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手軽にできる苔(コケ)栽培! 癒やしの“苔植物”の基礎知識と枯らさない管理術
pullia/Shutterstock.com
特有の趣があり、世界中で親しまれている植物「苔(コケ)」。日本庭園の苔むした風景には、静かで奥深い風情があり、盆栽の株元にあしらったり、芽出し球根の寄せ植えの表土に貼って景色をつくったりと、さまざまな形で楽しまれています。また、テラリウムや苔玉など、緑のインテリアとしても人気の苔は、ポイントを押さえれば初心者でも気軽に取り入れられる存在です。「肥料のやりすぎはNG?」「茶色くなった苔は枯れている?」――知っておけば怖くない、苔を長く美しく保つための“枯らさない管理術”をご紹介します。
目次
苔の基本情報

植物名:コケ植物
学名:Bryophyla(広義)
英名:bryophyte
和名:苔
その他の名前:コケラ・コケゴ
原産地:世界各国
苔植物という生き物は、陸上にすむ「非維管束植物」の総称で、生物の分類上「苔植物門」に属するものを指します。胞子で繁殖するという特徴をもち、国内では約1,700種、世界では約18,000種もの苔が、さまざまな環境の地域に自生しています。苔類は匍匐(ほふく)性を持っており、地面を這うように広がって生育します。「苔」という名前は「木毛」に由来するという説があり、木の株元や幹などに生えることから名付けられたといわれています。

一般的な植物には、水分や栄養を吸収するための「根」があり、吸収した水分や栄養を各部に運ぶ「維管束」という管がありますが、苔にはどちらもありません。根のように見える「仮根(かこん)」は、体を固定するためだけのもので、水分や養分は葉や茎から直接吸収します。
根や維管束などの器官は、植物が約5億年前に水中から陸上に進出し、シダ植物、裸子植物、被子植物へと進化する過程で獲得したものです。苔類は最も早く陸上に進出した植物であるため、原始的な陸上植物と呼ばれています。
苔の名前の由来や花言葉

苔という名前は、木の幹などを覆うように付く様子から「木毛」、また、小さい毛のように見えるため「小毛」と呼ばれたことが由来とする説があります。
苔は花が咲きませんが、花言葉があります。苔の花言葉は、「母性愛」「孤独」「物思い」「退屈」などです。「母性愛」は、苔が木や石などをくるむように覆う様が、子を優しく包み込む母の愛情に通じるため、付けられた花言葉とされています。「孤独」「物思い」「退屈」は、苔が人里離れた場所に多く生息することに由来するとされています。
苔の主な種類

苔という植物は、分類上「苔類(たいるい)」「蘚類(せんるい)」「ツノゴケ類」という3つのグループに分けられます。
また、苔の形を大きく分類すると、根っこや葉がきちんと分かれていない葉状体という形状と、一般的な植物の茎や葉にあたる部分が分かれている茎葉体があります。葉状体の苔は苔類またはツノゴケ類で、茎葉体の苔は蘚類のほとんどが属します。
苔類は丸みを帯びたものが多く、身近によく見かけるゼニゴケやジャゴケが属しています。日本には約620種が自生しています。
蘚類は茎葉体で、よく見ると葉の中心に中肋という葉脈があります。種類がとても多く、群生して繁殖します。
ツノゴケ類は葉状の苔類と似た、尖ったツノのような胞子体を持つことが特徴です。藍藻というバクテリアが共生しており、国内では17種類しか見つかっていません。
苔栽培におすすめの種類は?

屋外での栽培におすすめの種類は、一般にスギゴケと呼ばれるものやエゾスナゴケと呼ばれるものです。これらは半日陰でも育つため、日のあまり当たらない場所での野外栽培に適しています。シノブゴケも半日陰を好みます。シッポゴケは風通しのいい場所に定着成長しやすいため、初心者向けの種類です。ハイゴケは横に這うように育つ種類で、これも育ちやすい種類ですので初心者の方におすすめです。

直射日光と乾燥に強く、日当たりのよい場所を好むスナゴケは、乾燥するとしぼみますが、少しの水分ですぐ開きます。星形で見た目が美しいので、苔庭やテラリウムなどがおすすめです。ただし、保水力が弱いため、盆栽や苔玉には適しません。
コツボゴケは、透明感のある緑色の葉が特徴で、水を与えると輝くような光沢を放ちます。比較的丈夫なので、初心者にも育てやすく、苔玉や苔庭、テラリウムにもおすすめです。

