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「植物が私の人生を変えた」庭づくり30年の記録と感動のベスト・フラワー22選を一挙公開

「植物が私の人生を変えた」庭づくり30年の記録と感動のベスト・フラワー22選を一挙公開

「感動の数ほど人生は豊かになる」。ガーデニング歴30年、プロとして15年歩んできたガーデンプロデュサーの遠藤昭さんが、2004年から現在までの22年間に選んだ「その年のベスト・フラワー」を一挙にご紹介。メルボルン駐在で出会った運命のオージープランツから、15年越しに奇跡の開花を見せたアガベ、4度目の挑戦でようやく咲いたジャカランダまで。栽培記録にとどまらない、人生の節目を彩り、時に生き方さえも変えてしまった“心震える花たち”との物語をご覧ください。

我が家のザ・ベスト・フラワー・オブ・ザ・イヤー22年間

ガーデニング

私がガーデニングを始めて、気がつけばもう30年になります。この期間に、数えきれないほど多くの植物を育て、その花たちから、たくさんの歓びと感動をもらってきました。「感動の数ほど人生は豊かになる」と言いますが、まさにそのとおりで、植物のおかげで私は幸せな時間を積み重ねてこられたのだと思います。

植物の種

40代でのオーストラリア、メルボルン駐在から帰国した頃、ふとユーカリをはじめとするオーストラリア原産の植物たちが懐かしくなりました。そこで、種子を個人輸入して育ててみたことが、オージープランツとの本格的な出会いです。趣味だったガーデニングは、気がつけば退職後の仕事となり、プロとしても15年が過ぎました。植物の魅力が、私の人生の流れそのものを変えてしまった──そう言っても過言ではありません。

ガーデンベンチ

ガーデニングとほぼ同じ時期に始めたインターネットでの情報発信もかれこれ25年以上、毎朝のルーティンとなっています。そして年末には、毎年「我が家のザ・ベスト・フラワー・オブ・ザ・イヤー」と題し、その年もっとも心を動かしてくれた花を選んできました。

ガーデン

必ずしも“育てるのが簡単だった花”ではありません。その年の庭の主役であり、私に最も大きな感動を与えてくれた植物です。当時まだ日本では珍しかった種類も多く、いま振り返ると、時代の流れや自分自身の関心の変化も映し出しているように思います。

デジタル写真として高解像度の記録が残っているのは2004年以降ですので、今回はその22年間を振り返って、22品種の花を一挙にご紹介します。すでに当サイトの連載記事で紹介した植物もありますので、併せてアーカイブ記事もご覧いただければと思います。

2004年から2014年に育てた11種の植物

さて、ここからはいよいよ、年ごとに「我が家のベスト・フラワー」を振り返っていきたい。
写真がしっかり残っている2004年から2025年までの22年間は、私の庭づくりにとっても、日本のガーデニングの変化にとっても、節目がいくつもあった時期だった。

その最初のページを飾るのが、2004年の“ダリア・天涯”。私にとっても忘れられない1年の象徴となった花だった。

2004年 ダリア『天涯』──私のガーデニング人生を押し出した花

ダリア‘天涯’
見事な大輪花が咲いたダリア‘天涯’。

2004年は、私にとって特別な年だった。
浜名湖花博のガーデニングコンテストでグランプリを受賞し、前年の園芸雑誌のコンテストに続いての二冠。副賞としてハワイ、そしてニュージーランドへと旅する機会にも恵まれた。ガーデナーとしての自信と可能性が、一気に広がった時期だった。

その勝負どきの応募写真に使ったのが、超巨大輪ダリア『天涯』だった。
当時、ダリアはまだ今ほどブームになる前で、庭で存在感を放つ“勝負花”でもあった。

コンテスト応募に撮影した、ダリアが庭のアクセントになっている2階からの眺め。

超巨大輪ダリアとは、花径30cm以上の迫力あるダリアを指す。
私はその規格に挑戦し、何とか30cmの壁を越えようと、肥培管理から支柱の立て方まで、これでもかというほど手をかけた。咲き上がった花は、まさに天にも届くような圧倒的なスケールで、写真に収めた瞬間、思わず息を呑んだことを覚えている。

