つの役割を持つ植物を寄せ植えに入れること。「スリラー」は主役級の植物、「フィラー」は植物をつなぐ中くらいの植物、そして「スピラー」は動きを作るつる性の植物です。

植物を選んだら、鉢に配置して隙間を培養土で埋め、たっぷりと水をやって、植えた植物に適した日当たりの場所で管理します。日当たり、半日陰、または日陰など、それぞれの植物が好む適切な条件を把握することは、健全な生育のために非常に重要です。

アプローチガーデンの植栽アイデア

アプローチガーデン
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Goossens, Angela

それでは、どんな植物を組み合わせる例があるか、寄せ植えのテーマごとに考えてみましょう。

リーフが主役のコンテナガーデン

一年草、多年草、野菜、さらには小さな低木など、さまざまな種類の植物をクリエイティブに組み合わせて作る寄せ植え作りのポイントは、同じ環境を好む植物を選ぶこと。例えばギボウシ(ホスタ)、アスチルベ、アイビーは、半日陰から明るい日陰に最適な組み合わせです。通常の品種に比べ育てるのが難しい場合が多い斑入りやカラーリーフの植物の中で、丈夫で色や葉のバリエーションが豊富な小さな葉のアイビーはアクセントにぴったりです。

ダークで大胆なコンテナガーデン

深い緑や紫は、日陰の場所でも奥行きを演出します。スリラーとなるのはリグラリア。組み合わせるのはヒューケラ、アスチルベ、アルテルナンテラなどがおすすめです。動きを演出するスピラーにはロベリアやニシキシダなどを。これらの組み合わせも、半日陰によく合います。

リグラリア
夏から秋に咲くリグラリア・デンタータの黄色い花。ANGHI/Shutterstock.com

パステルカラーとホワイトのコンテナガーデン

大きな葉を持つカラジウムをスリラーに、ユーフォルビアが繊細な質感と花を添えて。淡い銀色の葉を垂らしたベゴニアやディコンドラをスピラーにすれば動きを演出できます。

ブロンズとレッドのコンテナガーデン

赤い葉を持つサツマイモの仲間のつる植物イポメアをスピラーに、銅色の葉を持つコリウスが間をつなぐフィラーに、そしてカンナがスリラーになるリーフの寄せ植えもおすすめ。ベゴニアを加えれば、鮮やかな花々がアクセントになります。

イポメアとコリウス
バリエーション豊富でカラーリーフとして人気のイポメアとコリウス。TinaSova20/Shutterstock.com

ウォームカラーのコンテナガーデン

夕焼けの暖かな色彩は、インスピレーションの源になります。黄色を合わせた寄せ植えは、玄関先に太陽の明るさをもたらします。黄色のカンナ、カリブラコア、ランタナ、イポメアなどは、日当たりのよい場所にぴったりの組み合わせです。

球根も忘れずに!

チューリップの寄せ植え
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Strauss, Friedrich

苗と苗の間には球根を植えて、アレンジメントをよりポップにするのもおすすめ。私は「球根だけ」の鉢はほとんど作りません。開花期を過ぎると、葉が枯れて養分を球根に戻すまでそのままにする必要があるからです。これでは見た目が悪くなってしまいます。しかし、他の花の間に植えれば、枯れかけてきた頃には葉が覆い隠してくれ、放っておいても気になりません。

最も一般的な球根は、チューリップ、スイセン、ヒヤシンスでしょう。他の球根も試してみる価値があります。種類にもよりますが、背が高くなるユリや、背の低いクロッカス、スノードロップ、プシュキニア、チオノドクサなどは、鉢植えに早春の素敵なアクセントを与えてくれます。

そのほか、多年草や一年草にプラスして、コンテナに樹木を植えるのもいいですね。今、とても人気のある樹種は、オリーブや、メラレウカなどオーストラリア原産の樹木です。野菜を植えて育て、花を咲かせるのも、とてもやりがいのある挑戦です。花がかわいい野菜もたくさんありますよ。

秋の庭のおすすめプランツ「キク(ガーデンマム)」

ガーデンマム
Katerina Maksymenko/Shutterstock.com

秋は、幅広い種類のキクが開花期を迎えます。背の高いものから低いもの、鮮やかな色から茶色やブロンズ色まで、ほぼすべての色が揃います。たくさんの種類があるので、きっとお気に入りの色や形が見つかるはずです。

以前アメリカで、園芸センターと花屋を併設した大きな植物園で働いていたことがありますが、そこでは、少なくとも30~40種類のキクを栽培していました。母株から挿し木苗を作り、温室で数週間育てた後発根したキクは、アメリカ全土に送られてアレンジメントの花材やガーデンプランツとして利用されていました。

ドイツでも、秋に屋外の庭や鉢に植えるガーデンマムがとても人気です。毎日の花がら摘みは、玄関を開けて庭を見に行くよいきっかけになりますし、犬の散歩をしている近所の人に「おはようございます」と挨拶したり、家の前に出された段ボールやリサイクル用布の山を見て、「ゴミの日」を思い出すチャンスにもなります。

失敗もOK! いろいろチャレンジしてみよう

先日、ほったらかしにしていた、砂質でやせた小さな庭をようやく見に行ったのですが、暑い夏の間に雑草が生い茂っていました。一目見て分かったことは、ひとまず全部抜かなければ何も始まらないだろうということ。最悪の状態から始めて、どうにか雑草を堆肥用コンポストに入れるまで進めたのですが、その途中で、悪条件に耐えた生き残りや、いつだったか種まきをしたけれどもう諦めていた小さな植物も見つけることができました。雑草の間には、ニラの美しい白い花が満開に咲き、サルビアの青い花、ハナセンナの黄色い花やワタも咲いていました。

厳しい環境にもめげず、どのようにしてか生き残った植物のたくましさを見るのは嬉しいものです。

玄関前の花
Gartenbildagentur Friedrich Strauss / Raider, Peter

さまざまな多年草、一年草、球根の組み合わせを植木鉢に植えるのは、とても面白い挑戦です。すべての条件が完璧に合えば長もちするかもしれませんし、美しく維持するのは難しいこともあります。

思うようにチャレンジできるのは、ガーデナーの特権。いろいろなものを試してみて、ぜひ植物がくれる驚きを味わってみてください。

人気の記事

連載・特集

GardenStoryを
フォローする

ビギナーさん向け!基本のHOW TO