じつはスイートバジルとは別物? 混同しやすい「バジルの種類」とプロが教える見分け方
Fotema/Shutterstock.com
“ハーブの王様”といわれるバジルは、最も広く親しまれているハーブです。多くの栽培種がありますが、いずれも料理に幅広く使うことができ、花やブロンズリーフが美しいものもあります。ただし、バジルの種類や品種は混同されていることがよくあり、違いが分かりにくいことも多いです。この記事では、バジルの主な種類と品種を、できるだけ最新の分類に基づき、プロが分かりやすく解説します。
目次
バジルの仲間の基本情報

植物名:バジル
学名:Ocimum
英名:Basil
科名:シソ科
属名:メボウキ属
原産地:世界の熱帯から亜熱帯地域
形態:一年草
バジルの仲間のメボウキ属は、世界の熱帯から亜熱帯の広い地域に65種もが知られています。自生地では多年草、または低木ですが、寒さに弱いので日本では冬に枯れる一年草として扱われます。
たくさんの栽培品種がありますが、食用として主に利用されます。薬用植物としても親しまれ、地中海の周辺地域では数千年にもわたって栽培されてきました。中国やインドなどの伝統医学でも使われます。共通の効能として殺菌や食欲増進、消化促進などの作用などがあります。
強い芳香があることから、ハエや蚊などの虫よけとして鉢植えを窓際などに置いて栽培されることもあります。
さまざまな瑞々しいバジル。Fotema/Shutterstock.com
バジルとは?

学名:Ocimum basilicum
和名:メボウキ(目箒)
別名:スイートバジル
英名:Basil
原産:アジアの熱帯から亜熱帯地域、西太平洋地域、オーストラリア(クイーンズランド州、西オーストラリア州)
単にバジルという場合はバジリカム種(O.basilicum)であることがほとんどです。バジリカム種はメボウキの和名があり、品種名が特に無い場合はスイートバジルを指します。スイートバジルは、イタリアなどの地中海料理では重要なハーブで、日本でも食材として消費量が多いです。バジリカム種にはほかにもさまざまな芳香の品種や変種が多くあり、すべて料理に使うことができます。
夏から秋にかけてシソに似た花穂がつき、白い小花が輪生します。花後にできる種子は水を吸うと膨らみ、デザートや飲み物などにも使われます。
バジルの品種・変種
ダークオパールバジル Ocimum basilicum ‘Dark Oparl’

株全体が暗紫色で、花はピンク色です。光沢のある濃い紫色の葉が美しく、花壇などに植えても映えます。葉の香りはスイートバジルに近いですが、ややスパイシーでクローブにも似た香りがあります。
ダークオパールバジルから選抜された品種に、紫色の葉がより安定して発色する‘ルビン’があります。
タイバジル Ocimum basilicum var. basilicum (O. basilicum var. thyrsiflorum )

タイだけでなく東南アジアで広く栽培され、主に料理に使われます。タイでは「ホーラパー」、中華料理では「九層塔」の名で呼ばれ、「台湾バジル」の別名もあります。
花穂や茎は赤紫色で草丈30~50cm、緑色の葉はやや紫色がかった色になることがあります。台湾では、茎が緑色の系統も多くあります。葉の芳香はスイートバジルより強く、甘くスパイシーな香りがあり、熱を加えても風味が落ちにくいです。
タイバジルの選抜品種に、アニスに似た風味がある‘シャムクイーン’があります。
ブッシュバジル Ocimum basilicum var.minimum

南インドとスリランカ原産で、高さ30cmほどの小型の変種です。非常に小さい葉が密に茂り、葉の香りはスイートバジルに似ています。寒さにはスイートバジルより強いです。
レタスリーフバジル Ocimum basilicum lettuce leaf(Ocimum basilicum ‘Lettuce Leaf’)

やや多肉質の大きな葉は8~12cmほどで、表面が波打ちます。サンドイッチやサラダなどに最適です。似た品種に‘ナポリターノ’ (O. basilicum ‘Napoletano’)がありますが、同一の品種かもしれません。
シナモンバジル Ocimum basilicum ‘Cinnamon’

シナモンにも似た甘くスパイシーな香りがあり、メキシコで生まれた栽培品種のため、「メキシカンスパイスバジル」の名があります。茎は紫色で、白、またはピンクの花が咲きます。タイバジルに似ており、混同されていることがあります。タイバジルに比べると葉は細長く光沢があり、鋸歯が目立ちます。
ミセスバーンズ・レモンバジル Ocimum basilicum ‘Mrs. Burns’
レモンバジルより葉が大きく、レモンの香りが安定して強くあります。丈夫で暑さと乾燥に強く、収量も多いです。
バジルに近縁の種類
ツリーバジル(ヴァナ・トゥルシー) Ocimum gratissimum

