青い空と明るい日差し、そして豊かな文化が旅行先としても人気の地中海地域ですが、しばらくは旅することは難しそう。そこで、自宅の庭やベランダに、地中海の雰囲気を味わえるガーデンコーナーを作ってみませんか? ドイツで暮らすガーデナー、エルフリーデ・フジ=ツェルナーさんに、地中海風ガーデンにおすすめの植物3種と、演出のコツを教えていただきます。

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冬の終わりと春の訪れ

プラムの開花
ESTELLE R/Shutterstock.com

ドイツでは長く厳しい冬がついに終わり、春特有の、5分間陽が射したかと思えば30分雪が降るような日が続いています。

我が家のガーデンの新エリアでは、ムスカリとチューリップが咲き始めました。両親の家の前では、黄色いプラムの大木が満開を迎えていて、その横を通ろうとすると、この春最初の満開の花々を興奮気味に楽しむ、さまざまな蜂たちの羽音が忙しなく響いています。ちなみに、昨年はこの木はほとんど実をつけませんでした。今年はその分、たくさんの実をつけてくれるのではないかと期待しています。例年、実りが少ない年の翌年は、食べ切れないほど実が生るものなのです。生り年には隣人や友人たちにたっぷりお裾分けしても、まだまだ余るので、数え切れないほどの瓶いっぱいにジャムを作るのが定番の風景。7月の2週間にわたる収穫期の終盤になっても取り切れず、たくさんの実が鳥や虫たちへのプレゼントとして残ることになります。

ドイツ人の抱く地中海への憧れ

地中海風テラス
© StockFood / Adsbøl, Mikkel

冬が長く寒さも厳しいドイツでは、冬の間、暖かく明るいところに旅行に行くのが大人気。特に人気のある地域は、南イタリア、南フランス、カナリー諸島、そしてもちろん地中海沿岸です。青く澄んだ空に、20〜30℃ほどの過ごしやすい気候、海、豊かな食、そして優しいそよ風の中で過ごすリラックスした日々は、まるで想像上の楽園のようです。

例えばスペインの島、マヨルカ島は、ドイツ人にとても人気のある旅行先で、マヨルカ島に別荘を持っている人も多いですし、リタイア後には11〜3月まで、冬の間をまるまる彼の地で過ごす人もいます。4月になると、こうしたマヨルカの冬の住民たちはドイツに戻り、自宅や庭の手入れをしなければなりません。他にも、イビサやコルシカ、サルディーニャ、シチリアをはじめとして、さまざまな島があります。近場の旅行先としてコロナ前までは安く行けたので、これらの島々とドイツを頻繁に行き来している旅行者もいました。

マデイラ島
マデイラ島の港町。Balate Dorin/Shutterstock.com

私がいつか訪れたい夢の島は、ガーデンアイランドとも呼ばれるマデイラ島。ポルトガルにある素敵な島です。一度旅行会社に詳細な情報を問い合わせたことがあるのですが、3泊4日の予定だと伝えると、案内の女性は驚いた様子で、なんでたったの3泊なのか理解し難い様子でした! というのも、通常の旅程は1週間(当時は申し込める一番短い期間でした)から3週間。3泊4日という短期間のプランはなかったため、残念ながら島に行くことはできませんでした。もう15年ほども前の話です。それ以後は訪れるチャンスがなく、やっと時間に余裕ができた今は、新型コロナウイルスとその他の状況により実現が難しくなってしまいました。

自宅に地中海風ガーデンをつくろう!

