限られたスペースの庭やベランダでの植物選びに迷ったときは、ベテランの知識に頼るのが近道です。園芸歴30年を超えるベテランガーデナー、遠藤昭さんが、いま大人気のオーストラリア原産植物の中から、庭木として日本で育てやすいベスト7をご紹介。話題のオージープランツに挑戦してみたい人や栽培初心者、また新しい景色を作りたい人にもおすすめのセレクトです。
目次
オージープランツ大ブーム到来
このところオージープランツがブームである。カフェやレストラン、ショッピングモールなど昨今の新店舗の植栽は、必ずといっていいくらい、オージープランツが植えられている。
しかし、夏に蒸し暑く、冬は寒い日本では育てにくいものが多くあり、庭木には向いていない品種も出回っているというのが栽培経験者としての実感だ。そこで、さまざまオージープランツの中から、初心者でも安心して育てられるうえ、魅力的なマストバイ7選をご紹介しよう。選んだオージープランツは、神奈川県横浜の狭い我が家の庭で約20年、地植えで育ててきた経験に基づいている。
おすすめ① グレヴィレア
最近、オージープランツで特に人気なのがグレヴィレアだ。この数年で流通する品種も増え、手に入れやすくなった。オーストラリアには、約250の品種が分布しており、高木になる品種、低木や匍匐(ほふく)性などさまざまな形状と花の色が存在する。そのため、苗で購入する場合は、成長が進んだ将来的な樹高もチェックしておくこと。ロブスタ、‘ムーンライト’などは、成長が早く高木になるので、狭い場所には向かない。
<基本データ>
学名:Grevillea
和名:グレヴィレア
英名:Grevillea
科名 : ヤマモガシ科
属名: グレヴィレア属
原産地:オーストラリア
<参考記事>
●春夏秋冬一年中咲く! 驚異の花木「グレヴィレア‘ロビンゴードン’」
●ファッショナブルな花木、グレヴィレア‘ムーンライト’に注目
ズバリ、この品種がおすすめ!
グレヴィレア‘ロビンゴードン’
我が家で25年以上、元気に育っているのが‘ロビンゴードン’である。我が家の看板娘でもある。オーストラリアでも1973年に品種登録されたGrevillea banksii × Grevillea bipinnatifidaの交配種で、最もポピュラーな品種だ。
グレヴィレアのみならず、オージープランツを選ぶときに欠かせないのが「耐寒性」である。最近、人気の‘ピーチ&クリーム’、‘ココナッツアイス’なども耐寒性があって魅力的だが、‘ロビンゴードン’は、やはり25年以上、横浜の庭で地植えで元気に育ってきたという実績がモノをいう。
おすすめ②カリステモン
カリステモンは日本での栽培の歴史は古く、キンポウジュ(金宝樹)という名で明治時代から育てられてきたオージープランツの最古参だが、ほとんどが赤花の品種だった。最近はさまざまな花色が流通している。ホワイトやグリーンの花の咲く品種も出回っており、それらも魅力的だ。オーストラリアでは、花の蜜が小鳥を呼び寄せる庭木として人気だ。
<基本データ>
学名: Callistemon
和名:金宝樹(キンポウジュ)、ブラシノキ、ハナマキ
英名:Bottlebrush
科名 :フトモモ科
属名:マキバブラシノキ属(カリステモン属)
原産地:オーストラリア
<参考記事>
ズバリ、この品種がおすすめ!
カリステモン‘ピンクシャンパン’
おすすめは何といっても、四季咲き品種のカリステモン‘ピンクシャンパン’だ。日本に古くからあるキンポウジュは、1年に1度しか咲かない(まれに秋にも開花することがある)が、この‘ピンクシャンパン’は5月頃から12月上旬まで、淡いピンクの花を咲かせ続け、我が家では25年以上、楽しませてくれている。暑さ、寒さに強い丈夫な品種で、比較的成長が早いが、剪定にも強く、整枝しやすいのもよい。
おすすめ③メラレウカ
最近、庭木に大人気なのが、ティーツリーと呼ばれるメラレウカ。常緑で小さな葉をつける繊細な枝ぶりで、葉の色もさまざまある。主張が強くないので、狭い庭にも取り入れやすい。葉の香りが甘くフルーティな‘レボリューションゴールド’や、葉色が美しいシルバーティーツリー、秋から冬に葉が銅色に変色する‘レッドジェム’など、おすすめしたい品種はたくさんある。育てやすくて、これからの庭木に最も有望なオージープランツだといえる。
<基本データ>
学名:Melaleuca
和名:メラレウカ
英名 : Melaleuca
科名:フトモモ科
原産地:オーストラリア
<参考記事>
ズバリ、この品種がおすすめ!
メラレウカ‘スノーインサマー’
花の量感で選ぶなら、‘スノーインサマー’。名前の通り、夏に雪が降ったように樹冠が白い花で覆われて、それは見事だ。
おすすめ④ウエストリンギア
メラレウカと並んで、最近、庭木として人気なのが、ウエストリンギア。オーストラリアン・ローズマリーとも呼ばれ、ローズマリーに似た低木で、新築住宅の植え込みなどでも見かけるようになった。国内で多く流通しているのは、シルバーリーフで花色は白の‘スモーキー’と、葉が緑または斑入りで花が淡いブルーの‘モーニングライト’の2種類。
<基本データ>
学名:Westringia
和名:ウエストリンギア、オーストラリアン・ローズマリー
英名: Australian rosemary, coastal rosemary
科名 :シソ科
属名: ウエストリンギア属
原産地:オーストラリア
<参考記事>
ズバリ、この品種がおすすめ!
