ガマズミは花・葉・実と1年を通して楽しめる樹木! 特徴や育て方のポイントを解説

mizy、tamu1500、Picmin/Shutterstock.com
ガマズミは春に白い花を咲かせ、夏には涼しい緑陰をもたらします。秋になると真っ赤な果実をつけ、さらには紅葉も楽しめるため、四季の移ろいを強く実感できる庭木として人気があります。この記事では、ガマズミの基本情報や特徴、名前の由来や花言葉、育て方、種類などについて幅広くご紹介します。
目次
ガマズミの基本情報

植物名:ガマズミ
学名:Viburnum dilatatum
英名:linden arrowwood、linden viburnum
和名:ガマズミ(莢蒾)
その他の名前:ビバーナム、蒲染、イヨゾメ、カメガラ、シモフリなど
科名:ガマズミ科
属名:ガマズミ属
原産地:日本、朝鮮半島、中国
分類:落葉性低木
ガマズミの学名は、Viburnum dilatatum(ビバーナム・ディラタツム)。ガマズミ科ガマズミ属(ビバーナム属)の落葉性低木です。分類体系によってはレンプクソウ科に分類されることもあります。原産地は日本、朝鮮半島、中国。暑さや寒さに耐え、育てやすい庭木の1つです。樹高は2〜3mですが、毎年の剪定によって程よい樹高にコントロールすることができます。春に白い花を咲かせるほか、秋には可愛らしい赤い実をつけるとともに紅葉も美しく、四季の移ろいによって表情の変化を楽しめる花木です。
ガマズミの花・葉・実の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:5〜6月
樹高:2〜3m
耐寒性:強い
耐暑性:強い
花色:白
ガマズミの開花は5〜6月。花茎を伸ばした頂部に、たくさんの白い小さな花が密集して咲き、見応えがあります。秋になると5mmほどの赤い実を多数つける美しい姿にも観賞価値があるほか、庭に野鳥を呼び込みます。長さ13〜14cmの葉は楕円形。縁には細かく切れ込みが入り、対生につきます。

ガマズミの名前の由来や花言葉

ガマズミの名前の由来は諸説あり、よく鎌の柄に加工されていたことから「ガマ」、酸味の強い実であることから「酢味」が転じて「ズミ」と呼ばれるようになったという説が有力です。また、マタギが狩りに出た山の中で食べ物がなくなったときに、この実で命をつないだという言い伝えから、山の神様からのいただきものとして「神の実」がなまってガマズミになったという説もあるようです。東北方面には「ゾウミ」「ジュミ」といった別名もあります。ガマズミの花言葉は「結合」「愛は死よりも強し」「私を見て」など。
ガマズミの代表的な種類

日本ではガマズミの仲間が15種ほど確認されています。ここでは、ガマズミの仲間についていくつかご紹介します。
ミヤマガマズミ
ガマズミよりも標高の高い山奥に自生することから、名前に深山(みやま)がついています。花や実姿はガマズミと似ていますが、花は1回り小さく、実はやや大きいもののガマズミほどたわわには付きません。葉はやや細長い楕円形で、葉柄に細長い産毛があります。
トキワガマズミ
ガマズミは落葉樹ですが、常葉(ときわ)という名前のとおり、トキワガマズミは常緑樹です。原産地は地中海沿岸のヨーロッパや北アフリカ。3〜5月頃に開花し、頂部に白い花が集まって咲きます。ガマズミが赤い実をつけるのと異なり、実の色は濃紺。葉の縁に細かな切れ込みは入りません。
キミノガマズミ
ガマズミの園芸品種で、黄色い実をつけるのが特徴です。葉の形はガマズミに似ていますが、それほど紅葉しません。5〜6月に開花する白い花の姿はガマズミとほとんど同じです。庭木として人気があります。
ガマズミの栽培12カ月カレンダー
開花時期:5〜6月
植え付け・植え替え:12〜翌年3月(真冬を除く)
肥料:5月下旬〜6月
種まき:10月〜11月中旬
剪定:12〜翌年3月上旬
ガマズミの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】日当たりと風通しがよい場所を選びます。半日陰でも育ちますが、あまりに暗い場所だと花つきや実つきが著しく悪くなるので注意しましょう。
【日当たり/屋内】1年を通して屋外での栽培が基本です。
【置き場所】水はけ・水もちがよく腐植質に富んだ土壌を好みます。乾燥する時期は、根元にバークチップなどでマルチングをしておくとよいでしょう。
耐寒性・耐暑性
日本の気候に馴染みやすく、暑さ寒さに耐えるので、1年を通して戸外で管理でき、冬越し対策なども特に必要ありません。
ガマズミの育て方のポイント
用土

【地植え】
植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘りましょう。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきます。粘土質など水はけの悪い土壌であれば、腐葉土や堆肥を多めに入れるとよいでしょう。土づくりをした後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
樹木用にブレンドされた、市販の培養土を利用すると手軽です。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の地面を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がって木が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に与えることが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった真昼に与えるようにしましょう。
【地植え】
植え付け後にしっかり根づいて枝葉をぐんぐん伸ばすようになるまでは、乾いたら水やりをしましょう。根づいた後は下から水が上がってくるので、ほとんど不要です。ただし、過度に乾燥が続く場合は、水やりをして補いましょう。
【鉢植え】
日頃から水やりを忘れずに管理します。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。枝葉がだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサインです。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイント。特に真夏は高温によって乾燥しやすくなるため、朝夕2回の水やりを欠かさないように注意します。冬は休眠し、表土も乾きにくくなるので控えめに与えるとよいでしょう。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
開花後の5月下旬〜6月にお礼肥として、リン酸、カリ成分を多く含んだ緩効性肥料を与え、土によくなじませましょう。また、2〜3月には緩効性肥料を与えます。生育期を迎える前に肥料を与えることで、新芽を出すエネルギーとなり旺盛に枝葉を広げることにつながります。
注意する病害虫

