8月下旬から9月は、庭の季節を切り替えるには少し悩ましい時期です。暦の上では秋へ向かっていても、近年は厳しい残暑が長く続きます。一方で、秋雨や台風が増え、蒸れや強風など夏とは少し違った天候への備えも必要になってきます。そんな時期に、庭を一度に「秋仕様」に変える必要はありません。ハンギングバスケットや寄せ植えを得意とするガーデナー、武島由美子さんの玄関周りを例に、景色を「つないでいく」晩夏から初秋のガーデニングを紹介します。
目次
この一枚に、晩夏から秋へつなぐヒントがいっぱい!
まずは、冒頭の写真の武島さんの玄関まわりを少し離れたところから眺めてみましょう。玄関へ続くアプローチには、まだ元気に咲く夏の花。その奥には寄せ植えがあり、壁面やフェンスには秋の訪れを感じさせるリンドウのハンギングも加わっています。そして、写真の手前、花壇の縁をふんわりと彩っているピンクの花は、ペチュニア‘さくらさくら’です。
ここにある植物は、夏から育ててきた植物を生かしながら、手を入れるところには手を入れ、秋の気配を少しずつ加えて育てています。じつはこの一枚の中に、晩夏から秋へ庭をきれいにつなぐヒントがいくつも隠れています。1つずつ見ていきましょう。
コツ1 元気な夏の花は抜かない。まだまだ秋まで楽しめる

夏の間たっぷり花を咲かせた植物は、8月下旬になると枝が長く伸びたり、株姿が乱れたりすることがあります。
武島さんの庭で花壇の縁をやわらかなピンク色に彩っているペチュニア‘さくらさくら’も、夏から秋へつないで楽しめる花の一つ。株が元気なら、長く伸びた枝や花数が減った部分を軽く切り戻し、枯れ葉や傷んだ枝を取り除いて株姿を整えます。気温が落ち着いて新芽が伸びれば、秋に再び美しい見頃を迎えることが期待できます。
晩夏から初秋は秋雨や台風も増える時期。枝葉が混み合った株は風通しが悪くなりやすいため、不要な枝葉を整理しておくことは蒸れを防ぐうえでも役立ちます。ただし、厳しい暑さが続いているときや株が弱っている場合は、強い切り戻しは避けましょう。植物の状態を見ながら整えることが大切です。
切り戻した後は、活力剤や液肥を与えて生育をサポートしてあげましょう。
コツ2 秋らしさを「少しだけ」先取りする

夏の花を生かしながら季節感を変えたいなら、秋を感じさせる植物を一鉢だけ加えてみましょう。武島さんが選んだのは、リンドウ‘アシロブーケ アクア’。淡い青紫色の花がこんもりと咲く姿は、夏の鮮やかな花々とは少し違った、涼やかで落ち着いた雰囲気です。ここでは、いくつもの植物を組み合わせるのではなく、リンドウだけでハンギングを仕立てています。
一種類の植物でも、まとまりのあるボリュームで見せれば十分な存在感。複雑な寄せ植えをつくらなくても、季節の植物を一つ選ぶだけで取り入れられるアイデアです。
しかも玄関のように毎日目にする場所なら、その効果は大きなもの。夏の花々の中に青紫色のリンドウが加わるだけで、景色の中にひと足早く秋がやってきます。庭全体を変えなくても、一鉢から季節は変えられるのです。

こちらは庭に向かう扉の前の小さな花壇。白、淡いピンク、濃いピンクの花色を混ぜたニチニチソウのハンギングバスケットが華やかです。ニチニチソウは暑さに強く、長く花を楽しめる夏の草花。まだ株が元気なら、「秋になったから」という理由だけで抜いてしまう必要はありません。花がらや黄変した葉を取り除くだけでも、夏を越した植物はすっきりと見違えます。

ニチニチソウのハンギングバスケットの下には、ピンクベージュのセロシア(ケイトウ)でほんのり秋らしさをプラス。このセロシア ‘スマートルック ロマンティカ’は、夏の気温が高い時期は色が淡く、晩秋にかけて気温が低くなると色が濃く、葉色も赤味を帯びてシックな雰囲気になっていきます。夏から秋は、そんなふうに色変わりしていく植物たちの表情の変化も楽しめる季節です。

