【プロが伝授】放置厳禁! 9〜10月にやるべきピンチのクリスマスローズのレスキュー方法<鉢植え編>

葉が茶色い、葉が極端に少ない、地上部に何もない…。酷暑が過ぎたあと、クリスマスローズの異変を心配している方は、今、動きましょう。枯れてしまったように見えるクリスマスローズも、今すぐ手を施せば復活する可能性は大です。クリスマスローズの専門家、横山直樹さんが弱ったクリスマスローズのレスキュー方法を伝授。原因の異なる5つの実例をもとに、処置方法を丁寧に解説します。
目次
なぜ、今がクリスマスローズのレスキュー最大チャンスなのか?

クリスマスローズは、夏は半休眠状態で、9月に再び生育を開始し、10月には生育旺盛になります。この「旺盛に生育する」時期こそ、傷んだクリスマスローズの復活チャンス。新しい根が出て新葉が展開するので、早期に対処すれば新しい細胞と入れ替わり、株をリフレッシュすることができます。ただし、冬季は再び生育がゆっくりになり、花芽を充実させるために体力を使うようになるので、それまでにどれだけ株の回復ができるかがポイント。9〜10月、ヒガンバナが咲く頃を目安に処置を開始し、11月までを株の回復期間に当てるイメージで、作業を開始しましょう。
【症例1】夏に葉が傷んで茶色くなったクリスマスローズ

葉焼けは傷んだ部分のみ取る
強い日照が原因で葉が焼けてしまった例です。夏は基本的に半日陰に移動したり、遮光したりして、西日を避けて管理するのが理想的。夏の強い日差しに当たるとこのように葉が茶色くなってしまうことがありますが、クリスマスローズはこれから新葉が展開してくるタイミングなので、心配ありません。傷んで茶色くなった部分だけをちぎるようにして、根元からは茎を切らないようにしましょう。根元から切ると急いで活動を開始し、まだ少ない体力を使い果たして枯れてしまうことがあります。
養生期間は排水性・通気性のよい鉢に

必ずしも植え替えが必要ではありませんが、このケースの場合、植えられている鉢を見てみると鉢底穴がとても小さいことが懸念点。海外で作られているテラコッタと言われる植木鉢には、このように鉢底穴が小さいものがあります。一方、日本で古くから使われている「駄温鉢」と言われる植木鉢は、一見同じように見えて日本の高温多湿の気候に合わせて鉢穴がより大きく、鉢底に足がついていて、鉢底から通気性が確保される設計になっています。夏に鉢内の乾きが遅いと、蒸れて根腐れしてしまうことがあるので、調子が優れないときは鉢も見直してみましょう。少なくとも養生期間は日本の気候に合う駄温鉢やスリット鉢に植え替えたほうが安心です。
【症例2】同じ品種で同じように育てていたのに一方だけ不調

鉢の違いで生育に差が出ることがあります
春に買ったクリスマスローズ‘プリマドレス’2苗。左は元気に育っていますが、右は枯れてしまったように見えます。同じ場所で同じように管理していたのに、このような違いが出るのは、鉢の違いです。先述したように、クリスマスローズは排水性と通気性が大事。調子の悪い右の鉢は「釉薬」がかかった鉢で、鉢表面からは通気性や排水が行われません。右の釉薬のかかった鉢に植えられた株は、鉢内が乾きにくく過湿になったことが不調の原因です。デザイン性に優れていますが、もし使いたい場合には管理の仕方を変える必要があり、上級者向け。
調子が悪い株は鉢から抜いて根の様子を見る

地上部がすっかり枯れてしまったように見える株も、根が生きていれば復活の可能性は大いにあります。まずは鉢から株を出して、丁寧に土を落として根の様子を見てみましょう。根が黒く腐っているようであれば残念ながら復活はできませんが、白い根がある場合はまだまだ復活可能です。このケースは白い根があり、復活可能。
通気性の優れた鉢に植え替え

調子のよい左の株はこれからどんどん大きくなるので、一回り大きなスリット鉢に植え替えました。鉢の植え替えは2〜3年に1回が基本ですが、小さな苗の場合、株の生育に合わせて鉢を大きくしていくと成長が促されます。大きな鉢は用土が乾きにくいので、いきなり大きな鉢にするのではなく、「徐々に」がポイント。乾く→濡れる→乾く、というリズムが健全な生育には大切です。調子の悪い右の株は、釉薬のかかっていない通気性のよい鉢に植え替え養生します。
【症例3】葉が少なくヒョロヒョロで元気のないクリスマスローズ