地中海風ガーデン
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

もちろん、全ての人が実際に地中海で過ごせる機会や時間、資産があるわけではありません。そこで、自宅のガーデンに地中海風の雰囲気をプラスし、リゾート地を夢見てみてはいかがでしょうか? 自宅に庭がないならば、小さなベランダやテラス、バルコニーでもいいですよ。お金をかけなくても、相応しい植物や小物を正しく選び、そしてアイデア次第で、「地中海地域の島」の雰囲気を作り上げることができます。

地中海風ガーデンの演出におすすめの植物3種

まずは、地中海風の雰囲気を演出してくれる植物を選びましょう。雰囲気作りに役立つ植物はたくさんありますが、ここでは地中海らしい典型的な植物で、かつ日本でも手に入れやすい、私のおすすめの植物を3つご紹介します。

キョウチクトウ

キョウチクトウ
Little stocker/Shutterstock.com

地中海といえば、まず私の頭に思い浮かぶのが、キョウチクトウ。とても丈夫で、東京や湘南エリアでも育てやすい木です。湘南にある私の庭には、4m以上の高さに育ったものがあり、夏には美しく花開くとともに、素敵な木陰を作ってくれます。地植えにしていますが、砂地でも特に水やりをせずともどんどん育っていきます。

花の色は幅広く、ソフトピンクから濃いめのピンク、赤のバリエーション、サーモンピンク、優しい黄色に白色など。最も一般的な色はピンク系統です。葉は肉質で、濃い緑の細葉。選定の際に出る枝葉は相当量になるので、正直なところ処分するのに大変な時もあります。全草が有毒で、切り口からはベタベタする白い樹液が流れ出てくるので、手入れをする際はゴム手袋が欠かせません。

キョウチクトウ
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

最低気温が低いドイツでは、キョウチクトウの仲間を地植えにすることはできません。それもあって、私のおすすめはコンテナやポットなど鉢植えで育てること。サイズや成長スピードも抑制することができます。それぞれの場所に応じて、植物のサイズをコントロールすることは、庭全体の調和を保ち、過ごしやすい環境を整える上でも大切です。小さめの株ならバルコニーに、大きなものは庭に置くといいですね。

キョウチクトウは、刈り込んでスタンダード仕立てやトピアリーにするのも人気です。中央の主幹を作り、枝は、例えば50~70cmくらいの高さから上だけを残します。あまりスペースを取らず、コーナーに置くのにぴったり。それぞれの庭のスペースに合わせ、お好みで剪定しましょう。

キョウチクトウ
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

トピアリーやスタンダード仕立ての植物は、鉢選びも重要です。形やサイズ、色などを吟味して選びましょう。

人気が高いのは、赤土色やグレー、ベージュなどのテラコッタの鉢。丸型やスクエア型などがあり、シンプルなものからオーナメンタルなものまで、いろいろ揃っています。お好みに合わせて選びましょう。一番大切なのは、統一感を持たせること。コンテナごとにそのスタイルや色、形などがバラバラだと、全体の調和が崩れ、地中海風の雰囲気を作るのがとても難しくなります。ハイヒールと雨合羽を合わせたり、レインブーツにドレスを合わせるように、どこかちぐはぐな感じになってしまうのです。

テラコッタ製の鉢のほか、グラスファイバーやプラスチックなどの素敵な鉢もよく出回っています。これらの鉢は、土や植物を入れたらほとんど動かせないような重たいテラコッタに比べ、より軽量で持ち運びやすく、丈夫で長持ちします。予算とも相談しながら、好みの鉢を選ぶとよいでしょう。心に留めておいてほしいのは「Less is more」、引き算の美学です。たくさんの鉢を並べるよりも、よく考え抜かれて手入れの行き届いた、フォーカルポイントになる鉢が一つあるほうが、庭の完成度は上がるものですよ。

オリーブ

テラスのオリーブ
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

テラスの日当たりのよい場所には、ぜひオリーブの木を。育てやすくて丈夫な木で、初夏には小さな黄色の花が咲き、受粉すれば実もなります。オリーブは自然樹形またはスタンダード仕立てにするのが一般的。銀色がかった細葉は美しく、一年中楽しめます。枝を切り戻すだけで剪定も簡単です。先にご紹介したキョウチクトウに比べ、オリーブは成長が緩やかで、あまりスペースを必要としません。

