木々の葉が赤や黄色、オレンジなどに染まる秋は、目にも鮮やかな色彩の季節。ドイツでも、日本と同じように秋には特有の色調が見られます。秋を彩る紅葉や花々などの季節の色彩について、ドイツ出身のガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに教えていただきました。

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植物たちが紡ぐドイツの秋の色彩

ドイツの秋のガーデン

季節は秋。各地が赤や黄色に染まる日本の秋も非常に美しいですが、ドイツの秋も負けずに魅力的です。日本に長年住んでいたことから、私はドイツの秋が持つ色彩の美しさとユニークさを忘れかけていましたが、ドイツに帰国したことで、再びその美しさを実感しています。今回は、そんな「ドイツの秋の色」についてお話ししたいと思います。

ドイツと日本の秋には、まず、その訪れる時期に大きな違いがあります。私が日本で暮らしていた神奈川県の湘南付近に比べ、ドイツでは紅葉はずっと早く訪れます。現在私が住んでいるドイツの地域では、紅葉が始まるのは9月の半ば頃。この地方には何ヘクタールにも渡って、何百・何千ものホップが育つホップ畑があるのですが、ホップの収穫も秋を告げる印となります。収穫後のホップ畑は広く開けた空間として豊かな森と緑の葉をつけた木々が見渡せるようになるため、秋が深まるにつれ、ここから見られる森の色彩が移ろうのがはっきりと見られるようになるのです。

暮らしの中に感じる秋の訪れ

ドイツの秋のガーデン

夏が過ぎると、紅葉以外にも、暮らしの端々にさまざまな秋の兆しが感じられるようになります。気温の低下を一番初めに実感するのは、ひんやりとした空気の朝と、朝露に濡れたメドウ(野の花)。小川沿いやほかに比べて気温が低い場所には、霧が立ち上ることもよくあります。霧が辺りを流れゆき、太陽が昇ると同時にあっという間に消えていく様子もまた美しいものです。

ドイツに帰国してから、朝は娘と共に村から4km離れたバス停まで自転車を漕いで向かうため、最近はこの美しさに触れる機会が多くなりました。家を出るのは6時半頃ですが、10月半ばともなると、この時間はまだ真っ暗。外に出るには明かりが必要です。9月末頃だと、ちょうど朝日が昇り始める時間で、美しい日の出を見られたのですが、秋が深まるにつれて夜も長くなってきました。

今、窓から外を眺めると、大きな葉を広げ、見上げるほどに育った”mountain maple “、セイヨウカジカエデの葉が、美しい黄色に色づいているのを見ることができます。この木は、よく田舎道に沿って植えられているのを見ることができます。

ドイツのカエデ

ドイツのカエデ
大きく育ったカエデの木。

ドイツの町や公園、大きな庭園などのシンボルとしてよく植えられるカエデには、主に次の3つの種類があります。

  • セイヨウカジカエデ Acer pseudoplatanus
  • ヨーロッパカエデ Acer platanoides
  • カンペストレ Acer campestre

日本で育つカエデの多くは、野原や森のそばほど厳しい環境ではない、個人邸の庭に植えられていることが多いです。日本産のカエデの木は、目が覚めるほど美しい、あらゆる色調の赤に色づきますが、先に言及したセイヨウカジカエデのような、ヨーロッパ産のカエデほどには大きくなりません。

ところで、私はかつて一度、大枚はたいて美しいイロハモミジを庭に植えたことがありますが、2年経った後に枯れてしまいました。場所に合わなかったのか、寒風が吹きつける場所だったのか、それとも土が良くなかったのかは分からないですが、それ以後、私の庭は日本のカエデには向いてない土地だということが判明しました。この地域でも、美しい日本のカエデを育てているガーデンはあります。

ドイツでカエデを育てるなら、コンテナに植えて、あまり環境が厳しくない場所で育てるとよいでしょう。こうして育てられたカエデは、バルコニーやベランダ、玄関前などによく見られます。鉢植えには、その紅葉の美しさや小さくコンパクトに育つ性質から、特に日本のカエデがよく用いられます。

紅葉が美しい秋の樹木

ヨーロッパニシキギ

カエデのほかにも、私の家の玄関前には、毎日美しく紅葉した葉で迎えてくれる大きな樹木があります。それは5mほどに育った野生のチェリーの木。この木はタネから育ったもので、おそらく鳥が運んできたのでしょう。コンクリートに囲まれた中にある、ほんの少しの土で育ちました。花も美しいのですが、実は小さく食用にはなりません。チェリーの木も、コンパクトに育つものは小さなコンテナに入れて、バルコニーで栽培することができます。

ほかに、美しい紅葉が楽しめる樹木といえば、ニシキギ(Euonymus)があります。ヨーロッパニシキギ(Euonymus europaea、セイヨウマユミ)は栽培が簡単で、秋にはとても美しい赤色に染まります。葉が散った後に残る、赤色の実も可愛らしいもの。この木には多くの別名があり、例えばスピンドルツリーやバーニングブラッシュとも呼ばれます。確かに、紅葉すると炎の茂みのような姿になります。スピンドルという名は、かつて伝統的に毛糸を紡ぐのに使うスピンドル(つむ)を作る木材として使われたことを由来とするようです。

