「植物が増えたというより、好きなものと暮らす時間が増えた」―50株を超えるアガベと暮らす俳優・森田剛。多肉植物との出会いから、独自の育て方、そして1株に込める思いまで、普段はなかなか聞けない森田剛の植物愛に迫る、GARDEN STORYの連載「多肉植物狂い」の特別企画。
目次
-Prologue-

舞台上でも、カメラ前でも、自身の感覚と丁寧に向き合いながら表現を深めてきた俳優にとって、植物と過ごす時間はどんな意味を持つのか。
そして、そこで育まれる感覚は、彼の表現とどう交わっていくのか。
この疑問から、連載「多肉植物狂い」の特別企画が生まれた。
ONE PLANT, ONE LOVE。
植物を愛する表現者と、その人が紡ぐ、思い入れ深い植物とのSTORY。
その表現者とは、俳優・森田剛。
多肉植物を愛し、芸能界屈指のアガベ好きとも知られる森田さんに、植物との出会いから、日々の育て方、そして1株1株に向ける思いまで、じっくりと話を聞いた。
普段、植物について語る機会の少ない彼がこの日、お気に入りの植物を前にどんな言葉を口にしたのか。
その声に耳を傾けながら、植物と向き合う彼の静かな時間を追っていく。
Beginning ─ 植物とのはじまり

思えばずっとサボテンのことが気になっていた
森田剛と植物の付き合いは、アガベから始まったわけではない。
その原点をたどると、記憶は小学生の頃まで遡る。
「小学生くらいの頃かな。登下校のときに、道端に生えてる草花や、公園の整備された空間とかに植えられた植物なんかにも、興味がありましたね」
そんな身近なものに、ふと好奇心が湧いていた。
やがて中学生になるとそれは形となり、サボテンを育て始める。
ただ、そのサボテンは長く手元に残ることにはならなかった。
「中学生くらいのときにサボテンを栽培していたのですが、トゲのある植物を部屋に置いておくのは縁起が悪い、と言われて、『うわ、怖っ!』ってなって、すぐ手放したんですよ(笑)」
今となっては笑い話だが、当時は素直に怖かった。
それでも、サボテンを手放したあとも植物への興味が消えたわけではなかった。
「でも思えばずっとサボテンのことが気になっていたんですよね」
一度離れた植物が、再び気になり始める。
大人になってからは家に観葉植物を置くようになり、もう一度サボテンを育ててみようと思うようになった。
けれど、その先で森田さんを待っていたのは、アガベという摩訶不思議な多肉植物だった。
ひとつの子株から始まった、多肉植物との関係
森田剛といえば、芸能界屈指のアガベ好きとしても知られている。
そんな彼にアガベとの出会いについて尋ねると、彼の記憶に残っているのは、ひとつの子株だった。
「初めてのアガベは、数年前に知り合いの方からいただいたものだったということは記憶しています」
親株の脇から生まれた子株。
「子供(子株)ができたからあげる〜」という、何気ないやりとりから、その1株は森田さんのもとへやってきた。
「思えばそこが、アガベをはじめとした多肉植物との本格的な関わりのスタートだったような気がしますね。それがきっかけになって、ほかの多肉植物や塊根植物を収集し始めるのに、そう時間はかからなかったように思います」
ひとつのアガベが、次の植物への興味を連れてくる。
そして気がつけば、植物はひとつ、またひとつと増えていった。
ただここで面白いのは、森田さんが最初から「アガベを集めよう」と決めていたわけではないことだ。
植物に興味を持った少年時代。
一度は手放してしまったサボテン。
そして誰かから譲り受けた1株のアガベ。
振り返れば、現在の森田剛の「多肉植物狂い」は、そんな小さなきっかけの連続から始まっていた。
そして、その興味はやがて、自分の手元で植物を育てるだけではなく、植物を通じて人と出会うことへと広がっていく。
その先にあったのが、台湾だった。
Taiwan ─ アガベがつないだ人と場所

