日陰の庭の救世主! 北側の庭をパッと明るく 放置OKな「ヤツデ」の育て方と人気品種
daibu255/Shutterstock.com
日当たりが悪く、植物が育ちにくい北側の庭。そんな場所の救世主となるのが、日本原産の常緑低木「ヤツデ」です。耐陰性が強く、一度根付けば水やりなどの手間もほぼ不要という驚くべき生命力の持ち主。近年では‘スパイダーウェブ’など、暗い場所をパッと明るく彩る、おしゃれな品種も注目されています。本記事では、じつは“千客万来”の縁起木でもあるヤツデの魅力と、放置でも元気に育つコツ、おすすめの人気品種をご紹介します。
目次
ヤツデの基本情報

植物名:ヤツデ
学名:Fatsia japonica
英名:Japanese aralia、fatsi、paperplant、false castor oil plantなど
和名:ヤツデ(八手)
その他の名前:テングノハウチワ(天狗の葉団扇)、テングノウチワ、ヤツデノキ、オニノユビなど
科名:ウコギ科
属名:ヤツデ属
原産地:日本(福島県以南の本州、四国、九州、沖縄)
形態:常緑性低木
ヤツデの学名は、Fatsia japonica(ファツィア・ジャポニカ)。ウコギ科ヤツデ属の低木で樹高は2〜3mほどですが、毎年の剪定によってコンパクトな樹形を保つことも可能です。常緑性で、冬でもみずみずしい葉姿を保ちます。日本固有種で、関東以西から沖縄の山野に自生し、放任してもよく育つ庭木の一つです。耐陰性が強く湿り気のある環境を好み、日陰でも生育します。また、耐塩性もあり、環境に適応してよく育つ丈夫な樹木です。
風に揺れるヤツデの大きな葉。MasaPhoto/Shutterstock.com
ヤツデの花や葉の特徴

園芸分類:庭木
開花時期:10〜12月
樹高:3~5m
耐寒性:やや弱い
耐暑性:普通
花色:白
ヤツデの葉は光沢のある濃い緑色で、深い切れ込みが入る手のひらのようなフォルムが特徴。葉の長さは20~40cm、さらに15~45cmと長い葉柄を持ち、存在感があります。この葉柄により、葉が重ならないように生育することが日陰に強い理由なのだとか。斑入り品種などバリエーションもあり、シェードガーデンの庭木として活躍します。晩秋から冬に5㎜ほどの白い花が咲き、花茎の頂部に集まってドーム状になります。花が少ない時期に開花するため庭の彩りとしてよく目立ち、またハエやアブなどの昆虫の貴重な蜜源となります。開花後、たくさんつける小さな実は、緑~赤紫色~黒紫色へと色が変化し、翌年の5月頃に熟します。
ヤツデの黒い果実。ArliftAtoz2205/Shutterstock.com
ヤツデの名前の由来と花言葉

大きな葉には深い切れ込みが入って手のように見え、「八つ」に分かれて見えることが名前の由来です。漢字で「八手」と書きますが、7つや9つに裂けることがほとんどで、まれに5、11などもありますが、通常はいずれも奇数に分かれ、8つに分かれることはありません。ヤツデという名前になったのは、8は数が多いことを象徴し、縁起がよい数字だったためといわれています。
また、「天狗の葉団扇(テングノハウチワ)」という別名もあり、これは葉が天狗の持っている団扇に似ていることに因みます。天狗が使っている団扇と同様に、魔除けの効果があるといわれています。
ヤツデの花言葉・誕生花

ヤツデの花言葉は、「分別」「健康」「親しみ」など。ヤツデが半日陰のような厳しい環境でも強健に育つことから「健康」という花言葉を持っています。
諸説ありますが、12月13日、12月27日の誕生花です。
ヤツデは縁起が悪い⁉︎ 真相は?

ヤツデは、縁起が悪い植物といわれることがあります。葉が大きいため庭に植えると鬱蒼として日陰を作ることや、わずかに毒性が含まれていることがその理由です。しかし、現在では逆に縁起がいいといわれています。その理由は、天狗の団扇のような見た目で、魔除けの効果が期待できること、葉が手の形に似ているため人を招き寄せる験担ぎにされていることからです。
ヤツデの活用シーン

ヤツデは半日陰の場所でもよく育つことから、日差しが少ない北側の庭や落葉樹の株元などで重宝します。また、手の形に似た葉姿から人を招き寄せる“千客万来”の願いを込めて、玄関や店先などに飾る習わしもあります。観葉植物としてインテリアをみずみずしく彩るのも素敵です。

