山梨県八ヶ岳の庭で育つ秋の宿根草を摘み、ガーデンブーケを束ねました。作ったのは、いつも素敵な寄せ植えを提案してくれる寄せ植え名人の難波良憲さん。庭に宿根草があるだけで、日常に花のある素敵な時間が生まれます。難波さんのブーケの作りと、秋の庭を美しく彩るおすすめ宿根草7選もあわせてご紹介します。
目次
八ヶ岳の庭から“摘んで束ねる”秋の宿根草ブーケ

ガーデンストーリーの人気連載「1鉢で華やか!寄せ植えブーケ」で、いつも素敵な寄せ植えの提案をしてくれる難波良憲さん。じつは、ブーケのような華やかな難波さんの寄せ植えは、実際にアレンジメントブーケからインスピレーションを多く得ています。
「寄せ植え作りを始めたばかりの頃、組み合わせをどうしていいか分からず、自信の持てるものがなかなか作れませんでした。どうやったら素敵にできるのかなと悩んだ時に、参考にしたのがフラワーアーティストさんのブーケなんです」と難波さん。
ブーケから学んだ「主役+脇役+リーフ」の基本構成

寄せ植えでは、主役級の花を複数合わせると、それぞれの個性が競い合い、全体の見どころが分散しやすくなります。
「それって寄せ植え‘あるある’で、私も主役級を集めては、魅力を埋もれさせてしまうということがよくありました。素敵なブーケは主役と脇役がはっきりしていて、リーフがまとめ役。寄せ植えも同じ。主役+脇役+リーフの構成を意識するようになってから、ようやく自分でも納得のいく仕上がりになってきました」(難波さん)
基本の「ラウンドブーケ」を学び、庭の花でブーケづくり
難波さんは実際に東京のフラワーアーティストの教室へ通い、アレンジメントも習得。今では四季の素材が揃う八ヶ岳の会社の庭から花を摘んで、同僚や家族にブーケを贈ることもあります。

「庭の花はフラワーショップの花とは少し違って、茎が曲がっていたり、葉が虫にかじられていたりすることもありますが、旬の花を摘んで組み合わせるのはとても楽しいです。アレンジにすることで新たな発見があり、それが寄せ植えに生きることもたくさんあります」と難波さん。
庭のある暮らしを寄せ植えのみならず、アレンジにも展開して楽しんでいます。
材料と色の考え方|秋色×質感のミックス

秋の宿根草が鮮やかな色彩を放つ八ヶ岳山麓のエム・アンド・ビー・フローラ社の庭から、花材を集めながらアレンジの基本「ラウンドブーケ」を作ってもらいました。

<花材>
- 主役/クジャクアスター
- 脇役/ワレモコウ、ペルシカリア、ムラサキシキブ
- まとめ役リーフ/スモークツリーの葉

<手順>
- 下葉を落として、茎を斜めにカットして吸水面を広げます。
- 主役のクジャクアスターの小花を束ねて色の面を作ります。(右利きの場合)左手で最初の1本を持ち、右手で新たな花を足していきます。茎が重なる支点は上下にずらさないように持ちます。
- ワレモコウとペルシカリアを重ねていきます。ブーケを時計回りに回しながら、やや斜めに傾けて新たな花を一方向に重ねていくと、らせん状に束ねられます。
- スモークツリーの葉をブーケの下側に同様に入れていきます。
- 麻ひもで、束ねていた際の支点を縛って整えます。1回目できつめに縛って、やや形を整えてから同じ位置でもう一度縛ると安定します。
- 茎の下部を揃えて切り、水揚げさせて完成。

