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【プロに学ぶ!】11月はクリスマスローズ絶賛生育中!開花を促す「古葉取り」のやり方とその効果 

【プロに学ぶ!】11月はクリスマスローズ絶賛生育中!開花を促す「古葉取り」のやり方とその効果 

冬の庭の主役、クリスマスローズ。まだ花が少ない時期に庭を華やかに彩ってくれ、年々株が大きくなり花数が増えていくコストパフォーマンスのよい宿根草です。丈夫で育てやすいのが魅力ですが、生育期間が他の多くの草花と異なるため、栽培に戸惑うことも。花を咲かせるために必要な「古葉取り」のコツを育種家の横山直樹さんに教わりました。

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美しく進化し続けるクリスマスローズ

ドレスの裾のように波打つ花弁が美しい‘プリマドレス®︎’。

凍てつく冬から春へ向かう頃、彩りの失われた庭にあかりを灯すように咲くクリスマスローズ。美しさを隠すようにうつむいて咲く姿はその気品にあふれ、「冬の貴婦人」と称されます。そっと手を添えて花の顔をのぞいてみれば、次の1輪ものぞかずにはいられないでしょう。クリスマスローズは無限とも思えるほどに花形、花色が変化に富み、可憐、華麗、清楚、艶美、シック…形容する言葉も魅力も尽きることがありません。

もともとは一重の素朴な花で、お茶席に飾るのに好まれていましたが、20年ほど前から日本での育種が盛んになり、近年ではダリアと見紛うような絢爛豪華な花も多数生まれています。今や日本のクリスマスローズは精緻な美しさと圧倒的なバリエーションで世界を驚嘆させるほど。そんなクリスマスローズの育種の第一人者が、横山園芸の横山直樹さんです。

「おはなよろこぶチカラコブ」のキャッチフレーズで、さまざまなメディアでもお馴染みの育種家、横山直樹さん。

歴史に残る名花を生み出し続ける育種家、横山直樹さん

株を覆うように白い花を咲かせている‘プチドール®︎’。

横山さんは、これまでクリスマスローズにはなかった小輪で多花性、コンパクトな株姿に小さい葉っぱが特徴の‘プチドール®︎’や、花弁数が40枚以上になる大輪で華やかな‘プリマドレス®︎’など、数々のオリジナル品種の名花を誕生させています。近年では、なんと247枚もの花弁をもつプリマドレス‘ルナソラ’という奇跡のような花も開花(未発売)。こうした華やかな進化の一方で、横山さんが育種に情熱を注ぐのは、一重の素朴な花です。

ほんのり桜色に色づく‘ヨシノ’。

横山さんが育種した一重のクリスマスローズ ‘ヨシノ’は、和紙のような繊細な透明感があり、淡い色づきはソメイヨシノを思わせます。増殖が難しく流通量が少ないため「幻の花」とも呼ばれ、いつか手に入れたいと夢見る愛好家は少なくありません。‘ヨシノ’の交配親は中国に自生し、長年幻の花とされていた原種チベタヌス。冷たい空気の中で紅潮する頬のような淡桃色の花は、ほかにはない美しさですが、平地での栽培は非常に難しく、交配でも敬遠されてきました。しかし、横山さんは根気よく交配に挑み、ハイブリッドとの種間雑種を成功させ、原種チベタヌスの美しさはそのままに、丈夫な性質を与えました。それが ‘ヨシノ’です。‘ヨシノ’は英国王立園芸協会で発表されるやいなや、その類稀な美しさとともに、その後のクリスマスローズの育種に大きな変化をもたらすものとして、世界で注目を浴びました。

丈夫で初心者も美しい花を咲かせられるクリスマスローズ

クリスマスローズは庭植えで丈夫に育ち、次第に花数を増やす。

‘ヨシノ’のような希少種は栽培が難しそうと思われることが少なくありませんが、前述の通り性質は丈夫で育てやすいのが魅力。‘ヨシノ’に限らず、クリスマスローズは丈夫で育てやすく、宿根草なので一度植えれば何年も同じ季節に咲いてくれ、次第に株が太って花数も多くなります。庭植えでも鉢植えでも楽しめ、栽培に苦労することは一部の品種をのぞいてあまりありません。

ただし、「冬の貴婦人」であるだけに、多くの植物が旺盛に生育する夏は休眠し、10月に再び目覚めて生育を始めるなど、ほかにはない特色があるため、性質を知って適期適切に手入れをする必要があります。今月11月は、まさにクリスマスローズの生育期。現在進行形で、株はますます活発に成長しています。植え替え、株分け、追肥などの適期でもあり、「古葉取り」というクリスマスローズ特有の作業をする時期です。

冬にやりたいクリスマスローズの「古葉取り」とは

春に茂った葉は、秋以降は枯れて傷んできます。これを古葉と呼びます。この時期には株の中心部に花芽ができ、それに押し広げられるように古葉は横に開いて倒れてきます。この古葉を取り除くことで株元によく日が当たり、地温も上昇して花芽の生育を促します。同時に、古葉が切られる刺激によりホルモンが働き、開花を促す効果があります。また、株元の風通しがよくなることで、灰色かび病の発生を防除することにもつながります。ただし、有茎種、中間種、H.ニゲル系の種間雑種は傷んだところのみ切り取ります。古葉取りは、株が生育する11月〜1月に行います。

やり方は簡単。株元から5cm以上を残してカットするだけです。茎を長めに残すのは、カットした先端から水滴が出るためです。短く切るとこの水滴が株元にたまってカビが発生したり、新芽を傷める可能性もあるため、茎は5cm以上残します。手で折り取るようにするか、ハサミで切る場合はハサミを消毒してから使います。複数の株の古葉取りをする際は、株ごとにハサミを消毒しながら切るのが理想的。ウイルス病に罹患している株がある場合、ほかの健全な株へ感染してしまうのを防ぐためです。全部を切る必要はありませんが、古葉は外側に倒れてくるので、不要なものは切りましょう。

丁寧な解説でクリスマスローズ初心者も安心の1冊

こうした月毎の手入れやクリスマスローズの特性についてまとめた横山直樹さんの新刊『新版 クリスマスローズ〜この1冊を読めば原種、交雑種、栽培などすべてがわかる』(誠文堂新光社刊)が2023年11月に発売されました。なぜその作業が必要なのかや、作業工程が写真で丁寧に解説され、初心者でも迷うことがありません。

また、‘プチドール’や‘ヨシノ’といった歴史に残る革新的な花がどのように生まれてきたのか、育種家のあくなき挑戦と情熱に触れられるストーリーも収録されています。さらに、写真家、鞆岡隆史(ともおかたかし)氏による美しい写真ギャラリーやクリスマスローズのフラワーアレンジメントも紹介され、クリスマスローズの魅力を堪能できる1冊です。

【今やりたい!】クリスマスローズ「古葉取り」とは?

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