ヤツデの毒性

ヤツデは葉や茎、根などに毒性のあるサポニンを含みます。サポニンには魚毒作用があり、魚の捕獲に利用されていたこともあります。手で触れたり庭で育てたりする場合には問題ありませんが、子どもやペットが誤食しないよう注意しましょう。
ヤツデの代表的な品種

ヤツデはさまざまな種類が揃い、表情豊かなカラーリーフとして活躍します。この章ではヤツデの品種をいくつかピックアップしてご紹介します。

キンモンヤツデ
葉の縁に黄色い斑が品種です。ランダムに斑が入るので葉によって表情が異なり、グリーン一色よりも暗い場所を明るく見せる効果があります。
キアミガタヤツデ
葉に黄色の斑が網目状に入る品種。全体に明るい葉色が魅力で、カラーリーフとして重宝します。
フクリンヤツデ
葉の縁に沿うようにクリーム色の斑が入る品種です。冬もみずみずしい葉色を保ちます。
ヤグルマヤツデ
葉色はグリーンで、葉の切れ込みが深く入るのが特徴です。
チヂミバヤツデ
葉色はグリーンで、葉の縁にウェーブが入るのが特徴です。
スパイダーウェブ

ヤツデの園芸品種で、細やかな白い斑がランダムに入ります。‘紬絞り(つむぎしぼり)’という品種からの選抜種とされています。
叢雲錦(むらくもにしき)
葉の外側が緑色で内側が黄緑色の斑(黄三光中斑)が入る人気品種。流通が少ない貴重な種です。
ヤツデの栽培12カ月カレンダー
開花時期:10〜12月
植え付け・植え替え:5〜6月
肥料:3月頃
剪定:3~4月
種まき:5月頃
ヤツデの栽培環境

日当たり・置き場所
【日当たり/屋外】半日陰を好み、日当たりの悪い庭で活躍する植物です。日なたでも育ちますが、真夏などに強い直射日光を浴びると葉焼けして葉が傷んでしまい、観賞価値が著しく低くなってしまいます。ただし、あまりに日当たりが悪いと枝葉がヒョロヒョロと伸びて間伸びした樹形になるので、植える場所の選定には留意しましょう。
【日当たり/屋内】屋外での栽培が基本です。
【置き場所】庭に植える場合は、朝のみ光が差す東側や、チラチラと木漏れ日が差す落葉樹の株元などがおすすめです。鉢植えの場合は、光が強くなる真夏は明るい半日陰の場所に置き、冬は日当たりがよく寒風が強く吹きつけない場所に置くなど、季節によって適した場所に移動して管理するとよいでしょう。土壌はやや湿り気があって、腐食質に富んだふかふかとした状態が好適。
耐寒性・耐暑性
ヤツデは暑さに強いのですが、西日が照りつける場所や乾燥しやすい場所は苦手です。寒さにはやや弱く、マイナス5℃程度までは問題なく生育しますが、マイナス5℃を下回ると葉が傷むことがあります。北海道〜東北の寒冷地では地植えを避けて、鉢栽培にするとよいでしょう。
ヤツデの育て方のポイント
用土

【地植え】
まず一年を通して半日陰で、風通しのよい場所を選びましょう。植え付けの2〜3週間前に、直径・深さともに50cm程度の穴を掘ります。掘り上げた土に腐葉土や堆肥、緩効性肥料などをよく混ぜ込んで、再び植え穴に戻しておきましょう。土に肥料などを混ぜ込んだ後にしばらく時間をおくことで、分解が進んで土が熟成し、植え付け後の根張りがよくなります。
【鉢植え】
市販の樹木用の培養土を利用すると手軽です。自身でブレンドする場合は、赤玉土小粒6、腐葉土4の割合にするとよいでしょう。
水やり

水やりの際は、株が蒸れるのを防ぐために枝葉全体にかけるのではなく、株元の土を狙って与えてください。
真夏は、気温が高い昼間に行うと、すぐに水の温度が上がってぬるま湯のようになり、株が弱ってしまうので、朝か夕方の涼しい時間帯に行うことが大切です。
また、真冬は、気温が低くなる夕方に与えると凍結の原因になってしまうので、十分に気温が上がった日中に与えるようにしましょう。
【地植え】
根付いた後は、下から水が上がってくるのでほとんど不要です。ただし、雨が降らない日が続いて乾燥しているようなら水やりをして補います。
【鉢植え】
日頃の水やりを忘れずに管理します。ヤツデは乾燥に弱いので、水切れに注意してください。ただし、いつもジメジメした状態にしておくと、根腐れの原因になってしまいます。土の表面が乾いたら、鉢底から水が流れ出すまで、たっぷりと与えましょう。茎葉がしおれそうにだらんと下がっていたら、水を欲しがっているサイン。植物が発するメッセージを逃さずに、きちんとキャッチしてあげることが、枯らさないポイントです。また、冬もカラカラに乾燥させることのないように、適宜水やりを続けてください。
肥料