ウエストリンギア‘モーニングライト’
花を年中咲かせてくれるのは‘モーニングライト’。花色も淡いブルーで、おしゃれ感がある。オーストラリアらしい明るい雰囲気なので、この品種をおすすめする。
おすすめ⑤コルディリネ・オーストラリス
日本にも古くからニオイシュロランとして緑葉の品種が流通している。モダンな雰囲気が好まれて洋風庭園には使用されてきたが、最近は銅葉や斑入りの品種が人気。よくニューサイランと混同されているサイトを散見するが、コルディリネは樹木で幹が伸びてくるのに対し、ニューサイランは草なので、株が広がるだけで背は伸びない。
また、コルディリネには観葉植物もあるが、Cordyline fruticosa は寒さや高温時の直射日光に弱く、庭木には向かないので注意。
<基本データ>
学名: Cordyline australis
別名:コルディリネ・オーストラリス、コルジリネ
和名:ニオイシュロラン
科名:キジカクシ科
属名:コルディリネ属
原産地:ニュージーランド
<参考記事>
●スタイリッシュな庭づくりに必須「コルディリネ・オーストラリス」
ズバリ、この品種がおすすめ!
コルディリネ・オーストラリス‘トーベイダズラー’
斑入り品種で、明るくスタイリッシュな雰囲気があり、これからの庭木としておすすめ。日本で一般に流通するようになってから、まだ歴史は浅いが、我が家では7年ほど育てている。寒さにも暑さにも強いうえ、成長が比較的ゆるやかなのが日本の庭に向いている。
おすすめ⑥アカシア
アカシアは世界で約1,200種、オーストラリアだけで約700種あるといわれ、近年、日本にも多様なアカシアが流通している。いわゆる「ミモザ」と呼ばれる、ギンヨウアカシアが一般的だが、ほかにも最近はシルバーリーフの‘ブルーブッシュ’や、葉の細いフロリブンダなども人気だ。総じて成長が早くて大きくなるが、雪の重みや強風に弱いため、比較的、寿命が短い樹木である。花後の剪定で小型に保つのが長寿の秘訣だ。
<基本データ>
学名:Acacia
和名:アカシア
英名:Acacia
科名 :マメ科
属名:アカシア属
原産地:オーストラリア・クィーンズランド州
<参考記事>
●【ミモザ】庭に春を呼ぶ!育てやすい種類と挿し木・タネ播き・育て方
●ミモザのスワッグを作ろう! 簡単にできる、春を告げる黄色のスワッグ
ズバリ、この品種がおすすめ!
パールアカシア
おすすめのポイントは、美しいシルバーリーフの色と形。最近、ユーカリポポラスが人気だが、ユーカリは大きくなりすぎるので、その代用も兼ねて、パールアカシアを庭木におすすめしたい。花はミモザとほぼ一緒。
おすすめ⑦ハーデンベルギア
最後のマストバイは、つる性のハーデンベルギア。つる性植物は、フェンスや壁に這わせたりして立体的に育てられるので、庭の表情を豊かにする。多くのつる性植物は落葉性で冬は寂しい姿になりがちだが、このハーデンベルギアは常緑性のため、冬も青々としているのが魅力。2月中旬から咲き始め、紫(または白)の花に覆われる姿は見事。
<基本データ>
学名:Hardenbergia violacea
和名:ハーデンベルギア、コマチフジ
英名:purple coral pea
科名 :マメ科
属名: ハーデンベルギア属
原産地:オーストラリア(東海岸:クィーンズランド~タスマニア)
<参考記事>
ズバリ、この品種がおすすめ!
ハーデンベルギア・パープル
白花もあるが、やはり春の華やかさを演出するにはパープルの花が咲く品種がイチ押し。
オージープランツの庭木おすすめ7選の育て方ポイント
今回セレクトした品種は、庭木として比較的育てやすく、基本的には、日が当たり、風通しがよく、水はけのよいところが適している。冬に北風が直接当たらない場所であれば育つが、地植えする際、植え穴を掘ったら、底に軽石を敷き、水はけをよくしておくのがポイント。植え付け時の土にも鹿沼・軽石・腐葉土などを混ぜて過湿にならない工夫をするとよい。地植えは、施肥は不要。特にヤマモガシ科のグレヴィレアは、リン酸に過敏で、与えすぎるとかえって枯れる原因になる。
番外編のおすすめオージープランツ庭木
今回は、日本の平均的な庭で育てやすい小型のオージープランツを7種セレクトしました。本来、ユーカリも入れたかったのですが、日本で入手しやすいユーカリは、レモンユーカリにしても、ポポラスにしても、マルバユーカリにしても、いずれも巨木化するので、今回は除外しました。ユーカリに興味がある方は、『日本に向く「ユーカリ」の育て方』も参考にしてください。
Credit
写真&文 / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -
えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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