旅行より贅沢かも?「日常という名のリゾート」を我が家の庭に描くヒント
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自宅で「非日常」の癒やしを感じられる“リゾートのような庭”が、今注目を集めています。遠出をしなくても、我が家の庭は「心身を回復させる最高の場所」になるのです。 庭を単に植物を育てる場所ではなく「人生を楽しむ舞台」と捉え、暮らすこと30年。 ガーデンプロデューサーの遠藤昭さんが、数々の失敗から見出した「日本の気候で無理なく持続できる庭づくりのコツ」と、日常を極上の時間に変える「生き方としての庭」のヒントを紐解きます。
目次
リゾートガーデンのすすめ——家でリゾート気分、はじめませんか

私のガーデニングの原点は、幼い頃にまでさかのぼる。母が花好きで、幼稚園の頃には一緒に花壇づくりをした記憶がある。中学生になるとサボテンに夢中になり、いわゆる「サボテン少年」だった。メキシコに憧れていた時代だ。高校時代には観葉植物に傾倒し、部屋にはいくつもの鉢が並んでいた。大学時代は、通販でフェニックスの種子を購入して育てたりもした。トロピカルリゾートに憧れていた時代である。

その後、大学のゼミでは「観光事業論」を選び、就職先には当時リゾート事業に参入していた楽器メーカーを選んだ。しかし、社会人となり転勤生活が続く中で、リゾート事業に直接関与することはなかった。ガーデニングからも一時遠ざかっていた時期である。
転機が訪れたのは30代後半。オーストラリア・メルボルンに駐在し、300坪の庭を持つ家に暮らすことになったとき、私の中でガーデニングの情熱が再び息を吹き返した。それは単なる趣味の再開ではなく、日本のサラリーマンとしての価値観を根底から揺さぶる体験——いわばカルチャーショックであった。

オーストラリアの人々は、庭を単なる「手入れの対象」としてではなく、「人生を楽しむ舞台」として活用していた。家族や友人とBBQを囲み、趣味、教育、そして人生について語り合う豊かな時間。その姿に触れたとき、ガーデニングとは植物を育てる行為にとどまらず、人生の質そのものに関わる営みであると気づかされた。庭そのものが、リゾートだったのである。

帰国後、横浜に住まいを構え、限られた空間の中でオーストラリアの植物を育て始めた。それが私の「オージーガーデン」の始まりである。以来30年、私は庭を通じて、あの時メルボルンで感じた豊かなライフスタイルを再現しようと試行錯誤を続けてきた。
私にとってオーストラリアは「思い出」であり、「当時の豊かなライフスタイルへの憧れ」そのものである。

この30年間、当時はまだ知られていなかったオージープランツの魅力をSNSなどで発信し続け、5年前にはその集大成として『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版社)を上梓した。最近では、若い愛好家たちが次々と新しい情報を発信してくれるようになり、感慨深いものがある。
ガーデニングの本質とリゾートの本質

この30年で、ガーデニングを取り巻く環境は大きく変化した。特にコロナ禍以降、人々の生活には「余白」が生まれた。ガーデニングもまた、流行を追う消費的な趣味から、「自分自身の時間をどう過ごすか」という、より本質的な行為へと変わりつつあるように思う。
ここで改めて問い直してみたい。
ガーデニングとは何か。リゾートとは何か。
リゾートとは、本来「心身を回復させるために立ち返る場所」を意味する。それは単なる観光地ではなく、日常から距離を置き、自分自身を取り戻すための“拠りどころ”である。そしてガーデニングもまた、土に触れ、季節を感じ、時間の流れと向き合うことで、自らの内面を整えていくことにつながる。

ふと気づけば、私のガーデニングは、表面的にはオージープランツやトロピカルプランツを愛でているが、その根底では常に庭に「リゾート」を求めていた。この2つは、本質的に同じ方向を向いていたのである。すなわち、これからのガーデニングのひとつの到達点は、庭の「リゾート化」にあると私は思う。

