世界中の熱帯地域で育てられている熱帯花木のプルメリアは、花に芳香があり、ハワイやタヒチ、フィジーなどではレイにも使われ、南の国のイメージがあります。真夏に花が咲く印象のプルメリアですが、神奈川では秋口が一番よく開花するといいます。神奈川の自宅で25年以上ガーデニングを楽しむベテランガーデナーの遠藤昭さんに、鉢植えで育てて、数年に一度開花させるプルメリアの栽培術について、詳しく教えていただきます。
目次
ハワイをイメージする花、プルメリア
プルメリアというと、ハワイを思い浮かべる方が多いのではないだろうか。リゾート地のハワイも、今年は行きたくてもコロナ禍では諦めざるを得ません。そこで、今回はプルメリアの花をご紹介して、あなたも僕も、せめて気分はハワ~イ。
ハワイというと、日本人には憧れ感が強くあるようだ。古くは「トリスを飲んでHawaiiへ行こう‼︎」キャンペーンもあり、1980年代初頭には新婚旅行の行き先人気ナンバーワンだった。そんな憧れ感は、プルメリアの花にも抱いている方が多いようだ。実際、僕の友人で、毎年夏にハワイに行っていた女性から、「今年はハワイに行けないから、せめてプルメリアの花を家に飾りたいけれど、手に入らないかしら?」と聞かれたり、お客様の中で、「ハワイで見た思い出の花を家で眺めたいので、開花したプルメリアの鉢を毎年、届けてほしい」というオーダーを受けたりした。
挿し穂から育てた我が家のプルメリア
上写真は、6年前にハワイに行った時に、土産物屋で購入した挿し穂(当時は検疫を受ければOKだったが、今はウイルス病の危険があり禁じられている)。ビニールにパッケージされた状態で販売されていた。
そして、その挿し穂から育てて咲いた花だ。なんて美しいことか。
僕自身も2004年に初めてハワイ旅行をして以降、土産物屋で買った挿し木用の挿し穂からプルメリアを育て始め、幾度か枯らした経験を持つ。しかし、それでも懲りずに現在、3色3鉢のプルメリアを育てていて、今年は2株が開花中だ。2株が開花したのは今年が初めてだ。今年は、コロナ禍で家にいた時間が長く、十分な世話をすることができた結果だと思う。植物は必ず努力に報いてくれる。
プルメリアの特徴は?
そんな思い出もある栽培中のプルメリア(学名:Plumeria)だが、キョウチクトウ科の植物で、確かにキョウチクトウに似ている。樹液が白く毒性を持つところも共通している。1mくらいの高さに成長しないと開花しないといわれていたが、最近は小型の改良品種もあるようだ。我が家では昔ながらの品種で樹高2mを超える。
プルメリアの花の魅力と咲かせるテクニック
プルメリアの最大の魅力は、甘い香り。ハワイを思い出させる贅沢な癒やしの香りだ。
この季節、まだ暑く蚊も多く、度々、庭に出て香りを楽しむというわけにはいかないので、今年は切り花にもしてみた。リビングに甘い香りが漂う。
そして、花はポロリと落ちるので、水に浮かべると、しばらく香りが楽しめる。
かれこれ15年以上育てているが、開花するのは3年に1回くらいである。それも9月以降だ。熱帯花木の多くは枝が充実しないとつぼみを持たないといわれている。実際、我が家のハイビスカスやデュランタも9月以降が花の盛りになる。
プルメリアも気温が上がってくる5月頃からようやく成長しはじめ、8月から9月頃には枝が充実し、そしてつぼみを持つ。このつぼみを持つタイミングで寒くなる前に開花できるか否かが決まるようだ。
今までに開花しなかった年でも、9月頃につぼみが確認できるが、結局、寒くなり開花に至らず、つぼみのまま落ちてしまうことを何回か経験した。
今年も、9月19日の段階で3本の枝に小さなつぼみが見えるが、これを屋内で管理しても我が家のリビングルームの環境では難しいと思う。夜間、プルメリアのために暖房を入れる余裕はない。15℃くらいで成長は止まってしまう。冬も常に20℃以上の温室があれば解決するのだろうが、一般家庭でその環境を保つことは難しい。
プルメリアを咲かせる栽培のポイント
では、どうしたらプルメリアを咲かせることができるのか? 今までの15年余りの経験から、プルメリアを咲かせるための育て方をまとめてみよう。
一言で言ってしまえば「成長を促す」ことである。まず、暖かくなって短期間で枝を充実させるためには、太陽によく当てて光合成を盛んにさせることだ。春先から直射日光に慣らしておけば、葉焼けすることはないようだ。
次は用土だが、幹も多肉植物のように水分を蓄えているようで、乾燥には強く、過湿に弱いので、水はけのよい用土に植えること。僕は鉢底の軽石を多めに入れ、水はけをよくしている。
乾燥に強いので、やや乾燥気味に育てたほうが丈夫に育つようだ。水をたっぷり与えてしまうと徒長気味になり、幹や葉が軟弱な感じに育ってしまう。特に冬は乾燥気味に育てないと根腐れを起こしやすい。最後は肥料だが、やはり開花のためには、成長期にリン酸をしっかり施す。今年の成長期は、マグアンプと液肥だけで育てて開花に成功した。
剪定だが、日本で育てる場合、冬は屋内に取り込むので、10月頃に切り詰めることになり、そこから春に新芽が出るが、1年目の枝には花は付きにくい。したがって、冬に屋内に取り込む際に、2年先を見越して小さめに剪定する必要がある。
プルメリアの株を増やす挿し木の手順
最後に増やし方だが、挿し木で増やせる。3~6月頃、または屋内に取り込むサイズに切る場合は9月に、余分な枝を20cm程度に切り、葉を落とす。そして、数日間は日陰で乾燥させて、鹿沼土などに挿すと2カ月程度で新芽が出てくる。挿し木は、親の性質を引き継ぐので開花しやすいというが、それでも3年はかかる。
プルメリアの挿し木の手順
- 余分な枝を切り取る。切り口の白い液には毒性があるので、作業はビニール手袋などを使用するとよい。
- 1本を20~30cm程度に分ける。
- 葉を落とし、数日間、切り口を乾燥させる。
- 鹿沼土に挿す。
以上がプルメリアの僕の経験からの育て方だ。正直、開花させる難易度は高いが、だからこそ開花の感動も大きい。人間は手に入らないものに憧れる傾向があるが、まあ、僕自身がプルメリアに憧れるのは、「咲かせるのが難しい」からなのかも知れない。だからこそ、闘志が湧くのだ。思えば、僕のオージーガーデニングへの熱意は、そこに存在する。
Credit
写真&文/遠藤 昭
「あざみ野ガーデンプランニング」ガーデンプロデューサー。
30代にメルボルンに駐在し、オーストラリア特有の植物に魅了される。帰国後は、神奈川県の自宅でオーストラリアの植物を中心としたガーデニングに熱中し、100種以上のオージープランツを育てた経験の持ち主。ガーデニングコンテストの受賞歴多数。川崎市緑化センター緑化相談員を8年務める。コンテナガーデン、多肉植物、バラ栽培などの講習会も実施し、園芸文化の普及啓蒙活動をライフワークとする。趣味はバイオリン・ビオラ・ピアノ。著書『庭づくり 困った解決アドバイス Q&A100』(主婦と生活社)。
ブログ「Alex’s Garden Party」http://blog.livedoor.jp/alexgarden/
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