秋こそベストシーズン! 翌春の花壇が見違える「11の庭仕事」リスト

Natalia Greeske/Shutterstock.com
記録的な猛暑が落ち着き、庭仕事が心地よい季節がやってきました。ガーデニングにとって秋はゴールデンタイムと呼ばれ、来年の春に美しい花を咲かせるための大切な準備期間です。夏の間に咲いていた花の世話や冬越しの準備など、今のうちにやっておきたい作業はたくさんあります。そこで今回は、春の花壇が見違えるほど華やかになる、秋の基本的な庭仕事のポイントを、園芸研究家の三橋理恵子さんに教わります。文末の新刊書籍プレゼントのご案内もお見逃しなく。
目次
秋はガーデニングのゴールデンタイム

「暑さ、寒さも彼岸まで」という言葉がある通り、あれほど厳しかった記録的な猛暑もようやく落ち着きを見せ始めました。朝晩の涼しい風や、日中の柔らかな日差しは、庭仕事をする私たちにとっても、そして夏の暑さに耐えてきた植物たちにとっても、まさに恵みの時間です。過ごしやすい穏やかな気候の秋は、ガーデニングのゴールデンタイムと呼ばれています。
では、なぜ秋がそれほど特別な季節なのでしょうか。その理由は、この時期の庭仕事が「夏のダメージからの回復」「厳しい冬への備え」「輝かしい春への仕込み」という3つの重要な役割を担っているからです。

まずは、春から夏にかけて花を咲かせ続けた多年草などを植え替えたり、切り戻したりして、疲れた株をリフレッシュさせる絶好の機会です。同時に、これから訪れる冬の寒さを乗り切れるよう、植物自体の耐寒性を高めるための管理を始める大切な時期でもあります。
そして何より、ガーデナーの心をワクワクさせるのが、翌年の春に向けた準備です。秋に行う作業は、来年の春の庭の景色に大きく影響し、まさに「翌春に差がつく」ものばかり。パンジーやビオラの苗を選んだり、チューリップやスイセンの球根を植え付けたりしながら、春の庭を想像するのは、この季節ならではの大きな楽しみと言えるでしょう。
このように、開花中の花の世話から冬支度、来シーズンの準備まで、秋の庭はやるべきことが目白押しです。だからこそ、必要な作業をリストアップして、計画的に進めていくことが大切になります。
次の項からは、具体的にどんな作業をすればよいのか、詳しく見ていきましょう。
春の景色は秋で決まる!差がつく「11のガーデニング作業」
さっそく、この秋にやっておきたい具体的な作業を11個のリストにしました。一つひとつこなしていくことで、来年の庭の美しさが大きく変わってきます。
1.多年草を植え替えて、来年の成長を促す

春から夏に人気のペチュニアやバーベナなど、栄養系タイプの草花は、秋のうちに植え替えておくと、翌年の株張りに大きく差が出ます。整理して切り戻した茎は、挿し芽をしておくと、簡単に根づいて株を増やせます。
2.株分けでお気に入りの植物を増やす

花が終わって夏越しが成功した多年草は、地際から株が広がり、株分けできるほど生育しています。このままでは窮屈なので、株分けしましょう。あまり細かく分けすぎないのがポイントです。
3.用土や肥料は、シーズン前にまとめて購入
ガーデニングをしていて、一番買いに行く回数が多いのは、用土です。いざ使いたいときにないと困るので、事前に必要な土を買いそろえておくと安心できます。一緒に肥料や薬剤など、基本的なものも買っておきましょう。
4.来シーズンに向けた土づくり

花壇では、夏の花が終わったら、さっそく土を掘り起こして耕します。土がぱさぱさしているようなら、腐葉土や堆肥などの有機質分をすき込んで土づくりして、秋花壇の準備をします。
5.意外と見落としがち? 庭やコンテナの大掃除

ガーデニングの土台である花壇やベランダが、整理整頓されていなければ、花も映えません。
とくに忘れがちなのが、コンテナの掃除です。雨のはね返りなどでコンテナの側面は汚れやすいもの。使い終わったコンテナやポリポットは、中性洗剤できれいに洗って、干してからしまいましょう。病原菌を防ぐ意味もありますが、用具の管理は、ガーデニングの基本でもあります。
6.まだまだ咲く花へ、追肥を忘れずに