台湾で出会ったC.J.PLANTS
急速にアガベに惹かれていった森田さんは、次第にその一大生産地である台湾に興味を持つようになる。
転機が訪れたのは2024年。TBSの番組『ララLIFE』のゲストとして、台湾でもその名を知られたアガベ専門のナーサリー(植物の生産・販売店)、「C.J.PLANTS」を訪ねたときのこと。
そこで出会ったのが、台湾アガベ界の重鎮、C.J.PLANTS代表C.J.さん。
「台湾のC.J.PLANTSに行ったとき、代表のC.J.さんの植物にかける情熱にすごく共感しました。ナーサリーで過ごした時間は今でも忘れられないですね」
テレビの企画で訪れた1軒のナーサリー。
けれど、そこで過ごした時間は森田さんの中に、植物をめぐる新しい景色を見せてくれた。
C.J.さん自身がアガベ愛に溢れる方だったこと、そしてナーサリーに流れる空気感。
植物を育て、植物を愛する人のそばにいる時間そのものが、森田さんには心地よかったという。
そしてその交流は、ナーサリーの外でも続く。
「取材の後も、C.J.さんには台湾を案内してもらったり、一緒に食事をしたり、ご家族を紹介していただいたり、すべての縁にもう感謝しかないですね」
アガベと向き合う時間は、ひとり静かに鉢を眺め、その成長を見つめる時間でもある。
けれど一方で、海を越えて人と出会い、思いがけない縁を引き寄せてくれることもある。
森田さんにとって台湾は、そんな植物がつないだ縁を実感する場所になった。
Collection ─ 森田剛の場合

地方公演の先で出会うアガベ
アガベに対する興味が深くなっていくにつれ、森田さんのコレクションは少しずつ増えていった。
そのきっかけのひとつが、地方公演だった。
「地方公演先では、その土地でしか出会えないものとかもあったりするんで、時間があれば園芸店を探して、フラっと立ち寄ったりします」
仕事で訪れた土地で、空いた時間を見つけては園芸店を探す。
旅先で名所を巡るように、植物を探す。
そんな時間も、森田さんにとっては楽しみのひとつになっていった。
「先日行った福井や、その前に行った広島も良かったですね。店主が変な人で(笑)」
店や土地が変われば、出会う人も、出会う株もそれぞれに個性がある。中にはその個性が際立つ店主もいる。
そして、そこで偶然出会った1株が、また新しい植物への興味を連れてくる。
「やっぱり現物を見て選ぶのが好きなんですよね。だから実店舗以外では買わないです」
画面の中で眺めるのではなく、実際に雰囲気を感じて、そしてインスピレーションで選ぶ。
その積み重ねが、少しずつコレクションという形になっていった。
気がつけば50株を超えたアガベ
そうして増えていったアガベは、いつしか・・・
「50までは数えたんですよ。でも、それ以上はもう数えてないですね(笑)」
数を増やすことそのものが目的だったわけではない。
気になる株に出会えば連れて帰る。
育てているうちに、また別の種類が気になる。
そんなことを繰り返しているうちに、気がつけばこれだけの数になっていた。
ちなみに、アガベにはさまざまな種類があり、園芸の世界では、鉢植えでコンパクトな姿と鋸歯(きょし)と呼ばれるトゲの造形美を楽しむ「チタノタ系タイプ」から、地植えで大きく育て、ダイナミックな姿を楽しむ、アガベ・アメリカーナに代表される「ドライ&ロックガーデンタイプ」まで、その楽しみ方は幅広い。