私の“花の年表”の最初を飾るにふさわしい、力強い一輪だった。

2005年 アガパンサス──メルボルンの記憶を運ぶ花

アガパンサス

2005年の主役は、鉢植えで10年以上育ててきたアガパンサス。今でも健在。
私がこの花を育て始めたきっかけは、メルボルン時代の通勤の道の記憶だった。中央分離帯いっぱいに咲き誇るアガパンサスが、青空の下で揺れる光景は、今でも鮮明に思い出せる。

アガパンサス

ほとんど手をかけなくても、鉢植えでも毎年よく咲く。
私にとっては“オーストラリアの風景そのもの”を連れてきた花だ。

2006年 フリンジド・リリー──旅が連れてきた、野生の感動

フリンジド・リリー

2006年に咲いたのは、フリンジド・リリー。
その2年前、西オーストラリアのワイルドフラワーを巡る旅で、野生のフリンジド・リリーに出会った瞬間の衝撃は忘れられない。

フリンジド・リリー

パースのナーセリーで手に入れた種子を播き、2年越しでようやく1株だけ咲いたその姿は、旅の記憶と重なってまさに“感動の再会”だった。当時、日本では入手できない品種だった。

2007年 アマルクリナム──花は思い出を咲かせる

アマルクリナム

この花は「花なかま」というサークルの交換会で譲り受けた株。数年育てての開花は、贈り物を開くような喜びがあった。花にはそれぞれ思い出が宿る。

アマルクリナム

だから、花はいつも美しいのだと感じる1年だった。その後も毎年、咲いてくれる。この花を見ると、当時のメンバーを思い出す。

2008年 ヘメロカリス──知らない世界を開いた花

ヘメロカリス

2006年、メルボルン・インターナショナル・フラワーショーで出会ったヘメロカリス。
当時はこの花を知らず、ヘメロカリスの専門店に並べられた膨大な品種の数に圧倒された。これは育ててみたい、と未知の球根を2つ購入し、2年後に見事に咲いてくれた。

ヘメロカリス

日本でも普及すると感じたが、いまも大きな波は来ていない。
しかし、私にとっては“世界の広さを教えてくれた花”だ。

2009年 エキウム──3年越しの塔の花

エキウム

はじめてエキウムを見たのもオーストラリア。化け物のように大きな塔を立ち上げる姿に驚き、名前も知らず、ただ見惚れと。

エキウム

2006年にメルボルンで種子を入手し、3年かけてようやく開花。何本か芽生えたうち、最後まで育ったのは1本だけ。その1本が咲いてくれた瞬間は“エキウムの奇跡”だった。

2010年 ストレリチア──庭に咲く極楽鳥という衝撃

ストレリチア

ストレリチア(極楽鳥花)は熱帯植物のイメージが強いが、じつは南アフリカ原産で、意外に耐寒性もある。メルボルンの住宅街で、庭に普通に植えられている姿を見たときは、本当に驚いた。

ストレリチア

日本では切り花のイメージだったストレリチアが、庭で風に揺れている……。
その光景は私の園芸観を揺さぶった。そして横浜の我が家でも開花した。

2011年 ユーカリ──私の人生を変えた木

ユーカリ

オーストラリア駐在中に出会ったユーカリは、私の人生を変えた植物だと思う。広い庭で週末にBBQを楽しむ豊かなライフスタイル。その象徴のような存在だったユーカリ。

ユーカリ

帰国後、日本では入手できなかったので、ピンクの花の咲くユーカリの種子を海外から取り寄せて4年後にやっと開花。
たくさん咲くようになったのは、ちょうど私が定年退職しプロのガーデナーになった頃だった。このユーカリは、いつも“原点”を思い出させてくれる。