私が提案したい「リゾートガーデン」とは、単に南国風の植物を並べた庭ではない。イングリッシュ、ドライ、ナチュラル……それらは様式や手法に過ぎない。私が提唱するのは、それらを超えた概念としてのリゾートガーデンだ。
そこに流れる時間、そこで過ごす自分のあり方までを含めた、「自分なりの生き方としての庭」。それは個々の思い出や志向によって、オージーであったり、トロピカルであったり、和風であったりしてもいいはず。
庭に出るということは、植物を愛でる以上に、「自分の時間をどう生きるか」を問い直すこと。私には、メルボルンで体験したあの豊かな時間を思い出し、人生と向き合う場所である。
日本型リゾートガーデンの構築

では、それをどのように具体化していくのか。
まず重要なのは、自分にとっての「リゾートの原風景」を確認すること。私の場合、それは高校生の頃から憧れていたヤシの木や、メルボルンの庭がそれにあたる。
次に、日本の気候の中で無理なく持続できることも忘れてはいけない。
露地植えできる「耐寒性植物」と、鉢で楽しむ「非耐寒性植物」を明確に分ける。この「割り切り」こそが、日本型リゾートガーデンの骨格をつくる。私自身、この割り切りができずに多くの植物を枯らし、失敗を重ねてきた経験がある。
1. 骨格をつくる常緑樹

庭の基盤には、年間を通じて姿を保つ常緑の葉ものを据える。オージープランツの多くは常緑だ。フェニックス・ロベレニー(シンノウヤシ)やストレリチア・レギネ、ニューサイラン、コルディリネといった植物は、空間に強い個性と非日常性をもたらしてくれる。

ブロンズリーフや斑入り葉を選べば、色彩も豊かになる。ただし、ここは日本。四季折々の新緑や紅葉を楽しめる落葉樹を適度に取り入れることで、日本人の感性に馴染む「しっとり感」が生まれる。
2. 動きと彩りの演出
下草にはアガパンサスやグラス類を用いる。風に揺れる動きが加わることで、庭は「鑑賞するもの」から「体感するもの」へと変わる。

その上で、ハイビスカスやプルメリア、ブーゲンビレアといった非耐寒性植物を「鉢」で取り入れ、季節ごとに演出する。ここに意図的な“非日常”を差し込むことで、庭は日常とリゾートの境界を自在に行き来する空間となる。

私の場合、さらにここにオージープランツを重ねる。ディクソニアを象徴的に据え、バンクシアやカンガルーポーを配することで、単なる南国風とは異なる「乾いた光と風の記憶」を織り込んでいく。
こうして生まれる庭は、「日本の現実」と「異国の記憶」が調和した、世界に一つだけの場所となった。
我が家の「リゾートガーデン」ギャラリー
こうして30年かけて育ててきた、海外の風景を思わせる我が家の庭の一部をご紹介。組み合わせや加えると効果的なアイテム選びの参考に。
1. 誘いの小径と安らぎの空間

