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秋から初冬まで変化を楽しめるオーナメンタルグラス 〜小・中型種10選〜

秋から初冬まで変化を楽しめるオーナメンタルグラス 〜小・中型種10選〜

Sergey V Kalyakin/Shutterstock.com

いま、世界中のガーデンで注目を集めている植物がオーナメンタルグラス。季節とともに移ろう姿が、野趣と装飾性を兼ね備えたガーデニング素材として脚光を浴びています。ここでは、分類の垣根を取り去った植物セレクトで話題のボタニカルショップ「ACID NATURE 乙庭」のオーナーで園芸家の太田敦雄さんが、秋にさらに魅力を増す、美しいオーナメンタルグラスをセレクト! 今回は、草丈1m以下でコンパクトに楽しめる小・中型のグラスを10種ご紹介します。

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秋から初冬まで変化を楽しめるオーナメンタルグラス <小・中型種編>

今回から2回にわたり、秋の穂から初冬の枯れ姿まで、季節の移り変わりと共に変化していく色形を楽しめるオーナメンタルグラスをご紹介します。

グラスガーデン
Gardens by Design/Shutterstock.com

いまや世界的な広がりを見せている、ナチュラリスティックな宿根草植栽の流れを受けて、日本でも野趣と装飾性を兼ね備えたガーデニング素材としてオーナメンタルグラスへの注目度がアップしていますよね。宿根草植栽に大々的にオーナメンタルグラスを組み合わせたオランダの植栽家 ピート・アウドルフ氏による幻想的な植栽デザインなどによって、近年、急速に人気が高まっている植物といえるでしょう。

ヴリンダーホフガーデン
ピート・アウドルフ氏のデザインによるオランダ・ユトレヒトのヴリンダーホフガーデン(Vlinderhof garden)。Sergey V Kalyakin/Shutterstock.com

降水量の多い日本では、カラッと乾燥した気候のヨーロッパとはグラス類の成長具合がかなり違うので、管理の仕方や品種選びも多少異なってきます。また、風にサラサラと揺れたり、逆光にキラキラと輝くグラスの穂の「空気感」ともいえる動的・環境作用的な美しさは写真では伝わりにくく、どんな品種を選んだらよいか迷われている方も多いかもしれません。

ムーレンベルギア・カピラリス
ムーレンベルギア・カピラリス。Inna Reznik/Shutterstock.com

海外の書籍などではオーナメンタルグラスに関しての詳しい資料や事例紹介も豊富ですが、日本ではまだ資料も少なく、苗の流通量も多いとはいえません。しかし、それだけに日本でのオーナメンタルグラス植栽については、まだまだ多くの発見・創造可能性が秘められているともいえるでしょう。

ペニセタム・アロペクロイデス
ペニセタム・アロペクロイデス。Anna Gratys/Shutterstock.com

今回は、秋~初冬の季節感にフォーカスして、乙庭セレクトのオーナメンタルグラスをご紹介します。

本記事は草丈1m以下でコンパクトに楽しめる小~中型種編。次回記事は、草丈1m以上となりダイナミックな植栽背景や季節のフォーカルポイントとしても楽しめる大型種編となります。

冬枯れが進み、見どころが少なくなりがちな晩秋~初冬の庭の植栽のヒントになれば幸いです。

植栽のポイント! グラスの穂は「組み合わせで魅力を発揮する」素材

オーナメンタルグラスは、今日の園芸美意識からすればデザイン性の高い素材と理解されますが、予備知識なく見ると、本来、叢(くさむら)を思わせる野生味の強い植物でもあるので、使い方を一歩間違えると「ただの野原」のような、視点の定まらない植栽風景に陥りやすいので注意が必要です。

オーナメンタルグラス全般にいえることですが、単体だと絵になりません。それだけで絵になるものではなく、絵の具のように「風景を描き出すための素材」と捉えるとよいでしょう。

グラスガーデン
モリニア、デスカンプシアなどのグラスの穂と、ヘレニウム、エリンジウム、セダムなど、晩夏~秋の花を織り交ぜたヴリンダーホフガーデンの植栽。Sergey V Kalyakin/Shutterstock.com