コツ3 花だけに頼らない。「葉」を主役にする

晩夏から初秋の玄関まわりで、もう一つ活用したいのがリーフ類です。武島さんの小さなコーナーでは、花をたくさん咲かせるのではなく、シダ類をはじめ、明るいグリーンや斑入りの葉、赤みを帯びた葉など、さまざまな観葉植物のリーフを組み合わせています。
花がなくても寂しく見えないのは、単に「緑を集めている」わけではないから。葉の色だけでなく、大きさ、形、質感、葉の向きや枝垂れ方まで異なる植物を重ねることで、花に負けないほど豊かな表情が生まれます。
長雨や台風などで花が傷みやすい季節にも、葉そのものを観賞する観葉植物を上手に取り入れると、景色を保ちやすくなります。
また、花が少なくなってくる季節ほど、リーフの存在感は大きくなります。夏から秋へ移る端境期こそ、葉を「脇役」ではなく「主役」として考えてみましょう。

玄関前で、ニチニチソウとともに強い存在感を放っているのが、大きなイモの葉のコロカシア‘ブラックマジック’。小さなニチニチソウの花に対して、まったくスケールの違う大きな葉を合わせることで、景色にメリハリが生まれています。さらに、高さのある葉が加わることで視線が上下に動き、限られた玄関前にも奥行きが感じられるようになります。

そしてもう一つ注目したいのが、鉢を一つずつ独立して考えていないこと。左右のハンギング、大きな葉の寄せ植え、そして背景となる玄関扉まで含めて眺めると、すべてが1つのコーディネートになっています。
「この鉢をどう植えるか」だけでなく、ちょっと視点を引いて「ここから見える景色をどうつくるか」。それが小さなスペースを豊かに見せるための大切な視点です。
コツ5 置く場所がなくなったら「壁」を庭にする

玄関周りのような小さなスペースでは、植物を増やしたくても、鉢を置ける場所には限界があります。そんなとき、武島さんが活用しているのが壁やフェンスなどの垂直面です。
ハンギングバスケットなら、床面積をほとんど使わずに植物を飾ることができます。しかも目線の高さに花や葉が加わることで、植物が足元だけに並んでいる場合とはまったく違う立体感が生まれます。
「何平方メートルあるか」という床の広さだけで考えず、上・中・下まで1つの空間として考えると、もう鉢を置くところがない」と思っていた場所にも、新しいガーデニングスペースが見つかります。
「狭いからできない」を、「ここにも飾れる」に変える
玄関前に1鉢。壁面に1つのハンギング。奥行きのない小さな花壇。家の脇に残った、ほんのわずかなスペース。武島さんの庭を見ていると、ガーデニングに必要なのは必ずしも広い庭ではないことに気づきます。むしろ、家のまわりにある小さな空間を見つけて、「ここなら何ができるだろう」と考える。その積み重ねが、家全体を花のある景色へと変えていきます。
ハンギングバスケットや寄せ植え、玄関まわり、奥行きのない花壇、壁面、つる植物——。武島由美子さんが長年培ってきた、限られたスペースを生かして花のある暮らしを楽しむアイデアは、今秋刊行予定の書籍でも豊富な実例とともに詳しくご紹介します。
広い庭がなくても、花のある暮らしは作れる。
この秋はまず、毎日通る玄関先を眺めて、「ここにも何かできるかな?」と考えるところから始めてみませんか。
購入者限定の動画レッスン付き! 初めてでも迷わず作れる『ハンギング&寄せ植え』バイブルが予約開始

『小さな空間を生かす立体ガーデニング 玄関から始める花のある暮らし』
著者:ガーデンストーリー
定価:2,200円(本体2,000円+税)
発売:2026年10月5日
半径:B5判 ページ数:160ページ
発行:KADOKAWA
ISBN-10:4049027313
ISBN-13:978-4049027310
Amazon特典「ハンギング設計シート」
作る前に花苗の種類や色、植える位置を整理できる「ハンギング設計シート」。バスケットの図に花の配置を書き込みながら、完成イメージを組み立てられます。必要な苗や資材を記入できる買い物リスト付きで、園芸店での苗選びから植え込みまでをサポート。自分だけのハンギング作りに役立つ、実用的な購入者限定特典です。
Rakuten特典「初めてでも作れるハンギング動画」
購入者限定の動画レッスンでは、ハンギングバスケット作りのポイントを実演します。花苗を選ぶときの見方や植え込む順番、全体を丸く美しく仕上げるコツなど、本の写真だけでは伝わりにくい手の動きや苗の扱い方を分かりやすく解説。難しそうに見えるハンギングバスケットを、初めての方にも気軽に楽しんでいただける特別レッスンです。
『小さな空間を生かす立体ガーデニング 玄関から始める花のある暮らし』もくじ

