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- 秋の移ろう庭を彩り・演出する宿根草2 キク科以外の植物編
冬に向かう移ろいの季節、秋。この時期にこそ美しい姿を見せる植物には、どんなものがあるのでしょうか? ここでは、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで園芸家の太田敦雄さんが、秋に注目の宿根草をピックアップ! ナチュラルな姿を楽しみたい、秋こそ魅力を増す宿根草2回目は、オミナエシやワレモコウなど6種。その生かし方や育て方のアドバイスをご紹介します。
目次
秋の庭を彩り・演出するさまざまな宿根草
前回から2回シリーズで、夏から冬へと移ろうシーズンである秋の庭に映える宿根草をご紹介しています。前回のキク科の植物に続き、今回は、それ以外の科の宿根草の多様な魅力に迫ります。
ぜひ、前回記事と併せて、秋の庭づくりの参考にしていただければ幸いです。
セレクト1
パトリニア・スカビオシフォリア (オミナエシ)
オミナエシは、フジバカマなどと並んで「秋の七草」にも挙げられている、日本人にとって秋の風情を強く感じさせてくれる花の一つです。日本原産の植物なので、日本の気候環境にも合い、花茎も直立で行儀よく育てやすい宿根草です。
鮮黄色の小花が集合した花序は、前回ご紹介したソリダゴとキャラがカブりそうですが、オミナエシの花序は遠目に見るとアキレアの花序をより細かく散らしたようで、雲のようなかたまりとなって軽やかに見えます。スパイク状のグラス類の穂などと組み合わせると、とてもよいコントラストを演出できるでしょう。
また、花色の観点から見ると、オミナエシの鮮やかな黄色の花は、ベルノニアやアスターの赤紫~青紫とも好相性です。
【DATA】
■ オミナエシ科
■ 学 名:Patrinia scabiosifolia
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈:1.2m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向~半日陰
セレクト2
サンギソルバの仲間
吾亦紅(ワレモコウ)の名で古くから馴染みの深いバラ科の植物です。ワレモコウは生け花などでも秋の花材としてしばしば重用され、前出のオミナエシ同様、日本人にとって秋の季節感を強く感じさせる花の一つです。
一般にワレモコウと呼ばれているのは、サンギソルバ・オフィキナリス(Sanguisorba officinalis)で、日本をはじめ、朝鮮半島~中国にかけての東アジア地域に自生しています。また、オフィキナリスよりも花序が長く垂れた感じになるナガボノワレモコウ(サンギソルバ・テヌイフォリアSanguisorba tenuifolia)も観賞価値の高い種です。
オフィキナリスやテヌイフォリアは、日本原産種ということもあり、日本の気候環境に合う育てやすい植物です。また、縁に鋸歯のついた葉も美しく、開花前の春〜夏にかけても美しいリーフプランツとして活躍します。
楕円球状に咲く花序は、蕊が飛び出してモール状のテクスチャーに見える開花期間も美しいですが、開花後、より硬い質感で臙脂色に残る花殻の様子もオーナメンタルで長い期間観賞できます。
晩夏にオミナエシやルドベキアなどとの共演から始まり、秋本番に向けてススキやアスターなどとの組み合わせに遷移していくと美しいでしょう。
【DATA】
■ バラ科
■ 学 名:Sanguisorba (各種名は上記解説中に記載)
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈 :1〜1.5m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向~半日陰
セレクト3
オオベンケイソウ系のセダムの仲間
セダムの大型種は、ヨーロッパの有名庭園でも秋の見どころとして宿根草植栽の前景に自慢げに植栽されることが多いです。ぼってりとした草姿と、秋を彩る雲状の花序が大変美しく、花後のオーナメンタルな枯れ姿まで長く楽しめます。
淡ピンク~赤紫など花色のバリエーションだけでなく、紫葉や斑入り葉など、美しい園芸品種もたくさんあり、選択肢が広いのも面白いところ。
セダムの仲間は春の芽吹きから多肉質の葉が美しく、風にそよぐような薄く軽い質感の葉が多い宿根草の中でも、ぼってりとしたテクスチャーで存在感を発揮してくれます。
多肉植物でありながら耐寒性が強く、頼もしい素材です。
セダムは、日本の環境下では、初夏以降、枝先の葉を中心にコナガの幼虫に食害されやすく、また梅雨~夏にかけての高温多湿で傷んでしまうことも多いため、少し栽培に工夫が必要です。