「地植えのもありますよ。ロックガーデン系はダイナミックなところが魅力的ですが、やはりチタノタ系のものが断然多いですね」
森田さんのコレクションの中心にあるのは、やはりチタノタ系のアガベだ。
ただ、50株を超えるアガベを育てながらも、森田さんにとっては「集めた」という感覚とは少し違うようだ。
「植物が増えていくというより、好きなものと暮らす時間が増えていった感じですね」
“コレクション”というより、生活をともにする“家族”が増えた。そんな感じなのだろう。
それを物語るかのように、森田さんは言う。
「コレクションをおおっぴらにするのは好きじゃないんです。親しい友人などが家に来て、気に入った株が子株を吹いていたら切り取ってプレゼントする。そんな関わり合い方が好きなんです」
そこに、”ひけらかさず静かに分かち合う”という、森田剛の園芸哲学が垣間見えたように思う。
One Love ─ ひと目惚れした1鉢

「一番好きな株」は、選べなかった
ならば、その50株の中から「今一番好きな株」を選んでもらおう。
今回の企画では、出演者自身が「今、最も愛する1鉢=推し株」を「One Love」と呼ぶことにしている。
ところがいざ尋ねてみると、答えは意外なものだった。
「いや、じつは申し訳ないんですが、一番お気に入りの株を、とのことでしたが、すっげー迷ったんですよ。というか、一番のお気に入り、というのが選べなかったんで。なのでとりあえず、今日一番目についた株を持ってきた感じです」
1株を選ぶことができない。
それだけ、それぞれの株に思い入れがあるということなのだろう。
それはそうだ、自分に置き換えたら、私だっていくつもの株から1つを選ぶのは無理だ。
けれど、話を聞いていくうちに、森田さんが今回の「One Love」として選んだ1株との縁(えにし)が、少しずつ見えてきた。
行列に並んで買った、選ばれし株
下の写真が、本日森田さんに持参していただいた、”今日一番目についた”という株。

この株と出会ったのは、ある植物イベントだったという。
当然ながら筆者は、その植物イベントにはトークゲストか何かで呼ばれたのかと思っていたのだが・・・。
「いや、普通にお客として友達と行きましたよ。なんかすごい行列で、自分もそこに並んで買った、って感じです」
森田剛、植物イベントで行列に並ぶ!?
特別なルートがあったわけでもない。
誰かから譲り受けた株でも、海外から取り寄せた特別な株でもない。
森田さん自身が、そのイベントに足を運び、購入者の列に並んで手に入れたものだ。
ちなみに、列に並んでいるときの周囲の反応についても訊いてみた。
「みんな順番が来るまで、ドキドキですからね(笑)。オレなんか見てる場合じゃないって! オレも順番きたら何買おうかなってドキドキでしたし」
植物を求める1人の客として列に並ぶ森田剛。
そんなふうに現れた森田さんを、店主はどう思ったのだろう。ちょっと想像してしまう。
人気の株を手に入れることそのものが目的なのではない。
自分で足を運び、実物を見て、その場で惹かれたものを選ぶ。
今回の1株も、そんなふうに森田さんのもとへやってきた。
そして、今日の取材に持参する株に選ばれた。
こうして選ばれた株の品種名と、そもそも売り場でなぜこの株に惹かれたのか、その理由を尋ねると、その答えも意外なものだった。
「名前ですが、あまり札とか見ないで、おっ、いいな! と思ったものをそのまま買うことが多いので、特に品種名は気にしないというか・・・だからこの株もなんていう名前か分からないんですよ(笑)
最も惹かれたのは、完成された美しさではなかったから、かな」
筆者もそうだが、一般的にコレクターという人種は、最初からほしい品種に狙いを定め、その中から予算に応じた株を探すものだ。
けれど森田さんは、名前やレア度よりも、出会った瞬間の印象を優先する。
その買い方にも、森田さんの植物との向き合い方が表れているように思う。
「将来、どんなふうになっていくんだろう」
森田さんがこの株に感じた魅力は、今の姿だけではない。
むしろ、これからどう変わっていくのか。
その余白に惹かれたのだという。
「将来、どんなふうになっていくんだろうっていうのが、すごく楽しみなんですよね」
アガベは、育てる環境や時間によって姿を変えていく。
葉が伸び、開き、また次の葉が生まれる。
だから今の姿が完成形ではない。
「ひと目惚れした」のは、今そこにある姿だけではなく、まだ見えてはいない未来まで含めて、だったのかもしれない。
一番好きな株を選ぶことはできなかった。
けれど、今回「One Love」として選ばれた1株には、森田さんが植物と向き合うときの感覚が、よく表れている。
完成されたものを所有するのではなく、これから変わっていく時間を一緒に楽しむ。
「だからこそ、アガベは面白いんですよ」
未来の姿が見えないからこそ、面白いのだ。
Natural ─ 「健康的で自由にだらしなく」

