秋から冬へ、多くの植物が冬支度を始めるこの時期。実りの秋という言葉どおり、9~11月にタネをつける植物が多数あります。発芽して成長し、花が咲き、タネができて次の世代へと命をつなぐ植物のライフスタイルを知って、手を貸すのもガーデニングの醍醐味の一つです。秋冬のガーデニング作業、タネの採取について、園芸家の矢澤秀成さんに教えていただきます。10月24日(火)には、軽井沢で秋の庭作業などをご紹介するオンラインサロンを開催! 今回特別にYouTubeでも同時配信しますので、参加をご希望の方は記事末尾の案内をご確認ください。
目次
見ているだけで楽しくなるタネの世界
植物を増やす方法で代表的なのは、タネを採って増やす、種子繁殖です。花が咲き終わったら、花がらを一部残してタネをつけさせ、採種すると、翌年はもっと多くの植物が育てられます。
タネの形はさまざま。大きさは、指の先にのるほど小さなものが多いです。そのタネから、草花や樹木が生まれるのです。
ここではどんなタネがあるか、いくつか実際に見てみましょう。
コスモス。繁殖力が強く、こぼれダネから芽を出します。そのため、空き地などがコスモス畑になることも。
秋に黒く熟すヤブランのタネ。野鳥に食べられてしまう前に、採取しておきましょう。
シソの実。こぼれダネから発芽し、とてもよく増えます。花穂を収穫し、シソの実を塩漬けにして美味しく食べることもできますね。
サルスベリの実。9月に若い実をたわわにつけます。徐々に熟し、黒くなります。こぼれダネからも発芽します。
花と同様に大きなタイサンボクの実。赤く熟したタネを播くと、発芽します。
11月頃に赤く熟すノイバラの実。野鳥が好きな実の一つです。野鳥はいろんな実をついばんで、タネを運びます。
ナンキンハゼの白い実。割ると中にタネが収まっていて、晩秋に採取できます。
知っておきたい、タネの採り方と保存方法
タネを採るためには、タイミングが大切です。草花はタネざやが枯れてきたら採種時期。樹木の実は、熟すのを待って収穫します。こぼれ落ちたり、風で飛んだりする植物は、花にネットをかけておきます。
一年草や多年草の小さな植物は、庭や鉢植えから茎ごと切り取ります。熟したタネは、紙袋や封筒に入れて、風通しのよい日陰で1週間ほど乾燥させましょう。天気が悪いときは、乾燥剤を入れた瓶や缶に入れて乾かします。あとは、密封できるビニール袋や瓶、缶などに入れて冷蔵庫の野菜室へ。袋には植物の名前、採種した日付を必ず書き込んでおきます。
一例として、クリスマスローズのタネ採りをご紹介します。
クリスマスローズは、実が膨らんできたら、確実にタネを採取できるよう、花がらにネットをかけておくと安心です。お茶パックなどの不織布の袋を利用してもよいでしょう。
しばらくしてネットをはずすと、写真のようにタネ袋の口が開いて黒いタネが見えます。
タネ袋からは手でタネを取り出します。このとき、土の上に落ちてしまわないよう注意。色が黒いので、土の上では見つけにくいのです。
乾燥させたタネは密封保存が鉄則です
タネは水分と適当な温度が揃い、はじめて発芽します。多くの草花のタネは、乾燥した状態では活動を停止。乾燥させて密封し、低温に置くと、タネは発芽力をもったまま保存できるということです。播き残したタネも、同様に保存します。
タネを集めたら、コレクションボックスを作ってみるのもおすすめです。
ただし、タネには寿命があります。アスターやニチニチソウなどのタネは、寿命が1年と短命。コスモス、インパチェンスは1~2年、ジニアやペチュニアは2~3年、ケイトウやアサガオは5~6年と、種類によってまちまち。長もちするタネも、新鮮で発芽率が高いうちに播くことが肝心です。
今回、タネについて教えてくれたのは、NHKあさイチや趣味の園芸などで活躍する園芸家、矢澤秀成(やざわひでなる)さん。矢澤さんの近著『植物を育てる楽しみとコツがわかる 「園芸」の基本帖』(KADOKAWA刊)から、一部、抜粋してお届けしました。ガーデンストーリークラブでは、この書籍のプレゼント企画も開催中!
「園芸家・矢澤秀成さんとバーチャル軽井沢ガーデン散策」オンラインサロン開催!
2023年10月24日(火)15時より、ガーデンストーリークラブ会員さまと一般の方に向けて、「園芸家・矢澤秀成さんとバーチャル軽井沢ガーデン散策」のオンラインサロンを開催します。
バーチャル散策の場は、矢澤さんが手がける軽井沢にある旧スイス公使館の庭園。生中継でお届けします。実際に庭を散策しながら、秋の様子をご案内するほか、秋から冬にかけての庭作業、矢澤さんが育種するパンジー&ビオラのこと、軽井沢の落ち葉を使った腐葉土のことなど、この時期知っていると嬉しいお手入れのコツをご紹介します。
全編閲覧ご希望の方は、クラブ会員サイトよりお申し込みください。
●ガーデンストーリークラブについてのご案内はこちらのページをご覧ください。
YouTubeライブ配信URLはこちら→https://www.youtube.com/watch?v=uzP6e7tEzDw
多くの方のご参加を、お待ちしています。
Credit
監修 / 矢澤秀成
やざわ・ひでなる/園芸研究家、やざわ花育種株式会社・代表取締役社長
種苗会社にて、野菜と花の研究をしたのち独立。育種家として活躍するほか、いくとぴあ食花(新潟)、秩父宮記念植物園(御殿場)、茶臼山自然植物園(長野)など多くの植物園のヘッドガーデナーや監修を行っている。全国の小学生を対象にした授業「育種寺子屋」を行う一方、「人は花を育てる 花は人を育てる」を掲げ、「花のマイスター養成制度」を立ち上げる。NHK総合TV「あさイチ」、NHK-ETV「趣味の園芸」をはじめとした園芸番組の講師としても活躍中。
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