寄せ植えにも効く! ブーケ理論の3ルール

1 主役の面×線でリズム×葉色で締める
フォルムの違いを意識してセレクトすると、立体感のある形になり、互いの個性も引き立ちます。
2 同系色グラデで面づくり+効かせ色少量
主役の面の色相は崩さないように。斑入りや銅葉は強い補色がぶつかる場合も「色の緩衝材」として活躍してくれます。
3 花径バランス「大1:中2:小3」で散らしすぎない
大は存在感を示す点数でOK。中で主景を支え、小で余白の演出を。
秋の庭を格上げする宿根草7選(ブーケ外も含む)
※各項目は 開花期/草丈/日照・耐暑性/切り花適性/相性 の順
カリオプテリス ‘ゴールドクレスト’

5–10月/40–50cm/日向・高温に強い/切り花◎(青花×斑入り葉)/相性:サルビア、コスモス
ユーパトリウム ‘チョコレート’

8–10月/80–100cm/日向~やや半日陰・暑さに強い/切り花◎(白花×銅葉で締まる)/相性:アスター、銅葉ダリア

クジャクアスター

9–11月/80–150cm/日向・強健/切り花◎(小花で“面”づくり)/相性:ワレモコウ、ペルシカリア
ワレモコウ

7–10月/80–120cm/日向・やや湿りが好き/切り花◎(線の動きが出る)/相性:グラス類、アスター
ペルシカリア

6–10月/70–120cm/日向~半日陰・丈夫/切り花◎(赤穂が効く)/相性:ホスタ、ルドベキア

サルビア ‘ローマンレッド’

6–11月/40–60cm/日向・暑さに強い/切り花○(差し色の赤)/相性:ゴールドリーフ、青花系
サルビア ‘ミスティック・スパイヤーズ・ブルー’(写真左の紫の花)

5–11月/60–90cm/日向・とても強健/切り花◎(長花序で主役級)/相性:ユーパトリウム‘チョコレート’(写真右の白花)
【コラム】“切って楽しむ=お手入れ”秋の宿根草メンテの新習慣
庭の宿根草をブーケにして室内で楽しむことは、そのまま株の更新と景観のキープにつながる上手なお手入れです。花を「摘む=間引く」ことで光と風が通り、株元が蒸れにくくなり、次のつぼみや新芽が動きやすくなります。結果、再開花が促進され、秋らしい端正な姿を長く維持できます。
- 切るタイミング:朝の涼しい時間。8~9分咲きで切ると、室内でも屋外でも持ちがいいです。
- 切る位置:花穂のすぐ下ではなく、わき芽のある節の少し上でカット。分岐が増え、こんもりした株姿に戻ります。
- 量の目安:株全体の3割程度までを目安に。咲きが鈍ってきた茎から優先しましょう。
- 病害虫予防:混み合った茎を切ると風通しUP。うどんこ病・灰色かびのリスクも下がります。
- 花がらは早めに:タネをつける前に切ると、株のエネルギーが次の花づくりに回り、長く花が楽しめます。
- ブーケ前の下処理:下葉を外し、深水で30–60分の予備水揚げし、茎先は斜め切りで吸水面を広げると長持ちします。
- 室内で長持ち:毎日水替えを。直射日光とエアコンの風を避けましょう。
- 剪定後のケア:庭の株は切った翌日に薄めの液肥を少量、もしくは水をしっかり。過肥は徒長の原因になります。

“飾るために切る”という小さな行為が、庭を整え、若返らせ、長く美しく保つことにつながります。週末に数本摘んで束ねるだけで、庭にも暮らしにも、きれいの循環が生まれます。
季節を束ねる時間を、どうぞ楽しんで。
Credit
アドバイス / 難波良憲(なんば よしのり)

八ヶ岳にある種苗メーカー「エム・アンド・ビー・フローラ」に勤務。膨大な植物の知識を生かし、花の個性を生かしたブーケのように華やかな寄せ植えが好評。ブーケ作りも得意。同社のショップ(現在はクローズ)での店長を担当しつつ、寄せ植え教室を開催。現在は、同社インスタグラムを通じて、季節毎の華やかな寄せ植えの紹介や、水やりなどガーデニングの基本知識や様々なお役立ち情報の発信を行っている。
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まとめ・写真 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
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