アフリカや東南アジアの熱帯、亜熱帯の広い地域が原産の低木、または多年草で、変異が多い種類です。「インドメボウキ(印度目箒)」の和名があるほか、「アフリカンバジル」や「クローブバジル」、「ワイルドバジル」などの英名があります。食用や薬用として幅広く利用され、特に西アフリカでは料理用として多く使われます。
カンファーバジル Ocimum kilimandscharicum

葉には清涼感のあるカンファー(樟脳)の香りがあります。アフリカ東部の熱帯地域が原産で、高さ1~2mくらいに育つ低木です。寒さにも比較的強く、0℃まで耐えます。米の風味付けや料理、お茶、蚊よけなどに利用されます。
バジルの種間交配種
レモンバジル Ocimum × africanum (O. basilicum × O. americanum )

小型のヒメボウキ(O. americanum )との交配種で、葉はやや小さく、草丈30~40㎝ほどです。葉にはレモンのよい香りがあり、南アジアや北東アフリカ、アラブなどで料理によく使われます。花後にタネができ、一般にも種子が流通します。
アフリカンブルーバジル O. basilicum × O. kilimandscharicum

ダークオパール・バジルとカンファーバジルの交配種です。丈夫で生育は旺盛です。0℃近くの低温に耐え、寒くなると葉は紫色がかります。不稔性でタネができないため、挿し芽で増やします。赤紫色の花は周年咲きやすく、観賞用や切り花にもおすすめです。
ホーリーバジル(トゥルシー)とは

学名:Ocimum tenuiflorum
英名:Holy basil
和名:カミメボウキ(神目箒)
別名:トゥルシー、ガパオ
原産地:アジアの熱帯から亜熱帯地域、西太平洋地域、オーストラリア(クイーンズランド州)
茎の基部は木質化し、直立して伸びる多年草、または低木です。草丈30~100cmほどの大きさに成長し、マイナス1℃までの温度に耐えます。
ヒンズー教の神聖な植物とされて寺院などで栽培され、宗教儀式に使われます。またインドやスリランカ発祥の伝統医学・アーユルヴェーダでは、抽出物が治療薬として使われたり、ハーブティーの材料になります。タイでは葉は「ガパオ」と呼よばれ、挽き肉と合わせて炒めたガパオライスの材料となっています。スイートバジルと同様に、料理に幅広く使うことができ、クローブにも例えられるスパイシーな芳香と風味があります。葉に細かい毛があり、サラダなどの生食には適しません。
クリシュナトゥルシー Ocimum tenuiflorum ‘Krishna’(Holy red)

葉や花が紫色で美しく、高い薬効があるとされます。
バジルの育て方

バジル栽培をはじめるには
苗を入手して育てれば確実ですが、種まきから育てるのも比較的簡単です。バジルのタネは比較的安価な値段で流通しており、発芽率もよいです。バジルをたくさん育てたい場合は、種まきから育てるのがおすすめです。また種子のほうが入手しやすい場合もあります。
適した環境・置き場所
屋外の日当たりと風通しのよい場所が適しますが、風当りの強い場所は避けてください。室内の明るい日陰でも育ちますが、徒長気味の株姿になります。
生育適温は20℃以上で、夏を中心に温度の高い時期に最もよく生育します。
水やりと肥料
乾燥に比較的強いですが、乾燥気味に育てると葉は硬くなります。地植えした場合は夏に土壌が乾燥したら水やりするとよいでしょう。鉢植えは、水切れさせないよう十分に水やりしてください。
肥料は、生育期間中に肥料を切らさないように与えると、質のよい葉を多く収穫できます。ただし油かすなど窒素分の多い肥料を与えると苦みが強くなり、アブラムシなども発生しやすくなります。
病害虫
バッタなどによる葉の食害が多いです。また地植えした場合は、ベト病によって全滅することが多くなっています。日当たりと風通しのよい環境で育てるようにしてください。また室内で育てたほうが病害虫の被害が少ないですが、ハダニが発生することがあります。
バジルの見分け方のポイント

- 単にバジルという場合はスイートバジル、またはバジリカム種をさす
- バジルとホーリーバジルは別の種類
- ホーリーバジルとタイバジル、シナモンバジルが混同されやすい
- レモンバジルやアフリカンブルーバジルなど種間交配種がある
バジルは料理だけでなく、鉢植えを窓際に置けば虫よけの効果が期待できます。ブロンズリーフの品種は、花壇のおしゃれなアクセントになります。アフリカンブルーバジルは室内で冬越しさせれば長く花を楽しめ、葉も料理に使えます。シナモンやレモン、クローブなど、用途によって使い分けても楽しいでしょう。さまざまなバジルを育てて、豊かなハーバルライフを楽しんでください。
Credit
文 / 小川恭弘 - 園芸研究家 -

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