都市の喧騒を忘れさせる静謐な空間。白い砂利の小径の先には木製ベンチを置き、背後にディクソニアを配して「緑に包まれる安心感」を演出。

2. 「柔」と「剛」の共演

シダの柔らかな曲線と、ニューサイランのシャープな直線。赤いグレヴィレアが彩りを添え、都会的なリゾート感を演出。
3. 非日常を告げるエキゾチックな彩り

ストレリチアやグレヴィレアなど、日本にはないフォルムの植物をフォーカルポイントに置くことで、一気に「異国の風景」へと引き込まれる。
4. 構造美がつくる明るい庭

コルディリネ・トーベイダズラーの明るいストライプが、空間にリズムを生む。白壁を背景にしたシルエットは、まさにリゾートそのもの。
5. 風に揺れる緑と異国の彩り

レンガの小道、風に揺れるグラス、そしてバンクシア。テラコッタの質感が温もりを添える。
6. 緑の楽園に佇むグラスツリー

オーストラリア原産の希少なグラスツリー。見慣れない植物を一つ取り入れるだけで、庭は「楽園」へと姿を変える。
7. 庭とともに、心豊かな老後を

わが家の看板娘、グレヴィレア‘ロビンゴードン’。立派に育て上げたこの花とともに過ごす時間は、私の人生の宝物。
リゾートガーデンを彩る、おすすめ植物15選一言ガイド
リゾート空間を演出するために、私が育ててきた植物で特におすすめの15種ピックアップ。1つでも加えると、花・葉・彩りとしてリゾート感が高まります。
1. ストレリチア

「極楽鳥花」の名で知られる鮮烈な花。常緑で構造美がある。
日当たりを好む。横浜では南側の霜除けで地植え越冬可能。
2. ジャカランダ

世界三大花木。涼しげな羽状複葉と、初夏の美しい紫花。
水はけのよい土を好む。大株なら横浜でも地植え可能。
3. グレヴィレア‘ムーンライト’

クリームホワイトの花穂が一年中咲く。メジロも好む。
リン酸の少ない肥料を使用。多湿を避け、風通しよく。
4. グレヴィレア‘ロビンゴードン’

燃えるような赤花。年中開花し、庭のアクセントに最適。
強健だがリン酸肥料は厳禁。日向で管理し色鮮やかに。
5. コルディリネ

シャープな葉がスタイリッシュ。斑入りは庭を明るくする。
耐寒性が高い。真夏の西日による葉焼けに注意。
6. ニューサイラン

モダンな剣状の葉。銅葉など色のバリエーションが豊富。
非常に丈夫。移植を嫌うため植え場所は慎重に。
7. ディクソニア

木生シダの代表。原始的で圧倒的な存在感を放つ。
幹(頭頂部)から水を与える。半日陰と湿気。
8. バンクシア

タワシのような花穂がユニーク。野性味あふれる造形。
極めて水はけのよい酸性土壌。風通しが成功の鍵。
9. フェニックス・ロベレニー

リゾートガーデンの象徴。優雅な羽状葉が南国を演出。
水切れに注意。冬は鉢上げして霜を避けるのが無難。
10. ハイビスカス

誰もが知る南国の花。次々と鮮やかな花を咲かせる。
日光と水を好む。冬は10℃以上の室内で管理。
11. プルメリア

甘く芳醇な香り。ハワイのレイに使われる高貴な花。
多湿厳禁。冬は落葉後に水やりを断ち、室内へ。
12. アガベ・アテナータ

棘がなく滑らかな葉。大型になると芸術的な立ち姿に。
寒さに弱いため最低5℃をキープ。冬は室内が安全。
13. アガベ・アングスティフォリア(白閃光)

白い斑がシャープ。モダンなフォーカルポイントに。
乾燥を好む。氷点下になる地域では不織布等で防寒。
14. ユッカ・ロストラータ

ブルーグレーの細葉が美しい。耐寒性が極めて高い。
水はけ重視の土壌で乾燥気味に。成長は非常に緩やか。
15. レモン

黄色い実と白い花の香りが地中海の風を感じさせる。
日当たりと肥料を好む。寒風を避けた暖かい場所で。
庭というキャンバスに描く、あなただけの「日常という名のリゾート」

リゾートガーデンづくりに「完成」はありません。 それは、植物の成長とともに、私たちの人生が続いていくのと同じだからです。
まずは、お気に入りのリゾートプランツの一鉢・一株から始めませんか。自分にとっての「心地よい時間=リゾート」を、庭というキャンバスに少しずつ描き始めましょう。そこには、あなただけの「日常という名のリゾート」が待っているはずです。
Credit
文&写真(クレジット記載以外) / 遠藤 昭 - 「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー -

えんどう・あきら/30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『最新版 はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
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