タマゴケは、胞子体が球状であるためこの名が付けられました。美しい緑色と柔らかそうな葉が特徴で、春頃にまんまるの胞子体をつけます。耐寒性は強いものの耐暑性に弱いため、夏は室内など涼しい場所を選んで置くようにしましょう。湿気は好むものの、水に浸るのを嫌うので、水はけのよい斜めの場所に植えるか、テラリウムなどで楽しむとよいでしょう。ホソバオキナゴケ(別名ヤマゴケ)は、丸みを帯びた半球の形状が特徴で、苔庭や盆栽、テラリウムでよく使われています。乾燥に強く、初心者にも育てやすい苔です。
苔の栽培環境

苔は種類ごとに必要な明るさや湿度が異なります。苔を購入する場合は、育てたい場所の日当たりをよく考慮して、それに合ったものを選びましょう。
また、苔は湿度が高いほうが生育がよくなるものが多いです。こうした苔を育てる場合は、乾燥に注意して、直接風が当たる場所は極力避けるようにしましょう。
苔を植える場所は、水はけのよい土壌にします。湿度を好む苔でも水がたまるような環境は苦手なので、庭植えの際には、植え付けたい場所の土に川砂を混ぜ込み、鉢植えにする際は、小粒の赤玉土などに川砂や竹炭を混ぜ込んで、水はけのよい土作りに徹しましょう。ガラス容器などに入れて育てるときは、腐葉土などの有機物を入れるとカビが生えやすくなるので注意しましょう。
苔の育て方

用土
苔は根から養分を吸収する植物ではないため、必ずしも用土を必要としませんが、一般的には赤玉土、黒土、砂など水はけのよい土や、市販の苔テラリウム用の配合用土などを利用します。なお、苔の種類によって好む用土が異なるため、種類に合った土を用意し、苔ごとに適した育て方を心がけましょう。
水やり
苔の水やり頻度は、品種や育てている環境などによって異なります。庭で育てている場合は、基本的には雨が降れば十分です。苔は乾燥すると縮んで茶色っぽくなりますが、枯れているわけではありません。とくに、夏は日が当たる時間帯に水やりをすると、蒸れて弱ってしまいます。水のやりすぎや、水やりのタイミングには注意しましょう。
蓋つき容器で苔テラリウムにしている場合は、湿度が保たれるので、2~3週間に1回を目安に水やりをするとよいでしょう。苔玉や盆栽の場合は、2~3日に1回は水やりを行いましょう。空中湿度が高い状態を好む苔もありますが、蒸れや過湿は傷む原因になるので注意が必要です。
肥料
苔は光と空気、適度な水分があれば育つ植物です。そのため、基本的に追加の肥料はほとんど必要ありません。逆に肥料を与えすぎると枯れてしまいます。盆栽や寄せ植えなど、ほかの植物とともに育てている場合は、ほかの植物にだけ液体肥料を与えて、苔には肥料が極力いかないようにします。

増やし方

苔の増やし方には「張り苔法」「移植法」「まき苔法」と、大きく分けて3つあります。
「張り苔法」は、3つの増やし方で最も簡単です。これはマット状の苔をそのまま庭や培養土に張るように植え付けるという方法で、短時間で広範囲に植え付けることが可能です。苔のシートを地面にしっかりと密着させることが大切です。
「移植法」は、1本ずつ土に挿すように植え付ける方法です。これは手間がかかりますが成功率は高く、ヒノキゴケやスギゴケなど広範囲に大型の苔を植え付ける際に適しています。また、苔テラリウムの場合も、この方法で1本ずつ植え付けていきます。
「まき苔法」は、ほぐした苔を種子のようにまいて植える方法です。この方法のメリットは、少ない手間かつ少量の苔でたくさん増殖させることが可能である点で、最もポピュラーな増やし方です。苔は株ごとにほぐしたもののほか、細かく刻んだものをまいても生えてきます。
苔が持つ驚くべき効果とは?

苔は空気中から水分や栄養分を吸収することができ、さらに苔の細胞壁が金属を蓄積することから、抗菌・消臭効果があるとされています。
また数々の研究や実験から、苔を見ていることでストレス解消や癒やしの効果が得られるといわれています。苔のもつ独自の芳香に土の香りが混ざると、よりその効果が増し、さながら静かな森の中にいるかのようなリラックスした心理状態になることが期待できます。
さらに、苔は水分を吸収するだけでなく、蒸散することもできます。そのため大気の湿度や温度を調整することが可能であり、吸収した二酸化炭素を蓄積したまま泥炭層を構築するので、環境保護にもつながるといわれています。園芸用土として使われるピートモスは、苔が堆積したピート(泥炭)が原料ですが、近年は長年にわたって二酸化炭素を蓄積している泥炭をみだりに掘り起こして活用することに対する批判も巻き起こっています。
苔の活用方法とは?