葉が鉢縁に寄ってくるのは植え替え不足
ヒョロヒョロの葉っぱが鉢の外側に寄って生えています。これは典型的な植え替え不足のサイン。長年育てていると、中心部に切り株のようなコブ(古い根)ができ、新芽が脇から出るようなって、このように葉が鉢縁に沿って生えるようになります。クリスマスローズの鉢の植え替えは、2〜3年に1度がおすすめ。年数を経ると内側の古い根や古い用土が生育を阻害してしまうことがあるので、秋に早めに株分けをしましょう。

長年育てた大きな根鉢を崩すときは、ゴム性のハンマーがあると便利です。ハンマーで根鉢をトントンと叩いて土を徐々に崩していきます。根っこをほどいていくと根の中心部のコブは柔らかく腐っていました。この部分を放置しておくと、健康な根も腐ってしまうので取り除きます。

地上部は2本の葉っぱだけでしたが、崩していくと内側には新芽を持つ部分が複数ありました。

葉がある2本と、芽のみ出ている分を株分けし、それぞれ別の5号スリットポットに植え替えました。このスリットポットは横山園芸が15年以上携わり開発協力してきたポットです。植物の根は基本的に下に伸びて下の方でとぐろを巻くように根鉢を作りますが、このポットは根が下まで到達すると、新しい根をあちこちから出して全体的な根の量が増えるよう計算されています。鉢底の石も不要で、栽培の失敗が少なくおすすめです。
【症例4】以前はフサフサだった葉が一本だけになってしまったクリスマスローズ

2年連続して不調の場合は植え替えよう
クリスマスローズに不調が起こったとき、1年は様子をみて良い場合もあります。翌年には自然に回復することもありますが、2〜3年連続して花が咲かなかったり、新葉が展開しない場合は植え替えか株分けが必要なサインだと思ってよいでしょう。この株の場合、表土にコケが生えている部分がありますが、これは根が古くなって表面に露出したコブにコケが生えています。こうしたコブができると新芽はそれを避けて土中に潜ってしまうことがあります。

株を鉢から出して根をほぐすと、コブの脇から新芽が出ていたので、株分けしてコブはハサミでカットします。カットした断面には、病気予防のために乾いた赤玉土を塗りつけておきます。

葉がついているほうは、葉を半分ほどちぎります。その理由は株分けして半分になった根と、地上部の葉のバランスをとるためです。葉が大きいままだと、少なくなってしまった根からの水の吸い上げ量と、葉の蒸散作用のバランスがとれずに弱ってしまいます。

鉢も2サイズほどダウンして、新しい用土に植え替え完了。
【症例5】とりあえず置いたポット苗がそのまま下に根を張ってしまった

ビニールポットを外して植え替えよう
春にポット苗を入手し、とりあえず土の入った鉢の上に置いておいたら、そのまま根を張ってしまい動かせない。という事態、じつは結構あるあるなんです。そのまま地面に根を張っているケースもあります。これから生育旺盛な時期を迎えるにあたっては、ビニールポットは窮屈なので外してあげましょう。秋が植え替え時期なので、レスキューチャンスです。

まず鉢から出して根をほぐします。ビニールポットの鉢穴から盛大に根が伸びて、生育は至って良好ですが、ビニールポットから抜き取るとせっかく生育している根がちぎれてしまうので、ビニールポットをハサミで解体します。

下に根を張っていた鉢のサイズがちょうどいいので、それに植え替えてレスキュー完了! 地植えのケースも周囲に余裕を持って掘り上げ、ビニールポットを外し、定植しましょう。
植え替えた後のクリスマスローズのお手入れ
レスキューして植え替えたり、株分けした後のクリスマスローズは、根に多少なりともストレスがかかっているので、「活力剤」を用いて水やりをすると回復が順調に進みます。活力剤は肥料と異なり、免疫力をあげたり環境を整えたりするもので、弱った植物にも安心して使えます。その後の日常の手入れは表土がしっかり乾いたら水をたっぷり与えます。9月下旬〜10月には薄めの液体肥料をスタートし、葉が成長してきたタイミングで緩効性固形肥料をおくと生育がより促されます。生育に合わせて、肥料も「徐々に」通常に戻していくのがポイントです。管理場所も日当たりのよい場所に徐々に慣らしていくようにしましょう。

酷暑に耐え、これからがクリスマスローズの生育期間に入ります。その時こそ弱った株を救うチャンス。冬前までの期間を有効に活用し、株を復活させて来春の華やかな開花につなげましょう!
アドバイス/横山直樹(横山園芸)https://shop.yokoyama-nursery.jp
協力/面谷内科・循環器内科クリニック
Credit
写真&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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