2012年 ボトルブラシ(ピンクシャンペーン)──鳥を呼ぶ花木

ボトルブラシ

ピンクのボトルブラシは、5月・7月・9月・11月と、ほぼ年に4回咲く働き者。オーストラリアでは“鳥を呼ぶ木”としてお馴染みで、我が家でもメジロが蜜を吸いに来る。

ボトルブラシ

花木と小鳥の組み合わせは、オーストラリアの庭の原風景。それを日本の庭でも楽しめることが嬉しかった1年だ。

2013年 ピメレア・スペクタビリス──青白い光を放つ花

ピメレア・スペクタビリス

西オーストラリアのワイルドフラワーの旅で見た花が、日本でも流通するようになった。低木で、青みがかった葉と繊細な花姿が印象的。
日本では春に咲き、独特の透明感がある。

ピメレア・スペクタビリス

この年は「オージープランツの奥深さ」を再認識した年だった。

2014年 プチロータス──風に揺れる羽毛の花

プチロータス・ジョーイ

プチロータス・ジョーイは、ふわふわとした羽毛のような穂を立ち上げる、西オーストラリア原産の多年草。種子は国内でも入手出来て、種子からたくさんの株が育った。

プチロータス・ジョーイ

乾燥に強く、銀緑色の葉とピンクの花が風に揺れる姿は、砂漠の中の光を思わせた。庭に育っているだけで、オーストラリアの空気が流れ込むような花である。

2015年から2025年に育てた11種の植物

2015年 アガベ「白糸の滝」──15年目の奇跡

アガベ「白糸の滝」

ついに咲いた、15年育てたアガベ「白糸の滝」。父の日に妻から贈られた小さな苗が、こんなにも大きく育ち、ついに開花した。

アガベ「白糸の滝」

アガベは“命を懸けて咲く花”。リューゼツランの仲間は花後に枯れる。花弁だと思っていた黄色は、実は雄しべ。花を初めて見たときは、鳥肌が立つほど感動した。

2016年 キンギアナム──20年育てた株の誇り

キンギアナム

桜と同じ頃、満開を迎えるキンギアナム。20年以上育てて大株になり、毎年見事な花を見せてくれる。

キンギアナム

2004年に訪れた西オーストラリアで野生蘭を見て以来、この花には特に思い入れがある。旅が、今の私の園芸を形づくっていることを実感した年だった。

2017年 ピメレア(Qualap Bell)──繊細さの極致

ピメレア

ピメレア・フィソデスの可憐さは、オージープランツの中でも群を抜く。
重なり合う苞が鐘のように見え、その色合いは複雑で奥深い。

ピメレア

育てるのは難しいが、咲いたときの喜びは格別だった。

2018年 アガベ・ベネズエラ──命を懸けた開花

アガベ・ベネズエラ

知人からいただき、10年育てた株が突然のつぼみ出現。百年に一度咲くと言われる、センチュリープランツ。

アガベ・ベネズエラ

アガベは開花すると枯れる“命の花”。

家で観賞するだけではもったいないと、勤務先の植物園に展示したところ新聞にも紹介された。多くの人に見てもらえたことも嬉しかった。

2019年 ブラック・キャット──ようやく咲いた黒い猫

ブラック・キャット

地下に肥大した地下茎をつくるタロイモ科の多年草で、黒花が魅力のブラック・キャット(Tacca chantrieri)。

ブラック・キャット

数年育てて、株分けで増えても、なかなか咲かず苦労したが、植物園の温室で越冬させたところ、ついに開花した。

この花は“温度がすべて”だと実感した年だった。

2020年 プルメリア──娘の結婚式の思い出とともに

プルメリア

このプルメリアは、2009年に娘のハワイ挙式で買った挿し木用の枝が“原点”。それを子株にして育てて、5年目にようやく咲いた。

プルメリア

親株は枯れてしまったが、この花が咲くと、あの日の青空が蘇る。コロナ禍のステイホームの憂鬱を吹き飛ばしてくれた。