夏の蒸れを避ける意味も含め、梅雨前に株元まで強く刈り戻しを行うと、新芽がたくさん出て、こんもりと整った草姿で晩夏からの開花期を迎えることができます。また、比較的長く効く浸透移行性の殺虫剤を常用することで、コナガの食害を防除するとよいでしょう。
【DATA】
■ ベンケイソウ科
■ 学 名:Sedum telephium (各種名は上記解説中に記載)
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈 :30〜40cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:普通
■ 日 照:日向
セレクト4
ペルシカリア・アンプレクシカウリスの仲間
オランダの植栽家、ピート・アウドルフ氏も秋の庭の演出に好んで用いるタデ科の植物です。暑さ寒さにも強く、日本の気候にも合い、育てやすい宿根草です。
タデというと、日本人にとっては、秋の山野で見かけるミズヒキ(Persicaria filiformis 下写真)や、
「赤まんま」の名でも知られるイヌタデ(Persicaria longiseta 下写真)など、
秋の季節感とともにノスタルジックなイメージを伴う植物といえるでしょう。
本項で取り上げたペルシカリア・アンプレクシカウリスは、タデ科らしい野生的な穂花を壮麗に咲かせるヒマラヤ原産種です。
今日では花色や葉色の改良種も多く作出されていて、ヨーロッパのコンテンポラリーな宿根草植栽のようなお洒落さと日本人の野草のイメージを兼ね備えた素材といえます。
こっくりとした秋の気分にマッチする赤花の基本種、アンプレクシカウリスをはじめ、白い細長穂花の‘アルバ’(Persicaria amplexicaulis ‘Alba’)、ピンク色の細長穂花の‘ロセア’(Persicaria amplexicaulis ‘Rosea’)など、植え場所の雰囲気に似合った花色の品種を選ぶとよいでしょう。
黄金葉で赤花の品種、ペルシカリア‘ゴールデンアロー’(Persicaria amplexicaulis ‘Golden Arrow’ 上写真)は、草丈も少しコンパクトにおさまり、開花期間以外も美しい黄金葉を楽しめ、観賞価値が高いです。
ペルシカリア アンプレクシカウリスの仲間は、開花期間が長く、関東地方では梅雨前から晩秋まで繰り返し咲きますが、梅雨~夏の間は勢いよく繁茂します。その後、倒れて草姿が乱れやすいので、最初の花を楽しんだら、花茎を根元まで刈り戻すことで、こんもりと茂った状態で秋の花を楽しむことができます。
【DATA】
■ タデ科
■ 学 名:Persicaria amplexicaulis (各種名は上記解説中に記載)
■ 主な花期:初夏~秋
■ 草 丈:50〜80cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向
セレクト5
サルビアの仲間
サルビアの仲間は種類が多く、春~初冬咲きまでたくさんの種・品種がありますが、本項では紅葉・落葉が進み、庭が枯れ色に移っていく初冬の季節までを彩ってくれるものをピックアップしてご紹介します。
今回ご紹介する品種は、いずれもメキシコなど温暖地域原産で、耐寒性が万全ではなく、関東地方以南の比較的寒さが厳しくない地域向けの素材です。一方、耐暑性はとても強いので、高温多湿な日本の夏も元気に越します。
モール素材のようなテクスチャーの花穂や花茎が美しいサルビア・レウカンサ(Salvia leucantha 上写真)は、秋~初冬に庭で定番的に使われる素材ですよね。ゴワゴワした起毛質感の葉も独特の雰囲気があります。定番の紫花基本種以外にも、淡いピンク花の品種などもあり、美しいです。
パイナップルセージとも呼ばれ、葉がパイナップルに似た芳香をもつサルビア・エレガンスの黄金葉品種 ‘ゴールデン・デリシャス’ (Salvia elegans ‘Golden Delicious’)は、春~秋は鮮やかな黄金葉をコリウスのように楽しめ、秋の後半に咲き始める花も日本人の多くが「サルビア」と聞いて真っ先に思い浮かべる真っ赤な花のイメージと符合し、晩秋の季節感にとてもマッチします。
草丈2m程度に育ち、黄色の穂花を壮麗に咲かせるサルビア・マドレンシス(Salvia madrensis 上写真)は、ススキなど高性のグラスの穂などとも背丈が合い、宿根草植栽の後景に植えるとダイナミックな演出ができます。
本項でご紹介したサルビアは、開花期が晩夏以降となります。枝が伸びて倒れやすくなる梅雨の頃に地際から1/3程度を残して強く刈り戻しを行うことで、脇芽がたくさん出て、倒れずに枝数多くこんもり茂った草姿で開花期を迎えることができます。
【DATA】
■ シソ科