秋のドイツを彩る花々の色彩

ドイツの秋のガーデン

秋に美しい紅葉を見せてくれる木々にも負けず劣らず、色彩の美しさで私たちを魅了するのが草花や果実。前回ご紹介したカボチャもその一つですが、特にユウゼンギクやネバリノギクなどの多くの種類があり、赤や紫、青などの色彩を秋のガーデンで見せてくれる宿根アスターは秋の色彩を語るうえで外せません。グラス類と一緒に植えると、秋のガーデンやバルコニー、ベランダに美しい景観を生み出してくれます。

エリカの近縁種であるカルーナも、秋のガーデニングでは非常に大切な存在。カルーナは寒さに当たっても色や姿を美しく保ってくれます。冬の屋外でも、寒さの心配をしなくてもよい植物を育てられるのは素敵なことですね。紫や白などの花を咲かせる苗があちこちで販売され、ウィンドウボックスや公園の花壇では欠かせません。また、カトリックの地域では、11月1日の”Holiday of all Saints”(諸聖人の日)には、墓地が美しく飾り立てられ、たくさんのカルーナが植え込まれます。

クリサンセマムもポピュラーな花で、幅広い花色を持っています。秋のガーデンらしい印象を最初にもたらしてくれるのは、この花ではないでしょうか。

秋の色彩を楽しむ花飾り

秋の花々

ドイツでは秋になってバルコニーや玄関、ガーデンに花を飾る場合、人々は小さな苗ではなく、すでに大きく成長している植物を買うことがほとんど。寒さが厳しいドイツでは、秋から冬にかけて植物はあまり成長しないため、小さな花を購入しても観賞には適さないのです。また、花苗を取り合わせて寄せ植えにするのも一般的。寄せ植えをする際には、よい花苗をチョイスすることに加え、鉢やコンテナ、ウィンドウボックスなどの容器も正しく選ぶことが大切です。複数の花苗を植えられるよう、十分な大きさがあるものを選びましょう。私が寄せ植えを作るときのポイントをご紹介します。

Step1

まずは寄せ植えをする鉢やコンテナを選びます。素焼き鉢は重たいけれど素敵ですし、軽くて持ち運びやすく、手に取りやすい価格のプラスチック鉢を選んでもいいでしょう。プラスチック鉢にも装飾的で素敵な模様が付いたものなどもあります。容器選びの際、私が注意しているのは色の選び方。鉢単体のデザインだけでなく、玄関先など実際に鉢やコンテナを置きたい場所全体を見ながら、色の相性などを確認するとよいでしょう。植え込みたい植物との相性を考えてもいいですね。これが最初のステップです。

Step2

容器が準備できたら、中に植え込む花苗を用意します。質のよい花苗を購入するには、経験豊かな花屋さんにオススメしてもらったガーデンセンターで、健康でよく生育している苗を選んで購入するとよいでしょう。ガーデンセンターの店頭には、花だけでなく幅広い色彩を持つカラーリーフプランツも豊富に並びます。ドイツでは、ヒューケラや、フェスツカなどのコンパクトなグラス、または種類豊富なセダム、クリサンセマムの園芸種などが、とてもポピュラーなカラーリーフです。

Step3

よい土を購入し、排水性を高めるために鉢底石と共に鉢に入れます。

秋の寄せ植え

Step4

スカスカにならないように苗を並べて植え込みますが、特に日本では、10~11月にかけても花苗がまだ成長することも忘れずに考慮しましょう。日本では地域により、気温や気候は相当に異なります。一方のドイツでは、この時期になると厳しい寒さのためにほとんど成長しないので、密度を高めに植え込みます。ドイツの気温は、だいたい札幌と同じ程度。10月半ば現在、私の住んでいるドイツの地域では、最低気温は3℃程度まで冷え込み、日中の最高気温も、時によって15~18℃ぐらいまでしか上がりません。

寄せ植えを作るにあたっては、ネットやSNS、雑誌記事などで紹介されている美しい秋の寄せ植えアイデアをたくさん見てみるとよいでしょう。また、近隣の家や、ガーデンセンターに置かれているコンテナをチェックすると、地域の気候に合う植物を確認することができますよ。

秋のフェスティバル

秋の収穫と花

私の住むバイエルン州の秋はまた、収穫期の終わりとも結びついています。世界的にも有名なオクトーバーフェストの時期には、何百万人もの人々がバイエルン州最大の都市であるミュンヘンを訪れ、このお祭りを楽しみます。また、地元のオータムマーケットも開催され、全ての実りに感謝を告げる時期になります。

秋のフェスティバルでは、飲み物の基本はもちろんビール。1ℓのビールマグに入れて供されます。ほかに、500㎖のビールを同量のスプライトで割ったビアカクテルとして飲まれることも。こちらも人気のある飲み物で、すぐに酔っぱらってしまわずに済みますね。ビールと一緒に楽しむのは、グリルチキンや豚のロースト、美味しい牛肉などの伝統的な料理。白パンを一切れ添えていただくのが人気です。もちろん、バラエティ豊富なソーセージも忘れてはなりません。

お祭りによっては、フェスティバル会場の隣に、秋に収穫期を迎えるさまざまな農産物の展示会場があったり、大きなテントに演奏会場が設けられ、ミュージシャンが演奏する音楽を楽しみに多くの人が集まったり。秋の実りに感謝する、フェスティバル特有の空気が辺りに満ちています。

Credit


ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/Friedrich Strauss/Stockfood

取材/3and garden 

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