秋のコンテナや花壇は、最近の暖冬傾向で、開花期間が伸びて、12月になっても勢いよく咲いているものもあります。花期が長いので、とくに注意したいのは肥料切れ。お手入れ不足がないかどうか、チェックしてみましょう。
7.越冬する害虫は、今のうちに駆除
注意したいのが、越冬アブラムシ。冬の間、植物の株元などで越冬するアブラムシは、春になると一気に増えてしまいます。見つけにくい厄介な害虫なので、浸透移行性殺虫剤を数回散布して、根絶しましょう。
8.使った土は捨てないで! 古土の再生

プランターで育てた花が終わったあと、残った土をどうしていますか? そのまま捨ててしまうのは、もったいない! 古い根やゴミを取り除き、ビニール袋に入れて日光に当てるなどして消毒すれば、再び使えるようになります。
9.冬の寒さから守るマルチングと切り戻し

戸外で越冬させる株の寒さ保護には、軒下に取り込むほか、表土をバークチップなどで覆うマルチングが効果的です。一方、株は体積が大きいと寒さを受ける部分が増えるので、半分程度まで切り戻します。切り戻しは、わき芽の成長を促進する効果もあって、一挙両得です。
10. 秋の挿し芽で苗作りを楽しむ

多年草草花などは、挿し芽で簡単に増やせます。秋のうちに挿し芽をして、苗をたくさん作っておけば、冬の育苗の楽しみも味わえます。温暖地なら、たいていの種類は戸外の軒下などで管理できます。
11.枯れた一年草の片づけは慎重に
枯れた一年草は片づけますが、タネがこぼれる草花では、土をそのままにしておくと、早春になってこぼれダネから発芽することもあります。どこかの庭から飛んできたタネから、草花が育つことも。あるいはペチュニアのように、一年草といっても、暖かい場所なら冬を越して、大きな株になって翌年花を咲かせるものも多くあります。片づけの見極めは慎重に。
【プロの技】冬越し成功率が上がる、植物の耐寒性をつける秋の花育て

晩秋から初冬は、植物の冬越し準備をする大切な時期。冬咲き草花、春の開花を待つ草花、寒さに弱い鉢花などがよりスムーズに冬を乗り切るために、今できること。それは、植物が耐寒性をより増すように管理することです。
耐寒性は、大きくは植物の原産地の環境に左右されますが、育て方しだいで、寒さにより耐えるよう慣らすことができます。実際、世界各地の植物が行き来し、外来植物を育てる機会が多くなった今、耐寒性を増す管理法は、欠かせないテクニックの一つです。
耐寒性向上の鍵は秋の管理です。具体的には、水やりがいちばんのポイント。水を与える間隔をだんだんあけていき、植物の体内の水分量を徐々に減らします。こうすると葉の糖分量が増え、葉はごわごわしますが、より寒さに耐えられるようになります。
「水を減らす」というと、与える量を減らすと考えがちですが、これは間違い。水やりの間隔はあけるものの、鉢底からたっぷり流れるほど水やりします。寒さに弱い植物は、寒さがくると成長を止めて休眠状態に。これらは水やりの間隔をぐっとあけます。
植物に耐寒性をつけるには、強い寒さがくるまでに植物を丈夫に、栄養たっぷりに育てておくことも大切。それには日光に当て、バランスよく肥料を与え、株をコンパクトに育てておきます。強健に育った株は、冬越しもスムーズです。
耐寒性って何だろう?
耐寒性とは、植物が寒さに耐えられる指標のようなもの。寒さの厳しい場所が原産地なら耐寒性が強く、熱帯・亜熱帯地方の植物には、寒さに耐える力はありません。
一般的な園芸植物では耐寒性、半耐寒性、非耐寒性の区別があります。ただし耐寒性草花といっても、強い寒さがきたときなどは生育が止まったり、株が傷んだり、ひどいときは枯れることもあります。
とくに品種改良の進む園芸草花では、品種によっても耐寒性は違います。同じ家でも東西南北の向きや日当たり、風の強さなど条件は異なります。植物の様子を確認しながら、寒さ対策を考えるのが一番です。
耐寒性アップの鍵は水やりにあり
もっとも重要なポイントは、水やりの方法です。水を与える間隔をだんだんあけていきます。こうすることで、植物は体内の水分量を減らし、代わりに糖分濃度を高めて、寒さに強い体質に変化していきます。
process 1
秋までの水やりの間隔を、だいたい把握しておきます。
process 2
水やりの間隔を、だんだんあけていきます。最初1日おきであれば、次は2日おきに。それに慣れれば3日おきに。土の表面が乾いても、葉先がしおれていなければ、水やりしなくて大丈夫。気温の下がる晩秋から冬の水やりは、午前中がベスト。夕方以降の水やりは避けます。
process 3
最終的に何日水やりの間隔をあけるかは、鉢の大きさ、植える植物、土の性質、置き場所などによってまちまち。植物の様子を見ながら見極めます。
process 4
水を制限していくと、茎葉はごわごわして堅くなり、緑もより色濃く。株自体の成長は遅くなりますが、よりしっかりしまった株になります。
耐寒性を高める3つのポイント