【地植え・鉢植えともに】
生育期に入る少し前の3月頃、緩効性化成肥料を株の周囲にまき、周囲の土を軽く耕して土になじませましょう。あまり肥料を多く与えると枝葉が茂りすぎて樹形が乱れやすくなるので、与えすぎには注意し、控えめに与えてください。
注意する病害虫

【病気】
ヤツデに発生しやすい病気は、炭疽病やすす病などです。
炭疽病は、春や秋の長雨の頃に発生しやすくなります。カビを原因とする伝染性の病気で、葉に褐色で円形の斑点ができるのが特徴です。その後、葉に穴があき始め、やがて枯れ込んでいくので早期に対処することが大切です。斑点の部分に胞子ができ、雨の跳ね返りなどで周囲に蔓延していきます。密植すると発生しやすくなるので、茂りすぎたら葉を間引いて風通しよく管理してください。水やり時に株全体に水をかけると、泥の跳ね返りをきっかけに発症しやすくなるので、株元の表土を狙って与えるようにしましょう。
すす病は、一年を通して葉や枝などに発生し、表面につやがなくなります。病状が進むと黒いすすが全体を覆って見た目が悪いだけでなく、光合成がうまくできなくなり、樹勢が衰えてしまいます。カイガラムシ、アブラムシ、コナジラミの排泄物が原因で発生するので、これらの害虫を寄せ付けないようにしましょう。込んでいる枝葉があれば、剪定して日当たり、風通しをよくして管理します。
【害虫】
ヤツデに発生しやすい害虫は、カイガラムシなどです。
カイガラムシは、ほとんどの庭木に発生しやすい害虫で、体長は2〜10mmほど。枝や幹などについて吸汁し、だんだんと木を弱らせていきます。また、カイガラムシの排泄物にすす病が発生して二次被害が起きることもあるので注意。硬い殻に覆われて、薬剤の効果があまり期待できないので、ハブラシなどでこすり落として駆除するとよいでしょう。
ヤツデの詳しい育て方
苗の選び方
苗を購入する際は、茎が太く引き締まってぐらつきがないもの、葉の色艶がよく虫食いや病気の痕がないものを選びましょう。
植え付け・植え替え

ヤツデの植え付け・植え替えの適期は、5〜6月です。ただし、植え付け適期以外にも苗木は出回っているので、花苗店などで入手したら真夏と真冬を除いて早めに植え付けるとよいでしょう。
【地植え】
土づくりをしておいた場所に、苗の根鉢よりも一回り大きな穴を掘り、根鉢を軽くくずして植え付けます。最後にたっぷりと水を与えましょう。
地植えにしている場合、環境に合って順調に生育していれば植え替える必要はありません。
【鉢植え】
鉢で栽培する場合は、入手した苗よりも1〜2回り大きな鉢を準備します。用意した鉢の底穴に鉢底ネットを敷き、軽石を1〜2段分入れてから草花用の培養土を半分くらいまで入れましょう。苗木を鉢の中に仮置きし、高さを決めたら、少しずつ土を入れて植え付けます。水やりの際にすぐあふれ出すことのないように、土の量は鉢縁から2〜3㎝下を目安にし、ウォータースペースを取っておいてください。土が鉢内までしっかり行き渡るように、割りばしなどでつつきながら培養土を足していきます。最後に、鉢底から水が流れ出すまで、十分に水を与えましょう。
鉢植えの場合、成長とともに根詰まりして株の勢いが衰えてくるので、2〜3年に1回は植え替えることが大切です。植え替え前に水やりを控えて土が乾いた状態で行うと、作業がしやすくなります。鉢から株を取り出してみて、根が詰まっていたら、根鉢をくずして古い根などを切り取りましょう。根鉢を1/2〜1/3くらいまで小さくして、元の鉢に新しい培養土を使って植え直します。もっと大きく育てたい場合は、元の鉢よりも大きな鉢を準備し、軽く根鉢をくずす程度にして植え替えてください。
剪定