オリーブといえば、夏に実る緑や黒の果実も素敵な贈り物。

ドイツではオリーブオイルブームが長く続いていて、さまざまな種類のものが店頭に並んでいます。お店には広いオリーブオイルコーナーがありますが、時に高品質のエクストラバージンやバージンのオイルに低品質のものを混ぜてかさ増ししたものが売られていることも。高品質のオリーブオイルは、それに見合った値段で販売されているものです。

柑橘類

柑橘類
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

「レモンの花咲くところ」のイメージは、イタリア、スペイン、ポルトガル、そして地中海地域。このように、地中海風ガーデンには柑橘類が欠かせません。

レモンやライム、キンカン、グレープフルーツ、クレメンタイン、タンジェリン(ミカンの仲間)、それに可愛いカラマンシー。有名どころを少し挙げただけですが、それでもたくさんの種類があります。柑橘類は、花から果実へと移り変わる様子を見るのも楽しいものです。鉢植えで育てるなら、安定した大きめのポットに入れると風が強い日も安心です。素朴な雰囲気のバスケットや木製のコンテナに入れて、ウッドテラスなどと合わせても素敵ですよ。

レモンの鉢植え
nadtochiy/Shutterstock.com

は柑橘類の豊富な地域。神奈川・湘南の家のご近所さんの裏庭には、古いユズの木が植えてありました。半日しか日の当たらない場所でしたが、毎年、周囲の花がなくなる季節に、明るい黄色の実を豊かに実らせていました。熱海や伊豆の海岸線をドライブしたときも、右手に見える丘にはミカンを中心にした柑橘の木がたくさん植えられていました。

このような風景を見るたびに、日本では庭などで柑橘を育てる人が少ないのはなぜだろうと不思議に思います。ドイツではきっと庭の目玉スポットになることでしょう。なにせ、ドイツで柑橘類を育てたかったら、鉢植えにして、5月には庭に置き、10月には温室やコンサバトリーに戻さなくてはならないくらい、手のかかる貴重な果樹なのですから。

ユズ
徳島のユズの木。Contrail/Shutterstock.com

そんな日本の柑橘の中でも、ユズは私のお気に入りの一つで、ドイツでもじわじわと人気が出つつあります。ユズの姿や香り、味わいはとてもユニークで、私にとっては日本を象徴する存在です。地中海ガーデンを再現する場合に、地元の植物を使うのもいいですよ。手のかかるレモンの代わりに、同じ柑橘であるユズを植えれば手入れが簡単。日本にはたくさんの素晴らしい柑橘類があるので、わざわざ輸入しなくても大丈夫。Buy local , think globalでいきましょう!

柑橘類のトゲは鋭いので、手入れの際は注意が必要です。でも美しいバラにもトゲがあるように、柑橘もとても魅力的な植物ですし、香りもまた素晴らしいものです。手軽にオレンジやレモンの香りを楽しむなら、エッセンシャルオイルとオイルランプでもOK。香りを通して異国の雰囲気を感じることができ、場所もほとんど取りません。

地中海風ガーデンづくりのコツ

ガーデニングを楽しむためには、テーマに合った場所選びが大切です。地中海原産の植物を元気に育てるポイントは、日当たり。そこで、地中海風ガーデンをつくるなら、風が直接当たらず日当たりのよい場所を選ぶようにしましょう。強風や台風のあとに、傷んだりひっくり返った植物を処分するのは楽しいことではありませんからね。時にバックヤードや玄関などのワンコーナーが、イタリアンガーデンとして活躍してくれることもあります。

もう一つ大切なことは、周囲の色と調和させること。例えば、家の色がグレーやもっと暗い色合いであれば、鮮やかな赤やピンクなどビビッドな色が映えますし、暗い色調のウッドデッキには、優しい銀葉のオリーブがよく似合います。

地中海風ガーデンの演出要素

レモンの鉢植え
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

地中海のガーデンでは、長い乾季のため芝生はあまり用いられず、代わりに砂利やペイビングが登場します。そこで、地中海風に演出したい一角にマルチングシートを敷いて、その上に明るく素敵な色の砂利を入れてみましょう。そこにご紹介したおすすめの植物、3種のどれかを入れたテラコッタのポットを一つだけ置けば、地中海の風を感じるコーナーに早変わり。隣には、折り畳みのできる椅子や小さなテーブルを置いてもいいですね。

