夏と秋の間にラッパ形の花を咲かせる芳香花「アマルクリナム」をご存じですか? アマリリスでもなく、ヒガンバナでもない、レアな春植えの球根植物で、剣葉を茂らせて冬を越します。神奈川の自宅の庭で25年以上ガーデニングを楽しむベテランガーデナーの遠藤昭さんに8〜9月に開花する「アマルクリナム」の魅力と栽培のコツを教えていただきます。

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夏の終わりを告げる花

お盆を過ぎて、朝晩にやや涼しさを感じ始めるころ。まだ日の昇る前の庭に出ると、明かりを灯したように輝いて庭を明るくし、豪華で存在感のある花を咲かせてくれるのがアマルクリナムです。さらには、素敵な芳香をほんのりと漂わせ、暑さとコロナ禍で疲れたココロもカラダも癒やしてくれる花です。

アマルクリナム

あまり一般に流通していませんが、常緑の光沢のある太い肉厚の剣葉は、冬でもトロピカルリゾート感を演出してくれます。

ホンアマリリス属とは?

ヒガンバナ科のホンアマリリス属(Amaryllis)とハマオモト属(Crinum)の交配によるアマルクリナム属ですが、それぞれの属にはたくさんの品種が存在し、極めて複雑な世界です。

まず、アマリリスと言うと一般的にはヒッペアストルム属で、多くの品種が花期には葉を展開させるのに対し、ホンアマリリスは開花時にはヒガンバナのように地上部に葉がありません。

ホンアマリリス

上写真が、ホンアマリリスです。開花時は葉がありません。

ホンアマリリス

ホンアマリリスにも、花の大きさや色味などの違いでいろいろな品種があります。

ヒッペアストルム属とは?

一般的に流通しているのはヒッペアストルム属のアマリリスです。

ホンアマリリス (Amaryllis belladonna)は一般にはあまり流通していないですが、ベラドンナ・リリーなどの名で、通販サイトにて見かけることがあります。また、一般のアマリリスであるヒッペアストルム属の花茎が空洞であるのに対してホンアマリリスは空洞ではありません。

下の2枚の写真はヒッペアストルム属です。

アマリリス アマリリス

多くのヒッペアストルム属の花は、咲き進むと雌しべの先は大きく3つに裂けますが、ホンアマリリスは裂けません。

また、ヒッペアストルム属は中南米原産であるのに対し、ホンアマリリスは南アフリカ原産と生まれ故郷も異なります。

さらにややこしい話になりますが、一般的にいうアマリリス(ヒッペアストルム属)にもヒッペアストルム‘ベラドンナ’=Hippeastrum ‘Belladonna’ という園芸品種が存在し、アマリリス‘ベラドンナ’=Amaryllis ‘Belladonna’の名前で販売されているので要注意!

アマリリス‘ベラドンナ’
アマリリスとして流通するヒッペアストルム‘ベラドンナ’、別名アマリリス‘ベラドンナ’。

ハマオモト属とは?

アフリカハマユウ
アフリカハマユウ Arief_hawk/Shutterstock.com

一方のハマオモト属(Crinum)には、写真上のアフリカハマユウ(Crinum latifolium)や、写真下のクリナム・モーレイ(Crinum Moorei)などがあります。

クリナム・モーレイ
クリナム・モーレイ Saengduan/Shutterstock.com
ハマユウ
ハマユウ Nature’s Charm/Shutterstock.com

日本のハマユウ(浜木綿、Crinum asiaticum)もハマオモト属(Crinum)です。

ハマユウは、「スパイダーリリー」とも呼ばれています。なお、ヒガンバナ科 /ヒメノカリス属のヒメノカリス=Hymenocallis(写真下)はハマユウに似ていますが、これもスパイダーリリーと呼ばれており、また混乱させられます。

ヒメノカリス

ヒメノカリスは、朝顔のように花弁がつながっています。

交配親の利点を引き継いだ優良植物

アマルクリナム

さて、本題のアマルクリナムに話を戻しましょう。

アマルクリナムは品格のある花の美しさとともに、高貴な香りがして、さらに育てやすいと三拍子揃っています。庭に植えても存在感があり、これからのガーデニングにぜひ取り入れてほしい植物です。我が家の株は、育ててかれこれ15年くらい経ちますが、数年前に10号鉢よりやや大きい鉢に植え替えて鉢増しをしただけで、毎年、花を咲かせてくれています。丈夫で長持ちを実感しています。

アマルクリナム

冒頭で述べた通り、アマルクリナムはホンアマリリス(A. belladonna)とクリナム(ハマオモト=Crinum mooreiなど)の交雑種ですが、大きな艶のある葉、たくさん咲く花、クリナムの素敵な芳香と、両親のよいところを引き継いでいます。さらには、成長力旺盛で乾燥にも強く、開花時期も8~9月と一般的に花が途絶える時期に咲いてくれるのが有難いです。

草丈は60~100cm程になる大型の球根植物なので、花壇の主役にも最適です。

アマルクリナムの育て方

アマルクリナム

【栽培環境】

アマルクリナムは、肥沃な水はけのよい土壌で、日当たりのよい環境ならば、最高のパフォーマンスを発揮します。ただ、もともと亜熱帯の植物なので耐寒性があまり強くはなく、霜の降りない地域であれば戸外越冬が可能ですが、関東以北では越冬のために防寒を施す必要とする場合があります。寒い地方ではコンテナ植物として栽培し、冬は鉢を屋内に取り込みます。また、場所としては夏の西日は避けましょう。

【増やし方】

球根植物なので分球で増やすことができます。暖かくなった4~5月に分球します。ただし、球根が小さい場合は開花に2~3年かかることがあります。種から増やすことも可能ですが、開花に数年かかるようです。

【日頃の手入れ】

水やりは鉢植えの場合、夏は毎日、春~秋は土が乾いたらたっぷりと与え、冬は乾かし気味に管理します。地植えの場合は特に水やりの必要はありません。

施肥は春と秋に緩効性肥料の置き肥をします。鉢植えの場合は、成長期に2週間に一度程度の液肥でも大丈夫です。

病虫害は、あまり見かけませんが、ウイルス病やハマオモトヨトウムシ、ナメクジ、アカダニ、アブラムシなどがつくことがあるようです。見つけ次第、処理しましょう。

アマルクリナムが咲く庭

アマルクリナム

アマルクリナムはグレヴィレアなどのオージープランツとも相性がよいところも、気に入っている理由です。

アマルクリナムは日本ではまだ、あまり普及していませんが、この見事な美しさと素敵な香りを持ち備えた丈夫で育てやすい植物は、きっと近い将来、人気のガーデンプランツとして注目されるでしょう。

Credit


写真&文/遠藤 昭
「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)、『はじめてのオージープランツ図鑑』(青春出版)。
ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/

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