水やり
寒さで葉が傷みやすいので、夏のように葉の上から水を与えないようにします。株元の土めがけて、ジョウロのハス口をつけずに水を与えます。
肥料
チッソ肥料は植物のからだを作ります。ただしこの時季(秋)、必要以上に葉茎を伸ばすことは、耐寒性をつける妨げになるので、控えめに。根を育てるカリウム肥料は、耐寒性に貢献します。
置き場所
日当たりの悪い場所で日光を好む植物を育てると、貧弱に育ち、寒さに耐える力も弱くなります。場所が限られている場合は、こまめに鉢を移動して、日に当てる工夫を。また冬に風が強く吹く地域では、植物を上手に冬越しさせるうえで大切です。
植物の種類別、秋からの管理法
冬咲き草花

パンジーやストック、リナリアなど、冬にも戸外で花を咲かせる草花は、寒さに強いもの。水やりの間隔をだんだんあけながら、より耐寒性がつくよう、寒さに慣らしながら育てましょう。
室内で管理する冬咲き植物

ベゴニアやポインセチア、プリムラ・オブコニカなどは、冬咲きといっても寒さに弱いもの。暖かい室内で管理します。室内の温度が平均して高い場合は、土の表面が乾いたら水をたっぷり与えます。昼夜の温度差が大きい場合は、夜間窓際から鉢を離すなどして、温度差を少なくする工夫を。
戸外で管理している春咲き草花

カレンデュラやジギタリス、スイートピーなど、春咲き草花のほとんどは耐寒性が強いので、秋のうちに定植すれば、冬越しはわりと簡単。ただし風が強い場所では、風よけの工夫を。寒さで葉が傷むなら、べたがけシートをかぶせましょう。
冬に保護が必要な熱帯植物

ハイビスカスやランタナ、ルリマツリなどの熱帯植物は、寒くなったからといって、早めに室内で保護するのはタブー。耐えられるうちは戸外の日当たりのよい場所に置き、寒さに十分慣らしましょう。株の体積が多いと、寒害も受けやすいので、半分くらいまで切り戻すと、冬を越しやすくなります。また必要以上の保護をせず、だんだん寒さに慣らしていくと、温暖地では戸外で越冬できるようになります。ただし、慣らすのは徐々に。
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Credit
監修 / 三橋理恵子 - 園芸研究家 -
神奈川県在住。慶應義塾大学文学部卒業。東京農業大学大学院農学研究科造園学専攻修士課程修了。20代でタネまきのホームページを立ち上げたことを機に、園芸の道に入る。植物を種子から育てる研究を行ない、タネまきガーデニングの普及活動を行なっている。現在は神奈川県横浜市の自宅で、毎年違う一年草の草花を使って庭づくりをしている。
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