【病気】
発生しやすい病気は、褐斑病、うどんこ病などです。
褐斑病は、カビによる伝染性の病気です。主に葉に褐色またはくすんだ茶色の斑点が現れ、下葉から枯れ上がっていきます。雨が多い時期に発生しやすいのが特徴です。発症した葉を見つけたら、早々に切り取って処分し、周囲に蔓延するのを防ぎましょう。適応する薬剤を葉の表と裏に散布して、防除します。
うどんこ病も、カビによる伝染性の病気です。葉、新梢、つぼみに発生しやすく、表面が白く粉を吹いたような状態になり、放置するとどんどん広がるので注意。進行すると光合成ができなくなり、やがて枯死してしまいます。窒素肥料を施しすぎたり、枝葉が繁茂しすぎて風通しが悪くなったりしていると、発病しやすくなります。うどんこ病が出たら病気の葉を摘み取って処分し、適応する殺菌剤を葉の表と裏に散布して、蔓延するのを防ぎましょう。
【害虫】
発生しやすい害虫は、カイガラムシ、テッポウムシなどです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mm。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われて薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落とすとよいでしょう。
テッポウムシは、ゴマダラカミキリの幼虫です。成虫が幹などに産卵し、木の内部に入って食害します。幼虫は1〜2年にわたって木の内部を食害し、木は徐々に樹勢が弱って枯死することも。木の周囲にオガクズが落ちていたら、内部にテッポウムシがいることが疑われます。発見次第、侵入したと見られる穴に薬剤を注入して駆除しましょう。
ガマズミの詳しい育て方
苗の選び方
ガマズミの苗木を購入する際は、葉が生き生きとして傷みがなく、幹がしっかりとしたものを選ぶとよいでしょう。
植え付け・植え替え

ガマズミの植え付け・植え替えの適期は、休眠期の12月〜翌年3月です。ただし、寒さが特に厳しくなる1〜2月は避けたほうが無難です。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも1回り大きな穴を掘って植え付けます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引し、倒伏を防ぐとよいでしょう。最後にたっぷりと水を与えます。
庭植えの場合、環境に合って健全に育っていれば、植え替えの必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、10号くらいの鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから樹木用の培養土を半分くらいまで入れます。苗木をポットから取り出して鉢に仮置きし、高さを決めたら植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3㎝ほど下を目安にし、ウォータースペースを取るとよいでしょう。土が鉢内まで行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。しっかりと根づくまでは、支柱を立てて誘引しておくとよいでしょう。最後に、鉢底から流れ出すまで、十分に水を与えます。1年を通して日当たり、風通しのよい場所に置いて管理しましょう。
鉢植えで楽しむ場合は、成長とともに根詰まりしてくるので、2〜3年に1度は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出し、軽く根鉢をくずして新しい培養土を使って植え直しましょう。
剪定・切り戻し

剪定適期は、休眠中の12月〜翌年3月上旬です。
旺盛に生育し、比較的枝葉をよく伸ばす樹木ですが、樹形は自然に整います。そのため刈り込んだり大きく切り戻したりというよりは、込み合いっている部分を切り取って風通しよくすることを目的とした剪定を基本にするとよいでしょう。地際から立ち上がっている「ひこばえ」は元から切り取ります。木の内側に向かって伸びている「逆さ枝」、垂直に立ち上がっている「立ち枝」、勢いよく伸びすぎている「徒長枝」も元から切り取ります。1カ所から3本以上の枝が出ていたら、間引いて枝を透かすとよいでしょう。
あまり大きくしたくない場合は、大体のアウトラインを決めて、そこからはみ出している枝を、分岐点までさかのぼって切り取ります。
増やし方

ガマズミは、種まき、挿し木で増やすことができます。ここでは、それぞれの方法について解説していきます。
【種まき】
ガマズミは開花後に果実をつけ、10月〜11月中旬に熟します。そのタイミングで果実を採取し、種子を取り出して流水でよく洗い流しておきましょう。黒ポットに新しい培養土を入れて十分に水で湿らせ、種子を数粒播きます。軽く土をかぶせ、明るい日陰で管理。越年して春の生育期を迎えると発芽するので、その後は日当たりのよい場所に置きましょう。本葉が2〜3枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引いて育苗します。ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。種まきから3〜4年すると開花し始めるので、それまでは木の育成に努めます。
【挿し木】
挿し木とは、枝を切り取って地面に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物の中には挿し木ができないものもありますが、ガマズミは挿し木で増やすことができます。
挿し木の適期は、6月中旬〜7月中旬です。その年に伸びた新しくて勢いのある枝を10㎝ほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を数枚切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて管理します。その後は日当たりのよい場所に置いて育苗し、ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
ガマズミの実の栄養や食べ方

ガマズミの赤い実は、ほとんど生食されることはありません。ただし、完熟して白い粉をふくようになった頃には、若干の甘みが感じられるようです。果実にはポリフェノールやクエン酸、ピタミンCなどが含まれ、一般家庭では果実酒などに利用できます。
ガマズミで庭を一年中彩ろう

ガマズミは日本に自生してきただけに、暑さ寒さに強く放任してもよく育つので、ビギナーにも育てやすい庭木といえます。開花や新緑、結実、紅葉と、季節によって表情を変えていくのも魅力です。ぜひ庭に取り入れてみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。
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