ヤツデの剪定適期は、3〜4月です。込み合っている場合は古い枝を元から切り取って若い枝を残しましょう。若い枝でも長く伸びすぎている場合は、強めに切り戻してコンパクトな樹形を保つとよいでしょう。萌芽力が強いので、また切り口付近から新芽が出て生育します。
また、ヤツデは葉のサイズが大きいので、込みあいすぎているようであれば古い葉を切り取って風通しをよくします。ただし、あまり葉を切りすぎると生育が悪くなることがあるので、樹形のバランスを整える程度にとどめてください。
増やし方
ヤツデは、主に挿し木、種まき、株分けで増やすことができます。
【挿し木】
挿し木とは、枝を切り取って土に挿しておくと発根して生育を始める性質を生かして増やす方法です。植物のなかには挿し木ができないものもありますが、ヤツデは挿し木で増やすことができます。
ヤツデの挿し木の適期は、6〜7月か9月頃です。その年に伸びた新しい枝を10〜15cmほどの長さで切り取ります。採取した枝(挿し穂)は、水を張った容器に1時間ほどつけて水あげしておきましょう。その後、吸い上げと蒸散のバランスを取るために下葉を切り取ります。3号くらいの鉢を用意してゴロ土を入れ、新しい培養土を入れて十分に湿らせておきます。培養土に穴をあけ、穴に挿し穂を挿して土を押さえてください。発根するまでは明るい日陰に置いて乾燥させないように管理します。その後は日当たりのよい場所に置き、成長に応じて鉢増ししながら育苗し、大きく育ったら植えたい場所に定植しましょう。挿し木のメリットは、親株とまったく同じ性質を持ったクローンになることです。
【種まき】
ヤツデの実がついたら5月頃に完熟するので、そのタイミングで果実を採取して種まきします。種子を取り出して流水でよく洗い流しておきましょう。黒ポットに新しい培養土を入れて十分に湿らせ、ヤツデの種を黒ポットに数粒まきます。軽く土をかぶせ、明るい日陰で管理しましょう。本葉が1〜2枚ついたら勢いのある苗を1本のみ残し、ほかは間引いて育苗します。ポットに根が回るまでに成長したら、少し大きな鉢に植え替えて育苗します。苗木として十分な大きさに育ったら、植えたい場所に定植しましょう。
【株分け】
ヤツデの株分け適期は5〜6月です。株を植え付けて数年が経ち、大きく育ったら株分けできます。株元から複数の芽が出ているときに行うとよいでしょう。株を掘り上げて根を切り分け、再び植え直しましょう。それらの株が再び大きく成長し、同じ姿の株が増えていくというわけです。
初心者も育てやすい! 昔から親しまれているヤツデを庭木にしよう

エバーグリーンで一年を通してみずみずしい葉姿を保つヤツデは、日陰の庭を彩ってくれる貴重な庭木。環境適応力が強く、育てやすいのも魅力です。冬に白い花を咲かせた後、越年後に果実をつけてグリーンから黒へと変化していく様子を楽しめ、季節の移ろいを感じられるヤツデを、ぜひ庭に植栽してみてください。
Credit
文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。2026壁掛けカレンダー『ガーデンストーリー』 植物と暮らす12カ月の楽しみ 2026 Calendar (発行/KADOKAWA)好評発売中!
- リンク
記事をシェアする
冬のおすすめアイテム
ウッドストレージ(薪台) -GARDEN STORY Series-
薪ストーブやキャンプに欠かせない薪を、スタイリッシュに収納できるラック。薪を置くキャンバス布は取り外して取っ手付きキャリーバッグになるので、移動もラクラクです。キャンバス布は外して丸洗い可能。雨や土埃で汚れても気軽に清潔を保てます。
新着記事
-
樹木

【憧れの花14種】毎年植え替えなくていい? 「ラックス」と「シュラブ」で叶える、手間なし…PR
大雪や寒風、冬の寒波で、春の庭仕事・庭準備がなかなか進まない、毎年の植え替えが負担……。そんな方にこそおすすめしたいのが、一度植えれば毎年春を彩ってくれる植物たちです。特に、驚異的な強さと輝く花姿を兼…
-
ガーデン&ショップ

「第4回東京パークガーデンアワード夢の島公園」ガーデナー5名の“庭づくり”をレポート
2025年12月中旬、第4回目となる「東京パークガーデンアワード」の作庭が、夢の島公園(東京・江東区)でスタートしました。 作庭期間の5日間、書類審査で選ばれた5人の入賞者はそれぞれ独自の方法で土壌を整え、吟…
-
樹木

日陰の庭の救世主! 北側の庭をパッと明るく 放置OKな「ヤツデ」の育て方と人気品種
日当たりが悪く、植物が育ちにくい北側の庭。そんな場所の救世主となるのが、日本原産の常緑低木「ヤツデ」です。耐陰性が強く、一度根付けば水やりなどの手間もほぼ不要という驚くべき生命力の持ち主。近年では‘ス…



