可能であれば、噴水などの水のアイテムを置くのもいいアイデアです。実現するのは難しいですが、水を使った演出は、南ヨーロッパではガーデンでよく見られるスタイルです。イタリアやギリシャの暑い日と、日本の暑い夏の違いは、その湿度。スペインやギリシャに旅行に行ったときには、乾燥した熱気に驚いた記憶があります。昼間はほとんど耐えられないほどで、反面夜は過ごしやすい気候でした。こうした地域のガーデンでは、噴水の近くは本当に気持ちがよかったですよ。

イタリア・チボリ公園
水の演出が美しい、有名なイタリア・チボリ公園のテラス。Marco Rubino/Shutterstock.com

一方、湿気の多い日本では、ほとんどの人はエアコンの効いた室内に避難してしまいますね! したがって、植物やフォーカルポイントになるようなアイテムは、家や部屋の中からもよく見えるような場所に置くと、実際の生活でより楽しむことができます。トピアリーや鉢植えの木も窓から見える場所に置きましょう。また、南ヨーロッパに比べ、日中の時間がかなり短い日本では、ガーデンに小さなスポットライトを入れて暗がりを照らすのもよいアイデアです。

暮らしの中で楽しむガーデン

地中海風ガーデン
Friedrich Strauss Gartenbildagentur / Strauss, Friedrich

地中海地域では、人々は夜遅くまで屋外で座って、一緒に食事やお酒を楽しみます。でも、今に至るまで、日本で家族と一緒に日が暮れてからバルコニーで過ごすよう説得できたことがありません。夜でも蒸し暑くて汗をかきますし、蚊の襲撃もありますからね。キャンドルライトでの食事も素敵なのですが、いつ地震が来るか分からない中で、燃えやすい木造の家でキャンドルを使うのはためらわれるため、こちらも却下です。

私が暮らすドイツの村では、パンデミックの前までは、日が暮れてから外でバーベキューをしたり、焚火を起こして暖をとったり、友達と集まって話をしたりということはよくありました。今は家からはなかなか出られず、家族以外の人とは一度に一人しか会えません。イタリアなどに旅行に行くことも難しいので、オンラインの料理イベントに申し込みをする人も増えています。このようなイベントでは、参加者の家には事前に材料が届き、それからオンライン上で集まって、おいしい食事を作って一緒に食べながら、ほかの人とバーチャルで会うのを楽しむのです。

地中海風ガーデンの雰囲気を盛り上げるためには、テーブルとイスを出して、オリーブの実とモッツァレラチーズ、トマトのサラダなど、イタリア料理を食べるのもいいですね。赤と白のテーブルクロスに、イタリア風のナプキンでテーブルセッティングをし、イタリアワインと前菜を並べて、自宅で地中海気分を楽しみましょう!

 

地中海風ガーデンをつくってみたくなった方、ぜひパンデミック後には、本場の空気を感じ、異なる文化を味わうために、地中海や周辺地域への旅行を計画してみてください。先入観にとらわれずにいろいろなものを見ることは、ガーデニングにも人生にも大きなプラスになりますよ。

Credit

ストーリー/Elfriede Fuji-Zellner
ガーデナー。南ドイツ、バイエルン出身。幼い頃から豊かな自然や動物に囲まれて育つ。プロのガーデナーを志してドイツで“Technician in Horticulture(園芸技術者)”の学位を取得。ベルギー、スイス、アメリカ、日本など、各国で経験を積む。日本原産の植物や日本庭園の魅力に惹かれて20年以上前に日本に移り住み、現在は神奈川県にて暮らしている。ガーデニングや植物、自然を通じたコミュニケーションが大好きで、子供向けにガーデニングワークショップやスクールガーデンサークルなどで活動中。

Photo/ Friedrich Strauss Gartenbildagentur/Stockfood

取材/3and garden 

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