苔といえば、まず挙げられるのは苔玉です。土を丸く固めて周りに苔を張って仕立てた苔玉を鑑賞して楽しみます。この際、置き場所は風通しのよい棚の上などにして、しっかりと外気を吸わせましょう。
また透明なガラス容器の中に入れて独特の世界を表現できるテラリウムも、インテリアとして生かすことができて人気です。苔を主体とした独特の雰囲気を醸し出すことができ、気軽に世話を楽しめるので、おすすめの活用法です。
さらに、盆栽の株元に敷くと土がむき出しにならず、苔のグリーンで一気に雰囲気を変えることもできます。美観だけではなく、保湿や土の流出を防ぐといった効果もあり、こちらも人気の活用方法です。
苔庭のつくり方

苔庭は、苔を中心にして設えられた庭のことです。小さな坪庭や、石を組み合わせて作る日本庭園など、さまざまなバリエーションがあります。苔庭を作る際は、日当たりなど庭の環境に合う苔を選びましょう。日当たりのよい庭であれば、スナゴケやギンゴケなど、半日陰の庭にはオオスギゴケ、ヒノキゴケ、ムチゴケなどがおすすめです。
育てる場所は、水はけが良く、風通しの良い場所を選びましょう。下準備として、除草後に砂利や水はけの良い土を敷き、その上に苔を配置し、上から薄く土をかけておきます。苔が定着するまでは、毎日水やりを行い、環境になじんできたら徐々に水やりの頻度を減らしていきましょう。
苔が枯れる原因は?
苔は丈夫で初心者でも育てやすい植物ですが、育てている場所や管理方法によって、茶色く変色するなど、枯れてしまうこともあります。ここでは苔が枯れる主な原因をご紹介します。
日照不足

苔は、日当たりの悪い場所を好むというイメージを持たれているかもしれませんが、植物である以上、光合成ができなければ枯れてしまいます。種類によって好む日当たりは異なりますが、室内で育てている場合は、日光が当たる場所に置くか、照明を利用して光合成を行うための適度な光を確保しましょう。
蒸れ
苔は自然環境への適応力は高いものの、急激な環境変化には適応できない場合があります。また、蒸れにも弱い植物です。とくに、真夏の日差しの下での水やりなどは、人為的に作られる急激な環境変化であり、蒸れの原因にもなります。苔を弱らせてしまうため、注意が必要です。
水分過多

苔は多湿を好むというイメージがありますが、実は乾燥に強い植物です。乾燥すると、茶色く縮れた状態になるため、枯れているように見えるかもしれません。しかし、この状態は枯れているわけではなく、乾燥から身を守っているだけなので、水をやると緑色に戻ります。むしろ、水のやりすぎは傷んで枯れてしまう可能性があるので注意しましょう。
気温低下
苔は寒さに強く、日本の苔の多くは氷点下でも生存可能です。ただし、気温が低下すると生育が鈍り、5℃以下になるとほとんどの苔は成長を停止します。茶色くなって、枯れたように見えますが、春になると新芽を出して綺麗な緑色に戻ります。一年中、緑色を楽しみたい場合は、室内に移して温度管理をすると良いでしょう。
乾燥
前述したように、苔は乾燥に強いため、こまめに水やりを行う必要はありません。よく晴れた日や風の強い日は苔が縮れているように見えることがありますが、水やりを行うとすぐに元に戻ります。水やりを行う際は、蒸れないようにするために日没まで待ってから行うようにしましょう。
苔を採取する際の注意
苔は街中や公園など至る所に生えているため、気軽に採取できるように思われがちですが、自宅に生えているもの以外は、他の植物と同様に無断で採取することはできません。採取する際は、自治体や土地の所有者などに許可を得てから行いましょう。散歩の途中などで観察して見守るのも楽しい接し方です。
「難しそう」を「楽しい」へ。気負わずに始める苔ライフ

「肥料のやりすぎは厳禁」「茶色くなっても水で戻る」など、苔の特性を知れば、栽培は決して難しいものではありません。むしろ、過保護にしすぎず、自然に近い環境を維持することが成功の秘訣です。
庭の片隅からデスクの上のテラリウム、散歩の途中で自生しているコケを見つけて観察するなど、場所を選ばずに楽しめるのも苔の大きな魅力です。まずは気に入った一株から、気負わずに苔のある暮らしを始めてみましょう。その小さな緑が、日々の生活に潤いをもたらしてくれるはずです。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。「ガーデンストーリー」書籍第1弾12刷り重版好評『植物と暮らす12カ月の楽しみ方』、書籍第2弾4刷り重版『おしゃれな庭の舞台裏 365日 花あふれる庭のガーデニング』(2冊ともに発行/KADOKAWA)発売中!
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