育成ライトを使わないという選択
森田剛流アガベの育て方は、いわゆる「アガベ沼落ち」の人々の栽培イメージとは少し違う。
植物棚で育成ライトを駆使して理想の形へと追い込む。
そんな方法もあるなかで、森田さんはあえて育成ライトを使わない。
「育成ライトはね、やってた時期もあるんですが、・・・なんか違うな、って思って。
もちろん、育成ライトを否定しているのではなく、今は使わずに”自然光のみで育てる”ということにこだわっているんですよ」
ここにも、森田さんの植物との距離感が表れている。
人の手でコントロールするのではなく、できる限り植物自身の力に任せる。
自然光が輝きを増すと同時にやってくる夏の暑ささえも、成長期のアガベにとっては自然の恵みのひとつなのだ。
そしてそれは、次のような言葉にもつながっていく。
作り込むより、自然に
「作り込むより、自然な感じのほうが好きなんですよね」
チタノタ系のアガベを育てていると、より個性的な鋸歯や美しい葉姿、整ったフォルムを目指したくなる。
けれど、森田さんが惹かれているのは、必ずしも「完璧に作り込まれた姿」ではない。
その植物が、その植物らしく育っていく。
人間が形を決めるのではなく、環境の中で少しずつ変化していく。
もちろん、必要な手入れはする。
けれど、すべてを思いどおりにしようとはしない。
その感覚は、今回彼の選んだOne Loveの1株にも通じている。
今の姿だけではなく、その先の自然な変化を楽しみにしているからだ。
「ユルい感じが好きなんです、人もアガベも」
そして、森田さんが植物との付き合い方を話すなかで、ひときわ印象に残った言葉がある。
「ユルい感じが好きなんです。人もアガベも」
その言葉の意味を尋ねると、森田さんはこう続けた。
「なんていうか、だらしなくなっちゃったとこも好きなんですよ。
締まった姿に作り込むとかそういうのではなく、平凡でもいいからナチュラルに育ってほしいだけなんです。
好きな鉢に入れて、化粧石を乗っけて、スタイリングはしてあげるけど、あとは自然に任せて、『健康的で自由にだらしなく』育ってくれたほうが、おもしろいじゃないですか」

植物を自分の思いどおりの姿に作り込むのではなく、手をかけるところは手をかけ、あとは自然に任せる。
「健康的で自由にだらしなく」
森田さんのアガベとの付き合い方を表すなら、この言葉ほどしっくりくるものはないのかもしれない。
Dialogue ─ 植物と対話する

