【庭木に最適】赤い実と紅葉が秋を彩るカンボク! 四季の移ろいを楽しむ栽培ガイド
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初夏にガクアジサイに似た白い花を咲かせ、秋には赤い実と紅葉を楽しめるカンボク。丈夫で育てやすく、庭木として人気が高い落葉樹です。ただし、高温乾燥期の注意や剪定のタイミングなど、育てるうえで押さえておきたいポイントもあります。この記事では、カンボクの特徴や種類、日当たり・水やり・肥料などの基本的な育て方、剪定・挿し木の方法まで、初心者でも失敗しないコツをまとめてご紹介します。
目次
カンボクの基本情報

植物名:カンボク
学名:Viburnum opulus var. sargentii
英名:Sargent Viburnum、Japanese water elder
和名:カンボク(肝木)
その他の名前:ケナシカンボク(毛無肝木)
科名:レンプクソウ科
属名:ガマズミ属(ビバーナム属)
原産地:日本(主に中部以北)、朝鮮半島、中国など東北アジア
形態:落葉性低木~小高木

カンボクの学名は、Viburnum opulus var. sargentii 。レンプクソウ科ガマズミ属(ビバーナム属)の落葉樹です。原産地は日本、朝鮮半島、中国。沖縄を除いて日本各地に分布していますが、冷涼な気候を好み、やや暑さを苦手とします。自然樹高は7mほどに達しますが、毎年の剪定によって程よい樹高にコントロールすることが可能です。初夏に白い花を咲かせるほか、秋にはかわいらしい赤い実をつけるとともに紅葉も美しく、四季の移ろいによって表情の変化を楽しめる花木です。
初夏の風に揺れるセイヨウカンボクの白い花。adamikarl/Shutterstock.com
カンボクの花や葉の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:5〜7月
樹高:2〜7m
耐寒性:強い
耐暑性:普通
花色:白
カンボクの開花は5〜7月。花茎を伸ばした頂部に、たくさんの白い小さな花が密集して咲き、見応えがあります。ガクアジサイのように装飾化と両性花がつくのが特徴的です。秋になると1cm弱の赤い実をびっしりとつけ、美しい実姿にも観賞価値があります。果実は一見おいしそうに見えますが、実際は苦くて食べられず、野生動物にも不人気なのか長く枝に残ることがあります。10cm前後の葉は変異があるものの通常は3裂し、縁には不揃いな切れ込みが入って対生につきます。

カンボクの歴史と文化

カンボクは古くから中国や日本で庭木として愛されてきました。花が美しい上に赤い果実をたくさんつけていつまでも木に残るため、縁起植物としても人気があったようです。強健な性質で放任してもよく育つことから、公園などにもよく植栽され、生け垣としても利用されています。
カンボクの名前の由来と花言葉

カンボクは漢字で「肝木」と書き、「肝」は「肝心」という意味です。これには諸説ありますが、枝葉を煎じて止血や打撲の薬として用いられてきたことから、「人間にとって肝心な木」であることが由来とされています。
カンボクの花言葉は「年老いた」です。
カンボクの代表的な種類
セイヨウカンボク(ヨウシュカンボク、ゲルダーローズ)

イギリスからヨーロッパ、北アフリカ、西アジアなどに広く分布していますが、日本には自然分布していません。自然樹高は2〜5mほどになります。開花期は5〜6月で花色は白。カンボク同様に初夏に両性花と装飾花からなる花序を頂部につけ、晩秋に赤い果実を多数つけます。
セイヨウテマリカンボク

セイヨウカンボクの園芸種で、自然樹高は3〜5mほどです。開花期は5〜6月で、花色は白。オオデマリの花姿に似ており、花序の花がすべて装飾花になった手毬状に開花します。装飾花のみ咲くのでほとんど結実しません。
‘スノーボール’

セイヨウカンボクの中でも特に人気のある園芸品種。ビバーナム・スノーボールとも呼ばれます。多くの装飾花が集まったたっぷりとした手毬状の花序をたくさんつけ、満開時は豪華な姿に。咲き始めは緑色で、開花が進むにつれて純白になり、ホワイトガーデンに欠かせない花木です。
‘オノンダガ’