ひとくくりにオーナメンタルグラスといっても、その穂の形状やテクスチャーはさまざまです。

遠目では霞がかかったように見える透明感のあるものや、長い針状の直立性の際立ったもの、フンワリとした尾っぽ状のもの、ススキのような箒状のものなどなど。

オーナメンタルグラス
Molly Shannon/Shutterstock.com

また、似たような形状のものでも、風に吹かれたときの様子が空気のようにフワッと軽いものや、より重い感じでユラユラと動くもの、糸のように柔らかい質感のものや、細い棒のような硬い質感のものなど多様性に富んでおり、それらの「微差」を読み分ける判断力や観賞力を園芸家に問う素材でもあります。

リアトリスとグラス
リアトリスの硬く黒褐色に枯れた花がらと霞のようなグラスのテクスチャーの対比。Sergey V Kalyakin/Shutterstock.com

そういった形状やテクスチャーの微妙な違いは、対比を上手に使うことによって明確に表現できます。霞のようなエアリーな穂は、ボリューム感のある素材と合わせることでお互いの存在感を引き立て合いますし、線形の強いものは大きな面のある葉を背景に置くことで、その幾何学的な美しさが浮き彫りになります。

カラマグロスティス‘カールフォースター’とニシキギ
カラマグロスティス‘カールフォースター’の白ベージュ色の針状穂とニシキギの鮮紅色の紅葉の対比。Kathryn Roach/Shutterstock.com

各種の特徴を知った上で、隣接するものとの対比を意識して植栽するとよいでしょう。

では、宿根草を組み合わせて使ってみたい、乙庭セレクトの小~中型グラスをご紹介します。

セレクト1
ムーレンベルギア・カピラリス

紫色の霞を思わせるエアリーな穂の質感が幻想的な植栽風景を演出してくれる、アメリカ北東部原産のとても美しいグラスです。

ムーレンベルギア・カピラリス
Inna Reznik/Shutterstock.com

乙庭では2008年頃に導入しましたが、私が記憶する限り、それ以前は日本ではほぼ見ることができませんでした。日本で流通し、広まったのは、比較的近年になってからのことといえるでしょう。

穂の形状がデザイン要素となるオーナメンタルグラスにおいて、霞のような「実態のない半透明の空気感」という稀有な観賞価値を持っている植物ですね。

ムーレンベルギア・カピラリス
MaryAnne Campbell/Shutterstock.com

しなやかな針状の細長い葉も美しいです。常緑性なので、ベージュ色に乾燥した枯れ穂と共にウィンターガーデンの彩りにもなります。

常緑のグラスですが、長く栽培していると枯れ葉も混ざって、もっさりしてくるので、春先か梅雨時のタイミングで短く刈り戻してやると、株を更新できてきれいに保てます。

ムーレンベルギア・カピラリス‘アルバ’
ムーレンベルギア・カピラリス‘アルバ’。撮影/mosquito garden

赤紫色の穂の基本種が多く流通していますが、2020年時点ではまだレアな白穂の品種 ‘アルバ’ (Muhlenbergia capillaris ‘Alba’)も美しいですよ。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Muhlenbergia capillaris
■ 主な花期:秋
■ 草 丈:90cm程度
■ 耐寒性:強 (ー10℃程度)
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト2
エラグロスティス・スペクタビリス

前出のムーレンベルギアのようなエアリー感がありつつも似て非なる存在感を発揮する、通好みのグラスです。

エラグロスティス・スペクタビリス

上写真右上の、モヤモヤッとしているのが本種エラグロスティス・スペクタビリスの穂。黒葉のサトイモやポンポンマムのボリューム感との対比が鮮烈ですね。ムーレンベルギア・カピラリスよりは草丈が低く、紫色の霞状の穂を展開します。ムーレンベルギアより種子の粒感が大きいので、エアリーというよりはもう少し「空気中に浮かぶ粒子」といった風情が演出できます。

エラグロスティス・スペクタビリス

また、ムーレンベルギアよりも花茎の存在感があり、単体の穂の形状もしっかりしていて、少ない穂の数で見せると、穂のオーナメンタルな形状の美しさの表現にもつながります。ベージュ色に乾いていく種子姿も見どころ。切り花やドライフラワーにして花材として使っても面白い素材です。

暑さ寒さにとても強く栽培しやすいグラスですが、葉にあまり特徴がなく、出穂の季節まではあまり観賞価値がありません。葉の美しい植物と組み合わせて相互補完的に楽しむとよいでしょう。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Eragrostis spectabilis
■ 主な花期:秋
■ 草 丈:50~60cm
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト3
デスカンプシア・セスピトーサ ‘ゴールドタウ’