2021年 ダーウィニア・タキシフォリア──静かな気品と情熱

ダーウィニア

この年もコロナ禍で、ガーデニングがちょっとしたブームだった。華やかさはないが、見るほど味わいが深まるダーウィニア。

ダーウィニア

細い葉と控えめな花が、オーストラリアの乾いた空気を思い出させる。“派手さよりも趣”。園芸観がまた一歩成熟した年だった。

2022年 バンクシア・バースディキャンドル──刹那の憧れ

バンクシア

憧れ続けたバンクシア。基本的に、「ザ・ベスト・フラワー・オブ・ザ・イヤー」は、自分で育てて開花させた花から選ぶと決めていたが、この年だけは、開花株を“自分へのご褒美”として購入した。

バンクシア

しかし一年で枯れてしまった……。
刹那の輝きだったが、憧れは確かに手の中にあった。

2023年 黒法師──花の合間から顔を出す“新発見”

黒法師の花

黒法師は長年、育てていたが、黒法師の花が初めて咲いた年。
驚いたのは、花後に花の間から小さな“赤ちゃん株”がいくつも顔を出していたこと。

黒法師の花

長年園芸をしていても、まだまだ初めて見る現象がある。これこそが園芸の醍醐味だ。

2024年 ハーデンベルギア──春を告げる古い友人

ハーデンベルギア

30年ともに歩んできたのが、つる植物のハーデンベルギア。我が家のAlex’s Garden の春は、アカシアと、この花が告げる。

ハーデンベルギア

小さな花が集まって生み出す鮮やかさは、毎年見ても飽きない。長年の間に、我が家の雨どいや、アーチに絡み、なかなかの貫禄。

2025年 ジャカランダ──4株目の執念が咲かせた青い花

ジャカランダ

25年以上ジャカランダを育てて、幾度も失敗。18年育てた大木が咲かずに枯れたこともある。

ジャカランダ

そしてこの4株目。接ぎ木苗を地植えし、寒冷紗で冬越しを工夫し、ようやく5年目に、見事に開花した。植物にも気持ちは通じる——そう思わせてくれた年だった。

人生の深みを教えてくれるガーデニング

振り返れば、ガーデニングを始めてからの30年余り、私はいつも「花とともに」生きてきたように思います。
四季の移ろい、咲いては散る花々の姿に、その年その時の自分の暮らしや感情が重なり、庭は私にとって人生そのものの写し絵のようです。メルボルンの道路脇で見たアガパンサス、乾いた大地に強く咲くワイルドフラワー、広い空の下で揺れるユーカリの銀葉──。

海外で出会った植物たちは、私のガーデニング観を大きく変え、人生の針路までもそっと押し出してくれました。 花は、育てる者の努力や知識だけでは咲いてくれません。「気まぐれ」と言ってしまえばそれまでですが、むしろ私は、花には“意思”のようなものがあると感じています。

黒花の球根

その意思と向き合い、ときに失敗し、ときに長い年月をかけてようやく一輪が咲く──そんな体験の積み重ねこそが、園芸の醍醐味であり、人生の深みを教えてくれました。

この回想録に綴った花々は、どれも一つとして同じものはなく、咲いた背景や心に宿した記憶も異なります。けれど、いずれの花も私にとって「その年の自分の姿」を映し出す宝物でした。

クリスマスローズ

これからも、未来をイメージして庭に種子をまき、水をやり、新しい花と出会い、新しい驚きと感動を受け取る日々が続いていくことでしょう。年齢を重ねるほどに、庭の時間はゆっくりと、しかし確かな喜びとして胸に刻まれていきます。

2026年、みなさんはどんな花を咲かせるでしょう。新年も楽しみですね。

長い文章にお付き合いくださった読者の皆さま、そして30年もの間、私を支えつづけてくれた数えきれない花たちに、心から感謝を込めて。

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