30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了された遠藤昭さん。帰国後は、オーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、神奈川県の自宅の庭で100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストでも数々の受賞歴があり、60㎡の庭づくりの経験は25年になるという遠藤さんに、注目のオージープランツを解説していただきます。
目次
鳥を呼ぶブラシの木に注目

今回オススメする日本で育てやすいオージープランツは「ブラシの木」つまりボトルブラシだ。あの、ビンを洗うタワシのような風貌の花を咲かせる樹木。学名:Callistemon、俗名:Bottle brush、和名:金宝樹。最近は、カリステモンと呼ばれる事も多いようだが、僕は俗名のBottle brash(ボトルブラシ)と呼んでいる。オージー花木の中では、最も育てやすいといえる。
ブラシの木をタネから育てる

開花は通常5月下旬で、バラが終わりかけた頃に開花する。そして、多くの品種が四季咲きで、初夏の最盛期後も2〜3回返り咲くのも嬉しい。また、コンパクトにも育てられるし、耐寒性もある。常緑樹なので冬も緑を保つから、これからの庭木に断然オススメだ。ボトルブラシは、日本で見られるオージープランツの中では最もポピュラーな花木だろう。日本に渡ってきたのが100年以上前だという。「金宝樹」という日本名は、なんだか「金の成る木」の親戚みたいで若い人達は、もしや引いてしまう名前かも知れない。僕は20年ほど前にボトルブラシ数種のタネを個人で輸入して育てたのが栽培の始まりだが、とっても細かなタネなのに驚くほど良く発芽した。
ブラシの木の育て方・増やし方

挿し木でも簡単に増えるし、タネから育てると3年目には1mを越え、花が咲くようになる。品種にもよるが、1年で1mほど成長するので剪定して大きさを調整するとよい。我が家は、高さ3m程度に保つようにしている。剪定のタイミングは花後にバッサリと。6月頃がよい。葉はユーカリに近いスーッとした香りがするので、剪定するのも気分がいい。寒さで痛みやすく、花芽を切り落としてしまう恐れがあるため冬の剪定は避けるように。基本的に、僕がオススメしているオージー花木は、地植えでは肥料が不要だ。なぜなら、オーストラリアの土地はリン酸が少なく、肥料負けする事がある。もし与えるとしたら、リン酸が少ない有機肥料で十分だ。

ボトルブラシに関して、 オーストラリアでの園芸本の解説には、Callistemon attract birds. とかAttract native birds to your garden と 、かならずといってよいほど、「野鳥を呼び寄せる」花木として紹介されている。実際、我が家でも毎朝、ブラシの木にたくさんの野鳥が集まっている。庭には華やかなバラも咲いているのにだ。オーストラリアの魅力ある庭の条件のひとつにある「野鳥が来る庭」を、まさに実現させてくれる木だ。


花後には幹に丸い粒が整列して残る。だいたい数年間、幹についたままだ。1年以上経った実をハサミで割れば、中から細かいタネが出てくる。これを気温が高くなった5月頃に、タネ播き用土に播くと簡単に発芽するのだ。タネ播きは普通の草花の要領でOK。木が小さい頃は年に1回しか咲かなかったが、木が大きくなれば四季咲きとなり、新しい芽が伸びてつぼみをつけて開花する。自然の中では、山火事があるとこの頑強な実が弾けて、雨が降ると発芽すると聞いている。過酷な環境の中で生き残るための特別な性質が備わっているようだ。

ボトルブラシの花は、赤が主流であるが、ピンクもおしゃれだ。そして、白やグリーンの花を咲かせる品種もある。モダンな庭には白やグリーンの花が似合いそうだ。温暖化で真夏の暑さに耐える植物をお探しの方や、庭の雰囲気を一新されたい方、これから家を持つ若い世代の庭づくりにも取り入れて欲しいと願うオススメの花木だ。庭にやってきた鳥のさえずりで目覚める朝は幸せなものだから。
Credit
写真&文/遠藤 昭
「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。
ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
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