初夏~夏にかけて、オフホワイトの粒の細かい繊細な穂を展開し、秋には穂の部分が黄みを増しながら冬枯れしていく色彩変化もとても魅力的な常緑性のオーナメンタルグラスです。

デスカンプシア・セスピトーサ
InfoFlowersPlants/Shutterstock.com

デスカンプシア・セスピトーサは、北アメリカを中心に世界の多くの地域に分布しているグラスです。本種 ‘ゴールドタウ’ は、セスピトーサ種の中でも、夏に咲いた穂が秋には黄金色へと移ろい、そして冬に向けてベージュ色に乾いていく姿が美しい品種です。

デスカンプシア・セスピトーサ ‘ゴールドタウ’
Wiert nieuman/Shutterstock.com

ピート・アウドルフ氏の植栽でも定番として登場する品種です。春~初夏にかけて草丈低めに新鮮な明緑色のグラス葉をドーム状に茂らせ、草姿もまとまっていて美しいです。

デスカンプシア・セスピトーサ
初夏のデスカンプシア・セスピトーサ。InfoFlowersPlants/Shutterstock.com

そして初夏~夏にかけて、粒が細かく透視性のあるオフホワイト色の繊細な穂を咲かせます。遠目に霧状に見える点では、前出のムーレンベルギアに近い視覚効果がありますが、本種のほうがしっかりした花茎の存在感があり、種子の粒も大きいため、エアリーというよりは、シャラシャラと風になびいたりキラキラと逆光を反射する粒子感が見どころといえるでしょう。

常緑性のグラスですが、春先に株元まで短く葉を刈り戻すと、春に勢いよく新しい葉が出てきて株をリフレッシュすることができます。

性質が丈夫で栽培は容易ですが、水切れすると葉が一気に枯れあがりやすいです。乾燥させすぎないように注意しましょう。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Deschampsia cespitosa ‘Goldtau’
■ 主な花期:初夏~秋
■ 草 丈:70cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト4
モリニア・カエルレア ‘モーアヘクセ’

垂直性のある花穂の幾何学的な美しさとシュッとした草姿、そして開花から初冬の枯れ姿までの色彩変化を楽しめる、たいへん魅惑的なオーナメンタルグラスです。2020年現在、日本国内ではとても流通が少ないレアな品種です。

モリニア・カエルレア ‘モーアヘクセ’
InfoFlowersPlants/Shutterstock.com

原種のモリニア・カエルレアは、ヨーロッパから西アジア、そして北アフリカにかけて分布するイネ科の植物です。本種‘モーアヘクセ’は、モリニア・カエルレアの亜種カエルレアの、さらに洗練された園芸品種です。

モリニア‘モーアヘクセ’のガーデン
モリニア‘モーアヘクセ’の黒紫がかった垂直性の穂と、デスカンプシアの霞状の穂をコーディネートした植栽例。Sergey V Kalyakin/Shutterstock.com

晩夏から秋にかけて、高さ80cm近くになる垂直性の高い花穂を壮麗に咲かせます。低くアーチ状に茂る涼しげな細葉に対して、まっすぐに近い形でシュッと立つ草姿がたいへん美しいです。

モリニア・カエルレア
Bos11/Shutterstock.com

花穂は咲き始めの緑から紫褐色に変化し、秋には全草が美しい黄橙色に黄葉した後、ベージュ色に冬枯れしていきます。

モリニア・カエルレアは、和名だと「ヌマガヤ」。その名が示すように、乾燥した土よりはやや湿った土壌を好みます。原産地より降水量の多い日本では、通常の庭植えで育てやすい種といえるでしょう。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Molinia caerulea ssp. caerulea ‘Moorhexe’
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈:80cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト5
メリニス・ネルビグルミス ‘サバンナ’

少し水色がかった細いグラス葉も爽やか、夏~晩秋にかけて赤紫~ピンクがかったとても美しい穂をたくさん出し、草姿や葉と穂の色の対比も美しい、南アフリカ原産のオーナメンタルグラスです。

メリニス・ネルビグルミス ‘サバンナ’
chie Hidaka/Shutterstock.com

庭植え用としてはまだやや珍しい品種ですが、切り花の分野では「ルビーグラス」という名で比較的古くから流通しています。咲き始めの赤紫色からピンクみの綿毛状の種子へ、そして種子が熟すにしたがってホワイトベージュ色へとドライになっていく色の移ろいが楽しめます。