■ 学 名:Salvia (各種名は上記解説中に記載)
■ 主な花期:晩夏~初冬
■ 草 丈:1〜2m程度 (種により異なる)
■ 耐寒性:普通(-5~-7℃程度)
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向
セレクト6(番外編)
アムソニアの仲間
ここまでは秋の花を楽しめる宿根草を解説してきましたが、最後に番外編として、冬季落葉前の黄葉がとびきり美しい植物、アムソニアをご紹介します。
アムソニアは、日本にも自生するチョウジソウ(Amsonia elliptica)も含む、キョウチクトウ科の植物です。青紫色の美しい星形の花を初夏に咲かせ、晩秋、鮮やかに黄葉して冬季落葉します。
アムソニアの中でも繊細な細葉となる北米原産種フブリヒティ(Amsonia hubrichtii 上写真)は、開花期以降の葉姿も爽やかで、黄葉時の様子もとても美しく、目を引きます。春~晩秋まで余すところなく観賞できる有望種です。
他にも近年では、フブリヒティより広葉のアムソニア・タベルナエモンタナ(Amsonia tabernaemontana)も日本国内で流通するようになってきました。上写真中央辺りに立ち上がるライム色の葉が、低温期に入り徐々に黄葉へと進んでいくタベルナエモンタナの様子です。ベージュや黒褐色に枯れゆく庭の中で、輝くような植栽効果を発揮していますよね。
【DATA】
■ キョウチクトウ科
■ 学 名:Amsonia (各種名は上記解説中に記載)
■ 主な花期:晩春~初夏
■ 草 丈:50〜80cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向~半日陰
秋の移ろいを演出する宿根草、いかがでしたか。次回記事では、今回の宿根草と組み合わせて秋の庭を個性的に演出できる魅惑のオーナメンタルグラスをご紹介します。どうぞお楽しみに!
「秋は自然の季節というよりも魂の季節だということに気づきなさい」
(フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ 哲学者 1844 – 1900)
Photo/ 1) Wiert nieuman 2) Nancy J. Ondra 3) Nancy J. Ondra 4) Proshkin Aleksandr 5) Nancy J. Ondra 6) High Mountain 7) Sergey V Kalyakin 8) Matt Hopkins 9) Elisabeths’Photography 10) Bildagentur Zoonar GmbH 11) InfoFlowersPlants 12) miru.namu 13) High Mountain 14) Larasati Indah 15) Gardens by Design 16) Nancy J. Ondra 18) Nita Corfe 19) unpict 21) Lois GoBe 22) Nancy J. Ondra 23) Nancy J. Ondra 24) Wiert nieuman 25) Nancy J. Ondra /Shutterstock.com
17&20/太田敦雄
Credit
写真&文 / 太田敦雄 - 「ACID NATURE 乙庭」代表 -
おおた・あつお/園芸研究家、植栽デザイナー。立教大学経済学科、および前橋工科大学建築学科卒。趣味で楽しんでいた自庭の植栽や、現代建築とコラボレートした植栽デザインなどが注目され、2011年にWEBデザイナー松島哲雄と「ACID NATURE 乙庭」を設立。著書『刺激的・ガーデンプランツブック』(エフジー武蔵)ほか、掲載・執筆書多数。
「6つの小さな離れの家」(建築設計:武田清明建築設計事務所)の建築・植栽計画が評価され、日本ガーデンセラピー協会 「第1回ガーデンセラピーコンテスト・プロ部門」大賞受賞(2020)。
NHK『趣味の園芸』講師。(一社)ジャパンガーデンデザイナーズ協会(JAG)正会員デザイナー。ガーデンセラピーコーディネーター1級取得者。(公社) 日本アロマ環境協会 アロマテラピーインストラクター、アロマブレンドデザイナー。日本メディカルハーブ協会 シニアハーバルセラピスト。
庭や植物から始まる、自分らしく心身ともに健康で充実したライフスタイルの提案にも活動の幅を広げている。レア植物や新発見のある植物紹介で定評あるオンラインショップも人気。
「太田敦雄」公式ブログ https://note.com/acid_nature_0220
プロフィール写真/田中雅也
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