カンボクの園芸品種で、中央につく両性花のつぼみが赤みがかるのが特徴。装飾花は白で、両性花も開くと白い花が咲きます。
カンボクの栽培12カ月カレンダー
開花時期:5〜7月
植え付け・植え替え:12〜翌年3月(真冬を除く)
肥料:2〜3月、6~7月
剪定:12月〜翌年3月上旬
挿し木:6月中旬〜7月中旬
カンボクの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりと風通しがよい場所を選びます。半日陰でも育ちますが、日照不足では花つきや実つきが著しく悪くなるので注意。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけ、水もちがよく腐植質に富んだ土壌を好みます。乾燥する時期は、根元にバークチップなどを施して、マルチングをしておくとよいでしょう。鉢植えでの栽培も可能ですが、根詰まりしやすいので2〜3年に1度は植え替えが必要です。
耐寒性・耐暑性
比較的涼しい環境を好み、暑さや乾燥をやや苦手としますが、日本の気候に馴染みやすく一年を通して戸外で管理でき、冬越し対策なども特に必要ありません。
カンボクの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質など水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
花木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり
水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がって木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、過度に乾燥する場合は水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がややだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
開花後にお礼肥として、リン酸、カリ成分を多く含んだ緩効性肥料を与え、土によくなじませましょう。また、2〜3月に緩効性肥料を与えます。生育期を迎える前に肥料を与えることで新芽を出すエネルギーとなり、旺盛に枝葉を広げることにつながります。
注意する病害虫

【病気】
カンボクに発生しやすい病気は、うどんこ病、褐斑病などです。
うどんこ病は、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がって光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発生しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適用のある殺菌剤を散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
褐斑病は、カビによる伝染性の病気です。主に葉に褐色またはくすんだ茶色の斑点が現れ、下葉から枯れ上がっていきます。雨が多い時期に発生しやすいのが特徴です。発症した葉を見つけたらすぐに切り取って処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。適用のある薬剤を散布して防除します。
【害虫】
カンボクに発生しやすい害虫は、アブラムシやカイガラムシなどです。
アブラムシは、3月頃から発生しやすくなります。2〜4㎜の小さな虫で繁殖力が大変強く、枝葉にびっしりとついて吸汁し、株を弱らせるとともにウイルス病を媒介することにもなってしまいます。見た目もよくないので、発生初期に見つけ次第こすり落としたり、水ではじいたりして防除しましょう。虫が苦手な方は、スプレータイプの薬剤を散布して退治するか、土に混ぜ込んで防除するアブラムシ用の粒状薬剤を利用するのがおすすめです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10㎜。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われており、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
カンボクの詳しい育て方
苗木の選び方
葉色がよく、ヒョロヒョロと伸びていないがっしりした苗木を選びましょう。鉢底から根が出すぎているものは、根詰まりを起こしている可能性があります。
植え付け・植え替え

カンボクの植え付け・植え替え適期は、休眠期の12〜翌年3月です。ただし、寒さが特に厳しくなる1〜2月は避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗木の根鉢よりも1回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
庭植えの場合、環境に合って健全に育っていれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
苗木の根鉢よりも1〜2回りくらい大きい鉢を準備します。底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れます。苗木を鉢に仮置きし、高さを決めます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3cm下を目安にし、ウォータースペースを取っておくとよいでしょう。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引しておくとよいでしょう。最後に鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。一年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、軽く根鉢をくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定

カンボクの剪定適期は、休眠中の12月〜翌年3月上旬です。
旺盛に生育し、比較的枝葉をよく伸ばす方ですが、自然に樹形が整います。そのため刈り込んだり、大きく切り戻したりというよりは、込み合いすぎている部分を切り取って風通しをよくすることを目的とした透かし剪定を基本にするとよいでしょう。木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。1カ所から3本以上の枝が出ていたら、間引いて枝を透かすとよいでしょう。
これ以上大きくしたくない場合は、大体のアウトラインを決めて、そこからはみ出している枝を、分岐点までさかのぼって切り取ります。
夏越し
カンボクは夏の高温乾燥がやや苦手で、高温地域では注意が必要です。乾燥しないよう地植えでも必要に応じて水やりを行い、暑さが厳しい地域では半日陰に移動するのも一案です。
冬越し

カンボクは寒さに強いので、それほど気にする必要はありませんが、寒さが厳しい地域ではバークチップなどを施してマルチングしておくとよいでしょう。鉢植えは寒風が吹き付けない軒下などに移動しておくと安心です。
増やし方

カンボクは一般に挿し木で増やしますが、種まきも可能です。
【挿し木】
挿し木とは、枝を切り取って土に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、カンボクは挿し木で増やすことができます。
カンボクの挿し木の適期は、6月中旬〜7月中旬です。その年に伸びた新しくて勢いのある枝を10㎝ほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて水で十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。鉢増ししながら育成し、苗木として十分な大きさに育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【種まき】
種まきで増やす場合は熟した果実を採取し、種子の周りの果肉をよく洗い流してから播きます。種まきの成功率は高くなく、また発芽まで1~2年かかることもあります。
庭を彩るカンボクを育ててみませんか

カンボクは春に新芽を出し、初夏に白い花をたっぷりと咲かせて秋には赤い実姿と紅葉を楽しめ、四季の移ろいを強く感じることができる花木です。強健な性質で放任してもよく育つのでビギナーにもおすすめ。人気の高いカンボクを庭木として迎え入れてはいかがでしょうか。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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