メリニス・ネルビグルミス ‘サバンナ’
Supawit Srethbhakdi/Shutterstock.com

耐暑性が強く、夏から晩秋までほぼ休みなく次々と穂が上がるので、咲き始めの赤紫~ピンク~ドライのベージュの穂、そして水色がかった葉色が長期間カラフルに混在し、花の少ない真夏~初秋の時期も庭の見どころとなります。

一方、耐寒性が万全ではなく、寒冷地での植栽には向かないといわれていますが、寒冷地以外では概ね問題なく越冬可能でしょう。

メリニス・ネルビグルミス
Lisbeth Young/Shutterstock.com

草丈も大きくなりすぎず、葉も穂も軽やかな印象。他のグラス類の穂と合わせてもよいですし、ルドベキアやダリアなど、夏~秋のさまざまな花モノともよく似合います。庭植え、切り花と幅広く使え、観賞価値の高い素材です。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Melinis nerviglumis ‘Savannah’
■ 主な花期:夏~秋
■ 草 丈:60cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト6
アンドロポゴン・スコパリウム ‘プレーリーブルース’

春~夏に茂らせる水色みの細葉は涼しげで美しく、秋にはその葉が先端からピンク~オレンジベージュがかって紅葉していく葉色の移ろいもカラーリーフプランツとして楽しめる、季節による変化がたいへん美しい北アメリカ原産のグラスです。

アンドロポゴン・スコパリウム ‘プレーリーブルース’
春から夏に楽しめる美しい水色葉。Michael G McKinne/Shutterstock.com

本種は、春~初秋の長い期間に渡って水色がかった美しい葉を観賞でき、秋の穂は、最初は薄紫みの尖った状態から出始め、ピンクみの羽毛状の種子が展開していきます。

アンドロポゴン・スコパリウム ‘プレーリーブルース’

上写真は乙庭での本種 ‘プレーリーブルース’ の植栽例。アガベやダツラの後方のグラスです。

秋が深まるにつれ、穂・葉ともに先端からピンクみを増し、ピンクからオレンジがかったベージュ色に褪せていきます。特に紅葉の始まりの頃は、株元の水色から頂部のピンクベージュへのグラデーションがとても美しいです。

アンドロポゴン

羽毛状の種子の様子もススキとはまた違う趣があり、本種独特の個性があります。また、ホワイトベージュに乾ききった穂を冬の前半まで残して、霜や氷に覆われるシルエットを楽しむのも一興でしょう。

アンドロポゴン
Nancy J. Ondra/Shutterstock.com

性質も丈夫で育てやすく、穂・葉ともに観賞価値の高いグラスです。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Andropogon scoparium ‘Prairie Blues’ (Schizachyrium scoparium ‘Prairie Blues’)
■ 主な花期:秋
■ 草 丈:90cm程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト7
カラマグロスティス・ブラキトリカ

晩夏~秋にかけて、淡いベージュ~淡いピンク~紫色へと移ろう、フワフワとした量感と透明感を併せ持った美しい穂を展開する、魅力的なオーナメンタルグラスです。日本国内の有名庭園でも、近年目にすることが多くなってきた注目種です。

カラマグロスティス・ブラキトリカ
LianeM/Shutterstock.com

カラマグロスティスというと、ピート・アウドルフ氏が自身のサインのように必ず植栽に使用する細長い針状の穂が特徴的な大型種、カラマグロスティス・アクティフローラ ‘カールフォースター’のイメージをお持ちの方も多いかもしれませんね。

本種ブラキトリカは、草丈もほどほどにおさまり、ボリューム感のあるフワフワした穂が楽しめる種です。

カラマグロスティス・ブラキトリカ
weha/Shutterstock.com

晩夏~秋にかけて、しっかりとした花茎を立ち上げ量感のある穂を束のように展開します。穂の質感と草姿の美しさが相まって、たいへんオーナメンタルな効果を生み出します。

カラマグロスティス・ブラキトリカ
ANGHI/Shutterstock.com

秋以降、ベージュ色に乾いた葉・穂は冬の間も色を保ってよく残るので、しばらく刈り取らずにウィンターガーデン素材として楽しんでもよいでしょう。東アジア原産ということもあり、日本の気候にも合い育てやすいです。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Calamagrostis brachytricha
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈:1m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト8
スティパ・イチュー