Chapter1
「小さな空間を華やかに彩るハンギング」
地面がなくても、花を咲かせられる「ハンギング」基礎知識
ハンギングの魅力 ①〜⑤
壁に、フェンスに、椅子の背に。飾り方いろいろ
ハンギングバスケットの基本の作り方
数種類を組み合わせて作るハンギング〈動画つき〉
ハンギング作りに役立つツール
Chapter2
「ハンギングと寄せ植えを重ねて景色を作る」
地面がなくても、花景色を作れる「寄せ植え」
武島さんの寄せ植えセオリー
寄せ植えの作り方
初心者でもうまくいくリースの寄せ植え
Chapter3
「小さな花壇を生かして景色をより立体的に」
奥行きのない花壇を立体的に見せる5つの工夫
つるバラの誘引と剪定
春夏秋冬の玄関の花風景
Chapter4
「小さなコーナーも見違える季節のしつらえ」
春 小さな芽吹きを集めて
夏 涼やかな花のコーナー
秋 ハロウィンの演出
冬 小さなクリスマスのしつらえ
Chapter5
「小さな工夫を重ねて広がる庭景色」
広い庭景色を作る6つの視点
アーチと小径 / 小径と花壇 / 色や植栽で場面を分ける
くつろぐ居場所を作る / 小径の先へ視線を導く
日陰にも見せ場を作る / 端境期を彩る
STORY いつも花のあるほうへ心を戻して
STYLE 動きやすくて、気分が上がるガーデンファッション
TOOLS 機能的でおしゃれなガーデンツール
Chapter6
「覚えておきたい植物の基本の手入れ」
様子を見る / 掃除 / 花がら摘み / 水やり / 切り戻し / 植えどき・抜きどき
ハンギング・寄せ植えにおすすめの花図鑑91種
WORKS 花のある暮らしを育てる場所 武島由美子さんと Anne’s Garden
Credit
記事協力 / 武島由美子

愛知県Anne’s Garden主宰。一般社団法人日本ハンギングバスケット協会理事。日本フラワーデザイナー協会(NFD)1級フラワーデザイナー。個人邸や店舗、ショーガーデンなどのガーデンプランニングや植栽管理のほか、コンテナガーデンスクールや日本ハンギングバスケット協会認定試験スクール、フラワーアレンジメントスクールなど複数の教室を主催。地植えの庭からコンテナ、ハンギング、フラワーアレンジメントまで、屋内外あらゆるシーンを花で彩る美しい暮らしを提案。新刊『小さな空間を生かす立体ガーデニング 玄関から始める花のある暮らし』(発行:KADOKAWA)は、2026年10月5日発売(予約受付中)。
- リンク
写真&文 / 3and garden

スリー・アンド・ガーデン/ガーデニングに精通した女性編集者で構成する編集プロダクション。ガーデニング・植物そのものの魅力に加え、女性ならではの視点で花・緑に関連するあらゆる暮らしの楽しみを取材し紹介。「3and garden」の3は植物が健やかに育つために必要な「光」「水」「土」。 2026年10月5日発売の書籍第3弾『小さな空間を生かす立体ガーデニング 玄関から始める花のある暮らし』(発行/KADOKAWA)予約受付中!
- リンク
記事をシェアする
季節のおすすめアイテム
ホースガイド ジョウロ -GARDEN STORY Series-
庭にホースを伸ばして水まきをする際、ホースが大切な植物をなぎ倒してしまうのを防ぎます。地面にスッと差し込むだけで、花壇の縁やアプローチ横など、ホースが通るルートに手軽に設置できます。ジョウロのモチーフが庭の風景によくマッチ!
新着記事
-
ガーデン&ショップ

【盛夏の花咲く8月】宿根草等を使用する都立公園の花壇コンテスト「第4回 東京パークガーデンアワード」夢…
宿根草等を生かした花壇デザインを競うコンテストとして注目されている「東京パークガーデンアワード」。第4回コンテストが、都立夢の島公園(東京都江東区)を舞台に、スタートしています。2025年12月、5人の入賞者…
-
イベント・ニュース

購入者限定の動画レッスン付き!初めてでも迷わず作れる『ハンギング&寄せ植え』バイブルが予約開始
狭い玄関やベランダでも、空間を上手に生かせば豊かで華やかな花景色を作ることができます。 Webマガジン「ガーデンストーリー」の新刊『小さな空間を生かす立体ガーデニング 玄関から始める花のある暮らし』が、8…
-
寄せ植え・花壇

8月下旬はまだ全部植え替えなくてOK! 晩夏から秋へ、玄関先を素敵に整える5つのコツ
8月下旬から9月は、庭の季節を切り替えるには少し悩ましい時期です。暦の上では秋へ向かっていても、近年は厳しい残暑が長く続きます。一方で、秋雨や台風が増え、蒸れや強風など夏とは少し違った天候への備えも必…


