毎日、植物の「声なき声」を聞く
森田さんにとって、植物の世話をする上での極意をきいてみた。
「極意ねぇ・・・、結局は人と接する時とあまり変わらないと思います」
暖かければ外へ出す。暑すぎれば日焼けしないようにしてあげる。そして葉にシワが入ってきたら・・・
「シワが入ってきたら、(アガベが)喉すげぇ渇いたよー! ということなので、すぐに水をあげますし、常に対話しながら、アガベたちの声なき声に耳を傾ける、というのは大事にしています」
毎日決まった曜日に水をやる。何株あるから何分で世話を終える。そういう一律の管理ではない。
「植物棚ガッツリで育成ライトガッツリの方の中には、個々の様子を見るというより、全体像しか見ないような。買って満足、コレクションして満足、みたいな方もいると思います。
そんな楽しみ方も理解はできるんですが、ただオレは、1株1株の声を毎日聞きたい」
多忙な時間を割き、その日の気温や葉の様子を見ながら、植物が何を欲しがっているのかを感じ取る。
これは森田さんにとって作業ではなく、アガベたちへの個人面談なのだろう。
そんな面談を重ねながら、屋内管理に移る梅雨時や冬には、全員が屋外のときと同じように、心地よい風をちゃんと浴びているという。
ただし、サーキュレーターなどではなく、「普通の家庭用の扇風機ですけどね」というのが実に彼らしい。
「欲しそうにしてるのに、じらすとかマジ無理」
水やりのタイミングについて尋ねると、森田さんの性格がさらによく見えてくる。
「まぁ、乾いたようならあげる、そうでないなら待つ、基本的な水やりはそんな感じですね」
いわゆるアガベ好き界隈が理想の形を追求するために行う「限界まで乾かしてから水をやる」という、辛めの管理ではない。
「限界までシワシワにするとかはないですね。(細根の枯死も)怖いし。乾いたそぶりを見せたらすぐあげちゃう。けっこうあげてるほうかもしれませんよ」
その理由を尋ねると、
「なんかね、性格なのかな。見過ごせないんですよ。欲しそうにしてるのに、じらすとかマジ無理です」
見過ごさないのは、毎日対話しているからなせる技なのだと思う。
なぜか分からないけど、メネデールが好き
アガベを育てるうえで、肥料をどうするかは、しばしば議論になるところだ。
定期的に施肥する人もいれば、あえて肥料を与えない人もいる。
前者は、施肥によって成長を促し、より早く大きく、そして肉厚な株に仕立てたい。
一方後者は、もともと肥料を多く必要としない植物だから、あえて施肥をしないという考え方だ。
では、森田さんはというと―
「肥料を定期的にあげればもっと肉厚とかになるんでしょうけど、不自然になにかをあげたくはないんで、肥料はほとんどあげてないですね。ただ、活力剤の『メネデール』が好きで、メネデールはよくあげるんですよ。
なぜか分からないけど、メネデールが好きなんです(笑)」

「メネデール(芽根出〜る)という名前の語呂感とかもあるんですかね?」と筆者が聞くと、森田さんは「それもあるかも!」と爆笑していた。
肥料で成長を積極的に促すことよりも、植物自身の力を見ながら育てる。
メネデールは、そんな森田さんの栽培スタイルをアシストする心強い存在なのかもしれない。
自分で試行錯誤しながら答えにたどり着く尊さ
用土について尋ねると、ここでも森田さんらしい答えが返ってきた。
「土は自分で作りますよ。自分で配合したりするのは好きな作業の一つです」
とはいえ、緻密な計算のもとに完璧な配合を導き出すわけではない。
「特に、鹿沼(軽石)と赤玉の比率をどうとか緻密に計算するというよりは、適当ですね(笑)。
ただ、この配合こうしたらどうなんのかな、とかいうような、実験的な試みはやっていて楽しいし、好きですね」
森田さんは「自然に任せる」と言いながら、何もしないわけではない。
自分で土を配合し、試してみる。そこからまた考える。
「検索で出てきた情報が自分にとって本当に正しいのか間違っているのかもよく分からないし。
もちろん、そういう情報を頼りにしていた時期もあるんですが、それで失敗したら自分に納得がいかないな、と思って。
だったら、自分自身で模索した中での失敗なら納得できるな、って」
当然失敗も経験した。
「失敗はたくさんありますよ。根っこをいじりすぎて調子をくずしたりとかもしましたし、腐らせて枯らしちゃったこともあります。結局、何事も『やりすぎない』ということですね。
模索した結果うまくいったとしても、それが絶対的な正解ではないと思うし」
溢れる情報をそのまま正解にするのではなく、自分で触って、試して、植物の反応を見る。失敗から学びながらも、それを絶対の正解とはしない。
これこそ、森田さんにとっての「対話」なのだ。
Future ─ 今いる植物たちと、その先へ