春~夏にかけてはスティパ特有の糸のように細い涼しげな葉を低く茂らせ、夏~秋にかけて、高さ1m程度になる立性の花茎を伸ばし、白い羽毛状の美しい穂を展開する、南米原産のオーナメンタルグラスです。

スティパ・イチュー
Ioana Rut/Shutterstock.com

スティパというと、初夏に穂が上がるテヌイッシマが植栽で多く使われていますが、本種イチューは、2020年時点ではまだ日本国内では流通もたいへん少なく、珍しい種です。

本種は、秋に出る穂の美しさはもちろんのこと、スティパらしい糸状の細葉も観賞価値が高く、春~夏の庭でも美しいリーフプランツとして活躍します。

スティパ・イチューの自生地
スティパ・イチューの自生地。Ivan_off/Shutterstock.com

南米のペルーやボリビアなどの乾燥した高地原産の種で、高温多湿を好みません。日本での栽培では、むしろ他の植物があまり好まないような乾燥気味のやせ地に向きます。アガベなどと組み合わせると、新感覚のドライガーデン素材になるでしょう。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Stipa ichu
■ 主な花期:夏~秋
■ 草 丈:1m程度
■ 耐寒性:強
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト9
ペニセタム・アロペクロイデス

陽光をキラキラと乱反射する尾状の穂がとても美しいオーナメンタルグラスです。

スティパ・イチュー
Olha Kononiuk/Shutterstock.com

ペニセタム・アロペクロイデスは、日本にも自生するチカラシバの仲間です。晩夏~秋にしっかりした花茎を立ち上げ、芯のある毛質感の、陽光を受けてキラキラと輝く美しい穂を咲かせます。

スティパ・イチュー
Danny Hummel/Shutterstock.com

この穂が雨後の水滴や冬の朝霜をまとった姿もたいへん絵になります。日本の自生種では黒紫色っぽい穂のものが多いですが、白緑色のものもあり、どちらも美しいです。

スティパ・イチュー
撮影/mosquito garden

日本を含む東アジア原産種なのでとても育てやすいですが、その分、場所に合うとどんどん株が張り、大きく育つ傾向があります。冬場に掘り上げ、株を割ってボリューム調整するとよいでしょう。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Pennisetum alopecuroides
■ 主な花期:晩夏~秋
■ 草 丈:70~80cm程度
■ 耐寒性:強~普通
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

セレクト10
ペニセタム・ビロサム

通称「銀狐」とも呼ばれる、フサフサしたオフホワイト色の毛足の長い尾状穂がとても美しい、主にアフリカを原産とする美麗種です。

ペニセタム・ビロサム
BeSilvestre/Shutterstock.com

ペニセタム・ビロサムは、初夏から秋まで繰り返し、美しい穂を出し続け、新鮮な穂の観賞期間が長いのが特徴です。草姿もふんわりしたドーム状で自然な雰囲気があり、初夏・秋咲きの宿根草類の花ともとてもよく似合い、ガーデン映えします。

ペニセタム・ビロサムの植栽例
Gardens by Design/Shutterstock.com

耐寒性が弱いといわれていますが、寒冷地以外であれば、概ね問題なく地植え栽培できます。

丈夫で育てやすいですが、降雨量の多い日本の栽培環境では、梅雨以降、葉が伸びすぎたり穂が倒れたりして、放任だと夏以降のパフォーマンスが下がることがあります。

梅雨前の最初の穂を楽しんだ後から夏にかけて、全体ではなく部分に分けて数回刈り戻しを行うと、ふんわりした姿を保ちながら、秋の穂を楽しむことができます。

【DATA】
■ イネ科
■ 学 名:Pennisetum villosum
■ 主な花期:初夏~秋
■ 草 丈:50cm程度
■ 耐寒性:普通
■ 耐暑性:強
■ 日 照:日向

秋~初冬の季節感を楽しめる小~中型のオーナメンタルグラス、いかがでしたか。併せて『秋~初冬の庭をダイナミックに演出する大型のオーナメンタルグラス』も参考にしてください!

オーナメンタルグラス

「植物は 私がつくった舞台にあげる役者のようなもの。
自分は ただ舞台にあげるだけ。あとは植物が演じていく。」
(ピート・アウドルフ 植栽家 1944 –)

【小・中型種10選】秋から初冬まで変化を楽しめるオーナメンタルグラス

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