増やすより、今いる植物たちと
50株を超えるアガベを育てている森田さんだが、これ以上コレクションを増やしていくことは考えていないという。
「数的に、自分が責任持って面倒みきれるのは今ぐらいがちょうどいいので、基本、これ以上は増やさない感じかな。数というよりも、今育てている株たちが大きく成長していくのが楽しみなんです」
森田さんの興味は「次の1株」よりも、いま手元にいる植物たちの、その先へ向いている。
だからこそ、ふとこんなことも考える。
「『オレが死んだらこの子たちはどうするんだろう・・・』、というのは、なんかたまに考えることはありますね。誰かに持っていかれるのかな、あるいは破棄されてしまうのかな、とか、なんか変な想像しちゃうことがありますね」
植物を育てるということは、その成長を見届けることでもある。
少し冗談めいた会話の中に、育てている”家族”に対する静かな責任感がにじむ。
いつか、自生地へ
台湾や日本各地で植物を育てる人と出会い、その場所で植物に触れたことで、森田さんの中には、いつか実際の自生地を見てみたいという思いも大きくなる。
「いつかアガベの自生地には行ってみたいですね。アガベだけに限らず、塊根植物の自生地とか」

ただ、これは今すぐに実現したいという具体的な計画というより、私たちもそうであるように、植物を育てているからこそ自然に生まれてくる興味なのだろう。
鉢の中で見るアガベではなく、本来どんな場所に生きているのか。
どんな環境で、どんな姿でそこに根を張っているのか。
「過酷な環境でどんなふうに自生しているのかを見てみたいんですよね。アガベだけではなく、パキポディウムもいくつか育てているんで、彼らが自生している場所もぜひ見てみたいですね」
植物を育てることから、その植物が生きている場所へ。
まだ見ぬ土地への興味は、森田さんの中で静かに広がっている。
Plants & Acting ─ 植物と、演じること

植物と向き合うことは、役を生きることに似ている
植物について話を聞いていると、時折、森田さんが俳優として積み重ねてきた時間と重なる瞬間がある。
植物を育てることと、演じること。
一見するとまったく違うものだが、森田さん自身は、その二つにどこか似たものを感じているという。
「植物もそうだし、芝居もそうなんですけど、こっちがこうしたいって思っても、そうならないことってあるじゃないですか」
植物は、思いどおりには育たない。
だからこそ、相手を見ながら、自分のやり方を変えていく。
「その時その時で、相手を見ながらやっていくっていうのは、芝居にも似てるなと思いますね」
これは、ここまで聞いてきた植物との向き合い方にも、そのまま重なる。
決められた答えを再現するのではなく、目の前にあるものを見て、感じて、考える。
そして、次にどうするかを決める。
植物も、配役も、最初から最後まで完全に思いどおりになるものではない。
だからこそ、その瞬間にしか生まれないものがある。
植物好きだからこそ、舞台を見てほしい
そして最後に、GARDEN STORYの読者に向けて、森田さんからこんなメッセージをもらった。
「植物を愛する人たちに、今度は俳優・森田剛の表現を見てほしいです」
植物を育てることと、舞台を観ること。
一見すると、そこには大きな距離がある。
けれど、このインタビューを終えてみると、そうでもないように思える。
植物の変化をじっと見つめること。
土を触り、自分で試してみること。
決められた正解ではなく、自分の感覚を信じること。
そして、目の前にあるものと、その瞬間に向き合うこと。
森田さんが植物と過ごす時間には、俳優としての歩みを続ける彼の姿勢と、どこか通じるものがあった。
筆者は今年の春に、彼の主演舞台「砂の女」を観た。
舞台上にいたのは、もちろん俳優・森田剛だ。
そして今回、アガベ愛に溢れる森田剛の言葉を聞いた。
先に俳優としての森田剛の魅力を知ったからこそ、今回の取材で見えた”植物好き森田剛”と、その姿が自分の中で静かにつながった。
だからこそ、この記事を読んでくださった読者の皆さまにも、いつか舞台の上にいる森田剛を見てほしい。
その時、俳優森田剛と植物好きの森田剛が、「自然体」という一本の線でつながって見える瞬間を感じてもらえたら嬉しい。
GARDEN STORY読者の皆様へ
GO MORITA PROFILE

森田剛(もりた ごう)
1979年2月20日生まれ、埼玉県出身。
2005年、劇団☆新感線の「荒神~Arajinn~」で舞台初主演を務めて以降、数々の舞台、映像作品に出演。
2016年吉田恵輔監督映画『ヒメアノ〜ル』で単独主演を果たし、国内外で高い評価を受ける。映画出演作品としては、『DEATH DAYS 劇場版』(22)、『前科者』(22)、『白鍵と黒鍵の間に』(23)、『劇場版 アナウンサーたちの戦争』(24)、『雨の中の慾情』(24)など。
舞台では、2011年に主演を務めた『金閣寺』は、アメリカ・ニューヨークの『リンカーンセンター・フェスティバルで公演、その後『空ばかりみていた』(19)『FORTUNE』(20)『みんな我が子』(22)、『ロスメルスホルム』(23)、『台風23号』(24)、『ヴォイツェック』(25)、『砂の女』(26)など
GO MORITA INFORMATION
舞台『僕らの時代じゃない』
東京2026年10月8日(木)〜27日(火)紀伊國屋ホール、
愛知11月7日(土)〜8日(日)穂の国とよはし芸術劇場PLAT 主ホール
京都11月14日(土)〜16(月)京都劇場
https://www.bokuranojidaijanai.jp/
映画『見上げてごらん』2026年10月30日テアトル新宿他にて公開
https://gaga.ne.jp/miagetegoran/
-Epilogue-
私はこの多肉連載でアガベをやる時は「森田剛」、彼から始まる。ずっと前からそう心に決めていた。
だから今まで、アガベの特集は組まないでいた。
それだけアガベという趣味が奥深いからだ。
でも、アガベの奥深さよりも、いい意味で錆びた男の魅力を眼光に宿した森田剛、その人の内面の奥深さに圧倒された。
一度の取材で森田剛のすべてなど分かるわけもない。
ライターとして、フォトグラファーとして、叶うならぜひ、もう一度お話を伺いたい。
さて、ようやくアガベへの扉が開いた「多肉植物狂い」。
森田剛さんのこの特集を皮切りに、次回のターゲットもアガベ!
現在、台湾屈指の某人気ナーサリーを鋭意取材中。お楽しみに!
今回の企画でお世話になった森田剛さん、所属事務所MOSSスタッフの皆様、取材当日ご協力いただいたヘアメイク、スタイリストの皆様に、この場をお借りして心より感謝申し上げます。
Thank you so much and, God Bless You🍀
記事協力
HAIR&MAKE-UP:TAKAI(undercurrent)
STYLIST:SO MATSUKAWA
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森田剛オフィシャルサイト
https://www.moritago.com
Credit
写真&文 / 編集部員K - ライター・エディター -

JOHN CHEESEBURGER写真事務所代表としてロックフォトグラファーの傍ら、サボテンを愛し5年、コーデックスに魅せられ3年を経て、2022年4月にガーデンストーリー編集部に参加。多肉植物関係の記事を中心に、精力的に取材&執筆を行う。飼い猫「ここちゃん(黒猫♂7歳)」に日々翻弄されている。
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ONE PLANT, ONE LOVE 〜森田剛が語る、アガベとのストーリー〜
「植物が増えたというより、好きなものと暮らす時間が増えた」―50株を超えるアガベと暮らす俳優・森田剛。多肉植物との出会いから、独自の育て方、そして1株に込める思いまで、普段はなかなか聞けない森田剛の植物…


























